説明

回転可能な軸受部材を有する寛骨臼カップ

【課題】寛骨臼内に配置されるように適合された部分球カップを備えている人工股関節移植システムを提供する。
【解決手段】人工股関節移植システムは、ステム部、ステム部に連結されたネック部、及びネック部に連結された部分球ヘッドを有する人工大腿骨部品を備えている。ハウジング12を有する寛骨臼部品が設けられている。ハウジングは、部分球外面18及び部分球内側軸受面20を有する。面20は、中心21を有している。ハウジング12は周方向リム22を備えており、リム22は領域24を備えている。領域24は、半径方向内方に延在しており、中心29を有する円開口28を画成する先端25を有している。ランプ250は、軸80に対して狭角を成しており、ランプ252は、軸81に対して狭角を成している。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、寛骨臼内に配置されるように適合された部分球カップを備えている人工股関節移植システムであって、前記カップが、大腿骨内に配置される人工ステムに取付け可能な部分球ボールヘッドを受け入れる部分球内側軸受面を有しており、前記カップの内側軸受面が、ボールヘッドに対して180°を超える角度にわたって延在している、人工股関節移植システムに関する。この種のカップとして、例えば、超高分子量ポリエチレンのような合成プラスチック材料又は金属から作製された単一軸受要素からなるものが知られている。内側軸受面がインサート上に形成されることもある。インサートは、合成プラスチック材料、セラミック、又は金属のいずれから作製されてもよく、外ハウジングに支持されるようになっている。外ハウジングが、共に用いられる寛骨臼に係合し、例えば、セメント、又は爪又はネジのような機械的手段によって、適所に保持されるようになっている。このカップは、一般的にはステム、ネック、及びボールヘッドを備える大腿骨部品を大腿骨内に移植する全股関節置換術に関連して用いられている。
【0002】
カップの他の周知の構成として、内側軸受面は、寛骨臼に係合する外側裏当て材と異なる材料から作製された内側ライナー又はインサート上に設けられることがある。複式(Dual)可動カップ又はバイポーラカップは、一般的に、部分球ボールヘッドを受け入れる内側軸受を備えており、内側軸受自体は、部分球ハウジング内に回転可能に取り付けられている。部分球ハウジングは、寛骨臼に係合するための外面及び内側軸受面を有している。軸受外側面は、寛骨臼に係合する外ハウジングの内側軸受面に係合するようになっている。この種のカップは、より大きな角運動を可能にする。このようなカップは、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
これらの構造は、いずれも、より具体的には、複式可動カップは、ボールヘッドを内側軸受面に保持するための手段を有していると有利である。ボールヘッドを内側軸受面の内側に保持するいくつかの方法がある。例えば、特許文献1では、内側軸受の円錐状テーパ面に着座するリングが用いられている。第2の構成では、ヘッドに2つの平面を設け、該ヘッドをカップに挿入する前に90°回転させ、次いで、ヘッドを再び90°逆に回転させている。この種の構造の欠点は、特殊なヘッドが必要であること、及びヘッドの頂部を切り落していることによって、摩耗が生じるおそれがあることにある。この種のシステムは、特許文献3及び特許文献4に開示されている。
【0004】
寛骨臼内に配置されるように適合されていると共に(大腿骨内に配置されるステムに取付け可能な部分球ボールヘッドを受け入れる)部分球内側軸受面を有している部分球カップ内に、ボールを保持するための他の方法は、カップ及びボールのそれぞれに設けた平面を用いる方法である。カップの部分球内側軸受面は、180°を超える角度で延在しており、この部分球内側軸受面の入口に隣接する部分に、部分球内側軸受面の中心からある半径にある実質的に平坦な面が形成されている。この半径は、カップの残りの半径よりも小さくなっており、ボールヘッドは、その部分球面上に協働作用する実質的に平坦な面を有している。ボールヘッドには、ボールヘッドと共に用いられるステムを受け入れ、かつ保持する構造が設けられている。該ボールヘッドは、ステムに取り付けられる前に、カップ内に配置され、かつ回転されることが可能であり、これによって、カップに保持されることになる。部分球内側軸受面及びボールヘッドの部分球軸受面のそれぞれの寸法及び形状は、回転中に、ヘッドを平行移動させ、これによって、両側に三日月状の保持領域が生じるようにヘッドを変位させるように、構成されている。
