説明

回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置

【課題】ギヤのバックラッシュを低減できるとともに、回転角度の検出精度が低下しない回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】バネ12は付勢手段として、その一端がケース9に弾接して、ケース9がセンサハウジング10の方向に付勢される。このケース9を介したバネ12の付勢力によって、ケース9に装着された第一の検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4をメインギヤ2の方向へ押圧している。さらに、ケース9を取付けるセンサハウジング10には、バネ12を挟み込んだ形で突出した押さえ板13が設けられ、この押さえ板13にバネ12の他端が弾接してバネ12を保持する。バネ12は両端をケース9及び押さえ板13に設けられた座グリ穴14,15により保持され、バネ12の付勢力が一定の力になるように保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のステアリングホイールに用いられる回転角度検出装置においては、ステアリングのシャフトに係合されたメインギヤとメインギヤに噛合する検出装置のケースに装着された検出ギヤで構成される。ステアリングホイールを操舵するとメインギヤが回転し、これに連動して検出ギヤが回転するため、検出ギヤに装着され検出ギヤに連動して回転する磁石と対向してケースに固定された磁気式角度センサが磁界の方向を検知し、ステアリングホイールの回転角度を検出している。ここで磁石と磁気式角度センサの中心位置は、同じとなるように配置されている。
【0003】
しかしながら、従来の回転角度検出装置においては、温度変化によって生じるメインギヤと検出ギヤの軸間距離のばらつきや、メインギヤと検出ギヤの組付け誤差、あるいはメインギヤとシャフトとの取付け時のガタ等によってバックラッシュが発生する。そして、右切り左切りの操舵を繰り返した場合、操舵方向が逆になったときにバックラッシュにより一時その位置を保ち、それから逆方向に動き出すため回転角度の検出誤差(いわゆるヒステリシス誤差)が大きくなり角度精度が悪化する場合があった。このギヤのバックラッシュを低減し、誤差がなく高精度な回転角度の検出を可能とする回転角度検出装置としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−192609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の回転角度検出装置において、検出ギヤはバネによってメインギヤ方向に押圧され移動するため、メインギヤと検出ギヤのバックラッシュは低減するが、磁気式角度センサはケースに固定されているため、この磁気式角度センサと検出ギヤに取付けられた磁石との中心位置がずれてしまい、回転角度の検出誤差が発生する。
【0006】
このため、メインギヤと検出ギヤのバックラッシュの増加を抑制するとともに、磁石と磁気式角度センサの中心位置がずれることなく、回転角度の検出精度が低下しない回転角度検出装置を得ることが課題となっている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ギヤのバックラッシュを低減できるとともに、回転角度の検出精度が低下しない回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転体に連動して回転するメインギヤと、前記メインギヤに連動して回転する検出ギヤと、前記検出ギヤに設けた被検出部材と、前記検出ギヤの回転を検出する検出手段と、前記検出ギヤを回転可能に支持するとともに、前記検出手段を配置するケースと、前記回転体を挿通するとともに、前記ケースを取付けるセンサハウジングとを有し、前記ケースは、前記メインギヤと前記検出ギヤとが連動可能な状態で前記センサハウジングに対し相対移動可能に前記センサハウジングに取付けられ、前記ケースを前記メインギヤ方向へ付勢する付勢手段を設けたことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、検出ギヤと検出手段を支持するケースをメインギヤ方向に付勢することによりメインギヤと検出ギヤのバックラッシュを抑制できるとともに、検出手段と被検出部材との中心位置のずれをなくすことができる。これにより、検出誤差がなく高精度な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記付勢手段は、前記センサハウジングと前記ケースとの間に設けたことを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、付勢手段をセンサハウジングとケースとの間に設けることにより付勢手段の付勢力を一定に保つことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、電動パワーステアリング装置において、請求項1または請求項2に記載の回転角度検出装置を備えてなることをその要旨とする。
請求項1または請求項2に記載の回転角度検出装置によれば、その検出回転角の高精度化が図られるので、車両の操舵フィーリングを向上した電動パワーステアリング装置にできる。
【発明の効果】
【0013】
ギヤのバックラッシュを低減できるとともに、回転角度の検出精度が低下しない回転角度検出装置および電動パワーステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る回転角度検出装置の平面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】(a)本実施の形態に係る回転角度検出装置の概略構成を説明する図、(b)図3(a)のB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る回転角度検出装置の平面図、図2は、図1の矢印A方向から見た断面図であり、図3(a),(b)は、概略構成を説明する図である。
【0016】
図3(a)は回転角度検出装置の概略構成を表わす平面図であり、メインギヤ2は外周に平歯車が形成された絶縁樹脂製の回転体で、中央部に挿通されるシャフト11と係合する。そして、シャフト11の回転角度を検出する第一の検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4の検出体がある。
【0017】
また、第一の検出ギヤ3は絶縁樹脂製のケース9に回転可能に支持された絶縁樹脂製の第一の検出体で、この外周の平歯車がメインギヤ2の平歯車に噛合するとともに、この第一の検出ギヤ3の中央には、磁石5(被検出部材)がインサート成形等により装着されている。
【0018】
さらに、第二の検出ギヤ4はケース9に回転可能に支持された絶縁樹脂製の第二の検出体で、外周には第一の検出ギヤ3の平歯車とは歯数の異なる平歯車が設けられ、この第二の検出ギヤ4の平歯車が第一の検出ギヤ3の平歯車に噛合するとともに、第二の検出ギヤ4の中央には磁石6が装着されている。
