回転検出装置、検出装置、電子機器及びロボット
【課題】回転力の方向と大きさを高感度で検出する事が可能な回転検出装置、電子機器及びロボットを提供する。
【解決手段】回転軸4に対する外力の回転方向と大きさとを検出する回転検出装置100であって、第一基板11には基準点Pの回りに圧力センサー2が複数個設けられ、第二基板12には基準点Pと重なる位置、先端部が第一基板11に当接した状態で外力Fによって弾性変形する弾性体突起3が設けられている。第一基板11は回転軸4に対して固定されており、第二基板12は回転軸4に対して回転可能である。第二基板12に回転力が付加されると、弾性体突起3は圧縮変形し、複数の圧力センサー2で異なる値の圧力値が検出される。これらの圧力値に基づいて、高い精度で回転力の方向と大きさとを検出する。
【解決手段】回転軸4に対する外力の回転方向と大きさとを検出する回転検出装置100であって、第一基板11には基準点Pの回りに圧力センサー2が複数個設けられ、第二基板12には基準点Pと重なる位置、先端部が第一基板11に当接した状態で外力Fによって弾性変形する弾性体突起3が設けられている。第一基板11は回転軸4に対して固定されており、第二基板12は回転軸4に対して回転可能である。第二基板12に回転力が付加されると、弾性体突起3は圧縮変形し、複数の圧力センサー2で異なる値の圧力値が検出される。これらの圧力値に基づいて、高い精度で回転力の方向と大きさとを検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転検出装置、検出装置、電子機器及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
外力を検出する検出装置として、特許文献1及び2に記載の検出装置が知られている。特許文献1の検出装置は、裏面に錐状突起が略均一に配置された受圧シートを用い、その突起の変形量から圧力分布を検出する構成となっている。又、特許文献2の検出装置は、受圧シートの表面に複数の柱状突起を格子状に配置し、これら表面突起の周辺部を等分した個所の裏面に円錐状の突起を設けた構成となっている。この様な検出装置は、タッチパネルやロボットの触覚センサー等への応用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−135834号公報
【特許文献2】特開平7−128163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検出装置では、回転力の方向と大きさ、或いは回転力と並進力との方向と大きさ、を常に高い感度で且つ再現性良く検出する事ができないと云う課題があった。例えば、特許文献1の検出装置では、測定面にかかる外力の面内方向の力(並進力)も回転力も測定する事ができなかった。又、特許文献2の検出装置では、外力を三次元の力ベクトルとして検出する事は可能であるが、回転力の方向と大きさとは検出できなかった。更に、突起の変形の度合い、特に時間的な変形保持(一度変形させると、しばらくの間、変形した突起が元の状態に戻らない事)によって、外力の検出精度が悪化していた。この様に、従来の検出装置では回転力などの力の方向と大きさとを常に高感度で且つ再現性良く検出できないと云う課題があった。
【0005】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、回転力などの外力の方向と大きさを常に高い感度と精度で検出する事が可能な回転検出装置や、検出装置、電子機器及びロボットを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又、は適用例として実現する事が可能である。
【0007】
(適用例1) 本適用例に係わる回転検出装置は、回転軸に対する外力の回転方向と大きさとを検出する回転検出装置であって、第一基板と第二基板とを有し、第一基板の表面には、基準点の回りに圧力センサーが複数個設けられ、第二基板の裏面には、基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が第一基板の表面に当接した状態で外力によって弾性変形する弾性体突起が設けられ、第一基板と第二基板とは、回転軸に直交し、回転軸の回りに、第一基板と第二基板とは相対的に回転可能で、第二基板は所定の弾性力を有する弾性体からなる事を特徴とする。
この構成によれば、弾性体突起の先端部が第一基板の表面に設けられた複数の圧力センサーに当接した状態で、圧力センサー表面に平行な方向に変形する事が可能である。従って、外力の方向と大きさとを高精度に検出できる。第二基板の裏面に外力が付加されると、弾性体突起は先端部が第一基板に当接した状態で圧縮変形する。この時、回転軸に垂直な平面に沿った力の成分があると、弾性体突起の変形には偏りが生じる。即ち、弾性体突起の重心は基準点からずれて回転軸に垂直な平面で僅かに移動する。すると、複数の圧力センサーで異なる値の圧力値が検出され得る。具体的には、弾性体突起の重心と重なる位置の圧力センサーでは相対的に大きい圧力値が検出され、弾性体突起の重心と重ならない位置の圧力センサーでは相対的に小さい圧力値が検出される事となる。これらの圧力値に基づいて外力が加えられた方向と大きさを求める事ができる。第一基板と第二基板とは、回転軸に対して相対的に回転し得るので、検出された外力の方向と大きさとから、高い精度で回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。
【0008】
(適用例2) 上記適用例に係わる回転検出装置において、外力によって弾性体突起が弾性変形する事により複数の圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて加えられた外力の回転方向と大きさとを演算する演算装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、演算装置により、各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力が加えられた方向と大きさを求める事ができる。更に、これらの外力の方向と大きさとから、演算装置により回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。
【0009】
(適用例3) 上記適用例に係わる回転検出装置において、複数の圧力センサーは、基準点に対して点対称に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、基準点と各圧力センサーとの間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起の変形量と各圧力センサーで検出される圧力値の関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサーが基準点から互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起の変形量が同じであっても、各圧力センサーで検出される圧力値は互いに異なる事となる。この為、検出値の差分を演算する際に各圧力センサーの配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起の変形量と各圧力センサーが検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、先の補正係数は不要となる。従って、各圧力センサーで検出された圧力値から外力の方向と大きさとを演算する事が容易となり、これに伴い外から加えられた回転力の方向と大きさとを効率よく検出する事ができる。
【0010】
(適用例4) 上記適用例に係わる回転検出装置において、複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に行列状に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、互いに直交する二方向が規定する平面に沿って、外力の方向と大きさを容易に演算でき、それ故に外から加えられた回転力の方向と大きさとを容易に演算する事ができる。
【0011】
(適用例5) 上記適用例に係わる回転検出装置において、複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に少なくとも4行4列に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、4行4列との少ない行列構成で、外力の方向と大きさとを高精度に検出する事ができる。従って、回転力の方向と大きさとを高精度に検出する事ができる。
【0012】
(適用例6) 上記適用例に係わる回転検出装置において、弾性体突起は第二基板の裏面に複数個形成されており、複数の弾性体突起は、互いに離間して配置されている事が好ましい。
この構成によれば、各弾性体突起が設けられた箇所毎に外力の方向と大きさとが検出される。従って、回転軸に垂直な平面内で、回転軸の回りに掛かる回転力の方向と大きさとを厳密に検出する事ができる。
【0013】
(適用例7) 上記適用例に係わる回転検出装置において、第一基板と第二基板との間には、回転軸に沿って回転軸材が設けられ、回転軸材が弾性体からなる事が好ましい。
この構成によれば、回転軸材が回転軸の回りに弾性変形して回転し得る。従って、第二基板が回転軸材に固定されていても、第二基板は回転軸に対して回転可能で、回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。
【0014】
(適用例8) 本適用例に係わる検出装置は、外力の方向と大きさ、及び外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第三基板とを備え、第三基板の表面には、第二基準点の回りに第二圧力センサーが複数個設けられ、第一基板の裏面には、第二基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が第三基板の表面に当接した状態で外力によって弾性変形する第二弾性体突起が設けられ、第一基板は所定の弾性力を有する弾性体からなり、第三基板は、回転軸に直交すると共に、第一基板との相対位置を変え得る事を特徴とする。
この構成によれば、第二圧力センサーや第二弾性体突起などで、回転軸に垂直な平面に沿った並進力(滑り力)と、回転軸に沿った圧力とを検出し、同時に回転検出装置で回転軸の回りの回転力を検出する事ができる。
【0015】
(適用例9) 本適用例に係わる検出装置は、外力の方向と大きさ、及び外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第四基板とを備え、第二基板の表面には、第三基準点の回りに第三圧力センサーが複数個設けられ、第四基板の裏面には、第三基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が第二基板の表面に当接した状態で外力によって弾性変形する第三弾性体突起が設けられ、第四基板は、回転軸に直交すると共に、第二基板との相対位置を変え得る事を特徴とする。
この構成によれば、第三圧力センサーや第三弾性体突起などで、回転軸に垂直な平面に沿った並進力(滑り力)と、回転軸に沿った圧力とを検出し、同時に回転検出装置で回転軸の回りの回転力を検出する事ができる。
【0016】
(適用例10) 本適用例に係わる電子機器は、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の回転検出装置を備えているので、外力がもたらす回転力の方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能な電子機器を提供する事ができる。
【0017】
(適用例11) 本適用例に係わるロボットは、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の回転検出装置を備えているので、外力がもたらす回転力の方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能なロボットを提供する事ができる。
【0018】
