説明

回転機械中の絶縁体の劣化を探知する方法およびデバイス

本発明は、少なくとも90体積%の空気を含む内部雰囲気を画定する筐体(1)内に配置された少なくとも1つのローター(3)およびステーター(2)と、任意に前記雰囲気のための冷却システムとを含む回転機械中の絶縁体の劣化を探知する方法に関し、以下の工程:(a)前記回転機械の内部雰囲気を画定するガス中またはガスに接触して位置する1以上の任意の位置でCO(一酸化炭素)の濃度およびNO(二酸化窒素)および/またはO(オゾン)の濃度を測定する工程と、(b)前記測定(7、8、9)の結果を表示する、発信するおよび/または保存する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は回転機械中の絶縁体の劣化を探知する方法、この探知を用いるこれらの機械の予防保守のための方法およびこの探知方法を用いるデバイスに関する。
【0002】
回転機械の製造者および使用者は、装置の品目のステーターおよびローター中(これらが巻かれている場合)に存在する絶縁体の経時挙動にしばしば直面する。後者は絶縁体におけるまたは絶縁体の近傍における部分放電の出現を促進する条件を作り出し、後者は次に絶縁体の損傷に寄与しうる。このすべては結局、電気的な故障を引き起こすことがあり、作業の停止、ペナルティまたは間接的な支出、ステーターおよびローターを巻き直すコスト、または装置の部分的もしくは完全な交換をもたらす。
【0003】
今日、部分放電の現象および/または絶縁体の状態をモニターするためのいくらかの解決策がある。特に以下のものを列挙することができる:
−容量カプラーによる部分放電の電気的な測定であり、これは最も普及している。これは、部分放電による巻線中の電流トランジェントを測定することに基づいている。通常、この方法はモーター中に組み込んだカプラーを用い、このカプラーはこれらのトランジェント電流に対応する周波数および電荷を測定する。この方法は、機械を停止する必要なしに、回転機械のステーターにおける部分放電のレベルを評価することを可能にする。この方法によって得られるデータは解釈、したがって部分放電現象の高い知識を必要とする。これは、部分放電の回数および大きさの評価を与えるにすぎず、絶縁体へのそれらの影響の現れを示さない。
【0004】
−絶縁抵抗測定と呼ばれる測定:この測定はモーターを停止して行われる。これは、胴体の巻線とステーターまたはローターの金属グラウンドとの間に直流電圧を印加し、これらの2つの要素の間の電気絶縁の抵抗を測定することにある。理想的にはこの抵抗は無限であるが、実際にはそうではない。絶縁抵抗が低いほど、絶縁問題がある見込みが大きくなる。この測定は、モーターが動作しているときには行われず、温度に非常に敏感である。
【0005】
−分極指数の測定:これは絶縁抵抗の測定の変形であり、絶縁体に10分間電圧を印加した後の絶縁抵抗と1分間後に得られる抵抗との間の比を計算することからなる。低い分極指数は通常、絶縁体の汚染(オイル、グリースなど)を示す。この測定は、絶縁抵抗測定よりも温度に敏感ではない。
【0006】
−Hipot試験:これは、巻線に高い直流電圧を印加することにある。絶縁体に欠陥があれば、印加された電圧のために、この点で絶縁破壊を起こすであろう。この試験はモーターを停止してのみ実施でき、破壊的であろう。
【0007】
−コロナまたは表面の放電の結果である、空気のイオン化によって作り出されるある種のガスの検出。これらの方法は主にオゾンおよびNOxに関する。
【0008】
−オームの法則の差の測定。
【0009】
−タンジェントデルタの測定。
【0010】
−Terase基準。
【0011】
すべてのこれらの方法はある値を示すが、これらはモーターの体系的な停止、または絶縁体への影響に関する部分放電現象のやっかいな解釈を必要とする。この解釈はしばしば危険である。というのは、部分放電の特性評価は絶縁体の状態に間接的に関連しているにすぎないからである。
【0012】
部分放電を特性評価することができる他の方法を列挙することもできるが、これらは回転機械の状況に適しているようには見えない。
【0013】
−様々な現象(イオン化、分極など)によって引き起こされる、絶縁体中にトラップされた空間電荷を用いる熱波の測定。この方法は、これらの空間電荷により生じる電場に依存する電流を誘導する温度差を加えることにある。これは通常、絶縁電気ケーブルに適用される。