【0019】
そして、第一の検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4の上方にほぼ平行に配置された回路基板(図示せず)に第一の検出ギヤ3の磁石5との対向面にはホールIC(磁界検出素子)等の磁気式角度センサ7(検出手段)が(図3(b)参照)、第二の検出ギヤ4の磁石6との対向面には磁気式角度センサ8(図示しないが図3(b)と同様)が各々装着されている。
【0020】
このように形成された、磁石5とこれに対向した磁気式角度センサ7、及び磁石6とこれに対向した磁気式角度センサ8は、磁石5と6が装着された第一検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4と、磁気式角度センサ7と8が装着された上記回路基板とともにケース9に配置される。
【0021】
さらに、ケース9はアルミダイカスト材からなるセンサハウジング10に当接して取付けられる。また、シャフト11はセンサハウジング10に挿通し、回転可能に装着される。
【0022】
以上の構成において、ステアリングホイール(図示せず)を操舵すると、シャフト11の回転に連動してメインギヤ2が回転し、このメインギヤ2の外周の平歯車に第一の検出ギヤ3の平歯車が噛合し、更に第一の検出ギヤ3の平歯車に第二の検出ギヤ4の平歯車が噛合して連動して回転する。
【0023】
そして、第一の検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4の中央に装着された磁石5と6も回転し、この磁石5と6の磁界方向の変化を磁気式角度センサ7と8が各々検出して、検出信号としてPWM信号等がマイコン等の電子部品で形成される外部の制御手段(図示せず)へ出力され、メインギヤ2の回転角度信号に変換される。
【0024】
なお、この時、第一の検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4は、平歯車の歯数が異なり回転速度が異なるため、第一及び第二の検出手段からの各々の検出信号は、周期や位相が異なる検出信号となる。
【0025】
次に、本実施形態では図1及び図2に示すように、バネ12は付勢手段としての鋼又は銅合金製のバネで、やや押付けられた状態でその一端がケース9に弾接して、ケース9がセンサハウジング10の方向に付勢される。そして、このケース9を介したバネ12の付勢力によって、ケース9に装着された第一の検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4をメインギヤ2の方向へ押圧している。このとき、ケース9に設けた突起部がセンサハウジング10の取付け穴に係合することにより、ケース9がシャフト11の回転軸に対し上下及び左右方向へ移動することが抑制される。
【0026】
また、ケース9を取付けるセンサハウジング10には、バネ12を挟み込んだ形で突出した樹脂又は金属製の押さえ板13が設けられ、この押さえ板13にバネ12の他端が弾接して、バネ12を保持する。バネ12は両端をケース9及び押さえ板13に設けられた座グリ穴14,15により保持され、バネ12の付勢力が一定の力になるように保持されて、回転角度検出装置1が構成されている。
【0027】
このように本実施の形態では、ケース9をセンサハウジング10へ押圧する付勢手段を設けるとともに、センサハウジング10にこの付勢手段を保持するストッパ手段を形成する。即ち、第一の検出ギヤ3及び第二の検出ギヤ4は、バネ12の付勢力によってメインギヤ2に押圧付勢されるとともに、押さえ板13によってバネ12の付勢力を一定に保つことができる。
【0028】
さらに、磁気式角度センサ7と8は、ケース9に装着された対向する磁石5と6とともにメインギヤ2方向へ移動するため、磁石5と磁気式角度センサ7、及び磁石6と磁気式角度センサ8の各々の中心位置がずれることを防止できる。その結果、メインギヤ2と第一の検出ギヤ3のバックラッシュを抑制できるとともに、誤差がなく高精度な回転角度の検出が可能となる。
【0029】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
上記実施形態では、センサハウジングに取付けた押さえ板とケースとの間に設けた押付けバネによってケースをメインギヤ方向へ押圧する構成について説明したが、センサハウジングとケースとの間に引っ張りバネ等よりなる弾性体を張架し、ケースをメインギヤ方向へ引張り付勢した構成としても本発明の実施は可能である。
【0030】
上記実施形態では、メインギヤに第一の検出ギヤを噛合させるとともに、この第一の検出ギヤに第二の検出ギヤを噛合させる構成としたが、1つのメインギヤに対し1つの検出ギヤで構成しても本発明の実施は可能である。また、メインギヤに噛合する2つ以上の検出ギヤで構成されてもよい。
【0031】
本実施形態では、車両のステアリングホイールに適用した例を示したが、工作機械等に具体化してもよい。
【0032】
本実施形態では、付勢手段としてコイルバネを用いた例を示したが、板バネやトーションバネを用いても機能の実現は可能である。また、バネの代わりにゴム、樹脂等の弾性部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:回転角度検出装置、2:メインギヤ、3:第一の検出ギヤ、4:第二の検出ギヤ、
5,6:磁石、7,8:磁気式角度センサ、9:ケース、10:センサハウジング、
11:シャフト、12:バネ、13:押さえ板、14,15:座グリ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に連動して回転するメインギヤと、
前記メインギヤに連動して回転する検出ギヤと、
前記検出ギヤに設けた被検出部材と、
前記検出ギヤの回転を検出する検出手段と、
前記検出ギヤを回転可能に支持するとともに、前記検出手段を配置するケースと、
前記回転体を挿通するとともに、前記ケースを取付けるセンサハウジングと、を有し、
前記ケースは、前記メインギヤと前記検出ギヤとが連動可能な状態で前記センサハウジングに対し相対移動可能に前記センサハウジングに取付けられ、前記ケースを前記メインギヤ方向へ付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記付勢手段は、前記センサハウジングと前記ケースとの間に設けたことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の回転角度検出装置を備えてなる電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122982(P2012−122982A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67595(P2011−67595)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】