【0005】
このような構造は特許文献5に開示されている。この構造の利点は、標準的な大きさのボールヘッドを用いることができることである。カップへの挿入は、軸受面に対するボールヘッドの操作が正確になるように、内側軸受面の平面の寸法を決めることによって、厳密に制御することが可能である。
【0006】
好ましい構造では、挿入時にボールヘッドの平面と実質的に平行であるカップの入口の横断軸は、カップの内側軸受面の横断面からずれている。このずれは、10mm未満、例えば、最大5mmとすることができる。
【0007】
本発明は、どのような適切な材料、例えば、合成プラスチック材料、金属、又はセラミックから作製されるカップ及びボールに適用されてもよい。必要ならば、例えば、1mmの任意の部分的ずれ(亜脱臼)が見込まれるようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,798,610号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0143341号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2,785,525号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0171817号明細書
【特許文献5】米国特許第7,520,902号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、内側軸受面が内側軸受要素上に設けられたカップ、又は内側軸受要素が(裏当て材内の他の軸受面内でセメント固定された又はセメント固定されていないカップに対して移動可能である)インサートとして形成された複式可動カップ又はバイポーラカップに適用可能である。本発明の人工股関節移植システムは、ステム部、ステム部に連結されたネック部、及びネック部に連結された部分球ヘッドを有する人工大腿骨部品を備えている。ハウジングを有する寛骨部品が設けられている。ハウジングは、周方向リム部を備える開端を有する部分球内側軸受面を有している。リム部は、周方向において半径方向内方に延在しているランプ又は内向きテーパ領域を有している。軸受要素が、ハウジング内に受け入れられており、該軸受要素は、ハウジングの部分球内側軸受面に係合している第1の部分球外面軸受領域を有している。軸受要素は、大腿骨部品のネックに取り付けられたヘッドを受け入れるための開端を有する部分球内側軸受面領域を有している。軸受要素の第1の部分球外面領域は、内面開端の中心軸の周りに延在している。中心軸は、軸受要素の第1の部分球外面軸受領域の極及び回転中心と交わっている。軸受要素は、開端の近傍から極に向かって延在している第2の部分球外面領域を有している。第1の外面領域は、軸受要素の部分球内面の中心から第2の部分球面領域よりも半径方向にさらに延在している。軸受要素の中心点は、第1及び第2の部分球外面領域及び部分球内面領域の回転中心であるとよい。この中心点は極軸に沿って位置している。
【0010】
軸受要素の第1の部分球外面領域は、第1の部分球面と第2の外面との間にて内方に向かって徐々に傾斜する方向に延在する周方向延在接触面を画成するように、極から開端に延在している。周方向接触面は、好ましくは、第1の部分球外面と第2の部分球外面との周りに360°にわたって延在している。周方向接触面は、互いに間隙を空けて分離された2つ以上の区域に分断されていてもよい。周方向接触面は、軸受要素上にて極と赤道との中間に配置されており、赤道は、第1の部分球外面の回転中心を通って極軸と直交している。接触面は、内側軸受面の極軸に対して狭角を成すと共に第1の部分球外面の中心軸に対して狭角を成すように傾斜させることができる。周方向接触面は、軸受要素がハウジングに対して回転したとき、大腿骨部品のネックがハウジングの内方に延在している周方向リム部よりも前に軸受要素の開端に接触するような、極と赤道との中間の位置に配置されている。リムの内方に延在している周方向ランプ又はテーパ領域は、軸受要素の第1の部分球外面部の外径よりも小さい内径を有しており、前記内径は、ハウジング内への軸受要素の挿入時にわずかな締め代をもたらすように、第2の部分球外面部の赤道における軸受要素の外径よりも小さくなっている。