【0014】
−放電の時点で生じる超音波放出を検出する、音響測定。この方法は変圧器のために特に適している。
【0015】
本発明の1つの目的は、上に列挙した従来技術の全てまたはいくつかの欠点を軽減することである。
【0016】
第1に、本発明は、少なくとも90体積%の空気を含む内部雰囲気を画定する筐体内に配置された少なくともローターおよびステーターと、任意にこの雰囲気を冷却する冷却システムとを有する回転機械中の絶縁体の劣化を探知する方法に関し、これは以下の工程:
(a)前記回転機械の内部雰囲気を形成するガス中またはガスに接触して位置する1以上の任意の位置で、CO(一酸化炭素)の濃度、およびNO(二酸化窒素)および/またはO(オゾン)の濃度を測定する工程と、
(b)前記測定の結果を表示する、発信するおよび/または保存する工程と
を有する。
【0017】
本発明によれば、問題になっている回転機械は、ローターによって及ぼされるトルクの形態で機械エネルギーを生成する電気消費デバイスでも、そのローターに伝達された機械エネルギーから電気エネルギーを発生するデバイスでもよい。問題になっているデバイスは少なくとも3kVの電圧で最も頻繁に動作する。ローターおよびステーターは通常、絶縁材料で被覆されており、その劣化を探知する必要がある。特定に態様によれば、回転機械は圧縮機または昇圧機である。
【0018】
回転機械はそれ自体、保護筐体、たとえばケーシング内に配置される。この筐体は通常、特に電気ケーブル、ガスなどを通すために多くの開口を有する。しかし、ローターおよびステーターの周囲に存在するガスが筐体の外の雰囲気と全くまたはほとんど混合しないようになっている。回転機械の内部雰囲気は通常、通気蓋によって、またはこの雰囲気を動かす手段とその中でこの雰囲気を形成するガスが循環する熱交換器とを有するより複雑なシステムによって冷却される。
【0019】
内部雰囲気は本質的に、すなわち90体積%以上の空気を含む。発明者は、この雰囲気が空気のイオン化により生じるガス種だけでなく、あるときには、検出可能な量で一酸化炭素を含む特定の組成を有することに気づいた。発明者は、このCOの量が、絶縁体の劣化の状態と関連づけることができるという点で、空気のイオン化により生じる量の種を用いることによるよりもいっそう関連した仕方で変化することも証明した。特に、発明者は、絶縁体が機能しなくなるかなり前にCOの量が増加することを明らかにした。
【0020】
具体的には以下の、特に図2の説明において、COを測定することはNOおよび/またはオゾンを測定することと関連づけられなければならないことがわかるであろう。後者の測定はCOの測定と類似した方法を用いて行われる。これらの新しい種を測定するセンサーは、COを測定するものと異なる新しいセンサーでもよいし、あるいは同じものでもよい。その場合これらは、いくつかの考慮されているガス種を同時または連続的に測定することができる、「マルチタイプ」センサーと呼ばれる。
【0021】
COを測定する工程(a)を実行するために、前記内部雰囲気を形成するまたは前記内部雰囲気から生じるガス中またはガスに接触する任意の位置にCOセンサーを配置することができる。接触させて測定を行わない場合、これらをガスの周囲に位置させてもよい。これらは、その幾何形状、そのそれぞれの動作(電気化学、照射など)に従って配置され、好ましくは連続的に、同時であろうとなかろうと、様々な点または区域で1以上のCOの濃度の値を得て、回転機械の円滑な運転を妨げないようにする。
【0022】
工程(b)において、これらの結果の可能な使用を準備する。これは、たとえば回転機械の近くまたは制御室内のスクリーン上にそれらを表示することによる、またはたとえば所定の事象に対応する1以上の可聴信号でそれらを発信することによる、および/または遠隔および/または後続の処理のためにそれらを保存することによる。
【0023】
特定の実施形態によれば、本発明は1以上の以下の特徴を有していてもよい:
−前記測定を、下記に配置された1以上のセンサーを用いて行う:
−前記回転機械のエアギャップ内もしくはそのステーター上の任意の位置、または
−前記筐体の内壁上もしくは前記筐体の蓋上の任意の位置、または
