説明

回転機械の振動診断方法及びその振動診断装置

【課題】回転機械の振動特性が変化した場合でも、正確な診断が可能な回転機械の振動診断装置を得る。
【解決手段】回転機械1から得られた各種データを取込んで、1に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベース18から振動の原因を推定する診断処理部15と、1に対応する振動解析モデルを18に内蔵し、15により推定された振動原因を取込み、この振動原因に対応した解析を行う振動解析検証部17と、17による解析検証結果及び15による診断結果を取込んで振動現象の発生について評価する診断結果評価部19と、1に対して外部から振動を加える加振装置30と、30により加振したことにより得られる1の伝達関数を元に振動解析モデルを更新する更新処理部20とを具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の振動診断方法及びその振動診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所には、数百トンもの大重量のロータが高速度で回転する主タービン・発電機を始めとして数多くの回転機械が設置され、また幅広い温度や圧力レベルに応じた多数の熱交換器類、および各種の油圧機器や制御機器類が設置されている。
【0003】
このような回転機械において、特に高速度の回転機械では、運転中に発生する異常の多くは振動現象の変化として現れることが多く、また急激に進展して重大な事故に発展する危険性があることから、運転監視装置と異常時の保護・制御装置を備えている。
【0004】
特に近年では、電力需要の多様化・効率的運用などから、頻繁な起動・停止、急激な負荷変動等の多用な運用が求められ、発電機器には、これまで以上にストレスがかかるとともに、機器設備の異常の徴候を早期に検知し、原因を分析して運用制限などの状態を速やかに修復できることが、より強く要請されるようになってきた。
【0005】
このため、回転機械の異常診断装置や設備診断装置が種々提案されており、例えば、回転機械の軸振動診断に関しては、特許文献1に「回転機械の異常診断方法」が、特許文献2に「回転機械の振動診断方法及び装置」が開示されている。
【0006】
図9は、特許文献1の内容を説明するための図であって、火力発電回転機械のタービン・発電機ユニットへ適用した例を示している。図9において、タービン・発電機ユニット1は、高・中圧タービン2、低圧タービン3a、3bおよび発電機4を備え、その各ロータを支える軸受部5a〜5nには、軸振動を検出する振動検出器6a〜6nが取付けられている。また、タービン・発電機ユニット1内には、ロータの回転数を検出する回転計7、各軸受部5a〜5nでの振動位相角を検出するための基準となるパルスを発信する位相角基準パルス発信器8および発電機出力(負荷)や蒸気温度、軸受温度等の回転機械の運転状態を検出する各種センサー群9が設置されている。
【0007】
回転計7および各種センサー群9からの信号は、回転機械の運転操作を監視・制御する制御用計算機10に送られ、また振動検出器6a〜6nおよび位相角基準パルス発信器8からの信号は振動監視装置11を介して制御用計算機10に送られて運転員の制御操作を支援する。
【0008】
すなわち、振動監視装置11では、振動検出器6a〜6nおよび位相角基準パルス発信器8からの信号に基づいて各軸受部5a〜5nにおける振動状態を判断し、規定の信号レベル以上であると判定すると、警報信号またはタービントリップ信号を制御用計算機10へ伝達する。
【0009】
一方、計算機からなる回転機械振動診断装置12は、異常検知処理部13、プラント状態量処理部14、診断処理部15及び表示処理部16とから構成され、異常検知処理部13には振動監視装置11からの信号が入力される。
【0010】
上記異常検知処理部13は、異常現象の徴候を振動の振幅値、振幅増加率、周波数成分、あるいは位相変化等の傾向から検出し、異常徴候と判定した場合には、原因の診断を開始するため、検知情報を診断処理部15へ伝送する。
【0011】
一方、プラント状態量処理部14には、制御用計算機10から振動情報以外の運転状態情報、例えばタービン・発電機ユニット1の回転数や負荷率などの情報が入力される。
【0012】
上記プラント状態量処理部14の出力は、異常検知処理部13に送られ、異常検知時の情報として使用されると共に、診断処理部15へ送られ、その原因を診断する際の回転機械情報として使用され、その監視状況および診断結果は表示処理部16に表示される。
【0013】
