説明

回転炉床炉

【課題】 回転炉床上に形成された焼結物を除去し、焼結の進行を抑制することができる回転炉床炉を提供する。
【解決手段】 回転炉床(3)上の原料(M)を、回転動作によって排出方向に移動させる排出スクリュー(6)と、排出スクリューの羽根(6b)が回転炉床の表面に接触するように、排出スクリューを回転炉床に対して位置決めするためのストッパ(11)と、排出スクリューを回転炉床に向けて押し付けた状態で排出スクリューを支持する支持機構(7,9)と、を有する。支持機構は、排出スクリューの自重による押し付け力よりも大きな力で排出スクリューを回転炉床に向けて押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転炉床上の原料を還元処理して排出させる回転炉床炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の回転炉床炉の操業方法では、排出スクリューおよび回転炉床の間に隙間を設けて、スクリュー羽根および回転炉床を接触させず、原料だけをスクリュー羽根によって排出させている。また、排出スクリューの自重を利用して、スクリュー羽根の先端を回転炉床の表面に接触させたものが従来技術として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−144225号公報(段落0021)
【特許文献2】特開2000−109913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成のように、スクリュー羽根および回転炉床の間に隙間を設けると、回転炉床の表面に原料が融着したり、原料の粉化したものが隙間部分に溜まったりしてしまう。そして、隙間部分に溜まった原料の粉は、焼結によって硬化して突起物が生成されてしまう。突起物が成長すると、スクリュー羽根が摩耗しやすくなったり、回転炉床炉の操業に悪影響を与えたりすることがある。
【0005】
一方、排出スクリューの自重によってスクリュー羽根を回転炉床の表面に接触させた構成では、回転炉床の表面に形成された突起物(焼結物)にスクリュー羽根が衝突した際に、排出スクリューが回転炉床の表面から離れる方向に移動してしまうおそれがある。特に、回転炉床炉の小型化に伴って排出スクリューを小型化すると、排出スクリューの重量が低下し、突起物によって排出スクリューが回転炉床の表面から離れる方向に移動しやすくなってしまう。
【0006】
この場合には、排出スクリューによって回転炉床上の原料を排出させることができなくなってしまう。回転炉床上に原料が残ると、焼結が進行して、突起物が成長してしまうおそれもある。
【0007】
本発明の主な目的は、回転炉床上に形成された焼結物を除去し、焼結の進行を抑制することができる回転炉床炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転炉床上の原料を、回転動作によって排出方向に移動させる排出スクリューと、排出スクリューの羽根が回転炉床の表面に接触するように、排出スクリューを回転炉床に対して位置決めするためのストッパと、排出スクリューを回転炉床に向けて押し付けた状態で排出スクリューを支持する支持機構と、を有する。支持機構は、排出スクリューの自重による押し付け力よりも大きな力で排出スクリューを回転炉床に向けて押し付ける。
【0009】
支持機構を、排出スクリューに接続されたピストンと、ピストンを収容するとともに、ガスが充填されたシリンダとで構成することができる。この場合には、シリンダ内の圧力を調節することにより、排出スクリューの押し付け力を、排出スクリューの自重だけによる押し付け力よりも大きな力にすることができる。
【0010】
シリンダ内の圧力を調節する調節機構を設けておき、回転炉床の表面から離れる方向に排出スクリューが変位することにより、シリンダ内の圧力が基準値を超えたときには、調節機構によってシリンダ内のガスを排出させることができる。これにより、シリンダ内の圧力が過度に上昇して、シリンダ内の圧力によって規定される排出スクリューの押し付け力が過度に大きくなってしまうのを抑制することができる。
【0011】
また、調節機構を用いることにより、回転炉床の表面に近づく方向に排出スクリューが変位することに応じて、シリンダ内にガスを供給してシリンダ内の圧力を基準値まで上昇させることができる。これにより、シリンダ内の圧力を基準値に維持することができ、排出スクリューの押し付け力も予め設定された値に維持することができる。
