回転力伝達装置
【課題】駆動側軸から被駆動側軸へと回転力を伝達する回転力伝達装置であって、従来の構成と異なる構成の回転力伝達装置を提供する。
【解決手段】回転力が付与される第1の軸(駆動軸)の側と、前記回転力が伝達される第2の軸(被駆動側軸)の側との各々に永久磁石が取り付けられ、両永久磁石間に形成される磁気回路により、前記第1及び第2の軸間で回転力を伝達する回転力伝達装置であって、前記駆動軸の側の永久磁石141aのN極と前記被駆動軸の側の永久磁石143aのS極とが対向しており、前記駆動軸の側の永久磁石141aのS極と前記被駆動軸の側の永久磁石143aのN極と対向している構成とする。
【解決手段】回転力が付与される第1の軸(駆動軸)の側と、前記回転力が伝達される第2の軸(被駆動側軸)の側との各々に永久磁石が取り付けられ、両永久磁石間に形成される磁気回路により、前記第1及び第2の軸間で回転力を伝達する回転力伝達装置であって、前記駆動軸の側の永久磁石141aのN極と前記被駆動軸の側の永久磁石143aのS極とが対向しており、前記駆動軸の側の永久磁石141aのS極と前記被駆動軸の側の永久磁石143aのN極と対向している構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力伝達装置に関し、特に永久磁石同士の磁気結合により、磁石同士は非接触で回転力を伝達する回転力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石磁力による動力伝達の非接触化技術は、食料品等の撹拌機やクリーンルームのホイールコンベア等など、比較的高トルクを必要としない産業機器の回転駆動部に積極的に導入が進んでいる。グリースなどの潤滑の必要がなく、磨耗による粉塵もない非接触化技術は、半導体産業やサニタリー産業に最も適する。
【0003】
しかし、磁気引力、斥力等を利用した非接触トルクは、一般に同径の接触を有する伝達機構のトルクより劣る。また、高い非接触トルクを得るための高磁力の大型磁石を採用すると、機構の大型化は避けられず、動力伝達部の磁気が他の機械電子機器に与える悪影響が懸念される。
【0004】
磁力による非接触動力伝達技術の一例として、駆動軸とスピンドルとの間を非接触状態で磁気結合させて前記駆動軸側の回転を前記スピンドルに伝達させるスピンドル駆動装置が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献2には、磁気力により、駆動軸側のトルクを非接触で被駆動軸側に伝達する装置において、被駆動側軸を径方向に位置ずれさせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−153489号公報
【0007】
【特許文献2】特開2001−165189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の第0016段落及び図2には、N極とS極とを交互に設けて、ラジアル方向の追従性を良くしている旨の記載がある。しかしながら、特許文献1の図3を参照する限り、結局、対向する永久磁石の磁極の様子は、図13に示す如くであり、図13に示された駆動側磁石901のN極、及び被駆動側磁石902のS極の、各々の裏面、即ち、駆動側磁石901のS極、及び被駆動側磁石902のN極からの磁力が回転力伝達に充分に活用されていない、という問題点がある。この点は、特許文献2に記載の技術についても同様と理解される。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであって、上記図13のような例と異なり、より磁石の磁力の有効活用を図り、効率的に回転力の伝達を図ることが可能となる回転力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題点を解決するために、本発明に係る回転力伝達装置は、回転力が付与される第1の駆動軸の側と、前記回転力が伝達される第2の被駆動軸の側との各々に磁石が取り付けられ、両磁石間に形成される磁気回路により、前記第1及び第2の軸間で回転力を伝達する回転力伝達装置であって、前記第1の軸の側の磁石のN極と前記第2の軸の側の磁石のS極とが対向し、前記第1の軸の側の磁石のS極と前記第2の軸の側の磁石のN極とが対向するように配されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の構成によって、より磁石の磁力の有効活用を図り、効率的に回転力の伝達を図ることが可能となる。
【0012】
前記第1の軸の側、第2の軸の側に、それぞれ複数の磁石が取り付けられ、それぞれが対向するように配されている構成とすることができる。
【0013】
前記第1の軸の側、第2の軸の側とも、複数の磁石の軸中心からの距離が略等しい構成とすることができる。
【0014】
前記第1の軸の側の複数の磁石、前記第2の軸の側の複数の磁石のいずれも、S磁からN極への向きが円周方向で同じ向きとなるように配置されている構成とすることができる。このような配置とすることにより、後述する斥力が発生し、伝達可能トルクが大きくなっていると考えられる。もっとも、伝達可能トルクが大きくなる点については、斥力とは異なる要素によることも有り得る。
【0015】
前記第1の軸の側の磁石と、前記第2の軸の側の磁石との間の磁気引力発生面が円弧状となっている構成とすれば、トルクを有効に伝達すること、相互磁石面積を大きくとることが可能になる。
【0016】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石の少なくとも一方は着脱自在に構成されている構成とすることができる。具体的には、磁石ホルダを設けて当該ホルダを着脱自在とする構成が考えられるが、ホルダを設ける構成に限定されない。このようにすることで、伝達可能トルクの調整が容易となる。
【0017】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石との間には、伝達可能トルクを超えた場合に両軸の間で空回りが生じるように隙間を空けて配されている構成とすれば、トルクリミッタとして使用した場合、オーバートルクで空転した場合に好ましい構成となる。
【0018】
前記複数の磁石の数が、前記第1の軸の側、第2の軸の側のいずれも、4個以上である構成とすることができる。以下の実施の形態では、6ペア、12ペアの場合について説明するが、4ペア以上とすれば、円周上略等間隔とすることが容易であり、また略等間隔とした場合に、磁石のサイズ等を調整することで、後述する斥力が発生する可能性が生じると予想される。
【0019】
