説明

回転型電子部品

【課題】各種電子機器の入力操作部を構成する際に用いられる回転型電子部品に関し、操作時に、クリック感触と同時に音も発生するように構成したものを提供する。
【解決手段】回転体5のクリック溝10に弾性アーム63が弾接している上面視略リング状の板バネ60の平板部61を、上側部材である上ケース50の下面に固定せずに重ね合わせたのみで前記板バネ60が配されたものとして、弾性アーム63がクリック溝10どうしの間の位置に乗り上げていく際に、平板部61が部分的に上ケース50の下面に対し下方側に離れ、次のクリック溝10に嵌まり込む際に、元の配置状態に戻る平板部61が上ケース50の下面に衝突して衝突音が発生する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部を構成する際に用いられる回転型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の入力操作部には、回転型電子部品が多く搭載されている。以下、従来の回転型電子部品について図面を用いて説明する。
【0003】
図4は従来の回転型電子部品の断面図、図5は同分解斜視図、図6は同要部である板バネと上ケースとの組み合わせ状態を説明する斜視図である。
【0004】
同図において、1は、上方開口の箱型に絶縁樹脂から形成された下ケースで、その凹部の内底面には、インサート成形により複数の弾性接点3が固定されている。
【0005】
5は、円柱状の操作軸6の下方に略円形のフランジ部8を一体に備えた絶縁樹脂製の回転体で、下ケース1の凹部内底面で回転可能に支持されて配され、フランジ部8は凹部内に収容されている。
【0006】
回転体5のフランジ部8の下面には、所定パターンで形成された導電金属板からなる回転接点板15が固定されており、前記複数の弾性接点3は回転接点板15に弾接可能になっている。また、フランジ部8の上面には、放射状にクリック溝10が構成されている。
【0007】
下ケース1の上方には、上ケース20が載せられている。上ケース20は、中央に上方に円筒状で突出した軸受部21を有し、回転体5の操作軸6は、軸受部21内に挿通されてその内周面で回転可能に保持されている。25は、上ケース20の上方から配された金属カバーで、脚部が下ケース1底面にカシメられることにより、上ケース20と下ケース1は一体化されている。
【0008】
30は、上面視略リング状に形成されたクリック感触生成用の板バネで、各々円弧状に伸ばされた弾性アーム31の中央位置に、下方凸形のU字状に曲げ形成されたダボ32を備えている。
【0009】
板バネ30は、弾性アーム31どうしの間が平板部33に形成されており、平板部33には貫通孔34がそれぞれ設けられている。そして、各貫通孔34内に、上ケース20下面に設けられたカシメ突起22を各々挿入させつつ二つの平板部33の上面を上ケース20の下面に重ね合わせ、それぞれのカシメ突起22下端をカシメ込むことにより板バネ30は上ケース20にしっかり固定されている。その固定状態で、ダボ32の下面はクリック溝10に弾接している。
【0010】
以上のように構成された従来の回転型電子部品は、操作軸6を回転操作して回転体5を回転させると、フランジ部8に固定された回転接点板15が複数の弾性接点3に対し相対的に回転移動して所定の出力が得られる。また、それと同時に、板バネ30のダボ32がクリック溝10どうしの間の位置を乗り越え次のクリック溝10に嵌まっていくことにより所定のクリック感触が得られるものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−194008号公報
【特許文献2】特開2006−79966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の回転型電子部品は、操作時にクリック感触が得られて良好に操作できるものであったが、セットメーカからは、さらに使い易いものへの開発要請が根強くあり、特に、クリック感触以外にも操作状態が同時に確認できる仕様のものへの開発要請が高まっていた。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、操作時に、クリック感触と同時に音も発生するように構成した回転型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有する。
【0016】
