説明

回転式洗浄ヘッド、管路内面の洗浄装置及び洗浄方法

【課題】曲がっている管路を通過させて洗浄を行っても破損が起こりにくく、管路内面を効率よく確実に洗浄することができる回転式洗浄ヘッドを提供すること。
【解決手段】回転式洗浄ヘッド12は、回転部21と回転部21の先端に連結されるブラシ部22とを備える。回転部21には給水ホースが接続され、そのホースから供給された洗浄水W1を噴射させることによって回転部21が回転する。ブラシ部22は、回転部21と一体的に回転することで管路内面をブラッシングする。ブラシ部22は、筒状のブラシ部本体40と、ブラシ部本体40の外周面における複数の箇所にブラシ毛41を植設することで形成された複数のブラシ列42とを有する。複数のブラシ列42は、列前端側から列後端側に行くに従って、ヘッド回転軸の軸線方向を中心とする第1の方向に捩じれるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内面を洗浄するための回転式洗浄ヘッド、管路内面の洗浄装置及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道管路を長期間使用すると、内壁にマンガンや水垢等が付着・堆積してしまう。この状態を放置すると、堆積物の隆起が進んで配管が詰まったり、水質の劣化を引き起こしたりする。このため、水道管路の内面の付着物を洗浄除去する作業が定期的に行われている。
【0003】
この水道管路の洗浄装置としては、ホース先端に回転式洗浄部材(洗浄ヘッドや洗浄ノズル)を接続し、管路内において洗浄水の供給によりその洗浄部材を回転させて洗浄作業を行う装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3等参照)。具体的には、特許文献1に開示されている洗浄ヘッドは、ホースが接続されそのホースからの洗浄水を噴出させることで回転する回転部を備えた第1のヘッドと、第1のヘッドと距離をおいて設けられた第2のヘッドと、各ヘッド間に設けられ管路の径方向に弾性変形可能なブラシ支持部(ステンレス製の薄板)とを備えている。さらに、第1のヘッドと第2のヘッドとが互いに近づくように各ヘッドに力を作用させることでブラシ支持部を管路の径方向に弾性変形させる引張りばねが設けられている。そして、洗浄作業時には、ブラシ支持部を縮径させた状態で洗浄ヘッドを管路内に挿入する。洗浄ヘッドが管路内に挿入されると、引張りばねによって各ヘッドが近づくように力が作用して、ブラシ支持部が径方向の外向きに広がるように弾性変形される。この結果、ブラシ支持部に設けられた洗浄ブラシが管路内面に押し付けられる。この状態で洗浄水が供給されることで、洗浄ヘッドが回転して管路内面が洗浄される。
【0004】
また、特許文献2に開示されている洗浄ヘッドは、ホースが接続されそのホースからの洗浄液を噴射させることで回転する回転部と、回転部に片持ち状態で取り付けられたアームと、アームの先端に設けられたブラシ部とを備えている。洗浄作業時において、洗浄ヘッドが管路内に挿入されると、アームの弾性力によってブラシ部が管路内面に押圧される。そして、洗浄水の供給によって回転部が回転することで、ブラシ部によりブラッシングされて管路内面が洗浄される。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されている洗浄ノズルは、ホースが接続されるシャフト部と、シャフト部に回転自在に設けられホースからの洗浄水を噴出させることで回転する回転ノズル部とを備える。そして、洗浄作業時においては、回転ノズル部から管路内面に高圧水を噴出することにより管路内面が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−192395号公報
【特許文献2】特開2006−88002号公報
【特許文献3】特開2008−194611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の洗浄ヘッドは、比較的に長いブラシ支持部材を第1のヘッドと第2のヘッドとで挟み込む構成であるため、全長が長くなる。このため、水道管路が曲がっている場合には洗浄ヘッドが挿入し難い。また、特許文献1の洗浄ヘッドの場合、ブラシ支持部が金属製の薄板からなり十分な強度を有していないため、曲がっている管路を通過させて洗浄作業を行うと、ブラシ支持部に破損が起こりやすい。また、特許文献2の洗浄ヘッドは、アームの基端からブラシ部の先端までの距離が長くなるため、回転時においてホースなどにブラシ部が絡み、ブラシ部が破損するおそれがある。このように、管路内で洗浄ヘッドのブラシ部などが破損した場合、破損した部材が水道水に混入してしまうため、その除去作業が必要となる。
