説明

回転角度・トルク検出装置

【課題】主に自動車のステアリングの回転角度や回転トルクの検出等に用いられる回転角度・トルク検出装置に関し、全体の小型化が図れ、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】第一の回転体21に第三の磁石35を装着すると共に、この第三の磁石35の磁気を検出する第三の磁気検出素子36を設け、制御手段29が第一の磁気検出素子28からのトルク検出信号によって回転トルクを、第二の磁気検出素子34と第三の磁気検出素子36からの角度検出信号によって回転角度を、各々検出することによって、使用する検出歯車32が一つですみ、全体の小型化が図れると共に、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が可能な回転角度・トルク検出装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度や回転トルクの検出等に用いられる回転角度・トルク検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転トルク検出装置や回転角度検出装置を用いてステアリングの回転トルクや回転角度を検出し、パワーステアリング装置やブレーキ装置等の車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような、従来の回転角度・トルク検出装置について、図7及び図8を用いて説明する。
【0004】
図7は従来の回転角度・トルク検出装置の断面図、図8は同分解斜視図であり、同図において、1はステアリングに連動して回転する略円筒状の第一の回転体、2は略円筒状の保持体、3は複数のN極とS極が交互に隣接して形成された略リング状の第一の磁石で、第一の磁石3が保持体2の外周下端に固着されると共に、この保持体2の外周上方が第一の回転体1の内周上方に固着されている。
【0005】
そして、4は略円筒状の第二の回転体、5は内周に複数の突起部5Aが形成された略リング状の第一の磁性体、6は同じく内周に複数の突起部6Aが形成された第二の磁性体で、第二の回転体4が第一の回転体1の下方に配置されると共に、第一の磁性体5と第二の磁性体6がスペーサ7を介して、第一の磁石3外周と所定の間隙を空けて対向するように、第二の回転体4上端に固着されている。
【0006】
また、8は第一の回転体1と第二の回転体4の側方にほぼ平行に配置された配線基板で、左右面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の磁石3との対向面には、第一の磁性体5と第二の磁性体6の間に配設された、ホール素子等の第一の磁気検出素子9が実装装着されている。
【0007】
さらに、配線基板8にはマイコン等の電子部品によって、第一の磁気検出素子9に接続された制御手段10が形成されると共に、第一の回転体1と第二の回転体4の間には、上端が第一の回転体1に、下端が第二の回転体4に各々固着されたトーションバー等の略円柱状の連結体11が設けられ、第一の回転体1と第二の回転体4が連結体11を介して、固着されて回転トルク検出部が構成されている。
【0008】
また、12は第二の回転体4の外周下面に形成された回転歯車、13は第一の検出歯車、14は第二の検出歯車で、これらが各々異なる歯数に形成されると共に、回転歯車12に第一の検出歯車13が、この第一の検出歯車13に第二の検出歯車14が各々噛合している。
【0009】
そして、この第一の検出歯車13の中央には第二の磁石15Aが、第二の検出歯車14の中央には第三の磁石16Aが、各々インサート成形等により装着されると共に、これらの側方にほぼ平行に配置された配線基板8の、第二の磁石15Aと第三の磁石16Aとの対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子等の第二の磁気検出素子15Bと第三の磁気検出素子16Bが各々装着されている。
【0010】
さらに、これらの回転歯車12や第一の検出歯車13、第二の検出歯車14、第二の磁石15Aと第二の磁気検出素子15B、第三の磁石16Aと第三の磁気検出素子16Bによって、回転角度検出部が形成されると共に、第二の磁気検出素子15Bと第三の磁気検出素子16Bが制御手段10に接続されて、回転角度・トルク検出装置が構成されている。
【0011】
そして、このように構成された回転角度・トルク検出装置が、第一の回転体1や第二の回転体4にステアリング軸が装着されて、自動車のステアリングホイール下方に装着されると共に、制御手段10がコネクタやリード線(図示せず)等を介して自動車本体の電子回路(図示せず)に接続される。
【0012】
