説明

回転軸の連結構造

【課題】筒状体と挿入体との相対移動を規制する雄ねじ部材が緩むことを防止することができるようにすること。
【解決手段】連結構造23は、一対の回転軸15,21の間に延びる筒状体24と、この筒状体24の両端から挿入される一対の挿入体25と、当該挿入体25と回転軸15,21とを連結する一対の連結部26,26と、筒状体24の外周側からねじ込むことで当該筒状体24と挿入体25との相対移動を規制する雄ねじ部材28とを備え、各回転軸15,21を連結して一方の回転軸21のトルクを他方の回転軸15に伝達する。雄ねじ部材28の先端側には、内部に穴29Aを有する受け部材29が挿通されている。雄ねじ部材28に受け部材29を挿通する前の穴29Aの内径D1は、雄ねじ部材28の外径D2より小さく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の連結構造に係り、更に詳しくは、筒状体を介して一方の回転軸のトルクを他方の回転軸に伝達することができる回転軸の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バスドラムを演奏するためにドラム用のフットペダルが広く利用されている。フットペダルは、フッドボードを踏み込むことでドラムビータを回転してバスドラムの打面を打撃できるようになっており、フットボード及びドラムビータは、回転軸を介して連結されている。ここで、例えば、特許文献1に示されるように、単一のバスドラムに対して二つのドラムビータを左右両足で操作可能な二連式のフットペダルが知られている。かかる二連式のフットペダルでは、バスドラムに近い方のフットペダルが二つのドラムビータを備え、一方のドラムビータを回転させる回転軸が、バスドラムから離れた方のフットペダルの回転軸に連結構造を介して連結される。この連結構造は、各回転軸の間に延びる筒状体と、各回転軸に連結されて筒状体の両端に挿入される挿入体と、筒状体の外周側からねじ込むことで当該筒状体内面に挿入体を押し付けて固定する雄ねじ部材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5994635号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、演奏時において、前記雄ねじ部材が緩み易くなり、ひいては、筒状体内で挿入体が空回りしてフッドボードを操作してもドラムビータを回転できなくなるという不都合を招来する。これは、同文献では、演奏中における雄ねじ部材の緩み止めを図る構造が何ら施されていないことに起因する。
ここで、同文献では、弾性座板を設けて雄ねじ部材の空回り防止を図っている。ところが、この弾性部材は、持ち運び等により挿入体から分離された筒状体に残留する雄ねじ部材の空回りを防止するだけのものであり、演奏中における雄ねじ部材の緩み止めに寄与するものではない。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、前述した不都合に基づいて案出されたものであり、その目的は、演奏中等に筒状体と挿入体との相対移動を規制する雄ねじ部材が緩むことを防止することができる回転軸の連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、バスドラムのフットペダルを連結するための一対の回転軸を連結して一方の回転軸のトルクを他方の回転軸に伝達するための回転軸の連結構造において、
前記各回転軸の間に延びる筒状体と、この筒状体の両端から挿入される一対の挿入体と、当該挿入体と回転軸とを連結する一対の連結部と、前記筒状体の外周側からねじ込むことで当該筒状体と挿入体との相対移動を規制する雄ねじ部材とを備え、
前記雄ねじ部材の先端側には、内部に穴を有する受け部材が挿通され、前記雄ねじ部材に受け部材を挿通する前の穴の内径は、雄ねじ部材の外径より小さく形成される、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記受け部材は、樹脂を用いて構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、雄ねじ部材をねじ込んで受け部材の穴に挿通させることにより、雄ねじ部材の先端側が受け部材により締め付け力を受けることとなる。従って、雄ねじ部材が緩む方向に回転しようとする場合、受け部材との間に摩擦抵抗が生じることとなり、雄ねじ部材の不用意な緩みを抑制することが可能となる。これにより、回転軸の回転時に、筒状体内で挿入体が不用意に空回りすることを防止することができ、本発明をドラム用二連式のフットペダルに利用した場合、演奏中にドラムビータが作動しなくなることを回避して演奏性を良好に維持することが可能となる。
