説明

回転式容積型蒸気エンジン

【課題】簡易な構成の蒸気エンジンにより、高温の熱源に限らず、内燃機関の排熱等各種の低温状態の熱源からも効率的に機械的エネルギを得る。
【解決手段】回転するロータ13を備えた容積型機関1を設置し、その下方に蒸気発生部2を配置するとともに上方にコンデンサ3を配置する。蒸気発生部2において加熱された水は、蒸気となって容積型機関1に供給されて上方に移動する作動室に入り、ロータ13を回転させた後コンデンサ3に送られ、ここで凝縮して復水となる。復水は、重力によって下方のロータ13に落下し、ロータ13の回転に下方に移動する作動室を経て蒸気発生部2に還流する。この蒸気エンジンは低速であっても効率よく作動することができ、また、覆水を還流させるポンプを設置する必要がなく、構成がコンパクトとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギを回転エネルギ等の機械的エネルギに変換するための蒸気エンジン、殊に、比較的低温の熱源から効率的に機械的エネルギを発生させる、簡易な構成を備えた蒸気エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境対策あるいは省資源、省エネルギの観点から、近年、多様なエネルギ資源の利用技術の開発が進んでおり、その中には、太陽熱等自然界に存在する熱エネルギから機械的エネルギを取り出す技術がある。また、ディーゼル機関等の内燃機関の排気ガスや冷却水中に廃棄される排熱を利用して動力を発生させ、その動力を回収することにより内燃機関の熱効率を向上させる技術も開発されている。
【0003】
熱エネルギを回転エネルギ等の機械的エネルギに変換するには熱機関(エンジン)が使用され、熱機関には、燃焼により高温高圧とした空気を直接作動流体とする内燃機関と、伝熱により作動流体を高温高圧とする外燃機関とがある。自然界の熱エネルギや内燃機関の排熱などを機械的エネルギに変換するには内燃機関を利用することはできないので、外燃機関である蒸気エンジンが用いられることが多い。通常、蒸気エンジンは、熱源の熱により蒸気を発生させるボイラ等の蒸気発生器、動力を発生させるための蒸気タービン等の膨張機、膨張した蒸気を凝縮し復水させるコンデンサ、及び、復水を蒸気発生器に還流させる復水ポンプを備えており、構成が複雑で大規模な設備となっている。
【0004】
ところで、石油、天然ガス等、通常の燃料を用いる内燃機関あるいは外燃機関は、燃料の燃焼により高温高圧の作動流体を発生させて熱エネルギを機械的エネルギに変換するものであリ、高温状態の熱源から機械的エネルギを取り出すので熱効率が高い。しかし、自然界の熱エネルギや内燃機関の排熱などは一般的にそれほど高温ではない、つまり低温状態の熱エネルギであって、このような熱源から機械的エネルギを効率的に取り出すには、低温状態の熱源に適した熱機関が必要となる。
【0005】
低温状態の熱源から機械的エネルギを発生させるための、比較的簡単な構成を備えた熱機関として、特開2001−20706号公報に示されるエンジンが公知である。このエンジンは、図6に示されるように、蒸気発生部101と冷却部102とを備え、それらの間はノズル103で連結される。冷却部102のノズル103と対向する位置にはタービン106が配置してあり、タービン106はマグネット107と一体となって回転する。マグネット107の内側には、静止した発電コイル110が対向するように配置され、マグネット107と発電コイル110は発電装置を構成する。蒸気発生部101と冷却部102とはそれぞれ密閉され、その内部には作動流体である水104が封入されるとともに、内部の空気等は真空ポンプにより排気されている。また、冷却部102の上方には放熱のための多数のヒートパイプ105が取り付けられている。
【0006】
蒸気発生部101と冷却部102とは全体としてヒートパイプをなしており、蒸気発生部101で下方から加熱され水蒸気となった水104は、高速流となりノズル103からタービン106のブレードに噴出する。これにより、タービン106及びマグネット107が回転して回転エネルギが生じ、回転エネルギは、マグネット107と発電コイル110により最終的には電気エネルギの形に変換されて外部に出力される。タービン106を駆動した後の蒸気は、ヒートパイプ105の放熱作用に伴い冷却されて凝縮し、水に戻る。この復水は重力によって冷却部102の下方に落下し、装置の中央部から蒸気発生部101に還流される。
【0007】