【0012】
一方、排出スクリューの羽根の厚さは、以下の関係式(1)を満たすように設定することができる。
【0013】
D1>D2 ・・・(1)
ここで、D1は、排出スクリューのうち、回転炉床の内周部および外周部のうち、少なくとも一方と対向する領域における羽根の厚さであり、D2は、内周部および外周部の間に位置する部分と対向する領域における羽根の厚さである。
【0014】
また、厚さD1および厚さD2を、以下の関係式(2)を満たすように設定することができる。
【0015】
1.5*D2<D1<3.0*D2 ・・・(2)
【0016】
ここで、回転炉床の内周部および外周部は、排出スクリューに対して露出した耐火物で形成されている。また、内周部および外周部は、原料の投入領域とは異なる領域に位置している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排出スクリューの自重による押し付け力よりも大きな力で排出スクリューを回転炉床に向けて押し付けているため、回転炉床の表面に突起物(焼結物)が生成されたとしても、突起物を取り除き易くなる。また、排出スクリューの羽根が回転炉床の表面に接触する位置で排出スクリューが位置決めされているため、排出スクリューの羽根が回転炉床の内部に進入して、羽根の摩耗が進行してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1である回転炉床炉の一部における構成を示す断面図である。
【図2】実施形態1における回転炉床の一部の構成を示す断面図である。
【図3】実施形態1における空気シリンダの内部構造を示す概略図である。
【図4A】実施形態1において、排出スクリューを回転炉床に向けて押し付けたときの空気シリンダの内部構造を示す概略図である。
【図4B】実施形態1において、排出スクリューが回転炉床から離れる方向に変位したときの空気シリンダの内部構造を示す概略図である。
【図5】実施形態1において、空気シリンダの動作を制御する構成を示す図である。
【図6】実施形態1において、空気シリンダの圧力調節の制御を示すフローチャートである。
【図7】実施形態1の排出スクリューにおいて、スクリュー羽根の厚さを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
【0020】
本発明の実施形態1である回転炉床炉について、図1を用いて説明する。図1は、回転炉床炉の一部における断面図である。
【0021】
回転炉床炉1の炉殻2の内部には、回転炉床3が水平面内で回転可能に配置されている。回転炉床3は、回転台車レール4の上の走行車輪3dによって回転可能に支持されている。回転炉床3の外周部Poutおよび内周部Pinには、サイドブロック3aがそれぞれ配置されており、サイドブロック3aは、圧縮強度に優れた耐火材で構成されている。外周部Poutのサイドブロック3aおよび内周部Pinのサイドブロック3aの間には、耐火物3bが配置されており、耐火物3bの上面には、炉床材3cが配置されている。炉床材3cとしては、例えば、酸化マグネシウムを用いることができる。
【0022】
回転炉床3の外周部Poutおよび内周部Pinに沿って配置された環状の水封装置5は、炉殻2および回転炉床3に接続されており、炉殻2の内部を密閉状態として、炉殻2の内部における雰囲気を維持する。
【0023】
排出スクリュー6は、回転炉床3の表面、言い換えれば、炉床材3cの表面に存在する原料(還元鉄)Mを回転炉床3の外部に排出するために用いられ、回転軸6aおよびスクリュー羽根6bを有している。排出スクリュー6は、アクチュエータ(不図示)からの動力を受けて回転する。スクリュー羽根6bは、回転軸6aの外周面に対して溶接等によって固定することができる。また、回転軸6aの内部には、排出スクリュー6を冷却するための冷却水を移動させる通路を形成することができる。
【0024】
回転軸6aの両端は、炉殻2を貫通して、軸受け7によって支持されている。炉殻2のうち、回転軸6aが貫通する部分は、シール部材8によって密閉されている。各軸受け7は、空気シリンダ9に接続されており、空気シリンダ9は、昇降装置としての機能を有しており、軸受け7を介して排出スクリュー6を上昇させたり、下降させたりする。
【0025】
