説明

回転式アクチュエータ

【課題】 軽量であり且つ破損し難い回転式アクチュエータを提供する。
【解決手段】 回転式アクチュエータ19は、樹脂製のハウジング20を自動変速機のケース16に取り付けるための金属製のブラケット75を備える。ブラケット75は、カバー部76および取付部78から一体に形成される。カバー部76は、ハウジング20に対しケース16とは反対側に位置し、ハウジング20に対し外部からの異物が衝突するのを回避するようハウジング20を保護する。ブラケット75の取付部78は、カバー部76とケース16とを結合する。これによれば、回転式アクチュエータ19に向け飛来する異物がハウジング20に衝突するのをブラケット75のカバー部76で防ぐことができ、異物の衝突でハウジング20が破損するのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシフトバイワイヤシステムの駆動部等に用いられる回転式アクチュエータが公知である。特許文献1に開示された回転式アクチュエータは、軽量な樹脂製のハウジング内にモータを収容している。ハウジングは、ブラケットにより変速機ケースの外壁に取り付けられる。ブラケットは、ハウジングと変速機ケースとの間に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4560743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された回転式アクチュエータでは、ハウジングのうちブラケットとは反対側は外部に露出しているため、この露出した部分に例えば飛び石等の異物が衝突するとハウジングが破損するおそれがある。ハウジングが破損すると、水が浸入するなどして作動不能となる可能性がある。
回転式アクチュエータをシフトバイワイヤシステムの駆動部として用いる場合、パーキングロック中に作動不能となるとパーキングロックが解除できないという問題が生じる。
【0005】
これに対し、ハウジングを金属から構成することでハウジングの耐衝撃性を高めることが考えられる。しかし、これによるとハウジングの重量が重くなるという欠点がある。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量であり且つ破損し難い回転式アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、被駆動軸を収容するケースの外壁に取り付けられる回転式アクチュエータであって、ロータ、ステータ、ハウジング、カバー手段および結合手段を備える。
ロータは、被駆動軸に動力伝達可能に連結される。ステータは、ロータに作用する磁力を発生させロータを回転させる。ハウジングは、樹脂製であり、ロータおよびステータを収容し、ロータを回転可能に支持するとともにステータを固定支持する。カバー手段は、金属製であり、ハウジングに対し前記ケースとは反対側に位置し、ハウジングに固定される。このカバー手段は、ハウジングに対し外部からの異物が衝突するのを回避するようハウジングを保護する。結合手段は、カバー手段と前記ケースとを結合する。
【0007】
これによれば、ハウジングは樹脂製であるので軽量である。
また、回転式アクチュエータに向け異物が飛来すると、この異物はハウジングに当たることなしにカバー手段に当たる。すなわち、異物がハウジングに衝突するのをカバー手段で防ぐことができる。これにより、異物の衝突でハウジングが破損するのを抑制することができ、ハウジングの破損に起因し作動不能となるのを回避することができる。
【0008】
ここで、従来、ハウジングはブラケットに対し前記ケースとは反対側に配置されていたため、ハウジングが軸方向の一方だけで支持される片持ち状態となっていた。そのため、回転式アクチュエータの重心はブラケットの前記ケースへの結合面に対し前記ケースとは反対側に位置し、振動に対する強度が低いという問題があった。
これに対し、請求項2に記載の発明では、結合手段の前記ケースへの結合面は、回転式アクチュエータの重心に対し前記ケースとは反対側に位置する。そのため振動に対する強度が高くなり振動による破損を防ぐことができる。
【0009】
ここで、従来、ハウジングを樹脂製とすることで軽量化を実現する一方、金属等と比べ熱伝導率が低い樹脂でステータおよびロータからなるモータを覆うことにより放熱性が低下するという問題があった。この放熱性の低下に起因しハウジング内の温度が上昇すると、モータの連続作動回数を制限せざるを得ず、また、モータコイルの電気抵抗が高まりモータの出力トルクが低下するおそれがあった。
これに対し、請求項3に記載の発明による回転式アクチュエータは、ステータに嵌合しハウジング内に埋設される筒部、筒部の一端を塞ぐ底部、及び、底部からハウジング外に突き出しカバー手段に接触する突出部を有する金属製のステータ保持部材を備える。そのため、モータで生じた熱は、ステータ保持部材およびカバー手段が形成する熱伝導路を経由し外部に放熱される。これによりハウジング内の温度が上昇を抑制することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、ステータ保持部材の突出部は環状に形成される。また、カバー手段は、ステータ保持部材の突出部の径外壁に嵌合する。
