回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置
【課題】軸対称形状のミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系を利用して、回転と揺動の複合動作を行うミル容器内の各球形媒体の挙動を、容易かつ正確に逐次シミュレーションする。
【解決手段】回転動作と揺動動作を行う軸対称形状のミル容器内に充填した球形媒体の挙動を、座標中心を固定した座標系の絶対座標系K1と対称軸を座標軸の1つとした座標系の相対座標系K2とを規定し、球形媒体とミル容器壁面との接触判定を絶対座標系K1から相対座標系K2に座標変換した座標系において行い、球形媒体とミル容器壁面との接触角度を相対座標系K2で求めた後に絶対座標系K1に座標変換して求める。
【解決手段】回転動作と揺動動作を行う軸対称形状のミル容器内に充填した球形媒体の挙動を、座標中心を固定した座標系の絶対座標系K1と対称軸を座標軸の1つとした座標系の相対座標系K2とを規定し、球形媒体とミル容器壁面との接触判定を絶対座標系K1から相対座標系K2に座標変換した座標系において行い、球形媒体とミル容器壁面との接触角度を相対座標系K2で求めた後に絶対座標系K1に座標変換して求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸対称形状のミル容器内に被加工物を多数の鋼球ボール等の球形粉砕媒体(以下、球形媒体という。)とともに装填し、ミル容器を回転させつつ揺動させることにより被加工物を粉砕或いは混合する回転揺動ミル装置におけるミル容器内の球形媒体の挙動をシミュレーションする回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ミル装置は、多数個の球形媒体を収納した密閉ミル容器内に被加工物を装填してミル容器を固定された回転軸を中心として回転駆動することにより、被加工物を所定の粒径に粉砕又は混合する。回転ミル装置におけるミル容器内の球形媒体の挙動をシミュレーションする媒体挙動シミュレーション装置としては、例えば発明者等による特許文献1に開示されている。
【0003】
この媒体挙動シミュレーション装置は、シミュレーション技術として、微小時間毎に個々の粒子に作用する力を算出し、この算出結果に基づいて運動方程式を差分的に計算し、粒子の変位を逐次数値解析する離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が用いられる。なお、離散要素法については、例えば非特許文献1に具体的な計算方法が開示されている。
【0004】
発明者等により提供された特許文献1に開示した媒体挙動シミュレーション装置は、座標系として回転軸を1つの軸とする絶対座標軸系だけを使いミル容器内の球形媒体の挙動をシミュレーションする。
【0005】
【特許文献1】特開平11−147048号公報
【非特許文献1】日本機械学会論文集(B編)、57、534、60(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転ミル装置については、ミル容器を回転させるとともに揺動させる回転揺動ミルも知られている。この回転ミル装置は、回転軸が揺動するため、ミル容器の挙動が複雑になり、特許文献1のシミュレーションの適用が困難である。
【0007】
本発明は、軸対称形状のミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系を利用することにより、ミル容器内の球形媒体の挙動を容易かつ正確に逐次シミュレーションすることを可能とする回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成する本発明にかかる回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、内部に多数の球形媒体を装填した軸対称形状のミル容器と、該ミル容器内を通る回転軸を中心として該ミル容器を回転させる容器回転駆動手段と、ミル容器を回転軸と直交する揺動軸を中心として揺動させる容器揺動駆動手段とを備えた回転揺動ミル装置におけるミル容器内における球形媒体の挙動をシミュレーションする。回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、回転揺動ミル装置に対して、座標中心を固定した座標系である絶対座標系(K1:KX1、KY1、KZ1)を規定するとともにミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系(K2:KX2、KY2、KZ2)を規定する。
【0009】
回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、数値解析を行う微小単位時間(Δt)、絶対座標系(K1)における球形媒体の中心位置の座標情報である媒体中心絶対座標情報(A:AX1、AY1、AZ1)、絶対座標系(K1)における球形媒体の運動ベクトル情報(V)、球形媒体の半径(R)及び球形媒体をそれぞれ識別する媒体識別指標(F)を初期情報として入力する入力手段を備える。回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、入力手段により入力された初期情報を記憶する記憶手段を備える。回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、相対座標系(K2)における、ミル容器の壁面の座標情報である壁面相対座標情報(B:BX1、BY1、BZ1)を求めるとともに、記憶手段に記憶された媒体中心絶対座標情報(A)に基づいて多数の球形媒体のそれぞれについて相対座標系(K2)における中心位置の座標情報である媒体中心相対座標情報(C:CX1、CY1、CZ1)を求め、該媒体中心相対座標情報(C)、球形媒体の半径(R)及び壁面相対座標位置(B)に基づいて球形媒体のミル容器の壁面への接触を判別する演算・判別手段を備える。
【0010】
回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置は、演算・判別手段による球形媒体のミル容器の壁面への接触判定に基づき、相対座標系(K2)における球形媒体とミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報(D:DX1、DY1、DZ1)から絶対座標系(K1)における球形媒体とミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報(E:EX1、EY1、EZ1)を求め、該接触点絶対座標情報(E)と球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)と媒体識別指標(F)とに基づいて絶対座標系(K1)における接触点位置での球形媒体の接触方向(H)を算出する。回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置は、球形媒体の接触点におけるミル容器の壁面の揺動動作による絶対座標系(K1)における壁面揺動速度ベクトル(V1)と回転動作による絶対座標系(K1)における壁面回転速度ベクトル(V2)を算出するとともに、これら壁面揺動速度ベクトル(V1)と壁面回転速度ベクトル(V2)のベクトル和として絶対座標系(K1)における接触点位置でのミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)を算出する。