【0008】
因みに、特許文献3の洗浄ノズルは、ブラシ部がないため、破損し難い構造である。しかしながら、その洗浄ノズルは、回転ノズル部の側面に噴出口が設けられており、管路内面の至近距離から高圧水を噴射する構成である。このため、水道管路の内面を洗浄する場合、その内面をコーティングする保護皮膜を損傷させてしまうことがある。この場合、損傷した箇所で錆びが発生して水道水に混入するといった問題が生じてしまう。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲がっている管路を通過させて洗浄を行っても破損が起こりにくく、管路内面を効率よく確実に洗浄することができる回転式洗浄ヘッド、その回転式洗浄ヘッドを用いた管路内面の洗浄装置及び洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、液体供給ホースが接続された状態で管路内に挿入され、その管軸方向に移動させながら管路内面を洗浄する回転式洗浄ヘッドであって、前記液体供給ホースが接続可能であり、前記液体供給ホースから供給された洗浄液を噴射させることによって回転する筒状の回転部と、前記回転部の先端側に連結され、その回転部と一体的に回転することで前記管路内面をブラッシングするブラシ部とを備え、前記ブラシ部は、筒状のブラシ部本体と、そのブラシ部本体の外周面における複数の箇所にブラシ毛を植設することで形成された複数のブラシ列とを有し、前記複数のブラシ列は、列前端側から列後端側に行くに従って、ヘッド回転軸の軸線方向を中心とする第1の方向に捩じれるようにして配置されていることを特徴とする回転式洗浄ヘッドをその要旨とする。
【0011】
手段1に記載の発明によると、回転部とその先端部に連結されるブラシ部とによって回転式洗浄ヘッドが構成され、液体供給ホースから回転部に供給された洗浄液を噴射させることで回転部とブラシ部とが一体的に回転される。このように構成すると、第1のヘッドと第2のヘッドとの間にブラシ支持部を設けた従来技術と比較して、洗浄ヘッドを短く形成することができる。この結果、屈曲した管路を通過させて洗浄を行っても洗浄ヘッドに破損が起こりにくくなる。また、本発明の洗浄ヘッドでは、ブラシ部を構成するブラシ部本体の外周面に、ブラシ毛が部分的に植設されて複数のブラシ列が形成されている。この場合、ブラシ部本体の外周面全体にブラシ毛を植設する場合と比較して、ブラシ毛の摩擦抵抗を低減することができ、回転力の低下を抑えることができる。さらに、複数のブラシ列は、列前端側から列後端側に行くに従って、ヘッド回転軸の軸線方向を中心とする第1の方向(時計回り方向または反時計回り方向)に捩じれるようにして(即ちオフセットされるようにして)配置されている。つまり、ブラシ毛が複数枚の羽根を有するプロペラ状に植設されているので、管路内面を効率よく洗浄することができる。
【0012】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記回転部における後端面の外周部における複数の箇所には、前記洗浄液を噴射させるための噴出用流路に連通する複数の噴出口が設けられていることをその要旨とする。
【0013】
手段2に記載の発明によると、回転部の後端面に複数の噴出口が設けられているので、回転部の側面に各噴出口を設ける場合と比較して回転部の長さを短くすることができる。また、管路内面から噴出口の位置を離すことができるため、従来技術のように、高圧の洗浄液が管路内面に吹き付けられて管路の保護皮膜が損傷するといった不具合も回避することができるとともに、高圧の洗浄液の噴出による推進力が得やすくなる。
【0014】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記噴出用流路は、流路前端側から流路後端側に行くに従って、前記第1の方向と同じ方向に捩じれるようにして形成されていることをその要旨とする。
【0015】
