説明

回転型センサの取付構造

【課題】センサの検出精度を確保しつつ、構造を簡素化して組立を容易にし、かつ、センサに余計な負荷を掛けないようにしてセンサの信頼性を確保できるようにした回転型センサの取付構造を提供する。
【解決手段】リフトアーム7は、リフトアーム7の回転軸心とは異なる部位に2点のスプリングピン25・25を有し、かつ、角度センサ23は、一回転方向にスプリング力を付勢された検出軸23aを有し、検出軸23aにはプレート24が固設され、プレート24は、検出軸23aの回転軸心とは異なる部位に2箇所の切欠き部24a・24aを有し、該2箇所の切欠き部24a・24aを、リフトアーム7の回転軸心とリフトアーム7が有する2点のスプリングピン25・25との関係に距離および角度が等しい配置で形成し、かつ、角度センサ23が、2箇所の切欠き部24a・24aと2点のスプリングピン25・25が接するべく取り付けられる構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する部材の回転角度を検出する角度センサ等の回転型センサを、固定部に取り付けるためのセンサ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に回転型センサとしては角度センサが良く知られている。角度センサは、回転角度を検知する対象部材と連結するための回転軸を備えており、この回転軸が対象部材の回転に応じて共に回転することにより対象部材の回転角度を検知するようにしている。そして、角度センサからは検知した回転角度に応じた信号が出力され、この信号が前記対象部材の回転動作を制御するために用いられている。
従来、このような角度センサの取付構造について、例えば、農用トラクタのリフトアーム角度を検出するための角度センサの取付構造に関する技術が特許文献1に開示されており公知となっている。
従来技術における特許文献1においては、角度を検知する対象部材であるピン(またはピンの軸受となる貫通孔を持つフレーム)の中心軸に合わせたインローを形成し、角度センサのケース(または角度センサ本体)の位置決めを容易に可能とした角度センサの取付構造が開示されている。
また、回転角度の検知対象部材であるリフトアームの回転軸軸心に角度センサの検出軸と略同径の孔を形成し、該孔に前記検出軸を嵌合する角度センサの取付構造や、角度センサの検出軸と、リフトアームの回転軸心の両側にレバーを固設し、リフトアームの回動に応じて共に回動するリフトアーム側のレバーにより、角度センサ側のレバーが押圧されて回動する角度センサの取付構造も一般的に広く用いられており公知となっている。
【特許文献1】特開平9−68420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示される角度センサの取付構造においては、角度センサの検出軸芯と検出対象(ピン)の回転軸心を正確に位置合わせすることができるため、回転角度の検出精度がよいという利点がある反面、検出対象部材等(ピンあるいはピンの軸受フレーム等)に角度センサを取り付けるためのスペースが必要であり、例えば、農用トラクタのようにケースフレームから検出対象部材であるリフトアームが突出している場合には、センサの取付スペースを確保することができなかった。
【0004】
また、回転角度の検知対象部材であるリフトアームの回転軸軸心に角度センサの検出軸と略同径の孔を形成し、該孔に前記検出軸を嵌合する構造においては、ブラケットの取付位置を調整することで角度センサの位置調整が容易にでき、回転角度の検出精度も良いという利点がある反面、角度センサの検出軸と孔を偏心して嵌合させてしまうと、検出軸に余計な負荷を掛けてしまい、角度センサの寿命を短くする可能性があった。
【0005】
また、角度センサの検出軸と、リフトアームの回転軸心の両側にレバーを固設し、リフトアームの回動に応じて共に回動するリフトアーム側のレバーにより、角度センサ側のレバーが押圧されて回動する構造においては、検出軸に余計な負荷を掛けてしまう恐れは無い反面、角度センサの位置決めが困難で、かつ、回転角度の検出精度や角度センサ脱着時の再現性等を確保することが困難であった。
つまり、従来から用いられている角度センサの取付構造では、回転角度の検出精度と、組立作業性や信頼性を両立させることが困難であった。
【0006】
