回転電機
【課題】 本発明は、固定子コアの軸方向一方に配置されるモータカバーを簡単、かつ確実に固定できる安価な回転電機を得ることを目的とする。
【解決手段】 固定子コアの複数の主極に巻き線を施してなる固定子と、この固定子にエアギャップを介して回転自在に設けられた回転子と、固定子の軸方向両側のうち少なくとも一方を覆うモータカバーとを備える。このモータカバーには、端縁の一部が固定子コアの端面に当接する環状外枠部が形成されると共に、軸方向内側に向く方向に延出された複数の係合片が形成され、該各係合片の先端部分に形成された係合爪が固定子コアの段部に係止することにより、モータカバーが固定子コアに固定される。
【解決手段】 固定子コアの複数の主極に巻き線を施してなる固定子と、この固定子にエアギャップを介して回転自在に設けられた回転子と、固定子の軸方向両側のうち少なくとも一方を覆うモータカバーとを備える。このモータカバーには、端縁の一部が固定子コアの端面に当接する環状外枠部が形成されると共に、軸方向内側に向く方向に延出された複数の係合片が形成され、該各係合片の先端部分に形成された係合爪が固定子コアの段部に係止することにより、モータカバーが固定子コアに固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き線極である複数個の主極に巻き線を施してなる固定子と、固定子の内側に回転自在に配置された回転子とを備えたステッピングモータ等の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステッピングモータは、プリンタ,ファクシミリ,複写機などの情報機器分野や、FA機器などの産業機器分野を含め、広範囲に渡ってその駆動部分に使用されている。近年では、ステッピングモータの総需要は年々拡大傾向にあり、その用途も広範囲に及んでおり、それに伴い機器側に貢献できるモータのコンパクト化設計、低コスト化の要求も高まってきている。小型で安価、高速高トルク、低振動回転がステッピングモータ等の回転電機に要求されている。
【0003】
この種ステッピングモータとしては、例えばロータに磁性体と永久磁石とを用いたハイブリッド型の場合、特開平3−212149号公報や実開昭55−24020号公報等に示される構成のものが多用されている。すなわち、環状の磁性体枠より放射状でかつ内方に突出した複数の主極にそれぞれ巻き線を施して固定子を構成し、この固定子にエアギャップを介して、対の磁性体間に軸方向に着磁した永久磁石を挟持してなるハイブリッド型回転子を対向させて構成されている。
【0004】
上述したステッピングモータにあっては、そのステップ角として1.8°構成のものが多用されているが、このステップ角を高精度に維持、制御するためには、固定子と回転子との間のエアギャップを例えば0.05mmに管理することが要求される。このため、固定子を支持するモータケースにアルミ等の金属製エンドキャップやブラケットを固定し、これにボールベアリングを保持し、回転子の回転子軸をボールベアリングにて高精度に回転支持するようになっている。しかしながら、このようなステッピングモータにあっては、モータケースが大型化するだけでなく、金属材料を大量に使用する結果、コスト高となる問題を有している。
【0005】
一方、従来では、固定子のコア外周面をモータケースの一部として利用し、固定子の軸方向両側にのみモータカバーを取り付けるようにしたものがあり、例えば特公平6−95817号公報や特公平8−28959号公報等に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−212149号公報
【特許文献2】実開昭55−24020号公報
【特許文献3】特公平6−95817号公報
【特許文献4】特公平8−28959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献3及び特許文献4のものでは、固定子の軸方向両側にカバーを配置してモータケースとすることができるため、構造が簡単になり、引用文献1及び引用文献2のものに比較してコスト低減となるが、このカバーの取り付け構造としては、ねじ止めや溶接が専ら採用されており、取り付け構造が依然として複雑であり、手間を要し、なおコスト高となる問題を有している。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、簡単かつ確実にモータカバーを固定子コアに固定できるようにした安価なステッピングモータ等の回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明の回転電機にあっては、略環状のコアバック部及びこのコアバック部より内方に突出形成された複数個の主極からなる固定子コアを有し、該固定子コアの主極に巻き線を巻回して構成された固定子と、この固定子の内側にエアギャップを介して回転自在に設けられた回転子と、固定子の軸方向両側のうち少なくとも一方を覆うモータカバーと、を備えてなる回転電機において、モータカバーに、端縁の一部が固定子コアの端面に軸方向外側から当接する環状外枠部と、軸方向外側から軸方向内側に向く方向に延出された複数の係合片とを形成し、この各係合片の先端部分に軸方向に対しほぼ直交する方向に突出する係合爪を形成し、一方、固定子コアに、少なくとも係合爪に対応する位置に段部を形成し、係合片の係合爪をこの段部に係止させることにより、モータカバーを固定子コアに固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
上述した固定子コアの略環状コアバック部は外形を平面視ほぼ正方形状に形成し、これに合わせてモータカバーの環状外枠部も平面視略正方形状に形成し、係合片を外枠部における正方形の四隅の位置にそれぞれ配置するのがよい。
また、モータカバーは、少なくとも固定子コアを軸方向外側から覆うカバー部を有し、このカバー部の外周縁より外枠部が立ち上げられると共に、外枠部に近接した位置のカバー部より係合片が立ち上げられる構成とし、係合片の先端部の係合爪を径方向外側に向けて突出形成させ、他方、固定子コアを、係合片の対応位置に孔を透設した外側積層体と係合片の対応位置及びこれより径方向外側を切り欠いた形状の内側積層体とを積層したものとし、係合片の先端部を外側積層体の孔及び内側積層体の切り欠き部に通して係合爪を外側積層体における孔の周縁を段部として係止されるようにしてもよい。
【0011】
また、係合片の径方向外側に、外枠部を延伸させて係合片に対峙するよう補助片を設け、この補助片の先端部に係合片側に突出した補助爪を形成し、当該補助爪を外側積層体の端縁に係止されるのがよい。特に、補助片に隣接してこの補助片が配置される隅の両側の2辺にほぼ平行な側片を外枠部より延設させ、両側片を固定子コアに当接させることにより当該モータカバーの回り止めとする構成が望まれる。
【0012】
さらに、固定子コアの外周面を、4辺形の各辺のそれぞれの表面が各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出するように形成し、モータカバーの環状外枠部の各辺における端縁を固定子コアの各辺の突出端面に当接させる構成とすることができる。或いは、上述のように、固定子コアの外側面のうち4辺形の各辺に段差を持って突出する膨出部を形成する場合に、モータカバーの外枠部に補助片と側片とを一体に設けた上で、該各膨出部を2つの隅の向かい合う側片間に嵌合すると共に、環状外枠部の各辺における端縁を膨出部の端面に当接させる構成とすれば、モータカバーと固定子コアとをより確実に結合することができる。
【0013】
また、モータカバーのカバー部に、回転子を回転自在に支持する軸受のためのホルダ部を受ける環状受け座を形成し、この環状受け座に保持されたホルダ部の一部が固定子コアを支持する構成とすることができる。この場合、環状受け座を扁平円錐状薄肉部を介してカバー部の底壁に連設させることで、環状受け座をカバー部の内底面より軸方向内側に偏倚して位置させ、固定子コアを環状受け座に対して薄肉部の弾性を利用して軸方向外側に押し付けた状態で、係合片の係合爪を固定子コアの段部に係止させるようにすれば、モータカバーを固定子コアに強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
モータカバーの外枠部の端縁の一部を固定子コアの端面に軸方向外側から当接した上で、モータカバーの外枠部に一体に設けた係合片の係合爪を固定子コアに設けた段部に係止することにより、モータカバーを固定子コアに固定することができ、従来のように、ねじ止めや溶接等の煩雑な作業が不要となり、簡単かつ確実にモータカバーを固定子コアに固定でき、この結果、安価なステッピングモータ等の回転電機を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による回転電機を示す斜視図である。