手段3に記載の発明によると、ヘッド回転軸の軸線方向に対して噴出用流路が傾斜して設けられるので、その噴出用流路を通して噴出口から斜め後方に洗浄液を噴射することができ、その洗浄液の噴射反力によって回転部を確実に回転させることができる。また、噴出用流路は、複数のブラシ列と同じ方向に捩れるように形成されているので、ブラシ毛と管路内面との接触抵抗が少なく、かつ推進力が発生する方向に(ブラシ列によって後ろ側に水を吐き出すように)回転部を回転させることができ、管路内面を効率よく確実に洗浄することができる。
【0016】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれかにおいて、前記回転部の内側にブッシュベアリングが設けられるとともに、前記ブラシ部本体の先端側及び後端側から挟み込むように一対のスラストベアリングが設けられていることをその要旨とする。
【0017】
手段4に記載の発明によると、回転部及びブラシ部の回転能力を十分に確保することができ、管路内面をより確実に洗浄することができる。また、一対のスラストベアリングでブラシ部を回転可能に支持する構成とすれば、従来技術と比較して洗浄ヘッドを短くすることが可能となる。
【0018】
手段5に記載の発明は、手段1乃至4のいずれかに記載の回転式洗浄ヘッドと、液体供給ホースと、前記回転式洗浄ヘッドに前記液体供給ホースを介して接続され、前記洗浄液を供給する液体供給源とを備えたことを特徴とする管路内面の洗浄装置をその要旨とする。
【0019】
手段5に記載の発明によると、液体供給源からの洗浄液が液体供給ホースを介して回転式洗浄ヘッドに供給されることにより、回転式洗浄ヘッドが回転されて管路内面が効率よく洗浄される。また、上記回転式洗浄ヘッドは、回転部とブラシ部とからなり、従来技術と比較して簡単な構成であるため、装置コストを抑えることができる。
【0020】
手段6に記載の発明は、手段1乃至4のいずれかに記載の回転式洗浄ヘッドを用いた管路内面の洗浄方法であって、液体供給ホースを接続した前記回転式洗浄ヘッドを管路内に挿入した後、前記液体供給ホースを介して前記回転式洗浄ヘッドに洗浄液を供給し、前記回転部の後端面から前記洗浄液を噴射させることにより、前記回転部とともに前記ブラシ部を回転させながら前記回転式洗浄ヘッドを前記管路の前方へ移動させて前記管路内面をブラッシングし、そのブラッシング後の前記管路内面に残存する付着物を前記噴射された洗浄液によって洗い流すようにしたことを特徴とする管路内面の洗浄方法をその要旨とする。
【0021】
手段6に記載の発明によると、液体供給ホースを介して回転式洗浄ヘッドに洗浄液が供給され、回転部の後端面から洗浄液が噴射される。この洗浄液の噴射によって、回転力が発生されて回転部とともにブラシ部が回転され、管路内面がブラッシングされる。またこのとき、洗浄液の噴射によって、管路前方への推進力が発生され、回転式洗浄ヘッドが前方に移動される。そして、ブラッシング後の管路内面に残存する付着物が洗浄液によって洗い流されることで、管路内面を効率よく洗浄することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、曲がっている管路を通過させて洗浄を行っても破損が起こりにくく、管路内面を効率よく確実に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施の形態の洗浄装置を示す概略構成図。
【図2】一実施の形態の回転式洗浄ヘッドを示す側面図。
【図3】一実施の形態の回転式洗浄ヘッドを示す背面図。
【図4】一実施の形態の回転式洗浄ヘッドを示す正面図。
【図5】一実施の形態の回転式洗浄ヘッドを示す断面図。
【図6】一実施の形態の回転式洗浄ヘッドを示す分解図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
図1に示されるように、本実施の形態の洗浄装置10は、水道管路11内に挿入されその管路内面11aを洗浄する回転式洗浄ヘッド12と、洗浄水W1の給水ホース13(液体供給ホース)と、回転式洗浄ヘッド12に給水ホース13を介して接続され、洗浄水W1を供給する給水装置14(液体供給源)とを備える。水道管路11は、口径が75mmから100mm程度であり、比較的に小径の管路である。給水装置14は、洗浄水W1を溜める貯水タンク、洗浄水W1を所定の水圧で給水ホース13に送るポンプ等からなる。
【0026】
図2は、回転式洗浄ヘッド12の側面図であり、図3は、回転式洗浄ヘッド12の背面図である。また、図4は、回転式洗浄ヘッド12の正面図であり、図5は、回転式洗浄ヘッド12の断面図である。さらに、図6は、回転式洗浄ヘッド12の分解図である。
