説明

回転電機

【課題】永久磁石の再利用や分別回収を容易にする回転電機を提供する。
【解決手段】筐体11内に設けられた固定子12と、固定子12の内周側に設けられ固定子12と同軸に設けられた回転軸21を有する回転子13と、回転子13の外周面に所定の間隔を存して周方向に複数設けられた永久磁石24と、回転子13の軸方向の両端部に設けられ永久磁石を保持する保持板27と、保持板27を互いに接続するとともに当該保持板を回転子13に固定する固定部材33と、を備え、永久磁石24は、軸方向の中央部分よりも厚さが薄く形成された段差部を軸方向の両端部に有し、保持板27は、永久磁石24の軸方向の端面に当接する円環状の本体部28と、当該本体部28の外縁部から永久磁石24側に突出し、永久磁石24の段差部に径方向の外周側から当接する抑え部29とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転子の外周面に永久磁石を設けたいわゆる表面磁石型の回転電機がある。この永久磁石は、一般的に、接着剤やシート部材によって回転子に貼り付けられている(例えば、特許文献1、2参照)。この場合、高速回転型の回転電機の場合、永久磁石が受ける遠心力が大きくなる。そのため、永久磁石は、例えばその全体を接着剤や樹脂で覆うことにより、接着強度を高めた状態で回転子に強固に固定されている。
【0003】
ところで、このような回転電機に用いられる永久磁石は、例えばネオジムやディスプロシウムなどのレアアースを含んでいる。そのため、レアアースの希少価値が高いこと、また、環境保全の観点などから、永久磁石の再利用や分別回収を行うことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−78257号公報
【特許文献1】特開2001−231200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、永久磁石の再利用や分別回収を容易にする回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の回転電機によれば、筐体内に設けられた固定子と、固定子の内周側に設けられ固定子と同軸に設けられた回転軸を有する回転子と、回転子の外周面に所定の間隔を存して周方向に複数設けられた永久磁石と、回転子の軸方向の両端部に設けられ永久磁石を保持する保持板と、保持板を互いに接続するとともに当該保持板を回転子に固定する固定部材と、を備え、永久磁石は、軸方向の中央部分よりも厚さが薄く形成された段差部を軸方向の両端部に有し、保持板は、永久磁石の軸方向の端面に当接する円環状の本体部と、当該本体部の外縁部から永久磁石側に突出し、永久磁石の段差部に径方向の外周側から当接する抑え部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態の回転電機の全体構成を模式的に示す図
【図2】第1実施形態の永久磁石を模式的に示す図
【図3】第1実施形態の永久磁石を回転子鉄心に設けた状態を模式的に示す図
【図4】第1実施形態の保持板を模式的に示す図
【図5】第1実施形態の回転子を模式的に示す図
【図6】第1実施形態の永久磁石の取り外し手順を模式的に示す図
【図7】第2実施形態の回転子を模式的に示す図その1
【図8】第2実施形態の保持板を模式的に示す図
【図9】第2実施形態の回転子の断面を模式的に示す図
【図10】第2実施形態の回転子を模式的に示す図その2
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、回転電機の複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0009】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態による回転電機について、図1から図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態による回転電機10は、筐体11内に固定子12および回転子13を備えている。以下、図1の左方向を正面側、右方向を後面側として説明する。筐体11は、円筒状に形成された胴部14と、胴部14の正面側に配置された正面側ブラケット15と、胴部14の後面側に配置された後面側ブラケット16とを組み合わせて構成されている。正面側ブラケット15は、胴部14の正面側の開口を塞ぐように設けられており、後面側ブラケット16は、胴部14の後面側の開口を塞ぐように設けられている。