(適用例12) 本適用例に係わる電子機器は、上記適用例8又は9に記載の検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の検出装置を備えているので、外力の三次元成分と外力がもたらす回転力との方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能な電子機器を提供する事ができる。
【0019】
(適用例13) 本適用例に係わるロボットは、上記適用例8又は9に記載の検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の検出装置を備えているので、外力の三次元成分と外力がもたらす回転力との方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能なロボットを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る回転検出装置の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図2】回転検出装置が圧力を検出する原理を説明した図。
【図3】回転検出装置が並進力を検出する原理を説明した図。
【図4】回転検出装置が回転力を検出する原理を説明した図。
【図5】基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する断面図。
【図6】基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する平面図。
【図7】単位検出領域の座標系を示す図。
【図8】回転検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図9】回転検出装置を適用した携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図10】回転検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【図11】実施形態2に係る検出装置の構成を示す断面図。
【図12】実施形態3に係るロボットハンドによる外力Fの検出原理を説明する図。
【図13】変形例1に係る検出装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。又、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る回転検出装置の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)は平面図である。尚、図1中にXYZ直交座標系を設定し、以降、必要に応じて、このXYZ直交座標系を参照して各種の説明を行う。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸が第一基板11の辺部に対して平行な方向に設定され、Z軸がX軸及びY軸に対して直交する方向に設定されている。
【0023】
本実施形態の回転検出装置100は、回転軸4に対する外力Fの回転方向と大きさとを検出し、例えばノートパソコン等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられたり、ロボットハンドに用いられたりする。回転検出装置100に外力Fが加えられると、外力Fに応じて弾性体突起3は弾性変形する。この際に複数の圧力センサー2で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー2で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向と大きさ、及び回転力を演算する。図1には示されていないが、回転検出装置100はこうした演算を行う演算装置を備えているとともに、第一基板11と第二基板12と回転軸材41とを備えている。第一基板11と第二基板12とは、回転軸材41に対して、相対的に回転可能である。
【0024】
第一基板11は、例えばガラスや石英、プラスチック等の材料で構成された矩形板状で、その表面に複数の圧力センサー2を具備している。例えば、第一基板11の大きさ(平面視のサイズ)は、縦16mm×横16mm程度になっている。第一基板11の表面には、基準点Pが複数個定められている。基準点Pとは、滑り力や回転力が作用していない状態で、弾性体突起3の中心(重心G)が平面的に位置するポイントである。本実施形態では図1(b)に示される様に4個の基準点Pが定められている。
【0025】
各基準点Pの回りには圧力センサー2が複数個行列状に設けられ、単位検出領域を形成している。各圧力センサー2の面積はほぼ等しい。図1(b)では、一つの基準点Pの回りに圧力センサー2が4行4列に、合計16個配置されている。基準点Pはこれら行列状に配置された圧力センサー2群の平面的な中心(単位検出領域の中心)に、ほぼ一致する様に定められる。複数の圧力センサー2は、基準点Pに対して点対称に配置されている。例えば、複数の圧力センサー2は、互いに直交する二方向(X方向及びY方向)に行列状に配置されている。これにより、基準点Pと各圧力センサー2との間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起3の変形と各圧力センサー2で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。よって、各圧力センサー2の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー2で検出された圧力値の差分を演算する事が容易となる。尚、圧力値の差分の演算方法については後述する。
【0026】
隣り合う圧力センサー2の間隔は、0.1mm程度になっている。この為、外乱や静電気等の影響により隣り合う位置の圧力センサー2で検出される圧力値にノイズがのらない様になっている。単位検出領域の大きさ(平面視のサイズ)は、縦5.6mm×横5.16mm程度になっている。圧力センサー2としては、例えばダイアフラムゲージ等の感圧素子を用いる事ができる。圧力センサー2は、接触面に外力Fが作用した時にダイアフラムに加わる圧力を電気信号に変換する。
【0027】
第二基板12は矩形板状をなしており、第二基板12の裏面には複数の弾性体突起3が配置されている。第二基板12は外力Fを直接受ける部分である。第二基板12は、例えばシリコーンゴムなどの弾性体を用いて構成されている。本実施形態では、第二基板12と弾性体突起3とを接着剤により接着しているが、第二基板12及び弾性体突起3を金型で一体形成してもよい。
【0028】
第二基板12の裏面には、弾性体突起3が複数個設けられている。複数の弾性体突起3は、基板本体上においてX方向及びY方向に行列状に配置され、各弾性体突起3の重心Gは、初期的に基準点Pと重なる位置に配置されている。即ち、各弾性体突起3は、平面視に於いて、先の基準点Pと重なる位置に重心Gが位置する様に設けられる。従って、第二基板12の裏面に設けられた弾性体突起3の数と第一基板11の表面に定められた基準点Pの数とは一致する。弾性体突起3の先端部は、球面の錐状となっており、回転検出装置100に外力Fが掛けられない状態で、第一基板11の表面に設けられた圧力センサー2に当接している。回転検出装置100に外力Fが加えられた状態では、外力Fによって弾性体突起3は弾性変形する。又、複数の弾性体突起3は、互いに離間して配置されている。この為、弾性体突起3が弾性変形したときの基板本体の面内に平行な方向の変形量を許容する事ができる。
【0029】
弾性体突起3のサイズは任意に設定する事ができる。ここでは、弾性体突起3の基部の径(弾性体突起3が第一基板11に接する部分の直径)は1.8mm程度になっている。弾性体突起3の高さ(弾性体突起3のZ方向の距離)は2mm程度になっている。隣り合う弾性体突起3の離間間隔は5.6mm程度になっている。弾性体突起3のデュロメーター硬さ(タイプA、ISO7619準拠のデュロメーターによる硬さ測定値)は30程度になっている。
【0030】
図1(b)に示す様に、平面視において、回転検出装置100のほぼ中心に回転軸材41が設けられ、回転軸材41のXY平面での中心が回転軸4となる。回転軸材41は円柱状で、円の中心が回転軸4となり、円柱の一方の面(下面)が第一基板11の表面に接合し、円柱の他方の面(上面)が第二基板12の裏面に接している。図1(a)に示す様に、第一基板11も第二基板12も、回転検出装置100に外力Fが掛けられない状態では回転軸4に直交している。即ち、第一基板11と第二基板12とはXY平面に平行で、回転軸4はZ軸に平行である。更に、第一基板11は回転軸4に対して固定されており、従って回転軸材41に対しても固定されている。又、第二基板12は、回転軸4に対して回転可能となっている。本実施形態では、回転軸材41は弾性体からなり、回転軸材41と第二基板12とは接合されている。この場合、回転軸材41の弾性により、第二基板12は回転軸4に対して回転可能となる。尚、回転軸材41を剛体で形成してもよい。その場合、回転軸材41の上部と第二基板12の裏面との間にボールベアリングなどの回転可能な軸受けを設け、第二基板12を回転軸4に対して回転可能とする。更に、第二基板12は、所定の弾性力を有する弾性体からなる。第二基板12の表面には表面弾性層5が設けられ、回転検出装置100の表面での摩擦係数を大きくしている。尚、第一基板11も第二基板12も一方の面を表面と称し、その反対の他方の面を裏面と称している。本明細書では、Z軸の正の方向(図1(a)の上向き)に面する方を表面と称し、Z軸の負の方向(図1(a)の下向き)に面する方を裏面と称する。
【0031】
次に回転検出装置100が外力F及び回転力を検出する原理を図2乃至4を参照して説明する。図2は回転検出装置が圧力を検出する原理を説明した図である。圧力とは対象平面の法線方向に働く単位面積当たりの力である。図2では第二基板12の法線方向(Z軸方向)に外力Fが加えられた状態が描かれている。この場合、弾性体突起3及び回転軸材41が弾性変形し、弾性変形した弾性体突起3は圧力センサー2を押圧する。従って、各圧力センサー2が計測する力の和を取る事で外力FのZ成分Fzが検出される。尚、回転軸材41が剛体である場合も第二基板12が弾性体であるので、第二基板12の弾性変形が弾性体突起3の弾性変形をもたらし、外力FのZ成分Fzを検出する事ができる。
【0032】
図3は回転検出装置が並進力を検出する原理を説明した図である。並進力とは対象平面に平行な方向に働く力(滑り力)である。図3では回転検出装置100(厳密には第一基板11)に対して、斜めに外力Fが加えられた状態が描かれている。斜めに働く外力FはX成分FxとY成分FyとZ成分Fzとに分解される。外力FのZ成分Fzは先に説明した方法で検出される。回転検出装置100に平行な方向(X軸方向やY軸方向)に関しては、弾性体突起3の変形具合から、外力FのX成分FxやY成分Fyが検出される。第二基板12の裏面に外力Fが付加されると、弾性体突起3は先端部が第一基板11に当接した状態で圧縮変形する。この時、第一基板11に沿った力の成分があると、弾性体突起3の変形には偏りが生じる。その結果、弾性体突起3の重心Gが基準点Pからずれてその平面方向で僅かに移動する。すると、複数の圧力センサー2で異なる値の圧力値が検出される。具体的には、弾性体突起3の重心Gと重なる位置の圧力センサー2では相対的に大きい圧力値が検出され、弾性体突起3の重心Gと重ならない位置の圧力センサー2では相対的に小さい圧力値が検出される事となる。これらの圧力値に基づいて外力Fの方向と大きさ、即ちFxやFyを求める事ができる。
【0033】
図4は回転検出装置が回転力を検出する原理を説明した図である。回転力とは対象平面に平行な方向に働く力で、回転軸4に対して回転する力である。図4では回転検出装置100に対して、時計回りの外力F1〜F4が加えられた状態が描かれている。前述の如く、回転検出装置100は回転軸4の回りに複数(4個)の基準点P(P11〜P14)を有し、各基準点Pで外力FのX成分FxやY成分Fyを独立に検出できる。第一基板11は回転軸4に対して固定され、第二基板12が回転軸4の回りに回転し得るので、各基準点Pで検出されたFxやFyから、高い精度で回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。具体的には回転軸4の回りのトルクベクトル和(本実施形態の場合、N1+N2+N3+N4)を検出する事ができる。トルクベクトル(例えばN1)とは、回転軸4から基準点P(例えばP11)までの位置ベクトルr(例えばr1)と基準点P(例えばP11)における外力Fベクトル(例えばF1)とのベクトル積(例えばN1=r1×F1)である。又、各基準点Pで外力Fの成分を独立に検出できるので、各基準点Pで検出された外力Fのベクトル和(F1+F2+F3+F4)を取る事で並進力も容易に検出できる。この様に、回転検出装置100は、回転軸4に平行な力(Fz)と回転軸4に直交する平面に沿った並進力(FxとFy)及び回転軸4の回りの回転力(トルク)とを検出できる。
