説明

回転電機

【課題】固定子および軸受の支持剛性を向上させ、変位が少ない回転電機を提供すること。
【解決手段】環状の固定子鉄心1およびこの固定子鉄心1の内周面に巻回された固定子巻線5から構成される固定子19と、固定子19内に配置され固定子に対して相対的に回転可能な回転子14と、回転子14を支持する軸受15と、固定子19を設置するための固定子設置板18aおよび前記軸受14を設置するための軸受設置板18eを有する土台枠18とを備え、固定子設置板18a上に固定子を設置し、軸受設置板上に軸受を設置した回転電機において、固定子の中心から土台枠の固定子設置板までの垂直方向の距離が、固定子の外周半径よりも小さくなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機等の回転電機に係り、特に土台枠上に固定子および軸受を個別に設置するように構成した回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
直流機、同期機あるいは誘導機などの回転電機は、固定子と回転子によって構成され、機能面では電磁誘導の原理を利用し電気エネルギーと機械エネルギー(回転エネルギー)の相互変換をおこなうもので、回転子を固定子の中心に正確に位置して回転させなければならない。
【0003】
回転子を支持する軸受および固定子を正確に位置決めするために、回転電機の構成要素を土台枠と呼ぶ共通の土台上に設置する構成の回転電機がある。この構成の回転電機の場合、共通の土台上に軸受座と鉄心押さえ板とを個別に設置して、軸受および固定子の位置決めを行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、特許文献1の構成の他にも、固定子および回転子の重量を支えられるように十分な剛性をもたせた箱状もしくは筒状の筐体内に固定子を収納するようにして、その筐体に軸受を設置するように構成した軸受ブラケット型の回転電機も存在するが、本発明の対象ではないため説明は省略する。
【0005】
以下、図5を参照して特許文献1に記載された回転電機の構成図について説明する。
図5は回転電機の中でも同期機の例を示す。1は固定子鉄心であり、環状に打ち抜かれた電磁鋼板を所定の厚みに積層し、その両端部を厚板で形成された鉄心押さえ板2で挟み、長ボルト3をナットで締め込むことによって電磁鋼板同士に圧縮力を加えて形状を保持するように構成している。しかも、この固定子鉄心1は、電磁鋼板の積層方向に適当な間隔で通風ダクト4を設けて放射方向の冷却空気の通り道を設けており、また、内周部には円周方向に沿って設けたスロットに固定子巻線5を巻装している。このようにして、固定子鉄心1、鉄心押さえ板2および固定子巻線5によって固定子6を構成している。
【0006】
前記した固定子鉄心1の両端部に設けられた鉄心押さえ板2は、左右の下部に張り出した形状の取付け脚部7を一体的に設けており、この取付け脚部7の下面に固定された取付け座8を介して土台枠(台床、ベースともいう)9の上面に設けられた固定子座10の上に設置されボルト・ナットで固定される。
【0007】
一方、回転軸11には回転子巻線12を巻装した突極型磁極13を継鉄によって取り付けて回転子14を構成している。
この回転軸11の両端部は、内部に潤滑油を満した軸受15によって回転自在に支持され、その軸受15は角柱状の軸受台16によって土台枠9の上面に設けられた軸受座15aの上に配置されボルト・ナットで固定される。
【0008】
このように構成された回転電機は、回転子巻線12に電流を流すことで回転磁界を形成し、その回転磁界が固定子巻線5と鎖交することによる電磁誘導により固定子巻線5に電圧を発生させることで、回転力を電力に変換する発電機となる。
【0009】
また、外部から固定子6に電源が与えると固定子6に回転磁界を発生し、回転子14に発生した回転磁界との電磁作用によって回転すれば外部に回転エネルギーを供給する電動機となる。回転電機が発電機として使用される場合には、回転軸11にはエンジン、タービン、水車等の駆動源が接続され、また、回転電機が電動機として駆動源となる場合には回転軸11にはポンプ、圧縮機、送風機等の被駆動機器が接続される。