【0010】
固定子12は、固定子鉄心17および固定子コイル18を有している。固定子鉄心17は、例えば磁性鋼板を円環状に打ち抜いて成形した鉄心片を積層して円筒状に形成されている。この固定子鉄心17は、内周側に、積層方向すなわち軸方向に延びる図示しないコイル挿入溝を複数有している。このコイル挿入溝は、固定子鉄心17の内周側に、周方向の全域に渡って複数設けられている。この固定子12は、胴部14の内周側に配置された状態で筐体11内に収納されている。
【0011】
固定子コイル18は、例えばU相、V相およびW相の三相からなるコイルであり、それぞれ固定子鉄心17のコイル挿入溝に挿入されている。この固定子コイル18は、コイル挿入溝に挿入された状態において、その一部が固定子鉄心17の軸方向の両端部に露出している。固定子コイル18の固定子鉄心17の両端部に露出している部位は、周知のように、固定子鉄心17の径方向の外側に拡開された後、ワニスなどを含浸させて固定されている。これにより、コイルエンド19が形成される。このため、コイルエンド19は、固定子鉄心17の軸方向の両端部に形成されるとともに、固定子鉄心17の周方向の全域に形成される。このような構成の固定子12は、筐体11に固定されている。
【0012】
回転子13は、回転子鉄心20と回転軸21とを有している。この回転子13は、固定子12の内周側に設けられている。回転子鉄心20は、例えば磁性鋼板を円板状に打ち抜いて成形した鉄心片を積層して円筒状に形成されている。回転軸21は、回転子鉄心20の径方向の中心部に設けられている軸孔22に圧入され、回転子鉄心20に対して固定されている。なお、回転軸21は、圧入に代えて、嵌合や挿入により回転子鉄心20に固定してもよい。この回転軸21は、回転子鉄心20を挟んだ両端部側がそれぞれ軸受部材23により回転可能に支持されている。より具体的には、回転軸21は、正面側の一端部21aが軸受部材23を介して正面側ブラケット15に支持されており、後面側の他端部21bが軸受部材23を介して後面側ブラケット16に支持されている。本実施形態の場合、軸受部材23としてベアリングを用いている。また、回転軸21は、一端部20aが筐体11の外側に突出している。なお、回転軸21は、中空に形成したものであってもよい。
【0013】
回転子鉄心20の外周面には、永久磁石24が設けられている。つまり、本実施形態の回転電機10は、いわゆるSPM(Surface Permanent Magnet)型の回転界磁形式回転電機である。また、回転電機10は、永久磁石24としてネオジム磁石が採用されている。ネオジム磁石は、周知のように、ネオジム、鉄、ホウ素などを主成分とする磁石であり、保磁力を向上させるためにディスプロシウムが添加されている。つまり、永久磁石は、レアアースを含んでいる。
【0014】
この永久磁石24は、図2に示すように、回転子鉄心20に設けられた状態における外周部24aが、軸方向に対する断面視で回転子13の外周面と相似する円弧状に形成されている。また、永久磁石24は、内周部24bが、軸方向に対する断面視で直線状に形成されている。このため、永久磁石24は、いわゆるカマボコ形状をなしている。また、永久磁石24は、図1および図2に示すように、軸方向の両端部に、中央部よりも厚さW1だけ窪んだ段差部25が形成されている。この段差部25は、外周面側が円弧状に形成されている。つまり、永久磁石24は、軸方向の中央部分よりも厚さが薄く形成された段差部25を軸方向の両端に有している。
【0015】
この永久磁石24は、図3に示すように、永久磁石24は、回転子13の外周面に、所定の間隔を存して周方向に複数、例えば本実施形態では12個設けられている。このとき、周方向に隣接する永久磁石24は、外周側の極性が互いに異なるように配置される。これにより、回転子13には、12個の磁極が形成される。また、永久磁石24は、内周部24b側の一部が回転子鉄心20の外縁部に形成された磁石溝26に挿入されている。この磁石溝26は、永久磁石24の数に対応して設けられている。なお、永久磁石24の数すなわち磁極の数は、一例であり、これに限定されない。
【0016】