回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置は、球形媒体の運動速度ベクトル(V)とミル容器の壁面との接触方向(H)とミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)に基づいて球形媒体が壁面から受ける力(JO)を算出し、該壁面から受ける力(JO)と重力(G)と微小単位時間(Δt)とに基づいて運動方程式を数値解析することにより球形媒体の運動速度ベクトル(V)及び微小時間変位(U)を求めるとともに、該微小時間変位(U)から微小単位時間(Δt)後の球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)を求め、該媒体中心絶対座標情報(A)及び運動速度ベクトル(V)を記憶手段に格納し、適宜の出力手段により出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置によれば、多数の球形媒体を装填した軸対称形状のミル容器が回転動作と揺動動作を行うことによりミル容器内において3次元運動を行う球形媒体の挙動を逐次シミュレーションする。回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置によれば、座標中心を固定した座標系の絶対座標系とミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系の相対座標系とを規定し、球形媒体とミル容器の壁面との接触判別結果に基づいて当該ミル容器の壁面における球形媒体の運動速度ベクトルを絶対座標系から相対座標系に座標変換した座標系において求めることにより、離散要素法を適用して3次元運動を行う球形媒体の運動解析を容易かつ正確に逐次シミュレーションを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。実施の形態として示す球形媒体挙動シミュレーション装置(以下、シミュレーション装置と略称する)1は、図1に示すように入力手段2と、記憶手段3と、演算・判別手段4と、出力手段5を備え、図2に示す回転揺動ミル装置6の軸対称形状のミル容器7内に装填した鋼球ボール等の多数個の球形媒体8の挙動解析を計算処理してその挙動を逐次シミュレーションする。シミュレーション装置1は、実際にはコンピュータとその周辺機器とにより構成され、例えば入力手段2がキーボードであり、記憶手段3が内蔵メモリ或いは外部記憶装置であり、出力手段5がモニタ或いはプリンタである。シミュレーション装置1は、コンピュータにロードされた所定のプログラムソフトウェアにより動作する。
【0013】
シミュレーション装置1は、上述した従来のシミュレーション装置と同様に、離散要素法を用いて各球形媒体8のミル容器7内における挙動を逐次シミュレーションする。離散要素法は、各先行文献に詳細に説明されているように、運動方程式を差分的に計算して粒子の微小時間変位を逐次数値解析する方法である。
【0014】
回転揺動ミル装置6は、例えば鉱物資源の精製過程において原料鉱石等の被加工物14を所定の粒径に粉砕する等の各種用途に用いられ、図2に示すように、ミル容器7の対称軸9をこのミル容器7を回転させる回転支軸として、この対称軸9を駆動する容器回転駆動手段10と、対称軸9を支持する支持機構11と、この支持機構11の揺動支軸12を駆動してミル容器7を対称軸9と直交するの軸方向と直交する揺動支軸12を中心として揺動させる容器揺動駆動手段13とを備える。
【0015】
回転揺動ミル装置6は、ミル容器7を回転動作させながら揺動動作を行うことにより、このミル容器7内において被加工物14を効率よく粉砕することが可能である。回転揺動ミル装置6においては、このようにミル容器7が回転動作と揺動動作を行うことから、その内部に充填された多数個の球形媒体8もミル容器7内において回転動作に伴うX軸方向とY軸方向の挙動とともに揺動動作に伴うZ軸方向の挙動が生じる。
【0016】
シミュレーション装置1は、ミル容器7内において3次元運動を行う球形媒体8の挙動を、座標中心を固定した座標系である絶対座標系K1(X1、Y1、Z1)を規定するとともに、ミル容器7の対称軸9を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2(X2、Y2、Z2))を規定する。
【0017】
シミュレーション装置1は、球形媒体8とミル容器7の壁面(ミル容器壁面)7Aとの接触判定を相対座標系K2において行う。シミュレーション装置1は、ミル容器7の壁面7Aにおける球形媒体8との接触点相対座標情報D(DX1、DY1、DZ1)を相対座標系K2において求め、相対座標系K2から絶対座標系K1に座標変換して接触点絶対座標情報E(EX1、EY1、EZ1)を求める。シミュレーション装置1は、接触点絶対座標Eと媒体中心絶対座標情報A(AX1、AY1、AZ1)とから、球形媒体8とミル容器7の壁面7Aの接触方向Hを算出する。シミュレーション装置1は、ミル容器7の回転方向と運動速度ベクトルVTを絶対座標系K1において求める。シミュレーション装置1は、基準となる絶対座標系K1の座標中心を例えばミル容器7の揺動中心となる揺動支軸12として規定するが、任意の位置に設定することも可能である。
【0018】
シミュレーション装置1においては、周知の離散要素法を用いて微小時間Δtごとに数値計算を繰り返すことによりミル容器7内における球形媒体8の挙動をシミュレーションする。シミュレーション装置1においては、図3乃至図8に示す手順により、球形媒体8の座標情報について絶対座標系K1から相対座標系K2への座標変換の処理を行う。回転揺動ミル装置6は、上述したようにミル容器7が対称軸9を中心として回転動作を行いながら揺動支軸12を中心として揺動動作を行うことにより、ミル容器7の中心位置が図3に示すように時間経過に伴ってPt0を中心としてPt1〜Pt2の範囲で変化する。
【0019】
シミュレーション手順は、図4に示すようにミル容器7の揺動支軸12を座標中心として固定した絶対座標系K1(X1、Y1、Z1)を規定する。ミル容器7に装填されたある球形媒体8は、同図に示すようにこの絶対座標系K1において、中心位置の座標情報として媒体中心絶対座標情報A(AX1、AY1、AZ1)を有する。
【0020】
シミュレーション手順は、図5に示すように時間経過とともに揺動した位置にあるミル容器7を揺動開始前の初期位置に位置させる回転座標変換の処理を行う。球形媒体8は、この回転座標変換処理により媒体中心絶対座標情報Aが、同図に示すように媒体中心絶対座標情報A0(AX10、AY10、AZ10)として定義される。球形媒体8は、時間経過とともにミル容器7内を移動し、図6に示すように中心位置が移動することにより媒体中心絶対情報A0が媒体中心絶対座標情報A1((AX11、AY11、AZ11)へと変化する。
【0021】
シミュレーション手順は、図7に示すように上述した絶対座標系K1から座標中心を平行移動してミル容器7の中心P0を原点として対称軸9を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2(X2、Y2、Z2)を規定する。球形媒体8は、絶対座標系K1における媒体中心絶対座標情報Aに対応して、同図に示すように相対座標系K2において中心位置の座標情報として媒体中心相対座標情報C(CX2、CY2、CZ2)を有する。
【0022】
シミュレーション手順は、ミル容器7の所定壁面の位置情報である壁面相対座標位置B(BX2、BY2、BZ2)を求める。シミュレーション手順は、図8に示すように壁面相対座標位置Bと媒体中心相対座標情報Cと球形媒体8の半径Rに基づいて、相対座標系K2において球形媒体8とミル容器7の壁面7Aとの接触判定を行う。
【0023】