【0010】
また、回転子14の両端の磁極13に隣接した位置には放射状の羽根17が取り付けられており、羽根17の回転によって固定子6の内部へ冷却空気を送風して、回転子巻線12および固定子巻線5、そのほか回転電機の構成部品を冷却するようになっている。そして、固定子6の内部へ送風された冷却空気は、通風ダクト4を通り固定子6の外側放射状に吐き出される。なお、図5には軸流方式の羽根17を採用しているが、冷却空気を送風できるものであれば、遠心力式等の任意の形式の羽根を採用しても良い。
【0011】
上述した図5の構成の回転電機においては、固定子6および軸受15を土台枠9上面に設けた固定子座10および軸受座15aに載せるように設置すれば回転電機として構成できるため、固定子6および回転子14の設置作業や軸心を合致させる作業が容易であるという特徴がある。
【0012】
また、特許文献2のように、固定子6を土台枠9上で平行に移動させて保守点検を容易におこなえるように構成することも可能であり、さらに、土台枠9が固定子6および回転子14の重量を支えるように構成されているため、特許文献3のように、土台枠9上に設置された固定子6、回転子14、軸受15等の回転電機を構成する要素を覆うハウジングを設ける場合には、ハウジング自体には回転電機としての剛性や強度は必要とされないのでその設置は容易であるし、作業用穴を設けることで点検作業を容易にすることもできる。
さらにまた、特許文献4のように、土台枠9上にハウジングを防音カバーとして設けて騒音を低減するように構成することも可能である。
【0013】
このように、土台枠9上に固定子6および軸受15をそれぞれ個々に設置するように構成した回転電機では、その構成上の特徴から、土台枠9上での作業が容易である、土台枠9上にハウジングや防音カバー等の構造物を設けることが容易である等の種々の利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−143301、
【特許文献2】実願昭55‐174269、
【特許文献3】実願昭55‐141692、
【特許文献4】実公昭40‐002918、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図5の構成の回転電機を運転すると、固定子6および回転子14に変位あるいは振動が発生する場合がある。
図6および図7は、図5に示した回転電機をそれぞれ軸方向および側面からみた図を示す。ただし、課題を明確にするため固定子6の固定子巻線5および回転子14の磁極13等は省略し簡略化して表しているが、図5と同じ構成を対象としている。
【0016】
図6および図7に示すとおり、土台枠9の上面に固定子6を設置する構成では、土台枠9の上面から固定子6および回転子14の軸中心線0−0までの高さhは、固定子6の外周半径rよりも若干高くなっている(h>r)。すなわち、土台枠9の上面から固定子6の重心である軸中心線0−0までの距離hは、固定子6の外周半径rよりも大きく、離れた位置関係となっている。
【0017】
また、軸受15は回転子14の軸中心0−0を、固定子6の軸中心0−0に合わせるために高い位置にする必要があり、そのため軸受15を支える軸受台16は高さ方向に長い角柱状に構成され、土台枠9の上面から回転子14の軸中心までの距離hは固定子6の外周半径rよりも大きくなり、図6および図7の例では固定子座10から固定子6の中心までの距離hと同じだけ離れている。
【0018】
このように構成された回転電機を運転すると、回転子14の発生する磁界により、固定子6と回転子14には互いに引き寄せ合う力が発生する。また、回転子14の重量の不釣合によって軸受15を揺り動かす力が発生する。このような力が作用した場合の回転電機の状態を図8に示す。
【0019】
図8は図6に示す回転電機を運転した状態を示し、図6と同様に簡略化している。回転子13の磁極12が発生する磁界によって、回転子14と固定子6は引き寄せ合う。例えば回転子14が左方向に吸引力Fを受け、逆に固定子6は右方向に吸引力Fを受ける。図8では吸引力Fの作用点をそれぞれ回転子および固定子の中心で代表している。
【0020】