【図2】図1の回転電機の切断正面図である。
【図3】図1の回転電機の正面図である。
【図4】図1の回転電機の下面図である。
【図5】図4におけるA−B線切断正面図である。
【図6】図1の回転電機における四隅の一部を示し、(a)は図4の矢印C方向から見た場合の一部の正面図、(b)は(a)の切断側面図である。
【図7】図1の回転電機におけるモータカバーの斜視図である。
【図8】図7のモータカバーの側面図である。
【図9】図7のモータカバーの一部の平面図である。
【図10】図1の回転電機の固定子コアの平面図である。
【図11】本発明の他の実施形態による回転電機を示す斜視図である。
【図12】図11の回転電機の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る回転電機の実施形態につき、以下図面に基づいて説明する。
<実施形態1>
【0017】
図1〜図4は、本発明の回転電機の一例である2相ハイブリッド(HB)型ステッピングモータの全体構成を示し、図1は斜視図、図2は切断正面図、図3は正面図、図4は下面図である。このHB型ステッピングモータは、図10に示すような主極数を8とした固定子と、HB型回転子とを組合わせたものであり、図10では巻き線の図示は省略してあるが、8主極の巻き線極である首部にはそれぞれ巻き線が施され、1個おきの4個の主極に巻回された巻き線が連結されて1相分を形成し、残りの4主極で他の1相分を形成し、全体で2相巻き線としたHB型回転電機である。固定子は不平衡電磁力が発生せず高速性に優れた8主極構造を採用した例である。
【0018】
固定子10は、外形がほぼ正四辺形の環状のコアバック部12aとこのコアバック部12aより放射状に内方に突出して設けられ周方向に等間隔に配列された8個の主極12bとからなる固定子コア12と、各主極12bに巻回された2相の巻き線14(図2に示す)と、各主極12bと巻き線14との間に介在された上下の絶縁部材16,18とからなり、巻き線極である各主極12bの先端には3個の誘導子歯12cが突出して設けられている。各主極12bにおいて、3個の誘導子歯12cは等間隔に配置され、かつ主極12bの中心線に対し対称位置に配置されている。
【0019】
固定子コア12は複数枚の珪素鋼板を積層して構成されている。図10に示すように、垂直軸(X軸)と水平軸(Y軸)の互いに直交する2つの線上に配置された4個の主極12b、つまり90°毎に配置された4個の主極12bで1相分(A相、C相)を構成し、残りの4個の機械角で互いに90°隔てて且つ1相分主極からは機械角で45度隔てて配置された主極12bで2相分(B相、D相)を形成する。各相において、90°毎の4個の主極12bは巻き線14への通電時に交互に異極となるように励磁され駆動される。
【0020】
固定子コア12を構成する複数枚の珪素鋼板には、図10より明らかなように、正方形状のコアバック部12aの各辺における外表面が四隅の外表面より周方向外側に段差を持って突出されており、このような珪素鋼板を積層することにより、固定子コア12の各辺にそれぞれ各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出する膨出部12dが形成される。この膨出部12dの表面はモータの外表面の一部を構成することになる。また、固定子コア12は、四隅における孔形状の異なる2種類の珪素鋼板を用いて構成されている。すなわち、第1の珪素鋼板は、図10に示すように、四隅にそれぞれ円形孔12eを透設したものであり、第2の珪素鋼板は、四隅の円形孔12eに加えこの円形孔12eの径方向外側を開口した切り欠き溝12fを形成したものである。そして、図5に示すように、第1の珪素鋼板を積層した上断層の積層体と、第2の珪素鋼板を積層した中間層の積層体と、第1の珪素鋼板を積層した下段層の積層体の3層を積み重ねて固定子コア12を構成している。この結果、固定子コア12の四隅の外周面には、その中間層に外部に開口する凹窪部12gが形成され、上段層及び下段層の円形孔12eが上下からこの凹窪部12gに連通する構成になっている。
【0021】
一方、固定子コア12の内側に配置された回転子20は、図2に示すように、回転子軸22に軸方向に並んで固定された2個の回転子磁極24A,24Bと、この回転子磁極24A,24B間で挟持され軸方向に着磁された円盤状の永久磁石26とにより構成されている。これら回転子磁極24A,24Bはそれぞれ珪素鋼鈑等を積層して構成され、それぞれの外周には等ピッチで複数個(例えば22個)の磁歯25が等間隔に設けられている。対の回転子磁極24A,24Bは互いに歯ピッチが1/2ずれて配置されており、この2個の回転子磁極24A,24Bとこの間に挟持された永久磁石26とにより回転子要素28が構成されている。永久磁石26は例えばフェライト磁石により構成されている。勿論、他の磁石材料、ネオジウム等の希土類磁石を用いることもできる。
【0022】
回転子磁極24A,24Bの磁歯25の歯数は22であるから、回転子磁歯ピッチは360°/22=16.36°であり、ステップ角は2相機なので回転子磁歯ピッチを4等分した値となり、4.09°である。すなわち、本モータはHB型であり、一方の回転子磁極24AがS極に磁化されているとすれば、その各磁歯25の中間にはN極に磁化された他方の回転子磁極24Bの磁歯25が永久磁石26の厚み分軸方向に隔てて存在する。従って回転子要素28としての磁歯25のN極とS極のピッチは8.18°であり、この値を相数で割ったものがステップ角であるから、本実施形態は2相機のため、ステップ角は上述した4.09°となる。
【0023】
図1〜図3において、固定子10の軸方向両側(便宜上、下側及び上側と称する)には、モータカバーを構成する下カバー30及び上カバー40が配置され、固定子10の固定子コア12における外周面と共にモータ外表面を構成している。両カバー30,40の外形はそれぞれ固定子コア12と同様にほぼ正四辺形状に形成されている。
【0024】
下カバー30は、底面を構成する底板部31、四辺形状の環状外枠部32、及びこの外枠部32の一辺に連続的に設けられたコネクタ受け部33を有しており、PPS,PBT等の樹脂により一体成形されている。底板部31にはその中央に開口31aが設けられ、この開口31aの周縁に回転子軸22と同心状になるよう厚肉の環状受け座31bが形成され、後述する軸受ホルダを支持するようになっている。この環状受け座31bは底板部31に対して扁平円錐状の薄肉部31cを介在させる構成になっており、これにより、環状受け座31bが底板部31の底面より軸方向内側に偏倚して位置すると共に、薄肉部31cの弾性により底板部31に対して軸方向に変位することが可能な構造になっている。この下カバー30は、後述する固定構造(係止構造)によって外枠部32の端面を固定子コア12の下面に当接させた状態で固定子10に固定され、固定子コア12の下面より導出している絶縁部材18及び巻き線14が覆われる。
【0025】
下カバー30の一辺のコネクタ受け部33は外部との接続用のターミナル部を構成する。すなわち、図1及び図2に示すように、コネクタ受け部33は下カバー30の外枠部32の一部を切り欠くと共に、その周縁を底板部31と共に側方に延出して形成されており、固定子10の下側の絶縁部材18に取り付けられた回路基板34がコネクタ受け部33に支持されると共に、回路基板34及びこれに実装されたコネクタ35がコネクタ受け部33に収容されるようになっている。回路基板には巻き線14の端部がはんだ付けにて電気的に接続され、これが回路基板34によってコネクタ35の端子に接続されており、従って、外部電源や信号をこのコネクタ35を利用して供給することにより巻き線14への通電及びその制御を行うことができるようになっている。
【0026】
下カバー30の外枠部32における四隅の位置には、角の位置に後述する係合片の係合作用を補助する補助片32aとその両側に位置し当該角を挟む2辺にほぼ平行な側片32bがそれぞれ外枠部の上縁より軸方向上方に突出するかたちで延設されている。補助片32aとその両側の側片32bとの間にはスリット32cが設けられ、少なくとも補助片32aが個別に径方向外側に弾性変位できるようになっている。補助片32aの上部には固定子コア12に係止する補助爪32dが形成されているが、この補助爪32dの突出量は比較的小さく設定されている。
【0027】