本発明は、回転可能に配された回転体を回転させることにより所定出力が得られると共に、前記回転体の上面に設けられたクリック溝に、上面視略リング状に形成された板バネの弾性アームが弾接してクリック感触が得られる回転型電子部品であって、前記板バネの弾性アームは、一対の平板部に各々繋がる上面視円弧状で下方に向けて傾斜した形状に形成されており、その弾性アームの少なくとも一つが前記回転体のクリック溝に弾接可能なように、上側部材の下面に前記平板部を固定せずに重ね合わせたのみで前記板バネが配され、かつ、前記弾性アームが隣り合う前記クリック溝どうしの間の位置に乗り上げていく際に、前記弾性アームが撓むと同時に、前記弾性アームからの力の作用で前記平板部は部分的に前記上側部材の下面に対し下方側に離れていく状態となるように、前記弾性アームのバネ力設定や前記平板部の形状設定がされており、前記弾性アームが次のクリック溝に嵌まり込む際に、元の配置状態に戻る前記平板部が前記上側部材の下面に衝突して衝突音が発生する構成としたことを特徴とする回転型電子部品としたものである。
【0017】
これによれば、簡易な構成で、操作時に、クリック感触と同時に音も発生するものが得られるという作用を得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、操作時に、クリック感触と同時に音も発生する構成の回転型電子部品を提供できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態による回転型電子部品の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同要部である板バネと上ケースとの組み合わせ状態を説明する斜視図
【図4】従来の回転型電子部品の断面図
【図5】同分解斜視図
【図6】同要部である板バネと上ケースとの組み合わせ状態を説明する斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明や図示などを省略する。
【0021】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転型電子部品の断面図、図2は同分解斜視図、図3は同要部である板バネと上ケースとの組み合わせ状態を説明する斜視図である。
【0022】
同図に示すように、上方開口の箱型に形成された絶縁樹脂からなる下ケース1の凹部の内底面には、インサート成形によって複数の弾性接点3が固定されている。円柱状の操作軸6を備えた回転体5は、凹部内底面で回転可能に支持されて配され、フランジ部8は下ケース1の凹部内に収容されている。前記複数の弾性接点3は、フランジ部8下面に固定された回転接点板15に弾接可能になっている。
【0023】
下ケース1の上方には、上方に突出した円筒状の軸受部51を中央位置に備えた上ケース50が載せられ、前記操作軸6は前記軸受部51に挿通されてその内周面で回転可能に保持されている。なお、この上ケース50が上側部材としてなるものである。そして、上ケース50の上方から金属カバー25が配され、その脚部が下ケース1底面にカシメられることによって上ケース50と下ケース1は一体化されている。
【0024】
60は、上面視略リング状に形成された板バネで、対向位置となる二箇所に平板部61を有し、平板部61から各々円弧状に伸ばされた弾性アーム63は下方に向けて傾斜状態に曲げられると共に、各弾性アーム63の中央位置には下方凸形のU字状に曲げ形成されたダボ64が形成されている。弾性アーム63のダボ64どうしは対向位置に設けられている。そして、各平板部61には、貫通孔62が設けられている。なお、弾性アーム63どうしとしては、ダボ64形状などを含めて同一形状で同一バネ力のものに形成している。また平板部61どうしも同一形状のものとしている。そして、この板バネ60は、一枚の弾性金属製の板材から、前記形状に応じて打ち抜き加工し、また所定の曲げ加工を施して前記形状に形成している。なお、以上までの板バネ形状のものであれば、従来品で用いていたものの転用も可能である。しかし、そのときには後述する当該構成に見合うバネ力の設定条件などを充足しておかなければならない。そして、当該構成で用いた板バネ60は、そのバネ力の設定条件などを満たしたものとしていると共に、さらに、平板部61の外縁のそれぞれに、上方に曲げ形成されて構成された回転規制用の上方曲げ部65を備えさせたものとしている。
【0025】
一方、上ケース50の下面側には、各貫通孔62に挿通される二つの突起部53が下方に突出形成され、また、各上方曲げ部65を挿入させるための上方に窪んだ二つの穴部55が設けられている。