ハウジングの極領域の方を向いているリムのテーパ面又はランプ面は、軸受要素の接触面と適合する傾斜面を有している。周方向接触面における第1の部分球外面部の外径は、リムと接触するとき、ハウジング又はシェルの内方に延在しているフランジ部の内径よりも小さい直径になるように、内方に変形可能になっている。周方向接触面は、赤道から約40°から45°の緯度に沿って延在しているとよい。ハウジング及び/又はシェルは、寛骨臼に接触するシェル内に取り付けられるようになっていてもよい。ハウジングは、金属であってもよく、寛骨臼内にセメント固定されるか又はネジによって寛骨臼に取り付けられるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】回転可能な軸受要素が内部に取り付けられたハウジングを有する寛骨臼カップの分解図である。
【図2】図1の回転可能な軸受要素が組み込まれている寛骨臼カップハウジングを示す図である。
【図2A】図1及び図2のハウジングの底面図である。
【図3】十分に回転された位置における軸受要素内に取り付けられた大腿骨部品のヘッド及びネックを備えている図2の組み立てられたカップの断面図である。
【図4】係止用割リングを備えている、中心位置における図1−図3の寛骨臼カップ及び回転可能な軸受要素の組立図である。
【図5A】外側シェルと軸受要素を受け入れるためにシェルに固定された内ハウジングとを備える2部品裏当て材を有する代替的実施形態の分解図である。
【図5B】図5Aのシェル、ハウジング、及び軸受要素を有する3部品カップの組立図である。
【図5C】図5A及び図5Bの組み立てられた代替的3部品アセンブリの断面図である。
【図6】軸受要素の第1の部分球部分とハウジングのリムの内方に延在するフランジとの間の挿入隙間を示す図である。
【図7】フランジの先端と軸受要素の第2の部分球外面の赤道領域との間の挿入中のわずかな締め代を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、10で総称的に示された2部品寛骨臼カップの分解図が示されている。寛骨臼カップ10は、外ハウジング12及び軸受要素14を有している。ハウジング12は、骨ネジ孔16を有するものとして示されており、軸受要素14は、2つの部分球面区域30,32を有するものとして示されている。図2は、組み立てられた部品12,14を示している。図2Aは、図1に示されているハウジングの底面図である。ハウジングは、中心29を有する円開口28を有している。図2Aに示されているように、ハウジング12は、外ハウジング12を寛骨臼に保持するネジ(図示せず)を受け入れるための複数の貫通孔16を備えているとよい。寛骨臼への圧入が用いられるならば、孔16は、なくてもよい。軸受要素14は、一体品であり、好ましくは、超高分子量ポリエチレンから作製されているとよいが、セラミックから作製されていてもよい。
【0013】
図3を参照すると、部分球外面18及び部分球内側軸受面20を有するハウジング12を示した図1の寛骨臼カップを組立てた状態の断面図が示されている。面20は、中心21を有している。ハウジング12は周方向リム22を備えており、該リム22は領域24を備えている。領域24は、半径方向内方に延在しており、中心29を有する円開口28を画成する先端25を有している。ランプ250は、軸80に対して狭角を成しており、ランプ252は、軸81に対して狭角を成している。
【0014】
図3及び図4を参照すると、傾斜したランプ250,252を有する実施形態が示されている。ランプ250は、ハウジングのリム領域24の内面に周方向に形成されている。ランプ252、すなわち、斜面252は、軸受要素14上において領域30,32間に形成されている。ランプの角度は、数°(2°−3°)の挟角であってもよいし、又はこれよりも大きく、例えば、10°から30°の間であってもよい。軸受要素及びハウジングの両方におけるランプが狭角になっていることによって、面間の係合は、十分な面間の係合が得られるまで、力の増大と共に、徐々に大きくなる。上方を向いたランプ面250は軸受要素14上の接触ランプ面250の幾何学的形状と相補的であるべきである。軸受要素14は、開口28内に取り付けられた状態で示されている。この軸受要素14は、ハウジング12の内側軸受面20に係合している第1の部分球軸受面領域30を有している。第1の部分球面領域30は、軸受面領域20上において任意の方向に回転することができ、31で総称的に示されている大腿骨部品の運動の結果として、ハウジング12内において反時計方向に回転されている状態で示されている。
