説明

回転陽極X線管装置

【課題】均一な強度のX線を出力することができる回転陽極X線管装置を提供すること。
【解決手段】回転陽極X線管装置は、X線が出力されるX線出力窓132を備えたX線管10と、前記X線管10を収容する、当該X線管10を冷却する冷却液で満たされたハウジング20と、前記ハウジング20内に満たされた冷却液を循環させる循環ポンプ30と、前記循環ポンプ30により循環される冷却液をガイドして、前記X線出力窓132に対応する位置に、当該X線出力窓132に沿うような冷却液の流れを形成するサブ吐出配管33とを具備していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線コンピュータ断層撮影装置をはじめとするX線画像診断装置や非破壊検査装置などに搭載される回転陽極X線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置をはじめとするX線画像診断装置や非破壊検査装置などに搭載されて、X線の発生源として使用される回転陽極X線管が知られている。この回転陽極X線管は、冷却液で満たされたハウジングに収容されていて、電子の衝突によりX線を発生する陽極ターゲットと、陽極ターゲットに向けて電子を放出する電子放出源と、少なくとも陽極ターゲット及び電子放出源の周囲を所定の真空度に維持する真空外囲器とを具備している。
【0003】
電子放出源から放出された電子は、陽極ターゲットと電子放出源との間に印加された電圧によって加速され、陽極ターゲットの焦点面に衝突する。陽極ターゲットに衝突した電子は、陽極ターゲット上でエネルギ変換され、熱とX線が発生する。
【0004】
発生したX線は、真空外囲器に嵌め込まれたX線出力窓とハウジングに嵌め込まれたX線透過窓を通って出力されて、X線画像の生成材料として使用される。
【0005】
発生した熱は、ハウジング内に満たされた冷却液に排出される。そのため、ハウジングの外部に設置された循環ポンプによって、ハウジング内の冷却液を循環させて、回転陽極X線管の周囲に冷たい冷却液が供給されている。
【0006】
このような回転陽極X線管装置として、X線放射窓84に向けてノズル102によって絶縁油38の流れを形成するものが開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。ここでは、絶縁油38のよどみを無くして、冷却効率を向上させることを目的としている。
【特許文献1】特開2004−152680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の回転陽極X線管装置では、ハウジング内に冷却液が満たされたあとで、ハウジングと循環ポンプとの接続がなされる。そのため、ハウジングと循環ポンプを接続する際に、ハウジング内に気泡が混入することがある。
【0008】
ハウジング内に混入した気泡は、冷却液とともにハウジング内を移動するが、これら気泡がX線の照射(通過)範囲内に存在すると、即ち真空外囲器のX線出力窓とハウジングのX線透過窓との隙間に存在すると、回転陽極X線管装置から出力されるX線にムラができる。従って、ハウジング内に気泡が混入している回転陽極X線管装置がX線コンピュータ断層撮影装置をはじめとするX線画像診断装置や非破壊検査装置に搭載されていると、生成されるX線画像の画像品質が低下することがある。
【0009】
本発明は、均一な強度のX線を出力することができる回転陽極X線管装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における回転陽極X線管装置は、以下のように構成されている。
【0011】
(1)回転陽極X線管装置において、X線が出力されるX線出力窓を備えたX線管と、前記X線管を収容する、当該X線管を冷却する冷却液で満たされたハウジングと、前記ハウジング内に満たされた冷却液を循環させる循環ポンプと、前記循環ポンプにより循環される冷却液をガイドして、前記X線出力窓に対応する位置に、当該X線出力窓に沿うような冷却液の流れを形成するガイド手段とを具備している。
【0012】
(2)(1)に記載された回転陽極X線管装置において、前記ガイド手段は、前記循環ポンプによる吐出力を利用して、前記X線出力窓に対応する位置に前記冷却液の流れを形成する。
【0013】
(3)(2)に記載された回転陽極X線管装置において、前記ガイド手段は、前記循環ポンプによる吸引力を利用して、前記X線出力窓に対応する位置に前記冷却液の流れを形成する。
【0014】
(4)(1)に記載された回転陽極X線管装置において、前記X線管と前記ハウジングとの隙間に配置され、前記X線出力窓に対応する位置にて前記冷却液の流れが拡散するのを規制する拡散規制手段をさらに具備している。
【0015】
(5)(4)に記載された回転陽極X線管装置において、前記拡散規制手段は、前記X線出力窓に対応する位置を挟み込む少なくとも2枚の拡散規制板である。
【0016】
(6)(4)に記載された回転陽極X線管装置において、前記拡散規制手段は、前記X線出力窓に対応する位置を取り囲む拡散規制枠である。
【0017】
(7)X線コンピュータ断層撮影装置の架台に搭載され、当該架台と共に高速回転する回転陽極X線管装置において、X線が出力されるX線出力窓を備えたX線管と、前記X線管を収容する、当該X線管を冷却する冷却液で満たされたハウジングと、前記X線管と前記ハウジングとの隙間に配置され、前記X線出力窓に対応する位置に流入する冷却液の流れを拡散させる拡散手段とを具備している。
【0018】
(8)(7)に記載された回転陽極X線管装置において、前記拡散手段は、前記X線出力窓に対して前記架台の回転方向の上流に配置された、前記架台の回転方向に流れる前記冷却液を受ける拡散板である。