【0034】
次に、図5乃至6を参照して、各基準点Pで外力FのX成分FxやY成分Fyを検出する方法を説明する。図5は、一つの基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する断面図である。又、図6は、図5に対応して、一つの基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する平面図である。尚、図5(a)及び図6(a)は第二基板12の表面に外力Fが付加される前の状態(外力Fの作用がない時)を示している。図5(b)及び図6(b)は第二基板12の表面に垂直方向(滑り力がない状態)の外力Fが付加された状態を示している。図5(c)及び図6(c)は第二基板12の表面に斜め方向(滑り力がある状態)の外力Fが付加された状態を示している。又、図6(a)〜(c)において、符号Gは弾性体突起3の重心G(圧力中心)を示している。更に、説明を分かり易くする為に圧力センサー2は基準点Pの回りの2行2列分を描いてある。
【0035】
図5(a)及び図6(a)に示す様に、第二基板12の表面に外力Fが付加される前においては、弾性体突起3は変形しない。これにより、第一基板11と第二基板12との間の距離は一定に保たれる。この時、弾性体突起3の重心Gは基準点Pと重なる位置に配置されている。この時の各圧力センサー2の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー2の圧力値を基準として外力Fの作用する方向や大きさが求められる。
【0036】
図5(b)及び図6(b)に示す様に、第二基板12の表面に垂直方向の外力Fが付加された時には、弾性体突起3は先端部が第一基板11の表面に配置された複数の圧力センサー2に当接した状態でZ方向に圧縮変形する。これにより、第二基板12が−Z方向に撓み、第一基板11と第二基板12との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。この時の圧力センサー2の圧力値は、外力Fの作用がない時に比べて大きくなる。又、その変化量は各圧力センサー2ともほぼ同じ値となる。
【0037】
図5(c)及び図6(c)に示す様に、第二基板12の表面に斜め方向の外力Fが付加された時には、弾性体突起3は先端部が第一基板11の表面に配置された複数の圧力センサー2に当接した状態で斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第二基板12が−Z方向に撓み、第一基板11と第二基板12との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。この時、弾性体突起3の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起3の先端部と4つの圧力センサー2との重なる面積は互いに異なる。具体的には、弾性体突起3の先端部と4つの圧力センサー2との重なる面積は、4つの圧力センサー2のうち−X方向及び−Y方向に配置された部分と重なる面積よりも+X方向及び+Y方向に配置された部分と重なる面積のほうが大きくなる。
【0038】
弾性体突起3は、斜め方向の外力Fにより変形に偏りが生じる。即ち、弾性体突起3の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー2で異なる値の圧力値が検出される。具体的には、弾性体突起3の重心Gと重なる位置の圧力センサー2では相対的に大きい圧力値が検出され、弾性体突起3の重心Gと重ならない位置の圧力センサー2では相対的に小さい圧力値が検出される事となる。そして、後述する差分の演算方法に基づいて外力Fが加えられた方向と大きさが求められる。
【0039】
図7は、単位検出領域の座標系を示す図である。図7に示す様に、4個の圧力センサーS1〜S4は、基準点Pの回りに2行2列に配置されている。ここで、各圧力センサーS1〜S4が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPS1,PS2,PS3,PS4とすると、外力FのX方向成分Fx(外力Fの面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式1で表される。
【0040】
【数1】
【0041】
又、外力FのY方向成分Fy(外力Fの面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式2で表される。
【0042】
【数2】
【0043】
又、外力FのZ方向成分Fz(外力Fの垂直方向成分)は以下の式3で表される。
【0044】
【数3】
【0045】
本実施形態では、外力Fによって弾性体突起3が弾性変形する事により4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー2で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向が演算される。
【0046】
式1に示す様に、外力FのX方向成分Fxにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+X方向に配置された圧力センサーS2及びS4で検出された値が組み合わされると共に、−X方向に配置された圧力センサーS1及びS3で検出された値が組み合わされる。この様に、+X方向に配置された圧力センサーS2及びS4の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された圧力センサーS1及びS3の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのX方向成分が求められる。
【0047】
式2に示す様に、外力FのY方向成分Fyにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+Y方向に配置された圧力センサーS1及びS2で検出された値が組み合わされると共に、−Y方向に配置された圧力センサーS3及びS4で検出された値が組み合わされる。この様に、+Y方向に配置された圧力センサーS1及びS2の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された圧力センサーS3及びS4の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのY方向成分が求められる。
【0048】
式3に示す様に、外力FのZ方向成分Fzにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4の圧力値を足し合わせた合力で求められる。ただし、外力FのZ方向成分Fzは、外力FのX方向成分Fx及び外力FのY方向成分Fyに比べて検出値が大きく検出される傾向がある。例えば、弾性体突起3の材質として硬いものを用いたり、先端部の形状を先鋭にしたりすると、外力FのZ方向成分Fzの検出感度が高くなる。しかしながら、弾性体突起3の材質として硬いものを用いると弾性体突起3が変形しにくくなり外力Fの面内方向の検出値が小さくなってしまう。又、弾性体突起3の先端部の形状を先鋭にすると接触面を指で触ったときのタッチ感に強い感度(違和感)を与える場合がある。この為、外力FのZ方向成分Fzの検出値を、外力FのX方向成分Fx及び外力FのY方向成分Fyの検出値と揃えるには、弾性体突起3の材質や形状によって決定される補正係数で検出値を適宜補正する必要がある。
【0049】
本実施形態の回転検出装置100によれば、回転軸4に平行な力(Fz)と回転軸4に直交する平面に沿った並進力(FxとFy)及び回転軸4の回りの回転力(トルク)とを検出する事ができる。
【0050】
図8は、本実施形態に係る回転検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図である。携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003及びコントロールパッド1002、並びに表示部としての液晶パネル1001を備えている。コントロールパッド1002を操作する事によって、液晶パネル1001にはメニューボタン(図示略)が表示される。例えば、メニューボタンにカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド1002を強く押す事で、電話帳が表示されたり、携帯電話機1000の電話番号が表示されたりする。この時、上記実施形態に係る回転検出装置100がコントロールパッド1002に設けられているので、操作する指の位置を大きく移動させる事なく、指に加える力の方向を変えるだけで簡単にカーソルを移動する事ができる。
【0051】
図9は、本実施形態に係る回転検出装置を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の概略構成を示す模式図である。携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002及びコントロールパッド2003、並びに表示部としての液晶パネル2001を備えている。コントロールパッド2003を操作すると、液晶パネル2001に表示されたメニューを操作できる。例えば、メニュー(図示略)にカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド2003を強く押す事で、住所録が表示されたり、スケジュール帳が表示されたりする。この時、上記実施形態に係る回転検出装置100がコントロールパッド2003に設けられているので、操作する指の位置を大きく移動させる事なく、指に加える力の方向を変えるだけでカーソルの移動やページをめくる事が簡単にできる。
【0052】
この様な電子機器によれば、上述した回転検出装置100を備えているので、回転力を含む外力Fを高い精度で検出する事が可能な電子機器を提供する事ができる。
【0053】
尚、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係る回転検出装置100を適用させる事ができる。
【0054】
図10は、本実施形態に係る回転検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図である。図10(a)に示す様に、ロボットハンド3000は、本体部3003及び一対のアーム部3002、並びに回転検出装置100を適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。
【0055】
図10(b)に示す様に、ロボットハンド3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。この時、対象物3010に作用する力は把持部3001で圧力として検出される。ロボットハンド3000は、把持部3001として上述した回転検出装置100を備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(滑り力の成分)や、対象物3010の重心Gの偏りなどに起因する回転力を検出する事が可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたりすべりやすい物体を落としたりしないよう、対象物3010の質感に応じて力を加減しながら持つ事ができる。
【0056】
このロボットによれば、上述した回転検出装置100を備えているので、回転力を含む外力Fを高い精度で検出する事が可能なロボットを提供する事ができる。
【0057】