図8に示すように、吸引力Fが作用することで軸受台16および鉄心押さえ板2が変形し変位を生じる。図8では軸受台16が変形することによる回転子14の軸中心の変位量をxと表し、鉄心押さえ板2が変形することによる固定子6の軸中心の変位量をyと表す。ただし、図8は説明のため実際に発生する変位を誇張して示している。
【0021】
また、回転子13に万一重量の不釣合いがある場合は、回転子14の重心位置と実際の回転中心である回転軸11の中心とが一致しないため、回転子14が回転することにより軸受15を揺動する力が発生し、磁界の吸引力Fと同様に変位を生じさせる。
【0022】
この場合、重量の不釣合いによる力は、回転軸11の中心が作用点で、力の向きは回転軸11の中心から重心に向かうものとなり、回転軸11の回転に合わせてその力の向きは回転するものとなる。重量の不釣合による力によって軸受台16が変位し回転子14の軸心がずれると、その変位した方向の固定子6と回転子14は互いに接近する。互いの距離が縮まることにより、両者の問の磁界による吸引力Fが強くなるので軸受座や鉄心押さえ板2の変位はさらに大きくなる場合もある。
【0023】
このような変位もしくは振動は、固定子6および回転子14の支持剛性によって大きく変化する。従来の回転電機では、固定子6の重心位置および軸受15と軸受台16は、その固定部である土台枠9の上面から固定子6の外周半径rよりも大きく上方に離れたところにあるので、その支持剛性は弱く、この変位によって軸受台16を変形させ、その根元部分に応力を発生させる。また、回転軸11の変位は回転子14と固定子6の間の磁界による吸引力によって固定子6にも伝わり、結果として鉄心押さえ板2の脚部7に応力を発生させることになる。したがって、磁界の吸引力や振動による変位が回転電機の構成要素に過大な応力を発生させ、回転電機の耐久性に問題が発生することがあった。または、許容応力に余裕を持たせるために回転電機が大きく重たくなる場合があった。
【0024】
次に、回転電機が外力を受ける場合を考える。
従来の回転電機の運転状態を側面から見た状態を図9に示す。回転電機は駆動源によって回転力を与えられ発電機として使用されたり、または、被駆動機器に回転力を与えるために電動機として使用されたりするが、その際に、回転軸に接続した機械からの影響を受ける。図9では回転軸11の左端に駆動源または被駆動機器が接続されているものとする。
【0025】
駆動源にはディーゼルエンジン、ガスエンジン、ガスタービン、水車、風車等の回転機械が考えられるが、回転力を伝えるものならその他のものでもよい。また、被駆動機器にはポンプ、圧縮機、送風機等の回転機械が考えられるが、回転力を受けて所定の仕事をするものであればその他のものでもよい。
【0026】
これらの回転機械においては、回転軸11に対して軸方向に押したり、あるいは引いたりする軸方向の力Fを発生するものがある。その軸方向の力Fによって回転軸11を軸方向に揺さぶられることで、図9に示すように軸受15は軸方向に変位する。この変位をzと表している。
【0027】
この場合でも、図5に示した回転電機では、固定子6の重心位置および軸受15と軸受台16はその固定部である土台枠9上から固定子6の外周半径rよりも上方に離れたところにあるので、その支持剛性は弱く、この変位によって軸受台16を変形させ、軸受台16の根元部分に応力を発生させる。また、回転軸11の変位は回転子14と固定子6の間の磁界による吸引力によって固定子6にも伝わり、結果として鉄心押さえ板2の脚部7に応力を発生させることになる。したがって、回転機械から受ける軸方向の力Fによっても固定子6および回転子14に変位が生じる。回転電機の構成要素に過大な応力を発生させ、回転電機の耐久性に問題が発生することがあった。または、許容応力に余裕を持たせるために回転電機が大きく重たくなる場合があった。