【0019】
(9)(7)に記載された回転陽極X線管装置において、前記拡散手段は、前記X線出力窓に対応する位置に乱流を発生させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、均一な強度のX線を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、第1の実施形態〜第7の実施形態について説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
先ず、図1−図2を参照しながら、第1の実施形態について詳細に説明する。
[回転陽極X線管装置の構成]
図1は本発明の第1の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図、図2は同実施形態に係る回転陽極X線管装置の断面図である。
図1に示すように、本実施形態における回転陽極X線管装置は、X線コンピュータ断層撮影装置をはじめとするX線画像診断装置や非破壊検査装置などに搭載されるものであって、X線を放射するX線管10と、X線管10を収容するとともに、当該X線管10を冷却する冷却液で満たされたハウジング20と、ハウジング20に接続され、当該ハウジング20内に満たされた冷却液を循環させる循環ポンプ30とで構成されている。冷却液としては、水を主成分とした電気伝導率が低い非油脂系冷却液、もしくは周知の絶縁油などが使用される。
【0023】
X線管10は、電子eの衝突によりX線xを発生させる陽極ターゲット11と、陽極ターゲット11に対向配置され、この陽極ターゲット11に向けて電子eを放出する陰極アッセンブリ体12と、前記陽極ターゲット11及び陰極アッセンブリ体12を収容し、これらの周囲を所定の真空度に維持する真空外囲器13とを備えている。
【0024】
陽極ターゲット11は、円盤状に形成されていて、その半径方向の中心部が回転体111によって支持されている。この回転体111は、固定軸112によって回転可能に支持されていて、真空外囲器13の外部に配設されたステータコイル113と共に、陽極ターゲット11を回転させるためのモータ114を構成している。これにより、モータ114が陽極ターゲット11を回転させていれば、X線管10が長時間にわたり使用されても、陰極アッセンブリ体12からの電子eが陽極ターゲット11の一箇所に集中照射されないから、陽極ターゲット11が過加熱状態に陥ることがない。
【0025】
陰極アッセンブリ体12は、真空外囲器13との電気的絶縁をはかるために、絶縁部材121を介して真空外囲器13に取り付けられていて、前記陽極ターゲット11に対応する部位には、電子eを放出するためのエミッター源(電子放出源)122が配置されている。絶縁部材121の素材としては、例えばアルミナセラミックスなどが使用される。
【0026】
真空外囲器13は、ガラスなどの絶縁部材又は金属材等で形成されていて、陽極ターゲット11の側方には開口部131が形成されている。この開口部131は、陽極ターゲット11の半径方向に長い長方形状をしていて、その内側には陽極ターゲット11から放射されたX線をX線管10の外部に出力させるX線出力窓132が嵌め込まれている。
【0027】
ハウジング20は、X線の漏洩を防止するための保護壁として機能していて、X線管10の真空外囲器13に設けられたX線出力窓132に対応する位置には開口部21が形成されている。この開口部21は、真空外囲器13に形成された開口部131と同じ形状をしていて、その内側にはX線管10から放射されたX線をハウジング20の外部に透過させるX線透過窓22が嵌め込まれている。
【0028】
なお、X線管10の真空外囲器13に嵌め込まれたX線出力窓132と、ハウジング20に嵌め込まれたX線透過窓22との間には、冷却液が流動できるだけの隙間Sが存在している。隙間Sは、非常に狭いため、冷却液が流動していなければ気泡が留まり易い。
【0029】
循環ポンプ30は、圧力を発生させるポンプ本体31と、ポンプ本体31に接続され、当該ポンプ本体31からの圧力によってハウジング20内に冷却液を吐出するメイン吐出配管32及びサブ吐出配管(ガイド手段)33と、ポンプ本体31に接続され、当該ポンプ本体31からの圧力によってハウジング20内の冷却液を吸引する吸引配管34とを具備している。
【0030】
なお、図1−図2において、循環ポンプ30は、2つ存在するように見えるが、実際には1つである。ただし、2つの循環ポンプ30があって、一方にメイン吐出配管32が接続され、他方にサブ吐出配管33が接続される構成であっても問題はない。
【0031】
メイン吐出配管32は、ハウジング20のX線出力窓132の反対にある側壁に接続されていて、ハウジング20内の冷却液を全体にわたり循環させている。したがって、メイン吐出配管32からの冷却液の吐出量は、サブ吐出配管33からの冷却液の吐出量よりも大きい。
【0032】
サブ吐出配管33は、ハウジング20における、X線出力窓132とX線透過窓22の側方にある側壁に、X線透過窓22及びX線出力窓132の長手方向に沿って接続されている。これにより、循環ポンプ30のポンプ動作が開始されると、サブ吐出配管33からX線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに向けて冷却液が吐出され、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに、X線出力窓132とX線透過窓22の長手方向に対する冷却液の流れが形成される。
【0033】
[回転陽極X線管の動作]