【0027】
図1〜図5に示されるように、本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12は、洗浄水W1を噴射させることによって回転する筒状の回転部21と、回転部21の先端側に連結され、回転部21と一体的に回転することで水道管路11の内面11aをブラッシングするブラシ部22とを備える。
【0028】
図5及び図6に示されるように、回転部21は、その中心部に設けられた軸支部材24と、この軸支部材24の外周面に嵌め込まれたブッシュベアリング25と、そのブッシュベアリング25を介して軸支部材24に回転可能に設けられた回転体26とを有する。なお、軸支部材24は、回転軸として機能する円柱状の部材であり、例えばステンレスを用いて形成されている。また、ブッシュベアリング25及び回転体26は、内周面及び外周面を有する円筒状の部材であり、例えばアルミニウムを用いて形成されている。本実施の形態において、軸支部材24は、直径が15mm程度であり、長さが55mm程度である。また、ブッシュベアリング25は、内径が15mm程度、外径が28mm程度であり、回転体26は、内径が28mmであり、外径が47mm程度である。さらに、ブッシュベアリング25及び回転体26の長さは22mm程度である。
【0029】
軸支部材24の内部には、後端面にて開口するとともに軸支部材24のほぼ中央部分まで延びる流路28が設けられている。ブッシュベアリング25の内周面において、流路28の先端部に対応する位置には、環状の内周溝29が形成されており、その内周溝29は、流路28の先端部に設けられた貫通孔30を介して流路28に連通している。さらに、回転体26の内周面にも環状の内周溝32が形成されており、その内周溝32は、図示しない貫通孔を通してブッシュベアリング25の内周溝29に連通している。また、回転体26の後端面の外周部における複数の箇所には、洗浄水W1を噴射させるための複数の噴出口34が設けられている。なお、本実施の形態では、回転体26の後端面において、4つの噴出口34が等角度間隔(90°間隔)で配置されている(図3参照)。各噴出口34は噴出用流路35を通して内周溝32に連通している。各噴出口34に連通する噴出用流路35は、流路前端側から流路後端側に行くに従って、ヘッド回転軸の軸線方向を中心とする所定の方向(洗浄ヘッド12の先端側から見た場合では反時計回り方向)に捩じれるようにして形成されている。
【0030】
また、軸支部材24における後端側の外周面には雄ネジ37が形成されており、この雄ネジ37に給水ホース13の先端部に設けられたコネクタ38(図1参照)がネジ止めされるようになっている。このように、軸支部材24の後端側に給水ホース13が接続された状態で、給水ホース13から洗浄水W1から供給されると、軸支部材24の流路28、貫通孔30、ブッシュベアリング25の内周溝29、回転体26の内周溝32、及び噴出用流路35に洗浄水W1が流れ、各噴出口34から洗浄水W1が斜め後方に噴射される。この洗浄水W1の噴射時の反力によって回転体26が回転されるとともに、前方への推進力が発生される。
【0031】
図2〜図5に示されるように、ブラシ部22は、筒状のブラシ部本体40と、ブラシ部本体40の外周面における複数の箇所にブラシ毛41を植設することで形成された複数のブラシ列42とを有する。各ブラシ列42を構成しているブラシ毛41の長さはほぼ等しくなっている。複数のブラシ列42同士は所定の間隔を隔てて位置している。複数のブラシ列42は、列前端側から列後端側に行くに従って、ヘッド回転軸の軸線方向を中心とする所定の方向(洗浄ヘッド12の先端側から見た場合には反時計回り方向)に捩じれるようにして配置されている(図2参照)。つまり、ブラシ毛41は複数枚(例えば、6枚)の羽根を有するプロペラ状に植設されている。
【0032】
なお、ブラシ部本体40は、耐磨耗性に優れた樹脂材料であるジュラコン樹脂(商標名)からなり、ブラシ毛41は、例えばポリプロピレンからなる。また、ブラシ部本体40は、直径が47mm程度、長さが41mm程度のサイズを有している。なお、ブラシ部本体40の各サイズは、洗浄する既設管径によって適宜変更される。
【0033】