これにより、ステータからステータ保持部材に伝導する熱を確実にカバー手段に伝えることができ、放熱性を向上させることができる。また、カバー手段とステータ保持部材とを嵌合させることでカバー手段の位置決めを行うことができる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、結合手段は、カバー手段から放射状に突き出す複数の板状の放熱フィンから構成される。これにより、カバー手段に伝導する熱の外部への放熱性を高めることができる。
請求項6に記載の発明では、結合手段は、周方向で互いに離間する位置に形成されている。これにより、周方向での放熱性の偏りを抑制することができる。
【0012】
請求項7に記載の発明では、ハウジングは、ステータの給電用端子を内包するコネクタ部を有する。また、カバー手段は、ハウジングのコネクタ部に対し前記ケースとは反対側に位置し、コネクタ部に対し外部からの異物が衝突するのを回避するようコネクタ部を保護する。
これによれば、異物がハウジングのコネクタ部に衝突するのをカバー手段で防ぐことができる。これにより、異物の衝突でハウジングのコネクタ部が破損するのを抑制することができ、コネクタ部の破損に起因しステータへの給電が不可能となる事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による回転式アクチュエータを用いたシフトバイワイヤシステムを示す図である。
【図2】図1の回転式アクチュエータが自動変速機のケースに取り付けられているところを示す断面図である。
【図3】図1の回転式アクチュエータの縦断面図である。
【図4】図3の回転式アクチュエータを矢印IV方向から見た図である。
【図5】図3の矢印V部を拡大して示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による回転式アクチュエータの外観図であって、第1実施形態における図4に相当する図である。
【図7】本発明の第3実施形態による回転式アクチュエータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回転式アクチュエータは、図1に示すシフトバイワイヤシステムの駆動部として用いられる。このシフトバイワイヤシステム1は、マニュアルバルブ2を作動させることで車両用自動変速機のシフトレンジを切り替える機能と、パーキングギヤ4の回転を規制することで自動変速機の回転をロックする機能とを有する。先ず、このシフトバイワイヤシステム1を説明する。
【0015】
図1に示すように、シフトバイワイヤシステム1は、電子制御装置5、回転式アクチュエータ19、コントロールロッド6、ディテント機構7およびパーキング機構11を備える。
電子制御装置5は、運転者が操作する図示しないセレクトレバーの操作位置に応じ回転式アクチュエータ19を作動させる。回転式アクチュエータ19は、「被駆動軸」としてのコントロールロッド6を回転駆動する。コントロールロッド6は、回転式アクチュエータ19の出力軸と一体に回転する。
【0016】
ディテント機構7は、コントロールロッド6と一体に回転するディテントプレート8、および、ディテントプレート8の回転位置を固定するディテントスプリング10から構成される。ディテントプレート8は、マニュアルバルブ2の弁部材3に対し軸方向に係合可能な係合突起9を有し、回転位置に応じ弁部材3を軸方向に移動させる。これにより自動変速機のシフトレンジが切り替わる。
【0017】
パーキング機構11は、パーキングギヤ4に対し接近および離間可能なパーキングロックポール12、ディテントプレート8の回転位置に応じパーキングギヤ4の軸心に平行な方向へ移動するパークロッド13、および、パークロッド13の移動に伴いパーキングロックポール12をパーキングギヤ4に接近および離間させるカム部材14から構成される。カム部材14は、ディテントプレート8が所定のパーキング位置に回転すると、パーキングロックポール12をパーキングギヤ4と係合する位置に移動させる。これによりパーキングギヤ4と一体に回転する図示しない自動変速機のアウトプットシャフトの回転がロックされる。
【0018】
次に、回転式アクチュエータ19の構成を図2〜図5に基づき詳しく説明する。図2に示すように、回転式アクチュエータ19は、自動変速機のケース16の側壁に取り付けられる。
図3に示すように、回転式アクチュエータ19は、ハウジング20、スイッチトリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」という。)40、減速機60、出力軸70およびブラケット75等を備えている。
【0019】
ハウジング20は、リヤハウジング21およびフロントハウジング30から構成されている。