シミュレーション手順は、相対座標系K2において球形媒体8とミル容器7の壁面7Aとの接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報D(DX1、DY1、DZ1)に基づいて、上述した座標変換処理と逆の座標変換処理を行って絶対座標系K1における球形媒体8とミル7の容器壁面7Aとの接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報E(EX1、EY1、EZ1)を求める。シミュレーション手順は、これにより絶対座標系K1における球形媒体8のミル容器7の壁面7Aに対する接触角度θを求める。
【0024】
シミュレーション手順は、容器揺動駆動手段13により揺動支軸12を中心として揺動動作するミル容器7の壁面7Aの壁面速度(壁面揺動速度ベクトル)V1を、絶対座標系K1において求める。シミュレーション手順は、容器回転駆動手段10により対称軸9を中心として回転動作するミル容器7の壁面7Aの壁面速度(壁面回転速度ベクトル)V2を、絶対座標系K1において求める。シミュレーション手順は、壁面揺動速度ベクトルV1と壁面回転速度ベクトルV2のベクトル和として、ミル容器7の壁面7Aの速度ベクトルVTを求める。
【0025】
シミュレーション装置1においては、上述した球形媒体8の座標情報について絶対座標系K1から相対座標系K2への座標変換の処理を前提条件として、演算・判別手段4において図9に示した手順にしたがって離散要素法を用いて微小時間Δtごとに数値計算を繰り返してミル容器7内における球形媒体8の挙動をシミュレーションし、その結果を出力手段5により出力する。シミュレーション手順においては、揺動支軸12を座標中心として固定した座標系である絶対座標系K1(X1、Y1、Z1)を規定する(S−1)とともに、ミル容器7の対称軸9を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2(X2、Y2、Z2)を規定する(S−2)。
【0026】
シミュレーション手順においては、入力手段2により、数値解析を行う微小単位時間Δtと、絶対座標系K1における球形媒体8の中心位置の座標情報である媒体中心絶対座標情報Aと、球形媒体8の半径Rと、球形媒体8をそれぞれ識別する媒体識別指標Fと、球形媒体8の運動速度ベクトルVを入力する(S−3)。これらの入力情報は、入力手段2から記憶手段3へと送られて初期情報として記憶される。なお、初期情報として入力される球形媒体8の運動速度ベクトルVは、通常「0」若しくは極く小さな値である。
【0027】
シミュレーション手順においては、相対座標系K2における壁面相対座標位置Bを求める(S−4)。シミュレーション手順においては、各球形媒体8について、記憶手段3に記憶した媒体中心絶対座標情報Aに基づいて、相対座標系K2における中心位置の座標情報である媒体中心相対座標情報Cを算出する(S−5)。
【0028】
シミュレーション手順においては、媒体中心相対座標情報Cの算出結果に基づき、上述した壁面相対座標位置Bと記憶手段3に記憶した球形媒体8の半径Rとを用いて球形媒体8のミル容器7の壁面7Aの接触を判別する(S−6)。接触判別は、媒体中心相対座標情報Cと壁面相対座標位置Bとの距離が球形媒体8の半径R以下となる場合において、球形媒体8がミル容器7の壁面7Aの所定位置に接触したと判定する。
【0029】
シミュレーション手順においては、上述した球形媒体8のミル容器7の壁面7Aへの接触判定に基づいて、相対座標系K2における球形媒体8とミル容器7の壁面7Aとの接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報Dが求められる(S−7)。シミュレーション手順においては、相対座標系K2から絶対座標系K1への座標変換処理を行い、接触点相対座標情報Dに基づいて絶対座標系K1におけるミル容器7の壁面7Aと球形媒体8との接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報Eを求める(S−8)。
【0030】
シミュレーション手順においては、接触点絶対座標情報Eの算出結果に基づき、媒体中心絶対座標情報Aと媒体識別指標Fとを用いて接触点位置における球形媒体8の接触方向Hを算出する(S−9)。また、シミュレーション手順においては、接触点絶対座標情報Eの算出結果に基づき、ミル容器7の壁面7Aと球形媒体8との接触点位置におけるミル容器7の揺動動作によるミル容器7の壁面7Aの壁面揺動速度ベクトルV1を算出(S−10)するとともに回転動作によるミル容器7の壁面7Aの壁面回転速度ベクトルV2を算出する(S−11)。シミュレーション手順においては、これら壁面揺動速度ベクトルV1と壁面回転速度ベクトルV2との和として、絶対座標系K1における球形媒体8の接触点位置におけるミル容器7の壁面7Aの運動速度ベクトルVTを算出する(S−12)。
【0031】
シミュレーション手順においては、球形媒体8の数が多く、相互の衝突を無視することができない場合に、媒体中心絶対座標情報Aと媒体識別指標Fとから球形媒体8間の中心間距離Lを求め、この中心間距離Lと記憶手段3に記憶した球形媒体8の半径Rとを用いて球形媒体8間の接触を判別する(S−13)。シミュレーション手順においては、この球形媒体8間の接触判定に基づいて、媒体中心絶対座標情報Aと媒体識別指標Fとから球形媒体8間の接触方向Mを算出する(S−14)。シミュレーション手順においては、ミル容器7の壁面7Aの運動速度ベクトルVT、ミル容器7の壁面7Aにおける球形媒体8の接触方向H、球形媒体8の運動速度ベクトルV及び球形媒体8間の接触方向Mとに基づいて、球形媒体8がミル容器7の壁面7Aから受ける力JOと他の球形媒体8から受ける力JAを算出する(S−15)。
【0032】
シミュレーション手順においては、各球形媒体8についてそれぞれ算出したミル容器7の壁面7Aから受ける力JOと他の球形媒体8から受ける力JA及び重力Gと微小単位時間Δtとに基づいて運動方程式を数値解析することにより各球形媒体8の運動速度ベクトルV及び微小時間変位Uを求める(S−16)。シミュレーション手順においては、各球形媒体8の運動速度ベクトルV及び微小時間変位Uを入力手段2を介して順次記憶手段3に格納する(S−17)。シミュレーション手順においては、全球形媒体8に関する微小時間変位Uに基づいて、ミル容器7内における球形媒体8の挙動のシミュレーション結果を出力手段5により出力する(S−18)。
【0033】
上述したシミュレーション装置1によるミル容器7内における球形媒体8の挙動シミュレーションは、図10乃至図13に示すミル容器7の内部を可視可能とした回転揺動ミル装置6による実験結果との比較により極めて精度が高いことが確認される。この比較は、内部容量が60リットルのミル容器7内に、半径15mm、摩擦係数0.8のポリアミド系合成高分子化合物(ナイロン:商標)からなる球形媒体8を充填率50%で充填し、それぞれミル容器7を所定の駆動条件で駆動した場合の同一時間における球形媒体8の挙動の経時変化を比較したものである。なお、同比較実験においては、球形媒体8の挙動をより明確に得るために、ミル容器7内に被加工物を充填せずに行った。
【0034】
図10乃至図13は、ミル容器7の駆動開始から1.25sec、2.50sec、3.75sec、5.00sec、6.25sec後のミル容器7内における球形媒体8の挙動をそれぞれ示したものである。図10は、ミル容器7を、回転数0.4Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の球形媒体8の挙動である。図11は、ミル容器7を、回転数0.6Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の挙動を示したものである。図12は、ミル容器7を、回転数0.8Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の球形媒体8の挙動を示したものである。である。図13は、ミル容器7を、回転数1.0Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の挙動を示したものである。