密封容器内に封入された液体の蒸発と凝縮とを利用するヒートパイプは、一般的には熱の輸送手段つまり熱伝達装置として用いられるものである。しかし、ヒートパイプ内に封入された液体の蒸気は大きな速度エネルギを伴って移動するから、上記のとおりこれから動力を取り出すことが可能であって、この場合には、低温状態の熱源から機械的エネルギを取り出すことができるようになる。
【特許文献1】特開2001−20706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示されるタービンは、作動流体の速度エネルギを利用するいわゆる速度型機関であるが、タービンを効率的に作動させるには、タービンの回転数を上昇させその周速を蒸気の速度に匹敵するような値まで増大させる必要がある。タービンを小型化し直径を小さくしたときは、タービン回転数は非常に高回転となり、タービンには大きな遠心力が作用して破損の虞れが生じるとともに、高速回転の機関により負荷を駆動するには、通常、減速機を設置して回転数を低下させることが不可欠となる。発電機を利用して電気エネルギの形で動力を取り出す場合でも、高速の発電機は制御装置などが複雑で高価なものである。
【0009】
タービン装置においては、特許文献1にも示されるとおり、作動流体である蒸気の速度エネルギを増加させる目的で、タービン入口にノズルが配置される。そのため、加熱部とタービンとの距離が比較的長く、この間で蒸気は冷却されて熱損失が生じる。そして、加熱部の温度が低く蒸気が低温であるときは、蒸気の過熱度が低いので冷却により水滴が生じやすい。水滴が発生すると高速でタービンブレードに衝突し、タービンブレードには水滴の衝突による浸食、いわゆるエロージョンが起こる。
【0010】
また、密閉容器の中に熱機関を収容しこれを回転させるときは、回転軸はシール性を備えた軸受により支持しなければならない。タービンのような高速回転を行う回転軸を支持するには精密な軸受が必要であって、シール性を確保しながら支持するには、その軸受部に複雑高価なものを採用することとなり、保守管理のコストも増大する。
本発明の課題は、高温の熱源に限らず、内燃機関の排熱等低温状態の各種の熱源から機械的エネルギを得ることが可能な熱機関を提供し、しかも、従来の熱機関における上述の問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題に鑑み、本発明の蒸気エンジンは、回転するロータを備えた容積型機関を設置して、その下方に蒸気発生部を配置するとともに上方にコンデンサを配置し、容積型機関を介して作動流体を移送し還流させるものである。すなわち、本発明は、
「回転するロータを備えた容積型機関を設置して、その容積型機関の下方には、封入された液体を加熱して蒸気を発生する蒸気発生部を前記容積型機関と連通させて配置するとともに、前記容積型機関の上方には、液体の蒸気を凝縮するコンデンサを前記容積型機関と連通させて配置し、
前記ロータには複数の作動室を設け、
前記ロータの回転に伴い上方に移動する側の前記作動室には、前記蒸気発生部で発生させた液体の蒸気が送り込まれ、さらに、前記ロータの回転に伴い下方に移動する側の前記作動室には、前記コンデンサにより凝縮された液体が送り込まれて前記蒸気発生部に還流される」
ことを特徴とする蒸気エンジンとなっている。
【0012】
請求項2に記載のように、前記コンデンサに真空ポンプを接続して、前記コンデンサ内の圧力を液体の飽和蒸気圧とすることが好ましい。
【0013】
請求項3に記載のように、封入された液体の液位を、蒸気エンジンが作動していない状態では、前記コンデンサ内に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蒸気エンジンでは、下方に蒸気発生部を配置するとともに上方にコンデンサを配置したヒートパイプと同様な構造の装置において、その中間に、回転するロータを備えた容積型機関を設置している。ロータには複数の作動室が設けられ、ロータの回転に伴い上方に移動する側の作動室には高温高圧の蒸気が送り込まれるので、ロータに回転トルクが働き、これにより、動力を取り出すことができる。ロータに作用する回転トルクの大きさは蒸気の圧力で決定され、ロータの回転速度には無関係であるため、ロータが低速で回転する際にも一定のトルクが得られる。したがって、このエンジンは、蒸気の速度エネルギを回転エネルギに変換するタービンとは異なり、低速でも効率よく作動させることが可能である。
【0015】