−前記回転機械を冷却する任意の冷却システムの壁上もしくは内部、または
−前記回転機械から内部雰囲気の一部を抽出するポンピングシステム内の任意の位置。
【0024】
測定に有利な位置は、特に回転機械のエアギャップ内、すなわちローターとステーターとの間、そのエアギャップ内部あるいはステーターの直上である。筐体の内壁上もしくはその近く、回転機械を冷却する任意の冷却システム内または回転機械の内部雰囲気を形成するガスの一部を吸引する専用ポンプ内に、センサーを配置してもよい。これらの最後の2つの可能性の利点は、それらが回転機械の内部雰囲気の平均組成に近いガス混合物を与えることである。測定はもはや局所的ではなく、内部雰囲気全体に関する。たとえば光学または分光技術を用いることによって、それ自身すでに濃度の平均を生じさせるセンサーを用いることも有利に可能である。したがってたとえばエアギャップに入る光路上の濃度の平均を表す測定を得ることができる。
【0025】
他の態様によれば、本発明は回転機械の予防保守の方法にも関し、これは以下の工程を有する:
(i)上で定義したいずれか1つの方法により前記回転機械の絶縁体の劣化を探知する工程と、
(ii)前記探知による測定の結果を分析する、たとえば特にOおよび/またはNOの濃度が同時に増加しない場合のCOの濃度におけるかなりの増加、あるいはCOの濃度における増加の速度における変化を検出する工程と、
(iii)少なくとも工程(ii)でなされた分析を組み込んだ基準で決定された保守行為をとる工程。
【0026】
本発明のこの新規の態様において、第1の工程として上で定義した探知方法は、回転機械の予防保守のための方法として用いられる。上述した測定を収集したら、第2の工程の間に、これらを経時的に分析して、上述したガス種の濃度および/またはその変化の速度、および/またはこれらの基準の任意の組み合わせにおける変化を検出する。前記変化は絶縁体の劣化のしるしである。特に決定的な基準として、NOの濃度および/またはOの濃度の停滞または減少と同時に起こるCOの濃度の増加を挙げることができる。
【0027】
様々な種の含有量は、問題になっている回転機械の使用、測定位置、ガスの混合の度合、あるいは測定技術に依存しうるという意味において、分析は本質的に相対的であろう。分析前に校正工程を導入することによってこの相対性を取り除き、分析基準、特に濃度または濃度における増加の速度のしきい値を適合させることができる。非相対的な分析基準、たとえば元の値に対するかなりの増加、または他の種における増加に関係しない、1つの種における急な増加を用いることもできる。
【0028】
他の方法によって収集された他のデータがこの一覧表を完成できる。
【0029】
分析の結果はいずれにせよ徹底的な検査のために回転機械の停止であり、任意に機械の効果的な保守作業が続く。したがって、この方法は回転機械の不必要な停止の回数を制限し、かつステーターおよびローターを破壊しさえするかもしれない故障を防止することを可能にする。
【0030】
特に、保守行為は、以下の工程を含んでいてもよい:
(iii−a)前記回転機械を停止する工程、
(iii−b)目視検査および/またはこの機械の絶縁体の状態の1以上の試験を行う(たとえば絶縁抵抗または分極率を測定する)工程、および/または
(iii−c)前記回転機械に可能な介入を行う工程。
【0031】
上述した方法の特別の様式によれば、前記回転機械は以下のものである:
−ガス、特に空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素もしくは二酸化炭素、合成ガスの工業用圧縮機を駆動する電気モーター、または
−電気と熱流体たとえば水蒸気の併給のためのユニット、すなわち複合サイクルの一部を形成する発電機、または
−ポンプ、特に水ポンプを駆動する電気モーター。
【0032】
この実施形態は、工業ガスの分野における主要な回転機械、圧縮機モーター、発電機およびポンプ、特に水ポンプに関し、これらのために作業中断を最小限にすることが重要である。近時、これらの機械のプログラムされた保守のための停止はますますかけ離れている。プログラムされた停止の間の増加している時間間隔中にこれらの機械の絶縁体におけるあらゆる異常な劣化を検出できることはますます有益になってきている。