そこで本発明では、このような現状を鑑み、センサの検出精度を確保しつつ、構造を簡素化して組立を容易にし、かつ、センサに余計な負荷を掛けないようにしてセンサの信頼性を確保できるようにした回転型センサの取付構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、回転部材に連結されて該回転部材の回転角度を検出する回転型センサと、前記回転型センサを固定する固定部材と、を備えた回転型センサの取付構造において、前記回転部材は、該回転部材の回転軸心とは異なる部位に2点の突起を有し、前記回転型センサは、一回転方向にスプリング力を付勢された検出軸を有し、該検出軸にはプレートが固設され、該プレートは、前記検出軸の回転軸心とは異なる部位に2箇所の切欠きを有し、該2箇所の切欠きは、前記回転部材に設けた2点の突起と回転軸心との関係において距離および角度が等しくなるように配置し、前記回転型センサが、前記2箇所の切欠きと前記2点の突起が接するべく取り付けられること、を特徴としたものである。
【0009】
請求項2においては、前記2箇所の切欠きを、円弧状に形成したこと、を特徴としたものである。
【0010】
請求項3においては、前記2箇所の切欠きを、V字形に形成したこと、を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、回転角度の検出対象となる回転部材がフレームより突出して配置される場合や、検出対象自体に回転型センサを取り付けるスペースが無い場合であっても、正確に回転型センサを取り付けることができる。また、治具等を使用することなく正確な位置決めを保持したまま回転型センサを脱着することができる。
【0013】
請求項2においては、プレートが接触するピンの形状に合わせて円弧状の切欠きとすることにより、回転型センサの取付位置の調整が正確にできる。また、これにより、組立が容易となるとともに、センサの検出精度を向上することができる。
【0014】
請求項3においては、軸ズレが生じた場合のセンサの検出誤差を小さくすることができる。また、センサの検出精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明をする。
尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は本発明の一実施例を適用する農用トラクタの全体構成を示す側面図、図2は本発明の一実施例に係る角度センサの取付構造を示す側面図、図3は同じく背面図、図4は本発明の第一実施例に係る角度センサの取付構造を示す部分拡大側面図、図5は第一実施例における軸ズレ状態を示す部分拡大側面図、図6は本発明の第二実施例に係る角度センサの取付構造を示す部分拡大側面図、図7は第二実施例における軸ズレ状態を示す部分拡大側面図である。
【0016】
まず始めに、本発明を適用する農用作業車の一例であるトラクタの全体構成について、図1を用いて説明をする。
トラクタ1は、機体の前後部に夫々前輪2・2と後輪3・3とを備え、ミッションケース4の後上部には油圧シリンダケース21を固着して設けている。該油圧シリンダケース21内には、単動式油圧シリンダが設けられており、油圧シリンダケース21の左右両側には該油圧シリンダの伸縮により回動するリフトアーム7・7を配置している。
また、トップリンク10、ロワーリンク11・11からなる3点リンク機構12の後端部には、対地作業機の一例であるロータリ耕耘装置14がリフトアーム7・7にて昇降自在に連結されている。
したがって、上記単動式油圧シリンダを伸縮させることによって、リフトアーム7・7に連結されるロータリ耕耘装置14が上昇又は下降制御されることになる。
リフトアーム7、7とロワーリンク11・11との間にはリフトロッド15と傾倒シリンダ18が介装されている。
【0017】
また、傾倒シリンダ18は制御弁の切換で伸縮され、ロータリ耕耘装置14をローリング方向(左右方向)に傾動させることが可能となり、ロータリ耕耘装置14の水平(姿勢)制御を行うことが可能となる。
また、17は本機と作業機の間の左右相対を検出する手段であり、トラクタ1とロータリ耕耘装置14との間の相対的回動量を検出するストロークセンサで構成して、具体的には直線式のポテンショメータで構成されている。
このストロークセンサ17は、上記傾倒シリンダ18の横側部に配設され、該傾倒シリンダ18の伸縮量を検出することによって、上記相対的回動量を検出するものである。
傾斜センサ16は、本機の任意位置、例えば、油圧シリンダケース21の横側部に取り付けられ、トラクタ1の左右の傾斜角度(即ち対地角度)を検出する対地検出手段の一例である。
【0018】
油圧昇降レバー20はポジション制御用のレバーであって、この油圧昇降レバー20の回動基部には、トラクタ1の後部に連結されているロータリ耕耘装置14の対地高さを設定するためのポテンショメータからなる対地高さ設定器(図示せず)が取り付けられている。一方、リフトアーム7の回動基部には角度センサ23が設けられ、該角度センサ23により対地高さを検知する構成としており、油圧昇降レバー20にて設定された位置にリフトアーム7・7が回動してその設定位置に停止するように構成している。