【0035】
シミュレーション装置1においては、これらの図から明らかなように、ミル容器7をいずれの条件で揺動動作と回転動作を行った場合でも、球形媒体8の挙動を回転揺動ミル装置6における実際の状態と極めて近似した正確なシミュレーションを行う。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】回転揺動ミル装置の軸対称形状のミル容器内における球形媒体の挙動をシミュレーションする媒体挙動シミュレーション装置の構成図である。
【図2】回転揺動ミル装置の構成図である。
【図3】シミュレーション手順の説明図であり、ミル容器の動作図である。
【図4】同絶対座標系K1の説明図である。
【図5】同時間経過とともに揺動した位置にあるミル容器を揺動開始前の初期位置に位置させる回転座標変換の説明図である。
【図6】同時間経過とともにミル容器内を移動する球形媒体の媒体中心絶対座標情報の変化を説明する説明図である。
【図7】同絶対座標系K1から座標中心を平行移動してミル容器の回転中心P0を原点とし、ミル容器の回転支軸である対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2を規定する説明図である。
【図8】相対座標系K2においてミル容器の壁面と球形媒体の接触判定結果に基づいて、ミル容器の所定壁面における球形媒体の接触角度を求める説明図である。
【図9】シミュレーション手順の工程図である。
【図10】ミル容器の駆動条件(回転数0.4Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【図11】ミル容器の駆動条件(回転数0.6Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【図12】ミル容器の駆動条件(回転数0.8Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【図13】ミル容器の駆動条件(回転数1.0Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【符号の説明】
【0037】
1 シミュレーション装置、2 入力手段、3 記憶手段、4 演算・判別手段、5 出力手段、6 回転揺動ミル装置、7 ミル容器、8 球形媒体、9 対称軸、10 容器回転駆動手段、11 支持機構、12 揺動支軸、13 容器揺動駆動機構、14 被加工物
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸対称形状のミル容器内に被加工物を多数の鋼球ボール等の球形粉砕媒体(以下、球形媒体という。)とともに装填し、ミル容器を回転させつつ揺動させることにより被加工物を粉砕或いは混合する回転揺動ミル装置におけるミル容器内の球形媒体の挙動をシミュレーションする回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ミル装置は、多数個の球形媒体を収納した密閉ミル容器内に被加工物を装填してミル容器を固定された回転軸を中心として回転駆動することにより、被加工物を所定の粒径に粉砕又は混合する。回転ミル装置におけるミル容器内の球形媒体の挙動をシミュレーションする媒体挙動シミュレーション装置としては、例えば発明者等による特許文献1に開示されている。
【0003】
この媒体挙動シミュレーション装置は、シミュレーション技術として、微小時間毎に個々の粒子に作用する力を算出し、この算出結果に基づいて運動方程式を差分的に計算し、粒子の変位を逐次数値解析する離散要素法(DEM:Discrete Element Method)が用いられる。なお、離散要素法については、例えば非特許文献1に具体的な計算方法が開示されている。
【0004】
発明者等により提供された特許文献1に開示した媒体挙動シミュレーション装置は、座標系として回転軸を1つの軸とする絶対座標軸系だけを使いミル容器内の球形媒体の挙動をシミュレーションする。
【0005】
【特許文献1】特開平11−147048号公報
【非特許文献1】日本機械学会論文集(B編)、57、534、60(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転ミル装置については、ミル容器を回転させるとともに揺動させる回転揺動ミルも知られている。この回転ミル装置は、回転軸が揺動するため、ミル容器の挙動が複雑になり、特許文献1のシミュレーションの適用が困難である。
【0007】
本発明は、軸対称形状のミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系を利用することにより、ミル容器内の球形媒体の挙動を容易かつ正確に逐次シミュレーションすることを可能とする回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成する本発明にかかる回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、内部に多数の球形媒体を装填した軸対称形状のミル容器と、該ミル容器内を通る回転軸を中心として該ミル容器を回転させる容器回転駆動手段と、ミル容器を回転軸と直交する揺動軸を中心として揺動させる容器揺動駆動手段とを備えた回転揺動ミル装置におけるミル容器内における球形媒体の挙動をシミュレーションする。回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、回転揺動ミル装置に対して、座標中心を固定した座標系である絶対座標系(K1:KX1、KY1、KZ1)を規定するとともにミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系(K2:KX2、KY2、KZ2)を規定する。
【0009】
回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、数値解析を行う微小単位時間(Δt)、絶対座標系(K1)における球形媒体の中心位置の座標情報である媒体中心絶対座標情報(A:AX1、AY1、AZ1)、絶対座標系(K1)における球形媒体の運動ベクトル情報(V)、球形媒体の半径(R)及び球形媒体をそれぞれ識別する媒体識別指標(F)を初期情報として入力する入力手段を備える。回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、入力手段により入力された初期情報を記憶する記憶手段を備える。回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置は、相対座標系(K2)における、ミル容器の壁面の座標情報である壁面相対座標情報(B:BX1、BY1、BZ1)を求めるとともに、記憶手段に記憶された媒体中心絶対座標情報(A)に基づいて多数の球形媒体のそれぞれについて相対座標系(K2)における中心位置の座標情報である媒体中心相対座標情報(C:CX1、CY1、CZ1)を求め、該媒体中心相対座標情報(C)、球形媒体の半径(R)及び壁面相対座標位置(B)に基づいて球形媒体のミル容器の壁面への接触を判別する演算・判別手段を備える。
【0010】