ロータの作動室内の蒸気はロータの回転に伴って膨張し、作動室が所定の位置に達すると、上部に配置されたコンデンサ内に排出される。蒸気はここで冷却され凝縮して液体となり、その液体は重力によって容積型機関のロータの上面に落下する。ロータ上面に滞留した液体は、ロータの回転に伴い下方に移動する側の作動室、つまり、容積が減少して閉じ込み部を形成する側の作動室に入り、その作動室が所定の位置になると下方の蒸気発生部に還流される。このように、コンデンサで凝縮した液体は、容積型機関のロータの回転を利用して強制的に蒸気発生部に移送されるから、通常の蒸気エンジンに見られるような復水ポンプを省くことができ、エンジンの構成が簡素でコンパクトなものとなる。
【0016】
本発明の蒸気エンジンでは、タービンのようにノズルを設ける必要がないので、蒸気発生部を容積型機関と近接して配置することができ、その分熱損失が減少する。そして、回転速度も低速であるため、タービンのように、回転軸を支持するベアリングに高回転用の精度の高いものを採用する必要はなく、また、水滴の衝突に起因するエロージョンは発生しない。
【0017】
請求項2の発明のように、コンデンサに真空ポンプを接続してコンデンサ内から空気等のガスを排気し、コンデンサ内の圧力を封入された液体の飽和蒸気圧としたときは、発生した蒸気を十分に膨張させエンジン出力を増加させることができると同時に、コンデンサ側の圧力低下に対応して、蒸気発生部の圧力を低下させることができる。その結果、加熱部の温度がそれほど高温ではない場合でも、液体は容易に蒸気となり、エンジンを効率的に作動させ回転エネルギを取り出すことが可能である。
【0018】
本発明の蒸気エンジンでは、蒸気発生部、容積型機関及びコンデンサが互いに連通した状態で上下方向に配置されている。したがって、エンジンに封入される液体の液位、つまり、エンジンが作動していない状態のときの液位は自由に設定が可能である。請求項3の発明のように、これをコンデンサ内に設定したときは、蒸気エンジンの作動中はコンデンサ内が蒸気と液体との混合体で満たされ、蒸気は、実質的には液体との直接接触によって冷却され凝縮される。このため、熱伝達が促進され、コンデンサを小型でコンパクトなものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の蒸気エンジンの断面図であって、(a)は容積型機関のロータの回転軸に直交する中央断面を示し、(b)は(a)とは直角をなす断面を示すもので、容積型機関の部分はロータの回転軸を含む断面を示している。図2には、容積型機関の拡大断面図を示す。
【0020】
本発明の蒸気エンジンは、動力を取り出すための容積型機関1を備えており、その下方には蒸気を発生させる蒸気発生部2が、また、上方には蒸気を冷却して凝縮させるコンデンサ3が配置されている。容積型機関1と蒸気発生部2及びコンデンサ3とは、それぞれ連結用短管及び継手により接続され、それらの内部には、作動流体として水が封入される。封入された水は、エンジンが作動していない状態においては、蒸気発生部2の内部を満たし、その水位L1が容積型機関1のロータの直下となるように設定される。
【0021】
蒸気発生部2の下面は、内燃機関の排熱等、外部の熱源により加熱される伝熱面となっており、ここで加熱された水は蒸気となって上部の短管から容積型機関1に導入される。また、コンデンサ3は水平断面が円形の蒸気溜め部31を備え、蒸気溜め部31の上部には、放熱により蒸気を冷却し凝縮するため、蒸気溜め部31と連通する多数の管体32が円形状に配置して取り付けられており、この管体32の上端は閉鎖されている。さらに、コンデンサ3の蒸気溜め部31には、逆止弁33を介して真空ポンプ34が接続され、空気等のガスを排気しコンデンサ3の内部を飽和蒸気圧に保つ。
【0022】
容積型機関1は、この実施例では、図2に示すように、ベーンポンプと同様な構成を有するベーン型機械として構成されている。すなわち、容積型機関1は円形断面の空洞部11が形成されたケーシング12を備え、空洞部11には円形断面のロータ13が偏心して設置されている。ロータ13には径方向に移動可能な複数のベーン14が設けてあり、ベーン14は、ロータ13とともに回転しながら遠心力により径方向外方に移動して、その先端は空洞部11の周壁と接触する。したがって、容積型機関1には、隣り合うベーン14とロータ13の外面及び空洞部11の周壁により囲まれた作動室15が形成される。
【0023】