【0015】
軸受要素14は、第2の部分球面領域32をさらに備えている。第2の部分球面領域32は、部分球軸受領域30から延在しているが、より小さい半径を有しており、面20から半径方向内方に離間している。従って、面32と面20との間に接触が生じることはない。好ましい実施形態では、部分球軸受面30,32は、同心であり、同一の中心を有しており、(図3に示されているような)ランプ、すなわち、これらの面30,32間において軸受要素14の外面の周りを360°にわたって延在している傾斜面252によって、互いに接続されている。図3に示されている実施形態では、接触面は、傾斜しているランプ250の形態にあってもよい。また、第1の部分軸受面30を、例えば、狭幅溝によって分離された2つ以上の区分に形成し、これによって、連続的な接触面30を断続させることも可能である。
【0016】
軸受要素14は、大腿骨部品31のヘッド38の外側軸受面37を受け入れるように設計された内側軸受面36を備えている。部分球軸受面36は、開端39を有しており、該開端39を通して、全関節が組み立てられるときにヘッド38が挿入されるようになっている。大腿骨部品のヘッド38は、一体構造として、又は第2のテーパの付いた雄/雌相互接続部に一体形成されるか若しくは接続されるテーパの付いた雄/雌相互接続部を介して、ネック部42に連結され、これによって、髄内ステム44を形成している。このようなモジュール式大腿骨部品の設計は、よく知られている。ステム44は、大腿骨の骨髄管内に受け入れられるように意図されているが、患者が骨腫瘍を患っている場合には、ステム44が大腿骨近位部の全体を形成するようになっていてもよい。加えて、大腿骨部品31は、トライアル大腿骨部品であってもよく、カップ10は、トライアル寛骨臼カップであってもよい。典型的には、ヘッド38は、軸受要素14の部分球軸受面36に嵌め込まれ、任意の方向に回転可能になっている。
【0017】
図5A−図5Cを参照すると、200で総称的に示されている回転可能な軸受を有する代替的な3部品寛骨臼カップが示されている。寛骨臼カップ200は、寛骨臼に接触するための外面211を有する外シェル210を備えている。シェル210は、その極にネジ孔209を備えている。別体のハウジング212が、シェル210内に取り付けられ、ネジ213をハウジング212の孔215を通してシェル210のネジ孔209に挿入し、テーパ部217をシェル/ハウジング組合せの開端214の近くにかみ合わせることによって、シェル210内に保持される。軸受インサート又は軸受要素219が、ハウジング212内に取り付けられるようになっている。ハウジング212は、ネジ213を受け入れるための孔215及びリム222の周囲に外側雄テーパ面217を設けていることを除けば、ハウジング12と同じである。軸受要素219は、あらゆる点で、前述した軸受要素14と同じである。
【0018】
寛骨臼カップ200の利点は、シェル210の孔216を通るネジの頭が、ハウジング212の外面226によって覆われることである。いったん組み立てられると、シェル210及びハウジング212は、互いに対して回転することができず、従って、同軸の極軸を有することになる。前述したように、ネジ孔209,215は、極軸を中心として配置されている。
【0019】
図3及び図4に示されているように、ハウジング12は、その極を通る軸(極軸)80を有している。この軸80は、ハウジングの部分球内面20の中心21を通る赤道と直交しており、この赤道は、寛骨臼の開口を横切る面と平行である。好ましい実施形態では、ハウジングの赤道面は、ハウジング12の開口28によって画成された面とも平行であり、極軸80は、開口28の中心29を通っている。
【0020】
また、軸受要素の部分球面部30は極軸81を有している、極軸81は、軸受要素14の外面30,32の中心35を通る赤道面83と直交している。この赤道面は、軸受インサート14の開端39の面86と平行になっているとよい。好ましい実施形態では、極軸81は、軸80,81が図4に示されているよう合されたとき、開口39の面とも直交している。もし部分球面がハウジング12及び/又は軸受14の片側において他の側よりも大きい角度で拡がると、極軸80,81に対するハウジング12及び軸受要素14のそれぞれの開口面は、それらの間に角度が付けられることになる(例えば、米国特許第5,108,455号明細書に記載されている寛骨臼カップを参照されたい)。