下カバー30の四隅における内側寄りにはそれぞれ係合片36が設けられている。各係合片36はそれぞれ外枠部32の四隅に対し一定距離内側に位置し底板部31より立ち上げられると共に、前記補助片32aに平行に対峙するかたちで補助片32aとほぼ同じ高さに突出形成されている。この係合片36は、上記した固定子コア12における四隅の円形孔12eに挿通し得る幅に形成され、係合片36の上端部の外側面、つまり補助片32aに向かい合う面に外方向に比較的大きく突出する係合爪36aが形成されている。この係合片36は固定子コア12における下段層の円形孔12eに挿通され、中間層の凹窪部12gにおいて、係合片36の係合爪36aが円形孔12eの周縁を段部として係止されており、これにより固定子コア12と下カバー30との軸方向の抜けが阻止される。このとき、補助片32aの補助爪32dも固定子コア12における下段層の端縁(上縁)に係止する。
【0028】
ここで、係合片36は下カバー30の底板部31より立ち上げているため、立ち上げ長が長く、比較的大きな弾性たわみ量を確保している。このため、係合片36の係合爪36aの突出量を大きくして係止代を十分確保しても係合時の操作性が悪くなることはない。他方、外枠部32より立ち上げた補助片32aはたわみ量は小さい反面、剛性を確保している。このため、係合爪36aのたわみによる固定子コア12と下カバー30とのずれやゆがみが補助片32aにより抑制される。この補助片32aには補助爪32dを設けない構成とすることもできる。この場合、補助片32aと側片32bとはスリット32cを設けることなく連続的に形成することもできる。なお、図4に示すように、底板部31の四隅の位置には係合片36の外側面に対応して案内孔37が形成されている。これは、係合片36の係合爪36aを成形時に同時形成する際にスライドコアを案内するためのものである。
【0029】
ところで、図1〜図3より明らかなように、下カバー30外枠部32における各辺の上端面には、固定子コア12の各辺の膨出部12dの端面が載置され、下カバー30が固定子コア12を支持するかたちになっている。このとき、固定子コア12の膨出部12dは隣り合う2隅のそれぞれの側片32b間に嵌り込むようになっているが、各側片32bはそれぞれ、図8及び図9に示すように、補助片32aとの反対側の側縁が外側に行くに従い厚みが小さくなるように形成されると共に、この厚みの小さくなった側縁に上方に向けて少し拡開するよう小さな傾斜αが形成されている。外枠部32の各辺における2つの側片32b間の間隙はその最下端で最も小さくなっているが、この寸法L1は、
図10に示すように、固定子コア12の各辺の膨出部12dの幅寸法L2に対してコンマ数mm程度小さくなっている。このため、外枠部32の各辺における両側片32b間に固定子コア12の膨出部12dを嵌合させて膨出部12dの端面を外枠部32の上縁に当接させようとすると、膨出部12dの両側が両側片32bの基部側縁を削りながら押し潰すことになり、膨出部12dが両側片32bに密着した状態で嵌合し、固定子コア12ががたつくことなく外枠部32に支持されることになる。加えて、この密着状態で四隅の各係合片36が固定子コア12の所定段部に係止される結果、強固な固定構造を得ることになる。
【0030】
次に、上カバー40について説明する。固定子コア12を上方から覆うように設けられる上カバー40は薄板金属板をプレス成形することにより形成され、天板部41と四辺形状の外枠部42とからなっており、天板部41の中央部には、下カバー30の底板部31の開口31aの内径にほぼ等しい内径の開口41aが形成されている。また、天板部41の四隅の位置には、固定子コア12の四隅の円形孔12eに対応してねじ孔41bがバーリング加工等を伴って形成されている。この上カバー40は、外枠部41の下端面を固定子コア12における膨出部12の上面に当接させた状態で、次に説明するかしめ技術によって固定子10に固着されている。
【0031】
四辺形状の外枠部42における四隅に対応する位置には固定片43が一体にかつ下方へ延出させて設けられている。この各固定片43は、隅部の角部に位置する主部43aとこの両側に位置しこの角部を挟む両辺の一部を構成しかつ主部を補強する側部43bとを有してなり、固定子コア12の隅部において隣り合う膨出部12d間の段差に嵌り込むようなかたちになっている。この固定片43の両側部43bは上カバー43の固定子コア12に対する回り止めとして機能しており、加えて、後述するかしめ固定の際の変形に対する補強を兼ねている。固定片43の主部43aの下部寄りには、図6(a)に明示するように、抜き孔43cが設けられ、主部43aの抜き孔43cより下側の部分がかしめ作用部43dとなっている。抜き孔43cの内下縁はその中央位置が最も低くなるようなV字状の形態となり、2つのテーパ面43c1,43c2が形成されている。この固定片43の下部は固定子コア12の上段層と中間層との接合位置と合致し、中間層の凹窪部12gの上縁が、上カバー40の外枠部42下端面が固定子コア12の上面に当接する状態において、固定片43の主部43aにおける抜き孔43cのテーパ面43c1,43c2に一部クロスするような高さに設定されている。
【0032】
そして、上カバー40の固定子10への固定に際しては、上述したように、固定子コア12上に上カバー40をその外枠部42の下端面を固定子コア12の上端面に当接させて配置し、次に、上カバー40の四隅に位置する各固定片43の主部43aにおける作用部43dの中心部をそれぞれ外側から内方に向けて打刻し、つまりそれぞれの凹窪部12gに作用部43dの一部を変形させて入り込ませ、上カバー40をかしめ固定する。このとき、作用部43dの一部が固定子コア12の凹窪部12gに入り込むことにより上カバー40の抜け止め,脱落防止が実現するが、本実施形態の構造の場合、特に上カバー40の強固な固定が実現する。すなわち、図6(a),(b)よりわかるように、固定片43の主部43aにおける抜き孔43cの下縁のテーパ面43c1,43c2、つまり作用部43dの上縁テーパ面が固定子コア12の凹窪部12gの上縁とクロスしているため、作用部43dを凹窪部12g内に変形させた際、作用部43dの上縁テーパ面が凹窪部12g内に入り込むに従い固定片43に下方への引っ張り力が発生することになり、上カバー40を固定子コア12に押し付けることができ、この押し付け力は上カバー40の四隅でそれぞれ作用し、上カバー40全体を固定子コア12にしっかり固定できることになる。
【0033】
上述したかしめ作業に際しては、抜き孔43cの下縁のV字の頂点に対応するかしめ作用部を目当てに行えばよく、しかもこの位置はかしめ作用部43dの強度的に最も変形しやすい箇所になるため、かしめ作業は容易であり、かしめによる変形も対称状に得ることができる。つまり、一般にかしめ作業においては、加える力と変形形状、変形量の管理が比較的難しい傾向にあるが、上記した形状であれば、かしめ作業が容易である上、再現性の良い変形量を得ることが可能である。
【0034】
固定子コア12の軸方向両側の内周部には、軸受ブッシュ50A,50Bが取り付けられ、これにそれぞれ回転子軸22を回転自在に支持するメタル軸受52A,52Bが保持されている。この軸受ブッシュ50A,50BはPPS等の樹脂により成形された同一形状のものであり、外径が固定子コア12の各主極12bにおける誘導子歯12cの内径にほぼ等しく形成された本体部となる円環状ベース部50aと、この外周部に形成された段付き嵌合部50bと、嵌合部50bより軸方向に延出され端面にカバー支持面が形成された円筒状の取付支持筒50cと、ベース部50aにおいて取付支持筒50cの内側にこれと同心状に突設された円筒状のインロー部50dと、ベース部50aの内周部に軸方向に延出され内周に軸受保持面が形成された軸受保持筒50eと、この軸受保持筒50eの先端より内方に延出形成されたカバー部50fとを備えてなる。
【0035】
両軸受ブッシュ50A,50Bの軸受保持面にはメタル軸受52A,52Bが圧入により固定されている。両軸受ブッシュ50A,50Bはそれぞれのベース部50aが向かい合う状態で固定子コア12にその軸方向両側から取り付けられる。すなわち、軸受ブッシュ50A,50Bのそれぞれの嵌合部50bを固定子コア12の各主極12bにおける誘導子歯12cの内径に嵌合させ、かつそれぞれの嵌合部50bの段付き面を固定子コア12の端面に当接させることにより取り付けられ、軸受ブッシュ50A,50Bの調芯が嵌合部50bの嵌合により行われると共に、軸方向位置が段付き面により規制されることになる。
【0036】
下側の軸受ブッシュ50Bは、下カバー30の底板部31における開口31aにインロー部50dを遊嵌させた上で、環状受け座31bに取付支持筒50cの端面のカバー支持面を当接し、この状態で下カバー32を固定子コア12に固定することにより軸受ブッシュ50Bも同時に固定される。このとき、軸受ブッシュ50Bは環状受け座31bに対して扁平円錐状の薄肉部31cの弾性を利用してこれを撓ませており、この弾性復帰力で係合片36の係合爪36aが固定子コア12に対し強固に係止することになるため、固定子コア12と下ケース30並びに軸受ブッシュ50Bが確実に固定されることになる。
【0037】