以上の構成において、ステアリングホイールを回転すると、これに伴って第一の回転体1が回転し、連結体11が捩じれた後、第一の回転体1にやや遅れて第二の回転体4が回転するが、この時、例えば車両が走行時には回転トルクが小さいため、第一の回転体1に対する第二の回転体4の回転の遅れは少なく、停車時には回転トルクが大きいため、第二の回転体4の回転の遅れは大きくなる。
【0013】
そして、この第一の回転体1と第二の回転体4の回転に伴って、これらに固着された第一の磁石3と、これにやや遅れて第一の磁性体5と第二の磁性体6も回転し、交互に隣接形成された第一の磁石3のN極とS極の磁気の変化を、第一の磁気検出素子9が第一の磁性体5と第二の磁性体6を介して検出し、これが制御手段10へ入力される。
【0014】
なお、この時、第一の磁気検出素子9が検出する磁気は、第一の磁石3が固着された第一の回転体1に対し、第一の磁性体5と第二の磁性体6が固着された第二の回転体4の、回転の遅れが少ない場合には磁気が弱く、回転の遅れが大きな場合には磁気が強くなる。
【0015】
そして、この第一の磁性体5と第二の磁性体6を介して検出された第一の磁気検出素子9の磁気の強弱から、制御手段10が第一の回転体1、即ちステアリング軸の回転トルクを算出して、これが車両本体の電子回路へ出力される。
【0016】
さらに、第二の回転体4の回転に伴って、この外周下面に形成された回転歯車12が回転するため、回転歯車12に噛合した第一の検出歯車13、及び第一の検出歯車13に噛合した第二の検出歯車14が各々連動して回転する。
【0017】
また、第一の検出歯車13と第二の検出歯車14の回転に伴って、これらの中央に装着された第二の磁石15Aと第三の磁石16Aも回転して、この変化する磁力を第二の磁気検出素子15Bと第三の磁気検出素子16Bが検出し、増減を繰返す正弦波や余弦波、または略鋸歯状の角度検出信号が制御手段10へ入力される。
【0018】
なお、この時、第一の検出歯車13と第二の検出歯車14とは歯数が異なっているため、第二の磁気検出素子15Bから出力される角度検出信号と、第三の磁気検出素子16Bから出力される角度検出信号は、データ波形の傾き角度や形状が異なり、位相差のあるものとなって制御手段10へ入力される。
【0019】
そして、この第一の検出歯車13と第二の検出歯車14からの角度検出信号と、各々の歯車の歯数から、制御手段10が所定の演算を行って回転歯車12、即ちステアリング軸の回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力され、電子回路がこの回転角度や、上述した制御手段10からの回転トルク、あるいは車体の各部に装着された速度センサ等からの様々なデータを演算して、パワーステアリング装置やブレーキ装置等の車両の様々な制御が行われる。
【0020】
つまり、制御手段10から出力された回転角度や回転トルクに応じて、ステアリングホイールの回転操作角度にあわせたブレーキ装置の効き具合の制御や、ステアリングホイールを回転操作する力の制御等が、電子回路によって行われるように構成されているものであった。
【0021】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2008−82826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、上記従来の回転角度・トルク検出装置においては、回転歯車12に第一の検出歯車13を、第一の検出歯車13に第二の検出歯車14を各々噛合させ、これらの異なる歯数の第一の検出歯車13と第二の検出歯車14の、位相差のある角度検出信号から制御手段10が回転角度の検出を行っているため、使用する歯車の数が多く、全体の形状も大きなものになってしまうという課題があった。
【0024】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、全体の小型化が図れ、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が可能な回転角度・トルク検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0026】
本発明の請求項1に記載の発明は、第一の回転体に第三の磁石を装着すると共に、この第三の磁石の磁気を検出する第三の磁気検出素子を設け、制御手段が第一の磁気検出素子からのトルク検出信号によって回転トルクを、第二の磁気検出素子と第三の磁気検出素子からの角度検出信号によって回転角度を、各々検出するようにして回転角度・トルク検出装置を構成したものであり、回転歯車に噛合した一つの検出歯車の、第二の磁石の磁気を検出する第二の磁気検出素子と、第一の回転体の第三の磁石の磁気を検出する第三の磁気検出素子から、制御手段が回転角度を検出することによって、使用する検出歯車が一つですみ、全体の小型化が図れると共に、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が可能な回転角度・トルク検出装置を得ることができるという作用を有する。