図5に示されるように、ブラシ部本体40には、その後端側の開口を塞ぐように回転部21の先端側が挿入されるとともに、先端側の開口を塞ぐようにヘッドキャップ43が挿入されている。また、ブラシ部本体40において、その先端側及び後端側から挟み込むように一対のスラストベアリング44,45が設けられている。より詳しくは、ブラシ部本体40の内周面における先端側には、内側に突出する突起部47が設けられており、ブラシ部本体40内においてその突起部47とヘッドキャップ43とに当接した状態でスラストベアリング44が配置されている。また、軸支部材24の先端側の外周面にはフランジ部49が突設されており、そのフランジ部49とブッシュベアリング25の先端面とに当接した状態でスラストベアリング45が配置されている。そして、ブラシ部本体40の後端側における外周面を介して回転体26にネジ50が螺入されることで、ブラシ部本体40が回転体26に固定されている。これにより、回転体26とブラシ部22とが一体的に回転するようになっている。
【0034】
さらに、軸支部材24における先端部には、ネジ孔51が形成されており、このネジ孔51には、ヘッドキャップ43の中心孔に挿入されたネジ52が螺入される。これにより、ヘッドキャップ43がブラシ部本体40の先端に固定される。この状態では、ヘッドキャップ43の外周部がスラストベアリング44を介して前記突起部47に当接する。この結果、ブラシ部本体40が軸支部材24の軸線方向に移動不能かつ周方向に回転可能に固定される。なお、ヘッドキャップ43は、アルミニウムからなり、十分な強度が確保されている。また、ヘッドキャップ43及びブラシ部本体40によって構成されるブラシ部22の先端面は、略球面状に形成されている。
【0035】
上述したように、本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12は、ブラシ部本体40が回転体26にネジ止めされるとともにヘッドキャップ43を介して軸支部材24にネジ止めされることにより、ブラシ部22が回転部21に対して着脱可能に設けられている。
【0036】
次に、本実施の形態の洗浄装置10を用いた水道管路11の洗浄方法について説明する。
【0037】
図1に示されるように、先ず、水道管路11の上流側及び下流側に設けられた開閉バルブ16,17を閉じて洗浄区間(例えば、200m程度の区間)を断水する。ここで、各バルブ16,17を閉じて断水することにより、洗浄時に発生する夾雑物(マンガン・水垢など)が洗浄区間外に流出しないようにしている。
【0038】
水道管路11の分岐管18に装着されている消火栓を撤去する。その後、分岐管18の開口部から回転式洗浄ヘッド12とその洗浄ヘッド12に接続された給水ホース13とを挿入する。そして、給水装置14を駆動して給水ホース13を介して回転式洗浄ヘッド12に洗浄水W1を供給する。すると、回転式洗浄ヘッド12において、洗浄水W1は、軸支部材24の流路28、貫通孔30、ブッシュベアリング25の内周溝29、回転体26の内周溝32、及び噴出用流路35を流れ、回転体26の後端面に設けられた複数の噴出口34から斜め後方に噴射される。そして、各噴出口34から噴射される洗浄水W1の噴射反力によって、回転体26とブラシ部22とが一体的に回転され、ブラシ部22の複数のブラシ列42によって管路内面11aがブラッシングされる。このとき、洗浄水W1の噴射反力によって、前向きの推進力が作用するため、回転式洗浄ヘッド12が管路11の前方に移動していく。本実施の形態では、各噴出口34に連通する噴出用流路35は、流路前端側から流路後端側に行くに従って、反時計回り方向(第1の方向)に捩れるようにして形成されているため、ブラシ部22は先端側から見て時計回り方向に回転される。また、ブラシ部22に形成されるブラシ列42は、列前端側から列後端側に行くに従って、反時計回り方向(第1の方向)に捩れるように配置されているので、ブラシ部22の回転時には、ブラシ毛41と管路内面11aとの接触抵抗が少なくなる。またこのとき、傾斜したブラシ列42によって水が後ろ側に吐き出されるため、前方への推進力が発生する。さらに、ブラシ部22によるブラッシング後において管路内面11aに残存する夾雑物は、回転部21の各噴出口34から噴射される洗浄水W1によって洗い流される。
【0039】
そして、洗浄区間において、回転式洗浄ヘッド12によって管路内面11aの全周かつ全長にわたって洗浄される。その洗浄区間の洗浄完了後には、給水装置14による洗浄水W1の供給を停止し、回転式洗浄ヘッド12及び給水ホース13を水道管路11から引き抜き回収する。