また、上カバー40の固定子コア12への固定時、軸受ブッシュ50Aのインロー部50dが上カバー40の天板部41の開口41aに遊嵌し、取付支持筒50cのカバー支持面に上カバー40の天板部41が当接し、軸受ブッシュ50Aが固定子コア12と上カバー40とに挟み込まれた状態となり、上述したかしめ技術によって上カバー40が固定子コア12に固定されることにより、固定子コア12と上ケース40並びに軸受ブッシュ50Aが確実に固定される。このとき、軸受ブッシュ50Aのインロー部50dは、上カバー40の天板部41の開口41aより突出する。従って、このインロー部50dの導出部分を利用することにより、当該モータを各種機器へ取り付けた場合に、回転子軸22を精度よく各種機器の入力部に合致させることが可能となる。
【0038】
上述した構成のステッピングモータにあっては、パルス信号により回転することができるステップ角が4.09°に設定されており、一般的な1.8°のものに比べ、回転角度を大きく設定することができるため、この分、高速に回転させることができる。つまり、実施形態のものは高速化を可能としたステッピングモータであるといえる。そして、モータの出力は回転数とトルクとの積に比例するため、この高速化により出力が増大し、結果として効率が高まることになる。
【0039】
一方、上述したステッピングモータでは、従来のものと異なり、回転子20の軸受としてメタル軸受52A,52Bが用いられている。この種のメタル軸受52A,52Bはいわゆるスベリ軸受であるため、固定子と回転子間のエアギャップがボールベアリングの場合のエアギャップより多少大きく設定されている。この場合、固定子と回転子間のエアギャップはモータの効率に影響し、エアギャップが大きくなるほど効率が低下する傾向にある。しかしながら、上記実施形態のものでは、ステップ角の設定により高速化し効率を高めた構成になっているため、軸受としてメタル軸受52A,52Bを用いることに伴って効率の低下を招いても、これを補うだけの効率向上を図る結果、従来の場合と同等以上の効率を発揮するステッピングモータを得ることができる。
【0040】
ここで、上記固定子コア12は、珪素鋼板を所定枚数積層して構成されるが、この珪素鋼板を所定形状にプレス打ち抜きしたものを90°ずつ次々に回転して積層する手法を採用することにより、パーミアンスベクトルのバラツキ抑制効果を得ることができる。つまり、図10に示した固定子コア12は90°点対称構造であるため、90°回転させて重ね合わせることにより、プレス抜き型の僅かな寸法の差や珪素鋼板の板厚差によるパーミアンスベクトルのバラツキを、キャンセルさせることができる。
<実施形態2>
【0041】
次に、本発明の実施形態2につき、図11及び図12を用いて説明する。なお、これらの図面において、前記と同一符号のものは同一もしくは相当するものを示すものとする。
【0042】
図11及び図12において、前記実施形態1のものと異なる点は上カバー40’であり、特に、上カバー40’の天板部41’において、内周縁が開口41aと同心状であり外周縁が正八角形をなす環状凹部41cを形成すると共に、この環状凹部41cに複数個の凸部41dを周方向に配列したことを特徴とするものである。この環状凹部41c及び複数個の凸部41dは、上カバー40’を金属板でプレス成形する際に同時に形成される。
【0043】
このような上カバー40’では、その天板部41’の強度が格段に高まり、当該モータを天板部41’のねじ孔41b等を利用して各種機器へ取り付ける場合に、モータ自体の取付強度を確保することができ、回転子軸22を精度よく各種機器の入力部に合致させることが可能となる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明による回転電機は、高速回転が可能で、高効率化を実現し、かつメタル軸受の採用により低コスト化を図ることができ、ステッピングモータとして、OA機器である複写機やプリンターの用途に対し安価で高速高トルク低振動の回転電機の提供が可能であり、工業的に大きな寄与が期待される。その他、医療機器、FA機器、ロボット、遊戯機械、住宅設備機器への応用も大いに期待される。
【符号の説明】
【0046】
10:固定子
12:固定子コア
12b:主極
12d:膨出部
12g:凹窪部
14:巻き線
20:回転子
30:下カバー
31:底板部
31b:環状受け座
31c:扁平円錐状薄肉部
32:外枠部
32a:補助片
32b:側片
36:係合片
36a:係合爪
50A,50B:軸受ホルダ
52A,52B:メタル軸受
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き線極である複数個の主極に巻き線を施してなる固定子と、固定子の内側に回転自在に配置された回転子とを備えたステッピングモータ等の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステッピングモータは、プリンタ,ファクシミリ,複写機などの情報機器分野や、FA機器などの産業機器分野を含め、広範囲に渡ってその駆動部分に使用されている。近年では、ステッピングモータの総需要は年々拡大傾向にあり、その用途も広範囲に及んでおり、それに伴い機器側に貢献できるモータのコンパクト化設計、低コスト化の要求も高まってきている。小型で安価、高速高トルク、低振動回転がステッピングモータ等の回転電機に要求されている。
【0003】
この種ステッピングモータとしては、例えばロータに磁性体と永久磁石とを用いたハイブリッド型の場合、特開平3−212149号公報や実開昭55−24020号公報等に示される構成のものが多用されている。すなわち、環状の磁性体枠より放射状でかつ内方に突出した複数の主極にそれぞれ巻き線を施して固定子を構成し、この固定子にエアギャップを介して、対の磁性体間に軸方向に着磁した永久磁石を挟持してなるハイブリッド型回転子を対向させて構成されている。
【0004】
上述したステッピングモータにあっては、そのステップ角として1.8°構成のものが多用されているが、このステップ角を高精度に維持、制御するためには、固定子と回転子との間のエアギャップを例えば0.05mmに管理することが要求される。このため、固定子を支持するモータケースにアルミ等の金属製エンドキャップやブラケットを固定し、これにボールベアリングを保持し、回転子の回転子軸をボールベアリングにて高精度に回転支持するようになっている。しかしながら、このようなステッピングモータにあっては、モータケースが大型化するだけでなく、金属材料を大量に使用する結果、コスト高となる問題を有している。
【0005】
一方、従来では、固定子のコア外周面をモータケースの一部として利用し、固定子の軸方向両側にのみモータカバーを取り付けるようにしたものがあり、例えば特公平6−95817号公報や特公平8−28959号公報等に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−212149号公報
【特許文献2】実開昭55−24020号公報
【特許文献3】特公平6−95817号公報
【特許文献4】特公平8−28959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献3及び特許文献4のものでは、固定子の軸方向両側にカバーを配置してモータケースとすることができるため、構造が簡単になり、引用文献1及び引用文献2のものに比較してコスト低減となるが、このカバーの取り付け構造としては、ねじ止めや溶接が専ら採用されており、取り付け構造が依然として複雑であり、手間を要し、なおコスト高となる問題を有している。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、簡単かつ確実にモータカバーを固定子コアに固定できるようにした安価なステッピングモータ等の回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明の回転電機にあっては、略環状のコアバック部及びこのコアバック部より内方に突出形成された複数個の主極からなる固定子コアを有し、該固定子コアの主極に巻き線を巻回して構成された固定子と、この固定子の内側にエアギャップを介して回転自在に設けられた回転子と、固定子の軸方向両側のうち少なくとも一方を覆うモータカバーと、を備えてなる回転電機において、モータカバーに、端縁の一部が固定子コアの端面に軸方向外側から当接する環状外枠部と、軸方向外側から軸方向内側に向く方向に延出された複数の係合片とを形成し、この各係合片の先端部分に軸方向に対しほぼ直交する方向に突出する係合爪を形成し、一方、固定子コアに、少なくとも係合爪に対応する位置に段部を形成し、係合片の係合爪をこの段部に係止させることにより、モータカバーを固定子コアに固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