尚、圧力センサー2の方式は、ダイアフラムゲージの他に静電容量方式や抵抗膜方式等が利用でき、特定の圧力センサー2に限定されるものではない。更に、本実施形態においては、圧力センサー2が単位検出領域当たり縦4行横4列に計16個配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。圧力センサー2は、単位検出領域当たり3個以上配置されていれば良く、単位検出領域当たりに設けられる圧力センサー2の別の構成例は、縦2行横2列の計4つである。又、本実施形態に於いては、回転軸4に対して第一基板11が固定されており、第二基板12が回転可能であったが、これとは逆に、回転軸4に対して第二基板12が固定され、第一基板11を回転可能としても良い。
【0058】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係る検出装置の構成を示す断面図である。検出装置200は実施形態1にて詳述した回転検出装置100に並進力を高感度で検出する構成を付加し、外力Fの方向と大きさ、及び外力Fの回転軸4に対する回転方向と大きさとを検出する。尚、本実施形態の第一圧力センサー21が実施形態1の圧力センサー2に相当し、本実施形態の第一弾性体突起31が実施形態1の弾性体突起3に相当し、本実施形態の第一弾性体突起31の重心G1が実施形態1の弾性体突起3の重心Gに相当し、本実施形態の第一基準点P1が実施形態1の基準点Pに相当する。
【0059】
図11に示す様に、検出装置200は、実施形態1にて詳述した回転検出装置100と、更に第三基板13とを備える。回転検出装置100の第一基板11裏面側に第三基板13が設けられ、第三基板13と第一基板11とはほぼ平行の関係にある。即ち、第三基板13は回転軸4に直交している。第三基板13の表面には第二基準点P2が複数個設定され、各第二基準点P2の回りに第二圧力センサー22が複数個設けられている。一方、第一基板11の裏面には、第二基準点P2と重なる位置に重心G2が位置すると共に、先端部が第三基板13の表面に当接した状態で外力Fによって弾性変形する第二弾性体突起32が設けられている。第一基板11は所定の弾性力を有する弾性体からなり、第三基板13は第一基板11とのXY平面に沿った相対位置を変え得る事ができる。即ち、回転軸4に直交する平面に沿って、第一基板11は第三基板13に対してその位置をずらす事ができる。第二弾性体突起32と第二基準点P2、第二圧力センサー22、第二弾性体突起32の重心G2等の関係やこれらの構成は、実施形態1で詳述した弾性体突起3と基準点P、圧力センサー2、弾性体突起3の重心G等の関係やこれらの構成と同一である。
【0060】
以上述べた様に、本実施形態に係わる検出装置200によれば、第二圧力センサー22や第二弾性体突起32などで(第一基板11の裏面と第三基板13の表面及びこれら両基板で挟持された構成により)、回転軸4に垂直な平面(XY平面)に沿った並進力(滑り力)と、回転軸4に沿った圧力とを高精度に検出する事が可能になる。実施形態1で詳述した回転検出装置100でもこれらの検出は可能であったが、回転軸4が存在する為に或る程度の感度を犠牲にせざるを得なかった。本実施形態では、第一基板11の裏面と第三基板13の表面及びこれら両基板で挟持された構成要素により、並進力と圧力とを高精度に検出する事ができる。同時に回転検出装置100で回転軸4の回りの回転力も高精度に検出できる。
【0061】
(実施形態3)
図12は、実施形態3に係るロボットハンドによる外力Fの検出原理を説明する図である。本実施形態のロボットは、実施形態1にて詳述したロボットハンド3000の把持部3001に、実施形態2にて詳述した検出装置200を備えている。
【0062】
図12では、図10に示される二枚の把持部3001を第一把持部3001−1と第二把持部3001−2としている。第一把持部3001−1も第二把持部3001−2も実施形態2にて詳述した検出装置200を其々備えている。第一把持部3001−1と第二把持部3001−2とはZ軸に沿った軸を回転軸4としており、互いに対面する様に配置されている。第一把持部3001−1では、第一把持部3001−1に掛かる外力F1とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz1とを検出する。外力F1は、X軸に平行な成分(F1x)と、Y軸に平行な成分(F1y)と、Z軸に平行な成分(F1z)と、に分解されて其々検出される。第二把持部3001−2では、第二把持部3001−2に掛かる外力F2とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz2とを検出する。外力F2は、X軸に平行な成分(F2x)と、Y軸に平行な成分(F2y)と、Z軸に平行な成分(F2z)と、に分解されて其々検出される。この結果、X軸の回りの回転力RxとY軸の回りの回転力Ryとが検出可能となる。X軸の回りの回転力Rxは外力F1のY軸に平行な成分(F1y)と外力F2のY軸に平行な成分(F2y)とから求められる。即ち、原点Oを第一把持部3001−1と第二把持部3001−2とを結ぶ法線(Z軸)の中間点とし、原点を通るX軸の回りのトルク和として検出される。同様に、Y軸の回りの回転力Ryは外力F1のX軸に平行な成分(F1x)と外力F2のX軸に平行な成分(F2x)とから求められる。即ち、原点を通るY軸の回りのトルク和として検出される。
【0063】
以上述べた様に、本実施形態に係わるロボットによれば、第一把持部3001−1における外力F1の各成分(F1xとF1yとF1z)とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz1、及び第二把持部3001−2における外力F2の各成分(F2xとF2yとF2z)とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz2、及びY軸の回りの回転力Ry、及びX軸の回りの回転力Rx、を検出できる。これにより、ロボットハンド3000の動きを駆動軸に対応させて制御できる。
【0064】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加える事が可能である。変形例を以下に述べる。
【0065】
(変形例1)
図13は、変形例1に係る検出装置の構成を示す断面図である。検出装置300は実施形態1にて詳述した回転検出装置100に並進力を高感度で検出する構成を付加し、外力Fの方向と大きさ、及び外力Fの回転軸4に対する回転方向と大きさとを検出する。尚、本変形例の第一圧力センサー21が実施形態1の圧力センサー2に相当し、本変形例の第一弾性体突起31が実施形態1の弾性体突起3に相当し、本変形例の第一弾性体突起31の重心G1が実施形態1の弾性体突起3の重心Gに相当し、本変形例の第一基準点P1が実施形態1の基準点Pに相当する。
【0066】
図13に示す様に、検出装置300は、実施形態1にて詳述した回転検出装置100と、更に第四基板14とを備える。回転検出装置100の第二基板12の表面側に第四基板14が設けられ、第四基板14と第二基板12とはほぼ平行の関係にある。即ち、第四基板14は回転軸4に直交している。第二基板12の表面には第三基準点P3が複数個設定され、各第三基準点P3の回りに第三圧力センサー23が複数個設けられている。一方、第四基板14の裏面には、第三基準点P3と重なる位置に重心Gが位置すると共に、先端部が第二基板12の表面に当接した状態で外力Fによって弾性変形する第三弾性体突起33が設けられている。第四基板14は所定の弾性力を有する弾性体からなり、第四基板14は第二基板12とのXY平面に沿った相対位置を変え得る事ができる。即ち、回転軸4に直交する平面に沿って、第四基板14は第二基板12に対してその位置をずらす事ができる。第三弾性体突起33と第三基準点P3、第三圧力センサー23、第三弾性体突起33の重心G3等の関係やこれらの構成は、実施形態1で詳述した弾性体突起3と基準点P、圧力センサー2、弾性体突起3の重心G等の関係やこれらの構成と同一である。
【0067】
以上述べた様に、本変形例に係わる検出装置300によれば、第三圧力センサー23や第三弾性体突起33などで(第四基板14の裏面と第二基板12の表面及びこれら両基板で挟持された構成により)、回転軸4に垂直な平面(XY平面)に沿った並進力(滑り力)と、回転軸4に沿った圧力とを高精度に検出する事が可能になる。実施形態1で詳述した回転検出装置100でもこれらの検出は可能であったが、回転軸4が存在する為に或る程度の感度を犠牲にせざるを得なかった。本変形例では、第四基板14の裏面と第二基板12の表面及びこれら両基板で挟持された構成により、並進力と圧力とを高精度に検出する事ができる。同時に回転検出装置100で回転軸4の回りの回転力も高精度に検出できる。
【符号の説明】
【0068】
2…圧力センサー、3…弾性体突起、4…回転軸、11…第一基板、12…第二基板、13…第三基板、14…第四基板、22…第二圧力センサー、23…第三圧力センサー、32…第二弾性体突起、33…第三弾性体突起、41…回転軸材、100…回転検出装置、200…検出装置、300…検出装置、1000…携帯電話機、2000…携帯情報端末、3000…ロボットハンド、3001…把持部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転検出装置、検出装置、電子機器及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
外力を検出する検出装置として、特許文献1及び2に記載の検出装置が知られている。特許文献1の検出装置は、裏面に錐状突起が略均一に配置された受圧シートを用い、その突起の変形量から圧力分布を検出する構成となっている。又、特許文献2の検出装置は、受圧シートの表面に複数の柱状突起を格子状に配置し、これら表面突起の周辺部を等分した個所の裏面に円錐状の突起を設けた構成となっている。この様な検出装置は、タッチパネルやロボットの触覚センサー等への応用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−135834号公報
【特許文献2】特開平7−128163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検出装置では、回転力の方向と大きさ、或いは回転力と並進力との方向と大きさ、を常に高い感度で且つ再現性良く検出する事ができないと云う課題があった。例えば、特許文献1の検出装置では、測定面にかかる外力の面内方向の力(並進力)も回転力も測定する事ができなかった。又、特許文献2の検出装置では、外力を三次元の力ベクトルとして検出する事は可能であるが、回転力の方向と大きさとは検出できなかった。更に、突起の変形の度合い、特に時間的な変形保持(一度変形させると、しばらくの間、変形した突起が元の状態に戻らない事)によって、外力の検出精度が悪化していた。この様に、従来の検出装置では回転力などの力の方向と大きさとを常に高感度で且つ再現性良く検出できないと云う課題があった。
【0005】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、回転力などの外力の方向と大きさを常に高い感度と精度で検出する事が可能な回転検出装置や、検出装置、電子機器及びロボットを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又、は適用例として実現する事が可能である。
【0007】
(適用例1) 本適用例に係わる回転検出装置は、回転軸に対する外力の回転方向と大きさとを検出する回転検出装置であって、第一基板と第二基板とを有し、第一基板の表面には、基準点の回りに圧力センサーが複数個設けられ、第二基板の裏面には、基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が第一基板の表面に当接した状態で外力によって弾性変形する弾性体突起が設けられ、第一基板と第二基板とは、回転軸に直交し、回転軸の回りに、第一基板と第二基板とは相対的に回転可能で、第二基板は所定の弾性力を有する弾性体からなる事を特徴とする。
この構成によれば、弾性体突起の先端部が第一基板の表面に設けられた複数の圧力センサーに当接した状態で、圧力センサー表面に平行な方向に変形する事が可能である。従って、外力の方向と大きさとを高精度に検出できる。第二基板の裏面に外力が付加されると、弾性体突起は先端部が第一基板に当接した状態で圧縮変形する。この時、回転軸に垂直な平面に沿った力の成分があると、弾性体突起の変形には偏りが生じる。即ち、弾性体突起の重心は基準点からずれて回転軸に垂直な平面で僅かに移動する。すると、複数の圧力センサーで異なる値の圧力値が検出され得る。具体的には、弾性体突起の重心と重なる位置の圧力センサーでは相対的に大きい圧力値が検出され、弾性体突起の重心と重ならない位置の圧力センサーでは相対的に小さい圧力値が検出される事となる。これらの圧力値に基づいて外力が加えられた方向と大きさを求める事ができる。第一基板と第二基板とは、回転軸に対して相対的に回転し得るので、検出された外力の方向と大きさとから、高い精度で回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。