リヤハウジング21は、樹脂製であり、有底筒部22、コネクタ部23および複数の固定部24を有している。有底筒部22には、筒状に形成された金属製のステータ保持部材90が埋設されている。コネクタ部23は、図1の電子制御装置5と接続可能な「給電用端子」としての複数の端子26を内包している。各固定部24は、有底筒部22から径外方向へ突き出すように形成されている。この固定部24には、金属製のインサートカラー27が埋設されている。
【0020】
フロントハウジング30は、樹脂製であり、有底筒部31、出力部32および複数の固定部34を有している。有底筒部31は、有底筒部22と同軸上に位置し、且つリヤハウジング21側に開口端部が位置するように配置されている。出力部32は、有底筒部31の底部の中央からリヤハウジング21とは反対側に突き出すよう筒状に形成されている。この出力部32は、図2に示すように、自動変速機のケース16が有する嵌合孔17に嵌合し、ケース16内と連通する通孔33を有している。
図3および図4に示すように、各固定部24は、有底筒部31のうち周方向で固定部24に対応する位置から径外方向へ突き出すように形成されている。この固定部24には、金属製のインサートカラー35が埋設されている。このインサートカラー35は、インサートカラー27のねじ挿通孔28と同軸のねじ挿通孔36を有している。
【0021】
フロントハウジング30およびリヤハウジング21は、ねじ37およびナット25により互いに固定されている。ねじ37は、インサートカラー27のねじ挿通孔28とインサートカラー35のねじ挿通孔36とに挿入され、ナット25に螺合している。ハウジング20内は、フロントハウジング30の開口端面とリヤハウジング21の開口端面との間に設けられるシール部材38によって外部に対し封止されている。
【0022】
SRモータ40は、3相ブラシレスモータであり、ステータ41およびロータ48から構成されている。
ステータ41は、ステータコア42および複数のコイル45を有している。ステータコア42は、ステータ保持部材90の径内壁に嵌合するリング部43と、このリング部43から径内方向に突き出す複数のティース部44とからなる。各ティース部44は、周方向で等間隔に例えば12個形成される。ステータコア42は、図3に示すように複数枚の環状プレートを板厚方向に積層することによって形成されている。
【0023】
各コイル45は、各ティース部44に巻回された導線からなるU相コイル、V相コイルおよびW相コイルから構成される。各相コイルは例えば4個ずつ設けられ、周方向でU相コイル、V相コイル、W相コイルの順に1個ずつ配置される。
各コイル45は、バスバー部57に電気的に接続されている。バスバー部57は、図3に示すようにステータ41に対しリヤハウジング21の底部側に設けられている。バスバー部57は、例えば金属の薄板によって形成され、コネクタ部23の端子26と電気的に接続している。各コイル45には、バスバー部57を経由し電流が供給される。
【0024】
図3に示すように、ロータ48は、ステータ41の径内方向に設けられ、ロータ軸49およびロータコア54を有している。ロータ軸49は、フロントハウジング30の底部側の一端部50がフロントベアリング58に回転可能に支持され、リヤハウジング21の底部側の他端部51がリヤベアリング59に回転可能に支持されている。またロータ軸49は、一端部50と他端部51との間で一端部50側にから順にロータコア固定部52および偏心部53を形成する。一端部50とロータコア固定部52と他端部51とは互いに同軸上に配置され、偏心部53はロータコア固定部52に対し偏心するよう配置されている。
【0025】
ロータコア54は、ロータ軸49の径外壁に例えば圧入により固定されたボス部55と、このボス部55から径外方向に突き出す複数の突極56とからなる。各突極56は、周方向で等間隔に例えば8個形成される。ロータコア54は、複数枚のプレートを板厚方向に積層することによって形成されている。
【0026】
減速機60は、いわゆる遊星歯車装置の一種であり、リングギヤ61およびサンギヤ62から構成されている。
リングギヤ61は、ロータ軸49の偏心部53の径外方向に位置し、ロータ軸49の一端部50や他端部51と同軸上に配置される環状の内歯車である。リングギヤ61は、フロントハウジング30の有底筒部22の径内壁に固定されている。
【0027】
サンギヤ62は、リングギヤ61の径内方向に位置し、ロータ軸49の偏心部53と同軸上に配置され、リングギヤ61に噛み合う外歯車である。サンギヤ62は、ミドルベアリング64により偏心部53まわりに自転可能かつロータ軸49の回転軸まわりに公転可能に支持されている。
サンギヤ62は、ロータコア54とは反対側に突き出す複数のトルク伝達用突起63を形成する。各トルク伝達用突起63は、サンギヤ62の自転軸まわりに等間隔に形成されている。トルク伝達用突起63は、後述のトルク伝達用穴73と共に、サンギヤ62の自転成分を出力軸70に伝達するための回転伝達手段として機能する。
【0028】
出力軸70は、軸部71およびフランジ部72から構成されている。軸部71は、ロータ軸49の回転軸上に配置され、フロントハウジング30の出力部32により回転可能に支持されている。軸部71の径内部には軸方向に延びる内歯が形成されている。コントロールロッド6は、軸部71の径内方向に嵌合しつつ軸部71の内歯と係合することで軸部71に回転伝達可能に連結可能である。