【0027】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第三の磁石に代えて、第三の磁気検出素子が第一の磁石の磁気を検出するものであり、第三の磁石が不要となり、構成部品数を減らし簡易な構成で、確実な回転角度と回転トルクの検出を行うことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によれば、全体の小型化が図れ、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が可能な回転角度・トルク検出装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度・トルク検出装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分斜視図
【図4】同他の実施の形態による断面図
【図5】同分解斜視図
【図6】同部分斜視図
【図7】従来の回転角度・トルク検出装置の断面図
【図8】同分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0031】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度・トルク検出装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、21は略円筒状でステアリングに連動して回転するポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製の第一の回転体、22は略円筒状でフェライトやNd−Fe−B合金等の第一の磁石で、第一の磁石22が第一の回転体21の外周下方に固着されている。
【0032】
そして、この略円筒状の第一の磁石22は、図3の部分斜視図に示すように、上下左右に磁極の異なる複数のN極とS極が所定の角度間隔で、例えば22.5度間隔で8極ずつのN極とS極が上下2段に隣接して、円周方向に配列形成されている。
【0033】
また、23は略円筒状でポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製の第二の回転体、24はパーマロイや鉄、Ni−Fe合金等の第一の磁性体、25は同じく第二の磁性体で、第二の回転体23が第一の回転体21の下方に配置されると共に、第一の磁性体24と第二の磁性体25は、略帯状の板材がリング状に巻回して形成され、これらが第一の磁石22に対向配置されている。
【0034】
さらに、26はパーマロイや鉄、Ni−Fe合金等の第三の磁性体で、略矩形状の複数の第三の磁性体26が第二の回転体23内に、インサート成形や圧入等によって所定の角度間隔で、例えば8個の第三の磁性体26が45度間隔で放射状に配列されて、第一の磁石22と第一の磁性体24及び第二の磁性体25の間に配置されている。
【0035】
また、27は紙フェノールやガラス入りエポキシ等の配線基板で、上下面には銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の回転体21と第二の回転体23の側方にほぼ平行に配置され、第一の磁石22との対向面には、第一の磁性体24と第二の磁性体25の間に配設された、垂直方向の磁気を検出するホール素子や、水平方向の磁気を検出するGMR素子等の、第一の磁気検出素子28が実装装着されている。
【0036】
そして、配線基板27にはマイコン等の電子部品によって、第一の磁気検出素子28に接続された制御手段29が形成されると共に、第一の回転体21と第二の回転体23の間には、上端が第一の回転体21に、下端が第二の回転体23に各々固着されたトーションバー等の略円柱状で鋼等の連結体30が設けられ、第一の回転体21と第二の回転体23が、連結体30を介して固着されて回転トルク検出部が構成されている。
【0037】
さらに、31は第二の回転体23の外周下方に形成された回転歯車、32は絶縁樹脂または金属製で外周側面に平歯車部が形成された検出歯車で、これらの歯車の直径及び歯数は、回転歯車31に比べ検出歯車32は小さく形成されており、例えば歯数が59の回転歯車31に、歯数が15の検出歯車32が噛合している。
【0038】
そして、この検出歯車32の中央には、フェライトやNd−Fe−B合金等の第二の磁石33がインサート成形等により装着されると共に、上方にほぼ平行に配置された配線基板27の、第二の磁石33との対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子等の第二の磁気検出素子34が実装装着されている。
