説明

回転角調整機構とそれを備えた電気機器

【課題】電気機器の回転角を容易にかつ適切に調整可能であり、更に調整後外部応力等により容易に角度が変わらない回転角調整機構を提供すること。
【解決手段】固定側部材と被調整側部材との間に挟みこまれる部材として、角度a°毎に等間隔に歯を形成した固定側歯車と角度b°毎に等間隔に歯を形成した被調整側歯車とを中心軸を同一として回転軸方向に重ね合わせて形成した歯車状アタッチメントを設け、前記固定側部材には、前記固定側歯車が複数通りに嵌合可能な固定側歯車嵌合溝を形成し、前記被調整側部材の回転軸部分には、前記被調整側歯車が複数通りに嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝を形成し、前記固定側歯車を固定側歯車嵌合溝に嵌合する角度と前記被調整側歯車を被調整側歯車嵌合溝に嵌合する角度とを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器等において、設置の際の回転角度を調整した上で固定し、固定後はその後の回転を防止するという回転角調整機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器等において、設置の際の回転角度を調整した上で固定し、固定後はその後の回転を防止したいという要求がある。例えば、車載カメラの設置などが挙げられる。車載カメラの回転角の調整については、例えば、カメラ本体の側面にネジ穴設け、そこに車両への取付金具(ブラケット)をネジ止めし、適切な垂直角に調整してからネジをカメラが回転しない程度まで締め付けるという方法が一般的であり広く用いられている。締め付けに関しては、ネジが左右1箇所ずつの場合と、より強固/安定して取り付けるために左右2個所にある場合等がある。このような回転角調整を採用した車載カメラの文献として、例えば、特許文献1、2が挙げられる。特許文献1の図2、図8等、及び、特許文献2の図1、図2等において、従来の回転角調整機構が開示されている。
【特許文献1】特開平08−119036号公報
【特許文献2】特開平10−71890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記の回転角度の調整及び固定方法では以下に挙げる問題がある。
(1)垂直角度の調整困難
車載カメラのうち特に後方撮像カメラにおいては撮像画面の一番下部に車のバンパーが位置することが望まれるが、カメラが車外にあるのに対し、カメラ映像を映しだすモニタは一般的に運転席近傍に設けられており、モニタ映像を見ながらの調整は事実上不可能である。よって調整用のモニタ及びカメラ用電源を別途カメラ近傍に設置し、それと仮接続し調整を行った後、運転席近傍のモニタに接続し直すことになるが、調整専用の設備を用意しなければならないため非常に手間がかかる。
またこれを解決するために、車種毎のカメラ取付位置を予め規定することで、最適な回転角が一義的に決まるため、角度測定治具等を用い回転角の調整を行う方法があるが、専用の治具を用意し使用する手間がかかり、その使用方法、角度の読み取り誤差などを起因とし最適な角度にならない問題がある。
【0004】
(2)意図しない回転による最適撮像範囲の逸脱
カメラ本体を横からネジ止めにて角度調整する方法であるため、回転方向への固定力が弱く、長期間に渡る振動や、例えばトランクを開け閉めする際にカメラを意図せず応力を加えてしまった場合等、カメラの垂直方向にネジを中心に回転してしまい、最適な撮像範囲から逸脱してしまう問題がある。
【0005】
ここで、前記(1)及び(2)の問題を解決するための一手法として、図6に示す構造が先ず考えられる。歯車状のアタッチメント19をカメラ本体20に嵌合させ、アタッチメント19の中央部にある四角形状の凸部をカメラ取り付け金具の四角形状の孔部に挿し込む。このとき、歯車を例えば10°刻みに形成しておけば、設定したいカメラの回転角に合わせ、歯車状アタッチメント19をカメラ本体20にはめ込めば、所望の回転角が10°単位で治具等なしに得られ、かつ不用意な回転も防止できる。
しかし、この方法では回転角の設定を細かくしたい場合は、それだけ歯車状アタッチメントの歯数が多くせざるを得ず、これに伴い回転応力に対する耐性が弱くなってしまう欠点が残る。さらに、カメラ本体20ないしアタッチメント19が樹脂材の場合には耐性の劣化は顕著である。