【0021】
図3に示されているように、部分球ヘッド38は、中心35を通る赤道と直交する軸84を有している。好ましい実施形態では、軸84は、ネック42の軸と同軸である。
【0022】
図4を参照すると、軸80,81を合わせて、軸受14が部分的にハウジング12内に挿入されている状態が示されている。図示されている実施形態では、軸受要素14の内面36は、外側に延在している凹部52を備えている。凹部52は、凹部52の外壁56に向かって横方向(外方)に延在している上端壁54を有している。外壁56は、(ヘッド38が挿入される)開口39に向かって下方かつ内方に傾斜している。外壁54は、下端壁59で終端している。下端壁59は、横方向(内方に)に延在しており、軸受要素14の開口39の一部を形成している周方向縁壁59aと連接している。壁59aは、開口39の面86から内方に離間しており、面取り面90によって、面86に接続されている。
【0023】
米国特許第4,798,610号明細書に示されているように、割リング60は、リング60を半径方向に拡張可能及び収縮可能とする割部分62を有している。割リング60は、好ましくは、軸受要素14を作製するのに用いられたのと同様の超高分子量ポリエチレンから作製されている。なお、この特許は、参照することによって、本明細書に含まれるものとする。リング60は、上端壁64並びに下方及び内方に傾斜している外壁66を備えている。外壁66の傾斜は、凹部52の外壁56に嵌合するために、該外壁56の傾斜と同じになっている。組立時に、ヘッド38は、軸受要素14の開口39内に軸方向に挿入され、壁59aを超え、リング60を通過するようになっており、これによって、リング60は、凹部52内の上側位置に向かって軸方向(上方)に持ち上げられ、拡張することになる。いったんヘッド38の赤道又は最大直径がリング60内に押し込まれ、軸受要素14の部分球軸受面36に係合したなら、リング60は収縮する。ボールが部分球内面36に接触すると、リング60は、収縮し、傾斜壁56,66に沿って下方にすべり、ヘッド38を軸受要素14内に捕捉することになる。米国特許第7,455,694号明細書に示されているような、ボールを軸受要素に保持する他の方法が用いられてもよい。この特許は、参照することによって、本明細書に含まれるものとする。
【0024】
図6及び図7を参照すると、ポリエチレン製軸受要素14をハウジング12内に挿入するための方法の詳細が示されている。この方法は、図3及び図4又は図5A−図5Cにそれぞれ示されている2部品設計又は3部品設計に同じように適用されるものである。領域24の先端25によって形成された開口28の直径は、軸受要素14をハウジング12内に部分的に挿入させることを可能にする極めて小さい隙間を生じさせるために、(第1の球面部30と第2の球面部32との間で軸受要素14の周方向に延在している)テーパの付いた接触面又はランプ接触面252の先端89が開口の直径よりもいくらか小さい直径を有するように設計されている。第2の球面部32の最大直径、すなわち、赤道における直径は、組立中に、インサート14がハウジング12内に完全に挿入される直前に、「スナップ(snap)」嵌めが生じるように、開口の直径に対してわずかな締め代を生じる直径を有している。
【0025】
好ましい実施形態では、第1の部分球面領域30、第2の部分球面領域32、及び部分内面36は、全て同心であり、従って、同一の中心35を有しているが、互いに異なる半径を有している。従って、中心35を通って軸受の赤道面83と直交する軸80,81は、前述したように、内側部分球面36及び第1の部分球面30とそれらの球面の極において交差することになる。
【0026】
本発明の一実施形態では、第1の部分球面は、極軸81から約40°から45°の緯度まで延在しており、接触面34も、面30,32間において同様の角度で延在している。
【0027】