前記磁石は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、)Dy(ジスプロシウム)からなる永久磁石であって、残留磁束密度Br=1300mT以上である構成とすることができる。ネオジム磁石を用いることで、伝達可能トルクを大きく保ちつつ、磁石を小型軽量とすることが可能となる。
【0020】
前記第1の軸に取り付けられた磁石と、前記第2の軸に取り付けられた磁石のいずれかとの間で、隣接して配された磁石との間に斥力が働く構成により、駆動側及び被駆動側の間の磁力線Xが、駆動側及び被駆動側の両磁石間に集中されることになり、伝達可能トルクが大きくなっていると考えられている。もっとも、伝達可能トルクが大きくなっている理由は、斥力とは異なる可能性も有る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る回転力伝達装置によると、磁気力により、駆動側磁石と被駆動側磁石との間は非接触として回転力を伝達する回転力伝達装置において、より、磁石の磁力の有効活用を図ることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態の回転力伝達装置の全体構成について説明するための斜視図である。
【図2】第1の実施の形態における回転力伝達装置100の側面図である。
【図3】第1の実施の形態における回転力伝達装置100を駆動側軸110の側から見た平面図である。
【図4】第1の本実施の形態における回転力伝達装置100の断面(端面)を表す図であり、回転力伝達機構120の様子について、より詳細に説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態における永久磁石配置について説明するための模式図である。
【図6】第1の実施の形態における永久磁石ペアのサイズ、位置関係等について説明するための模式図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の回転力伝達装置200の斜視図である。
【図8】第2の実施の形態における回転力伝達装置200の側面図である。
【図9】第2の実施の形態における回転力伝達装置200を駆動側軸210の側から見た平面図である。
【図10】第2の実施の形態における回転力伝達装置200において、駆動側軸210及び被駆動側軸230の軸方向中央を含む断面(端面)を示す図である。
【図11】第2の実施の形態における永久磁石ペアの一つ(例えば214a及227a)を例として、そのサイズ、形状、位置関係等について、より詳細に説明するための模式図である。
【図12】第1の実施の形態、第2の実施の形態における永久磁石ペアの磁力線について説明するための模式図である。
【図13】背景技術における、対向する永久磁石の磁極の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における回転力伝達装置100の全体構成について説明するための斜視図である。また、図2は、本実施の形態における回転力伝達装置100の側面図、図3は、回転力伝達装置100を駆動側軸110の側から見た平面図である。回転力伝達装置100は、駆動側軸110の回転力を被駆動側軸130に伝達する回転力伝達機構120を備えている。
【0024】
回転力伝達機構120は、駆動側軸110とネジ111により固着した駆動側伝達板121、駆動側伝達板121に固着された駆動軸側磁石装着部122、本実施の形態では、円周上略等間隔に設けられる6箇所の磁石ホルダ142a〜142fが取り付けられた被駆動軸側伝達部123とを含んでいる。
【0025】
駆動軸側磁石装着部122には、円周上、略等間隔に6個の永久磁石141a〜141fが装着されている。一方、磁石ホルダ142a〜142fには、前記した駆動軸側の永久磁石141a〜141fと対向するようにして、永久磁石143a〜143fが嵌着されている。駆動側の磁石141a〜141f、被駆動側の磁石143a〜143fの形状等については後に詳細に説明する。駆動軸110側の磁石141a〜141fと、磁石ホルダ142a〜142fに嵌着された被駆動側磁石とは、各々が対向しており、磁石同士は非接触の状態で、磁石間に生じる磁気回路により、駆動側軸110に与えた回転力を被駆動側軸130へと伝達する。
【0026】
図4は、本実施の形態における回転力伝達装置100の断面を表す図である。具体的には、図3におけるA−A線断面の端面を矢印A方向から見た様子を示す図であり、回転力伝達機構120の様子について、より詳細に説明するための図である。図4には、図1〜図3では図示を省略したベアリング入りのリング112、132が、図示されている。駆動側軸110にはリング112が挿着されており、リング112内には、複数のベアリング1121が配されている。また、被駆動側軸130にはリング132が挿着されており、リング132内には、複数のベアリング1321が配されている。このように駆動側、被駆動側に両側にベアリング入りのリングを挿着することで、両リングを固定した状態で、駆動側軸110、被駆動側軸130の両者が回転自在となるように構成されている。もっとも、リング112、132は、必ずしも備えなくても良い。なお、図4は、端面の概略を示す図であるので、図4の奥側に存する磁石141b、141c等の詳細は図示を省略している。
【0027】
本実施の形態では、ベアリング1121、1321、ネジ111、131についてはステンレス材(SUS304)により成型されており、他の部分は軽量化、磁石への影響を少なくする等のため、アルミ材(例えば高強度アルミニウム合金A7075)が用いられているが、材料がこれらに限定されないことは勿論である。
【0028】
なお、図4に示されるように、本実施の形態では、駆動側軸110と被駆動側軸130との間(回転力伝達機構120内部)にベアリング151、152等が介挿されており、図示された如く駆動軸側磁石装着部122側に、例えばアルミ管1411aを介して係着された永久磁石141a、アルミ管1411dを介して係着された永久磁石141dが、前記磁石ホルダ142a、142dに、それぞれ嵌着された磁石143a、143d(他の被駆動軸側磁石は不図示)との間に生じる磁気回路により、磁石141aと磁石143a、磁石141dと磁石143d等との間は非接触で、駆動側軸110に与えた回転力が被駆動側軸130に伝達される構成である。駆動側の磁石141a〜141fもホルダに係着して着脱自在の構成とすれば、磁石ペア数を変化させて、容易に限界伝達トルクを調整できる。ベアリング151、152は、駆動側軸110側の磁石141a〜141fと、被駆動側軸130側の磁石143a〜143fとの間の磁力により伝達可能なトルクを超える負荷がかかった場合に、円滑に駆動側軸110と被駆動側軸130とを回転させる役割を果たす。