【0033】
本発明は、少なくとも90体積%の空気を含む内部雰囲気を画定する筐体内に配置された少なくともローターおよびステーターと、任意にこの雰囲気を冷却する冷却システムとを有する回転機械中の絶縁体の劣化を探知するデバイスであって、これは少なくとも以下のものを含むことを特徴とする:
−各々COの濃度を表す信号を配信し、前記回転機械の内部雰囲気を形成するガス中またはガスに接触して配置された1以上のセンサー、
−前記回転機械の内部雰囲気を形成するガス中またはガスに接触して配置された、NOおよび/またはOの濃度を感知する1以上のセンサー、
−これらのセンサーに接続され、センサーの信号を適合させるために用いられる電子回路ボードであって、任意にセンサーと別個のボード、
−前記電子回路ボードによって適合された信号の取得および可能な保存のための1以上のモジュール、および
−これらの処理された信号の、発信および/または表示および/または電気ケーブルまたは電波による伝送のための1以上のモジュール。
【0034】
このデバイスにおいて、センサーは各々、通常の構造の1以上の電子回路ボードに伝送される信号を配信する。たとえば、これらのセンサーは、問題になっているガス種の1つの濃度に関連する電気抵抗を有していてもよい。これらの抵抗はそれから電子回路ボードに電気的にリンクされ、これはこの変動する抵抗をたとえば電圧に変換し、一方でその信号をフィルタリングし安定化する。1または複数の電子回路ボードは、たとえば共通のハウジング内で、センサーの近くまたは取得モジュールからある距離に位置していてもよい。
【0035】
これらの信号はそれから表示されおよび/または電気的にまたは電波によって、たとえばSMSによって伝送される。
【0036】
特別な様式によれば、このデバイスは以下の特徴のいくつかを有していてもよい:
−1または複数のCOセンサーはNOおよび/またはOの濃度を測定することも可能である。
【0037】
−1または複数のセンサーは、下記に位置する:
−前記回転機械のエアギャップ内もしくはそのステーター上の任意の位置、または
−前記筐体の内壁上もしくは前記筐体の蓋上の任意の位置、または
−前記回転機械を冷却する任意の冷却システムの壁上もしくは内部、または
−前記回転機械の内部雰囲気を形成するガスの一部を抽出するポンピングシステム内の任意の位置。
【0038】
問題になっているセンサーは、モノタイプ(単一のガス種の濃度を測定する)またはマルチタイプ(同時であってもなくても、数種の濃度を測定する)であろう。
【0039】
本発明は、電気モーターによって駆動される、工業ガス、特に空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素もしくは二酸化炭素、合成ガスの圧縮機にも関し、前記モーターは上で定義した探知デバイスのいずれか1つを備えていることを特徴とする。
【0040】
同様に本発明は、電気と熱流体たとえば水蒸気の併給のためのユニット、すなわち複合サイクルの一部を形成する発電機にも関し、これは上で定義した探知デバイスのいずれか1つを備えていることを特徴とする。
【0041】
併給される流体は、水蒸気でも他の「熱」流体たとえば加熱オイルでもよい。
【0042】
同様に本発明は、少なくとも1つの電気モーターによって駆動されるポンプ、特に水ポンプにも関し、前記少なくとも1つの電気モーターは上で定義した探知デバイスの少なくとも1つを備えていることを特徴とする。
【0043】
本発明は拡張して、空気の分離または1以上の工業ガス、たとえば空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素もしくは二酸化炭素、合成ガスの製造のための方法にも関し、上で定義した1以上の圧縮機を使用することを特徴とする。
【0044】
最後に、本発明は拡張して、電気と熱流体たとえば水蒸気とを併給する、すなわち複合サイクルのための方法であって、上で定義した1以上の発電機を使用することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の他の特別な特徴および利点は、図面を参照する以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図1】図1は本発明によるデバイスを備えた回転機械を示す。