使用中に、軸受要素14は、ハウジング12内の面30上で回転し、ヘッド38及びネック42は、軸受要素14内の面36上で回転することになる。ネック42は、軸受要素14に接触するとき、軸受要素14の開口39の周りに延在している周方向面取り面90に係合する。ネック42が面90に係合すると、軸受要素14は、ハウジング12内で回転することになる。この回転は、接触面252とリム領域24の上面250との係合によって制限される。この時点で、この回転方向において、大腿骨部品40のネック42に対する相対的な回転を行うことができない。接触面252は、軸受要素40の回転がフランジ24の先端25からネック42の表面を離間させている点で停止されるような、ハウジング12の極80に対する寛容域に配置されている。従って、ネック42は、常に、ハウジング12の金属ではなく、超高分子量ポリエチレン製軸受け要素14と係合することになる。好ましくは、接触面252の始点は、軸受要素14の極軸81から45°の緯度に沿って周方向に延在している。接触面は、面30,32間においてどのような角度で開始され、狭角で内方に延在していてもよい。前述したように、接触面250,252は、軸80に対して斜角を成すように配置されており、急激な負荷を受けないストッパ、すなわち、ハウジング12に対する軸受要素の回転運動が追加されるごとに嵌合部間の締付けが徐々に増大するようなより鋭角のストッパをもたらすことができる。
【0028】
本明細書では、特定の実施形態を参照して、本発明を説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示にすぎないことを理解されたい。従って、添付の請求項に記載されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的実施形態に対する多くの修正形態がなされてもよいし、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステム部、前記ステム部に連結されたネック部、及び前記ネック部に連結された部分球ヘッドを有している人工大腿骨部品と、
寛骨臼部品と
を備え、
前記寛骨臼部品が、
周方向リム部を有する開端を含む部分球内側軸受面を備えたハウジングであって、前記リム部が、周方向にて半径方向内方に傾斜したランプ部を有している、ハウジングと、
軸受要素と
を備え、
前記軸受要素が、前記ハウジングの部分球内側軸受面に係合する第1の部分球外側軸受面領域を有し、
前記軸受要素が、前記大腿骨部品のヘッドを受け入れるための開端を含む部分球内側軸受面領域を有し、
前記軸受要素の第1の部分球外面領域が、前記部分球内側軸受面領域の開端の中心軸周りに延在し、
前記中心軸が、前記部分球外面領域の極及び前記第1の部分球外面領域の回転中心と交わっており、
前記軸受要素は、前記開端の近傍から前記極に向かって延在する第2の部分球外面領域を有し、
前記第1の部分球外面領域が、前記軸受要素の部分球内側軸受面領域の中心から、前記第2の部分球外面領域よりもさらに延在し、
前記第1及び第2の部分球外面領域間に形成された傾斜したランプ部が、前記ハウジングの傾斜したランプ部に係合可能になっていることを特徴とする、人工股関節移植システム。
【請求項2】
前記軸受要素の第1の部分球外面領域は、前記第1の部分球面領域と前記第2の外面領域との間に延在する前記傾斜したランプ部の外縁を画成するように、前記極から前記開端に向かって延在していることを特徴とする、請求項1に記載の人工移植システム。
【請求項3】
前記軸受要素の傾斜したランプ部及び前記ハウジングの傾斜したランプ部は、前記第1の部分球外面領域及び前記第2の部分球外面領域の周りに360°にわたって延在していることを特徴とする、請求項2に記載の人工股関節移植システム。
【請求項4】
前記周方向接触面は、前記軸受要素上にて前記極と赤道との中間に配置されており、
前記赤道は、前記第1の部分球外面領域の回転中心を通って前記第1の部分球外面領域の中心軸と直交していることを特徴とする、請求項2に記載の人工股関節移植システム。
【請求項5】
前記周方向接触面は、前記軸受要素が前記ハウジングに対して回転したとき、前記大腿骨部品のネックが前記ハウジングの前記内方に延在している周方向フランジ部よりも前に前記軸受要素の開端に接触するような、前記極と前記赤道との中間の位置に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の人工股関節移植システム。
【請求項6】
前記ハウジングリム部の前記内方に延在している周方向フランジは、前記軸受要素の第1の部分球外面領域の最大外径との間に隙間をもたらすように、該最大外径よりも大きい内径を有し、
該内径が、前記第2の部分球外面領域の赤道における外径との間に締め代をもたらすように、前記外径よりも小さくなっていることを特徴とする、請求項5に記載の人工股関節移植システム。
【請求項7】