【0029】
図5は、本実施の形態における永久磁石配置について説明するための模式図であり、図6は、本実施の形態における永久磁石ペアのサイズ、位置関係等について説明するための模式図である。
【0030】
図5に示されるように、被駆動軸側伝達部123(図5には不図示)側の磁石ホルダ(例えば図4に示した磁石ホルダ142a等)に挿着される永久磁石143a〜143fは、後述する曲率半径(R)を有する板状磁石である。一方、駆動軸110側の永久磁石141a〜141fは、係着穴1412a〜1412fに、前記したように、例えばアルミ管(図4参照)を介して駆動軸側磁石装着部122に係着される。磁石141a〜141f、磁石143a〜143fは、それぞれ、円周上略等間隔となるように、各々対向して配される。図6は、本実施の形態の永久磁石ペアの一つ(例えば141a及び143a)を例として、そのサイズ、形状、位置関係等について、より詳細に説明するための正面図(図6(a))及び側面図(図6(b))である。
【0031】
本実施の形態では、永久磁石141a、及び143aは、いずれもNd(ネオジム)、Fe(鉄)、B(ホウ素)、及びDy(ジスプロシウム)からなる磁石であって、その化学成分(重量%)は、Nd27〜30%、Fe60〜70%、B1〜2%、Dy2〜8%である磁石を用いた。残留磁束密度Br=1320〜1380mT、磁石141a及び磁石143aの両方を合わせた体積は4522mm3、磁石141aと磁石143aとの間の距離は、本実施の形態における有効面積433mm2の全域にわたって4mmである。磁石143a外周面の曲率半径R=26(図6(b)参照)、磁石143a内周面の曲率半径R=23(図6(b)参照)としている。一方、磁石141aにおいて、磁石143aと対向する側の曲率半径R=19(図6(b)参照)としており、両磁石の有効面積の全域にわたって両磁石間の距離を4mmと一定にしている。両磁石間に所定の距離(例えば4mm)を置くことにより、伝達可能トルクを超えた場合に、トルクリミッタとして円滑に動作する。第2の実施の形態でも同様であるが、磁気引力発生面を円弧状とすることにより、トルクを有効に伝達すること、相互磁石面積を大きくすることが可能となる。残留磁束密度がBr=1300mT以上のネオジム磁石を用いることで、伝達可能トルクを大きく保ちつつ、磁石を小型軽量とすることができる。
【0032】
さらに、本実施の形態における永久磁石ペアの極性は、図6(a)に示される如く、ホルダ側の磁石143aのN極が、駆動軸側の磁石141aのS極と対向しており、磁石143aのS極が、磁石141aのN極と対向する構成としている。この点が本件発明の特徴であり、このような磁極の配置により、両磁石のN極、S極からの磁力を有効に活用することが可能となる。
【0033】
図6(b)に示されるように、磁石141aには、前記したアルミ管が挿通する挿通孔1411aが空けられており、挿通孔1411aの下部、挿通孔1411aの挿通方向に直交する方向の磁石141aの幅は17mmである。図6(a)に示されるように、挿通孔1411a(図6(a)には不図示)の挿通方向に平行な方向の磁石141aの幅は12mmであり、磁石141aに対向する磁石143aの幅は18mmとした。以上に詳細に説明した一具体的構成の永久磁石ペアを、図1等に示されるように6箇所設けた場合、伝達可能なトルクは4.5Nmであった。
【0034】
ちなみに、伝達可能なトルクは、駆動軸、被駆動軸の双方にサーボモータ(駆動軸側モータ及び被駆動軸側モータ)を取り付けて、測定した。当該サーボモータの回転速度及びトルクは、サーボアンプにより制御され、サーボアンプからRS232Cを介して直接PCに記録されたデータを利用して伝達可能なトルクを求めた。
【0035】
(実施の形態2)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態の回転力伝達装置200の斜視図、図8は側面から見た図であり、図9は、駆動軸210の側から見た平面図である。
【0036】
本実施の形態の回転力伝達装置200では、永久磁石のペアが12ペアとなっており、また、永久磁石の形状に工夫を凝らした。それらにより、第1の実施の形態の回転力伝達装置100と比較しても、より大きいトルク(例えば250ccクラスのバイクを動かす際に必要とされるトルクである20Nm超程度)を伝達することが可能となったものである。
【0037】
おおまかな構成は第1の実施の形態とほぼ同様であり、駆動側軸210、被駆動側軸230の間に回転力伝達部220が設けられている。図7の斜視図、図9の平面図に示されるように、永久磁石取り付け用のネジ(224a〜224lの12個)、及びナット(225a〜225lの12個)が、円周上略等間隔に配されており、図7に示される222a等の部分に、12箇所の永久磁石ペアが配されている。
【0038】
図10は、回転力伝達装置200において、駆動側軸210及び被駆動側軸230の軸方向中央を含む一断面を示す模式図である。より具体的には、図9におけるB−B線断面を矢印B方向から見た端面を示す図である。端面であるから、図9におけるB−B線よりも奥側については、図示を省略している。
【0039】
駆動側軸210には駆動側伝達板221、被駆動側軸230には被駆動側伝達板223が配され、両者の間に回転力伝達部220が設けられる。本実施の形態では、駆動側伝達板221、被駆動側伝達板223の直径は120mmであるが、この大きさに限定されないことは明らかである。回転力伝達部220に、磁石同士は非接触である永久磁石ペア(本実施の形態では、円周上略等間隔に12ペア)が配されている。本実施の形態では、被駆動側軸の磁石を嵌着する磁石ホルダが、ボルト224a〜224l、ナット225a〜225lにより挟設される構成となっている。
【0040】
前記したように、磁石ホルダ(例えば、図10中の226d、226j)に挿着される永久磁石(例えば、図10中227d、227j)と、駆動側軸210と直結した磁石取り付け用部材(図10中での213d、213j)を介して駆動軸側に装着される永久磁石(例えば図10中での214d、214j)とが、各々対向して配される。図10には図示されていない他の磁石も同様である。図11は、本実施の形態の永久磁石ペアの一つ(例えば214a及227a)を例として、そのサイズ、形状、位置関係等について、より詳細に説明するための正面図(図11(a))及び側面図(図11(b))である。
【0041】