前記(1)、(2)および上記の問題は車載カメラの垂直角調整に限らず、回転角調整と固定が必要な電気機器に共通して言える問題点である。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、電気機器の回転角を容易にかつ適切に調整可能であり、更に調整後外部応力等により容易に角度が変わらない回転角調整機構を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、回転軸を基準として回転させ調整する対象である被調整側部材と、この被調整側部材の回転軸を固定するための固定側部材とからなり、固定側部材に対する被調整側部材の回転角度を調整する回転角調整機構において、固定側部材と被調整側部材との間に、角度a°毎に等間隔に歯を形成した固定側歯車と角度b°毎に等間隔に歯を形成した被調整側歯車とを中心軸を同一として回転軸方向に重ね合わせて形成した歯車状アタッチメントを設け、固定側部材には、固定側歯車がa°毎に嵌合可能な固定側歯車嵌合溝を形成し、被調整側部材の回転軸部分には、被調整側歯車がb°毎に嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝を形成し、固定側歯車を固定側歯車嵌合溝に嵌合する角度と被調整側歯車を被調整側歯車嵌合溝に嵌合する角度との組合せで、固定側部材に対する被調整側部材の回転角度を調整することを特徴とする回転角調整機構である。
【0008】
本発明の請求項2は、請求項1に加えて、固定側歯車は360°/a°=整数となるようにa°を設定して形成し、被調整側歯車は360°/b°=整数となるようにb°を設定して形成し、これらに対応させて、360°/a°通りに嵌合可能な固定側歯車嵌合溝、及び、360°/b°通りに嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝を形成してなる回転角調整機構であって、a°、b°の無次元数a、bの最大公約数xを最小調整角x°として調整可能としたことを特徴とする回転角調整機構である。
【0009】
本発明の請求項3は、請求項2に加えて、最小調整角をx°とした場合に、x°/m(mは正の偶数)の奇数倍、またはx°/n(nは正の奇数)の偶数倍の角度だけ互いに角度を相違させたm個またはn個の固定側歯車嵌合溝を固定側部材に設けたことを特徴とする回転角調整機構である。
【0010】
本発明の請求項4は、請求項1乃至3の何れかに記載された回転角調整機構を備えた電気機器である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、固定側部材と被調整側部材との間に、角度a°毎に等間隔に歯を形成した固定側歯車と角度b°毎に等間隔に歯を形成した被調整側歯車とを中心軸を同一として回転軸方向に重ね合わせて形成した歯車状アタッチメントを設け、固定側部材には、固定側歯車がa°毎に嵌合可能な固定側歯車嵌合溝を形成し、被調整側部材の回転軸部分には、被調整側歯車がb°毎に嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝を形成し、固定側歯車を固定側歯車嵌合溝に嵌合する角度と被調整側歯車を被調整側歯車嵌合溝に嵌合する角度との組合せで、固定側部材に対する被調整側部材の回転角度を調整することで、歯車の歯数を少なく構成して回転応力に対する耐性を強固にしながらも、小さな調整角度単位で角度調整可能となる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、固定側歯車は360°/a°=整数となるようにa°を設定して形成し、被調整側歯車は360°/b°=整数となるようにb°を設定して形成し、これらに対応させて、360°/a°通りに嵌合可能な固定側歯車嵌合溝、及び、360°/b°通りに嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝を形成したので、a°、b°の2つの嵌合の角度の組合せでの調整が可能となり、このときa°、b°の無次元数a、bの最大公約数xを最小調整角x°とする。