【図2】図2は増加する電圧にさらされる絶縁体の近傍で測定されたCO、NOおよびOの濃度の間の関連を図示したグラフを示す。
【0046】
図1は、非限定的な仕方で、本発明による探知方法(これは予防保守方法の基礎でもある)を用いるデバイスを模式的に示す。
【0047】
回転機械は筐体すなわちケーシング1内にある。前記筐体は内部雰囲気を画定し、その中にはステーター2とローター3とがある。これらの2つの要素間に「エアギャップ」と呼ばれるスペースがある。回転機械は下記のものも備えている。
【0048】
−その内部雰囲気を冷却するための冷却システム5、これは前記内部雰囲気を形成するガスの熱を冷熱源(図示せず)と熱交換することにより動作する、
−前記内部雰囲気の一部を吸引できるポンプ。
【0049】
この内部雰囲気を形成するガス中またはガスに接触して、COの濃度を測定するために用いられるセンサー6が配置されている。すべてのこれらのサンサーもNOおよびOの濃度を測定する。これらのセンサーは半導体酸化物センサーである。特にこの技術はセンサーの微細化(径で約1cmおよび1cm高さ)を可能にする。さらに、80℃以上までの高温で正確に動作する。他のタイプのセンサー、特にセンサーのより良好な化学的選択性を得るための、たとえば分光技術に基づくものを用いることができる。図1において、各々のセンサーは、単純な数学関数によって前記ガス種の1つの濃度に各々関連する3つの電気抵抗を有する。したがって、この例において、これらはトリタイプのセンサーである。
【0050】
1つのセンサー6aは前記回転機械のエアギャップ内でステーター2上に位置している。センサー6bは筐体1の内壁に押し当たって位置している;6cは筐体1に近く、前記回転機械のエアギャップ内にある;6dは冷却システム5の内壁にあり、これは前記回転機械の内部雰囲気からのガスが通過するのを見る。6eは前記冷却システム5の内部、前記回転機械から生じるガスの経路にある。6fは前記回転機械の内部雰囲気を形成するガスの一部を抽出する前記ポンプ4内にある。
【0051】
これらのセンサーは電子回路ボード7に電気的に接続され、これは各々のセンサー6aから6fの3つの抵抗を同数のアナログ信号、抵抗ブリッジによってたとえば電圧に変換する。これらの電子回路ボード7はこれらの信号をフィルタリングおよび安定化する通常の機能も果たす。回路ボード7によって生成されたアナログ信号はデジタルの形態での取得および可能な保存のための1以上のモジュール8へ送られる。その後、これらのデジタルデータはデバイス9によって、たとえばスクリーン上に実体化され、SMSによって遠隔処理のために送られる。
【0052】
示した回転機械は工業ガスたとえば空気を圧縮するためのモーターでも、たとえばガスタービンと結合した発電機でも、あるいは工業水ポンプのモーターでもよい。
【0053】
その後、表示され送られた結果は、任意に上で説明した予防保守方法に従って分析される。
【0054】
図2を参照して、本発明が基礎にしている測定の妥当性を示す。
【0055】
発明者は多くの実験を行い、絶縁体の近傍におけるまたは様々な種類の絶縁体における部分的な放電の結果として現れるガス種、およびこれらを検出するのに最も適したセンサーの種類を特性評価した。
【0056】
図2のグラフはこれらの実験の1つの結果を要約しており、その実験では以下のとおりである:
−材料(先見的に絶縁材料)、この例では1mm厚さのエポキシ樹脂のディスクは、誘電体バリア上での点−平面の配置で放電を受ける、
−放電を起こすために用いる電圧を徐々に増加し、これは絶縁体が破壊するまで、すなわち実質的に絶縁能力を奪う不可逆的な劣化があるまで放電のパワーを漸進的に上げる、
−清浄な空気の流れの中で、制御された湿度で、放電中に生成した安定なガス種を収集する、
−これらは様々な手段、一方で上に述べたO、NOおよびCOの濃度のセンサーおよび他方で試料測定としてのフーリエ変換を伴う可視−UVまたは赤外吸収分光計によって測定される、
−すべてのこれらのセンサーは放電の下流の湿った空気中または湿った空気と接触して配置される。
【0057】
