説明

回転操作装置及びその回転操作部材の製造方法

【課題】回転操作部材30を有し、かつ、その著しい重量の増大を伴うことなく非接触で操作者に回転操作部材30の回転操作感を与えることが可能な回転操作装置を提供する。
【解決手段】回転操作装置は、回転操作を受ける回転操作部材30と、これから離れた位置に設けられ、回転操作部材30の回転に伴って操作者に操作感を与えるための磁石50とを備える。回転操作部材30は、合成樹脂材料からなる操作部材本体と、この操作部材本体の表面に施される金属皮膜とを有する。この金属皮膜は、磁性材料からなり、前記回転操作部材の回転周方向に間欠的に並ぶ複数の皮膜領域38aにのみ配設される。磁石50は、回転操作部材30の回転に伴って各皮膜領域38aに間欠的にかつ所定の間隔をおいて順次対向する位置に配設され、当該皮膜領域38aに配設された金属皮膜にそれぞれ磁力を及ぼすことにより回転操作感を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内のパネル等に設けられて回転操作を受ける回転操作部材を備えた回転操作装置及びその回転操作部材を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車室内等に設けられる回転操作装置は、指等で把持されながら回転操作を受ける回転操作部材と、その回転操作の方向及び量に応じた検出信号を出力する検出装置とを備える。さらに、この回転操作装置には、前記回転操作部材の回転操作感を操作者に与えるための操作感付与機構(いわゆるクリック機構)が付設されることが多い。
【0003】
従来、前記のような操作感付与機構を備えた回転操作装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。その概要を図8及び図9に示す。ここに示す装置は、パネル100から突出するように設けられたリング状のダイアルノブ102と、このダイアルノブ102を回転可能に支持する支持部材とを備え、この支持部材に図9に示すようなクリック部104が設けられている。
【0004】
前記操作感付与機構は、前記クリック部104と、前記ダイアルノブ102の内周面に形成された凹凸面106とで構成される。凹凸面106は、径方向に出入りする凹凸が周方向に沿って交互に繰り返される形状を有する。前記クリック部104は、金属製のボールからなるプランジャ108と、このプランジャ108を保持するプランジャ保持部110と、圧縮コイルばね112とを有する。前記プランジャ保持部110は、前記プランジャ108の前記ダイアルノブ102の径方向に沿う往復移動を許容しながら当該プランジャ108を収容するとともに、このプランジャ108と前記凹凸面106との接触を可能にするように当該凹凸面106側に向かう開口110aを有する。前記圧縮コイルばね112は、前記プランジャ保持部110内に圧縮状態で格納され、その弾発力により前記プランジャ108を前記凹凸面106に押付けて両者の接触を維持する。
【0005】
この回転操作装置では、前記ダイアルノブ102の回転に伴って当該ダイアルノブ102の凹凸面106に摺接するプランジャ108が当該ダイアルノブ102の径方向の往復動を繰り返し、当該凹凸面106の各凹部に順次嵌り込む。このことが、いわゆるクリック感、すなわち、回転操作感を操作者に与える。
【0006】
しかし、この装置では、長期の使用により前記プランジャ108またはこれと接触する凹凸面106が磨耗し、これによりクリック感を低下させるおそれがある。また、両者の接触はクリック感の発生と同時に異音を生じさせ、これにより高級感を低下させる不都合がある。
【0007】
そこで、特許文献2には、磁力を利用した非接触式の機構で前記クリック感を発生させる装置が開示されている。この装置の概要を図10に示す。この装置は、回路基板200と、この回路基板200上で回転操作される図略のダイアルノブと一体に回転するダイアルベース202と、前記回路基板200上に実装されたコイル204とを備える。前記ダイアルベース202は、磁性材料からなり、歯車状をなす。具体的には、その回転径方向に突出する複数の歯部206を有し、これらの歯部206が回転周方向に間欠的に配列されている。前記コイル204は、前記ダイアルベース202の各歯部206に対向するように配置されるとともに、通電されることにより磁界を形成してその磁力で前記ダイアルベース202に径方向の吸引力を及ぼす。
【0008】