【0008】
(適用例2) 上記適用例に係わる回転検出装置において、外力によって弾性体突起が弾性変形する事により複数の圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて加えられた外力の回転方向と大きさとを演算する演算装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、演算装置により、各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力が加えられた方向と大きさを求める事ができる。更に、これらの外力の方向と大きさとから、演算装置により回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。
【0009】
(適用例3) 上記適用例に係わる回転検出装置において、複数の圧力センサーは、基準点に対して点対称に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、基準点と各圧力センサーとの間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起の変形量と各圧力センサーで検出される圧力値の関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサーが基準点から互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起の変形量が同じであっても、各圧力センサーで検出される圧力値は互いに異なる事となる。この為、検出値の差分を演算する際に各圧力センサーの配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起の変形量と各圧力センサーが検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、先の補正係数は不要となる。従って、各圧力センサーで検出された圧力値から外力の方向と大きさとを演算する事が容易となり、これに伴い外から加えられた回転力の方向と大きさとを効率よく検出する事ができる。
【0010】
(適用例4) 上記適用例に係わる回転検出装置において、複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に行列状に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、互いに直交する二方向が規定する平面に沿って、外力の方向と大きさを容易に演算でき、それ故に外から加えられた回転力の方向と大きさとを容易に演算する事ができる。
【0011】
(適用例5) 上記適用例に係わる回転検出装置において、複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に少なくとも4行4列に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、4行4列との少ない行列構成で、外力の方向と大きさとを高精度に検出する事ができる。従って、回転力の方向と大きさとを高精度に検出する事ができる。
【0012】
(適用例6) 上記適用例に係わる回転検出装置において、弾性体突起は第二基板の裏面に複数個形成されており、複数の弾性体突起は、互いに離間して配置されている事が好ましい。
この構成によれば、各弾性体突起が設けられた箇所毎に外力の方向と大きさとが検出される。従って、回転軸に垂直な平面内で、回転軸の回りに掛かる回転力の方向と大きさとを厳密に検出する事ができる。
【0013】
(適用例7) 上記適用例に係わる回転検出装置において、第一基板と第二基板との間には、回転軸に沿って回転軸材が設けられ、回転軸材が弾性体からなる事が好ましい。
この構成によれば、回転軸材が回転軸の回りに弾性変形して回転し得る。従って、第二基板が回転軸材に固定されていても、第二基板は回転軸に対して回転可能で、回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。
【0014】
(適用例8) 本適用例に係わる検出装置は、外力の方向と大きさ、及び外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第三基板とを備え、第三基板の表面には、第二基準点の回りに第二圧力センサーが複数個設けられ、第一基板の裏面には、第二基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が第三基板の表面に当接した状態で外力によって弾性変形する第二弾性体突起が設けられ、第一基板は所定の弾性力を有する弾性体からなり、第三基板は、回転軸に直交すると共に、第一基板との相対位置を変え得る事を特徴とする。
この構成によれば、第二圧力センサーや第二弾性体突起などで、回転軸に垂直な平面に沿った並進力(滑り力)と、回転軸に沿った圧力とを検出し、同時に回転検出装置で回転軸の回りの回転力を検出する事ができる。
【0015】
(適用例9) 本適用例に係わる検出装置は、外力の方向と大きさ、及び外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第四基板とを備え、第二基板の表面には、第三基準点の回りに第三圧力センサーが複数個設けられ、第四基板の裏面には、第三基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が第二基板の表面に当接した状態で外力によって弾性変形する第三弾性体突起が設けられ、第四基板は、回転軸に直交すると共に、第二基板との相対位置を変え得る事を特徴とする。
この構成によれば、第三圧力センサーや第三弾性体突起などで、回転軸に垂直な平面に沿った並進力(滑り力)と、回転軸に沿った圧力とを検出し、同時に回転検出装置で回転軸の回りの回転力を検出する事ができる。
【0016】
(適用例10) 本適用例に係わる電子機器は、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の回転検出装置を備えているので、外力がもたらす回転力の方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能な電子機器を提供する事ができる。
【0017】
(適用例11) 本適用例に係わるロボットは、上記適用例1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の回転検出装置を備えているので、外力がもたらす回転力の方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能なロボットを提供する事ができる。
【0018】
(適用例12) 本適用例に係わる電子機器は、上記適用例8又は9に記載の検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の検出装置を備えているので、外力の三次元成分と外力がもたらす回転力との方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能な電子機器を提供する事ができる。
【0019】
(適用例13) 本適用例に係わるロボットは、上記適用例8又は9に記載の検出装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、上記適用例の検出装置を備えているので、外力の三次元成分と外力がもたらす回転力との方向と大きさを常に高い感度と精度で検出可能なロボットを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る回転検出装置の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図2】回転検出装置が圧力を検出する原理を説明した図。
【図3】回転検出装置が並進力を検出する原理を説明した図。
【図4】回転検出装置が回転力を検出する原理を説明した図。
【図5】基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する断面図。
【図6】基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する平面図。
【図7】単位検出領域の座標系を示す図。
【図8】回転検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図9】回転検出装置を適用した携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図10】回転検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【図11】実施形態2に係る検出装置の構成を示す断面図。
【図12】実施形態3に係るロボットハンドによる外力Fの検出原理を説明する図。
【図13】変形例1に係る検出装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。又、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る回転検出装置の構成を示す図で、(a)は断面図、(b)は平面図である。尚、図1中にXYZ直交座標系を設定し、以降、必要に応じて、このXYZ直交座標系を参照して各種の説明を行う。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸が第一基板11の辺部に対して平行な方向に設定され、Z軸がX軸及びY軸に対して直交する方向に設定されている。
【0023】
本実施形態の回転検出装置100は、回転軸4に対する外力Fの回転方向と大きさとを検出し、例えばノートパソコン等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられたり、ロボットハンドに用いられたりする。回転検出装置100に外力Fが加えられると、外力Fに応じて弾性体突起3は弾性変形する。この際に複数の圧力センサー2で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー2で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向と大きさ、及び回転力を演算する。図1には示されていないが、回転検出装置100はこうした演算を行う演算装置を備えているとともに、第一基板11と第二基板12と回転軸材41とを備えている。第一基板11と第二基板12とは、回転軸材41に対して、相対的に回転可能である。
【0024】
第一基板11は、例えばガラスや石英、プラスチック等の材料で構成された矩形板状で、その表面に複数の圧力センサー2を具備している。例えば、第一基板11の大きさ(平面視のサイズ)は、縦16mm×横16mm程度になっている。第一基板11の表面には、基準点Pが複数個定められている。基準点Pとは、滑り力や回転力が作用していない状態で、弾性体突起3の中心(重心G)が平面的に位置するポイントである。本実施形態では図1(b)に示される様に4個の基準点Pが定められている。
【0025】
各基準点Pの回りには圧力センサー2が複数個行列状に設けられ、単位検出領域を形成している。各圧力センサー2の面積はほぼ等しい。図1(b)では、一つの基準点Pの回りに圧力センサー2が4行4列に、合計16個配置されている。基準点Pはこれら行列状に配置された圧力センサー2群の平面的な中心(単位検出領域の中心)に、ほぼ一致する様に定められる。複数の圧力センサー2は、基準点Pに対して点対称に配置されている。例えば、複数の圧力センサー2は、互いに直交する二方向(X方向及びY方向)に行列状に配置されている。これにより、基準点Pと各圧力センサー2との間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起3の変形と各圧力センサー2で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。よって、各圧力センサー2の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー2で検出された圧力値の差分を演算する事が容易となる。尚、圧力値の差分の演算方法については後述する。