フランジ部72は、軸部71のうちサンギヤ62側の端部に一体に形成されている。フランジ部72は、サンギヤ62の各トルク伝達用突起63が遊嵌する複数のトルク伝達用穴73を有する。各トルク伝達用穴73は、ロータ軸49の回転軸まわり即ちサンギヤ62の公転軸まわりに等間隔に形成され、トルク伝達用穴73と共に回転伝達手段を構成する。
ロータ軸49は、減速機60、上記回転伝達手段および出力軸70を介しコントロールロッド6に回転伝達可能に連結される。
【0029】
図3および図4に示すように、ブラケット75は、ハウジング20を自動変速機のケース16の外壁に取り付けるための部材である。ブラケット75は、金属製であり、「カバー手段」としてのカバー部76、および、「結合手段」としての複数の取付部78から一体に形成されている。カバー部76は、ハウジング20に対しケース16とは反対側に位置し、ねじ37およびナット25によりリヤハウジング21の底部の外壁に固定されている。カバー部76は、ハウジング20の外壁のうちケース16とは反対側の部分を外部から遮るように設けられ、ハウジング20に対し外部からの異物が衝突するのを回避するようハウジング20を保護する。
【0030】
各取付部78は、カバー部76のうち周方向で互いに離間する位置から放射状に突き出す板状に形成されている。各取付部78は、ねじ挿通孔79を有し、このねじ挿通孔79を挿通するねじ18によりケース16に取り付け可能であり、カバー部76とケース16とを結合する。取付部78のケース16への結合面80は、回転式アクチュエータ19の重心Gに対しケース16とは反対側に位置している。
【0031】
ステータ保持部材90は、ステータコア42の径外壁に嵌合する筒部91、筒部91の一端を塞ぐ底部93、及び、底部93からハウジング20外に突き出しブラケット75に接触する突出部92から一体に形成されている。突出部92は、筒部91からブラケット75側に突き出すよう、周方向の一部が切り欠かれた環状に形成されている。
ブラケット75のカバー部76は、ステータ保持部材90の突出部92に対応する位置に凹部77が形成され、この凹部77の内壁がステータ保持部材90の突出部92の径外壁に圧入されている。ブラケット75には、ステータコア42の熱がステータ保持部材90を経由し伝導可能である。
【0032】
ブラケット75のカバー部76は、ハウジング20とは反対側に第1放熱面81を有している。また、ブラケット75の各取付部78は、軸方向の一方側の第2放熱面82、軸方向の他方側の第3放熱面83、及び、径外方向の第4放熱面84を有している。
インサートカラー27、35は、金属製であり、ブラケット75とねじ37の頭部との間に挟まれている。同じく金属製のねじ37の頭部は、ハウジング20外に露出し、ブラケット75からインサートカラー27、35を経由し伝導する熱を放熱可能な第5放熱面85を有している。また、同じく金属製のナット25は、ハウジング20外に露出し、ブラケット75から伝導する熱を放熱可能な第6放熱面86を有している。
【0033】
図5に矢印Xで示すように、ステータコア42、ステータ保持部材90およびブラケット75は、ステータコア42の熱をブラケット75に伝導する第1の熱伝導路を形成する。また、図5に矢印Yで示すように、ブラケット75、インサートカラー27、35およびねじ37は、ブラケット75の熱をねじ37に伝導する第2の熱伝導路を形成する。また、図5に矢印Zで示すように、ブラケット75およびナット25は、ブラケット75の熱をナット25に伝導する第3の熱伝導路を形成する。また、図2に示すブラケット75のカバー部76および各取付部78は、カバー部76の熱を自動変速機のケース16に伝導する第4の熱伝導路を形成する。
ブラケット75のカバー部76、取付部78、ねじ37の頭部、ナット25およびケース16は、ステータコア42から伝導する熱を外部すなわちハウジング外空間に放熱する放熱手段として機能する。
【0034】
このように構成される回転式アクチュエータ19では、各コイル45のうちU相コイル、V相コイル、W相コイルの順に通電を切り替えるとロータ48が周方向の一方に回転し、W相コイル、V相コイル、U相コイルの順に通電を切り替えるとロータ48が周方向の他方に回転する。ロータ48は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルの通電が一巡する毎に45度回転する。
上述のようにロータ48が回転すると、サンギヤ62は、リングギヤ61の径内壁を転動することによりロータ軸49の偏心部まわりに自転しつつロータ軸の回転軸まわりに公転する。このときサンギヤ62はロータ軸49に対し減速回転する。
【0035】
上述のようにサンギヤ62が回転すると、サンギヤ62の自転成分がトルク伝達用突起63およびトルク伝達用穴73を介し出力軸70に伝達される。出力軸70は、この回転をコントロールロッド6に出力する。