この装置において、前記ダイアルノブと一体に前記ダイアルベース202が回転すると、このダイアルベース202とコイル204との距離が繰り返し変動し、これにより前記コイル204が前記ダイアルベース202を吸引する力が変動してクリック感を生じさせる。具体的に、前記ダイアルベース202の各歯部206が前記コイル204に対向するときには歯部206の間の部分が対向するときよりも大きな磁力(吸引力)がダイアルベース202に作用し、この大きな磁力が間欠的に発生することにより、クリック感が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−156129号公報
【特許文献2】特開2005−174807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記回転操作装置では、前記ダイアルベース202全体が磁性材料、すなわち金属材料により形成されなければならず、このことは装置全体の重量の増大を招く。特に、回転操作部材であるダイアルノブと一体に回転するダイアルベース202の重量が増大することは、操作者に与える回転抵抗を著しく増大させて却って操作性を低下させるおそれがある。また、前記のような歯車状のダイアルベース202を金属材料により形成するためには、大掛かりな設備と多くの工数を要する機械加工が必要であり、生産性及びコストの面でもデメリットがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記のような事情に鑑み、回転操作部材を有し、かつ、その著しい重量の増大を伴うことなく非接触で操作者に前記回転操作部材の回転操作感を与えることが可能な回転操作装置、及び、その回転操作部材を効率よく生産することが可能な回転操作装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明により提供される回転操作装置は、特定の軸回りに回転操作を受ける回転操作部材と、この回転操作部材から離れた位置に設けられ、当該回転操作部材の回転に伴って操作者に操作感を与えるための磁石とを備える。前記回転操作部材は、合成樹脂材料からなる操作部材本体と、この操作部材本体の表面に施される金属皮膜とを有する。この金属皮膜は、磁性材料からなり、前記回転操作部材の回転周方向に間欠的に並ぶ複数の皮膜領域にのみ配設される。前記磁石は、前記回転操作部材の回転に伴って前記各皮膜領域に間欠的にかつ所定の間隔をおいて順次対向する位置に配設され、当該皮膜領域に配設された金属皮膜にそれぞれ磁力を及ぼすことにより前記回転操作感を発生させる。
【0013】
この回転操作装置では、前記回転操作部材の回転に伴ってその各皮膜領域に順次対向する磁石が当該皮膜領域に設けられた金属皮膜に磁力を及ぼし、かつ、この磁力が前記回転操作部材の回転に伴って間欠的に変動することにより、当該回転操作部材と当該磁石との接触を伴うことなく使用者に回転操作感を与えることができる。しかも、前記回転操作部材の操作部材本体は合成樹脂材料であり、その表面の特定領域に僅かな金属皮膜が施されれば足りるので、図10に示した装置、すなわち、全体が金属材料により形成されたダイアルベースを含む装置のように、著しい重量の増大を伴うことがない。
【0014】
具体例としては、前記回転操作部材が、回転操作のために把持される円筒状の被把持部と、この被把持部の後端につながって当該被把持部の外径よりも大きな外径の後端面を有する大径部とを有し、その後端面上に前記回転操作部材の回転周方向に間欠的に並ぶ複数の皮膜領域が設定され、各皮膜領域に金属皮膜が配設される一方、前記磁石が前記後端面から後方に離間しかつ前記各皮膜領域に順次対向するように配置されたものが、好適である。当該回転操作部材では、前記大径部の後端面上で各皮膜領域に比較的大きな面積を与えることが可能であり、その面積が大きい分だけ前記磁石の吸引力を強くすることができる。特に、各皮膜領域の形状を前記回転操作部材の回転径方向に延びる形状とすれば、皮膜領域同士の回転周方向の間隔を小さく抑えて回転操作感を付与する回数を増やしながら、当該皮膜領域の回転径方向の寸法によって当該皮膜領域の面積を稼ぐことが可能である。
【0015】
また本発明は、前記回転操作装置における回転操作部材を製造するための方法を提供する。この方法は、ABS樹脂からなる第1の合成樹脂材料とそれ以外の第2の合成樹脂材料とを用いて二色成形することにより、前記各皮膜領域で前記第1の合成樹脂材料の表面が露出するとともに互いに隣接する皮膜領域同士の間にそれぞれ介在する介在領域で前記第2の合成樹脂材料の表面が露出するように前記操作部材本体を成形する成形工程と、この操作部材本体の皮膜領域と介在領域の双方に対してABS樹脂めっきを行うことにより前記皮膜領域で露出する前記第1の合成樹脂の表面にのみ前記金属皮膜を構成する金属材料を付着させるめっき工程と、を含む。
【0016】