【0039】
また、35は略リング状でフェライトやNd−Fe−B合金等の第三の磁石で、図3に示すように、左右に磁極の異なる複数のN極とS極が所定の角度間隔で、例えば15度間隔で12極ずつのN極とS極が隣接して、円周方向に配列形成されると共に、第一の回転体21の外周上方に固着されている。
【0040】
そして、36は垂直方向の磁気を検出するホール素子や、水平方向の磁気を検出するGMR素子等の第三の磁気検出素子で、この第三の磁気検出素子36が第三の磁石35側方に対向配置されている。
【0041】
さらに、これらの回転歯車31や検出歯車32、第二の磁石33と第二の磁気検出素子34、第三の磁石35と第三の磁気検出素子36によって、回転角度検出部が形成されると共に、第二の磁気検出素子34と第三の磁気検出素子36が制御手段29に接続されて、回転角度・トルク検出装置が構成されている。
【0042】
そして、このように構成された回転角度・トルク検出装置が、第一の回転体21や第二の回転体23にステアリング軸が装着されて、自動車のステアリングホイール下方に装着されると共に、制御手段29がコネクタやリード線(図示せず)等を介して自動車本体の電子回路(図示せず)に接続される。
【0043】
以上の構成において、ステアリングホイールを回転すると、これに伴って第一の回転体21が回転し、連結体30が捩じれた後、第一の回転体21にやや遅れて第二の回転体23が回転するが、この時、例えば車両が走行時には回転トルクが小さいため、第一の回転体21に対する第二の回転体23の回転の遅れは少なく、停車時には回転トルクが大きいため、第二の回転体23の回転の遅れが大きくなる。
【0044】
そして、この第一の回転体21の回転に伴って、これに固着された第一の磁石22が回転し、これにやや遅れて第二の回転体23も回転して、第一の磁気検出素子28が第一の磁性体24と第二の磁性体25、第三の磁性体26を介して、第一の磁石22のN極とS極の磁気の変化を検出し、これが制御手段29へ入力される。
【0045】
つまり、ステアリングホイールが回転操作されず中立位置で、車両が直進状態にある場合には、第一の磁石22と第一の磁性体24及び第二の磁性体25の間に配列された、複数の第三の磁性体26の中心が、第一の磁石22の隣接したN極とS極の中心にあるため、これらのN極からS極への磁力は各々釣り合った状態となっている。
【0046】
したがって、複数の第三の磁性体26外方の、第一の磁性体24と第二の磁性体25の間にも磁束が発生しないため、これらの間に配設された第一の磁気検出素子28が検出する磁気は0となっている。
【0047】
これに対し、ステアリングホイールが右または左方向へ回転され、第一の磁石22が回転して、第一の磁石22に対して第三の磁性体26の中心がずれた状態では、第三の磁性体26に第一の磁石22によって、N極からS極への閉磁路となった磁束が生じる。
【0048】
また、同時に、第一の磁性体24と第二の磁性体25にも、第一の磁石22によってN極からS極への磁束が発生するため、この磁気を第一の磁気検出素子28が検出し、これらの磁気の強弱に応じた所定の電圧波形が、トルク検出信号として制御手段29へ出力される。
【0049】
なお、この時、第一の回転体21に対する第二の回転体23の回転の遅れは、回転トルクが小さな場合には角度として1度前後、回転トルクが大きな場合には4度前後の遅れ角度になると共に、第一の磁気検出素子28が検出する磁気は、第一の磁石22が固着された第一の回転体21に対し、第三の磁性体26が固着された第二の回転体23の、回転の遅れが少ない場合には磁気が弱く、回転の遅れが大きな場合には磁気が強いものとなる。
【0050】
そして、この第一の磁性体24と第二の磁性体25、第三の磁性体26を介して検出された第一の磁気検出素子28の磁気の強弱から、制御手段29が第一の回転体21、即ちステアリング軸の回転トルクを算出して、これが車両本体の電子回路へ出力される。
【0051】
さらに、第二の回転体23の回転に伴って、この外周下方に形成された回転歯車31が回転するため、回転歯車31に噛合した検出歯車32が連動して回転する。
【0052】
そして、検出歯車32の回転に伴って、中央に装着された第二の磁石33も回転して磁気の方向が変化し、この第二の磁石33の磁気の方向を第二の磁気検出素子34が検出して、増減を繰返す正弦波や余弦波、または略鋸歯状の角度検出信号が制御手段29へ入力される。
【0053】
また、第一の回転体21の回転に伴って、この外周上方に固着された略リング状の第三の磁石35が回転し、対向配置された第三の磁気検出素子36が、この隣接形成されたN極とS極の磁気の変化を検出して、磁気の強弱に応じた所定の電圧波形が、角度検出信号として制御手段29へ出力される。