各コイル45に通電することで生じた熱は、ステータコア42およびステータ保持部材90を経由しブラケット75に伝導し、各放熱面81〜84から放熱され、または、自動変速機のケース16に伝導し、ケース16の外面から放熱される。また、ブラケット75に伝導した熱は、インサートカラー27、35を経由しねじ37に伝導し、第5放熱面85から放熱される。また、ブラケット75に伝導した熱はナット25に伝導し、第6放熱面86から放熱される。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態による回転式アクチュエータ19は、ハウジング20を自動変速機のケース16に取り付けるための金属製のブラケット75を備える。このブラケット75は、カバー部76および取付部78から一体に形成される。ブラケット75のカバー部76は、ハウジング20に対しケース16とは反対側に位置し、ハウジング20に固定される。このカバー部76は、ハウジング20の外壁のうちケース16とは反対側の部分を外部から遮り、ハウジング20に対し外部からの異物が衝突するのを回避するようハウジング20を保護する。ブラケット75の取付部78は、カバー部76とケース16とを結合する。
【0037】
これによれば、回転式アクチュエータ19に向け異物が飛来すると、この異物はハウジング20に当たることなしにブラケット75のカバー部76に当たる。すなわち、異物がハウジング20に衝突するのをブラケット75のカバー部76で防ぐことができる。これにより、異物の衝突でハウジング20が破損するのを抑制することができ、ハウジング20の破損に起因しSRモータ40が意図しない位置に回転するのを回避することができる。したがって、回転式アクチュエータ19は軽量であり且つ破損し難い。
また、第1実施形態では、ブラケット75の取付部78の結合面80は、回転式アクチュエータ19の重心Gに対しケース16とは反対側に位置する。そのため振動に対する強度が高くなり、振動による破損を防ぐことができる。
【0038】
また、第1実施形態では、金属製のステータ保持部材90が設けられる。ステータ保持部材90は、ステータコア42の径外壁に嵌合する筒部91、筒部91の一端を塞ぐ底部93、及び、底部93からハウジング20外に突き出しブラケット75に接触する突出部92から一体に形成されている。
そのため、SRモータ40の作動時にコイル45で生じた熱は、ステータ保持部材90およびブラケット75等が形成する第1〜第3熱伝導路を経由し各放熱面81〜86から外部に放熱される。これによりハウジング20内の温度が上昇を抑制することができる。
【0039】
また、第1実施形態では、ステータ保持部材90の突出部92は、筒部91からブラケット75側に突き出すよう環状に形成される。また、ブラケット75のカバー部76は、ステータ保持部材90の突出部92の径外壁に圧入により固定される。
これにより、SRモータ40からステータ保持部材90に伝導する熱を確実にブラケット75に伝えることができ、放熱性を向上させることができる。また、ブラケット75とステータ保持部材90との嵌合によってブラケット75の位置決めを行うことができる。
【0040】
また、第1実施形態では、ブラケット75の取付部78は、カバー部76から放射状に突き出す複数の板状の放熱フィンから構成される。これにより、SRモータ40からステータ保持部材90を経由しブラケット75に伝導する熱の外部への放熱性を高めることができる。
また、第1実施形態では、ブラケット75の各取付部78は、周方向で等間隔に形成されている。これにより、周方向での放熱性の偏りを抑制することができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による回転式アクチュエータを図6に基づき説明する。
図6に示すように、第2実施形態では、ブラケット100は、第1カバー部101と取付部102と第2カバー部103とから一体に形成される。第1カバー部101の構成は第1実施形態におけるカバー部76と同様であり、また、取付部102の構成は第1実施形態における取付部78と同様である。
第2カバー部103は、ハウジング20のコネクタ部23に対しケース16とは反対側に位置し、コネクタ部23に対し外部からの異物が衝突するのを回避するようコネクタ部23を保護する。
これによれば、外部の異物がハウジング20のコネクタ部23に衝突するのをブラケット100の第2カバー部103で防ぐことができる。これにより、異物の衝突でハウジング20のコネクタ部23が破損するのを抑制することができ、コネクタ部23の破損に起因しステータ41への給電が不可能となる事態を回避することができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態による回転式アクチュエータを図7に基づき説明する。
図7に示すように、第3実施形態では、ブラケット110は、第1カバー部111と取付部112と第2カバー部113とから一体に形成される。第1カバー部111の構成は第1実施形態におけるカバー部76と同様であり、また、取付部112の構成は第1実施形態における取付部78と同様である。
第2カバー部113は、第1カバー部111および取付部112の径外縁からハウジング20側に延びるように筒状に形成され、ハウジング20の径外部を覆っている。
