説明

回転式基板処理装置

【目的】 基板裏面にチャック跡を生じさせないものでありながら、塗布均一性を損なうことなく、基板の端面や裏面の清浄度を高くできるようにする。
【構成】 基板保持手段3にピン状支持部材11と規制部材12とを備え、ピン状支持部材11の上端を基板Wの裏面に点接触させて基板Wを支持するとともに、その支持状態の基板Wの外周端縁に規制部材12を点接触して基板Wの水平方向の位置を規制し、基板Wを鉛直方向の軸芯周りで回転可能に保持する。また、規制部材12の水平方向外側で基板の外周縁を全周にわたって覆うように環状部材13を設け、その環状部材13の上面を平坦に構成し、かつ、環状部材13と規制部材12との間に鉛直方向下方に向かうドレン流路14を備え、遠心力により生じる気流に抵抗を与えながら、基板Wから遠心力によって流されるドレンを排出できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、光ディスク用の基板等の基板にレジスト液などの塗布液を塗布したり、また、基板の外周縁に溶剤を供給して洗浄する、いわゆるエッジリンスを行うなどのために、基板を保持して鉛直方向の軸芯周りで回転する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された前記基板に処理液を供給する処理液供給手段とを備えた回転式基板処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の回転式基板処理装置としては、従来一般に、基板を真空吸着によって保持するように構成されている。ところが、その強い吸着力に起因して基板裏面にチャック跡が残り、このチャック跡が前工程からの汚染に加わり、基板表面の高さにズレを生じて、露光時のフォーカス異常を発生させる問題があった。また、基板の裏面に付着したパーティクルが離脱し、カセットに収容する場合に、下側に収容されている基板の表面を汚染するとか、あるいは、基板搬送装置に転移して他の基板を汚染するといった問題があった。
【0003】そこで、上述のような問題を回避するために、基板の外周縁側に、基板の裏面を支持する支持ピンと、基板の端面と当接して水平方向の位置を規制する規制ピンとを設けるとか、あるいは、基板の外周縁をその全周にわたって覆いながら支持する環状部材を設けるなど、基板をその外周縁側でのみ支持するように構成したものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、支持ピンと規制ピンとから構成した場合、回転に伴ってピンにより乱流が発生し、ピンの周囲において塗布均一性が低下する欠点があった。一方、環状部材を設けるものの場合、塗布均一性には優れているが、基板の端面や裏面が汚れやすく、また、それらを洗浄しても洗浄液が残りやすく、基板の端面や裏面の清浄度が低下する欠点があった。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板裏面にチャック跡を生じさせないものでありながら、塗布均一性を損なうことなく、基板の端面や裏面の清浄度を高くできるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述のような目的を達成するために、基板を保持して鉛直方向の軸芯周りで回転する基板保持手段と、その基板保持手段に保持された基板に処理液を供給する処理液供給手段とを備えた回転式基板処理装置において、基板保持手段に、基板をその裏面に点接触して支持するピン状支持部材と、ピン状支持部材による支持状態の基板の外周端縁に点接触して基板の水平方向の位置を規制する規制部材とを備え、かつ、平坦な上面を有するとともに規制部材の水平方向外側で基板の外周縁を全周にわたって覆う環状部材と、基板から遠心力によって流されるドレンを鉛直方向下方に向かわせるドレン流路とを備えて構成する。
【0007】
【作用】本発明の回転式基板処理装置の構成によれば、ピン状支持部材を基板の裏面に、そして、規制部材を基板の外周端縁にそれぞれ点接触させることにより、基板を保持して回転させることができる。しかも、規制部材の水平方向外側で、上面を平坦にした環状部材で基板の外周縁を全周にわたって覆い、かつ、塗布液やエッジリンスの場合の溶剤といった処理液やドレンが基板の外周端縁と環状部材との間に入り込んでも、それらを鉛直方向下方に向かうドレン流路を通じて流すことができる。一方、基板回転に伴う遠心力により、外側に向かってピン状支持部材や規制部材に作用する気流が生じるが、その気流を環状部材によって遮るとともにドレン流路により下方側に方向転換させ、気流に抵抗を与え、ピン状支持部材や規制部材の周囲に乱流が発生することを抑制できる。