【0054】
なお、この時、第二の磁気検出素子34から出力される角度検出信号と、第三の磁気検出素子36から出力される角度検出信号は、データ波形の傾き角度や形状が異なり、位相差のあるものとなって制御手段29へ入力される。
【0055】
そして、この第二の磁気検出素子34からの角度検出信号と、回転歯車31や検出歯車32の歯数、及び磁気検出素子36からの角度検出信号によって、制御手段29が所定の演算を行い、先ず概略の回転角度を検出した後、詳細な回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力され、電子回路がこの回転角度や、上述した制御手段29からの回転トルク、あるいは車体の各部に装着された速度センサ等からの様々なデータを演算して、パワーステアリング装置やブレーキ装置等の車両の様々な制御が行われる。
【0056】
つまり、車両の走行や停車状態に合わせ、例えば、車両が走行中でステアリングの回転トルクが小さな場合には、パワーステアリング装置の利きを緩めて、ステアリングホイールをある程度重い力で回転操作するようにし、車両が停車していてステアリングの回転トルクが大きな場合には、パワーステアリング装置を大きく利かせて、軽い力でもステアリングホイールの回転操作を行えるような制御を行う。
【0057】
あるいは、制御手段29からの回転角度によって、ステアリングホイールが大きく回転操作されている場合には、ブレーキ装置の効きを断続的にし、小さく回転操作されている場合には、ブレーキ装置を連続的に効かせる等の、ステアリングホイールの回転に応じたブレーキ装置の制御等が行われる。
【0058】
また、この時、本発明においては、第一の回転体21に第三の磁石35が装着されると共に、第三の磁石35の磁気を検出する第三の磁気検出素子36が設けられ、この第三の磁気検出素子36からの角度検出信号と、回転歯車31に噛合した一つの検出歯車32の、第二の磁石33の磁気を検出する第二の磁気検出素子34からの角度検出信号によって、制御手段29が回転角度を検出することで、使用する歯車の数を減らし、全体の小型化が図れるようになっている。
【0059】
すなわち、制御手段29が、第一の回転体21に装着された第一の磁石22の磁気を検出する、第一の磁気検出素子28からのトルク検出信号によって回転トルクを、第二の磁気検出素子34と第三の磁気検出素子36からの角度検出信号によって回転角度を、各々検出することによって、使用する検出歯車32が一つですみ、全体の小型化が図れると共に、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が行えるように構成されている。
【0060】
そして、第一の磁石22に対向配置された第三の磁性体26を略矩形状に、第一の磁性体24と第二の磁性体25を略帯状に形成することで、所定寸法の板材から切断や曲げ加工等によって、これらを短時間で歩留り良く製作することが可能となり、回転角度・トルク検出装置を安価に形成することができる。
【0061】
また、制御手段29が第一の磁気検出素子28と、第二の磁気検出素子34及び第三の磁気検出素子36によって、回転トルクと回転角度の検出を行っているため、万が一、これらのいずれかに破損や故障が生じ、例えば第二の磁気検出素子34からは角度検出信号が出力されているのに、第三の磁気検出素子36からは出力されていない場合等には、制御手段29がこれらの故障等の検出を行うことも可能なようになっている。
【0062】
さらに、図4の断面図や図5の分解斜視図に示すように、第一の磁石22Aを上方へやや延出して形成すると共に、この第一の磁石22A上面に第三の磁気検出素子36Aを対向配置することで、構成部品数を減らし、回転角度・トルク検出装置をより簡易で安価な構成とすることができる。
【0063】
つまり、同図においては、上述した第一の回転体21外周上方の第三の磁石35に代えて、第三の磁気検出素子36Aが第一の磁石22Aの磁気を検出すると共に、この第三の磁気検出素子36Aからの角度検出信号と、回転歯車31に噛合した一つの検出歯車32の、第二の磁石33の磁気を検出する第二の磁気検出素子34からの角度検出信号によって、制御手段29が回転角度を検出するように構成されている。
【0064】
すなわち、上述した第三の磁石35が不要となるため、構成部品の数が少なくなると共に、第一の回転体21に装着された第一の磁石22Aの磁気を検出する、第一の磁気検出素子28からのトルク検出信号によって回転トルクを、第二の磁気検出素子34と第三の磁気検出素子36Aからの角度検出信号によって回転角度を、制御手段29が各々検出することによって、簡易な構成で、確実な回転トルクと回転角度の検出を行うことが可能なようになっている。
【0065】