図2において、X軸は試験される絶縁体がさらされる電圧Uを示す。これらの値は次元がなく、18の値でライトニングフラッシュによってシンボル化されている破壊電圧まで上がる。左側のY軸はOおよびCOの濃度を示し、一方で右側のY軸(第2の軸)はNOの濃度を示す。濃度はppm(これは百万分率)、すなわち体積分率として示される。
【0058】
この軸系において、3つの曲線は、ゼロから破壊電圧まで、絶縁体に印加された放電パワーの関数としてのCO、NOおよびOの濃度を示す。このグラフを、1から4まで番号をつけた破線の長方形によって示される4つの区域に分割した。
【0059】
最初、これらの3つのガス種の濃度は非常に低いままである(区域1)。次に、放電パワーが増加すると、オゾンが現れ、いくつかの一酸化炭素が非常に低い量で現れる(区域2)。放電パワーが十分に増加すると、オゾンの濃度は落ちるが、NOの濃度にピークができ、一酸化炭素の濃度が増加する(区域3)。破壊の少し前に、今度はNOの濃度が減少し、一酸化炭素の濃度にピークが現れる(区域4)。
【0060】
したがって、この種の実験を増やすことにより、発明者は、一酸化炭素の濃度における増加が、特にこの増加がNOおよび/またはOの濃度における増加を伴わない場合には、絶縁体の破壊を非常に妥当な仕方で予測することを可能にすることを示すことができた。
【0061】
上の記載および説明の観点から、本発明の主要な利点は以下のとおりである:
−本発明は、現在用いられている電気的な測定を補い、絶縁体の状態の診断を確実にする、
−本発明は、すべての種類の絶縁体および任意の種類の回転機械に適用される一般的な方法を提供する、
−本発明は、検査のための停止の回数および回転機械の故障の回数を制限する、
−本発明は、CO、NOおよび/またはOのセンサーが比較的安価なため、低コストの探知デバイスに基づくことができる、
−本発明は、ガス種の優勢、出現および消失に関して容易に解釈される測定結果を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90体積%の空気を含む内部雰囲気を画定する筐体(1)内に配置された少なくともローター(3)およびステーター(2)と、任意にこの雰囲気を冷却する冷却システムとを有する回転機械中の絶縁体の劣化を探知する方法であって、以下の工程:
(a)前記回転機械の内部雰囲気を形成するガス中またはガスに接触して位置する1以上の任意の位置で、CO(一酸化炭素)の濃度、およびNO(二酸化窒素)および/またはO(オゾン)の濃度を測定する工程と、
(b)前記測定(7、8、9)の結果を表示する、発信するおよび/または保存する工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定を、
−前記回転機械のエアギャップ内もしくはそのステーター上の任意の位置(6a、6c)、または
−前記筐体の内壁上もしくは前記筐体の蓋上の任意の位置(6b)、または
−前記回転機械を冷却する任意の冷却システムの壁上(6d)もしくは内部(6e)、または
−前記回転機械から内部雰囲気の一部を抽出するポンピングシステム(4)内の任意の位置
に配置された1以上のセンサー(6)を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
回転機械の予防保守の方法であって、以下の工程:
(i)請求項1または2のいずれか1項に記載された方法により前記回転機械の絶縁体の劣化を探知する工程と、
(ii)前記探知による測定の結果を分析する、たとえば特にOおよび/またはNOの濃度が同時に増加しない場合のCOの濃度におけるかなりの増加、あるいはCOの濃度における増加の速度における変化を検出する工程と、
(iii)少なくとも工程(ii)でなされた分析を組み込んだ基準で決定された保守行為をとる工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記保守行為は、以下の工程:
(iii−a)前記回転機械を停止する工程、
(iii−b)目視検査および/またはこの機械の絶縁体の状態の1以上の試験を行う(たとえば絶縁抵抗または分極率を測定する)工程、および/または
(iii−c)前記回転機械に可能な介入を行う工程
を有することを特徴とする方法。
【請求項5】
前記回転機械は、