角度センサ23は回転型のポテンショメータやロータリエンコーダ等により構成され、リフトアーム7の回転角度を検知することにより、ロータリ耕耘装置(作業機)14の高さを検出するようにしている。
以上が、本発明を適用する農用作業車の一例であるトラクタの全体構成についての説明である。
【0019】
次に、本発明の第一実施例に係る角度センサの取付構造について、図2乃至図5を用いて説明をする。
尚、本実施例においては、回転型センサとして角度センサを例にとって説明をするが、本発明を適用するセンサの種類をこれに限定するものではない。
図2または図3に示す如く、角度センサ23は、回転検出軸となる検出軸23aを有し、また、角度センサ23を固設するための固設プレート23bを有している。そして、固設プレート23bに設けられた孔を利用して、ブラケット26に対してビスおよびナットにより締結して固設する構成としている。
検出軸23aの端部軸心上にはプレート24を取り付けるためのメネジ加工が施されており、このメネジを利用して、ボルトを締結することによりプレート24を固設している。
また、検出軸23aは、角度センサ23に内蔵された図示しないスプリングにより一回転方向に常時回転力が付勢されており、検出軸23aが外部から回転方向に拘束力を受けない状態では、一定位置に復帰する構造である。即ち、検出軸23aには、図2における反時計回りの方向に常時スプリング力が付勢されており、リフトアーム7が反時計回りに回動(上昇)する時には、スプリングピン25と当接しながら反時計回りに回動する構成としている。
【0020】
前述したとおり、角度センサ23には、検出対象と接触するプレート24が固設されている。プレート24は検出軸23aを中心軸として2方向に伸びたレバー状の部材であり、それぞれの方向には切欠き部24aを形成している。つまり、プレート24は長板状に構成して、長手方向中央に固定用のボルトを挿入するボルト孔を開口し、その両側のスプリングにより付勢されて回転する方向の前面(前辺)にスプリングピン25の外径に合わせた円弧状の切欠き部24a・24aが形成されている。
一方、検出対象である回転部材となるリフトアーム7には突起となるスプリングピン25が2箇所突設されている。つまり、リフトアーム7の回動基部(リフトアームシャフト7a)側面には、回動中心から所定距離離れた直径方向位置に、円柱状の突起としてスプリングピン25・25が側方に突設されて、該スプリングピン25・25先端部に前記プレート24が当接可能に配設されている。
【0021】
図4に示す如く、前記プレート24に形成された切欠き部24a・24aとスプリングピン25・25は両者が2箇所ともに接するとき、リフトアーム7を固設するリフトアームシャフト7aと検出軸23aの軸心が一致するように寸法を定めている。これにより、切欠き部24a・24aとスプリングピン25・25が接するように位置決めをしてブラケット26をボルト27によりシリンダケース21に固定することにより、取付治具等を用いなくても簡便に角度センサ23の位置決めおよび位置調整をすることができる。該ブラケット26はプレートを後面視クランク状に折り曲げて、一端をシリンダケース21に固定し、他端に角度センサ23を取り付けて、検出軸23aをリフトアームシャフト7a側に突出している。但し、プレートをリフトアームシャフト側に取り付け、ピンを角度センサ23側に取り付ける構成とすることも可能である。
【0022】
また、リフトアームシャフト7aと検出軸23aは、スプリングピン25・25およびプレート24を介して接触しているため、両者7a・23aの間に軸ズレが生じた場合であっても検出軸23aに余計な負荷をかけることが無い。
【0023】
即ち、リフトアームシャフト7aの両側に固設されるリフトアーム7と、本機側のシリンダケース21に固定されてリフトアーム7の回転角度を検出する角度センサ23とを備えた角度センサ23の取付構造において、リフトアーム7は、リフトアーム7の回転軸心とは異なる部位に2点のスプリングピン25・25を有し、角度センサ23は、一回転方向にスプリング力を付勢された検出軸23aを有し、検出軸23aにはプレート24が固設され、プレート24は、検出軸23aの回転軸心とは異なる部位に2箇所の切欠き部24a・24aを有し、該2箇所の切欠き部24a・24aを、リフトアーム7の回転軸心とリフトアーム7に設けた2点のスプリングピン25・25と回転軸心との関係において距離および角度が等しくなるように配置し、角度センサ23が、2箇所の切欠き部24a・24aと2点のスプリングピン25・25が接するべく取り付けられる構造としている。
これにより、回転角度の検出対象となる回転部材がフレームより突出して配置される場合や、検出対象自体に角度センサを取り付けるスペースが無い場合であっても、正確に角度センサを取り付けることができるのである。また、治具等を使用することなく正確な位置決めを保持したまま角度センサを脱着することができるのである。