永久磁石214a、及び227aは、第1の実施の形態と同様、いずれもNd、Fe、B、Dyからなるネオジム磁石であって、残留磁束密度Br=1320〜1380mT、磁石214a及び磁石227a両方(一つのペア)を合わせた体積は4372mm3、磁石214aと磁石227aとの間の距離は、有効面積576mm2の全域にわたって2mmである。即ち、磁石227a外周上下方向の曲率半径R=15(図11(b)参照)、磁石214a外周部上下方向の曲率半径R=10(図11(b)参照)とし、磁石227aの厚さを3mmとした。
【0042】
さらに、本実施の形態における永久磁石ペアの極性は、図11(a)に示される如く、ホルダ側の磁石227aのN極が、駆動側軸210側の磁石214aのS極と対向し、ホルダ側の磁石227aのS極が、駆動側軸210側の磁石214aのN極と対向する構成としている。このような磁極の配置により、第1の実施の形態と同様、両磁石のN極、S極からの磁力が、有効に活用される。ちなみに、以上に詳細に説明した一具体的構成(永久磁石ペア12箇所)の場合、伝達可能なトルクは22.0Nmと測定された。
【0043】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態と比較し、約5倍のトルクが伝達可能となった理由として、永久磁石ペアの数が2倍となったこと、磁石形状の工夫により有効面積が増加したこと、磁石間の距離を2mmと短くしたことに加え、以下のような理由が考えられた。
【0044】
図12は、上記第2の実施の形態の磁極を示す模式図である。上記に説明したように、駆動軸側のN極と被駆動側のS極、駆動軸側のS極と被駆動側のN極が、それぞれ対向する関係にある(図12(a)参照)。ここで、第2の実施の形態のように、隣接する永久磁石ペアとの距離が近づくと(図9に示されるように、隣接する磁石ペアとの間の角度は30°であり、図11(a)に示されるように、円周方向の磁石の幅は10mm、駆動側及び被駆動側円板の直径120mm、被駆動側のN極と、隣接する駆動側のN極との間に斥力が働き、駆動側及び被駆動側の間の磁力線Xが、駆動側及び被駆動側の両磁石間に集中されることになると考えられる(図12(b)参照)。
【0045】
この斥力により、被駆動側のN極と、駆動側S極との間の磁束が有効領域範囲外に広がってしまうことが抑止され、有効領域範囲内の磁束密度が大きくなり、これによって、伝達可能なトルクを大きくする方向に働いていると考えられる。この点は、第1の実施の形態で図示したような6対の磁石ペアの場合も同様であり、例えば有限要素法を用いた三次元静電場解析によっても、磁束の状態の変化を検出することができた。
【0046】
以上に説明したように、本実施の形態の回転力伝達装置により、例えば20Nm超といった大きなトルクを伝達することができることが明らかとなった。なお、上記したように、特に特徴的な点は、駆動側と被駆動側との磁極の配置にあり、磁石のサイズ、形状、磁石間の距離などについては、上記実施の形態に説明した例以外に、適宜設計することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば、駆動側軸から被駆動側軸へと回転力を伝達する回転力伝達装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100、200 回転力伝達装置
110、210 駆動側軸
120、220 回転力伝達部
130、230 被駆動側軸
141a〜141f 永久磁石
142a〜142f 磁石ホルダ
143a〜143f 永久磁石
214d、214j 永久磁石
226d、226j 磁石ホルダ
227d、227j 永久磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力伝達装置に関し、特に永久磁石同士の磁気結合により、磁石同士は非接触で回転力を伝達する回転力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石磁力による動力伝達の非接触化技術は、食料品等の撹拌機やクリーンルームのホイールコンベア等など、比較的高トルクを必要としない産業機器の回転駆動部に積極的に導入が進んでいる。グリースなどの潤滑の必要がなく、磨耗による粉塵もない非接触化技術は、半導体産業やサニタリー産業に最も適する。
【0003】
しかし、磁気引力、斥力等を利用した非接触トルクは、一般に同径の接触を有する伝達機構のトルクより劣る。また、高い非接触トルクを得るための高磁力の大型磁石を採用すると、機構の大型化は避けられず、動力伝達部の磁気が他の機械電子機器に与える悪影響が懸念される。
【0004】
磁力による非接触動力伝達技術の一例として、駆動軸とスピンドルとの間を非接触状態で磁気結合させて前記駆動軸側の回転を前記スピンドルに伝達させるスピンドル駆動装置が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献2には、磁気力により、駆動軸側のトルクを非接触で被駆動軸側に伝達する装置において、被駆動側軸を径方向に位置ずれさせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−153489号公報
【0007】
【特許文献2】特開2001−165189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の第0016段落及び図2には、N極とS極とを交互に設けて、ラジアル方向の追従性を良くしている旨の記載がある。しかしながら、特許文献1の図3を参照する限り、結局、対向する永久磁石の磁極の様子は、図13に示す如くであり、図13に示された駆動側磁石901のN極、及び被駆動側磁石902のS極の、各々の裏面、即ち、駆動側磁石901のS極、及び被駆動側磁石902のN極からの磁力が回転力伝達に充分に活用されていない、という問題点がある。この点は、特許文献2に記載の技術についても同様と理解される。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであって、上記図13のような例と異なり、より磁石の磁力の有効活用を図り、効率的に回転力の伝達を図ることが可能となる回転力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題点を解決するために、本発明に係る回転力伝達装置は、回転力が付与される第1の駆動軸の側と、前記回転力が伝達される第2の被駆動軸の側との各々に磁石が取り付けられ、両磁石間に形成される磁気回路により、前記第1及び第2の軸間で回転力を伝達する回転力伝達装置であって、前記第1の軸の側の磁石のN極と前記第2の軸の側の磁石のS極とが対向し、前記第1の軸の側の磁石のS極と前記第2の軸の側の磁石のN極とが対向するように配されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の構成によって、より磁石の磁力の有効活用を図り、効率的に回転力の伝達を図ることが可能となる。