上述した固定子コアの略環状コアバック部は外形を平面視ほぼ正方形状に形成し、これに合わせてモータカバーの環状外枠部も平面視略正方形状に形成し、係合片を外枠部における正方形の四隅の位置にそれぞれ配置するのがよい。
また、モータカバーは、少なくとも固定子コアを軸方向外側から覆うカバー部を有し、このカバー部の外周縁より外枠部が立ち上げられると共に、外枠部に近接した位置のカバー部より係合片が立ち上げられる構成とし、係合片の先端部の係合爪を径方向外側に向けて突出形成させ、他方、固定子コアを、係合片の対応位置に孔を透設した外側積層体と係合片の対応位置及びこれより径方向外側を切り欠いた形状の内側積層体とを積層したものとし、係合片の先端部を外側積層体の孔及び内側積層体の切り欠き部に通して係合爪を外側積層体における孔の周縁を段部として係止されるようにしてもよい。
【0011】
また、係合片の径方向外側に、外枠部を延伸させて係合片に対峙するよう補助片を設け、この補助片の先端部に係合片側に突出した補助爪を形成し、当該補助爪を外側積層体の端縁に係止されるのがよい。特に、補助片に隣接してこの補助片が配置される隅の両側の2辺にほぼ平行な側片を外枠部より延設させ、両側片を固定子コアに当接させることにより当該モータカバーの回り止めとする構成が望まれる。
【0012】
さらに、固定子コアの外周面を、4辺形の各辺のそれぞれの表面が各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出するように形成し、モータカバーの環状外枠部の各辺における端縁を固定子コアの各辺の突出端面に当接させる構成とすることができる。或いは、上述のように、固定子コアの外側面のうち4辺形の各辺に段差を持って突出する膨出部を形成する場合に、モータカバーの外枠部に補助片と側片とを一体に設けた上で、該各膨出部を2つの隅の向かい合う側片間に嵌合すると共に、環状外枠部の各辺における端縁を膨出部の端面に当接させる構成とすれば、モータカバーと固定子コアとをより確実に結合することができる。
【0013】
また、モータカバーのカバー部に、回転子を回転自在に支持する軸受のためのホルダ部を受ける環状受け座を形成し、この環状受け座に保持されたホルダ部の一部が固定子コアを支持する構成とすることができる。この場合、環状受け座を扁平円錐状薄肉部を介してカバー部の底壁に連設させることで、環状受け座をカバー部の内底面より軸方向内側に偏倚して位置させ、固定子コアを環状受け座に対して薄肉部の弾性を利用して軸方向外側に押し付けた状態で、係合片の係合爪を固定子コアの段部に係止させるようにすれば、モータカバーを固定子コアに強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
モータカバーの外枠部の端縁の一部を固定子コアの端面に軸方向外側から当接した上で、モータカバーの外枠部に一体に設けた係合片の係合爪を固定子コアに設けた段部に係止することにより、モータカバーを固定子コアに固定することができ、従来のように、ねじ止めや溶接等の煩雑な作業が不要となり、簡単かつ確実にモータカバーを固定子コアに固定でき、この結果、安価なステッピングモータ等の回転電機を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による回転電機を示す斜視図である。
【図2】図1の回転電機の切断正面図である。
【図3】図1の回転電機の正面図である。
【図4】図1の回転電機の下面図である。
【図5】図4におけるA−B線切断正面図である。
【図6】図1の回転電機における四隅の一部を示し、(a)は図4の矢印C方向から見た場合の一部の正面図、(b)は(a)の切断側面図である。
【図7】図1の回転電機におけるモータカバーの斜視図である。
【図8】図7のモータカバーの側面図である。
【図9】図7のモータカバーの一部の平面図である。
【図10】図1の回転電機の固定子コアの平面図である。
【図11】本発明の他の実施形態による回転電機を示す斜視図である。
【図12】図11の回転電機の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る回転電機の実施形態につき、以下図面に基づいて説明する。
<実施形態1>
【0017】
図1〜図4は、本発明の回転電機の一例である2相ハイブリッド(HB)型ステッピングモータの全体構成を示し、図1は斜視図、図2は切断正面図、図3は正面図、図4は下面図である。このHB型ステッピングモータは、図10に示すような主極数を8とした固定子と、HB型回転子とを組合わせたものであり、図10では巻き線の図示は省略してあるが、8主極の巻き線極である首部にはそれぞれ巻き線が施され、1個おきの4個の主極に巻回された巻き線が連結されて1相分を形成し、残りの4主極で他の1相分を形成し、全体で2相巻き線としたHB型回転電機である。固定子は不平衡電磁力が発生せず高速性に優れた8主極構造を採用した例である。
【0018】
固定子10は、外形がほぼ正四辺形の環状のコアバック部12aとこのコアバック部12aより放射状に内方に突出して設けられ周方向に等間隔に配列された8個の主極12bとからなる固定子コア12と、各主極12bに巻回された2相の巻き線14(図2に示す)と、各主極12bと巻き線14との間に介在された上下の絶縁部材16,18とからなり、巻き線極である各主極12bの先端には3個の誘導子歯12cが突出して設けられている。各主極12bにおいて、3個の誘導子歯12cは等間隔に配置され、かつ主極12bの中心線に対し対称位置に配置されている。
【0019】
固定子コア12は複数枚の珪素鋼板を積層して構成されている。図10に示すように、垂直軸(X軸)と水平軸(Y軸)の互いに直交する2つの線上に配置された4個の主極12b、つまり90°毎に配置された4個の主極12bで1相分(A相、C相)を構成し、残りの4個の機械角で互いに90°隔てて且つ1相分主極からは機械角で45度隔てて配置された主極12bで2相分(B相、D相)を形成する。各相において、90°毎の4個の主極12bは巻き線14への通電時に交互に異極となるように励磁され駆動される。
【0020】
固定子コア12を構成する複数枚の珪素鋼板には、図10より明らかなように、正方形状のコアバック部12aの各辺における外表面が四隅の外表面より周方向外側に段差を持って突出されており、このような珪素鋼板を積層することにより、固定子コア12の各辺にそれぞれ各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出する膨出部12dが形成される。この膨出部12dの表面はモータの外表面の一部を構成することになる。また、固定子コア12は、四隅における孔形状の異なる2種類の珪素鋼板を用いて構成されている。すなわち、第1の珪素鋼板は、図10に示すように、四隅にそれぞれ円形孔12eを透設したものであり、第2の珪素鋼板は、四隅の円形孔12eに加えこの円形孔12eの径方向外側を開口した切り欠き溝12fを形成したものである。そして、図5に示すように、第1の珪素鋼板を積層した上断層の積層体と、第2の珪素鋼板を積層した中間層の積層体と、第1の珪素鋼板を積層した下段層の積層体の3層を積み重ねて固定子コア12を構成している。この結果、固定子コア12の四隅の外周面には、その中間層に外部に開口する凹窪部12gが形成され、上段層及び下段層の円形孔12eが上下からこの凹窪部12gに連通する構成になっている。
【0021】
一方、固定子コア12の内側に配置された回転子20は、図2に示すように、回転子軸22に軸方向に並んで固定された2個の回転子磁極24A,24Bと、この回転子磁極24A,24B間で挟持され軸方向に着磁された円盤状の永久磁石26とにより構成されている。これら回転子磁極24A,24Bはそれぞれ珪素鋼鈑等を積層して構成され、それぞれの外周には等ピッチで複数個(例えば22個)の磁歯25が等間隔に設けられている。対の回転子磁極24A,24Bは互いに歯ピッチが1/2ずれて配置されており、この2個の回転子磁極24A,24Bとこの間に挟持された永久磁石26とにより回転子要素28が構成されている。永久磁石26は例えばフェライト磁石により構成されている。勿論、他の磁石材料、ネオジウム等の希土類磁石を用いることもできる。
【0022】
回転子磁極24A,24Bの磁歯25の歯数は22であるから、回転子磁歯ピッチは360°/22=16.36°であり、ステップ角は2相機なので回転子磁歯ピッチを4等分した値となり、4.09°である。すなわち、本モータはHB型であり、一方の回転子磁極24AがS極に磁化されているとすれば、その各磁歯25の中間にはN極に磁化された他方の回転子磁極24Bの磁歯25が永久磁石26の厚み分軸方向に隔てて存在する。従って回転子要素28としての磁歯25のN極とS極のピッチは8.18°であり、この値を相数で割ったものがステップ角であるから、本実施形態は2相機のため、ステップ角は上述した4.09°となる。