しかも、筒状体から挿入体を抜き出した後であっても、受け部材の穴に雄ねじ部材が挿通された状態を維持することができる。これにより、受け部材がストッパとなって筒状体に雄ねじ部材が取り付けられ、筒状体から雄ねじ部材が不用意に脱落することを回避可能となる。
【0009】
また、樹脂材を用いて受け部材を構成した場合、前記締め付け力をより良く発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の連結構造が適用された実施形態に係る二連式のフットペダルの部分概略正面図。
【図2】(A)は、図1の要部を拡大視した部分正面断面図、(B)は、(A)の分解図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書における方向若しくは位置的用語は、特に明示しない限り、図1及び図2を基準とする。
【0012】
図1には、本発明の保持構造が適用された二連式のフットペダルの部分概略正面図が示されている。この図において、二連式のフットペダル10は、同図中左側に位置する第1のフットペダル11と、同図中右側に位置する第2のフットペダル12とを備えて構成されている。
【0013】
前記第1のフットペダル11は、フレーム14に回転可能に支持される回転軸15と、フレーム14と回転軸15との間に設けられて当該回転軸15を下向きに引っ張る付勢手段16とを備えている。回転軸15には、図示しないドラムビータが連結されており、当該ドラムビータが回転軸15の回転により回動してバスドラムを打撃可能となっている。なお、前記回転軸15と略同一軸線上には、図示しない回転軸が回転可能に設けられ、この回転軸に前記ドラムビータとは別個のドラムビータ及びフットボード(図示省略)が連結されている。従って、第1のフットペダル11にあっては、二体のドラムビータを備えており、前記フットボードの踏み込み操作により、前記別個のドラムビータが、前記回転軸15に連結されたドラムビータとは独立して回動するようになっている。
【0014】
前記第2のフットペダル12は、フレーム20に回転可能に支持される回転軸21と、この回転軸21に連結されるフットボード(図示省略)とを備えている。第2のフットペダル12の回転軸21は、第1のフットペダル11の回転軸15と連結構造23を介して連結されている。
【0015】
前記連結構造23は、図2(A)及び(B)にも示されるように、前記各回転軸15,21の間に延びる筒状体24と、この筒状体24の左右両端から挿入される軸状をなす一対の挿入体25,25と、当該挿入体25,25と回転軸15,21とを連結する一対の連結部26,26と、前記筒状体24の外周側からねじ込まれて先端が挿入体25に当接可能な雄ねじ部材28と、当該雄ねじ部材28の先端側に設けられた受け部材29とを備えている。
【0016】
前記各連結部26は、挿入体25の一端に連なって当該挿入体25と回転軸15,21との相対角度を変位可能に設けられた継手部31と、この継手部31に受容された回転軸15,21を固定する固定ねじ32とをそれぞれ備えている。
【0017】
前記雄ねじ部材28は、筒状体24の上面側に上下方向に沿って形成されたねじ穴24Aに螺合可能に設けられている。雄ねじ部材28は、そのねじ込みにより、先端で挿入体25を筒状体24の内面に押さえ付け、これにより、筒状体24と挿入体25との相対移動を規制するようになっている。挿入体25は、断面六角形等の多角形のロッドで形成されて筒状体24内で回転しないようにし、雄ねじ部材28の当接箇所は平面となっている。
【0018】
前記受け部材29は、樹脂を用いて構成されるとともに、内部に穴29Aを有するワッシャー形状をなし、この穴29A内に雄ねじ部材28が挿通される。雄ねじ部材28が挿通される前の初期形状において、穴29Aの内径D1は、雄ねじ部材28におけるねじ溝が施された領域の外径D2より小さく形成されている。
【0019】
次に、前記連結構造23により各回転軸15,21を連結する手順について説明する。
【0020】