【0040】
その後、洗浄区間に設けられる分岐管18に排水装置(図示略)を装着し、洗浄時に発生した夾雑物を含んだ汚水を洗浄区間の水道管路11から排水する。さらに、分岐管18に消火栓を元通りに設置して、開閉バルブ16,17を開くことによって、洗浄区間の断水を解除する。以上の工程を経て水道管路11の洗浄作業が完了する。
【0041】
上述した洗浄作業後において、回転式洗浄ヘッド12におけるブラシ部22のブラシ毛41が磨耗するため、回転式洗浄ヘッド12の洗浄能力が低下してしまう。従って、水道管路11における別の洗浄区間を洗浄する場合、新品のブラシ部22に交換することで、回転式洗浄ヘッド12の洗浄能力を回復させた後に洗浄作業が行われる。
【0042】
回転式洗浄ヘッド12におけるブラシ部22の交換時には、そのブラシ部22を固定しているネジ50,52を外して、回転部21からブラシ部22を取り外す。そして、新品のブラシ部22を回転部21に装着して、そのブラシ部22をネジ止めすることでブラシ部22の交換作業が行われる。
【0043】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0044】
(1)本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12では、筒状の回転部21の先端側にブラシ部22が設けられており、回転部21に供給された洗浄水W1を噴射させることで回転部21とブラシ部22とが一体的に回転される。このように構成すると、第1のヘッドと第2のヘッドとの間にブラシ支持部を設けた従来技術と比較して、洗浄ヘッド12を短く形成することができる。この結果、屈曲した管路においても確実にブラッシングすることができるばかりでなく、屈曲部分の通過に起因する洗浄ヘッド12の破損といった問題を回避することが可能となる。また、本実施の形態の洗浄ヘッド12では、ブラシ部本体40の外周面に、ブラシ毛41が部分的に(即ち所定の間隔を隔てて)植設されて複数のブラシ列42が形成されている。この場合、ブラシ部本体40の外周面全体にブラシ毛41を植設する場合と比較して、ブラシ毛41の摩擦抵抗を低減することができ、回転力の低下を抑えることができる。さらに、複数のブラシ列42は、列前端側から列後端側に行くに従って、ヘッド回転軸の軸線方向を中心とする第1の方向(反時計回り方向)に捩じれるようにして配置されている。つまり、ブラシ毛41が複数枚の羽根を有するプロペラ状に植設されているので、管路内面11aを効率よく洗浄することができる。
【0045】
(2)本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12では、回転部21の後端面に複数の噴出口34が設けられているので、回転部21の側面に噴出口34を設ける場合と比較して回転部21の長さを短くすることができる。また、管路内面11aから噴出口34の位置を離すことができるため、従来技術のように、高圧の洗浄水が管路内面11aに吹き付けられて管路11の保護皮膜が損傷するといった不具合も回避することができる。
【0046】
(3)本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12において、回転体26に形成される噴出用流路35は、ヘッド回転軸の軸線方向に対して傾斜して(即ち捩じれるようにして)設けられているので、噴出用流路35を通して噴出口34から斜め後方に洗浄水W1を噴射することができ、その洗浄水W1の噴射反力によって回転部21を確実に回転させることができる。また、噴出用流路35は、複数のブラシ列42と同じ方向に捩れるように形成されているので、ブラシ毛41と管路内面11aとの接触抵抗が少なく、かつ推進力が発生する方向に(ブラシ列42によって後ろ側に水を吐き出すように)回転部21を回転させることができ、管路内面11aを効率よく確実に洗浄することができる。
【0047】
(4)本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12では、回転部21の内側にブッシュベアリング25が設けられるとともに、ブラシ部本体40の先端側及び後端側から挟み込むように一対のスラストベアリング44,45が設けられている。この場合、回転部21及びブラシ部22の回転能力を十分に確保することができ、管路内面11aをより確実に洗浄することができる。また、一対のスラストベアリング44,45でブラシ部22を回転可能に支持する構成とすれば、従来技術と比較して洗浄ヘッド12を確実に短くすることができる。
