説明

回転式切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法および切断機カバー容器

【課題】 鉄鋼材料を切断するための回転式切断機のカバー容器内に砥粒が堆積するのを防止する回転式切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法および切断機カバー容器を提供する。
【解決手段】 鉄鋼材料を切断するための回転式切断機のカバー容器内の一部または全域にセラミックコーティングを施す切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法。また、上記セラミックコーティングを施した切断機カバー容器を用いて切断する切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法。さらに、上記セラミックコーティングとして酸化クロム系セラミクスを施す切断機カバー容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼材料を切断するための回転式切断機のカバー容器内に砥粒が堆積するのを防止する回転式切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法および切断機カバー容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管切断時のダスト飛散防止機構として、例えば特開昭59−161218号公報(特許文献1)に開示されているように、カッターがパイプの切断を始めると発生するダストを、カッターの周囲に設けたカバーでその飛散を防止し、さらに真空ポンプによってダスト管、ダスト袋を通って、ダスト管内の空気とともに発生ダストを吸上げて、ダスト袋にダストを溜めるパイプカッターのダスト飛散防止機構が提案されている。
【0003】
また、特開2000−15577号公報(特許文献2)に開示されているように、鋼片等の被削物を研削するときに発生する研削切粉の処理を容易にするために、研削切粉の飛散軌跡を遮る範囲に遮蔽部材を研削切粉が溶着し難い構成にした研削切粉の飛散阻止装置が提案されている。さらには、特開平4−164572号公報(特許文献3)に開示されているように、砥石カバーの内側に付着した切削粉や研削液等が砥石に付着することを防止する砥石カバーが提案されている。
【特許文献1】特開昭59−161218号公報
【特許文献2】特開2000−15577号公報
【特許文献3】特開平4−164572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示されているパイプカッターのダスト飛散防止機構はカッターの周囲に設けたカバーでその飛散を防止され、さらにダスト管を通って真空ポンプにより管内の空気とともに発生ダストを吸上げて、ダスト袋にダストを溜める方式であって、クロスカットソーに集塵する方式のもではなく構造的に複雑であって簡易なものでない。
【0005】
また、特許文献2に開示されている研削切粉の飛散阻止装置は研削時に遮蔽部材が駆動装置に駆動されて研削切粉の飛散軌跡を遮る範囲内において移動するものであって、研削切粉の飛散阻止するための装置であって、これも特許文献1と同様に、クロスカットソーに集塵する方式のもではない。さらに、特許文献3に開示されている切削粉や研削液等が砥石に付着することを防止するために砥石カバーに内側にガスを供給して付着物が付着することを防止する付着防止手段を備えた砥石カバーであり、これもクロスカットソーに集塵する方式のもではない。
【0006】
一方、鋼材等を切断するエメリー(回転切断砥石)切断機では切断時に粉塵が多量に発生するため、回転砥石の周りをカバーで覆い集塵機で吸引して粉塵が飛び散らないようにするのが一般的である。しかし、切断時にはこのカバー内壁に高温の砥粒が衝突して付着し、どんどん堆積し、この状態を放っておくと砥石の回転を妨げ、集塵機の吸引口を閉塞することになり、そのために定期的に砥粒付着物を除去しなければならない。しかも、この砥粒付着物は非常に硬く、強力にカバー容器内壁に付着しているので除去するためには打撃を加える必要があり、その衝撃でカバーを変形させてしまうと言う問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、鋼材等を切断する回転式切断機のカバー容器内に堆積した砥粒付着物を容易に除去できる回転式切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法および回転式切断機カバー容器を提供する。
その発明の要旨とするところは、
(1)鉄鋼材料を切断するための回転式切断機のカバー容器内の一部または全域にセラミックコーティングを施すことを特徴とする回転式切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法。(2)前記(1)記載のセラミックコーティングを施した切断機カバー容器を用いて切断することを特徴とする切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法。