上記診断処理部15は、内部に有する知識ベースに振動原因を特定するための振動因果マトリックスを格納している。この振動因果マトリックスには多くの種類・内容のものがある。
【0014】
この診断処理部15は、これらの振動因果マトリックスを利用し、異常検知情報と回転機械情報に基づいて異常の原因を推定する。
【0015】
そして、診断処理部15の出力は、表示処理部16に送られ、運転員や操作員への直接の支援およびガイド情報として利用される。
【0016】
また、図10は特許文献2の内容を説明するための図であって、図9の例に加えて、回転機診断装置内に当該回転機械の振動解析モデルを格納した知識ベース18、振動解析検証部17、診断結果の評価部19を内蔵している。振動解析検証部17では、知識ベース18に格納されている振動解析モデルを用いて、診断処理部15で抽出された振動原因に対応して解析を実施する。
【0017】
この診断処理部15による診断結果及び振動解析検証部17による解析検証結果は、診断結果の評価部19に送られ、因果マトリックスでの診断結果と振動解析結果とから現象の発生について評価する。その結果は、診断結果の表示処理部16へ送られて監視状況および診断結果を表示し、運転員や操作員およびリモート監視サービスエンジニアへの直接の支援およびガイド情報として利用される。
【0018】
振動因果マトリックスのみによる診断では、原因を1つに絞り込むのが困難であり、また、現象の発生位置や大きさなどに関する定量的評価ができないといった問題があるが、図10に示した例のように、振動解析モデルを組み込むことにより、これらの問題を解決し、確信度の高い振動診断を可能にしている。
【特許文献1】特許第2850917号公報
【特許文献2】特開2003−149043
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
知識ベースの振動因果マトリックスにより判断される振動異常現象を予め計算機上に振動解析モデルを構築しておき、異常振動現象発生時には診断結果に対して、振動解析によって現象を定量的に計算し、現象の可能性を評価することにより、運転員や操作員、またはリモート監視サービスのエンジニアへ診断結果の確信度を向上させることができるリアルタイム性とマンマシン性に優れた回転機械の振動診断方法及び装置が提供できる。
【0020】
このような診断装置では、精度良い振動解析モデルの構築が重要なポイントとなる。しかし、運用開始後の経年的な要因や、運転条件の違いによって回転機械の振動特性が変化することがある。内蔵している振動解析モデルと実際の機械の振動特性との差異が大きくなると、振動解析の精度が低下し、正確な診断ができなくなるといった問題がある。
【0021】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、振動解析モデルを対象機械の状態変化にあわせて更新する機能を持たせることにより、回転機械の振動特性が変化した場合でも、正確な診断が可能な回転機械の振動診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するためなされたもので、請求項1に対応する発明は、回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を診断処理手段により推定し、この推定された振動原因を取込み、前記回転機械に対応する振動解析モデルを用いて、この振動原因に対応した解析を行い、この解析結果及び前記診断処理手段による診断結果に基いて振動現象の発生について評価する振動診断方法において、前記振動解析モデルを対象機械の状態変化にあわせて更新する回転機械の振動診断方法である。
【0023】
上記目的を達成するためなされたもので、請求項5に対応する発明は、回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を推定する診断処理手段と、前記回転機械に対応する振動解析モデルを前記知識ベースに内蔵し、前記診断処理手段により推定された振動原因を取込み、この振動原因に対応した解析を行う振動解析検証手段と、前記振動解析検証手段による解析検証結果及び前記診断処理手段による診断結果を取込んで振動現象の発生について評価する診断結果評価手段と、前記振動解析モデルを対象機械の状態変化にあわせて更新する更新処理手段とを具備した回転機械の振動診断装置である。
【0024】