【0026】
隣り合う圧力センサー2の間隔は、0.1mm程度になっている。この為、外乱や静電気等の影響により隣り合う位置の圧力センサー2で検出される圧力値にノイズがのらない様になっている。単位検出領域の大きさ(平面視のサイズ)は、縦5.6mm×横5.16mm程度になっている。圧力センサー2としては、例えばダイアフラムゲージ等の感圧素子を用いる事ができる。圧力センサー2は、接触面に外力Fが作用した時にダイアフラムに加わる圧力を電気信号に変換する。
【0027】
第二基板12は矩形板状をなしており、第二基板12の裏面には複数の弾性体突起3が配置されている。第二基板12は外力Fを直接受ける部分である。第二基板12は、例えばシリコーンゴムなどの弾性体を用いて構成されている。本実施形態では、第二基板12と弾性体突起3とを接着剤により接着しているが、第二基板12及び弾性体突起3を金型で一体形成してもよい。
【0028】
第二基板12の裏面には、弾性体突起3が複数個設けられている。複数の弾性体突起3は、基板本体上においてX方向及びY方向に行列状に配置され、各弾性体突起3の重心Gは、初期的に基準点Pと重なる位置に配置されている。即ち、各弾性体突起3は、平面視に於いて、先の基準点Pと重なる位置に重心Gが位置する様に設けられる。従って、第二基板12の裏面に設けられた弾性体突起3の数と第一基板11の表面に定められた基準点Pの数とは一致する。弾性体突起3の先端部は、球面の錐状となっており、回転検出装置100に外力Fが掛けられない状態で、第一基板11の表面に設けられた圧力センサー2に当接している。回転検出装置100に外力Fが加えられた状態では、外力Fによって弾性体突起3は弾性変形する。又、複数の弾性体突起3は、互いに離間して配置されている。この為、弾性体突起3が弾性変形したときの基板本体の面内に平行な方向の変形量を許容する事ができる。
【0029】
弾性体突起3のサイズは任意に設定する事ができる。ここでは、弾性体突起3の基部の径(弾性体突起3が第一基板11に接する部分の直径)は1.8mm程度になっている。弾性体突起3の高さ(弾性体突起3のZ方向の距離)は2mm程度になっている。隣り合う弾性体突起3の離間間隔は5.6mm程度になっている。弾性体突起3のデュロメーター硬さ(タイプA、ISO7619準拠のデュロメーターによる硬さ測定値)は30程度になっている。
【0030】
図1(b)に示す様に、平面視において、回転検出装置100のほぼ中心に回転軸材41が設けられ、回転軸材41のXY平面での中心が回転軸4となる。回転軸材41は円柱状で、円の中心が回転軸4となり、円柱の一方の面(下面)が第一基板11の表面に接合し、円柱の他方の面(上面)が第二基板12の裏面に接している。図1(a)に示す様に、第一基板11も第二基板12も、回転検出装置100に外力Fが掛けられない状態では回転軸4に直交している。即ち、第一基板11と第二基板12とはXY平面に平行で、回転軸4はZ軸に平行である。更に、第一基板11は回転軸4に対して固定されており、従って回転軸材41に対しても固定されている。又、第二基板12は、回転軸4に対して回転可能となっている。本実施形態では、回転軸材41は弾性体からなり、回転軸材41と第二基板12とは接合されている。この場合、回転軸材41の弾性により、第二基板12は回転軸4に対して回転可能となる。尚、回転軸材41を剛体で形成してもよい。その場合、回転軸材41の上部と第二基板12の裏面との間にボールベアリングなどの回転可能な軸受けを設け、第二基板12を回転軸4に対して回転可能とする。更に、第二基板12は、所定の弾性力を有する弾性体からなる。第二基板12の表面には表面弾性層5が設けられ、回転検出装置100の表面での摩擦係数を大きくしている。尚、第一基板11も第二基板12も一方の面を表面と称し、その反対の他方の面を裏面と称している。本明細書では、Z軸の正の方向(図1(a)の上向き)に面する方を表面と称し、Z軸の負の方向(図1(a)の下向き)に面する方を裏面と称する。
【0031】
次に回転検出装置100が外力F及び回転力を検出する原理を図2乃至4を参照して説明する。図2は回転検出装置が圧力を検出する原理を説明した図である。圧力とは対象平面の法線方向に働く単位面積当たりの力である。図2では第二基板12の法線方向(Z軸方向)に外力Fが加えられた状態が描かれている。この場合、弾性体突起3及び回転軸材41が弾性変形し、弾性変形した弾性体突起3は圧力センサー2を押圧する。従って、各圧力センサー2が計測する力の和を取る事で外力FのZ成分Fzが検出される。尚、回転軸材41が剛体である場合も第二基板12が弾性体であるので、第二基板12の弾性変形が弾性体突起3の弾性変形をもたらし、外力FのZ成分Fzを検出する事ができる。
【0032】
図3は回転検出装置が並進力を検出する原理を説明した図である。並進力とは対象平面に平行な方向に働く力(滑り力)である。図3では回転検出装置100(厳密には第一基板11)に対して、斜めに外力Fが加えられた状態が描かれている。斜めに働く外力FはX成分FxとY成分FyとZ成分Fzとに分解される。外力FのZ成分Fzは先に説明した方法で検出される。回転検出装置100に平行な方向(X軸方向やY軸方向)に関しては、弾性体突起3の変形具合から、外力FのX成分FxやY成分Fyが検出される。第二基板12の裏面に外力Fが付加されると、弾性体突起3は先端部が第一基板11に当接した状態で圧縮変形する。この時、第一基板11に沿った力の成分があると、弾性体突起3の変形には偏りが生じる。その結果、弾性体突起3の重心Gが基準点Pからずれてその平面方向で僅かに移動する。すると、複数の圧力センサー2で異なる値の圧力値が検出される。具体的には、弾性体突起3の重心Gと重なる位置の圧力センサー2では相対的に大きい圧力値が検出され、弾性体突起3の重心Gと重ならない位置の圧力センサー2では相対的に小さい圧力値が検出される事となる。これらの圧力値に基づいて外力Fの方向と大きさ、即ちFxやFyを求める事ができる。
【0033】
図4は回転検出装置が回転力を検出する原理を説明した図である。回転力とは対象平面に平行な方向に働く力で、回転軸4に対して回転する力である。図4では回転検出装置100に対して、時計回りの外力F1〜F4が加えられた状態が描かれている。前述の如く、回転検出装置100は回転軸4の回りに複数(4個)の基準点P(P11〜P14)を有し、各基準点Pで外力FのX成分FxやY成分Fyを独立に検出できる。第一基板11は回転軸4に対して固定され、第二基板12が回転軸4の回りに回転し得るので、各基準点Pで検出されたFxやFyから、高い精度で回転力の方向と大きさとを検出する事ができる。具体的には回転軸4の回りのトルクベクトル和(本実施形態の場合、N1+N2+N3+N4)を検出する事ができる。トルクベクトル(例えばN1)とは、回転軸4から基準点P(例えばP11)までの位置ベクトルr(例えばr1)と基準点P(例えばP11)における外力Fベクトル(例えばF1)とのベクトル積(例えばN1=r1×F1)である。又、各基準点Pで外力Fの成分を独立に検出できるので、各基準点Pで検出された外力Fのベクトル和(F1+F2+F3+F4)を取る事で並進力も容易に検出できる。この様に、回転検出装置100は、回転軸4に平行な力(Fz)と回転軸4に直交する平面に沿った並進力(FxとFy)及び回転軸4の回りの回転力(トルク)とを検出できる。
【0034】
次に、図5乃至6を参照して、各基準点Pで外力FのX成分FxやY成分Fyを検出する方法を説明する。図5は、一つの基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する断面図である。又、図6は、図5に対応して、一つの基準点Pに作用する外力Fの方向と大きさを検出する方法の説明する平面図である。尚、図5(a)及び図6(a)は第二基板12の表面に外力Fが付加される前の状態(外力Fの作用がない時)を示している。図5(b)及び図6(b)は第二基板12の表面に垂直方向(滑り力がない状態)の外力Fが付加された状態を示している。図5(c)及び図6(c)は第二基板12の表面に斜め方向(滑り力がある状態)の外力Fが付加された状態を示している。又、図6(a)〜(c)において、符号Gは弾性体突起3の重心G(圧力中心)を示している。更に、説明を分かり易くする為に圧力センサー2は基準点Pの回りの2行2列分を描いてある。
【0035】
図5(a)及び図6(a)に示す様に、第二基板12の表面に外力Fが付加される前においては、弾性体突起3は変形しない。これにより、第一基板11と第二基板12との間の距離は一定に保たれる。この時、弾性体突起3の重心Gは基準点Pと重なる位置に配置されている。この時の各圧力センサー2の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー2の圧力値を基準として外力Fの作用する方向や大きさが求められる。
【0036】
図5(b)及び図6(b)に示す様に、第二基板12の表面に垂直方向の外力Fが付加された時には、弾性体突起3は先端部が第一基板11の表面に配置された複数の圧力センサー2に当接した状態でZ方向に圧縮変形する。これにより、第二基板12が−Z方向に撓み、第一基板11と第二基板12との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。この時の圧力センサー2の圧力値は、外力Fの作用がない時に比べて大きくなる。又、その変化量は各圧力センサー2ともほぼ同じ値となる。
【0037】
図5(c)及び図6(c)に示す様に、第二基板12の表面に斜め方向の外力Fが付加された時には、弾性体突起3は先端部が第一基板11の表面に配置された複数の圧力センサー2に当接した状態で斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第二基板12が−Z方向に撓み、第一基板11と第二基板12との間の距離が外力Fの作用がない時に比べて小さくなる。この時、弾性体突起3の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起3の先端部と4つの圧力センサー2との重なる面積は互いに異なる。具体的には、弾性体突起3の先端部と4つの圧力センサー2との重なる面積は、4つの圧力センサー2のうち−X方向及び−Y方向に配置された部分と重なる面積よりも+X方向及び+Y方向に配置された部分と重なる面積のほうが大きくなる。
【0038】
弾性体突起3は、斜め方向の外力Fにより変形に偏りが生じる。即ち、弾性体突起3の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー2で異なる値の圧力値が検出される。具体的には、弾性体突起3の重心Gと重なる位置の圧力センサー2では相対的に大きい圧力値が検出され、弾性体突起3の重心Gと重ならない位置の圧力センサー2では相対的に小さい圧力値が検出される事となる。そして、後述する差分の演算方法に基づいて外力Fが加えられた方向と大きさが求められる。
【0039】
図7は、単位検出領域の座標系を示す図である。図7に示す様に、4個の圧力センサーS1〜S4は、基準点Pの回りに2行2列に配置されている。ここで、各圧力センサーS1〜S4が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPS1,PS2,PS3,PS4とすると、外力FのX方向成分Fx(外力Fの面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式1で表される。
【0040】
【数1】
【0041】
又、外力FのY方向成分Fy(外力Fの面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式2で表される。
【0042】
【数2】
【0043】
又、外力FのZ方向成分Fz(外力Fの垂直方向成分)は以下の式3で表される。
【0044】
【数3】
【0045】