容積型機関1の下部には蒸気入口部16が、上部には蒸気出口部17が設けられ、それぞれ蒸気発生部2、コンデンサ3に連通されている。ロータ13は、蒸気入口部16から送られる蒸気によって図2の白抜き矢印方向に回転し、回転に伴って、図2における縦中心軸Cの右側の作動室15は上方に向けて移動し、左側の作動室15は下方に向けて移動する。そして、作動室15の容積はロータ13の回転に伴って変化し、横中心軸Dの下側では増大し、上側においては減少する。また、コンデンサ3で凝縮した復水は、重力により蒸気出口部17を経てロータ13の上面に落下する。
【0024】
ロータ13は、図1(b)に示されるように、偏心した中心軸の両端がケーシング12の側壁に軸受けして回転可能に支持される。中心軸の一方はケーシング12を貫通して外方に延び、そこに発電機4の回転子が連結されている。中心軸がケーシング12を貫通する部分には、容積型機関1内の蒸気又は水を密封するため、軸シール5が配置される。この実施例は、発電機を駆動するものであるが、内燃機関の排熱を回転エネルギに変換するときは、容積型機関1の中心軸を伝動装置によって内燃機関の出力軸に連結し、その出力を助勢するように構成することもできる。
【0025】
次いで、本発明の蒸気エンジンの作動について、図3の作動図により説明する。
水が封入された蒸気エンジンの蒸気発生部2の下面は、内燃機関の排熱あるいは太陽熱等の熱源によって加熱され、蒸気発生部2内の水は沸騰して比容積が非常に増大し、高圧の蒸気となる。この高圧蒸気は、蒸気発生部2の上方に設けられた短管から、破線の矢印のように容積型機関1に送り込まれる。
【0026】
封入された水の水位L1は、蒸気エンジンが非作動状態にあるときは、容積型機関1のロータ13の直下となっている(図1(a)参照)。蒸気エンジンの始動時には、発生した蒸気によって水が押し上げられ、蒸気と水との混合体がロータ13を回転させながらロータ13の上方に達して、コンデンサ3に送られる。そして、蒸気エンジンの定常運転時には、コンデンサ3で冷却されて生じた復水がほぼ一定の液面L2を形成し、その中を蒸気が気泡となって上昇して、コンデンサ3内で冷却されることとなる。
【0027】
蒸気エンジンの定常運転時では、短管から容積型機関1に供給された高圧蒸気は、容積が逐次増加する横中心線Dの下側の作動室15に充満する。この蒸気は、ロータの回転に伴い上方に移動する側の作動室15、すなわち、縦中心線Cの右側の作動室15に送り込まれ、偏心したロータ13及びベーン14に蒸気発生器2側とコンデンサ3側との圧力差に基づく回転トルクを付与する。この実施例では、ロータ13の周方向に広い範囲に亘って蒸気入口部16の開口が設けられているが、蒸気入口部16が開口する範囲を狭めた場合には、作動室15は蒸気入口部16を通過すると密閉状態となり、これによって、蒸気が作動室15内で膨張するように構成することもできる。
【0028】
ロータ13の回転に伴いベーン14が蒸気出口部17の開口を通過したときは、上方に移動する作動室15内の蒸気は、真空ポンプ34により低圧となったコンデンサ3側の空間に放出される。コンデンサ3の下方の容積型機関1との接続部には、コンデンサ3により冷却され凝縮した復水が滞留しており、蒸気はこの中を気泡となって通過しその一部は復水との直接接触によって水となる。残りの蒸気は復水の液面L2の上方に達し、管体32に送られて凝縮し、復水となって液面L2に向けて落下する。
【0029】
そして、コンデンサ3の下方の、容積型機関1との接続部に滞留した復水は、水滴となってロータ13の上面に落下し、ロータ13の回転に伴って、縦中心軸Cの左側の作動室15、つまり下方に向けて移動する作動室15によって蒸気入口部16に還流される。なお、このとき作動室15の容積が減少して最小容積となる閉じ込み部Sが生じるが、ここに閉じ込められた非圧縮性流体である復水によってロータ13等に損傷が生じないよう、ロータ13の表面に弾性変形可能な弾性材を設けることもできる。蒸気入り口部16に還流された復水は、重力により蒸気発生部2に下降し、加熱されて再び蒸気となる。本発明の蒸気エンジンでは、このような蒸発、凝縮のサイクルを繰り返しながら、熱源の保有する熱が動力に変換される。
【0030】
上記の実施例では、容積型機関1としてベーン型機械を用いているが、図4に示すようなギヤ型機械を利用することもできる。このギヤ型機械は、ギヤポンプと同様に、互いに噛合いながら回転する2個のギヤ101と、これらのギヤ101を収容するケーシング102とを有している。ケーシング102の下方の蒸気発生部で発生した蒸気は、ギヤ101の下側に充満し、ギヤ101の回転に応じてギヤ101の隣り合う歯部とケーシング102により囲まれる作動室105内に入る。ギヤ101の外方側に形成される作動室105は、ギヤ101の回転に伴って上方に移動して、最上部付近では低圧のコンデンサ側に開放される。ギヤ101は、蒸気発生部で発生した高圧蒸気とコンデンサ側の低圧蒸気との差圧に基づくトルクによって回転する。