この方法では、ABS樹脂からなる第1の合成樹脂材料とそれ以外の第2の合成樹脂材料による二色成形で操作部材本体が効率よく製造される。そして、この操作部材本体の皮膜領域と介在領域との双方に対してABS樹脂めっき操作を行えば、前記第1の合成樹脂の表面が露出する皮膜領域にのみ金属皮膜を付着させることができる。従って、マスキングといった複雑な工程を要することなく、交互に並ぶ皮膜領域及び介在領域のうちの皮膜領域にのみ好適な金属皮膜を配設することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、回転操作部材を有し、かつ、その著しい重量の増大を伴うことなく非接触で操作者に前記回転操作部材の回転操作感を与えることが可能な回転操作装置が提供され、また、その回転操作部材を効率よく製造することができる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転操作装置の正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】前記回転操作装置の要部を裏側から見た斜視図である。
【図5】(a)は前記回転操作装置の回転操作部材の正面図、(b)は(a)のVB−VB線断面図である。
【図6】前記回転操作部材の背面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る回転操作装置の要部を裏側から見た斜視図である。
【図8】特許文献1に記載される従来の回転操作装置の概要を示す一部断面斜視図である。
【図9】図8に示される回転操作装置の要部を示す一部断面斜視図である。
【図10】特許文献2に記載される従来の回転操作の装置の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施の形態を図1〜図6を参照しながら説明する。
【0020】
この実施の形態に係る回転操作装置は、例えば自動車の車室内のパネルに設けられるものであって、そのパネルの裏側に配置される回路基板10と、この回路基板10上に固定される保持部材20と、この保持部材20に回転可能に保持される回転操作部材30と、この回転操作部材30の回転を検出するための回転検出スイッチ40と、操作感付与のための磁石50と、を備え、そのうちの回転操作部材30及び磁石50が本発明の必須構成要素に含まれる。
【0021】
前記保持部材20は、前記回転操作部材30を所定の回転中心軸、この実施の形態では前記回路基板10の法線方向(図2では左右方向)と平行な軸、の回りに回転可能となるように保持する。さらに、この保持部材20は、前記回転検出スイッチ40及び前記磁石50も保持する。具体的に、この保持部材20は、小径の円筒状の内周壁22と、それよりも大径の円筒状の外周壁24とを有し、これらの周壁22,24は、それらの中心軸が前記回転中心軸に合致するように、つまり同軸状に、配置されている。
【0022】
前記回転操作部材30は、この実施の形態では、回転操作のために把持される円筒状の被把持部32と、この被把持部32の前端側開口を塞ぐ端壁34と、前記被把持部32の後端から径方向外向きに突出する後端壁36とを有する。
【0023】
前記被把持部32は、前記保持部材20の内周壁22の外側にほぼ隙間なく嵌合される内径を有し、これにより当該内周壁22に回転可能に保持される。前記後端壁36は、本発明に係る大径部を構成し、前記被把持部32の外径よりも大きな外径をもつ環状の後端面38を有する。また、図1及び図4に示すように、前記保持部材20はその外周壁24の複数の箇所からそれぞれ内向きに突出する保持爪26を有し、これらの保持爪26が前記後端壁36の外周部を前側から抱え込むように保持する。
【0024】
この回転操作部材30は、その特徴として、合成樹脂からなる操作部材本体と、この操作部材本体の特定領域にのみ配設される金属皮膜とで構成される。具体的に、前記後端面38の外周部上には、回転操作部材30の回転周方向に間欠的に並ぶ複数の皮膜領域38aと、互いに隣接する皮膜領域38a同士の間にそれぞれ介在する介在領域38bとが設定され、そのうちの皮膜領域38aにのみ前記金属皮膜が配設されている。この金属皮膜は、例えば錫やニッケル−コバルト系合金といった磁性材料からなり、この実施の形態では後述のように電気めっきにより形成されている。
【0025】
前記各皮膜領域38aは、図1,図4及び図6に網目領域として示されているように、回転操作部材30の回転径方向に延びる形状を有し、それぞれの外側端は、この実施の形態では、前記後端壁36の外周面にまで至っている。また、前記後端面38の各介在領域38bの内側部には、当該後端面38からさらに後方に突出する回転検出用突起39がそれぞれ形成されている。
【0026】
なお、前記操作部材本体を構成する合成樹脂の具体的な材質、及び、回転操作部材30の製造方法については後に詳述する。