【0048】
(5)本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12では、ブラシ部22が回転部21に対して着脱可能に設けられており、水道管路11の洗浄後にブラシ部22の洗浄能力が低下した場合には、新たなブラシ部22に交換することができる。これにより、回転式洗浄ヘッド12の洗浄能力を容易に回復させることができる。また、交換部品であるブラシ部22は、比較的に安価な樹脂材料からなるため、部品コストを低減することができる。さらに、繰り返し使用する回転部21は金属材料(軸支部材24はステンレス、回転体26はアルミニウム)からなるため、十分な剛性を確保することができる。特に、回転軸として機能する軸支部材24はステンレスからなり錆び難いため、耐久性を十分に確保することができる。
【0049】
(6)本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12において、ブラシ部22は樹脂材料からなり、回転体26が比較的に軽い金属であるアルミニウムからなるため、洗浄ヘッド12の軽量化を図ることができる。このようにすると、ブラシ部22を確実に回転させることができ、さらに、洗浄ヘッド12をスムーズに移動させることができる。
【0050】
(7)本実施の形態の回転式洗浄ヘッド12は、ブラシ部22の先端面が略球面状に形成されているので、管路内面11aに付着物等による凹凸があったとしてもその凹凸に引っ掛かることなく洗浄ヘッド12をスムーズに移動させることができる。
【0051】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
・上記実施の形態の回転式洗浄ヘッド12では、ブラシ部本体40に6枚の羽根状にブラシ列42が設けられていたが、このブラシ列42の数は適宜変更してもよい。また、回転体26の後端面に4つの噴出口34が形成されていたが、この噴出口34の数も適宜変更してもよい。但し、複数のブラシ列42や複数の噴出口34は、ヘッド回転軸を中心に点対称となる位置に設けることが好ましい。このようにすると、ブラシ部22をスムーズに回転させることができる。
【0053】
・上記実施の形態では、消火栓が装着される分岐管18から水道管路11に洗浄ヘッド12を挿入するようにしたが、消火栓以外の付帯設備(空気弁などの設備)が装着される分岐管から洗浄ヘッド12を挿入するように構成してもよい。
【0054】
・上記実施の形態では、回転式洗浄ヘッド12を用いて、水道管路11を洗浄するものであったが、これに限定されるものではなく、水道水以外の液体を供給する液体供給用配管などの他の管路を洗浄してもよい。
【0055】
・上記実施の形態では、洗浄水W1を用いて、回転式洗浄ヘッド12を回転させて水道管路11を洗浄するものであったが、水道管以外の管では洗浄水W1以外に、洗剤などを含んだ洗浄液を用いてもよい。
【0056】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0057】
(1)液体供給ホースが接続された状態で管路内に挿入され、その管軸方向に移動させながら管路内面を洗浄する回転式洗浄ヘッドであって、前記液体供給ホースから供給された洗浄液を噴射させることによって回転可能な筒状の回転部と、前記回転部の先端側に連結され、その回転部と一体的に回転することで前記管路内面をブラッシングする筒状のブラシ部とを備え、前記ブラシ部の外周面には、その回転軸の軸線方向に対して傾斜した複数枚の羽根を有するプロペラ状にブラシ毛が植設されていることを特徴とする回転式洗浄ヘッド。
【0058】
(2)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記ブラシ部が前記回転部に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする回転式洗浄ヘッド。
【0059】
(3)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記ブラシ部が樹脂材料を用いて形成され、前記回転部が金属材料を用いて形成されていることを特徴とする回転式洗浄ヘッド。
【0060】