これにより所望の最小調整角x°を得るために必要なa°とb°を容易に導きだすことができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、前述の構造により得られる最小調整角をx°とした場合に、x°/m(mは正の偶数)の奇数倍、またはx°/n(nは正の奇数)の偶数倍の角度だけ互いに角度を相違させたm個またはn個の固定側歯車嵌合溝を固定側部材に設けたので、実質的に最小調整角x°のnまたはm分の1を新たな最小調整単位として角度調整が可能となる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、本発明による回転角調整機構を備えた電気機器としたので、回転角調整及び固定が必要な電気機器において上述の効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による回転角調整機構10を構成する固定側部材11、被調整側部材12、及び、歯車状アタッチメント13を表した斜視図である。
【図2】歯車状アタッチメント13の構成を表した正面図である。
【図3】a=90°、b=40°で構成した歯車状アタッチメント13を用いた場合において、調整角度0°〜350°を得るための最小のn1及びn2の組合せを表した表図である。
【図4】aとbの組合せとこれによって得られる最小角x°とを様々な角度について表した表図である。
【図5】a=90°、b=40°で構成した歯車状アタッチメント13を用いた場合において、調整角度0°〜350°を得るための具体的なn1及びn2の組合せを表したマニュアル図である。
【図6】回転角調整機構の一手法を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による回転角調整機構は、回転軸を基準として回転させ調整する対象である被調整側部材と、この被調整側部材の回転軸を固定するための固定側部材とからなり、固定側部材に対する被調整側部材の回転角度を調整する回転角調整機構において、固定側部材と被調整側部材との間に、角度a°毎に等間隔に歯を形成した固定側歯車と角度b°毎に等間隔に歯を形成した被調整側歯車とを中心軸を同一として回転軸方向に重ね合わせて形成した歯車状アタッチメントを設け、固定側部材には、固定側歯車がa°毎に嵌合可能な固定側歯車嵌合溝を形成し、被調整側部材の回転軸部分には、被調整側歯車がb°毎に嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝を形成し、固定側歯車を固定側歯車嵌合溝に嵌合する角度と被調整側歯車を被調整側歯車嵌合溝に嵌合する角度との組合せで、固定側部材に対する被調整側部材の回転角度を調整することを特徴とするものである。以下、詳細に説明を行う。
【実施例1】
【0017】
本発明による回転角調整機構10の実施の形態について図面に基づいて説明を行う。なお、回転角調整機構10を採用した一例として車載カメラの例を用いて説明を行う。図1において、固定側部材11は、車両側に固定的に取り付ける被調整部材12を挟みこむ形状の取付金具であり、被調整側部材12は、角度を調整した上で固定部材11に取り付けられるカメラ部材であり、これら固定側部材11と被調整側部材12との間を、歯車状アタッチメント13によって所定の角度間隔で角度調整自在に接続してなることを特徴とするものである。
なお、固定側部材11が1部品で被調整部材12を挟みこむ形状からなるように構成したのはあくまで一例であり、2部材によって被調整側部材12を挟み込むような構成も考えられ、適宜選択、設計が可能なものである。
【0018】
歯車状アタッチメント13は、固定側部材11側に嵌合する固定側歯車14と、被調整側部材12側に嵌合する被調整側歯車15とが、中心軸を同一として軸方向に重ね合わせて形成されてなるものであり、固定側歯車14と被調整側歯車15との回転方向における位置関係が変化しない構造としている。固定側部材11には、固定側歯車14が嵌合する固定側歯車嵌合溝16が形成してあり、被調整側部材12には、被調整側歯車15が嵌合する被調整側歯車嵌合溝17が形成してあり、後述する手法により角度調整して固定側部材11と被調整側部材12とが歯車状アタッチメント13によって接続された状態で、固定ネジ18によって完全に固定する構成となっている。
なお、図1においては、後述する理由により、固定側歯車嵌合溝16として16aと16bの2つを形成してあるが、これは一例であり、1つのみを形成する場合であってもよい。以降の実施例において、単に固定側歯車嵌合溝16と表現する場合には、16aと16bを包含した概念として用いるものとする。