上記目的を達成するためなされたもので、請求項9に対応する発明は、回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を診断処理手段により推定し、この推定された振動原因を取込み、前記回転機械に対応する振動解析モデルを用いて、この振動原因に対応した解析を行い、この解析結果及び前記診断処理手段による診断結果に基いて振動現象の発生について評価する振動診断方法において、前記回転機械に対して外部から加振手段により加振したことにより得られる前記回転機械の伝達関数を元に前記振動解析モデルを更新する回転機械の振動診断方法である。
【0025】
上記目的を達成するためなされたもので、請求項11に対応する発明は、回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を推定する診断処理手段と、前記回転機械に対応する振動解析モデルを前記知識ベースに内蔵し、前記診断処理手段により推定された振動原因を取込み、この振動原因に対応した解析を行う振動解析検証手段と、前記振動解析検証手段による解析検証結果及び前記診断処理手段による診断結果を取込んで振動現象の発生について評価する診断結果評価手段と、前記回転機械に対して外部から振動を加える加振手段と、前記加振手段により加振したことにより得られる前記回転機械の伝達関数を元に前記振動解析モデルを更新する更新処理手段とを具備した回転機械の振動診断装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、回転機械の振動特性が変化した場合でも、正確な診断が可能な回転機械の振動診断方法及び回転機械の振動診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態1)
(構成)
本発明の実施形態1を図1および2を参照して説明する。図1は本発明の実施形態1を説明するための概略構成図で、診断の流れに関しては従来技術の説明で参照した図9と同様であるが、新たに振動解析モデル更新処理部20が追加されている。
【0028】
振動解析モデル更新処理部20は、振動監視装置11より運転中の回転機械例えばタービン・発電機ユニット1の振動データを取り込み、回転機械振動診断装置12の知識ベース18に格納されている振動解析モデルを最新の状態に更新する機能をもっている。
【0029】
知識ベース18に格納されている振動解析モデルには、ロータの曲がり、カップリング芯ずれ、ラビングが含まれている。なお、取り込む振動データは、機械の起動中、停止中、定格運転時いずれでもよい。
【0030】
(作用)
図2は、回転機械の振動解析モデルの一例である。ロータ23ははり要素、軸受油膜21はバネおよびダンパー(減衰)要素、軸受台22をバネおよびダンパー、質点要素にモデル化している。通常軸受油膜動特性には水平方向と鉛直方向の相互作用(連成項)も考慮されているが図では省略されている。また、軸受台のモデルには、ケーシング、基礎など軸受を支えている部分すべてが含まれている。
【0031】
なお、図2では軸受毎に独立した1自由度モデルとなっているが、必要に応じて、多自由度モデルにしたり、軸受間の相互作用を考慮したモデルにしたりする場合がある。
【0032】
回転機械の経年的な変化がこの解析モデルに及ぼす影響は、軸受および軸受台に現れる。アライメントが変化し軸受の荷重分担が変わった場合や、軸受メタルが磨耗した場合などは軸受油膜動特性が変化する。また、ケーシングと基礎の当たりが変化した影響などは軸受台モデルに現れる。回転部の一部飛散などバランス状態の変化や、ロータ曲がりなどは、外部加振力に影響を与えるのみで、解析モデルは変化しない。
【0033】
運転時の振動データから解析モデルを更新する際には、まず、振動データから危険速度やその応答感度を抽出する。ロータの回転数と系の固有振動数が一致するとき、その回転数を危険速度と呼び、振動の振幅が前後の回転数より大きくなる。また、応答感度は、危険速度におけるピークの鋭さを示す無次元数である。危険速度・応答感度は、残留不つりあいやロータ曲がりなどには依存せず、解析モデル(つまり、軸系の動特性)のみで決まるので、計測された危険速度・応答感度に一致するように、軸受もしくは軸受台の動特性値を調整することにより、振動解析モデルを最新の状態に更新できる。
【0034】
(効果)
上記で述べたように、本発明の実施形態1では、回転機械診断装置12に、新たに振動解析モデル更新処理部20を追加し、振動監視装置11からの運転中の振動データを取り込み、診断装置12に内蔵されている振動解析モデルを最新の状態に更新することにより、従来よりも正確な診断を実現できる。
【0035】
(実施形態2)
(構成)