【0028】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、固定子および軸受の支持剛性を向上させ、変位が少ない回転電機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、環状の固定子鉄心およびこの固定子鉄心の内周面に巻回された固定子巻線から構成される固定子と、前記固定子内に配置され固定子に対して相対的に回転可能な回転子と、前記回転子を支持する軸受と、前記固定子を設置するための固定子設置板および前記軸受を設置するための軸受設置板を有する土台枠とを備え、前記固定子座に固定子を設置し、軸受座に軸受を設置した回転電機において、前記固定子の中心から前記土台枠の固定子設置板までの垂直方向の距離が、固定子の外周半径よりも小さくなるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、土台枠から固定子重心までの距離と、土台枠から軸受までの距離を短くして支持剛性を向上させるようにしたので、変位および振動が少ない回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態における回転電機の設置状態を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態における回転電機の土台枠を示す斜視図。
【図3】本発明の実施形態における回転電機を回転軸方向から見た簡略図。
【図4】本発明の実施形態における回転電機を正面から見た簡略図。
【図5】従来の回転電機の設置状態を示す斜視図。
【図6】従来の回転電機を回転軸方向から見た簡略図。
【図7】従来の回転電機を正面から見た簡略図。
【図8】運転中の従来の回転電機を回転軸方向から見た簡略図。
【図9】運転中の従来の回転電機を正面から見た簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、図5乃至図9に示す従来の回転電機と同一部分には同一符号を付して重複する説明は適宜省略する。
【0033】
回転電機は周知のように固定子と回転子から構成され、外部から回転エネルギーが与えられ、回転子側が直流で励磁されると、その磁力によって固定子側に回転子と同期した電力を発生する同期発電機となる。また反対に、外部から固定子に電源が与えられると固定子コイルではその電源により回転磁界を発生する。回転子が発生した回転磁界との電磁作用によって回転すれば外部に回転エネルギーを供給する電動機となる。上記のように、固定子と回転子の間で発生する電磁作用を利用した回転電機としては、誘導電動機、誘導発電機、直流電動機、直流発電機、同期電動機、同期発電機、同期調相機等がある。
【0034】
図1は本発明の実施形態を示す図で、特に同期発電機または同期電動機の斜視図である。図2は回転電機の土台枠(台床またはベースともいう)を示す斜視図である。
図1および図2で示すように、本実施形態による土台枠18は、以下説明する部品18aから18iによって構成されている。
【0035】
すなわち、回転電機の固定子19を両側から挟むように、ほぼコ字形に形成された一対の固定子設置板18aと、この一対の固定子設置板18aの真下に位置するように図示しない基礎上に設置され、互いに対向させるように配置された一対の基底板18bと、これら固定子設置板18aおよび基底板18bを接合する縦板18cと、固定子設置板18a、基底板18bおよび縦板18c間を接合する複数枚の補強板18dと、前記一対の固定子設置板18aの対向する両端部18a1の間に配置されて固定子設置板18aの上面から寸法Gだけ低い高さとなるように設置された軸受設置板18eと、前記一対の固定子設置板18a、一対の基底板18bおよび一対の軸受設置板18eで形成した枠体の内部空間部18fの下部を船底の形状に構成し、この船底状の内部空間部を下から覆う船底の形状をしたカバー18gと、前記固定子設置板18aおよび基底板18bの間を接合するとともに、軸受設置板18eおよびカバー18g間を接合するほぼコ字形に形成された一対の側面板18hと、前記固定子設置板18aの両端部18a1間および軸受設置板18eで形成した凹部を内部空間部18f側から閉塞する隔壁板18i、とから構成されている。
【0036】
なお、以上の説明では、内部空間部18fの下部は船底の形状であり、カバーも船底の形状であると説明したが、要するに内部空間部18fは固定子19の下半部の一部を収納できる形状であればよく、また、この内部空間部18fに収納された固定子19の下半部の一部を下から覆うカバーであれば、図1乃至4に記載の形状に拘る必要はない。