本実施形態では、外力Fによって弾性体突起3が弾性変形する事により4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー2で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力Fが加えられた方向が演算される。
【0046】
式1に示す様に、外力FのX方向成分Fxにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+X方向に配置された圧力センサーS2及びS4で検出された値が組み合わされると共に、−X方向に配置された圧力センサーS1及びS3で検出された値が組み合わされる。この様に、+X方向に配置された圧力センサーS2及びS4の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された圧力センサーS1及びS3の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのX方向成分が求められる。
【0047】
式2に示す様に、外力FのY方向成分Fyにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+Y方向に配置された圧力センサーS1及びS2で検出された値が組み合わされると共に、−Y方向に配置された圧力センサーS3及びS4で検出された値が組み合わされる。この様に、+Y方向に配置された圧力センサーS1及びS2の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された圧力センサーS3及びS4の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力FのY方向成分が求められる。
【0048】
式3に示す様に、外力FのZ方向成分Fzにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4の圧力値を足し合わせた合力で求められる。ただし、外力FのZ方向成分Fzは、外力FのX方向成分Fx及び外力FのY方向成分Fyに比べて検出値が大きく検出される傾向がある。例えば、弾性体突起3の材質として硬いものを用いたり、先端部の形状を先鋭にしたりすると、外力FのZ方向成分Fzの検出感度が高くなる。しかしながら、弾性体突起3の材質として硬いものを用いると弾性体突起3が変形しにくくなり外力Fの面内方向の検出値が小さくなってしまう。又、弾性体突起3の先端部の形状を先鋭にすると接触面を指で触ったときのタッチ感に強い感度(違和感)を与える場合がある。この為、外力FのZ方向成分Fzの検出値を、外力FのX方向成分Fx及び外力FのY方向成分Fyの検出値と揃えるには、弾性体突起3の材質や形状によって決定される補正係数で検出値を適宜補正する必要がある。
【0049】
本実施形態の回転検出装置100によれば、回転軸4に平行な力(Fz)と回転軸4に直交する平面に沿った並進力(FxとFy)及び回転軸4の回りの回転力(トルク)とを検出する事ができる。
【0050】
図8は、本実施形態に係る回転検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図である。携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003及びコントロールパッド1002、並びに表示部としての液晶パネル1001を備えている。コントロールパッド1002を操作する事によって、液晶パネル1001にはメニューボタン(図示略)が表示される。例えば、メニューボタンにカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド1002を強く押す事で、電話帳が表示されたり、携帯電話機1000の電話番号が表示されたりする。この時、上記実施形態に係る回転検出装置100がコントロールパッド1002に設けられているので、操作する指の位置を大きく移動させる事なく、指に加える力の方向を変えるだけで簡単にカーソルを移動する事ができる。
【0051】
図9は、本実施形態に係る回転検出装置を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の概略構成を示す模式図である。携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002及びコントロールパッド2003、並びに表示部としての液晶パネル2001を備えている。コントロールパッド2003を操作すると、液晶パネル2001に表示されたメニューを操作できる。例えば、メニュー(図示略)にカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド2003を強く押す事で、住所録が表示されたり、スケジュール帳が表示されたりする。この時、上記実施形態に係る回転検出装置100がコントロールパッド2003に設けられているので、操作する指の位置を大きく移動させる事なく、指に加える力の方向を変えるだけでカーソルの移動やページをめくる事が簡単にできる。
【0052】
この様な電子機器によれば、上述した回転検出装置100を備えているので、回転力を含む外力Fを高い精度で検出する事が可能な電子機器を提供する事ができる。
【0053】
尚、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係る回転検出装置100を適用させる事ができる。
【0054】
図10は、本実施形態に係る回転検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図である。図10(a)に示す様に、ロボットハンド3000は、本体部3003及び一対のアーム部3002、並びに回転検出装置100を適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。
【0055】
図10(b)に示す様に、ロボットハンド3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。この時、対象物3010に作用する力は把持部3001で圧力として検出される。ロボットハンド3000は、把持部3001として上述した回転検出装置100を備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(滑り力の成分)や、対象物3010の重心Gの偏りなどに起因する回転力を検出する事が可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたりすべりやすい物体を落としたりしないよう、対象物3010の質感に応じて力を加減しながら持つ事ができる。
【0056】
このロボットによれば、上述した回転検出装置100を備えているので、回転力を含む外力Fを高い精度で検出する事が可能なロボットを提供する事ができる。
【0057】
尚、圧力センサー2の方式は、ダイアフラムゲージの他に静電容量方式や抵抗膜方式等が利用でき、特定の圧力センサー2に限定されるものではない。更に、本実施形態においては、圧力センサー2が単位検出領域当たり縦4行横4列に計16個配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。圧力センサー2は、単位検出領域当たり3個以上配置されていれば良く、単位検出領域当たりに設けられる圧力センサー2の別の構成例は、縦2行横2列の計4つである。又、本実施形態に於いては、回転軸4に対して第一基板11が固定されており、第二基板12が回転可能であったが、これとは逆に、回転軸4に対して第二基板12が固定され、第一基板11を回転可能としても良い。
【0058】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係る検出装置の構成を示す断面図である。検出装置200は実施形態1にて詳述した回転検出装置100に並進力を高感度で検出する構成を付加し、外力Fの方向と大きさ、及び外力Fの回転軸4に対する回転方向と大きさとを検出する。尚、本実施形態の第一圧力センサー21が実施形態1の圧力センサー2に相当し、本実施形態の第一弾性体突起31が実施形態1の弾性体突起3に相当し、本実施形態の第一弾性体突起31の重心G1が実施形態1の弾性体突起3の重心Gに相当し、本実施形態の第一基準点P1が実施形態1の基準点Pに相当する。
【0059】
図11に示す様に、検出装置200は、実施形態1にて詳述した回転検出装置100と、更に第三基板13とを備える。回転検出装置100の第一基板11裏面側に第三基板13が設けられ、第三基板13と第一基板11とはほぼ平行の関係にある。即ち、第三基板13は回転軸4に直交している。第三基板13の表面には第二基準点P2が複数個設定され、各第二基準点P2の回りに第二圧力センサー22が複数個設けられている。一方、第一基板11の裏面には、第二基準点P2と重なる位置に重心G2が位置すると共に、先端部が第三基板13の表面に当接した状態で外力Fによって弾性変形する第二弾性体突起32が設けられている。第一基板11は所定の弾性力を有する弾性体からなり、第三基板13は第一基板11とのXY平面に沿った相対位置を変え得る事ができる。即ち、回転軸4に直交する平面に沿って、第一基板11は第三基板13に対してその位置をずらす事ができる。第二弾性体突起32と第二基準点P2、第二圧力センサー22、第二弾性体突起32の重心G2等の関係やこれらの構成は、実施形態1で詳述した弾性体突起3と基準点P、圧力センサー2、弾性体突起3の重心G等の関係やこれらの構成と同一である。
【0060】
以上述べた様に、本実施形態に係わる検出装置200によれば、第二圧力センサー22や第二弾性体突起32などで(第一基板11の裏面と第三基板13の表面及びこれら両基板で挟持された構成により)、回転軸4に垂直な平面(XY平面)に沿った並進力(滑り力)と、回転軸4に沿った圧力とを高精度に検出する事が可能になる。実施形態1で詳述した回転検出装置100でもこれらの検出は可能であったが、回転軸4が存在する為に或る程度の感度を犠牲にせざるを得なかった。本実施形態では、第一基板11の裏面と第三基板13の表面及びこれら両基板で挟持された構成要素により、並進力と圧力とを高精度に検出する事ができる。同時に回転検出装置100で回転軸4の回りの回転力も高精度に検出できる。
【0061】
(実施形態3)
図12は、実施形態3に係るロボットハンドによる外力Fの検出原理を説明する図である。本実施形態のロボットは、実施形態1にて詳述したロボットハンド3000の把持部3001に、実施形態2にて詳述した検出装置200を備えている。
【0062】
図12では、図10に示される二枚の把持部3001を第一把持部3001−1と第二把持部3001−2としている。第一把持部3001−1も第二把持部3001−2も実施形態2にて詳述した検出装置200を其々備えている。第一把持部3001−1と第二把持部3001−2とはZ軸に沿った軸を回転軸4としており、互いに対面する様に配置されている。第一把持部3001−1では、第一把持部3001−1に掛かる外力F1とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz1とを検出する。外力F1は、X軸に平行な成分(F1x)と、Y軸に平行な成分(F1y)と、Z軸に平行な成分(F1z)と、に分解されて其々検出される。第二把持部3001−2では、第二把持部3001−2に掛かる外力F2とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz2とを検出する。外力F2は、X軸に平行な成分(F2x)と、Y軸に平行な成分(F2y)と、Z軸に平行な成分(F2z)と、に分解されて其々検出される。この結果、X軸の回りの回転力RxとY軸の回りの回転力Ryとが検出可能となる。X軸の回りの回転力Rxは外力F1のY軸に平行な成分(F1y)と外力F2のY軸に平行な成分(F2y)とから求められる。即ち、原点Oを第一把持部3001−1と第二把持部3001−2とを結ぶ法線(Z軸)の中間点とし、原点を通るX軸の回りのトルク和として検出される。同様に、Y軸の回りの回転力Ryは外力F1のX軸に平行な成分(F1x)と外力F2のX軸に平行な成分(F2x)とから求められる。即ち、原点を通るY軸の回りのトルク和として検出される。
【0063】