空気シリンダ9は、シリンダチューブ9aおよびピストンロッド9bを有しており、シリンダチューブ9aに収容されたピストンロッド9bに軸受け7を固定している。シリンダチューブ9aの内部は、密閉状態となっており、圧縮空気が充填されている。本実施形態では、シリンダチューブ9aの内部に圧縮空気を充填しているが、空気以外のガスをシリンダチューブ9aに充填することもできる。
【0026】
スクリュー羽根6bの先端は、回転炉床3(言い換えれば、炉床材3c)の表面に接触しており、排出スクリュー6が回転すると、回転床炉3の表面上に存在する原料Mは、スクリュー羽根6bによって回転炉床3の外周部Poutに向かって押し出される。そして、原料Mは、回転炉床3の外周部Poutから落下して排出ダクト10に導かれる。排出ダクト10は、原料Mを回転炉床炉1の外部に排出させる。
【0027】
軸受け7には、レベルジャッキ(レベルストッパ)11が設けられており、レベルジャッキ11は、スクリュー羽根6bの先端が回転炉床3の内部に進入するのを阻止するために設けられている。具体的には、レベルジャッキ11は、スクリュー羽根6bの先端が回転炉床3の表面の炉床材3cに接触するとともに、スクリュー羽根6bが回転炉床3の炉床材3cを押し付けないように、排出スクリュー6を回転炉床炉1の上下方向(垂直方向)において位置決めを行う。
【0028】
本実施形態では、空気シリンダ9を用いることにより、回転炉床3の炉床材3cの表面に存在する原料Mに対して、所定の力で排出スクリュー6を押し付けるようにしている。所定の力(押し付け力)とは、排出スクリュー6の自重だけによる押し付け力よりも大きな力である。また、排出スクリュー6は回転炉床3に向かって押し付けられるが、レベルジャッキ11によって位置決めされているため、排出スクリュー6の押し付け力は、回転炉床3の炉床材3cの表面には作用せず、回転炉床3上に存在する原料Mに対して作用することになる。
【0029】
排出スクリュー6に対して、自重だけによる押し付け力よりも大きな押し付け力を発生させることにより、回転炉床3の炉床材3cの表面に突起物(焼結物)が生成されたとしても、突起物を取り除きやすくすることができる。また、排出スクリュー6が突起物に衝突した際に、排出スクリュー6が回転炉床3の炉床材3cから離れる方向に移動してしまうのを抑制することができ、原料Mの排出を効率良く行うことができる。
【0030】
ここで、回転炉床炉1の小型化に伴って排出スクリュー6を小型化すると、排出スクリュー6の重量が減少してしまい、上述したように排出スクリュー6が突起物によって押し上げられやすくなってしまう。このような場合には、本実施形態のように、排出スクリュー6の押し付け力を排出スクリュー6の自重だけによる押し付け力よりも大きくすることが好適である。
【0031】
排出スクリュー6の押し付け力は、排出スクリュー6の自重だけによる押し付け力よりも大きければよく、この範囲内において、適宜設定することができる。ここで、排出スクリュー6の押し付け力を大きくしすぎると、空気シリンダ9やジャッキレベル11の構造が複雑になるおそれもあるため、この点に基づいて、排出スクリュー6の押し付け力の上限値を設定することもできる。
【0032】
図2には、回転炉床3上において、排出スクリュー6の押し付け力が作用する範囲を示している。回転炉床3の表面(基準レベル)よりも原料Mが存在する側の領域では、排出スクリュー6による押し付け力が作用している。また、回転炉床3の炉床材3cの表面(基準レベル)よりも回転炉床3の内部側の領域では、排出スクリュー6による押し付け力が作用していない。さらに、回転炉床3の炉床材3cの表面(基準レベル)では、レベルジャッキ11による排出スクリュー6の位置決めにより、スクリュー羽根6bの先端が回転炉床3の炉床材3cの表面に接触しているとともに、排出スクリュー6の押し付け力が作用していない。
【0033】
上述した排出スクリュー6の押し付け力は、空気シリンダ9によって調節される。図3に示すように、空気シリンダ9におけるシリンダチューブ9aの内部は、ピストンロッド9bによって仕切られており、スペースS1およびスペースS2が形成されている。スペースS1,S2には、圧縮空気が充填されており、スペースS1およびスペースS2の内圧を調節することにより、排出スクリュー6の押し付け力を設定することができる。
【0034】
回転炉床3の炉床材3cの表面に突起物が生成された場合には、排出スクリュー6の回転動作に伴ってスクリュー羽根6bが突起物に衝突することになる。ここで、スクリュー羽根6bが突起物に衝突したタイミングで、スクリュー羽根6bは、過度の負荷を受けるおそれがあり、過度の負荷を繰り返して受け続けることにより、スクリュー羽根6bが摩耗してしまうおそれがある。