回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置は、演算・判別手段による球形媒体のミル容器の壁面への接触判定に基づき、相対座標系(K2)における球形媒体とミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報(D:DX1、DY1、DZ1)から絶対座標系(K1)における球形媒体とミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報(E:EX1、EY1、EZ1)を求め、該接触点絶対座標情報(E)と球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)と媒体識別指標(F)とに基づいて絶対座標系(K1)における接触点位置での球形媒体の接触方向(H)を算出する。回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置は、球形媒体の接触点におけるミル容器の壁面の揺動動作による絶対座標系(K1)における壁面揺動速度ベクトル(V1)と回転動作による絶対座標系(K1)における壁面回転速度ベクトル(V2)を算出するとともに、これら壁面揺動速度ベクトル(V1)と壁面回転速度ベクトル(V2)のベクトル和として絶対座標系(K1)における接触点位置でのミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)を算出する。回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置は、球形媒体の運動速度ベクトル(V)とミル容器の壁面との接触方向(H)とミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)に基づいて球形媒体が壁面から受ける力(JO)を算出し、該壁面から受ける力(JO)と重力(G)と微小単位時間(Δt)とに基づいて運動方程式を数値解析することにより球形媒体の運動速度ベクトル(V)及び微小時間変位(U)を求めるとともに、該微小時間変位(U)から微小単位時間(Δt)後の球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)を求め、該媒体中心絶対座標情報(A)及び運動速度ベクトル(V)を記憶手段に格納し、適宜の出力手段により出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置によれば、多数の球形媒体を装填した軸対称形状のミル容器が回転動作と揺動動作を行うことによりミル容器内において3次元運動を行う球形媒体の挙動を逐次シミュレーションする。回転揺動ミル装置の球形媒体挙動シミュレーション装置によれば、座標中心を固定した座標系の絶対座標系とミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系の相対座標系とを規定し、球形媒体とミル容器の壁面との接触判別結果に基づいて当該ミル容器の壁面における球形媒体の運動速度ベクトルを絶対座標系から相対座標系に座標変換した座標系において求めることにより、離散要素法を適用して3次元運動を行う球形媒体の運動解析を容易かつ正確に逐次シミュレーションを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。実施の形態として示す球形媒体挙動シミュレーション装置(以下、シミュレーション装置と略称する)1は、図1に示すように入力手段2と、記憶手段3と、演算・判別手段4と、出力手段5を備え、図2に示す回転揺動ミル装置6の軸対称形状のミル容器7内に装填した鋼球ボール等の多数個の球形媒体8の挙動解析を計算処理してその挙動を逐次シミュレーションする。シミュレーション装置1は、実際にはコンピュータとその周辺機器とにより構成され、例えば入力手段2がキーボードであり、記憶手段3が内蔵メモリ或いは外部記憶装置であり、出力手段5がモニタ或いはプリンタである。シミュレーション装置1は、コンピュータにロードされた所定のプログラムソフトウェアにより動作する。
【0013】
シミュレーション装置1は、上述した従来のシミュレーション装置と同様に、離散要素法を用いて各球形媒体8のミル容器7内における挙動を逐次シミュレーションする。離散要素法は、各先行文献に詳細に説明されているように、運動方程式を差分的に計算して粒子の微小時間変位を逐次数値解析する方法である。
【0014】
回転揺動ミル装置6は、例えば鉱物資源の精製過程において原料鉱石等の被加工物14を所定の粒径に粉砕する等の各種用途に用いられ、図2に示すように、ミル容器7の対称軸9をこのミル容器7を回転させる回転支軸として、この対称軸9を駆動する容器回転駆動手段10と、対称軸9を支持する支持機構11と、この支持機構11の揺動支軸12を駆動してミル容器7を対称軸9と直交するの軸方向と直交する揺動支軸12を中心として揺動させる容器揺動駆動手段13とを備える。
【0015】
回転揺動ミル装置6は、ミル容器7を回転動作させながら揺動動作を行うことにより、このミル容器7内において被加工物14を効率よく粉砕することが可能である。回転揺動ミル装置6においては、このようにミル容器7が回転動作と揺動動作を行うことから、その内部に充填された多数個の球形媒体8もミル容器7内において回転動作に伴うX軸方向とY軸方向の挙動とともに揺動動作に伴うZ軸方向の挙動が生じる。
【0016】
シミュレーション装置1は、ミル容器7内において3次元運動を行う球形媒体8の挙動を、座標中心を固定した座標系である絶対座標系K1(X1、Y1、Z1)を規定するとともに、ミル容器7の対称軸9を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2(X2、Y2、Z2))を規定する。
【0017】
シミュレーション装置1は、球形媒体8とミル容器7の壁面(ミル容器壁面)7Aとの接触判定を相対座標系K2において行う。シミュレーション装置1は、ミル容器7の壁面7Aにおける球形媒体8との接触点相対座標情報D(DX1、DY1、DZ1)を相対座標系K2において求め、相対座標系K2から絶対座標系K1に座標変換して接触点絶対座標情報E(EX1、EY1、EZ1)を求める。シミュレーション装置1は、接触点絶対座標Eと媒体中心絶対座標情報A(AX1、AY1、AZ1)とから、球形媒体8とミル容器7の壁面7Aの接触方向Hを算出する。シミュレーション装置1は、ミル容器7の回転方向と運動速度ベクトルVTを絶対座標系K1において求める。シミュレーション装置1は、基準となる絶対座標系K1の座標中心を例えばミル容器7の揺動中心となる揺動支軸12として規定するが、任意の位置に設定することも可能である。
【0018】
シミュレーション装置1においては、周知の離散要素法を用いて微小時間Δtごとに数値計算を繰り返すことによりミル容器7内における球形媒体8の挙動をシミュレーションする。シミュレーション装置1においては、図3乃至図8に示す手順により、球形媒体8の座標情報について絶対座標系K1から相対座標系K2への座標変換の処理を行う。回転揺動ミル装置6は、上述したようにミル容器7が対称軸9を中心として回転動作を行いながら揺動支軸12を中心として揺動動作を行うことにより、ミル容器7の中心位置が図3に示すように時間経過に伴ってPt0を中心としてPt1〜Pt2の範囲で変化する。
【0019】
シミュレーション手順は、図4に示すようにミル容器7の揺動支軸12を座標中心として固定した絶対座標系K1(X1、Y1、Z1)を規定する。ミル容器7に装填されたある球形媒体8は、同図に示すようにこの絶対座標系K1において、中心位置の座標情報として媒体中心絶対座標情報A(AX1、AY1、AZ1)を有する。
【0020】