【0012】
前記第1の軸の側、第2の軸の側に、それぞれ複数の磁石が取り付けられ、それぞれが対向するように配されている構成とすることができる。
【0013】
前記第1の軸の側、第2の軸の側とも、複数の磁石の軸中心からの距離が略等しい構成とすることができる。
【0014】
前記第1の軸の側の複数の磁石、前記第2の軸の側の複数の磁石のいずれも、S磁からN極への向きが円周方向で同じ向きとなるように配置されている構成とすることができる。このような配置とすることにより、後述する斥力が発生し、伝達可能トルクが大きくなっていると考えられる。もっとも、伝達可能トルクが大きくなる点については、斥力とは異なる要素によることも有り得る。
【0015】
前記第1の軸の側の磁石と、前記第2の軸の側の磁石との間の磁気引力発生面が円弧状となっている構成とすれば、トルクを有効に伝達すること、相互磁石面積を大きくとることが可能になる。
【0016】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石の少なくとも一方は着脱自在に構成されている構成とすることができる。具体的には、磁石ホルダを設けて当該ホルダを着脱自在とする構成が考えられるが、ホルダを設ける構成に限定されない。このようにすることで、伝達可能トルクの調整が容易となる。
【0017】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石との間には、伝達可能トルクを超えた場合に両軸の間で空回りが生じるように隙間を空けて配されている構成とすれば、トルクリミッタとして使用した場合、オーバートルクで空転した場合に好ましい構成となる。
【0018】
前記複数の磁石の数が、前記第1の軸の側、第2の軸の側のいずれも、4個以上である構成とすることができる。以下の実施の形態では、6ペア、12ペアの場合について説明するが、4ペア以上とすれば、円周上略等間隔とすることが容易であり、また略等間隔とした場合に、磁石のサイズ等を調整することで、後述する斥力が発生する可能性が生じると予想される。
【0019】
前記磁石は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、)Dy(ジスプロシウム)からなる永久磁石であって、残留磁束密度Br=1300mT以上である構成とすることができる。ネオジム磁石を用いることで、伝達可能トルクを大きく保ちつつ、磁石を小型軽量とすることが可能となる。
【0020】
前記第1の軸に取り付けられた磁石と、前記第2の軸に取り付けられた磁石のいずれかとの間で、隣接して配された磁石との間に斥力が働く構成により、駆動側及び被駆動側の間の磁力線Xが、駆動側及び被駆動側の両磁石間に集中されることになり、伝達可能トルクが大きくなっていると考えられている。もっとも、伝達可能トルクが大きくなっている理由は、斥力とは異なる可能性も有る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る回転力伝達装置によると、磁気力により、駆動側磁石と被駆動側磁石との間は非接触として回転力を伝達する回転力伝達装置において、より、磁石の磁力の有効活用を図ることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態の回転力伝達装置の全体構成について説明するための斜視図である。
【図2】第1の実施の形態における回転力伝達装置100の側面図である。
【図3】第1の実施の形態における回転力伝達装置100を駆動側軸110の側から見た平面図である。
【図4】第1の本実施の形態における回転力伝達装置100の断面(端面)を表す図であり、回転力伝達機構120の様子について、より詳細に説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態における永久磁石配置について説明するための模式図である。
【図6】第1の実施の形態における永久磁石ペアのサイズ、位置関係等について説明するための模式図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の回転力伝達装置200の斜視図である。
【図8】第2の実施の形態における回転力伝達装置200の側面図である。
【図9】第2の実施の形態における回転力伝達装置200を駆動側軸210の側から見た平面図である。
【図10】第2の実施の形態における回転力伝達装置200において、駆動側軸210及び被駆動側軸230の軸方向中央を含む断面(端面)を示す図である。
【図11】第2の実施の形態における永久磁石ペアの一つ(例えば214a及227a)を例として、そのサイズ、形状、位置関係等について、より詳細に説明するための模式図である。
【図12】第1の実施の形態、第2の実施の形態における永久磁石ペアの磁力線について説明するための模式図である。
【図13】背景技術における、対向する永久磁石の磁極の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における回転力伝達装置100の全体構成について説明するための斜視図である。また、図2は、本実施の形態における回転力伝達装置100の側面図、図3は、回転力伝達装置100を駆動側軸110の側から見た平面図である。回転力伝達装置100は、駆動側軸110の回転力を被駆動側軸130に伝達する回転力伝達機構120を備えている。
【0024】
回転力伝達機構120は、駆動側軸110とネジ111により固着した駆動側伝達板121、駆動側伝達板121に固着された駆動軸側磁石装着部122、本実施の形態では、円周上略等間隔に設けられる6箇所の磁石ホルダ142a〜142fが取り付けられた被駆動軸側伝達部123とを含んでいる。
【0025】
駆動軸側磁石装着部122には、円周上、略等間隔に6個の永久磁石141a〜141fが装着されている。一方、磁石ホルダ142a〜142fには、前記した駆動軸側の永久磁石141a〜141fと対向するようにして、永久磁石143a〜143fが嵌着されている。駆動側の磁石141a〜141f、被駆動側の磁石143a〜143fの形状等については後に詳細に説明する。駆動軸110側の磁石141a〜141fと、磁石ホルダ142a〜142fに嵌着された被駆動側磁石とは、各々が対向しており、磁石同士は非接触の状態で、磁石間に生じる磁気回路により、駆動側軸110に与えた回転力を被駆動側軸130へと伝達する。