また、このように回転角度・トルク検出装置を構成した場合には、第二の磁気検出素子34から出力される角度検出信号と、第三の磁気検出素子36Aから出力される角度検出信号を位相差のあるものとするため、略円筒状の第一の磁石22Aが、例えば22.5度間隔で8極ずつのN極とS極が上下2段に隣接形成されていた場合には、回転歯車31の歯数は34、検出歯車32の歯数は13に形成されている。
【0066】
なお、以上の説明では、第二の回転体23の外周下方に回転歯車31を形成し、これに検出歯車32を噛合させた構成について説明したが、第一の回転体21の外周に回転歯車31を形成して、これに検出歯車32を噛合させた構成としても、本発明の実施は可能である。
【0067】
また、以上の説明では、配線基板27に第一の磁気検出素子28や第二の磁気検出素子34と共に、制御手段29を設けた構成について説明したが、制御手段29は車両の電子回路側に一体に設け、これに各磁気検出素子を接続して、ステアリング軸の回転角度や回転トルクを検出する構成としてもよい。
【0068】
さらに、複数のN極とS極が上下左右に隣接形成された略円筒状の第一の磁石22や22Aを用いた構成について説明したが、図6(a)の部分斜視図に示すように、左右にN極とS極が隣接形成された二つの略リング状の第一の磁石22Bを上下に重ねた構成や、あるいは、図6(b)に示すように、左右にN極とS極が隣接形成された略円弧状の複数の第一の磁石22Cを上下に重ね、これを所定間隔で放射状に配列した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0069】
このように本実施の形態によれば、第一の回転体21に第三の磁石35を装着すると共に、この第三の磁石35の磁気を検出する第三の磁気検出素子36を設け、制御手段29が第一の磁気検出素子28からのトルク検出信号によって回転トルクを、第二の磁気検出素子34と第三の磁気検出素子36からの角度検出信号によって回転角度を、各々検出することによって、使用する検出歯車32が一つですみ、全体の小型化が図れると共に、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が可能な回転角度・トルク検出装置を得ることができるものである。
【0070】
また、第三の磁石35に代えて、第三の磁気検出素子36Aが第一の磁石22Aの磁気を検出することによって、第三の磁石35が不要となり、構成部品数を減らし簡易な構成で、確実な回転角度と回転トルクの検出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明による回転角度・トルク検出装置は、全体の小型化が図れ、高精度で確実な回転角度と回転トルクの検出が可能なものを実現することができ、主に自動車のステアリングの回転角度や回転トルクの検出用として有用である。
【符号の説明】
【0072】
21 第一の回転体
22、22A、22B、22C 第一の磁石
23 第二の回転体
24 第一の磁性体
25 第二の磁性体
26 第三の磁性体
27 配線基板
28 第一の磁気検出素子
29 制御手段
30 連結体
31 回転歯車
32 検出歯車
33 第二の磁石
34 第二の磁気検出素子
35 第三の磁石
36、36A 第三の磁気検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングに連動して回転する第一の回転体と、この第一の回転体に連結体を介して固着された第二の回転体と、上記第一の回転体に装着された第一の磁石と、この第一の磁石の磁気を検出する第一の磁気検出素子と、上記第一の回転体または第二の回転体に形成された回転歯車と、この回転歯車に噛合した検出歯車と、この検出歯車に装着された第二の磁石と、この第二の磁石の磁気を検出する第二の磁気検出素子と、上記第一の磁気検出素子と第二の磁気検出素子に接続された制御手段からなり、上記第一の回転体に第三の磁石を装着すると共に、この第三の磁石の磁気を検出する第三の磁気検出素子を設け、上記制御手段が上記第一の磁気検出素子からのトルク検出信号によって回転トルクを、上記第二の磁気検出素子と第三の磁気検出素子からの角度検出信号によって回転角度を検出する回転角度・トルク検出装置。
【請求項2】
第三の磁石に代えて、第三の磁気検出素子が第一の磁石の磁気を検出する請求項1記載の回転角度・トルク検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−2519(P2012−2519A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134765(P2010−134765)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】