【0035】
本実施形態では、上述した構成の空気シリンダ9を用いているため、回転炉床3の炉床材3cの表面に形成された突起物にスクリュー羽根6bが衝突したときに、スクリュー羽根6bが受ける負荷を低減させることができる。これにより、スクリュー羽根6bの摩耗を抑制することができる。
【0036】
具体的には、スクリュー羽根6bが突起物に衝突すると、排出スクリュー6は、回転炉床3の表面から離れる方向に変位しようとする。このとき、空気シリンダ9は、図4Aに示す状態から図4Bに示す状態に変化する。図4Aは、スクリュー羽根6bが突起物に衝突していないときの空気シリンダ9の状態(初期状態)を示し、図4Bは、スクリュー羽根6bが突起物に衝突した直後の空気シリンダ9の状態(衝撃吸収状態)を示している。
【0037】
排出スクリュー6が変位しようとする力は、ピストンロッド9bに伝達され、シリンダチューブ9aにおけるスペースS1の空気を圧縮させることにより、スペースS1が収縮し、排出スクリュー6の変位を許容する。このように排出スクリュー6を変位させることにより、スクリュー羽根6bが突起物から受ける負荷を低減することができる。
【0038】
ここで、排出スクリュー6の変位量は、スペースS1における空気の圧縮量に対応しており、排出スクリュー6が突起物から大きく離れてしまうことを抑制することができる。また、スクリュー羽根6bが突起物と衝突しなくなれば、空気シリンダ9は、図4Bに示す状態から図4Aに示す状態に変化する。これにより、スクリュー羽根6bを回転炉床3の表面に接触させ続けることができ、回転炉床3の炉床材3c上の原料Mを効率良く排出させることができる。
【0039】
上述したようにスペースS1を収縮させると、スペースS1の内圧が過度に上昇してしまうおそれもある。そこで、スペースS1の内圧が過度に上昇してしまうのを抑制するために、スペースS1内の空気を逃がすこともできる。空気シリンダ9のスペースS1,S2における圧力を調節するための構成について、図5を用いながら説明する。
【0040】
各空気シリンダ9のシリンダチューブ9aには、配管20,21が接続されており、配管20は、空気シリンダ9のスペースS1に対して空気を供給したり、スペースS1から空気を排出したりするために用いられる。配管20は、分岐しており、分岐した部分が各空気シリンダ9に接続されている。
【0041】
配管21は、空気シリンダ9のスペースS2に対して空気を供給するために用いられる。配管21は、分岐しており、分岐した部分が各空気シリンダ9に接続されている。
【0042】
配管20および配管21には、電磁弁22が接続されており、電磁弁22は、圧縮空気の移動通路を配管20および配管21の間で切り替える。電磁弁22には、2つの切替回路22a,22bがあり、電磁弁22を回路22a側にすると、排出スクリュー6を回転炉床3の側に押し付け、回路22b側にすると、排出スクリュー6を回転炉床3から離す(排出スクリュー6を上昇させる)方向に作用させる。
【0043】
配管20には、スピードコントロールユニット23、圧力計24および圧力レギュレータユニット25が接続されている。スピードコントロールユニット23は、圧縮空気の供給量を制御し、逆止弁を有している。圧力計24は、配管20を移動する圧縮空気の圧力を計測し、測定結果をコントローラ26に出力する。圧力レギュレータユニット25は、空気シリンダ9におけるスペースS1の内圧を所定値に設定するために用いられ、圧力リリーフ弁を有している。圧力レギュレータユニット25や電磁弁22の動作は、コントローラ26によって制御される。
【0044】
配管21の分岐部分には、スピードコントロールユニット23がそれぞれ設けられており、各分岐部分には、互いに異なる逆止弁を有する2つのスピードコントロールユニット23が設けられている。互いに異なる逆止弁では、圧縮空気の移動を許容する方向が互いに異なっている。
【0045】
次に、空気シリンダ9におけるスペースS1,S2の内圧の調節処理について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。図6に示す処理は、コントローラ26によって実行される。
【0046】
