説明

回転電機

【課題】ロータコアからステータコアに到達する磁束の量が減少するのを抑制することが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】この電動機100(回転電機)は、ロータコア22と、ロータコア22の外周部に対向するように配置されるステータティース11と、ロータコア22の内周部近傍から外周部近傍まで半径方向に延びるとともに、ロータコア22の軸方向の端面から突出する部分を有するように軸方向に延びる永久磁石23aおよび23bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機に関し、特に、軸方向に延びる永久磁石を備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸方向に延びる永久磁石を備える回転電機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、磁極部材(ロータコア)と、磁極部材の外周部に対向するように配置されたステータコアと、磁極部材の内部に軸方向に延びるように埋め込まれたマグネット(永久磁石)とを備える永久磁石式電動機(回転電機)のロータ構造が開示されている。この永久磁石式電動機では、マグネットの軸方向の端部が磁極部材の軸方向の端面と面一になるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−144337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された永久磁石式電動機(回転電機)では、マグネット(永久磁石)の磁束が漏れやすい部分(軸方向の端部)が磁極部材(ロータコア)の軸方向の端面と面一になるように形成されているため、磁極部材の軸方向の端部近傍において磁束漏れが発生する。このため、磁極部材(ロータコア)からステータコアに到達する磁束の量が減少するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータコアからステータコアに到達する磁束の量が減少するのを抑制することが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による回転電機は、ロータコアと、ロータコアの外周部に対向するように配置されるステータコアと、ロータコアの内周部近傍から外周部近傍まで半径方向に延びるとともに、ロータコアの軸方向の端面から突出する部分を有するように軸方向に延びる永久磁石とを備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明の一の局面による回転電機では、上記のように、ロータコアの軸方向の端面から突出する部分を有するように軸方向に延びるように永久磁石を形成することによって、永久磁石の磁束が漏れやすい部分(軸方向の端部)をロータコアの軸方向の端面よりも外側に突出させて配置することができる。これにより、ロータコアの軸方向の端部近傍における磁束漏れを低減することができるので、ロータコアからステータコアに到達する磁束の量が減少するのを抑制することができる。その結果、回転電機の出力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による電動機のロータおよびステータを軸方向から見た図である。
【図2】図1の200−200線に沿った断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による電動機の複数のコア部と複数の永久磁石との配置関係を示した図である。
【図4】本発明の一実施形態による電動機の永久磁石の着磁方向を説明するための拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態による電動機のロータからシャフトおよびプレートを取り外した状態を示した斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による電動機のロータのプレートを示した斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態の変形例による電動機の軸方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による電動機100の構成について説明する。
【0012】
図1および図2に示すように、電動機100は、固定部であるステータ1と、回転部であるロータ2とを備えている。なお、電動機100は、本発明の「回転電機」の一例である。
【0013】
図1に示すように、ステータ1は、ステータティース11と、巻線12と、ステータヨーク13とにより構成されている。ステータティース11は、ロータ2の後述するロータコア22の外周部に対向するように所定の空間(ギャップ3)を隔てて配置されている。また、ステータティース11の内側には、複数(本実施形態では、12個)のスロット14が形成されている。なお、ステータティース11は、本発明の「ステータコア」の一例である。
【0014】
複数のスロット14は、ロータ2の回転方向(以下、周方向と呼ぶ)に沿って略等角度間隔(本実施形態では、約30°間隔)で配置されている。巻線12は、複数のスロット14の各々の内部に収納されている。ステータヨーク13は、ステータティース11の外周部を取り囲むように設けられている。
【0015】
図1〜図3に示すように、ロータ2は、シャフト21と、ロータコア22と、複数の永久磁石23aおよび23bと、プレート24とにより構成されている。シャフト21は、ロータ2の中心を貫通してX方向(図2参照)(以下、軸方向と呼ぶ)に延びるように設けられている。ロータコア22は、シャフト21を取り囲むように設けられている。また、ロータコア22は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板(図2参照)により形成されている。なお、シャフト21は、本発明の「回転軸部」の一例である。
【0016】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、ロータコア22の軸方向の長さL1は、ステータティース11の軸方向の長さL2よりも小さくなるように形成されている。なお、ロータコア22の軸方向の端部と、ステータティース11の軸方向の端部との間の軸方向に沿った方向の距離Dは、1mm以上5mm以下とするのが好ましい。
【0017】