【0023】
図1〜図3において、固定子10の軸方向両側(便宜上、下側及び上側と称する)には、モータカバーを構成する下カバー30及び上カバー40が配置され、固定子10の固定子コア12における外周面と共にモータ外表面を構成している。両カバー30,40の外形はそれぞれ固定子コア12と同様にほぼ正四辺形状に形成されている。
【0024】
下カバー30は、底面を構成する底板部31、四辺形状の環状外枠部32、及びこの外枠部32の一辺に連続的に設けられたコネクタ受け部33を有しており、PPS,PBT等の樹脂により一体成形されている。底板部31にはその中央に開口31aが設けられ、この開口31aの周縁に回転子軸22と同心状になるよう厚肉の環状受け座31bが形成され、後述する軸受ホルダを支持するようになっている。この環状受け座31bは底板部31に対して扁平円錐状の薄肉部31cを介在させる構成になっており、これにより、環状受け座31bが底板部31の底面より軸方向内側に偏倚して位置すると共に、薄肉部31cの弾性により底板部31に対して軸方向に変位することが可能な構造になっている。この下カバー30は、後述する固定構造(係止構造)によって外枠部32の端面を固定子コア12の下面に当接させた状態で固定子10に固定され、固定子コア12の下面より導出している絶縁部材18及び巻き線14が覆われる。
【0025】
下カバー30の一辺のコネクタ受け部33は外部との接続用のターミナル部を構成する。すなわち、図1及び図2に示すように、コネクタ受け部33は下カバー30の外枠部32の一部を切り欠くと共に、その周縁を底板部31と共に側方に延出して形成されており、固定子10の下側の絶縁部材18に取り付けられた回路基板34がコネクタ受け部33に支持されると共に、回路基板34及びこれに実装されたコネクタ35がコネクタ受け部33に収容されるようになっている。回路基板には巻き線14の端部がはんだ付けにて電気的に接続され、これが回路基板34によってコネクタ35の端子に接続されており、従って、外部電源や信号をこのコネクタ35を利用して供給することにより巻き線14への通電及びその制御を行うことができるようになっている。
【0026】
下カバー30の外枠部32における四隅の位置には、角の位置に後述する係合片の係合作用を補助する補助片32aとその両側に位置し当該角を挟む2辺にほぼ平行な側片32bがそれぞれ外枠部の上縁より軸方向上方に突出するかたちで延設されている。補助片32aとその両側の側片32bとの間にはスリット32cが設けられ、少なくとも補助片32aが個別に径方向外側に弾性変位できるようになっている。補助片32aの上部には固定子コア12に係止する補助爪32dが形成されているが、この補助爪32dの突出量は比較的小さく設定されている。
【0027】
下カバー30の四隅における内側寄りにはそれぞれ係合片36が設けられている。各係合片36はそれぞれ外枠部32の四隅に対し一定距離内側に位置し底板部31より立ち上げられると共に、前記補助片32aに平行に対峙するかたちで補助片32aとほぼ同じ高さに突出形成されている。この係合片36は、上記した固定子コア12における四隅の円形孔12eに挿通し得る幅に形成され、係合片36の上端部の外側面、つまり補助片32aに向かい合う面に外方向に比較的大きく突出する係合爪36aが形成されている。この係合片36は固定子コア12における下段層の円形孔12eに挿通され、中間層の凹窪部12gにおいて、係合片36の係合爪36aが円形孔12eの周縁を段部として係止されており、これにより固定子コア12と下カバー30との軸方向の抜けが阻止される。このとき、補助片32aの補助爪32dも固定子コア12における下段層の端縁(上縁)に係止する。
【0028】
ここで、係合片36は下カバー30の底板部31より立ち上げているため、立ち上げ長が長く、比較的大きな弾性たわみ量を確保している。このため、係合片36の係合爪36aの突出量を大きくして係止代を十分確保しても係合時の操作性が悪くなることはない。他方、外枠部32より立ち上げた補助片32aはたわみ量は小さい反面、剛性を確保している。このため、係合爪36aのたわみによる固定子コア12と下カバー30とのずれやゆがみが補助片32aにより抑制される。この補助片32aには補助爪32dを設けない構成とすることもできる。この場合、補助片32aと側片32bとはスリット32cを設けることなく連続的に形成することもできる。なお、図4に示すように、底板部31の四隅の位置には係合片36の外側面に対応して案内孔37が形成されている。これは、係合片36の係合爪36aを成形時に同時形成する際にスライドコアを案内するためのものである。
【0029】
ところで、図1〜図3より明らかなように、下カバー30外枠部32における各辺の上端面には、固定子コア12の各辺の膨出部12dの端面が載置され、下カバー30が固定子コア12を支持するかたちになっている。このとき、固定子コア12の膨出部12dは隣り合う2隅のそれぞれの側片32b間に嵌り込むようになっているが、各側片32bはそれぞれ、図8及び図9に示すように、補助片32aとの反対側の側縁が外側に行くに従い厚みが小さくなるように形成されると共に、この厚みの小さくなった側縁に上方に向けて少し拡開するよう小さな傾斜αが形成されている。外枠部32の各辺における2つの側片32b間の間隙はその最下端で最も小さくなっているが、この寸法L1は、
図10に示すように、固定子コア12の各辺の膨出部12dの幅寸法L2に対してコンマ数mm程度小さくなっている。このため、外枠部32の各辺における両側片32b間に固定子コア12の膨出部12dを嵌合させて膨出部12dの端面を外枠部32の上縁に当接させようとすると、膨出部12dの両側が両側片32bの基部側縁を削りながら押し潰すことになり、膨出部12dが両側片32bに密着した状態で嵌合し、固定子コア12ががたつくことなく外枠部32に支持されることになる。加えて、この密着状態で四隅の各係合片36が固定子コア12の所定段部に係止される結果、強固な固定構造を得ることになる。
【0030】
次に、上カバー40について説明する。固定子コア12を上方から覆うように設けられる上カバー40は薄板金属板をプレス成形することにより形成され、天板部41と四辺形状の外枠部42とからなっており、天板部41の中央部には、下カバー30の底板部31の開口31aの内径にほぼ等しい内径の開口41aが形成されている。また、天板部41の四隅の位置には、固定子コア12の四隅の円形孔12eに対応してねじ孔41bがバーリング加工等を伴って形成されている。この上カバー40は、外枠部41の下端面を固定子コア12における膨出部12の上面に当接させた状態で、次に説明するかしめ技術によって固定子10に固着されている。
【0031】
四辺形状の外枠部42における四隅に対応する位置には固定片43が一体にかつ下方へ延出させて設けられている。この各固定片43は、隅部の角部に位置する主部43aとこの両側に位置しこの角部を挟む両辺の一部を構成しかつ主部を補強する側部43bとを有してなり、固定子コア12の隅部において隣り合う膨出部12d間の段差に嵌り込むようなかたちになっている。この固定片43の両側部43bは上カバー43の固定子コア12に対する回り止めとして機能しており、加えて、後述するかしめ固定の際の変形に対する補強を兼ねている。固定片43の主部43aの下部寄りには、図6(a)に明示するように、抜き孔43cが設けられ、主部43aの抜き孔43cより下側の部分がかしめ作用部43dとなっている。抜き孔43cの内下縁はその中央位置が最も低くなるようなV字状の形態となり、2つのテーパ面43c1,43c2が形成されている。この固定片43の下部は固定子コア12の上段層と中間層との接合位置と合致し、中間層の凹窪部12gの上縁が、上カバー40の外枠部42下端面が固定子コア12の上面に当接する状態において、固定片43の主部43aにおける抜き孔43cのテーパ面43c1,43c2に一部クロスするような高さに設定されている。
【0032】
そして、上カバー40の固定子10への固定に際しては、上述したように、固定子コア12上に上カバー40をその外枠部42の下端面を固定子コア12の上端面に当接させて配置し、次に、上カバー40の四隅に位置する各固定片43の主部43aにおける作用部43dの中心部をそれぞれ外側から内方に向けて打刻し、つまりそれぞれの凹窪部12gに作用部43dの一部を変形させて入り込ませ、上カバー40をかしめ固定する。このとき、作用部43dの一部が固定子コア12の凹窪部12gに入り込むことにより上カバー40の抜け止め,脱落防止が実現するが、本実施形態の構造の場合、特に上カバー40の強固な固定が実現する。すなわち、図6(a),(b)よりわかるように、固定片43の主部43aにおける抜き孔43cの下縁のテーパ面43c1,43c2、つまり作用部43dの上縁テーパ面が固定子コア12の凹窪部12gの上縁とクロスしているため、作用部43dを凹窪部12g内に変形させた際、作用部43dの上縁テーパ面が凹窪部12g内に入り込むに従い固定片43に下方への引っ張り力が発生することになり、上カバー40を固定子コア12に押し付けることができ、この押し付け力は上カバー40の四隅でそれぞれ作用し、上カバー40全体を固定子コア12にしっかり固定できることになる。