(3)前記(1)または(2)記載のセラミックコーティングとして酸化クロム系セラミクスを施すことを特徴とする切断機カバー容器にある。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、本発明により、回転式切断機カバー容器内に砥粒が付着する量が半減し、しかも、この砥粒付着物はわずかな力で容易に切断機カバー容器から脱落することを可能とした工業的に極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る回転式切断機にカバー容器を設けた全体概略図である。この図に示すように、回転式切断機は切断材2、例えば鋼管を切断する際に粉塵が多量に発生するため、回転砥石1の回りをカバー容器3で覆い集塵機(図示せず)で吸引して粉塵が飛び散らないように構成している。ところが、切断材2を切断する際にはこのカバー容器3内壁に高温の砥粒4が衝突して付着し、その砥粒4が堆積して砥粒堆積物5を形成し、回転砥石1の回転を妨げ、集塵機の吸引口を閉塞することになる。そのために定期的に砥粒堆積物5を除去しなければならない。
【0010】
一方、砥粒堆積物5は非常に硬く、カバー容器3内壁に溶着し、容易に除去することが出来ず、叩き落とす際にカバー容器3を変形させることもあり、回転砥石1の砥石替えに時間を要していた。この対策として砥粒4が付着しないカバー容器にすれば砥粒堆積物5を叩き落とす必要がなくなるとの発想から、カバー容器内壁の耐熱性を向上させれば砥粒の溶着を防止することができる知見に基づき、カバー容器1内の砥粒4が衝突する箇所にセラミックコーティングした砥粒堆積防止板6を取り付けた。しかも、このカバー容器は振動、衝撃がかかる場所であるので強度、靱性が求められている。
【0011】
上記セラミックコーティングした砥粒堆積防止板の表面は非常に緻密なセラミック層を形成されており、耐熱温度は一般的に約600℃程度であり、高温の砥粒が衝突しても砥粒が溶着することはない。従って、砥粒の堆積は格段に減少し、少しの衝撃を加えるだけで容易に堆積物5は砥粒堆積防止板6から脱落し、そのために定期的な回転砥石1の砥石替えにも1回当たりの時間を短縮することができた。
【0012】
特に、セラミックコーティングを酸化クロム系セラミクスでコーティングを施すことで、この酸化クロム系セラミクス被膜表面の耐熱温度が約800℃となり、高温の砥粒が衝突しても砥粒が溶着することはない。また、断熱性能が高いため、溶融砥粒が付着した場合でも急冷凝固せず付着効果が低く、かつ表面が平滑であり無気孔であるためアンカー効果が低く、従って、砥粒の堆積は格段に減少し、少しの衝撃を加えるだけで容易に堆積物は砥粒堆積防止板から脱落することができた。
【0013】
特に、セラミックコーティングを酸化クロム系セラミクスに選定したが、酸化クロム系セラミクスは、耐熱性に優れ、硬度性を有し、化学的に安定した物質であることからである。しかし、高温で安定な酸化物系セラミクスであれば、いずれでもよく、例えばAl2 3 系、SiO2 系およびそれらの混合物なども用いることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
図1に示すように、エメリー(回転切断砥石)切断機を用いて、そのカバー容器3内壁の砥粒4が最も激しく衝突する箇所にスラリーコーティングした上で、緻密化剤を含浸、焼成するCDC法を用いて酸化クロム系セラミクスを被覆することで、被膜層の厚さ30〜50μmのコーティング層を施して砥粒堆積防止板6を形成した。その上で直径60mm、肉厚5mmの鋼管を約200本連続的に3.5mm厚のエメリーを用いて切断を行った場合、カバー容器内壁に長さが約150mmの付着物が形成された。しかし、この長さはコーティングを施した砥粒堆積防止板を用いない場合と比較して、砥粒の付着し堆積する量は半減し、しかもこの砥粒堆積物は僅かな力で容易にカバー容器内壁から脱落させることが可能となり、この付着物は手で容易に除去することができた。
【0015】
以上のように、本発明により、回転式切断機カバー容器内に砥粒が付着する量が半減し、しかも、この砥粒付着物はわずかな力で容易に切断機カバー容器から脱落することが可能となり、回転式切断機カバー容器内の清掃時間を短縮することができ、生産性の向上を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る回転式切断機にカバー容器を設けた全体概略図である。
【符号の説明】
【0017】
1 回転砥石
2 切断材
3 回転式切断機カバー容器
4 砥粒
5 砥粒堆積物
6 砥粒堆積防止板


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼材料を切断するための回転式切断機のカバー容器内の一部または全域にセラミックコーティングを施すことを特徴とする切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法。
【請求項2】
請求項1記載のセラミックコーティングを施した切断機カバー容器を用いて切断することを特徴とする切断機カバー容器内砥粒堆積防止方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のセラミックコーティングとして酸化クロム系セラミクスを施すことを特徴とする切断機カバー容器。

【図1】
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