また、図1においては、被調整側歯車嵌合溝17の一部が開口した状態で形成してあるが、これは全体としての省スペース化という本発明の目的とは異なる視点から行っているものであり、被調整側歯車嵌合溝17は、被調整側歯車15が全周にわたって完全に嵌合するように形成する場合も含まれる。
【0019】
歯車状アタッチメント13の構成について更に詳しく説明を行う。本発明における歯車状アタッチメント13の特徴は、図2に示すように、固定側歯車14はa°毎に等間隔で歯を形成し、被調整側歯車15はb°毎に等間隔で歯を形成し、それらを中心軸を同一として軸方向に重ねあわせて形成する。また、これらに対応させて固定側歯車嵌合溝16及び被調整側歯車嵌合溝17を形成することで、a、bのいずれよりも小さい角度x°で角度調整可能としたことである。具体的には、図2では、a=90°、b=40°で構成することによって、10°毎に角度調整可能としている。
なお、図2においては、a=90°毎に歯を形成した固定側歯車14の例として正方形を採用しているが、多角形も歯車の一種であり、本発明において歯車という場合には、多角形形状とすることも含まれるものとする。ただし、1つあたりの角度が小さくなればなるほど多角形は円形に近づくため、回転応力に対して弱くなるおそれがあり、そのような場合には、凹凸によって形成した歯車を採用する方が回転応力に対して強くなるため望ましい。
【0020】
次に、本発明による回転角調整機構10を用いた具体的な角度調整の手法について説明を行う。本発明は、回転角調整のために、固定側部材11に対しa°毎に回転させた上で嵌合(歯合)させるパターンと、被調整側部材12に対しb°毎に回転させた上で嵌合させるパターンとの組合せによって、最終的な被調整側部材12の設置角度を調整するものである。
具体的な例として、固定側部材11を向かって左側に置き、被調整側部材12を右側に置いて側面から観察した場合を基準として、図2に示したa=90°、b=40°で構成した歯車状アタッチメント13を用いた場合について説明する。40°刻みの被調整側歯車15を被調整側部材12の被調整側歯車嵌合溝17に対して反時計回りに2刻み分回転させて嵌め込み(この操作でカメラ本体は時計回りに80°回転)、更に固定側歯車14を固定側部材11の固定側歯車嵌合溝16に対して反時計回りに1角分(1刻み分)だけ回転させて嵌め込む(この操作でカメラ本体は反時計回りに90°回転)と、最終的に、被調整側部材12は上記操作前の状態と比較し10°だけ反時計回りに回転し固定されるということとなる。
【0021】
これをさらに一般化して説明すると、固定側歯車14を固定側部材11の固定側歯車嵌合溝16に対してa°毎にn1回(整数であり、正の場合は反時計回り、負の場合は時計回り)だけ回転させ、被調整側歯車15を被調整側部材12の被調整側歯車嵌合溝17に対してb°毎にn2回(整数であり、正の場合は時計回り、負の場合は反時計回り)だけ回転させることで、最終的な被調整側部材12の調整角度として、最小調整角度(最小角)x°の整数倍の調整角度が得られるというものである。
図3は、a=90°、b=40°で構成した歯車状アタッチメント13を用いた場合において、調整角度0°〜350°を得るための最小のn1及びn2の組合せを表したものである。この図3からも分かるように、x=10°を最小単位として、10°の整数倍の調整角を得ることが可能となっている。
【0022】
ここまでは、a=90°、b=40°で構成した歯車状アタッチメント13を例に説明してきたが、a°とb°の設定については様々なものが想定される。図4に示すのは、a°とb°の組合せとこれによって得られる最小角x°を様々な角度について表したものである。この図4におけるa°、b°及びx°の関係から考察すると分かるように、a°、b°の無次元数a、bの最大公約数xを調整角x°としたものが最小角であることが分かる。
このような関係性を踏まえた上で、a、bの角度がある程度大きくて歯車の歯数を少なくして回転応力に強い構成とすることができ、かつ、調整する角度の最小角x°が小さいことが理想的なa、bの組合せということになる。例えば、a=45°、b=40°の場合には最小角x=5°となり、比較的歯数の少ない構成において5°単位で角度調整可能となるので、好ましい組合せといえる。
【0023】