【0026】
そして、板バネ60は、各上方曲げ部65を、対応する各々の穴部55に挿入させ、また、各貫通孔62に、対応する突起部53がそれぞれ挿入されて配され、各弾性アーム63が若干撓んだ状態で、ダボ64のそれぞれは回転体5のフランジ部8上面に放射状に設けられたクリック溝10に嵌まり込んでいる。
【0027】
ここに、板バネ60は、従来品のように突起部53をカシメ込むことなく、各弾性アーム63からの力で、各平板部61の上面が上ケース50の下面に弾接状態になっているだけであって、各平板部61を上ケース50に固定していない構成としている。このように、板バネ60の各平板部61を固定させていない構成としているため、板バネ60の回転規制を行う必要が生じ、貫通孔62に突起部53を挿入させ、さらに上方曲げ部65を穴部55に挿入させた構成としている。なお、板バネ60の回転規制を行う詳細構成としては、上述した一方のみの構成を用いたものとしてもよく、また、それら以外の構成で板バネの回転規制がなされるもの等であってもよい。
【0028】
さらに、当該構成における板バネ60は、平板部61において各上方曲げ部65の両横それぞれに隣接し同一面で径方向の外側に突出する外方突出部67を設けたものとしている。そして、上ケース50は、外方突出部67に応じた両横位置のそれぞれに所定高さの下方段部を備え、さらに、その下方段部の下面から下方に突出する抜け止め用突起57を各々設けたものとしている。これらは、生産性を向上させるために設けたものである。つまり、上ケース50を裏返した状態で、板バネ60を載せ、その後平板部61が固定状態にならないように、抜け止め用突起57を緩く内側に倒し込んで、板バネ60は固定されていないが抜け止めがされている一体状態の仕掛品に形成した後、下ケース1などと組み合わせて完成させるようにするためのものである。なお、製品完成後に、動作中を含めて、倒し込んだ抜け止め用突起57に板バネ60が接触することがないように、下方段部の高さ設定などをしておいたり、倒した抜け止め用突起57の状態管理を十分に行うことは重要である。
【0029】
以上のように当該実施の形態による回転型電子部品は構成され、続いて動作状態について説明する。
【0030】
上方に突出している操作軸6を回転操作すると、回転体5が回転し、フランジ部8に固定された回転接点板15が複数の弾性接点3に対し相対的に回転移動して所定の出力が得られる。また、それと同時に、回転方向に移動規制をなされている板バネ60は、それぞれのダボ64が、クリック溝10どうしの間を乗り越え次のクリック溝10に嵌まっていくことにより、所定のクリック感触が明確に得られる。
【0031】
ここで、前述した板バネ60のバネ力設定などについて説明する。前記動作時において、板バネ60の各ダボ64がクリック溝10どうしの間の位置に乗り上げていく際、二つの弾性アーム63は同じ状態で上方に撓んでいく。前記のように弾性アーム63が撓んでいく際、それと同時に弾性アーム63からの力の作用で、固定されていない各平板部61が部分的に上ケース50の下面から下方側に離れていく状態となるように、前記弾性アーム63のバネ力設定をしている。また、平板部61の形状設定も、その状態への変移が少しでも補助されるように、上方曲げ部65と外方突出部67との間を少し窪ませた外形形状にしていると共に、板バネ60に用いる材厚も前記状態に変移可能なように適宜選択して使用している。なお、上方曲げ部65を有していない形状のものであれば、各平板部61の貫通孔62が設けられている部分は実質的に細幅形状のものに等価となり、動作中の平板部61の変移度合いが増して好ましく、また前記形状以外の細幅部分が形成されていてもよい。なお、二つの弾性アーム63は同一のものとしておくと平板部61の変移度合いが増して好ましいが、それのみに限定はされない。
【0032】
そして、弾性アーム63が上方に撓むにつれて、各平板部61は部分的に上ケース50の下面から下方側に離れ、その後、弾性アーム63のダボ64が、隣り合う次のクリック溝10に嵌まる際に、弾性アーム63の撓みが急激に解除され、それに応じて各平板部61が上ケース50の下面に元の弾接状態に急激に戻る動作をする。そのとき、各平板部61が上ケース50の下面に衝突して衝突音が発生する。なお、前記衝突音の大きさや音質は、板バネ60や上ケース50の形状、材質などによっても左右される。このため、所望の音が得られるように、それらの形状、材質などを適宜設定しておくことは重要である。
【0033】