【0033】
上述したかしめ作業に際しては、抜き孔43cの下縁のV字の頂点に対応するかしめ作用部を目当てに行えばよく、しかもこの位置はかしめ作用部43dの強度的に最も変形しやすい箇所になるため、かしめ作業は容易であり、かしめによる変形も対称状に得ることができる。つまり、一般にかしめ作業においては、加える力と変形形状、変形量の管理が比較的難しい傾向にあるが、上記した形状であれば、かしめ作業が容易である上、再現性の良い変形量を得ることが可能である。
【0034】
固定子コア12の軸方向両側の内周部には、軸受ブッシュ50A,50Bが取り付けられ、これにそれぞれ回転子軸22を回転自在に支持するメタル軸受52A,52Bが保持されている。この軸受ブッシュ50A,50BはPPS等の樹脂により成形された同一形状のものであり、外径が固定子コア12の各主極12bにおける誘導子歯12cの内径にほぼ等しく形成された本体部となる円環状ベース部50aと、この外周部に形成された段付き嵌合部50bと、嵌合部50bより軸方向に延出され端面にカバー支持面が形成された円筒状の取付支持筒50cと、ベース部50aにおいて取付支持筒50cの内側にこれと同心状に突設された円筒状のインロー部50dと、ベース部50aの内周部に軸方向に延出され内周に軸受保持面が形成された軸受保持筒50eと、この軸受保持筒50eの先端より内方に延出形成されたカバー部50fとを備えてなる。
【0035】
両軸受ブッシュ50A,50Bの軸受保持面にはメタル軸受52A,52Bが圧入により固定されている。両軸受ブッシュ50A,50Bはそれぞれのベース部50aが向かい合う状態で固定子コア12にその軸方向両側から取り付けられる。すなわち、軸受ブッシュ50A,50Bのそれぞれの嵌合部50bを固定子コア12の各主極12bにおける誘導子歯12cの内径に嵌合させ、かつそれぞれの嵌合部50bの段付き面を固定子コア12の端面に当接させることにより取り付けられ、軸受ブッシュ50A,50Bの調芯が嵌合部50bの嵌合により行われると共に、軸方向位置が段付き面により規制されることになる。
【0036】
下側の軸受ブッシュ50Bは、下カバー30の底板部31における開口31aにインロー部50dを遊嵌させた上で、環状受け座31bに取付支持筒50cの端面のカバー支持面を当接し、この状態で下カバー32を固定子コア12に固定することにより軸受ブッシュ50Bも同時に固定される。このとき、軸受ブッシュ50Bは環状受け座31bに対して扁平円錐状の薄肉部31cの弾性を利用してこれを撓ませており、この弾性復帰力で係合片36の係合爪36aが固定子コア12に対し強固に係止することになるため、固定子コア12と下ケース30並びに軸受ブッシュ50Bが確実に固定されることになる。
【0037】
また、上カバー40の固定子コア12への固定時、軸受ブッシュ50Aのインロー部50dが上カバー40の天板部41の開口41aに遊嵌し、取付支持筒50cのカバー支持面に上カバー40の天板部41が当接し、軸受ブッシュ50Aが固定子コア12と上カバー40とに挟み込まれた状態となり、上述したかしめ技術によって上カバー40が固定子コア12に固定されることにより、固定子コア12と上ケース40並びに軸受ブッシュ50Aが確実に固定される。このとき、軸受ブッシュ50Aのインロー部50dは、上カバー40の天板部41の開口41aより突出する。従って、このインロー部50dの導出部分を利用することにより、当該モータを各種機器へ取り付けた場合に、回転子軸22を精度よく各種機器の入力部に合致させることが可能となる。
【0038】
上述した構成のステッピングモータにあっては、パルス信号により回転することができるステップ角が4.09°に設定されており、一般的な1.8°のものに比べ、回転角度を大きく設定することができるため、この分、高速に回転させることができる。つまり、実施形態のものは高速化を可能としたステッピングモータであるといえる。そして、モータの出力は回転数とトルクとの積に比例するため、この高速化により出力が増大し、結果として効率が高まることになる。
【0039】
一方、上述したステッピングモータでは、従来のものと異なり、回転子20の軸受としてメタル軸受52A,52Bが用いられている。この種のメタル軸受52A,52Bはいわゆるスベリ軸受であるため、固定子と回転子間のエアギャップがボールベアリングの場合のエアギャップより多少大きく設定されている。この場合、固定子と回転子間のエアギャップはモータの効率に影響し、エアギャップが大きくなるほど効率が低下する傾向にある。しかしながら、上記実施形態のものでは、ステップ角の設定により高速化し効率を高めた構成になっているため、軸受としてメタル軸受52A,52Bを用いることに伴って効率の低下を招いても、これを補うだけの効率向上を図る結果、従来の場合と同等以上の効率を発揮するステッピングモータを得ることができる。
【0040】
ここで、上記固定子コア12は、珪素鋼板を所定枚数積層して構成されるが、この珪素鋼板を所定形状にプレス打ち抜きしたものを90°ずつ次々に回転して積層する手法を採用することにより、パーミアンスベクトルのバラツキ抑制効果を得ることができる。つまり、図10に示した固定子コア12は90°点対称構造であるため、90°回転させて重ね合わせることにより、プレス抜き型の僅かな寸法の差や珪素鋼板の板厚差によるパーミアンスベクトルのバラツキを、キャンセルさせることができる。
<実施形態2>
【0041】
次に、本発明の実施形態2につき、図11及び図12を用いて説明する。なお、これらの図面において、前記と同一符号のものは同一もしくは相当するものを示すものとする。
【0042】
図11及び図12において、前記実施形態1のものと異なる点は上カバー40’であり、特に、上カバー40’の天板部41’において、内周縁が開口41aと同心状であり外周縁が正八角形をなす環状凹部41cを形成すると共に、この環状凹部41cに複数個の凸部41dを周方向に配列したことを特徴とするものである。この環状凹部41c及び複数個の凸部41dは、上カバー40’を金属板でプレス成形する際に同時に形成される。
【0043】
このような上カバー40’では、その天板部41’の強度が格段に高まり、当該モータを天板部41’のねじ孔41b等を利用して各種機器へ取り付ける場合に、モータ自体の取付強度を確保することができ、回転子軸22を精度よく各種機器の入力部に合致させることが可能となる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明による回転電機は、高速回転が可能で、高効率化を実現し、かつメタル軸受の採用により低コスト化を図ることができ、ステッピングモータとして、OA機器である複写機やプリンターの用途に対し安価で高速高トルク低振動の回転電機の提供が可能であり、工業的に大きな寄与が期待される。その他、医療機器、FA機器、ロボット、遊戯機械、住宅設備機器への応用も大いに期待される。
【符号の説明】
【0046】
10:固定子
12:固定子コア
12b:主極
12d:膨出部
12g:凹窪部
14:巻き線
20:回転子
30:下カバー
31:底板部
31b:環状受け座
31c:扁平円錐状薄肉部
32:外枠部
32a:補助片
32b:側片
36:係合片
36a:係合爪
50A,50B:軸受ホルダ
52A,52B:メタル軸受
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略環状のコアバック部、及びこのコアバック部より内方に突出形成された複数個の主極からなる固定子コアを有し、該固定子コアの主極に巻き線を巻回して構成された固定子と、
前記固定子の内側にエアギャップを介して回転自在に設けられた回転子と、
前記固定子の軸方向両側のうち少なくとも一方を覆うモータカバーと、を備えてなる回転電機において、