また、回転子鉄心20には、図1に示すように、その軸方向の両側に、保持板27がそれぞれ設けられている。各保持板は、例えばステンレス鋼などの非磁性体の金属材料で形成されている。保持板27は、図4に示すように、全体として概ね円環状に形成され、永久磁石24を軸方向の端面に当接する本体部28と、本体部28の外縁部から永久磁石24側に突出し、永久磁石24の段差部25に外周側から当接する抑え部29とを有している。この本体部28は、周方向に分割された複数、例えば本実施形態の場合4枚の保持板片27a、27b、27cおよび27dが組み合わされて構成されている。なお、図4では、保持板片27dを破線にて示している。
【0017】
各保持板片27a〜27dの抑え部29は、その段差W2が永久磁石24の段差部25との厚さW1(図2参照)よりも小さく形成されている。この抑え部29は、それぞれ3個の永久磁石24の段差部25の外周面側に当接している。つまり、各保持板片27a〜27dは、それぞれ3個の永久磁石24を保持している。なお、保持板27の分割数は、4枚に限らず、永久磁石24の数や大きさなどに応じて任意に設定すればよい。
【0018】
また、保持板27は、本体部28に、周方向に並んだ複数のねじ挿入孔30およびタップ孔31が設けられている。これらのねじ挿入孔30およびタップ孔31は、回転子鉄心の中心点と永久磁石24の中心とを結ぶ仮想的な直線上に設けられている。つまり、ねじ挿入孔30およびタップ孔31は、周方向において永久磁石24に対応する位置にそれぞれ設けられている。このため、保持板27には、永久磁石24の数と同じ数のタップ孔31が設けられている。このねじ挿入孔30は、図1に示すように、回転子鉄心20に設けられているねじ貫通穴32に対応する位置に設けられている。また、タップ孔31は、図1に示すように、永久磁石24の軸方向の端面に対応した位置に開口しているとともに、その内周面側にタップが設けられている。なお、タップ孔31は、詳細は後述するが、回転子鉄心20に設けられている保持板27の少なくとも一方に設けられている。
【0019】
この保持板27は、図1および図5に示すように、回転子鉄心20の軸方向の両端部に取り付けられ、ねじ貫通穴32を貫通する固定部材33により、永久磁石24を軸方向の端面側から、且つ、段差部25の外周面側から保持した状態で固定子鉄心17に固定されている。本実施形態では、固定部材33は、保持板27および回転子鉄心20を貫通する長ねじ34と、その長ねじ34に取り付けられるナット35とから構成されている。なお、固定部材33は、長ねじ34とナット35ではなく、他の構成であってもよい。また、長ねじ34は、ナット35が取り付けられる側の端部近傍にのみねじ溝が設けられた構成としてもよい。
【0020】
このような固定子12および回転子13を備えた回転電機10は、図示しない駆動回路から例えばPWM制御による駆動信号が各相の固定子コイル18に対して供給される。その結果、固定子12と回転子13との間に回転力が働いて回転子13および回転軸21が回転し、回転軸21に接続される図示しない駆動対象物が回転駆動される。
【0021】
次に、回転電機10の作用について説明する。
回転電機10は、上記したように、永久磁石24を軸方向の端面側および径方向の外側から保持板27で保持している。換言すると、永久磁石24は、接着剤などを用いることなく回転子鉄心20に固定されている。また、回転電機10は、永久磁石24に段差部25を設け、その段差部25を保持板27の抑え部29により外周側から抑えている。これにより、回転電機10の運転中に永久磁石24に遠心力が加わった場合であっても、永久磁石24は回転子鉄心20の表面に保持される。したがって、永久磁石24を回転子鉄心20に固定するために接着剤などが不要となり、永久磁石24を容易に回転子13から取り外すことができる。
【0022】
このとき、保持板27の抑え部29は、その厚さW2(図4参照)が段差部25の段差W1(図2参照)よりも小さく形成されている。このため、永久磁石24の外周部24aが回転子13の最外縁を形成している。換言すると、永久磁石24の外周部24aと固定子12との間の距離は、従来のものと変化していない。したがって、保持板27により永久磁石24を保持する構成としたとしても、回転電機10の特性に影響を与えることがない。
【0023】