【0027】
前記回転検出スイッチ40は、前記回転操作部材30に形成された各回転検出用突起39と連携して当該回転操作部材30の回転を検出する。具体的に、この回転検出スイッチ40は、前記回転操作部材30の回転周方向に起伏動作が可能な回転検出子42と、この回転検出子42を指示するスイッチ本体44とを有する。スイッチ本体44は、前記回路基板10上に実装され、前記回転検出子42の起伏動作の度にその起伏動作の方向に対応した検出信号を前記回路基板10に出力する。回転検出スイッチ40は、前記回転操作部材30の回転に伴って前記回転検出子42が前記各回転検出用突起39に順次当接して間欠的に繰り返し倒伏させられるように、配置されている。従って、この実施の形態では、前記回転操作部材30の回転に伴ってその回転方向に対応した検出信号がその回転量に対応した回数で前記スイッチ本体44から前記回路基板10に入力される。
【0028】
なお、本発明において前記回転検出スイッチは必須の構成要素ではない。また、回転操作部材の回転を検出する手段は前記回転検出スイッチに限られない。例えば、前記のように回転操作部材30の各皮膜領域38aに設けられた金属皮膜を利用して磁気スイッチにより回転操作部材30の回転を検出することも可能である。
【0029】
前記磁石50は、前記各皮膜領域38aに配設された磁性材料からなる金属皮膜との連携により、回転操作部材30を操作する操作者に回転操作感を与える。具体的に、この磁石50は、前記回転操作部材30における後端壁36の後端面38から後方に離間し、かつ、当該回転操作部材30の回転に伴って前記後端面38上の各皮膜領域38aに間欠的にかつ所定の間隔をおいて順次対向するように、配置される。
【0030】
従って、この磁石50は、前記後端面38と接触することなく、回転操作部材30の回転に伴ってその回転操作感を操作者に与えることができる。具体的に、この磁石50は、前記回転操作部材30の回転に伴ってその各皮膜領域38aに順次対向することにより、当該皮膜領域に設けられた金属皮膜に磁力を及ぼし、かつ、この磁力は前記回転操作部材30の回転に伴って間欠的にかつ周期的に変動する。このような磁力の変動が使用者に回転操作感を与える。
【0031】
また、この回転操作装置では、前記回転操作感を発生させるのに著しい重量の増大を伴うこともない。例えば前記図10に示した装置、すなわち、全体が金属材料により形成されたダイアルベース202を含むような装置では、当該ダイアルベース202の大きな重量が回転操作部材であるダイアルの回転操作性に少なからぬ影響を与える(大きな回転抵抗を与える)ことになるが、図1〜図6に示す回転操作部材30の操作部材本体は合成樹脂材料であり、その表面の特定の領域すなわち皮膜領域38aに僅かな金属皮膜が施されれば足りるので、重量の増大はほとんどない。
【0032】
前記磁石50の位置や姿勢は、適宜変更することが可能である。その変更例を第2の実施の形態として図7に示す。前記図4に示される回転操作部材30では、皮膜領域38aが後端面38上のみならず後端壁36の外周面にも至っているが、第2の実施の形態では、この外周面上の皮膜領域38aの金属皮膜を利用して回転操作感を発生させるように、磁石50が当該外周面上に対向するように配置されている。この場合、前記後端面38上には必ずしも皮膜領域は要しない。
【0033】
前記第1及び第2の実施形態に係る回転操作部材30は、軽量であるのみならず、生産性に優れているという利点を有する。この回転操作部材30は、次の工程を含む方法によって効率よく製造されることが可能である。
【0034】
1)成形工程
この成形工程では、合成樹脂製の操作部材本体が成形される。この操作部材本体は、特に図2,図3及び図5(b)において明瞭に示されるように、その表面にABS樹脂からなる第1の合成樹脂材料30aと、それ以外の合成樹脂、例えばポリカーボネートからなる第2の合成樹脂材料30bとを二色成形することにより、成形される。
【0035】
この実施の形態において、両合成樹脂材料30a,30bは、そのうちの第1の合成樹脂材料30aが前記被把持部32及び前記端壁34の内側部分を構成し、第2の合成樹脂材料30bが前記被把持部32及び前記端壁34の外側部分を構成するように、互いに積層されている。一方、前記後端壁36においては、その主たる部分が前記第2の合成樹脂材料30bにより構成され、前記各皮膜領域38aの表面部分(後端面を含む部分)及びこれにつながる外端部分(後端壁36の外周縁に位置する部分)のみが前記第1の合成樹脂材料30aにより構成されている。従って、前記各皮膜領域38aではABS樹脂からなる前記第1の合成樹脂材料30aが露出し、前記各介在領域38bでは前記第2の合成樹脂材料30bが露出する。