【0026】
図4は、本実施の形態における回転力伝達装置100の断面を表す図である。具体的には、図3におけるA−A線断面の端面を矢印A方向から見た様子を示す図であり、回転力伝達機構120の様子について、より詳細に説明するための図である。図4には、図1〜図3では図示を省略したベアリング入りのリング112、132が、図示されている。駆動側軸110にはリング112が挿着されており、リング112内には、複数のベアリング1121が配されている。また、被駆動側軸130にはリング132が挿着されており、リング132内には、複数のベアリング1321が配されている。このように駆動側、被駆動側に両側にベアリング入りのリングを挿着することで、両リングを固定した状態で、駆動側軸110、被駆動側軸130の両者が回転自在となるように構成されている。もっとも、リング112、132は、必ずしも備えなくても良い。なお、図4は、端面の概略を示す図であるので、図4の奥側に存する磁石141b、141c等の詳細は図示を省略している。
【0027】
本実施の形態では、ベアリング1121、1321、ネジ111、131についてはステンレス材(SUS304)により成型されており、他の部分は軽量化、磁石への影響を少なくする等のため、アルミ材(例えば高強度アルミニウム合金A7075)が用いられているが、材料がこれらに限定されないことは勿論である。
【0028】
なお、図4に示されるように、本実施の形態では、駆動側軸110と被駆動側軸130との間(回転力伝達機構120内部)にベアリング151、152等が介挿されており、図示された如く駆動軸側磁石装着部122側に、例えばアルミ管1411aを介して係着された永久磁石141a、アルミ管1411dを介して係着された永久磁石141dが、前記磁石ホルダ142a、142dに、それぞれ嵌着された磁石143a、143d(他の被駆動軸側磁石は不図示)との間に生じる磁気回路により、磁石141aと磁石143a、磁石141dと磁石143d等との間は非接触で、駆動側軸110に与えた回転力が被駆動側軸130に伝達される構成である。駆動側の磁石141a〜141fもホルダに係着して着脱自在の構成とすれば、磁石ペア数を変化させて、容易に限界伝達トルクを調整できる。ベアリング151、152は、駆動側軸110側の磁石141a〜141fと、被駆動側軸130側の磁石143a〜143fとの間の磁力により伝達可能なトルクを超える負荷がかかった場合に、円滑に駆動側軸110と被駆動側軸130とを回転させる役割を果たす。
【0029】
図5は、本実施の形態における永久磁石配置について説明するための模式図であり、図6は、本実施の形態における永久磁石ペアのサイズ、位置関係等について説明するための模式図である。
【0030】
図5に示されるように、被駆動軸側伝達部123(図5には不図示)側の磁石ホルダ(例えば図4に示した磁石ホルダ142a等)に挿着される永久磁石143a〜143fは、後述する曲率半径(R)を有する板状磁石である。一方、駆動軸110側の永久磁石141a〜141fは、係着穴1412a〜1412fに、前記したように、例えばアルミ管(図4参照)を介して駆動軸側磁石装着部122に係着される。磁石141a〜141f、磁石143a〜143fは、それぞれ、円周上略等間隔となるように、各々対向して配される。図6は、本実施の形態の永久磁石ペアの一つ(例えば141a及び143a)を例として、そのサイズ、形状、位置関係等について、より詳細に説明するための正面図(図6(a))及び側面図(図6(b))である。
【0031】
本実施の形態では、永久磁石141a、及び143aは、いずれもNd(ネオジム)、Fe(鉄)、B(ホウ素)、及びDy(ジスプロシウム)からなる磁石であって、その化学成分(重量%)は、Nd27〜30%、Fe60〜70%、B1〜2%、Dy2〜8%である磁石を用いた。残留磁束密度Br=1320〜1380mT、磁石141a及び磁石143aの両方を合わせた体積は4522mm3、磁石141aと磁石143aとの間の距離は、本実施の形態における有効面積433mm2の全域にわたって4mmである。磁石143a外周面の曲率半径R=26(図6(b)参照)、磁石143a内周面の曲率半径R=23(図6(b)参照)としている。一方、磁石141aにおいて、磁石143aと対向する側の曲率半径R=19(図6(b)参照)としており、両磁石の有効面積の全域にわたって両磁石間の距離を4mmと一定にしている。両磁石間に所定の距離(例えば4mm)を置くことにより、伝達可能トルクを超えた場合に、トルクリミッタとして円滑に動作する。第2の実施の形態でも同様であるが、磁気引力発生面を円弧状とすることにより、トルクを有効に伝達すること、相互磁石面積を大きくすることが可能となる。残留磁束密度がBr=1300mT以上のネオジム磁石を用いることで、伝達可能トルクを大きく保ちつつ、磁石を小型軽量とすることができる。
【0032】
さらに、本実施の形態における永久磁石ペアの極性は、図6(a)に示される如く、ホルダ側の磁石143aのN極が、駆動軸側の磁石141aのS極と対向しており、磁石143aのS極が、磁石141aのN極と対向する構成としている。この点が本件発明の特徴であり、このような磁極の配置により、両磁石のN極、S極からの磁力を有効に活用することが可能となる。
【0033】
図6(b)に示されるように、磁石141aには、前記したアルミ管が挿通する挿通孔1411aが空けられており、挿通孔1411aの下部、挿通孔1411aの挿通方向に直交する方向の磁石141aの幅は17mmである。図6(a)に示されるように、挿通孔1411a(図6(a)には不図示)の挿通方向に平行な方向の磁石141aの幅は12mmであり、磁石141aに対向する磁石143aの幅は18mmとした。以上に詳細に説明した一具体的構成の永久磁石ペアを、図1等に示されるように6箇所設けた場合、伝達可能なトルクは4.5Nmであった。
【0034】
ちなみに、伝達可能なトルクは、駆動軸、被駆動軸の双方にサーボモータ(駆動軸側モータ及び被駆動軸側モータ)を取り付けて、測定した。当該サーボモータの回転速度及びトルクは、サーボアンプにより制御され、サーボアンプからRS232Cを介して直接PCに記録されたデータを利用して伝達可能なトルクを求めた。
【0035】
(実施の形態2)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態の回転力伝達装置200の斜視図、図8は側面から見た図であり、図9は、駆動軸210の側から見た平面図である。