また、保持板27は、周方向に複数の保持板片27a〜27dに分割されている。例えば保持板27を1枚の円環状に形成した場合、図1の図示上方の永久磁石24を抑えるために径方向の内側に図1の矢印Faで示す力を加えると、図示下方の永久磁石24側では抑え部29が径方向の外側に移動してしまう。その場合、図示下方の永久磁石24を抑える力が弱くなるおそれがある。そこで、保持板27を複数の保持板片27a〜27dに分割することにより、図示上方の永久磁石24を抑える例えば保持板片27aに対して径方向の内側に力を加えた場合であっても、図示下方の永久磁石24を抑える例えば保持板片27cは径方向の外側に移動することがない。したがって、複数の永久磁石24を、回転子鉄心20の外周側の全域において適切に保持することができる。
【0024】
ところで、回転電機10に用いられている永久磁石24は、上記したようにネオジムやディスプロシウムなどのレアアースを含んでいる。そのため、レアアースの希少価値が高いこと、また、環境保全の観点などから、永久磁石24の再利用や分別回収を行うことが望まれている。
【0025】
そこで、本実施形態の回転電機10は、回転子鉄心20から永久磁石24を取り外し可能に構成されている。すなわち、本実施形態の場合、永久磁石24は、接着剤や樹脂による固着によって回転子鉄心20に貼り付け固定されているのではなく、保持板27により保持されている。このため、保持板27を回転子鉄心20から取り外すことにより、永久磁石24を回転子鉄心20から容易に取り外すことができる。したがって、回転電機10を修理あるいは廃棄する場合などにおいて、永久磁石24の再利用あるいは分別回収を容易に行うことができる。
【0026】
ところで、例えば自動車用モータや産業用モータなどの回転電機10の中には、高性能化のためにネオジム磁石の保磁力が高く設計されているものがある。その場合、着磁された永久磁石を回転子鉄心20から取り外すことが困難なことがある。そのような場合であっても、本実施形態の回転電機10によれば、永久磁石24の取り外しを容易にすることができる。以下、永久磁石24の取り外し方法について説明する。
【0027】
保持板27は、永久磁石24の軸方向の端面に開口したタップ孔31が設けられている。そこで、図6(A)に示すように、回転子鉄心20の一方の端部側、例えば図示右方側の保持板27を回転子鉄心20から取り外す。この場合、保持板27は非磁性体で形成されていることから、永久磁石24の保磁力が高い場合であっても容易に取り外すことができる。このとき、永久磁石24の取り外しを容易にするために、保持板27を外周側に若干ずらすようにするとなおよい。なお、図6では、説明の簡略化のために、回転子13の片側のみを図示している。
【0028】
次に、図6(B)に示すように、取り外したナット35を長ねじ34に取り付け、他方の端部側、例えば図示左方側の保持板27を回転子鉄心20に固定する。そして、保持板27に設けられているタップ孔31に、ねじ部が形成された取り外し治具36を挿入する。この状態で取り外し治具36を回転させることにより、図6(C)に示すように、永久磁石24を軸方向に移動させる。この場合、保持板27は回転子鉄心20に固定されていることから、取り外し治具36の回転に伴って永久磁石24は軸方向すなわち図示右方に押し出されていく。また、このとき、永久磁石24は、回転子13の表面に形成された磁石溝26に沿って軸方向に移動することから、回転子13の表面で永久磁石24がずれたり、隣接する永久磁石24に接触したりすることがない。続いて、さらに取り外し治具36を回転させることにより、図6(D)に示すように、永久磁石24は回転子鉄心20から取り外される。なお、タップ孔31は、回転子鉄心20に残される側、図6(A)の場合は図示左方の保持板27に設ければよく、必ずしも両方の保持板27に設ける必要はない。
【0029】
これにより、保磁力が高く、永久磁石24を回転子鉄心20の表面から取り外すのが困難な場合であっても、永久磁石24を軸方向に移動させることができる。つまり、着磁された状態であっても、永久磁石24を容易に取り外すことができる。そして、接着剤などを用いていないことから、取り外し後の永久磁石24の再利用や分別回収が可能となり、レアアースの有効利用および環境負荷の低減を図ることができる。
【0030】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態による回転電機を図7から図10を参照しながら説明する。第2実施形態では、回転子の構成が第1実施形態と異なっている。