ステップS101において、排出スクリュー6の変位に伴ってスペースS1の内圧が上昇すると、コントローラ26は、圧力計24の出力に基づいて、スペースS1の内圧が上昇したことを検知する。ステップS102において、コントローラ26は、スペースS1の内圧が基準値を超えているか否かを判別し、内圧が基準値を超えていると判別したときには、ステップS103の処理に進む。ここで、基準値とは、排出スクリュー6の押し付け力を予め設定された値に維持するための圧力値である。
【0047】
ステップS103において、コントローラ26は、圧力レギュレータユニット25の圧力リリーフ弁を閉じ状態から開き状態に動作させることにより、スペースS1内の空気を空気シリンダ9の外部に排出させる。これにより、スペースS1の内圧は、基準値に向かって低下することになる。
【0048】
ステップS104において、コントローラ26は、圧力計24からの出力に基づいて、空気シリンダ9におけるスペースS1の内圧を検知する。そして、ステップS105において、コントローラ26は、ステップS104で得られた圧力値が基準値よりも低いか否かを判別し、圧力値が基準値よりも低いときには、ステップS106の処理に進む。ステップS105で用いられる基準値は、ステップS102で用いられる基準値と同一である。
【0049】
ステップS106において、コントローラ26は、圧力レギュレータユニット25を動作させることにより、空気シリンダ9のスペースS1に対して圧縮空気を供給する。これにより、スペースS1の内圧は、基準値に向かって上昇する。
【0050】
図6に示す処理を行うことにより、回転炉床3の炉床材3cの上に形成された突起物によって、排出スクリュー6に過度の負荷が加わるのを抑制しながら、排出スクリュー6の押し付け力を予め設定された値に維持することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、圧力計24の出力に基づいて、排出スクリュー6の押し付け力を予め設定された値に維持するようにしているが、これに限るものではない。例えば、排出スクリュー6を回転させるモータにかかる過負荷状態を検出し、過負荷状態に基づいて、空気シリンダ9(スペースS1)の内圧を低下させたり、上昇させたりすることができる。
【0052】
一方、本実施形態において、回転炉床3に原料Mを供給していないときには、排出スクリュー6を回転炉床3の表面から離すことができる。排出スクリュー6を回転炉床3に接触させたままでは、排出スクリュー6が回転炉床3からの熱を受け続けてしまい、排出スクリュー6の劣化が進行してしまうおそれがある。特に、回転炉床3に原料Mが供給されていないときには、回転炉床3の熱が排出スクリュー6だけに伝達されてしまう。
【0053】
したがって、原料Mの供給を停止しているときには、空気シリンダ9におけるスペースS1,S2の圧力を調節することにより、排出スクリュー6のスクリュー羽根6bを回転炉床3の表面から離すことができる。
【0054】
一方、排出スクリュー6を回転炉床3に向かって押し付けた構成では、サイドブロック3a上に移動した原料Mが、スクリュー羽根6bおよびサイドブロック3aの間に挟まれた状態において、焼結して硬化し易い。また、回転炉床3に原料Mを供給するときには、原料Mが回転炉床3から落下しないように、回転炉床3の外周部Poutおよび内周部Pinに近づいた位置には、原料Mを供給しないようにしている。このため、回転炉床3のうち、外周部Poutおよび内周部Pinを含む領域では、原料(還元鉄)Mの生成に用いられるバーナーからの熱を直接、受けやすく、焼結が進行しやすい。
【0055】
焼結が進行しやすい領域では、この領域と対向するスクリュー羽根6bの一部は、過度の負荷を受けやすく、摩耗が進行しやすくなることがある。
【0056】
図7において、排出スクリュー6の領域R1は、焼結が進行しやすい領域と対向する領域であり、領域R2は、排出スクリュー6のうち、領域R1を除く他の領域である。本実施形態では、領域R1に位置するスクリュー羽根6bの厚さD1を、領域R2に位置するスクリュー羽根6bの厚さD2よりも厚くしている。具体的には、下記式(3)を満たすように、スクリュー羽根6bの厚さを設定している。
【0057】
1.5*D2<D1<3.0*D2 ・・・(3)
【0058】
スクリュー羽根6bの厚さD1,D2が上記式(3)を満たすように設定すれば、スクリュー羽根6bの領域R1が、領域R2よりも摩耗が進行するのを抑制することができる。そして、スクリュー羽根6bの全体において、摩耗のバラツキを抑えることができる。
【0059】