先ず、陰極アッセンブリ体12のエミッター源122から電子eが放出される。放出された電子eは、陽極ターゲット11と陰極アッセンブリ体12との間に印加されている高い電圧により加速され、陽極ターゲット11の焦点面に衝突する。陽極ターゲット11に衝突した電子eは、熱とX線に変換され、発生したX線の一部は、X線出力窓132、冷却液、及びX線透過窓22を順に透過して、ハウジング20の外部に出力される。電子eの衝突によって陽極ターゲット11に発生した熱は、X線管10の周囲に満たされた冷却液を通して回転陽極X線管装置の外部に排出される。
【0034】
これとは別に、回転陽極X線管装置の使用が開始されると、循環ポンプ30が起動される。すると、サブ吐出配管33は、冷却液の吐出を開始して、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに、X線出力窓132及びX線透過窓22の長手方向に対する冷却液の流れを形成する。
【0035】
これにより、ハウジング20内に気泡が混入していても、これら気泡は、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sで留まることがなくなるから、X線管10から放射されるX線が気泡を透過することがない。たとえ回転陽極X線管装置の使用開始の時点でX線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに気泡が留まっていたとしても、これら気泡は、すぐに流されることになるから、X線管10から放射されるX線が気泡を透過することはない。
【0036】
回転陽極X線管装置から出力されたX線は被検体に照射され、当該被検体を透過したX線がX線画像の生成材料として使用される。
【0037】
(本実施形態による作用)
本実施形態において、循環ポンプ30に接続されたサブ吐出配管33は、ハウジング20における、X線出力窓132とX線透過窓22の側方位置に接続されていて、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに向けて冷却液を吐出している。
【0038】
そのため、X線出力窓132とX線透過窓22の隙間Sには、冷却液の流れが強制的に形成されるから、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに気泡が存在していたとしても、これら気泡は、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sで留まることがなくなる。
【0039】
その結果、X線管10のX線出力窓132から放射されたX線は、気泡を透過することなく、ハウジング20のX線透過窓22から回転陽極X線管装置の外部に出力されるから、従来の回転陽極X線管に比べて、出力されるX線の強度が均一になる。したがって、本実施形態における回転陽極X線管装置がX線コンピュータ断層撮影装置をはじめとするX線画像診断装置や非破壊検査装置に使用されると、極めて品質の良いX線画像が得られることになる。
【0040】
本実施形態において、サブ吐出配管33は、ハウジング20における、X線出力窓132とX線透過窓22の側方にある側壁に、X線出力窓132及びX線透過窓22の長手方向に沿って接続されている。
【0041】
そのため、サブ吐出配管33から吐出される冷却液は、X線出力窓132とX線透過窓22に沿って流れるから、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに気泡が存在していたとしても、これら気泡は効率的に排除される。
【0042】
本実施形態において、サブ吐出配管33は、圧力損失の原因となるようなノズルなどを備えていないため、循環ポンプ30にかかる負担が低減される。
【0043】
本実施形態において、ハウジング20内に冷却液を吐出するメイン吐出配管32とは別にサブ吐出配管33が設けられているため、ハウジング20内に満たされた冷却液の循環は十分に確保される。
【0044】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図である。
【0045】
図3に示すように、本実施形態における回転陽極X線管装置は、第1の実施形態における回転陽極X線管装置に対して、2枚の拡散規制板50が追加されたものである。これらの拡散規制板50は、X線管10とハウジング20との隙間Sに、X線出力窓132とX線透過窓22の短手方向の両側からX線出力窓132とX線透過窓22との隙間領域を挟み込んでいる。
【0046】
これにより、サブ吐出配管33から吐出した冷却液は、2枚の拡散規制板50に沿って流れることで、X線出力窓132とX線透過窓22の短手方向に拡散することがなくなるから、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに効率良く流れが形成され、結果として、循環ポンプ30の吐出容量を低下させることができる。
【0047】
なお、本実施形態において、2枚の拡散規制板50は、X線管10の真空外囲器13とハウジング20との両方に接触していている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、X線管10の真空外囲器13にだけ接触していても良いし、ハウジング20にだけ接触していても良い。
【0048】
(第3の実施形態)
図4は本発明の第3の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図である。
図4に示すように、本実施形態における回転陽極X線管装置は、第1の実施形態における回転陽極X線管装置に対して、拡散規制枠60及び回収配管61を追加したものである。
【0049】