【0036】
本実施の形態の回転力伝達装置200では、永久磁石のペアが12ペアとなっており、また、永久磁石の形状に工夫を凝らした。それらにより、第1の実施の形態の回転力伝達装置100と比較しても、より大きいトルク(例えば250ccクラスのバイクを動かす際に必要とされるトルクである20Nm超程度)を伝達することが可能となったものである。
【0037】
おおまかな構成は第1の実施の形態とほぼ同様であり、駆動側軸210、被駆動側軸230の間に回転力伝達部220が設けられている。図7の斜視図、図9の平面図に示されるように、永久磁石取り付け用のネジ(224a〜224lの12個)、及びナット(225a〜225lの12個)が、円周上略等間隔に配されており、図7に示される222a等の部分に、12箇所の永久磁石ペアが配されている。
【0038】
図10は、回転力伝達装置200において、駆動側軸210及び被駆動側軸230の軸方向中央を含む一断面を示す模式図である。より具体的には、図9におけるB−B線断面を矢印B方向から見た端面を示す図である。端面であるから、図9におけるB−B線よりも奥側については、図示を省略している。
【0039】
駆動側軸210には駆動側伝達板221、被駆動側軸230には被駆動側伝達板223が配され、両者の間に回転力伝達部220が設けられる。本実施の形態では、駆動側伝達板221、被駆動側伝達板223の直径は120mmであるが、この大きさに限定されないことは明らかである。回転力伝達部220に、磁石同士は非接触である永久磁石ペア(本実施の形態では、円周上略等間隔に12ペア)が配されている。本実施の形態では、被駆動側軸の磁石を嵌着する磁石ホルダが、ボルト224a〜224l、ナット225a〜225lにより挟設される構成となっている。
【0040】
前記したように、磁石ホルダ(例えば、図10中の226d、226j)に挿着される永久磁石(例えば、図10中227d、227j)と、駆動側軸210と直結した磁石取り付け用部材(図10中での213d、213j)を介して駆動軸側に装着される永久磁石(例えば図10中での214d、214j)とが、各々対向して配される。図10には図示されていない他の磁石も同様である。図11は、本実施の形態の永久磁石ペアの一つ(例えば214a及227a)を例として、そのサイズ、形状、位置関係等について、より詳細に説明するための正面図(図11(a))及び側面図(図11(b))である。
【0041】
永久磁石214a、及び227aは、第1の実施の形態と同様、いずれもNd、Fe、B、Dyからなるネオジム磁石であって、残留磁束密度Br=1320〜1380mT、磁石214a及び磁石227a両方(一つのペア)を合わせた体積は4372mm3、磁石214aと磁石227aとの間の距離は、有効面積576mm2の全域にわたって2mmである。即ち、磁石227a外周上下方向の曲率半径R=15(図11(b)参照)、磁石214a外周部上下方向の曲率半径R=10(図11(b)参照)とし、磁石227aの厚さを3mmとした。
【0042】
さらに、本実施の形態における永久磁石ペアの極性は、図11(a)に示される如く、ホルダ側の磁石227aのN極が、駆動側軸210側の磁石214aのS極と対向し、ホルダ側の磁石227aのS極が、駆動側軸210側の磁石214aのN極と対向する構成としている。このような磁極の配置により、第1の実施の形態と同様、両磁石のN極、S極からの磁力が、有効に活用される。ちなみに、以上に詳細に説明した一具体的構成(永久磁石ペア12箇所)の場合、伝達可能なトルクは22.0Nmと測定された。
【0043】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態と比較し、約5倍のトルクが伝達可能となった理由として、永久磁石ペアの数が2倍となったこと、磁石形状の工夫により有効面積が増加したこと、磁石間の距離を2mmと短くしたことに加え、以下のような理由が考えられた。
【0044】
図12は、上記第2の実施の形態の磁極を示す模式図である。上記に説明したように、駆動軸側のN極と被駆動側のS極、駆動軸側のS極と被駆動側のN極が、それぞれ対向する関係にある(図12(a)参照)。ここで、第2の実施の形態のように、隣接する永久磁石ペアとの距離が近づくと(図9に示されるように、隣接する磁石ペアとの間の角度は30°であり、図11(a)に示されるように、円周方向の磁石の幅は10mm、駆動側及び被駆動側円板の直径120mm、被駆動側のN極と、隣接する駆動側のN極との間に斥力が働き、駆動側及び被駆動側の間の磁力線Xが、駆動側及び被駆動側の両磁石間に集中されることになると考えられる(図12(b)参照)。
【0045】
この斥力により、被駆動側のN極と、駆動側S極との間の磁束が有効領域範囲外に広がってしまうことが抑止され、有効領域範囲内の磁束密度が大きくなり、これによって、伝達可能なトルクを大きくする方向に働いていると考えられる。この点は、第1の実施の形態で図示したような6対の磁石ペアの場合も同様であり、例えば有限要素法を用いた三次元静電場解析によっても、磁束の状態の変化を検出することができた。
【0046】
以上に説明したように、本実施の形態の回転力伝達装置により、例えば20Nm超といった大きなトルクを伝達することができることが明らかとなった。なお、上記したように、特に特徴的な点は、駆動側と被駆動側との磁極の配置にあり、磁石のサイズ、形状、磁石間の距離などについては、上記実施の形態に説明した例以外に、適宜設計することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば、駆動側軸から被駆動側軸へと回転力を伝達する回転力伝達装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100、200 回転力伝達装置
110、210 駆動側軸
120、220 回転力伝達部
130、230 被駆動側軸
141a〜141f 永久磁石
142a〜142f 磁石ホルダ
143a〜143f 永久磁石
214d、214j 永久磁石
226d、226j 磁石ホルダ
227d、227j 永久磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力が付与される第1の駆動軸の側と、前記回転力が伝達される第2の被駆動軸の側との各々に磁石が取り付けられ、両磁石間に形成される磁気回路により、前記第1及び第2の軸間で回転力を伝達する回転力伝達装置であって、
前記第1の軸の側の磁石のN極と前記第2の軸の側の磁石のS極とが対向し、前記第1の軸の側の磁石のS極と前記第2の軸の側の磁石のN極とが対向するように配されている