【0024】
図5に示す如く、リフトアームシャフト7aと検出軸23aに軸ズレが生じた場合、一方のスプリングピン25がプレート24とは接触しない状態となるため、検出軸23aに余計な負荷がかからない構成としている。
尚、図5では説明の便宜上、軸ズレが大きい状態を示したが、前述の如く、切欠き部24a・24aとスプリングピン25・25が適切に接するように取り付けることにより、軸ズレの発生を最小限に抑えることが可能であることから、検出精度が著しく低下するような事態は、目視確認等の日常の点検作業を行うことにより容易に回避することができる。
【0025】
また、第一実施例では、切欠き部24aの形状をスプリングピン25の外形形状に合わせて円弧状に形成しており、これにより、切欠き部24aとスプリングピン25が正確に接するべく軸心調整することが容易となっている。
これにより、角度センサ23とリフトアームシャフト7aは、必要な検出精度を得るべくセンサを略同一位置に容易に固定可能とするとともに、微小な検出軸23aの軸ズレによって、繰り返しの回転運動の結果センサに余計な負荷を掛けることがなく、センサの寿命を損なうことがない。
【0026】
即ち、2箇所の切欠き部24a・24aを、円弧状に形成しており、このように、切欠き部24aをプレートが接触するピンの形状に合わせた円弧状の切欠きとすることにより、角度センサの取付位置の調整が正確にできるのである。
また、これにより、組立が容易となるとともに、角度センサの検出精度を向上することができるのである。
以上が、本発明の第一実施例に係る角度センサの取付構造についての説明である。
【0027】
次に、本発明の第二実施例に係る角度センサの取付構造について、図6または図7を用いて説明をする。
図6に示す如く、第二実施例においては、基本構成においては第一実施例と同様であるが、切欠き部24bの形状をV字型としている点で第一実施例とは異なっている。また、V字が形成する谷間の角度が鈍角となるように切欠き部24bを形成している。
【0028】
図7に示す如く、V字が形成する谷間の角度を鈍角にすることにより、軸ズレ時にスプリングピン25が切欠き部24bと接する位置と、軸ズレが無い状態で接する位置との誤差が第一実施例に比して小さくすることができるため、検出角度誤差を第一実施例に比して、より小さくすることができる。
【0029】
即ち、2箇所の切欠き部24b・24bを、V字形に形成しており、これにより、軸ズレが生じた場合のセンサ検出角度の誤差を第一実施例に比して小さくすることができるのである。また、角度センサの検出精度を第一実施例に比してさらに向上することができるのである。
以上が、本発明の第二実施例に係る角度センサの取付構造についての説明である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を適用する農用トラクタの全体構成を示す側面図。
【図2】本発明の一実施例に係る角度センサの取付構造を示す側面図。
【図3】同じく背面図。
【図4】本発明の第一実施例に係る角度センサの取付構造を示す部分拡大側面図。
【図5】第一実施例における軸ズレ状態を示す部分拡大側面図。
【図6】本発明の第二実施例に係る角度センサの取付構造を示す部分拡大側面図。
【図7】第二実施例における軸ズレ状態を示す部分拡大側面図。
【符号の説明】
【0031】
7 リフトアーム
23 角度センサ
23a 検出軸
24 プレート
24a 切欠き部
25 スプリングピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材に連結されて該回転部材の回転角度を検出する回転型センサと、
前記回転型センサを固定する固定部材と、
を備えた回転型センサの取付構造において、
前記回転部材は、
該回転部材の回転軸心とは異なる部位に2点の突起を有し、
前記回転型センサは、
一回転方向にスプリング力を付勢された検出軸を有し、
該検出軸にはプレートが固設され、
該プレートは、
前記検出軸の回転軸心とは異なる部位に2箇所の切欠きを有し、
該2箇所の切欠きは、
前記回転部材に設けた2点の突起と回転軸心との関係において距離および角度が等しくなるように配置し、
前記回転型センサが、
前記2箇所の切欠きと前記2点の突起が接するべく取り付けられること、
を特徴とする回転型センサの取付構造。
【請求項2】
前記2箇所の切欠きを、
円弧状に形成したこと、
を特徴とする請求項1記載の回転型センサの取付構造。
【請求項3】
前記2箇所の切欠きを、
V字形に形成したこと、
を特徴とする請求項1記載の回転型センサの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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