本発明の実施形態2を、図3〜5を参照して説明する。図3は本発明の実施形態2を説明するための概略構成図で、回転機械例えばタービン・発電機ユニット1を外部から加振装置30により加振して得られた、例えば単位力当りの振動を、伝達関数演算装置27に入力して演算される伝達関数を、振動解析モデル更新処理部20に入力し、振動解析モデル更新処理部20内では、上記のように加振して得られた伝達関数を元に、振動解析モデルの更新を行う。
【0036】
図4は図3の加振装置30の一例として、インパルスハンマ24と、振動センサ32と、周波数分析器33とを備えたものを用いた例である。インパルスハンマ24は、打撃加振試験専用のハンマで、ヘッドの部分に内蔵したロードセルにより、対象物を打撃したときの加振力を計測・出力することができる。インパルスハンマ24で回転機械例えばタービン・発電機ユニット1の各部を打撃加振し、そのときの振動応答を特設の振動センサ32もしくは常設の振動センサによって計測する。このようにして計測した加振力と振動応答から、周波数分析器33を用いて単位力当りの振動を求め、これを伝達関数演算装置に入力して伝達関数を求める。
【0037】
また、図5は加振装置30の他の例として加振器28と、信号発生器28aと、アンプ28bと、周波数分析器33とを備えたものを用いた例である。回転機械例えばタービン・発電機ユニット1に取り付けた加振器28には信号発生器28aがアンプ28bを介して接続してあり、任意の波形でタービン・発電機ユニット1を加振することができる。この場合も図4のインパルスハンマ24の場合と同様に周波数分析器33を用いて加振力と振動応答の伝達関数を求め、それを元に振動解析モデルの更新を行う。
【0038】
(作用)
回転機械例えばタービン・発電機ユニット1の軸系振動解析モデルは、以下の方程式で表すことができる。
【数1】

【0039】
という式で計算することができる。上式による計算結果が、加振して得られた振動応答に一致するように、質量行列M、減衰行列C、剛性行列Kを調整することで、解析モデルの更新ができる。
【0040】
図4のインパルスハンマ31による打撃加振で得られるインパルス状の加振力は広い範囲のフラットな周波数特性を持っているので、加振周波数範囲内のすべての振動モードを励起することができる。
【0041】
図5の加振器28を用いる場合、正弦波によるスウィープ加振、もしくは、ランダム加振を行う。インパルスハンマ24、加振器28いずれを用いる場合も、回転機械例えばタービン・発電機ユニット1に作用する加振力の大きさ、位置が明らかであり、また、タービン・発電機ユニット1の運転範囲を超えた広い周波数範囲での振動特性が把握できることから、精度の高い解析モデルの構築が期待できる。
【0042】
(効果)
以上述べた本発明の実施形態2では、タービン・発電機ユニット1を外部から加振し得られた伝達関数を元に、振動解析モデルの更新を行う。加振は、インパルスハンマ24による打撃加振、もしくは、加振器28によるスウィープ加振かランダム加振で、いずれを用いる場合も、タービン・発電機ユニット1に作用する加振力の大きさ、位置が明らかであり、また、回転機械の運転範囲を超えた広い周波数範囲での振動特性が把握できることから、精度の高い解析モデルの構築が期待できる。
【0043】
(実施形態3)
(構成)
本発明の実施形態3を、図6を参照して説明する。図6は本発明の実施形態3を説明するための概略構成図で、図1の実施形態に新たにバランス前振動値メモリ26を追加した点が異なる。具体的には、タービン・発電機ユニット1に加わった振動が継続している状態、すなわちバランス修正前の振動データであるバランス前振動値をバランス前振動値メモリ26に記録し、これを振動解析モデル更新処理部20に読み出して保存しておき、バランス修正後の振動データとの差から、前記振動解析モデルの更新を行う。
【0044】
(作用)
【数2】

【0045】
という関係があることがわかる。ΔFは、追加したバランスウェイトの量、位置から計算可能で、ΔXは、バランス修正前後の振動変化を表しており、計測により得られる。これらの値が上式を満たすように、質量行列M、減衰行列C、剛性行列Kを調整することにより、解析モデルの更新が可能である。
【0046】
(効果)
以上述べたように、本発明の実施形態3では、バランス修正前後の振動変化を元に、前記振動解析モデルの更新を行う。バランス修正による外部加振力の変化は計算で求めることが可能であり、それと、計測された振動変化から、解析モデルの更新を行うことができる。
【0047】
(実施形態4)
(構成)