【0008】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の回転式基板処理装置の実施例を示す全体概略縦断面図、図2は要部の平面図、図3は要部の斜視図であり、電動モータ1の駆動によって鉛直方向の軸芯周りで回転する回転軸2の上端に、基板Wの外周縁を載置して保持する基板保持手段3が一体回転可能に取り付けられている。
【0009】基板保持手段3およびそれによって水平姿勢に保持された基板Wの周囲は、昇降駆動機構(図示せず)によって昇降可能な下側の第1のカップ4と、それより上側の第2のカップ5とで覆われている。
【0010】第2のカップ5の外側には、基板W上の回転中心に相当する供給位置と基板W上から離れた待機位置にわたって移動可能に構成されたレジスト液供給ノズル6が設けられ、供給位置において基板Wの表面にレジスト液を供給し、基板Wの回転により基板Wの表面にレジスト液を塗布できるように構成されている。また、第2のカップ5の外側には、基板Wの外周縁上に相当する供給位置と基板W上から離れた待機位置にわたって移動可能に構成された溶剤供給ノズル7が設けられ、供給位置において基板Wの表面の外周縁に溶剤を供給し、基板外周縁のレジスト液を除去できるように構成されている。
【0011】基板保持手段3は、回転軸2に一体回転可能に連結される底板8に、図4の要部の拡大断面図に示すように、スペーサ9を介して排水用の隙間(例えば、約0.2mm )が形成されるように環状の支持材10が取り付けて構成されている。
【0012】支持材10の上面には、その周方向に所定間隔を隔てて3本のピン状支持部材11…が設けられ、基板Wの裏面に点接触して基板Wを支持するように構成されている。
【0013】また、支持材10の上面のピン状支持部材11…よりも外側には、その周方向に所定間隔を隔てて6本のピン状の規制部材12…が設けられ、ピン状支持部材11…による支持状態の基板Wの外周端縁に点接触して基板Wの水平方向の位置を規制するように構成されている。規制部材12…のうちの所定の2本は、基板WのオリエンテーションフラットOFの外周端縁に点接触して基板Wに回転力を有効に伝達できるように設けられている。規制部材12としては、ピン状に限らず、基板Wの外周端縁に点接触できるように構成するものであれば良く、棒状でも板状でも良い。
【0014】前記規制部材12…の水平方向外側において、基板Wの外周縁を全周にわたって覆うように環状部材13が設けられ、かつ、基板Wの外周縁ならびに規制部材12…と環状部材13の内周面との間、および、支持材10の外周面と環状部材13の内周面との間に、基板Wから遠心力によって流されるドレンを鉛直方向下方に向かわせるドレン流路14が形成されている。
【0015】環状部材13の上面は平坦な水平面に構成され、また、環状部材13の下部はスペーサ(図示せず)を介してドレン排出用の隙間が形成されるように底板8に取り付けられ、ドレン流路14を通じて流されるレジスト液や溶剤を外部に排出できるように構成されている。また、ドレン流路14により、遠心力により基板Wの外周縁と環状部材13の内周面との間側に向かう気流を環状部材13の内周面で受け止め、その流れに抵抗を与え、気流のほとんどを乱れの無い状態で環状部材13の平坦な上面に沿って流し、ピン状支持部材11…や規制部材12…によって乱流が生じることを防止できるように構成されている。
【0016】回転軸2が筒状に構成され、その回転軸2内から底板8を貫通する状態で洗浄液供給ノズル15が設けられ、基板Wの裏面に洗浄液を供給し、排水用の隙間からドレン排出用の隙間を通じて外部に排出し、基板Wの裏面を洗浄できるように構成されている。
【0017】底板8の所定の3箇所にピン挿通孔16が形成され、かつ、底板8の下方に、3本の基板昇降ピン17…が昇降可能に設けられ、ロータリー・エンコーダなどにより基板保持手段3を所定位置で停止させ、その状態で基板昇降ピン17…をピン挿通孔16を通じて昇降させ、基板Wをピン状支持部材11…に支持させる処理位置とそれより上方の受け渡し位置とに昇降するように構成されている。