これによれば、外部の異物がハウジング20の径外壁に衝突するのをブラケット110の第2カバー部113で防ぐことができる。これにより、異物の衝突でハウジング20が破損するのを一層抑制することができる。
【0043】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、ブラケットのカバー部に対応するカバー手段と、ブラケットの取付部に対応する結合手段とが別部材で構成されてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ブラケットは、必ずしもステータ保持部材に嵌合されなくてもよい。例えば、ブラケットとステータ保持部材とが接触していれば、放熱性が向上するという効果を得ることができる。
また、本発明の他の実施形態では、ブラケットの取付部のケースへの結合面は、回転式アクチュエータの重心に対しケース側に位置していてもよい。
【0044】
また、本発明の他の実施形態では、コイルの相数は、2つあるいは4つ以上であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、モータのロータは、ステータの径内方向に配置されるインナーロータに限らず、ステータの径外方向に配置されるアウターロータであってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ステータコアは、各ティース毎に分離した複数のセグメントステータコアから形成されてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、回転式アクチュエータは、車両のうちシフトバイワイヤシステム以外の装置に用いられてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、回転式アクチュエータは、必ずしも減速機を備える必要はない。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0046】
6・・・コントロールロッド(被駆動軸)
16・・・ケース
19・・・回転式アクチュエータ
20・・・ハウジング
48・・・ロータ
41・・・ステータ
76・・・カバー部(カバー手段)
78・・・取付部(結合手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動軸を収容するケースの外壁に取り付けられる回転式アクチュエータであって、
前記被駆動軸に動力伝達可能に連結されるロータと、
前記ロータに作用する磁力を発生させ前記ロータを回転させるステータと、
前記ロータおよび前記ステータを収容し、前記ロータを回転可能に支持するとともに前記ステータを固定支持する樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングに対し前記ケースとは反対側に位置し、前記ハウジングに固定され、前記ハウジングに対し外部からの異物が衝突するのを回避するよう前記ハウジングを保護する金属製のカバー手段と、
前記カバー手段と前記ケースとを結合可能な結合手段と、
を備えることを特徴とする回転式アクチュエータ。
【請求項2】
前記結合手段の前記ケースへの結合面は、前記回転式アクチュエータの重心に対し前記ケースとは反対側に位置することを特徴とする請求項1に記載に回転式アクチュエータ。
【請求項3】
前記ステータに嵌合し前記ハウジング内に埋設される筒部、当該筒部の一端を塞ぐ底部、及び、当該底部から前記ハウジング外に突き出し前記カバー手段に接触する突出部を有する金属製のステータ保持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項4】
前記ステータ保持部材の前記突出部は環状に形成され、
前記カバー手段は、前記ステータ保持部材の前記突出部の径外壁に嵌合することを特徴とする請求項3に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項5】
前記結合手段は、前記カバー手段から放射状に突き出す複数の板状の放熱フィンから構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項6】
前記結合手段は、周方向で互いに離間する位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記ステータの給電用端子を内包するコネクタ部を有し、
前記カバー手段は、前記ハウジングの前記コネクタ部に対し前記ケースとは反対側に位置し、前記コネクタ部に対し外部からの異物が衝突するのを回避するよう前記コネクタ部を保護することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115986(P2013−115986A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261898(P2011−261898)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】