本発明の実施形態4を、図7を参照して説明する。図7は本発明の実施形態4を説明するための概略構成図で、図1の実施形態に新たに地震計29を設けたものである。具体的には、タービン・発電機ユニット1が据え付けられた基礎に取り付けた地震計29からの振動データを、振動解析モデル更新処理部20に取り込み、地震発生時に基礎および回転機械各部の振動データを元に、振動解析モデルの更新を行う。
【0048】
(作用)
地震発生時には、回転機械が外部から加振され回転機械各部の振動値が変化する。地震計により加振力がわかるので、実施形態2と同様に、タービン・発電機ユニット1の振動特性を知ることができる。このことを利用し、加振力および各部の振動データを元に、振動解析モデルを更新する。地震計29が地震を感知すると、振動解析モデル更新処理部20が動き始め、地震計から地震波形を取り込むと同時に、振動監視装置11からはタービン・発電機ユニット1各部の振動データを取り込む。これらのデータから振動解析モデルの更新を行う過程は実施形態2の場合と同様である。
【0049】
(効果)
以上述べたように、本発明の実施形態4では、地震によってタービン・発電機ユニット1の基礎およびタービン・発電機ユニット1各部に発生する振動を振動解析モデルの更新に利用する。解析による振動値が測定結果と一致するように、解析モデルを調整することにより、振動解析モデルを更新することができる。
【0050】
(実施形態5)
(構成)
本発明の実施形態5を、図8を参照して説明する。図8は本発明の実施形態5を説明するための概略構成図で、実施形態1と異なる点は、振動解析モデル更新処理部20の結果を表示処理部16に入力している。この結果、解析モデルが大きく変化した場合には、異常が発生したとみなし、その場所を推定する機能を持っている。
【0051】
(作用)
回転機械で発生する異常振動の要因には、回転部飛散、ロータ曲がりなどロータに作用する外力が変化するものだけでなく、アライメント変化や軸受の損傷など解析モデルに影響を与える要因もある。このような要因の異常が発生した場合、解析モデルに何らかの影響が現れる。
【0052】
実施形態5は、このことを利用したもので、前述した実施形態1〜4のいずれかの方法で解析モデルを更新した際、変化の大きい部分があれば、その部分に異常が発生していると推定することができる。
【0053】
(効果)
以上のべたように、本発明の実施形態5では、更新前後の解析モデルの違いを確認する。その結果、変化の大きい部位が存在する場合には、その部分に異常が発生していると推定することができ、より効果的な振動診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の回転機械の振動診断装置の実施形態1を説明するための概略構成図。
【図2】図1の軸振動解析モデルの一例を説明するための図。
【図3】本発明の回転機械の振動診断装置の実施形態2を説明するための概略構成図。
【図4】実施形態2の第1の具体例を説明するための概略構成図。
【図5】実施形態2の第2の具体例を説明するための概略構成図。
【図6】本発明の回転機械の振動診断装置の実施形態3を説明するための概略構成図。
【図7】本発明の回転機械の振動診断装置の実施形態4を説明するための概略構成図。
【図8】本発明の回転機械の振動診断装置の実施形態5を説明するための概略構成図。
【図9】特許文献1の内容を説明するための概略構成図。
【図10】特許文献2の内容を説明するための概略構成図。
【符号の説明】
【0055】
1…タービン・発電機ユニット、2…高・中圧タービン、3a、3b…低圧タービン、4…発電機、5a〜5n…軸受部、6a〜6n…振動検出器、8…位相角基準パルス発信器、9…各種センサー群、10…制御用計算機、11…振動監視装置、12…回転機械振動診断装置、13…異常検知処理部、14…プラント状態量処理部、15…診断処理部、16…表示処理部、17…振動解析検証部、18…知識ベース、19…評価部、20…振動解析モデル更新処理部、21…軸受油膜、22…軸受台、23…ロータ、24…インパルスハンマ、26…バランス前振動値メモリ、27…伝達関数演算装置、28…加振器、28a…信号発生器、28b…アンプ、30…加振装置、31…インパルスハンマ、32…振動センサ、33…周波数分析器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を診断処理手段により推定し、この推定された振動原因を取込み、前記回転機械に対応する振動解析モデルを用いて、この振動原因に対応した解析を行い、この解析結果及び前記診断処理手段による診断結果に基いて振動現象の発生について評価する振動診断方法において、
前記振動解析モデルを対象機械の状態変化にあわせて更新することを特徴とする回転機械の振動診断方法。
【請求項2】