シミュレーション手順は、図5に示すように時間経過とともに揺動した位置にあるミル容器7を揺動開始前の初期位置に位置させる回転座標変換の処理を行う。球形媒体8は、この回転座標変換処理により媒体中心絶対座標情報Aが、同図に示すように媒体中心絶対座標情報A0(AX10、AY10、AZ10)として定義される。球形媒体8は、時間経過とともにミル容器7内を移動し、図6に示すように中心位置が移動することにより媒体中心絶対情報A0が媒体中心絶対座標情報A1((AX11、AY11、AZ11)へと変化する。
【0021】
シミュレーション手順は、図7に示すように上述した絶対座標系K1から座標中心を平行移動してミル容器7の中心P0を原点として対称軸9を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2(X2、Y2、Z2)を規定する。球形媒体8は、絶対座標系K1における媒体中心絶対座標情報Aに対応して、同図に示すように相対座標系K2において中心位置の座標情報として媒体中心相対座標情報C(CX2、CY2、CZ2)を有する。
【0022】
シミュレーション手順は、ミル容器7の所定壁面の位置情報である壁面相対座標位置B(BX2、BY2、BZ2)を求める。シミュレーション手順は、図8に示すように壁面相対座標位置Bと媒体中心相対座標情報Cと球形媒体8の半径Rに基づいて、相対座標系K2において球形媒体8とミル容器7の壁面7Aとの接触判定を行う。
【0023】
シミュレーション手順は、相対座標系K2において球形媒体8とミル容器7の壁面7Aとの接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報D(DX1、DY1、DZ1)に基づいて、上述した座標変換処理と逆の座標変換処理を行って絶対座標系K1における球形媒体8とミル7の容器壁面7Aとの接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報E(EX1、EY1、EZ1)を求める。シミュレーション手順は、これにより絶対座標系K1における球形媒体8のミル容器7の壁面7Aに対する接触角度θを求める。
【0024】
シミュレーション手順は、容器揺動駆動手段13により揺動支軸12を中心として揺動動作するミル容器7の壁面7Aの壁面速度(壁面揺動速度ベクトル)V1を、絶対座標系K1において求める。シミュレーション手順は、容器回転駆動手段10により対称軸9を中心として回転動作するミル容器7の壁面7Aの壁面速度(壁面回転速度ベクトル)V2を、絶対座標系K1において求める。シミュレーション手順は、壁面揺動速度ベクトルV1と壁面回転速度ベクトルV2のベクトル和として、ミル容器7の壁面7Aの速度ベクトルVTを求める。
【0025】
シミュレーション装置1においては、上述した球形媒体8の座標情報について絶対座標系K1から相対座標系K2への座標変換の処理を前提条件として、演算・判別手段4において図9に示した手順にしたがって離散要素法を用いて微小時間Δtごとに数値計算を繰り返してミル容器7内における球形媒体8の挙動をシミュレーションし、その結果を出力手段5により出力する。シミュレーション手順においては、揺動支軸12を座標中心として固定した座標系である絶対座標系K1(X1、Y1、Z1)を規定する(S−1)とともに、ミル容器7の対称軸9を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2(X2、Y2、Z2)を規定する(S−2)。
【0026】
シミュレーション手順においては、入力手段2により、数値解析を行う微小単位時間Δtと、絶対座標系K1における球形媒体8の中心位置の座標情報である媒体中心絶対座標情報Aと、球形媒体8の半径Rと、球形媒体8をそれぞれ識別する媒体識別指標Fと、球形媒体8の運動速度ベクトルVを入力する(S−3)。これらの入力情報は、入力手段2から記憶手段3へと送られて初期情報として記憶される。なお、初期情報として入力される球形媒体8の運動速度ベクトルVは、通常「0」若しくは極く小さな値である。
【0027】
シミュレーション手順においては、相対座標系K2における壁面相対座標位置Bを求める(S−4)。シミュレーション手順においては、各球形媒体8について、記憶手段3に記憶した媒体中心絶対座標情報Aに基づいて、相対座標系K2における中心位置の座標情報である媒体中心相対座標情報Cを算出する(S−5)。
【0028】
シミュレーション手順においては、媒体中心相対座標情報Cの算出結果に基づき、上述した壁面相対座標位置Bと記憶手段3に記憶した球形媒体8の半径Rとを用いて球形媒体8のミル容器7の壁面7Aの接触を判別する(S−6)。接触判別は、媒体中心相対座標情報Cと壁面相対座標位置Bとの距離が球形媒体8の半径R以下となる場合において、球形媒体8がミル容器7の壁面7Aの所定位置に接触したと判定する。
【0029】
シミュレーション手順においては、上述した球形媒体8のミル容器7の壁面7Aへの接触判定に基づいて、相対座標系K2における球形媒体8とミル容器7の壁面7Aとの接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報Dが求められる(S−7)。シミュレーション手順においては、相対座標系K2から絶対座標系K1への座標変換処理を行い、接触点相対座標情報Dに基づいて絶対座標系K1におけるミル容器7の壁面7Aと球形媒体8との接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報Eを求める(S−8)。
【0030】
シミュレーション手順においては、接触点絶対座標情報Eの算出結果に基づき、媒体中心絶対座標情報Aと媒体識別指標Fとを用いて接触点位置における球形媒体8の接触方向Hを算出する(S−9)。また、シミュレーション手順においては、接触点絶対座標情報Eの算出結果に基づき、ミル容器7の壁面7Aと球形媒体8との接触点位置におけるミル容器7の揺動動作によるミル容器7の壁面7Aの壁面揺動速度ベクトルV1を算出(S−10)するとともに回転動作によるミル容器7の壁面7Aの壁面回転速度ベクトルV2を算出する(S−11)。シミュレーション手順においては、これら壁面揺動速度ベクトルV1と壁面回転速度ベクトルV2との和として、絶対座標系K1における球形媒体8の接触点位置におけるミル容器7の壁面7Aの運動速度ベクトルVTを算出する(S−12)。
【0031】
シミュレーション手順においては、球形媒体8の数が多く、相互の衝突を無視することができない場合に、媒体中心絶対座標情報Aと媒体識別指標Fとから球形媒体8間の中心間距離Lを求め、この中心間距離Lと記憶手段3に記憶した球形媒体8の半径Rとを用いて球形媒体8間の接触を判別する(S−13)。シミュレーション手順においては、この球形媒体8間の接触判定に基づいて、媒体中心絶対座標情報Aと媒体識別指標Fとから球形媒体8間の接触方向Mを算出する(S−14)。シミュレーション手順においては、ミル容器7の壁面7Aの運動速度ベクトルVT、ミル容器7の壁面7Aにおける球形媒体8の接触方向H、球形媒体8の運動速度ベクトルV及び球形媒体8間の接触方向Mとに基づいて、球形媒体8がミル容器7の壁面7Aから受ける力JOと他の球形媒体8から受ける力JAを算出する(S−15)。
【0032】
シミュレーション手順においては、各球形媒体8についてそれぞれ算出したミル容器7の壁面7Aから受ける力JOと他の球形媒体8から受ける力JA及び重力Gと微小単位時間Δtとに基づいて運動方程式を数値解析することにより各球形媒体8の運動速度ベクトルV及び微小時間変位Uを求める(S−16)。シミュレーション手順においては、各球形媒体8の運動速度ベクトルV及び微小時間変位Uを入力手段2を介して順次記憶手段3に格納する(S−17)。シミュレーション手順においては、全球形媒体8に関する微小時間変位Uに基づいて、ミル容器7内における球形媒体8の挙動のシミュレーション結果を出力手段5により出力する(S−18)。
【0033】