以上述べた様に、本実施形態に係わるロボットによれば、第一把持部3001−1における外力F1の各成分(F1xとF1yとF1z)とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz1、及び第二把持部3001−2における外力F2の各成分(F2xとF2yとF2z)とZ軸に沿った回転軸4の回りの回転力Rz2、及びY軸の回りの回転力Ry、及びX軸の回りの回転力Rx、を検出できる。これにより、ロボットハンド3000の動きを駆動軸に対応させて制御できる。
【0064】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加える事が可能である。変形例を以下に述べる。
【0065】
(変形例1)
図13は、変形例1に係る検出装置の構成を示す断面図である。検出装置300は実施形態1にて詳述した回転検出装置100に並進力を高感度で検出する構成を付加し、外力Fの方向と大きさ、及び外力Fの回転軸4に対する回転方向と大きさとを検出する。尚、本変形例の第一圧力センサー21が実施形態1の圧力センサー2に相当し、本変形例の第一弾性体突起31が実施形態1の弾性体突起3に相当し、本変形例の第一弾性体突起31の重心G1が実施形態1の弾性体突起3の重心Gに相当し、本変形例の第一基準点P1が実施形態1の基準点Pに相当する。
【0066】
図13に示す様に、検出装置300は、実施形態1にて詳述した回転検出装置100と、更に第四基板14とを備える。回転検出装置100の第二基板12の表面側に第四基板14が設けられ、第四基板14と第二基板12とはほぼ平行の関係にある。即ち、第四基板14は回転軸4に直交している。第二基板12の表面には第三基準点P3が複数個設定され、各第三基準点P3の回りに第三圧力センサー23が複数個設けられている。一方、第四基板14の裏面には、第三基準点P3と重なる位置に重心Gが位置すると共に、先端部が第二基板12の表面に当接した状態で外力Fによって弾性変形する第三弾性体突起33が設けられている。第四基板14は所定の弾性力を有する弾性体からなり、第四基板14は第二基板12とのXY平面に沿った相対位置を変え得る事ができる。即ち、回転軸4に直交する平面に沿って、第四基板14は第二基板12に対してその位置をずらす事ができる。第三弾性体突起33と第三基準点P3、第三圧力センサー23、第三弾性体突起33の重心G3等の関係やこれらの構成は、実施形態1で詳述した弾性体突起3と基準点P、圧力センサー2、弾性体突起3の重心G等の関係やこれらの構成と同一である。
【0067】
以上述べた様に、本変形例に係わる検出装置300によれば、第三圧力センサー23や第三弾性体突起33などで(第四基板14の裏面と第二基板12の表面及びこれら両基板で挟持された構成により)、回転軸4に垂直な平面(XY平面)に沿った並進力(滑り力)と、回転軸4に沿った圧力とを高精度に検出する事が可能になる。実施形態1で詳述した回転検出装置100でもこれらの検出は可能であったが、回転軸4が存在する為に或る程度の感度を犠牲にせざるを得なかった。本変形例では、第四基板14の裏面と第二基板12の表面及びこれら両基板で挟持された構成により、並進力と圧力とを高精度に検出する事ができる。同時に回転検出装置100で回転軸4の回りの回転力も高精度に検出できる。
【符号の説明】
【0068】
2…圧力センサー、3…弾性体突起、4…回転軸、11…第一基板、12…第二基板、13…第三基板、14…第四基板、22…第二圧力センサー、23…第三圧力センサー、32…第二弾性体突起、33…第三弾性体突起、41…回転軸材、100…回転検出装置、200…検出装置、300…検出装置、1000…携帯電話機、2000…携帯情報端末、3000…ロボットハンド、3001…把持部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に対する外力の回転方向と大きさとを検出する回転検出装置であって、
第一基板と第二基板とを有し、
前記第一基板の表面には、基準点の回りに圧力センサーが複数個設けられ、
前記第二基板の裏面には、前記基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が前記第一基板の表面に当接した状態で前記外力によって弾性変形する弾性体突起が設けられ、
前記第一基板と前記第二基板とは、前記回転軸に直交し、
前記回転軸の回りに、前記第一基板と前記第二基板とは相対的に回転可能で、
前記第二基板は所定の弾性力を有する弾性体からなる事を特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記外力によって前記弾性体突起が弾性変形する事により複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力が加えられた回転方向と大きさとを演算する演算装置を備える事を特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されている事を特徴とする請求項1又は2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に行列状に配置されている事を特徴とする請求項3に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に少なくとも4行4列に配置されている事を特徴とする請求項4に記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記弾性体突起は前記第二基板の裏面に複数個形成されており、前記複数の弾性体突起は、互いに離間して配置されている事を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記第一基板と前記第二基板との間には、前記回転軸に沿って回転軸材が設けられ、前記回転軸材が弾性体からなる事を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回転検出装置。
【請求項8】
外力の方向と大きさ、及び前記外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第三基板とを備え、
前記第三基板の表面には、第二基準点の回りに第二圧力センサーが複数個設けられ、
前記第一基板の裏面には、前記第二基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が前記第三基板の表面に当接した状態で前記外力によって弾性変形する第二弾性体突起が設けられ、
前記第一基板は所定の弾性力を有する弾性体からなり、
前記第三基板は、前記回転軸に直交すると共に、前記第一基板との相対位置を変え得る事を特徴とする検出装置。
【請求項9】
外力の方向と大きさ、及び前記外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第四基板とを備え、
前記第二基板の表面には、第三基準点の回りに第三圧力センサーが複数個設けられ、
前記第四基板の裏面には、前記第三基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が前記第二基板の表面に当接した状態で前記外力によって弾性変形する第三弾性体突起が設けられ、
前記第四基板は、前記回転軸に直交すると共に、前記第二基板との相対位置を変え得る事を特徴とする検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事を特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事を特徴とするロボット。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の検出装置を備える事を特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項8又は9に記載の検出装置を備える事を特徴とするロボット。
【請求項1】
回転軸に対する外力の回転方向と大きさとを検出する回転検出装置であって、
第一基板と第二基板とを有し、
前記第一基板の表面には、基準点の回りに圧力センサーが複数個設けられ、
前記第二基板の裏面には、前記基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が前記第一基板の表面に当接した状態で前記外力によって弾性変形する弾性体突起が設けられ、
前記第一基板と前記第二基板とは、前記回転軸に直交し、
前記回転軸の回りに、前記第一基板と前記第二基板とは相対的に回転可能で、
前記第二基板は所定の弾性力を有する弾性体からなる事を特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記外力によって前記弾性体突起が弾性変形する事により複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力が加えられた回転方向と大きさとを演算する演算装置を備える事を特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されている事を特徴とする請求項1又は2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に行列状に配置されている事を特徴とする請求項3に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する二方向に少なくとも4行4列に配置されている事を特徴とする請求項4に記載の回転検出装置。
【請求項6】
前記弾性体突起は前記第二基板の裏面に複数個形成されており、前記複数の弾性体突起は、互いに離間して配置されている事を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記第一基板と前記第二基板との間には、前記回転軸に沿って回転軸材が設けられ、前記回転軸材が弾性体からなる事を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回転検出装置。
【請求項8】
外力の方向と大きさ、及び前記外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第三基板とを備え、
前記第三基板の表面には、第二基準点の回りに第二圧力センサーが複数個設けられ、
前記第一基板の裏面には、前記第二基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が前記第三基板の表面に当接した状態で前記外力によって弾性変形する第二弾性体突起が設けられ、
前記第一基板は所定の弾性力を有する弾性体からなり、
前記第三基板は、前記回転軸に直交すると共に、前記第一基板との相対位置を変え得る事を特徴とする検出装置。
【請求項9】
外力の方向と大きさ、及び前記外力の回転軸に対する回転方向と大きさ、を検出する検出装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置と第四基板とを備え、
前記第二基板の表面には、第三基準点の回りに第三圧力センサーが複数個設けられ、
前記第四基板の裏面には、前記第三基準点と重なる位置に重心が位置すると共に、先端部が前記第二基板の表面に当接した状態で前記外力によって弾性変形する第三弾性体突起が設けられ、
前記第四基板は、前記回転軸に直交すると共に、前記第二基板との相対位置を変え得る事を特徴とする検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事を特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転検出装置を備える事を特徴とするロボット。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の検出装置を備える事を特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項8又は9に記載の検出装置を備える事を特徴とするロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−88334(P2013−88334A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230402(P2011−230402)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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