前記モータカバーには、端縁の一部が前記固定子コアの端面に軸方向外側から当接する環状外枠部が形成されると共に、前記軸方向外側から軸方向内側に向く方向に延出された複数の係合片が形成され、該各係合片の先端部分に軸方向に対しほぼ直交する方向に突出する係合爪が形成されており、前記固定子コアには少なくとも前記係合爪に対応する位置に段部が形成され、前記係合片の係合爪を前記段部に係止させることにより、前記モータカバーが前記固定子コアに固定されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記固定子コアの略環状コアバック部は外形が平面視ほぼ正方形状に形成され、これに合わせて前記モータカバーの環状外枠部も平面視略正方形状に形成されており、前記係合片は前記外枠部における正方形の四隅の位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記モータカバーは、少なくとも固定子コアを軸方向外側から覆うカバー部を有し、該カバー部の外周縁より前記外枠部が立ち上げられると共に、前記外枠部に近接した位置の前記カバー部より前記係合片が立ち上げられ、該係合片の先端部の前記係合爪は径方向外側に向けて突出形成されており、前記固定子コアは、前記係合片の対応位置に孔を透設した外側積層体と前記係合片の対応位置及びこれより径方向外側を切り欠いた形状の内側積層体とを積層しており、前記係合片の先端部が外側積層体の孔及び内側積層体の切り欠き部に通されて前記係合爪が外側積層体における前記孔の周縁を前記段部として係止されていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記係合片の径方向外側には、前記外枠部を延伸させて前記係合片に対峙するよう補助片が設けられており、該補助片の先端部には前記係合片側に突出した補助爪が形成され、当該補助爪が前記外側積層体の端縁に係止されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記外枠部には、前記補助片に隣接して該補助片が配置される隅の両側の2辺にほぼ平行な側片が延設されており、該両側片が前記固定子コアに当接することにより当該モータカバーが回り止めされていることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記固定子コアの外周面は、4辺形の各辺のそれぞれの表面が各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出するように形成されており、前記環状外枠部の各辺における端縁が前記固定子コアの各辺の突出端面に当接することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の回転電機。
【請求項7】
前記固定子コアの外側面のうち4辺形の各辺には、それぞれの表面が各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出する膨出部が形成されており、該各膨出部が2つの隅の向かい合う側片間に嵌合すると共に、前記環状外枠部の各辺における端縁が前記膨出部の端面に当接することを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項8】
前記モータカバーのカバー部には、前記回転子を回転自在に支持する軸受のためのホルダ部を受ける環状受け座が形成されており、該環状受け座に保持された前記ホルダ部の一部が固定子コアを支持していることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の回転電機。
【請求項9】
前記環状受け座は扁平円錐状薄肉部を介して前記カバー部の底壁に連設され、該環状受け座はカバー部の内底面より軸方向内側に偏倚して位置しており、前記固定子コアを前記環状受け座に対して前記薄肉部の弾性を利用して軸方向外側に押し付けた状態で、前記係合片の係合爪が固定子コアの前記段部に係止されることを特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【請求項1】
略環状のコアバック部、及びこのコアバック部より内方に突出形成された複数個の主極からなる固定子コアを有し、該固定子コアの主極に巻き線を巻回して構成された固定子と、
前記固定子の内側にエアギャップを介して回転自在に設けられた回転子と、
前記固定子の軸方向両側のうち少なくとも一方を覆うモータカバーと、を備えてなる回転電機において、
前記モータカバーには、端縁の一部が前記固定子コアの端面に軸方向外側から当接する環状外枠部が形成されると共に、前記軸方向外側から軸方向内側に向く方向に延出された複数の係合片が形成され、該各係合片の先端部分に軸方向に対しほぼ直交する方向に突出する係合爪が形成されており、前記固定子コアには少なくとも前記係合爪に対応する位置に段部が形成され、前記係合片の係合爪を前記段部に係止させることにより、前記モータカバーが前記固定子コアに固定されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記固定子コアの略環状コアバック部は外形が平面視ほぼ正方形状に形成され、これに合わせて前記モータカバーの環状外枠部も平面視略正方形状に形成されており、前記係合片は前記外枠部における正方形の四隅の位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記モータカバーは、少なくとも固定子コアを軸方向外側から覆うカバー部を有し、該カバー部の外周縁より前記外枠部が立ち上げられると共に、前記外枠部に近接した位置の前記カバー部より前記係合片が立ち上げられ、該係合片の先端部の前記係合爪は径方向外側に向けて突出形成されており、前記固定子コアは、前記係合片の対応位置に孔を透設した外側積層体と前記係合片の対応位置及びこれより径方向外側を切り欠いた形状の内側積層体とを積層しており、前記係合片の先端部が外側積層体の孔及び内側積層体の切り欠き部に通されて前記係合爪が外側積層体における前記孔の周縁を前記段部として係止されていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記係合片の径方向外側には、前記外枠部を延伸させて前記係合片に対峙するよう補助片が設けられており、該補助片の先端部には前記係合片側に突出した補助爪が形成され、当該補助爪が前記外側積層体の端縁に係止されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記外枠部には、前記補助片に隣接して該補助片が配置される隅の両側の2辺にほぼ平行な側片が延設されており、該両側片が前記固定子コアに当接することにより当該モータカバーが回り止めされていることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記固定子コアの外周面は、4辺形の各辺のそれぞれの表面が各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出するように形成されており、前記環状外枠部の各辺における端縁が前記固定子コアの各辺の突出端面に当接することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の回転電機。
【請求項7】
前記固定子コアの外側面のうち4辺形の各辺には、それぞれの表面が各四隅の表面より周方向外側に段差を持って突出する膨出部が形成されており、該各膨出部が2つの隅の向かい合う側片間に嵌合すると共に、前記環状外枠部の各辺における端縁が前記膨出部の端面に当接することを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項8】
前記モータカバーのカバー部には、前記回転子を回転自在に支持する軸受のためのホルダ部を受ける環状受け座が形成されており、該環状受け座に保持された前記ホルダ部の一部が固定子コアを支持していることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の回転電機。
【請求項9】
前記環状受け座は扁平円錐状薄肉部を介して前記カバー部の底壁に連設され、該環状受け座はカバー部の内底面より軸方向内側に偏倚して位置しており、前記固定子コアを前記環状受け座に対して前記薄肉部の弾性を利用して軸方向外側に押し付けた状態で、前記係合片の係合爪が固定子コアの前記段部に係止されることを特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−244736(P2012−244736A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111499(P2011−111499)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000228730)日本電産サーボ株式会社 (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000228730)日本電産サーボ株式会社 (276)
【Fターム(参考)】
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