先ず、各回転軸15,21に連結部26の継手部31を装着し、固定ねじ32をねじ込むことにより、回転軸15,21に継手部31を固定する。次に、継手部31に連なる挿入体25を筒状体24の左右両端からそれぞれ挿入する。このとき、挿入体25の挿入長さを変化させることにより、第1及び第2のフットペダル11,12の離間距離を調整可能となる。
【0021】
この状態で、筒状体24の内部におけるねじ穴24Aの下方に前記受け部材29を配置しつつ、ねじ穴24Aに雄ねじ部材28をねじ込む。これにより、雄ねじ部材28の先端側が受け部材29の穴29Aを拡径しながら挿通し、雄ねじ部材28が受け部材29により締め付けられて前記ねじ込みに対し摩擦抵抗を受けることとなる。この摩擦抵抗に抗して、更に雄ねじ部材28をねじ込み、当該雄ねじ部材28の先端により挿入体25を下方へ押さえ付けて筒状体24の内面との間に挿入体25を挟み込む。これにより、筒状体24内から挿入体25が抜け出る方向の移動の他、筒状体24内で挿入体25が空回りする回転移動も規制でき、各回転軸15,21が連結されて第2のフットペダル12の回転軸21のトルクを第1のフットペダル11の回転軸15に伝達可能となる。よって、第2のフットペダル12のフットボードの踏み込み操作により、回転軸21及び連結構造23を介して第1のフットペダル11の回転軸15を回転させ、当該回転軸15に連結されたドラムビータを回動できるようになっている。
【0022】
筒状体24内で挿入体25を移動規制した状態において、雄ねじ部材28は、受け部材29により締め付けられるので、雄ねじ部材28が緩む方向に回転しようとしても、その回転を、雄ねじ部材28と受け部材29との間の摩擦抵抗により規制することができる。
これにより、雄ねじ部材28の緩みを防止して挿入体25の挟み込みをしっかりと維持でき、演奏中に、各回転軸15,21でのトルクの伝達が行われなかったり、トルクの伝達が不十分になることを防止することが可能となる。
【0023】
また、前記雄ねじ部材28を意図的に緩め、筒状体24内から挿入体25を抜き出した後においても、受け部材29により雄ねじ部材28の先端が締め付けられ、当該先端側に受け部材29が挿通された状態が維持可能となる。これにより、雄ねじ部材28がねじ穴24Aから不用意に脱落することを防止でき、連結構造23による連結を解除して運搬等を行う際、雄ねじ部材28が紛失することを回避することが可能となる。
【0024】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0025】
例えば、雄ねじ部材28の設置数は、前記挿入体25の軸方向や周方向に複数並設したりする等、増設してもよい。
【0026】
また、前記連結構造23は、一対の回転軸を連結してトルクを伝達する構成を備えた他の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0027】
15,21・・・回転軸、23・・・連結構造、24・・・筒状体、25・・・挿入体、26・・・連結部、28・・・雄ねじ部材、29・・・受け部材、29A・・・穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスドラムのフットペダルを連結するための一対の回転軸を連結して一方の回転軸のトルクを他方の回転軸に伝達するための回転軸の連結構造において、
前記各回転軸の間に延びる筒状体と、この筒状体の両端から挿入される一対の挿入体と、当該挿入体と回転軸とを連結する一対の連結部と、前記筒状体の外周側からねじ込むことで当該筒状体と挿入体との相対移動を規制する雄ねじ部材とを備え、
前記雄ねじ部材の先端側には、内部に穴を有する受け部材が挿通され、前記雄ねじ部材に受け部材を挿通する前の穴の内径は、雄ねじ部材の外径より小さく形成されていることを特徴とする回転軸の連結構造。
【請求項2】
前記受け部材は、樹脂を用いて構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転軸の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−160244(P2010−160244A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1453(P2009−1453)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】