上述したシミュレーション装置1によるミル容器7内における球形媒体8の挙動シミュレーションは、図10乃至図13に示すミル容器7の内部を可視可能とした回転揺動ミル装置6による実験結果との比較により極めて精度が高いことが確認される。この比較は、内部容量が60リットルのミル容器7内に、半径15mm、摩擦係数0.8のポリアミド系合成高分子化合物(ナイロン:商標)からなる球形媒体8を充填率50%で充填し、それぞれミル容器7を所定の駆動条件で駆動した場合の同一時間における球形媒体8の挙動の経時変化を比較したものである。なお、同比較実験においては、球形媒体8の挙動をより明確に得るために、ミル容器7内に被加工物を充填せずに行った。
【0034】
図10乃至図13は、ミル容器7の駆動開始から1.25sec、2.50sec、3.75sec、5.00sec、6.25sec後のミル容器7内における球形媒体8の挙動をそれぞれ示したものである。図10は、ミル容器7を、回転数0.4Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の球形媒体8の挙動である。図11は、ミル容器7を、回転数0.6Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の挙動を示したものである。図12は、ミル容器7を、回転数0.8Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の球形媒体8の挙動を示したものである。である。図13は、ミル容器7を、回転数1.0Nc、1分間に12回の揺動回数で駆動した場合の挙動を示したものである。
【0035】
シミュレーション装置1においては、これらの図から明らかなように、ミル容器7をいずれの条件で揺動動作と回転動作を行った場合でも、球形媒体8の挙動を回転揺動ミル装置6における実際の状態と極めて近似した正確なシミュレーションを行う。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】回転揺動ミル装置の軸対称形状のミル容器内における球形媒体の挙動をシミュレーションする媒体挙動シミュレーション装置の構成図である。
【図2】回転揺動ミル装置の構成図である。
【図3】シミュレーション手順の説明図であり、ミル容器の動作図である。
【図4】同絶対座標系K1の説明図である。
【図5】同時間経過とともに揺動した位置にあるミル容器を揺動開始前の初期位置に位置させる回転座標変換の説明図である。
【図6】同時間経過とともにミル容器内を移動する球形媒体の媒体中心絶対座標情報の変化を説明する説明図である。
【図7】同絶対座標系K1から座標中心を平行移動してミル容器の回転中心P0を原点とし、ミル容器の回転支軸である対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系K2を規定する説明図である。
【図8】相対座標系K2においてミル容器の壁面と球形媒体の接触判定結果に基づいて、ミル容器の所定壁面における球形媒体の接触角度を求める説明図である。
【図9】シミュレーション手順の工程図である。
【図10】ミル容器の駆動条件(回転数0.4Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【図11】ミル容器の駆動条件(回転数0.6Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【図12】ミル容器の駆動条件(回転数0.8Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【図13】ミル容器の駆動条件(回転数1.0Nc、揺動回数12回/min)での実験装置によるミル容器内における球形媒体の状態とシミュレーション装置により求めた球形媒体の挙動のシミュレーション図である。
【符号の説明】
【0037】
1 シミュレーション装置、2 入力手段、3 記憶手段、4 演算・判別手段、5 出力手段、6 回転揺動ミル装置、7 ミル容器、8 球形媒体、9 対称軸、10 容器回転駆動手段、11 支持機構、12 揺動支軸、13 容器揺動駆動機構、14 被加工物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に多数の球形媒体を装填した軸対称形状のミル容器と、該ミル容器内を通る回転軸を中心として該ミル容器を回転させる容器回転駆動手段と、上記ミル容器を上記回転軸と直交する揺動軸を中心として揺動させる容器揺動駆動手段とを備えた回転揺動ミル装置における上記ミル容器内における上記球形媒体の挙動をシミュレーションする球形媒体挙動シミュレーション装置であり、
上記回転揺動ミル装置に対して、座標中心を固定した座標系である絶対座標系(K1:KX1、KY1、KZ1)を規定するとともに上記ミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系(K2:KX2、KY2、KZ2)を規定し、
数値解析を行う微小単位時間(Δt)、上記絶対座標系(K1)における上記球形媒体の中心位置の座標情報である媒体中心絶対座標情報(A:AX1、AY1、AZ1)、上記絶対座標系(K1)における上記球形媒体の運動ベクトル情報(V)、上記球形媒体の半径(R)及び上記球形媒体をそれぞれ識別する媒体識別指標(F)を初期情報として入力する入力手段と、
上記入力手段により入力された上記初期情報を記憶する記憶手段と、
上記相対座標系(K2)における、上記ミル容器の壁面の座標情報である壁面相対座標情報(B:BX1、BY1、BZ1)を求めるとともに、上記記憶手段に記憶された上記媒体中心絶対座標情報(A)に基づいて多数の上記球形媒体のそれぞれについて上記相対座標系(K2)における中心位置の座標情報である媒体中心相対座標情報(C:CX1、CY1、CZ1)を求め、該媒体中心相対座標情報(C)、上記球形媒体の半径(R)及び上記壁面相対座標位置(B)に基づいて上記球形媒体の上記ミル容器の壁面への接触を判別する演算・判別手段とを備え、
上記演算・判別手段による上記球形媒体の上記ミル容器の壁面への接触判定に基づき、上記相対座標系(K2)における上記球形媒体と上記ミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報(D:DX1、DY1、DZ1)から上記絶対座標系(K1)における上記球形媒体と上記ミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報(E:EX1、EY1、EZ1)を求め、該接触点絶対座標情報(E)と上記球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)と上記媒体識別指標(F)とに基づいて上記絶対座標系(K1)における上記接触点位置での上記球形媒体の接触方向(H)を算出し、
上記球形媒体の上記接触点における上記ミル容器の壁面の揺動動作による上記絶対座標系(K1)における壁面揺動速度ベクトル(V1)と回転動作による上記絶対座標系(K1)における壁面回転速度ベクトル(V2)を算出するとともに、これら壁面揺動速度ベクトル(V1)と壁面回転速度ベクトル(V2)のベクトル和として上記絶対座標系(K1)における上記接触点位置での上記ミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)を算出し、