【0031】
作動室15がコンデンサ側に開放されると、その中の蒸気はコンデンサに送られ、ここで冷却されて復水となる。復水は重力によってギヤ101の上面に落下し、下方に移動する歯部によって2個のギヤ101の噛合い部分に形成される閉じ込み部Sを介して、下方の蒸気発生部に還流される。図1の容積型機関と同様に、ギヤ101の一方の回転軸に発電機を連結することにより、電力を取り出すことが可能である。
【0032】
図1の実施例では、封入された水の水位は、蒸気エンジンの非作動時においてはロータ13の直下となっているけれども、図5に概略的に示すように、本発明の蒸気エンジンでは、非作動時の水の水位L1をコンデンサの内部に設定することができる。このときは、蒸気エンジンの通常運転時には、発生した蒸気によって水が押し上げられて水位L2はコンデンサの上部に達し、コンデンサ内部は復水で満たされる。容積型機関からコンデンサ内に放出された蒸気は、コンデンサ内で復水との直接接触により凝縮するので、熱伝達が良好となり、コンデンサを小型化することができる。また、コンデンサ内に金網35等を設置すると、蒸気の気泡が細分化され、熱伝達を一層促進することができる。
【0033】
以上詳述したように、本発明の蒸気エンジンは、ロータを備えた容積型機関を設置してその下方に蒸気発生部を配置するとともに上方にコンデンサを配置し、容積型機関を介して作動流体を移送し還流させることにより、熱源の保有する熱を動力に変換するものである。上記の実施例では、内燃機関の排熱等低温状態の熱を回転エネルギに変換する場合について述べているけれども、本発明の蒸気エンジンにおいては、燃焼等による高温の熱源を使用して動力を取り出すことが可能であるのは言うまでもない。また、作動流体となる液体としては、水に限らず例えばアンモニア、アルコール、フロン等の冷媒を用いることができるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の蒸気エンジンの断面図である。
【図2】本発明の蒸気エンジンにおける容積型機関の拡大断面図である。
【図3】本発明の蒸気エンジンの作動を示す図である。
【図4】本発明の蒸気エンジンにおける容積型機関の別例を示す図である。
【図5】本発明の蒸気エンジンの別の作動形態を示す概略図である。
【図6】従来の蒸気エンジンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 容積型機関
12 ケーシング
13 ロータ
15 作動室
16 蒸気入口部
17 蒸気出口部
2 蒸気発生部
3 コンデンサ
32 菅体
34 真空ポンプ
4 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するロータ(13)を備えた容積型機関(1)を設置して、その容積型機関(1)の下方には、封入された液体を加熱して蒸気を発生する蒸気発生部(2)を前記容積型機関(1)と連通させて配置するとともに、前記容積型機関(1)の上方には、液体の蒸気を凝縮するコンデンサ(2)を前記容積型機関(1)と連通させて配置し、
前記ロータ(13)には複数の作動室(15)を設け、
前記ロータ(13)の回転に伴い上方に移動する側の前記作動室(15)には、前記蒸気発生部(2)で発生させた液体の蒸気が送り込まれ、さらに、前記ロータ(13)の回転に伴い下方に移動する側の前記作動室(15)には、前記コンデンサ(3)により凝縮された液体が送り込まれて前記蒸気発生部(2)に還流されることを特徴とする蒸気エンジン。
【請求項2】
前記コンデンサ(3)には真空ポンプ(34)が接続されており、前記コンデンサ(3)内の圧力が液体の飽和蒸気圧とされている請求項1に記載の蒸気エンジン。
【請求項3】
封入された液体の液位が、蒸気エンジンが作動していない状態では、前記コンデンサ(3)内に設定されている請求項1又は請求項2に記載の蒸気エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−64102(P2007−64102A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251404(P2005−251404)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】