【0037】
そして、これら固定子設置板18a、基底板18b、縦板18c、補強板18d、軸受設置板18e、カバー18g、側面板18hおよび隔壁板18iの互いに接触する部分は、溶接等で強固に接合することによって土台枠18全体の剛性を高めるようにしている。
なお、上記の説明では基底板18bと軸受設置板18eとを別の板で構成したが、可能であれば基底板18bと軸受設置板18eとを一枚の板で構成してもよい。
【0038】
このように構成された土台枠18の前記一対の固定子設置板18aの中間部分にはそれぞれ2個ずつ固定子座10を設け、この固定子座10に対して、固定子19の両端の鉄心押さえ板20に張り出す形状で設けた脚部21の下面に固定された取付け座22を載置し、固定子座10および取付け座22間をボルト・ナットで固定する。
【0039】
そして、軸受設置板18eの位置は前述したように、前記固定子設置板18aよりも寸法G分だけ低くなっており、その高さ寸法G分だけ低い一対の軸受設置板18eに、それぞれ2個ずつ軸受座23を設け、この軸受座23に軸受15を載置し、ボルト・ナット等で固定することによって回転電機の据付が完了する。この据付完了状態では、固定子19の下半部の一部は土台枠18の空間部18fの中に収納される。
【0040】
次に、図3および図4を参照して説明する。
図3および図4はそれぞれ図1を回転軸方向および正面から見た図であるが、本実施形態の特徴点を明確にするために、固定子19の固定子巻線5および回転子13の磁極12等を省略し、全体として簡略化して示している。
【0041】
図3および図4に示すように、土台枠18の固定子設置板18aから固定子19の中心0−0までの垂直方向の距離Hを固定子19の外周半径rよりも小さく(H<r)しており、特に破線で示すように固定子19の一部が土台枠18の固定子設置板18aよりも寸法G分だけ下方に位置している。したがって、従来の回転電機の寸法関係を示した図6に比べて、固定子19の中心0−0は土台枠18の固定子設置板18aにより近くなる。
【0042】
次に、図3において固定子19と回転子13の間に吸引力Fが水平方向に働いた場合の固定子19の支持剛性を考察する。
固定子19の中心0−0から土台枠18の固定子設置板18aまでの垂直方向の距離がHのとき、固定子にはF×Hの回転モーメントが発生し、そのモーメントにより固定子19を変形させ変位を生じさせ、結果として、鉄心押さえ板20の脚部21に応力を発生させることになる。したがって、吸引力Fが同じであれば距離Hが小さいほど固定子19を回そうとするモーメン卜は小さくできるので、距離Hが小さいほどその支持剛性は高い。
【0043】
図6に示した従来の回転電機における土台枠9の上面から固定子6または回転子14の中心0−0までの垂直方向の距離hに比べ、本実施形態による回転電機では距離Hを小さくできる(H<h)ので、その支持剛性はより高くなる。
【0044】
また、本実施形態では回転軸10の中心0−0から軸受座23の下面までの垂直方向の距離はIであり、吸引力Fが発生したときの回転モーメントは、F×Iである。これに対して図6に示した従来の回転電機の場合、回転モーメントはF×h(F×I<F×h)であり、本実施形態による回転電機の方が支持剛性はより高くなる。
【0045】
なお、以上の説明では軸受座23の位置を寸法Gだけ低くしたが、この関係は必須ではなく、固定子19の中心0−0から土台枠18の固定子設置板18aまでの垂直方向の距離Hが、固定子19の外周半径rよりも小(H<r)であれば、同様な効果を得ることができる。
【0046】
したがって、回転子14が発生する磁界により、固定子19と回転子14には互いに引き寄せあう力が発生した場合や、回転子14の重量の不釣合いによって軸受15を揺り動かす力が発生したときにも、固定子19および回転軸11の中心がずれる変位や振動は小さく、よって従来の回転電機に比べて回転電機の構成要素に過大な力が発生することはより小さくできる。
【0047】