次に、固定側部材11に設けられた固定側歯車14が嵌合する固定側歯車嵌合溝16について説明する。図1において、固定側歯車嵌合溝16aは、a=90°、b=40°で構成した歯車状アタッチメント13の正方形で形成した固定側歯車14が嵌まる溝が3連結された構成となっている。これは、車載カメラを搭載する車両の種類に応じて若干の位置調整を可能とするための構成であって、必ずしも複数個の嵌合溝を設ける必要があるわけではなく1つのみ設ける構成であってもよい。固定側歯車嵌合溝16bについても同様の理由により固定側歯車14を嵌合する溝が3連結されている。
ところで、この固定側歯車嵌合溝16aと固定側歯車嵌合溝16bとでは、溝の形成角度が互いに45°異ならせてある。これにより、固定側歯車嵌合溝16aを用いた場合に得られる調整角度は10°、20°、・・・、350°であるのに対して、固定側歯車嵌合溝16bを用いた場合に得られる調整角度は5°、15°、・・・、355°となる。すなわち、a=90°、b=40°で構成した歯車状アタッチメント13の最小調整角度は10°であるが、固定側歯車嵌合溝16aと固定側歯車嵌合溝16bとの設置位置を45°ずらすことによって、10°の半分の5°単位の調整を固定側歯車嵌合溝16bに嵌め込むことで実現することが出来る(45°であることに意味はなく、結果として10°の倍数に現れない5°ずれた角度調整が可能となることに意味がある)。
これを一般化すると、歯車状アタッチメント13を構成するa°、b°の角度によって定まる最小角x°の半分の角度だけ互いに角度の相違した2つの固定側歯車嵌合溝16aと固定側歯車嵌合溝16bとを設けることによって、最小角の半分の角度x°/2を最小調整単位として角度調整が出来るようになるということである。(2つの固定側歯車嵌合溝16aと固定側歯車嵌合溝16bとにおいて、x°/2の奇数倍の角度だけ互いに角度を相違させた場合も同様である。)
上記をさらに拡張すると、角度の相違した固定側歯車嵌合溝はm個(mは正の偶数)またはn個(nは正の奇数)設けてもよい。この場合、個数m個の場合はx°/mの奇数倍、個数nの場合はx°/nの偶数倍の角度だけ互いに角度を相違させて設けることで、x°/mまたはx°/nを新たな最小調整単位として角度調整ができるようになる。
【0024】
以上のような構成において、実際に角度調整を行う際には、得たい調整角度に応じて歯車状アタッチメント13の固定側歯車14の固定側歯車嵌合溝16に対する嵌合位置と、被調整側歯車15の被調整側歯車嵌合溝17に対する嵌合位置とを決定して角度調整を行うことになるが、図3に示すように、調整する角度とそれぞれの歯車の回転回数であるn1及びn2との関係は複雑である。よって、図3にしめすような回転数を示したマニュアルを用いて角度調整を行うことになる。
さらに具体的には、例えば、図2の歯車状アタッチメント13上の1点に何らかの目印を設けておき、かつ、固定側歯車嵌合溝16及び被調整側歯車嵌合溝17には歯車の嵌合位置に反時計回り(反対側は時計回り)に番号を付しておき、調整角度ごとに「固定側歯車嵌合溝16に対しては目印が○番の溝に位置するように嵌合し、被調整側歯車嵌合溝17に対しては目印が△番の溝に位置するように嵌合する」といった案内を記載しておくなどのマニュアルが考えられる。
具体的なマニュアルの一例としては、例えば、図5に示すものが挙げられる。固定側歯車14(内歯)の取付け位置を4通りで表し、被調整側歯車15(外歯)の取付け位置を9通りで表して、これらの組合せで0°〜350°まで10°毎の36通りの角度調整について、図5のように図で示すようなマニュアルがユーザにとって使い易いものといえる。
【0025】
以上のように、本発明の回転角調整機構10は、歯車状アタッチメント13において、固定側歯車14の歯はa°毎に等間隔(360°/a°=整数となるようにa°を設定)で形成し、被調整側歯車15の歯はb°毎に等間隔(360°/b°=整数となるようにb°を設定)で形成し、これらに対応させて、360°/a°通りに嵌合可能な固定側歯車嵌合溝16と360°/b°通りに嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝17を形成することで、a°、b°の無次元数a、bの最大公約数xを最小調整角x°として角度調整可能としたものである。これにより、歯車の歯数を少なく構成して回転応力に対する耐性を強固にしながらも、小さな調整角度単位で角度調整可能となる。
【0026】
前記実施例においては、図2に示すように、歯車状アタッチメント13の被調整側歯車15は全周に等間隔に歯を設けて構成しているが、被調整側歯車嵌合溝17が全周にわたって形成されている場合には、回転応力に対する耐性が条件を満たす限りにおいて、被調整側歯車15の歯数は少なく構成することが可能である。