上記球形媒体の上記運動速度ベクトル(V)と上記ミル容器の壁面との接触方向(H)と上記ミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)に基づいて上記球形媒体が壁面から受ける力(JO)を算出し、該壁面から受ける力(JO)と重力(G)と上記微小単位時間(Δt)とに基づいて運動方程式を数値解析することにより上記球形媒体の運動速度ベクトル(V)及び微小時間変位(U)を求め、該微小時間変位(U)から上記微小単位時間(Δt)後の上記球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)を求めるとともに、該媒体中心絶対座標情報(A)及び上記運動速度ベクトル(V)を上記記憶手段に格納し、適宜の出力手段により出力することを特徴とする回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置。
【請求項2】
上記媒体中心絶対座標情報(A)と上記媒体識別指標(F)とから各球形媒体間の中心間距離(L)を求めるとともに、該中心間距離(L)と上記球形媒体の半径(R)とから上記各球形媒体間の接触を判定する媒体接触判定手段を備え、
上記媒体接触判定手段による上記各球形媒体間の接触判定に基づいて、上記媒体中心絶対座標情報(A)から上記各球形媒体間の接触方向(M)を算出し、
上記各球形媒体間の接触方向(M)と上記球形媒体の上記ミル容器の壁面との接触方向(H)及び上記球形媒体の上記壁面揺動速度ベクトル(V1)と上記運動速度ベクトル(V)とに基づいて上記球形媒体が上記壁面から受ける力(JO)及び他の上記球形媒体から受ける力(JA)を算出し、
上記球形媒体が上記壁面から受ける力(JO)と上記他の上記球形媒体から受ける力(JA)と上記球形媒体に作用する重力(G)及び上記微小単位時間(Δt)とに基づいて運動方程式を数値解析することを特徴とする請求項1に記載の回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置。
【請求項3】
上記絶対座標系(K1)が、上記容器揺動駆動手段により揺動動作される上記ミル容器の揺動中心を座標中心として固定した座標系により構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置。
【請求項1】
内部に多数の球形媒体を装填した軸対称形状のミル容器と、該ミル容器内を通る回転軸を中心として該ミル容器を回転させる容器回転駆動手段と、上記ミル容器を上記回転軸と直交する揺動軸を中心として揺動させる容器揺動駆動手段とを備えた回転揺動ミル装置における上記ミル容器内における上記球形媒体の挙動をシミュレーションする球形媒体挙動シミュレーション装置であり、
上記回転揺動ミル装置に対して、座標中心を固定した座標系である絶対座標系(K1:KX1、KY1、KZ1)を規定するとともに上記ミル容器の対称軸を座標軸の1つとした座標系である相対座標系(K2:KX2、KY2、KZ2)を規定し、
数値解析を行う微小単位時間(Δt)、上記絶対座標系(K1)における上記球形媒体の中心位置の座標情報である媒体中心絶対座標情報(A:AX1、AY1、AZ1)、上記絶対座標系(K1)における上記球形媒体の運動ベクトル情報(V)、上記球形媒体の半径(R)及び上記球形媒体をそれぞれ識別する媒体識別指標(F)を初期情報として入力する入力手段と、
上記入力手段により入力された上記初期情報を記憶する記憶手段と、
上記相対座標系(K2)における、上記ミル容器の壁面の座標情報である壁面相対座標情報(B:BX1、BY1、BZ1)を求めるとともに、上記記憶手段に記憶された上記媒体中心絶対座標情報(A)に基づいて多数の上記球形媒体のそれぞれについて上記相対座標系(K2)における中心位置の座標情報である媒体中心相対座標情報(C:CX1、CY1、CZ1)を求め、該媒体中心相対座標情報(C)、上記球形媒体の半径(R)及び上記壁面相対座標位置(B)に基づいて上記球形媒体の上記ミル容器の壁面への接触を判別する演算・判別手段とを備え、
上記演算・判別手段による上記球形媒体の上記ミル容器の壁面への接触判定に基づき、上記相対座標系(K2)における上記球形媒体と上記ミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点相対座標情報(D:DX1、DY1、DZ1)から上記絶対座標系(K1)における上記球形媒体と上記ミル容器壁面との接触点位置の座標情報である接触点絶対座標情報(E:EX1、EY1、EZ1)を求め、該接触点絶対座標情報(E)と上記球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)と上記媒体識別指標(F)とに基づいて上記絶対座標系(K1)における上記接触点位置での上記球形媒体の接触方向(H)を算出し、
上記球形媒体の上記接触点における上記ミル容器の壁面の揺動動作による上記絶対座標系(K1)における壁面揺動速度ベクトル(V1)と回転動作による上記絶対座標系(K1)における壁面回転速度ベクトル(V2)を算出するとともに、これら壁面揺動速度ベクトル(V1)と壁面回転速度ベクトル(V2)のベクトル和として上記絶対座標系(K1)における上記接触点位置での上記ミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)を算出し、
上記球形媒体の上記運動速度ベクトル(V)と上記ミル容器の壁面との接触方向(H)と上記ミル容器の壁面の運動速度ベクトル(VT)に基づいて上記球形媒体が壁面から受ける力(JO)を算出し、該壁面から受ける力(JO)と重力(G)と上記微小単位時間(Δt)とに基づいて運動方程式を数値解析することにより上記球形媒体の運動速度ベクトル(V)及び微小時間変位(U)を求め、該微小時間変位(U)から上記微小単位時間(Δt)後の上記球形媒体の媒体中心絶対座標情報(A)を求めるとともに、該媒体中心絶対座標情報(A)及び上記運動速度ベクトル(V)を上記記憶手段に格納し、適宜の出力手段により出力することを特徴とする回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置。
【請求項2】
上記媒体中心絶対座標情報(A)と上記媒体識別指標(F)とから各球形媒体間の中心間距離(L)を求めるとともに、該中心間距離(L)と上記球形媒体の半径(R)とから上記各球形媒体間の接触を判定する媒体接触判定手段を備え、
上記媒体接触判定手段による上記各球形媒体間の接触判定に基づいて、上記媒体中心絶対座標情報(A)から上記各球形媒体間の接触方向(M)を算出し、
上記各球形媒体間の接触方向(M)と上記球形媒体の上記ミル容器の壁面との接触方向(H)及び上記球形媒体の上記壁面揺動速度ベクトル(V1)と上記運動速度ベクトル(V)とに基づいて上記球形媒体が上記壁面から受ける力(JO)及び他の上記球形媒体から受ける力(JA)を算出し、
上記球形媒体が上記壁面から受ける力(JO)と上記他の上記球形媒体から受ける力(JA)と上記球形媒体に作用する重力(G)及び上記微小単位時間(Δt)とに基づいて運動方程式を数値解析することを特徴とする請求項1に記載の回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置。
【請求項3】
上記絶対座標系(K1)が、上記容器揺動駆動手段により揺動動作される上記ミル容器の揺動中心を座標中心として固定した座標系により構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転揺動ミル装置の媒体挙動シミュレーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−119433(P2009−119433A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299315(P2007−299315)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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