拡散規制枠60は、X線管10とハウジング20との隙間Sに、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間領域を取り囲むように配置されていて、X線出力窓132及びX線透過窓22の長手方向の両側に配置された壁部601、602には、それぞれ開口部603、604が形成されている。なお、循環ポンプ30に接続されたサブ吐出配管33は、ハウジング20を貫通して、拡散規制枠60の開口部603に接続されている。
【0050】
回収配管61は、拡散規制枠60の開口部604と吸引配管34とに接続されていて、拡散規制枠60から流出する冷却液を吸引配管34に導く役割を果たしている。
【0051】
これにより、サブ吐出配管33から冷却液が吐出されると、拡散規制枠60の内部には、X線出力窓132及びX線透過窓22の長手方向に対する冷却液の流れが形成される。これにより、拡散規制枠60の内部を流れる冷却液は、拡散規制枠60の存在によって、拡散規制枠60外の冷却液からの流れの影響を受けることがないから、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに気泡が混入しても、これらの気泡は確実に排除されることになる。
【0052】
なお、本実施形態において、拡散規制枠60は、X線管10の真空外囲器13とハウジング20との両方に接触している。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、X線管10の真空外囲器13にだけ接触していても良いし、ハウジング20にだけ接触していても良い。
【0053】
(第4の実施形態)
図5は本発明の第4の実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置の概略図、図6は同実施形態における回転陽極X線管装置200の断面図である。なお、図中矢印Rはハウジング20及び循環ポンプ30の回転方向を示している。
【0054】
図5に示すように、本実施形態における回転陽極X線管装置200は、第1の実施形態における回転陽極X線管装置に対して、拡散板70が追加されたものであって、X線コンピュータ断層撮影装置に搭載されることを前提としている。
【0055】
先ず、X線コンピュータ断層撮影装置の構成を簡単に説明する。
【0056】
X線コンピュータ断層撮影装置は、被検体が載置されるトンネルTが形成され、このトンネルTの軸心を中心に高速回転する架台100と、架台100に固定されて、X線を出力する回転陽極X線管装置200と、架台100に固定されて、回転陽極X線管装置200から照射されたX線の強度を検出するX線検出器300と、X線検出器300が検出したX線の強度に基づいてX線画像を生成する画像生成装置400とを具備している。なお、X線管10は、架台100の円周方向に対してX線検出器300から約180度ずれた位置に配置されていて、X線出力窓132をX線検出器300に向けている。
【0057】
拡散板70は、X線管10とハウジング20との隙間Sであって、且つ、X線出力窓132とX線透過窓22に対して、架台100の回転方向Rの上流に配置されている。従って、架台100の回転に伴って、回転陽極X線管装置200のハウジング20に満たされた冷却液が架台100と同じ方向に流動すると、この冷却液は、X線出力窓132とX線透過窓22の上流で拡散板70に衝突して、X線出力窓132及びX線透過窓22の短手方向の両側に分割されるとともに、その周囲に乱流を発生させる。
【0058】
これにより、冷却液に気泡が混入していたとしても、これら気泡は、拡散板70に妨害されてX線出力窓132とX線透過窓22の隙間Sに流入しなくなる。また、撮影中は矢印R方向にハウジング20が高速回転しているので、気泡が隙間S側に廻り込むことはほとんど考えられない。たとえX線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sに気泡が流入しても、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間には乱流が発生しているから、流入した気泡は、すぐに隙間Sの外に流されることになる。これにより、X線管10のX線出力窓132を透過したX線は、気泡を透過することなく、回転陽極X線管装置200の外部に出力されるから、従来の回転陽極X線管装置に比べて、出力されるX線の強度が均一になる。従って、本実施形態における回転陽極X線管装置200がX線コンピュータ断層撮影装置に使用されると、極めて品質の良いX線画像が得られることになる。即ち、本実施形態では、X線出力窓132とX線透過窓22との隙間Sから気泡を除去するために、架台100の回転により生じる冷却液の流れが利用されていて、循環ポンプ30からの圧力により生じる冷却液の流れが利用されていない。
【0059】
(第5の実施形態)
図7は本発明の第5の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図である。なお、図7において図2と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図7に示すように、本実施形態における回転陽極X線管装置は、第1の実施形態における回転陽極X線管装置に対して、サブ吐出配管33に分岐管33a,33bが設けられているものである。これら分岐管33a,33bが設けられていることにより、X線出力窓132の他の部分にも冷却液が供給される。
【0061】
本実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
(第6の実施形態)