前記赤道における前記第2の部分球外面領域の外径は、締め付けられた時に、前記ハウジングの前記内方に延在しているフランジ部の内径よりも小さい直径になるように、内方に変形可能になっていることを特徴とする、請求項6に記載の人工股関節移植システム。
【請求項8】
前記周方向接触面は、前記赤道から40°から45°の緯度に沿って延在していることを特徴とする、請求項5に記載の人工股関節移植システム。
【請求項9】
前記ハウジングは、寛骨臼に接触するシェル内に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の人工股関節移植システム。
【請求項10】
前記ハウジングは、ネジによって前記シェルに取り付けられていることを特徴とする、請求項9に記載の人工股関節移植システム。
【請求項11】
前記軸受要素は、前記第1及び第2の部分球外面領域並びに前記部分球内面領域の回転中心である中心点を有していることを特徴とする、請求項1に記載の人工股関節移植システム。
【請求項12】
ステム部、前記ステム部に連結されたネック部、及び前記ネック部に連結された部分球ヘッドを有している人工大腿骨部品と、
寛骨臼部品と
を備え、
前記寛骨臼部品が、
周方向リム部を有する開端を含む部分球内側軸受面を備えているハウジングであって、前記リム部は、周方向にて半径方向内方に延在しているフランジを有している、ハウジングと、
第1及び第2の部分球外面領域を有している軸受要素と
を備え、
前記第1の部分球外面領域が、前記ハウジングの内側軸受面上で回転可能になっており、かつ中心から延在する第1の半径によって画成されており、
前記第2の部分球外面領域が、前記中心からの第2の半径によって画成されており、
前記第2の半径が前記第1の半径よりも小さくなっていることを特徴とする、人工股関節移植システム。
【請求項13】
前記第1の部分球外面領域の端と前記第2の部分球外面領域との間に、周方向接触面が延在していることを特徴とする、請求項12に記載の人工股関節移植システム。
【請求項14】
前記周方向接触面は、前記第1の部分球外面領域及び前記第2の部分球外面領域の周りに360°にわたって延在していることを特徴とする、請求項13に記載の人工股関節移植システム。
【請求項15】
前記周方向接触面は、前記中心を通って前記ハウジングの開端を横切る面と直交する極軸に対して、40°から45°の間の角度を成す線に沿って延在していることを特徴とする、請求項14に記載の人工股関節移植システム。
【請求項16】
前記軸受要素の第1の部分球外面領域は、前記第1の部分球面領域と前記第2の部分球外面領域との間に延在する周方向接触面の外縁を画成するように、前記極から前記開端に向かって延在していることを特徴とする、請求項12に記載の人工移植システム。
【請求項17】
前記周方向接触面は、前記軸受要素上にて前記極と赤道との中間に配置されており、
前記赤道は、前記第1の部分球外面領域の回転中心を通って前記第1の部分球外面領域の中心軸と直交していることを特徴とする、請求項16に記載の人工股関節移植システム。
【請求項18】
前記周方向接触面は、前記軸受要素が前記ハウジングに対して回転したとき、前記大腿骨部品の前記ネックが前記ハウジングの前記内方に延在している周方向フランジ部よりも前に前記軸受要素の開端に接触するような、前記極と前記赤道との中間の位置に配置されていることを特徴とする、請求項17に記載の人工股関節移植システム。
【請求項19】
前記ハウジングリム部の前記内方に延在している周方向フランジは、前記軸受要素の第1の部分球外面領域の最大外径との間に隙間をもたらすように、該最大外径よりも大きい内径を有し、
該内径が、前記第2の部分球外面領域の赤道における外径との間に締め代をもたらすように、該外径よりも小さくなっていることを特徴とする、請求項18に記載の人工股関節移植システム。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−183304(P2012−183304A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−31756(P2012−31756)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(500239373)ハウメディカ・オステオニクス・コーポレイション (13)
【出願人】(512040901)
【Fターム(参考)】