そして、弾性アーム63を二つ有した板バネ60であれば、平板部61毎の変移量も大きく、衝突音も大きいものになり好ましいが、二つの弾性アームの内の一方のみにクリック溝10に嵌まり込むダボが設けられており、他方は平坦面形状に形成されてフランジ部8上などを弾接摺動するのみのもの等であってもよい。
【0034】
以上のように、当該構成のものは、操作時にクリック感触が得られ、それと同時に、音も発生する回転型電子部品に実現できる。そして、前記の音としてもクリック位置毎に発生される、つまり操作感触と同期した状態で音の発生がなされるものにできるため、操作感触と音の両者で操作状態が違和感無く認識できるものに実現できる。
【0035】
なお、前記には固定状態の弾性接点3と回転接点板15で構成された回転接点部構成のものを例として説明したが、その他の回転接点部構成を備えたものであってもよい。例えば、刷子や接触片が回転体の下面に固定され、その刷子や接触片が下ケースの内底面に配された素子上や導電パターン上を弾接摺動するものや、回転体に磁石が配され、回転に応じて発生する磁気変化を磁気検出素子で検出する非接触タイプのものであってもよい。同様に、光を用いた構成のものであってもよい。
【0036】
また、プッシュスイッチ付の構造のものにも、本発明による構成思想を適用してもよい。
【0037】
以上の説明から判るように、本発明では、回転体、板バネ、上側部材を必須とするのみのため、単体完成品としてなる回転型電子部品以外でも実施が可能である。すなわち、下ケースの代わりに配線基板などを配した構成としてもよい。また、上側部材としても、セットの筐体などを用いた構成などとしてもよい。さらに、板バネの平板部を回転体側に設置するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明による回転型電子部品は、操作時に、クリック感触と同時に音も発生する構成のものに実現でき、各種電子機器の入力操作部を構成する際等に有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 下ケース
3 弾性接点
5 回転体
6 操作軸
8 フランジ部
10 クリック溝
15 回転接点板
25 金属カバー
50 上ケース
51 軸受部
53 突起部
55 穴部
57 抜け止め用突起
60 板バネ
61 平板部
62 貫通孔
63 弾性アーム
64 ダボ
65 上方曲げ部
67 外方突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配された回転体を回転させることにより所定出力が得られると共に、前記回転体の上面に設けられたクリック溝に、上面視略リング状に形成された板バネの弾性アームが弾接してクリック感触が得られる回転型電子部品であって、前記板バネの弾性アームは、一対の平板部に各々繋がる上面視円弧状で下方に向けて傾斜した形状に形成されており、その弾性アームの少なくとも一つが前記回転体のクリック溝に弾接可能なように、上側部材の下面に前記平板部を固定せずに重ね合わせたのみで前記板バネが配され、かつ、前記弾性アームが隣り合う前記クリック溝どうしの間の位置に乗り上げていく際に、前記弾性アームが撓むと同時に、前記弾性アームからの力の作用で前記平板部は部分的に前記上側部材の下面に対し下方側に離れていく状態となるように、前記弾性アームのバネ力設定や前記平板部の形状設定がされており、前記弾性アームが次のクリック溝に嵌まり込む際に、元の配置状態に戻る前記平板部が前記上側部材の下面に衝突して衝突音が発生する構成としたことを特徴とする回転型電子部品。
【請求項2】
板バネの二つの弾性アームを同一形状で同一バネ力のものとして、回転体のクリック溝に両者とも対向位置で嵌まり込む構成とした請求項1記載の回転型電子部品。
【請求項3】
上側部材が上ケースとされ、その上ケースには抜け止め用突起が設けられ、その抜け止め用突起が緩く倒し込まれることによって、板バネが前記上ケースに対し固定はされていないが抜け止めがなされた状態で組み込まれた請求項1記載の回転型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−119170(P2011−119170A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277282(P2009−277282)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】