【0018】以上の構成により、レジスト液の塗布やエッジリンスや裏面洗浄を行うときに、基板Wの回転による遠心力に伴って生じる気流をピン状支持部材11…や規制部材12…によって乱すことを防止して塗布均一性を向上できる。また、ピン状支持部材11…および規制部材12…それぞれに点接触させて基板Wを保持するために、真空吸着による場合のようなチャック跡が生じることを回避でき。更に、ドレン流路14を通じてレジスト液や溶剤などを良好に排出でき、基板Wの端縁や裏面の清浄度を高くできる。
【0019】次に、上記実施例装置と従来装置との比較実験結果について説明する。従来装置としては、基板Wを真空吸着によって保持する構成のものを用いた。直径6インチの基板Wにレジスト液を 1.2μmの厚さに塗布したところ、膜厚変動は20〜30オングストロームで従来装置と同等であった。また、乱流による風きり跡も基板Wの端縁から2mm以内に収まった。エッジリンス後の洗浄性も同等であった。これに対し、実施例装置によれば、従来装置のようなチャック跡が全く無く、裏面に付着した 0.2μm以上のパーティクル数が、裏面洗浄を行わない場合に、従来装置では数千個であったのに比べて 200〜 300個程度にまで減少し、そして、裏面洗浄を行った場合には、従来装置の 300個程度が数個以下にまで減少し、処理品質を大幅に向上できることが明らかであった。
【0020】前述のレジスト液供給ノズル6、溶剤供給ノズル7および洗浄液供給ノズル15をして処理液供給手段と総称する。
【0021】本発明としては、上述実施例のようなオリエンテーションフラットOFを有する円形基板に限らず、ノッチを有する円形基板や液晶用などの角型基板に対する回転式基板処理装置にも適用できる。
【0022】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の回転式基板処理装置によれば、ピン状支持部材を基板の裏面に、そして、規制部材を基板の外周端縁にそれぞれ点接触させて基板を保持するから、従来の真空吸着による場合のように基板裏面にチャック跡を生じさせることを回避できる。また、規制部材の外側で基板の外周縁を覆う環状部材の上面が平坦であるために、その回転に伴って気流が発生することを軽減できる。しかも、環状部材とドレン流路とによって、塗布液やエッジリンスの場合の溶剤といった処理液やドレンが基板の外周端縁と環状部材との間に入り込んだまま残って基板の端縁や裏面を汚染することを防止するとともに、基板回転に伴う遠心力によって生じる気流に抵抗を与えてピン状支持部材や規制部材の周囲に乱流が発生することを抑制するから、塗布均一性を損なうことなく、基板の端面や裏面の清浄度を高め、処理品質を向上できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転式基板処理装置の実施例を示す全体概略縦断面図である。
【図2】要部の平面図である。
【図3】要部の斜視図である。
【図4】要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
3…基板保持手段
6…レジスト液供給ノズル
7…溶剤供給ノズル
11…ピン状支持部材
12…規制部材
13…環状部材
14…ドレン流路
15…洗浄液供給ノズル
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板を保持して鉛直方向の軸芯周りで回転する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された前記基板に処理液を供給する処理液供給手段とを備えた回転式基板処理装置であって、前記基板保持手段に、前記基板をその裏面に点接触して支持するピン状支持部材と、前記ピン状支持部材による支持状態の前記基板の外周端縁に点接触して前記基板の水平方向の位置を規制する規制部材とを備え、かつ、平坦な上面を有するとともに前記規制部材の水平方向外側で前記基板の外周縁を全周にわたって覆う環状部材と、前記基板から遠心力によって流されるドレンを鉛直方向下方に向かわせるドレン流路とを備えたことを特徴とする回転式基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平8−131929
【公開日】平成8年(1996)5月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−298908
【出願日】平成6年(1994)11月7日
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)