図7に示すように、第2実施形態の回転子40は、軸方向に2個のブロックAおよびブロックBに分割されている。このブロックAおよびブロックBには、それぞれ永久磁石24が設けられている。また、ブロックAおよびブロックBの永久磁石24は、互いの中心位置が周方向にずれている。すなわち、回転子40は、ブロックAおよびブロックBとの間に、軸方向に対して段階的なスキューが形成されている。そして、回転子鉄心20の軸方向の両端部に保持板27が設けられているとともに、回転子鉄心20の中央部すなわち永久磁石24の軸方向のブロックAとブロックBとの間である分割位置に対応して、中間保持板41が設けられている。
【0031】
この中間保持板41は、保持板27と同様に、周方向に分割された複数の保持板片41a〜41dにより概ね円環状に形成された本体部28を有している。この本体部28には、第1実施形態と同様に、図8に示すように、ねじ挿入孔30およびタップ孔31が設けられている。一方、中間保持板41の抑え部42は、本体部28の外縁部から軸方向の両側に突出し、軸方向に隣接する双方の永久磁石24の段差部25に当接するように形成されている。つまり、中間保持板41は、図7および図9に示すように、ブロックAの永久磁石24と、ブロックBの永久磁石24の双方を外周側および軸方向の両端側から保持している。
【0032】
このような中間保持板41を設けることにより、接着剤などを用いることなく、永久磁石24を保持することができる。また、保持板27あるいは中間保持板41を取り外すことにより、永久磁石24を取り外すことができる。
【0033】
また、中間保持板41を取り外し、両端の保持板27を回転子鉄心20に固定することにより、各ブロックA、Bに設けられている永久磁石24を、第1実施形態の図6で説明したように、取り外し治具36を用いることで容易に取り外すことができる。なお、図7または図9に示す回転子40のような構成の場合、中間保持板41にタップ孔31を設けなくともよい。すなわち、回転子40から中間保持板41を取り外せば、図6(A)に示す状態と実質的に同様の状態となるので、中間保持板41にはねじ挿入孔30のみが設けてあればよいためである。
【0034】
また、中間保持板41を複数設けた構成、すなわち、ブロック数が3以上の構成であってもよい。また、スキューを設ける場合には、所望のスキュー角に応じて回転子鉄心20に設ける磁石溝26やねじ貫通穴32、および保持板27または中間保持板41にもうけるタップ孔31などの配置を適宜設定すればよい。
また、スキューを必要としない場合、あるいは、軸方向に長い回転子40を必要とする場合などには、図10に示すように、軸方向の両端側に保持板27を設けた第1実施形態の回転子13を複数、例えば2個積層して回転子50を構成してもよい。その場合であっても、上記したように永久磁石24を容易に取り外すことができるなど同様の効果を得ることができる。勿論、3個以上のブロックを積層する場合も同様である。
【0035】
(その他の実施形態)
永久磁石24の下面側を回転子鉄心20の外周に沿うように円弧状に形成し、回転子鉄心20に取り付ける構成、すなわち、磁石溝26を設けない構成としてもよい。
各実施形態ではSPM型の回転電機10を例示したが、永久磁石が回転子鉄心の内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnet)型の回転電機であってもよい。この場合、保持板は、永久磁石を軸方向の両端面側から保持することから、抑え部29を設けることなく、また、周方向に分割することなく一枚の円環状に形成してもよい。このような構成であっても、接着剤等を用いることなく永久磁石の保持が可能となることから、各実施形態で説明したように保持板を取り外すことにより永久磁石の再利用あるいは分別回収を容易に行うことができる。また、保磁力が高い永久磁石に対しては、保持板に設けたタップ孔に取り外し治具36を挿入して永久磁石を軸方向にスライドさせることにより、永久磁石を容易に取り外すことができる。
【0036】
実施形態の回転電機は、筐体内に設けられた固定子と、固定子の内周側に設けられ固定子と同軸に設けられた回転軸を有する回転子と、回転子の外周面に所定の間隔を存して周方向に複数設けられた永久磁石と、回転子の軸方向の両端部に設けられ永久磁石を保持する保持板と、保持板を互いに接続するとともに当該保持板を回転子に固定する固定部材と、を備え、永久磁石は、軸方向の中央部分よりも厚さが薄く形成された段差部を軸方向の両端部に有し、保持板は、永久磁石の軸方向の端面に当接する円環状の本体部と、当該本体部の外縁部から永久磁石側に突出し、永久磁石の段差部に径方向の外周側から当接する抑え部とを有する。