前記振動解析モデルの更新は、前記回転機械の起動、停止、定格運転中に得られた振動データを元に、行うことを特徴とする請求項1に記載の回転機械の振動診断方法。
【請求項3】
前記振動解析モデルの更新は、前記回転機械に発生する振動がバランスするか又はバランスしないバランス修正前後の振動変化を元に、更新を行うことを特徴とする請求項1に記載の回転機械の振動診断方法。
【請求項4】
前記振動解析モデルの更新は、地震発生時に、地震による基礎および回転機械各部の振動データを取り込み、それらを元に、前記振動解析モデルの更新を行うことを特徴とする請求項1に記載の回転機械の振動診断方法。
【請求項5】
回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を推定する診断処理手段と、
前記回転機械に対応する振動解析モデルを前記知識ベースに内蔵し、前記診断処理手段により推定された振動原因を取込み、この振動原因に対応した解析を行う振動解析検証手段と、
前記振動解析検証手段による解析検証結果及び前記診断処理手段による診断結果を取込んで振動現象の発生について評価する診断結果評価手段と、
前記振動解析モデルを対象機械の状態変化にあわせて更新する更新処理手段と、
を具備したことを特徴とする回転機械の振動診断装置。
【請求項6】
前記振動解析モデルの更新は、前記回転機械の起動、停止、定格運転中に得られた振動データを元に、行うことを特徴とする請求項5に記載の回転機械の振動診断装置。
【請求項7】
前記振動解析モデルの更新は、前記回転機械に発生する振動がバランスするか又はバランスしないバランス修正前後の振動変化を元に、更新を行うことを特徴とする請求項5に記載の回転機械の振動診断装置。
【請求項8】
前記振動解析モデルの更新は、地震発生時に、地震による基礎および回転機械各部の振動データを取り込み、それらを元に、前記振動解析モデルの更新を行うことを特徴とする請求項5に記載の回転機械の振動診断装置。
【請求項9】
回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を診断処理手段により推定し、この推定された振動原因を取込み、前記回転機械に対応する振動解析モデルを用いて、この振動原因に対応した解析を行い、この解析結果及び前記診断処理手段による診断結果に基いて振動現象の発生について評価する振動診断方法において、
前記回転機械に対して外部から加振手段により加振したことにより得られる前記回転機械の伝達関数を元に前記振動解析モデルを更新することを特徴とする回転機械の振動診断方法。
【請求項10】
前記加振手段として、インパルスハンマ又は加振器を用いたことを特徴とする請求項9に記載の回転機械の振動診断方法。
【請求項11】
回転機械から得られた各種データを取込んで、前記回転機械に発生する複数の振動現象の特徴と複数の原因とを関係付けた知識ベースから振動の原因を推定する診断処理手段と、
前記回転機械に対応する振動解析モデルを前記知識ベースに内蔵し、前記診断処理手段により推定された振動原因を取込み、この振動原因に対応した解析を行う振動解析検証手段と、
前記振動解析検証手段による解析検証結果及び前記診断処理手段による診断結果を取込んで振動現象の発生について評価する診断結果評価手段と、
前記回転機械に対して外部から振動を加える加振手段と、
前記加振手段により加振したことにより得られる前記回転機械の伝達関数を元に前記振動解析モデルを更新する更新処理手段と、
を具備したことを特徴とする回転機械の振動診断装置。
【請求項12】
前記加振手段として、インパルスハンマ又は加振器を用いたことを特徴とする請求項11に記載の回転機械の振動診断装置。
【請求項13】
前記振動解析モデルの更新を行った際に、更新前後の解析モデルの差異から、問題のある場所・要因を推定する推定手段を備えていることを特徴とする請求項1、2、3、4、9、10のいずれか一つに記載の回転機械の振動診断方法。
【請求項14】
前記振動解析モデルの更新を行った際に、更新前後の解析モデルの差異から、問題のある場所・要因を推定する推定手段を備えていることを特徴とする請求項5、6、7、8、11、12のいずれか一つに記載の回転機械の振動診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−298527(P2008−298527A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143665(P2007−143665)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】