図8は本発明の第6の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図である。なお、図8において図3と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0063】
図8に示すように、本実施形態における回転陽極X線管装置は、第2の実施形態における回転陽極X線管装置に対して、サブ吐出配管33に分岐管33a,33bが設けられているものである。これら分岐管33a,33bが設けられていることにより、X線出力窓132の他の部分にも冷却液が供給される。
【0064】
本実施形態においても、上述した第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(第7の実施形態)
図9は本発明の第7の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図である。なお、図9において図4と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図9に示すように、本実施形態における回転陽極X線管装置は、第2の実施形態における回転陽極X線管装置に対して、サブ吐出配管33に分岐管33a,33bが設けられるとともに、吸引配管34に吸引分岐管34aが設けられているものである。これら分岐管33a,33bが設けられていることにより、X線出力窓132の他の部分にも冷却液が供給されるとともに、分岐管33a,33bから吐出された冷却液と同量の冷却液が吸引分岐管34aより回収されることとなる。
【0067】
本実施形態においても、上述した第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【図2】同実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【図4】本発明の第3の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【図5】本発明の第4の実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置の概略図。
【図6】同実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【図7】本発明の第5の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【図8】本発明の第6の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【図9】本発明の第7の実施形態における回転陽極X線管装置の断面図。
【符号の説明】
【0070】
10…X線管、20…ハウジング、30…循環ポンプ、33…サブ吐出配管(ガイド手段)、50…拡散規制板、60…拡散規制枠、70…拡散板、100…架台、132…X線出力窓、200…回転陽極X線管装置、x…X線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線が出力されるX線出力窓を備えたX線管と、
前記X線管を収容する、当該X線管を冷却する冷却液で満たされたハウジングと、
前記ハウジング内に満たされた冷却液を循環させる循環ポンプと、
前記循環ポンプにより循環される冷却液をガイドして、前記X線出力窓に対応する位置に、当該X線出力窓に沿うような冷却液の流れを形成するガイド手段とを具備していることを特徴とする回転陽極X線管装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記循環ポンプによる吐出力を利用して、前記X線出力窓に対応する位置に前記冷却液の流れを形成することを特徴とする請求項1に記載された回転陽極X線管装置。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記循環ポンプによる吸引力を利用して、前記X線出力窓に対応する位置に前記冷却液の流れを形成することを特徴とする請求項1に記載された回転陽極X線管装置。
【請求項4】
前記X線管と前記ハウジングとの隙間に配置され、前記X線出力窓に対応する位置にて前記冷却液の流れが拡散するのを規制する拡散規制手段をさらに具備していることを特徴とする請求項1に記載された回転陽極X線管装置。
【請求項5】
前記拡散規制手段は、前記X線出力窓に対応する位置を挟み込む少なくとも2枚の拡散規制板であることを特徴とする請求項4に記載された回転陽極X線管装置。
【請求項6】
前記拡散規制手段は、前記X線出力窓に対応する位置を取り囲む拡散規制枠であることを特徴とする請求項4に記載された回転陽極X線管装置。
【請求項7】
X線コンピュータ断層撮影装置の架台に搭載され、当該架台と共に高速回転する回転陽極X線管装置において、
X線が出力されるX線出力窓を備えたX線管と、
前記X線管を収容する、当該X線管を冷却する冷却液で満たされたハウジングと、
前記X線管と前記ハウジングとの隙間に配置され、前記X線出力窓に対応する位置に流入する冷却液の流れを拡散させる拡散手段とを具備していることを特徴とする回転陽極X線管装置。
【請求項8】
前記拡散手段は、前記X線出力窓に対して前記架台の回転方向の上流に配置された、前記架台の回転方向に流れる前記冷却液を受ける拡散板であることを特徴とする請求項7に記載された回転陽極X線管装置。
【請求項9】
前記拡散手段は、前記X線出力窓に対応する位置に乱流を発生させることを特徴とする請求項7に記載された回転陽極X線管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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