(4)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記回転部及びブラシ部の中心部に円柱状の軸支部材が設けられ、前記軸支部材内に形成された流路を通じて前記噴出用流路に前記洗浄液が流れることを特徴とする回転式洗浄ヘッド。
【0061】
(5)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記管路は水道管路であり、前記洗浄液として洗浄水を供給するようにしたことを特徴とする回転式洗浄ヘッド。
【0062】
(6)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記ブラシ部の先端面が略球面状に設けられていることを特徴とする回転式洗浄ヘッド。
【符号の説明】
【0063】
10…洗浄装置
11…管路としての水道管路
12…回転式洗浄ヘッド
13…液体供給ホースとしての給水ホース
14…液体供給源としての給水装置
21…回転部
22…ブラシ部
25…ブッシュベアリング
34…噴出口
35…噴出用流路
40…ブラシ部本体
41…ブラシ毛
42…ブラシ列
44,45…スラストベアリング
W1…洗浄液としての洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給ホースが接続された状態で管路内に挿入され、その管軸方向に移動させながら管路内面を洗浄する回転式洗浄ヘッドであって、
前記液体供給ホースが接続可能であり、前記液体供給ホースから供給された洗浄液を噴射させることによって回転する筒状の回転部と、
前記回転部の先端側に連結され、その回転部と一体的に回転することで前記管路内面をブラッシングするブラシ部と
を備え、
前記ブラシ部は、筒状のブラシ部本体と、そのブラシ部本体の外周面における複数の箇所にブラシ毛を植設することで形成された複数のブラシ列とを有し、
前記複数のブラシ列は、列前端側から列後端側に行くに従って、ヘッド回転軸の軸線方向を中心とする第1の方向に捩じれるようにして配置されている
ことを特徴とする回転式洗浄ヘッド。
【請求項2】
前記回転部における後端面の外周部における複数の箇所には、前記洗浄液を噴射させるための噴出用流路に連通する複数の噴出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転式洗浄ヘッド。
【請求項3】
前記噴出用流路は、流路前端側から流路後端側に行くに従って、前記第1の方向と同じ方向に捩じれるようにして形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転式洗浄ヘッド。
【請求項4】
前記回転部の内側にブッシュベアリングが設けられるとともに、前記ブラシ部本体の先端側及び後端側から挟み込むように一対のスラストベアリングが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転式洗浄ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転式洗浄ヘッドと、液体供給ホースと、前記回転式洗浄ヘッドに前記液体供給ホースを介して接続され、前記洗浄液を供給する液体供給源とを備えたことを特徴とする管路内面の洗浄装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転式洗浄ヘッドを用いた管路内面の洗浄方法であって、
液体供給ホースを接続した前記回転式洗浄ヘッドを管路内に挿入した後、前記液体供給ホースを介して前記回転式洗浄ヘッドに洗浄液を供給し、
前記回転部の後端面から前記洗浄液を噴射させることにより、前記回転部とともに前記ブラシ部を回転させながら前記回転式洗浄ヘッドを前記管路の前方へ移動させて前記管路内面をブラッシングし、そのブラッシング後の前記管路内面に残存する付着物を前記噴射された洗浄液によって洗い流すようにした
ことを特徴とする管路内面の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−253425(P2010−253425A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108552(P2009−108552)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(502278390)株式会社山越 (8)
【Fターム(参考)】