ことを特徴とする回転力伝達装置。
【請求項2】
前記第1の軸の側、第2の軸の側に、それぞれ複数の磁石が取り付けられ、それぞれが対向するように配されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転力伝達装置。
【請求項3】
前記第1の軸の側、第2の軸の側とも、複数の磁石の軸中心からの距離が略等しい
ことを特徴とする請求項2に記載の回転力伝達装置。
【請求項4】
前記第1の軸の側の複数の磁石、前記第2の軸の側の複数の磁石のいずれも、S磁からN極への向きが円周方向で同じ向きとなるように配置されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の回転力伝達装置。
【請求項5】
前記第1の軸の側の磁石と、前記第2の軸の側の磁石との間の磁気引力発生面が円弧状となっている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項6】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石の少なくとも一方は着脱自在に構成されている
ことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項7】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石との間には、伝達可能トルクを超えた場合に両軸の間で空回りが生じるように隙間を空けて配されている
ことを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項8】
前記複数の磁石の数が、前記第1の軸の側、第2の軸の側のいずれも、4個以上である
ことを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項9】
前記磁石は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、)Dy(ジスプロシウム)からなる永久磁石であって、残留磁束密度Br=1300mT以上である
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項10】
前記第1の軸に取り付けられた磁石と、前記第2の軸に取り付けられた磁石のいずれかとの間で、隣接して配された磁石との間に斥力が働く
ことを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項1】
回転力が付与される第1の駆動軸の側と、前記回転力が伝達される第2の被駆動軸の側との各々に磁石が取り付けられ、両磁石間に形成される磁気回路により、前記第1及び第2の軸間で回転力を伝達する回転力伝達装置であって、
前記第1の軸の側の磁石のN極と前記第2の軸の側の磁石のS極とが対向し、前記第1の軸の側の磁石のS極と前記第2の軸の側の磁石のN極とが対向するように配されている
ことを特徴とする回転力伝達装置。
【請求項2】
前記第1の軸の側、第2の軸の側に、それぞれ複数の磁石が取り付けられ、それぞれが対向するように配されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転力伝達装置。
【請求項3】
前記第1の軸の側、第2の軸の側とも、複数の磁石の軸中心からの距離が略等しい
ことを特徴とする請求項2に記載の回転力伝達装置。
【請求項4】
前記第1の軸の側の複数の磁石、前記第2の軸の側の複数の磁石のいずれも、S磁からN極への向きが円周方向で同じ向きとなるように配置されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の回転力伝達装置。
【請求項5】
前記第1の軸の側の磁石と、前記第2の軸の側の磁石との間の磁気引力発生面が円弧状となっている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項6】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石の少なくとも一方は着脱自在に構成されている
ことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項7】
前記第1の軸の側の磁石、前記第2の軸の側の磁石との間には、伝達可能トルクを超えた場合に両軸の間で空回りが生じるように隙間を空けて配されている
ことを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項8】
前記複数の磁石の数が、前記第1の軸の側、第2の軸の側のいずれも、4個以上である
ことを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項9】
前記磁石は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、)Dy(ジスプロシウム)からなる永久磁石であって、残留磁束密度Br=1300mT以上である
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【請求項10】
前記第1の軸に取り付けられた磁石と、前記第2の軸に取り付けられた磁石のいずれかとの間で、隣接して配された磁石との間に斥力が働く
ことを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の回転力伝達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−31915(P2012−31915A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170940(P2010−170940)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「中国四国支部第48期総会・講演会 講演論文集 No.105−1」、社団法人 日本機械学会中国四国支部、平成22年2月24日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「中国四国支部第48期総会・講演会 講演論文集 No.105−1」、社団法人 日本機械学会中国四国支部、平成22年2月24日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
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