【0036】
なお、前記後端面38以外の部分では、第1の合成樹脂材料30a及び第2の合成樹脂材料30bの配置は限定されない。例えば、第2の合成樹脂材料30bが前記被把持部32及び端壁34の内側部分を構成し、第1の合成樹脂材料30aが外側部分を構成してもよい。
【0037】
2)めっき工程
前記のようにして成形された操作部材本体の表面の少なくとも後端面38に対し、ABS樹脂めっきが施される。このABS樹脂めっきは、既に知られているように、成型品の表面を前処理(一般には脱脂及びエッチング)する工程と、その前処理後の表面に無電解めっきのための触媒金属(例えばPd−Snの錯体)を吸着させる工程と、その触媒金属を活性化する工程と、その触媒を付加した成形品を化学めっき浴中に浸漬してニッケルイオンを還元することによりニッケル皮膜を生成する工程と、その表面を電気めっきする工程と、を含む。これにより、前記ABS樹脂からなる第1の合成樹脂材料30aの表面にのみ、すなわち、後端面38においては各皮膜領域38aにおいてのみ、所定の金属皮膜が形成される。この金属皮膜は、具体的には、銅及びニッケルからなる下地層と、その表面に積層されたクロムからなる表面層とを有し、そのうちのニッケルが前記磁石50の磁力による吸着を受ける。
【0038】
従って、このめっき工程においては、マスキングといった煩わしい工程を経ることなく、所定の皮膜領域38aにのみ、磁石により吸着されることが可能な金属皮膜を形成することができる。
【0039】
なお、本発明に係る回転操作装置を構成する回転操作部材は、前記の方法により製造されたものに限定されない。例えば、合成樹脂からなる操作部材本体の表面に部分的に磁性材料からなる金属フィルムが貼着されて前記金属皮膜を構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 回路基板
20 保持部材
30 回転操作部材
30a 第1の合成樹脂材料
30b 第2の合成樹脂材料
32 被把持部
34 端壁
36 後端壁
38 後端面
38a 皮膜領域
38b 介在領域
50 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作装置であって、
特定の軸回りに回転操作を受ける回転操作部材と、
この回転操作部材から離れた位置に設けられ、当該回転操作部材の回転に伴って操作者に操作感を与えるための磁石と、を備え、
前記回転操作部材は、合成樹脂材料からなる操作部材本体と、この操作部材本体の表面に施される金属皮膜とを有し、この金属皮膜は、磁性材料からなり、前記回転操作部材の回転周方向に間欠的に並ぶ複数の皮膜領域にのみ配設され、
前記磁石は、前記回転操作部材の回転に伴って前記各皮膜領域に間欠的にかつ所定の間隔をおいて順次対向する位置に配設され、当該皮膜領域に配設された金属皮膜にそれぞれ磁力を及ぼすことにより前記回転操作感を発生させる、回転操作装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転操作装置であって、前記回転操作部材が、回転操作のために把持される円筒状の被把持部と、この被把持部の後端につながって当該被把持部の外径よりも大きな外径の後端面を有する大径部とを有し、その後端面上に前記回転操作部材の回転周方向に間欠的に並ぶ複数の皮膜領域が設定され、各皮膜領域に金属皮膜が配設される一方、前記磁石が前記後端面から後方に離間しかつ前記各皮膜領域に順次対向するように配置されている、回転操作装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の回転操作装置における回転操作部材を製造するための方法であって、
ABS樹脂からなる第1の合成樹脂材料とそれ以外の第2の合成樹脂材料とを用いて二色成形することにより、前記各皮膜領域で前記第1の合成樹脂材料の表面が露出するとともに互いに隣接する皮膜領域同士の間にそれぞれ介在する介在領域で前記第2の合成樹脂材料の表面が露出するように前記操作部材本体を成形する成形工程と、
前記操作部材本体の皮膜領域と介在領域の双方に対してABS樹脂めっきを行うことにより前記皮膜領域で露出する前記第1の合成樹脂の表面にのみ前記金属皮膜を構成する金属材料を付着させるめっき工程と、を含む、回転操作装置の回転操作部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26120(P2013−26120A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161865(P2011−161865)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】