−ガス、特に空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素もしくは二酸化炭素、合成ガスの工業用圧縮機を駆動する電気モーター、または
−電気と熱流体たとえば水蒸気の併給のためのユニット、すなわち複合サイクルの一部を形成する発電機、または
−ポンプ、特に水ポンプを駆動する電気モーター
であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも90体積%の空気を含む内部雰囲気を画定する筐体(1)内に配置された少なくともローター(3)およびステーター(2)と、任意にこの雰囲気を冷却する冷却システムとを有する回転機械中の絶縁体の劣化を探知するデバイスであって、少なくとも:
−各々COの濃度を表す信号を配信し、前記回転機械の内部雰囲気を形成するガス中またはガスに接触して配置された1以上のセンサー(6)と、
−前記回転機械の内部雰囲気を形成するガス中またはガスに接触して配置された、NOおよび/またはOの濃度を感知する1以上のセンサー(6)と、
−これらのセンサーに接続され、センサー(6)の信号を適合させるために用いられる電子回路ボード(7)であって、任意にセンサー(6)と別個のボード(7)と、
−前記電子回路ボード(7)によって適合された信号の取得および可能な保存のための1以上のモジュール(6)と、
−これらの処理された信号の、発信および/または表示および/または電気ケーブルまたは電波による伝送のための1以上のモジュール(6)と
を有することを特徴とするデバイス。
【請求項7】
1または複数のCOセンサー(6)はNOおよび/またはOの濃度を測定することも可能であることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
1または複数のセンサーは、
−前記回転機械のエアギャップ内もしくはそのステーター上の任意の位置(6a、6c)、または
−前記筐体の内壁上もしくは前記筐体の蓋上の任意の位置(6b)、または
−前記回転機械を冷却する任意の冷却システムの壁上(6d)もしくは内部(6e)、または
−前記回転機械の内部雰囲気を形成するガスの一部を抽出するポンピングシステム(4)内の任意の位置
に位置することを特徴とする請求項6および7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
電気モーターによって駆動される、ガス、特に空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素もしくは二酸化炭素、合成ガスの工業用圧縮機であって、前記モーターは請求項7ないし9のいずれか1項に記載のデバイスを備えていることを特徴とする工業用圧縮機。
【請求項10】
電気と熱流体たとえば水蒸気の併給のためのユニット、すなわち複合サイクルの一部を形成する発電機であって、請求項6ないし8のいずれか1項に記載のデバイスを備えていることを特徴とする発電機。
【請求項11】
少なくとも1つの電気モーターによって駆動されるポンプ、特に水ポンプであって、前記少なくとも1つの電気モーターは請求項6ないし8のいずれか1項に記載のデバイスを備えていることを特徴とするポンプ。
【請求項12】
空気の分離または1以上の工業ガス、たとえば空気、酸素、窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素もしくは二酸化炭素、合成ガスの製造のための方法であって、請求項9に記載の1以上の圧縮機を使用することを特徴とする方法。
【請求項13】
電気と熱流体たとえば水蒸気とを併給する、すなわち複合サイクルのための併給方法であって、請求項10に記載の1以上の発電機を使用することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−503463(P2012−503463A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527371(P2011−527371)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051661
【国際公開番号】WO2010/031942
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】