【0037】
これにより、回転電機は、接着剤などを用いることなく永久磁石を保持すなわち回転子に固定することができる。また、永久磁石に段差部を設け、保持板の抑え部により段差部を外周側から抑えることにより、回転電機の運転時に遠心力が加わった場合であっても、永久磁石は保持板の抑え部により回転子側に抑えられた状態が維持される。したがって、永久磁石を保持するために接着剤などが不要となり、永久磁石を容易に回転子から取り外すことができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
図面中、10は回転電機、11は筐体、12は固定子、13、40、50は回転子、21は回転軸、24は永久磁石、25は段差部、27は保持板、27a〜27d、41a〜41dは保持板片、28は本体部、29、42は抑え部、31はタップ孔、33は固定部材、34は長ねじ(固定部材)、35はナット(固定部材)、41は中間保持板(保持板)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設けられた固定子と、
前記固定子の内周側に設けられ前記固定子と同軸に設けられた回転軸を有する回転子と、
前記回転子の外周面に所定の間隔を存して周方向に複数設けられた永久磁石と、
前記回転子の軸方向の両端部に設けられ、前記永久磁石を保持する保持板と、
前記保持板を互いに接続するとともに当該保持板を前記回転子に固定する固定部材と、を備え、
前記永久磁石は、軸方向の中央部分よりも厚さが薄く形成された段差部を軸方向の両端部に有し、
前記保持板は、前記永久磁石の軸方向の端面に当接する円環状の本体部と、当該本体部の外縁部から前記永久磁石側に突出し、前記永久磁石の前記段差部に径方向の外周側から当接する抑え部とを有することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記回転子の軸方向の両端部に設けられている少なくとも一方の前記保持板は、前記本体部を板厚方向に貫通し、前記永久磁石と当接する側の面において当該永久磁石の軸方向の端面に対応する位置に開口し、その内周側にタップが立てられたタップ孔を有することを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記保持板は、周方向に分割された複数の保持板片から構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の回転電機。
【請求項4】
前記回転子は、軸方向に複数のブロックに分割され、
前記永久磁石は、前記回転子の前記ブロックにそれぞれ設けられ、
前記回転子の前記ブロック間に前記保持板を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の回転電機。
【請求項5】
前記回転子の前記ブロック間に設けられる前記保持板の前記抑え部は、本体部の外縁部から軸方向の両側に突出し、軸方向に隣接する双方の前記永久磁石の前記段差部に当接することを特徴とする請求項4記載の回転電機。
【請求項6】
前記回転子に設けられている永久磁石は、軸方向に隣接する永久磁石に対して、その中心位置が周方向にずれていることを特徴とする請求項4または5記載の回転電機。
【請求項7】
筐体内に設けられた固定子と、
前記固定子の内周側に設けられ前記固定子と同軸に設けられている回転軸を有する回転子と、
前記回転子の内部に周方向に所定の間隔を存して複数設けられた永久磁石と、
前記回転子の軸方向の両端部に設けられ、前記永久磁石を保持する保持板と、
前記保持板を互いに接続するとともに当該保持板を前記回転子に固定する固定部材と、を備え、
前記回転子の軸方向の両端部に設けられている少なくとも一方の前記保持板は、前記本体部を板厚方向に貫通し、前記永久磁石と当接する側の面において当該永久磁石の軸方向の端面に対応する位置に開口し、その内周側にタップが立てられたタップ孔を有することを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−21780(P2013−21780A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151817(P2011−151817)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【Fターム(参考)】