厚さD1が上記式(3)の下限値(1.5*D2)よりも小さいと、スクリュー羽根6bのうち、厚さD1を有する部分が、厚さD2を有する部分よりも摩耗しやすくなってしまう。また、厚さD1が上記式(3)の上限値(3.0*D2)よりも大きいと、スクリュー羽根6bのうち、厚さD2を有する部分が、厚さD1を有する部分よりも摩耗しやすくなってしまう。
【0060】
本実施形態では、領域R1,R2の境界において、スクリュー羽根6bの側面に段差が形成されるようになっているが、これに限るものではない。例えば、領域R1および領域R2の境界部分(領域R1,R2の一部を含む)において、スクリュー羽根6bの厚さを連続的又は段階的に変化させることができる。また、領域R1,R2のうち、一方の領域におけるスクリュー羽根6bの厚さD1だけを厚さD2よりも厚くすることもできる。
【符号の説明】
【0061】
1:回転炉床炉、2:炉殻、3:回転炉床、3a:サイドブロック、3b:耐火物、
3c:炉床材、3d:走行車輪、4:回転台車レール、5:水封装置、
6:排出スクリュー、6a:回転軸、6b:スクリュー羽根、7:軸受け、
8:シール部材、9:空気シリンダ、9a:シリンダチューブ、
9b:ピストンロッド、10:排出ダクト、11:レベルジャッキ(レベルストッパ)、20,21:配管、22:電磁弁、23:スピードコントロールユニット、
24:圧力計、25:圧力レギュレータユニット、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転炉床上の原料を、回転動作によって排出方向に移動させる排出スクリューと、
前記排出スクリューの羽根が前記回転炉床の表面に接触するように、前記排出スクリューを前記回転炉床に対して位置決めするためのストッパと、
前記排出スクリューを前記回転炉床に向けて押し付けた状態で前記排出スクリューを支持する支持機構と、を有し、
前記支持機構は、前記排出スクリューの自重による押し付け力よりも大きな力で前記排出スクリューを前記回転炉床に向けて押し付けることを特徴とする回転炉床炉。
【請求項2】
前記支持機構は、前記排出スクリューに接続されたピストンと、前記ピストンを収容するとともに、ガスが充填されたシリンダと、を有しており、前記シリンダ内の圧力を調節して前記排出スクリューの押し付け力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の回転炉床炉。
【請求項3】
前記シリンダ内の圧力を調節する調節機構を有しており、
前記調節機構は、前記回転炉床の表面から離れる方向に前記排出スクリューが変位することにより、前記シリンダ内の圧力が基準値を超えたときには、前記シリンダ内のガスを排出させることを特徴とする請求項2に記載の回転炉床炉。
【請求項4】
前記調節機構は、前記回転炉床の表面に近づく方向に前記排出スクリューが変位することに応じて、前記シリンダ内にガスを供給して前記シリンダ内の圧力を前記基準値まで上昇させることを特徴とする請求項3に記載の回転炉床炉。
【請求項5】
前記排出スクリューの羽根の厚さは、以下の関係式(1)を満たす、
D1>D2 ・・・(1)
ここで、D1は、前記排出スクリューのうち、前記回転炉床の内周部および外周部のうち、少なくとも一方と対向する領域における羽根の厚さであり、D2は、前記内周部および前記外周部の間に位置する部分と対向する領域における羽根の厚さである、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の回転炉床炉。
【請求項6】
前記厚さD1および前記厚さD2は、以下の関係式(2)を満たす、
1.5*D2<D1<3.0*D2 ・・・(2)
ことを特徴とする請求項5に記載の回転炉床炉。
【請求項7】
前記内周部および前記外周部は、前記排出スクリューに対して露出した耐火物で形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の回転炉床炉。
【請求項8】
前記内周部および前記外周部は、前記原料の投入領域とは異なる領域に位置していることを特徴とする請求項5又は6に記載の回転炉床炉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−202919(P2011−202919A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72487(P2010−72487)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】