また、図2においては、固定側歯車14は正方形で形成しており、また、固定側歯車嵌合溝16は固定側歯車14が嵌まる溝が3連結された構成となっているため、正方形の歯車の歯数を省略することは許されないが、固定側歯車14についても正多角形ではなく歯車として形成し、固定側歯車嵌合溝16も同歯車の歯数に対応した凹部が全周にわたって形成されたものを1つだけ設ける構成である場合には、回転応力に対する耐性が条件を満たす限りにおいて、固定側歯車14の歯数は少なく構成することが可能である。
【0027】
前記実施例では、1回転(360°)の全周に等間隔に歯を設けた歯車を用い、この歯車に対応して全周に歯数と同数の凹部のある嵌合溝を形成した場合について説明した。しかし、例えば、可動範囲が0°〜90°等の限定された可動範囲に対応するような場合には、歯車状アタッチメント13の被調整側歯車15の歯と被調整側部材12側にある被調整側歯車嵌合溝17は、必ずしも全周に配置しなくとも対応できる場合があり、このような場合には、可動範囲を達成できる回転数n2分の歯と0°及び90°のときにその歯が位置する凹部を備えるだけでも同様な機能を実現できる。
【0028】
前記実施例においては、360°/a°=整数となるようにa°を設定し、360°/b°=整数となるようにb°を設定した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記式は歯を全周に配置した場合の条件であり、前述の様に全周に歯を配置しない場合はこの制約を受けずともよい。
【0029】
前記実施例においては、車載カメラの回転角調整機構(垂直角)として説明したが、本発明はこれに限るものではなく、様々な電気機器の回転角(水平、垂直、鉛直)の調整に幅広く利用が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10…回転角調整機構、11…固定側部材(取付金具)、12…被調整側部材(カメラ部材)、13…歯車状アタッチメント、14…固定側歯車、15…被調整側歯車、16…固定側歯車嵌合溝、17…被調整側歯車嵌合溝、18…固定ネジ、19…アタッチメント、20…カメラ本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する被調整側部材と、該被調整側部材の回転軸を固定するための固定側部材とからなり、該固定側部材に対する前記被調整側部材の回転角度を調整する回転角調整機構において、前記固定側部材と前記被調整側部材との間に、角度a°毎に等間隔に歯を形成した固定側歯車と角度b°毎に等間隔に歯を形成した被調整側歯車とを中心軸を同一として回転軸方向に重ね合わせて形成した歯車状アタッチメントを設け、前記固定側部材には、前記固定側歯車がa°毎に嵌合可能な固定側歯車嵌合溝を形成し、前記被調整側部材の回転軸部分には、前記被調整側歯車がb°毎に嵌合可能な被調整側歯車嵌合溝を形成したことを特徴とする回転角調整機構。
【請求項2】
前記固定側歯車は360°/a°=整数となるようにa°を設定して形成し、前記調整側歯車は360°/b°=整数となるようにb°を設定して形成し、これらに対応させて、360°/a°通りに嵌合可能な前記固定側歯車嵌合溝、及び、360°/b°通りに嵌合可能な前記被調整側歯車嵌合溝を形成してなる回転角調整機構であって、a°、b°の無次元数a、bの最大公約数xを最小調整角x°として調整可能としたことを特徴とする請求項1記載の回転角調整機構。
【請求項3】
最小調整角をx°とした場合に、x°/m(mは正の偶数)の奇数倍、またはx°/n(nは正の奇数)の偶数倍の角度だけ互いに角度を相違させたm個またはn個の前記固定側歯車嵌合溝を前記固定側部材に設けたことを特徴とする請求項2記載の回転角調整機構。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された回転角調整機構を備えた電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116315(P2012−116315A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267409(P2010−267409)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】