また、固定子鉄心1には適当な間隔で冷却のための通風ダクト4が設けられており、従来の回転電機と同様に回転子14が回転することによって、羽根17が空気を送風し、固定子19の内側から外側へ向かって通風ダクト4を通って吐き出される。仮に土台枠18の底面にカバー18gを設けずに、固定子19の下部が露出した状態を考えると、通風ダクト4から吐き出された冷却空気はそのまま開放空間へ拡散していく。しかし、回転電機の設置状態はその設置場所によって様々であり、固定子19の下部の開放空間がどのような状態である力を回転電機の設計段階で予測することは不可能である。
【0048】
このような場合、回転電機の設置状態によっては固定子19の下部の冷却空気の通風抵抗が大きく変化し、設計時に想定した冷却風量とすることは困難であるが、本実施形態では、固定子19の下部を覆う船底のような形状のカバー18gを設けたことにより、回転電機がどのような場所に設置されても固定子19の下部の状態は変わらないため、設計時に想定した冷却空気の風量とすることができる。
【0049】
また、カバー18gによって土台枠18の底面を船底のように構成することで、土台枠18自体の剛性を向上させ、さらに、固定子設置板18aと、ほぼコ字形に形成された側面板18hと、軸受設置板18eとで凹状の空間部と、枠体内部の空間部18fとの間を垂直な隔壁18iによって閉塞し、接合部を溶接するようにしたので、土台枠18全体の剛性を高めることができ、固定子19および回転軸11の中心がずれる変位を一層小さくできる。さらに、軸受15から潤滑油が漏洩した場合においても、隔壁18iによって漏洩した潤滑油が固定子19側へ流れることを防ぐことができ、漏洩した潤滑油が固定子巻線5に付着した場合の絶縁不良等の不具合の発生を回避することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…固定子鉄心、3…長ボルト、4…通風ダクト、5…固定子巻線、10…固定子座、11…回転軸、12…回転子巻線、13…磁極、14…回転子、15…軸受、17…羽根、18…土台枠、18a…固定子設置板、18b基底板、18c…縦板、18d…補強板、18e…軸受設置板、18f…内部空間部、18g…カバー、18h…側面板、18i…隔壁板、19…固定子、20…鉄心押さえ板、21…脚部、22…取付け座、23…軸受座。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の固定子鉄心およびこの固定子鉄心の内周面に巻回された固定子巻線から構成される固定子と、前記固定子内に配置され固定子に対して相対的に回転可能な回転子と、前記回転子を支持する軸受と、前記固定子を設置するための固定子設置板および前記軸受を設置するための軸受設置板を有する土台枠とを備え、前記固定子座に固定子を設置し、軸受座に軸受を設置した回転電機において、
前記固定子の中心から前記土台枠の固定子設置板までの垂直方向の距離が、固定子の外周半径よりも小さくなるようにしたことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記土台枠で形成された内部空間部を前記固定子の下半部の一部を収納可能な形状とし、当該内部空間部を下からカバーによって覆うことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記土台枠は、ほぼコ字形に形成されて両端部を互いに対向させるように配置されるとともに前記固定子座を設けた一対の固定子設置板と、基底板と、これら固定子設置板および基底板間を接合する縦板と、前記一対の固定子設置板の対向する両端部間に配置されるとともに当該固定子設置板の上面から所定の寸法だけ低い位置に設置されかつ前記軸受座を設けた一対の軸受設置板と、前記一対の固定子設置板、基底板および一対の軸受設置板で形成した枠体の内部空間部を下から覆うカバーと、前記固定子設置板および基底板間を接合するとともに、軸受設置板およびカバー間を接合する一対の側面板と、前記固定子設置板の両端部間および軸受設置板で形成した凹部を前記内部空間部側から閉塞する隔壁板、とから構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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