また、本実施形態では、図3〜図5に示すように、ロータコア22は、ロータ2のN極として機能する複数(本実施形態では、5つ)のコア部22aと、ロータ2のS極として機能する複数(本実施形態では、5つ)のコア部22bとにより構成されている。なお、図3に示すように、複数のコア部22aおよび22bは、周方向に沿って略等角度間隔(本実施形態では、略36°間隔)で1つずつ交互に配置されている。また、複数のコア部22aおよび22bの各々の外周部近傍の周方向の中央部には、後述するバー30が挿入されるバー挿入穴22cが形成されている。
【0018】
図3〜図5に示すように、複数のコア部22a(22b)の各々の外周部の周方向の両端部には、コア部22a(22b)と隣接する永久磁石23a(23b)の外周面のコア部22a(22b)側の部分を覆う磁石被覆部22dが設けられている。なお、図1に示すように、永久磁石23a(23b)の外周面の磁石被覆部22dに覆われていない部分は、ステータ1側に露出している。
【0019】
図2に示すように、永久磁石23aは、ロータコア22を軸方向の両側から挟み込む2つのプレート24の間で軸方向に延びるように形成されている。また、図5に示すように、永久磁石23bも、永久磁石23aと同様に軸方向に延びるように形成されている。本実施形態では、図2および図5に示すように、永久磁石23aおよび23bは、ロータコア22の軸方向の両端面から外側に突出する部分(突出部23c)を有するように軸方向に延びるように形成されている。なお、この突出部23cの突出高さH1は、3mm以上7mm以下に設定するのが好ましい。
【0020】
また、図1〜図5に示すように、永久磁石23aおよび23bは、ロータコア22の内周部から外周部近傍まで半径方向に延びるように設けられている。また、図3および図4に示すように、永久磁石23aおよび23bは、複数のコア部22aおよび22bのうちの隣接するコア部22aおよび22bの間に、永久磁石23aおよび23bの内周面がシャフト21の外周面に接するように配置されている。また、永久磁石23aおよび23bは、コア部22aおよび22bを介さずに周方向に隣接するように配置されている。
【0021】
また、図3および図4に示すように、永久磁石23aおよび23bは、周方向の幅がロータコア22(コア部22aおよび22b)の内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる矩形形状の断面を有するように形成されている。具体的には、図4に示すように、永久磁石23a(23b)は、永久磁石23a(23b)のロータコア22の外周部側の端部のうちのコア部22a(22b)に隣接する角部と、永久磁石23a(23b)のロータコア22の内周部側の端部のうちの永久磁石23b(23a)に隣接する角部とが直角になるように形成されている。
【0022】
また、図4に示すように、永久磁石23aおよび23bは、電動機100のq軸(主磁束に沿った方向の軸(d軸)と電気的に直交する方向の軸)と直交する方向(矢印A方向)に対して所定の角度θだけ傾いた方向に着磁されている。具体的には、コア部21aに隣接する永久磁石23aは、q軸と直交する方向(矢印A方向)に対して所定の角度θだけ外周側に傾いた方向に着磁されている一方、コア部21bに隣接する永久磁石23bは、q軸と直交する方向(矢印A方向)に対して所定の角度θだけ内周側に傾いた方向に着磁されている。すなわち、コア部22aおよびコア部22bの間で周方向に隣接する永久磁石23aおよび永久磁石23bの着磁方向は、q軸に対して略線対称になっている。
【0023】
なお、図1および図4に示すように、本実施形態による電動機100のq軸は、周方向に隣接する永久磁石23aと永久磁石23bとが接している線に一致する。また、本実施形態による電動機100のq軸は、図4に示すコア部22aを基準磁極とした場合、ロータ2の回転中心O(図1参照)と、基準磁極と周方向に隣接する磁極(図4に示すコア部22b)との磁気的な境界とを結ぶ直線(磁極境界線)に一致する。
【0024】
本実施形態では、上記永久磁石23a(23b)の着磁方向の傾き角度θは、0°<θ≦45°の範囲に設定されている。これにより、永久磁石23a(23b)をq軸と直交する方向(矢印A方向(図4参照))に着磁する場合に比べて、永久磁石23a(23b)の着磁方向に沿った方向の厚みを大きくすることが可能になるので、永久磁石23a(23b)の動作点を高くすることが可能になる。なお、この角度θは、電動機100の磁極数(コア部22aおよび22bの個数(本実施形態では、10個))を変更する場合でも、一定の範囲(0°<θ≦45°)に設定するのが好ましい。
【0025】
図1、図2および図6に示すように、プレート24は、軸方向から見て円環形状を有する板状に形成されている。このプレート24は、ステンレスや樹脂などの非磁性材料により形成されている。なお、図1に示すように、プレート24の直径は、ロータ2の外径よりも小さくなるように形成されている。また、図2に示すように、プレート24の厚みt1は、永久磁石23a(23b)のロータコア22の軸方向の端面からの突出高さH1よりも大きくなるように形成されている。また、プレート24の厚みt1は、5mm以上10mm以下に設定するのが好ましい。
【0026】
また、図2に示すように、プレート24は、ロータコア22と、永久磁石23aおよび23bとを軸方向の両側から挟み込むように2つ設けられている。具体的には、プレート24は、ロータコア22の軸方向の両端面を覆うとともに、永久磁石23aおよび23bのロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23c)の表面を露出させずに覆うように形成されている。本実施形態では、図2および図6に示すように、プレート24のロータコア22を覆う表面には、永久磁石23aおよび23bの突出部23cの形状(高さH1を有する角柱形状(図5参照))に対応する凹部24aが形成されている。このプレート24の凹部24aは、永久磁石23aおよび23bの突出部23cの突出高さH1に対応する深さdを有している。すなわち、永久磁石23aおよび23bの突出部23cは、プレート24の凹部24aの内部に嵌め込まれるように構成されている。
【0027】
また、図1および図6に示すように、プレート24の内周部(円板状のプレート24の中央部近傍)には、開口からなるシャフト挿入部24bが設けられている。このシャフト挿入部24bには、歯車状の係合部24cが形成されている。ここで、シャフト21の外周面のロータコア22から軸方向にはみ出した部分(図2参照)には、プレート24の係合部24cに対応する歯車状(図1参照)の係合部21aが形成されている。本実施形態では、プレート24の歯車状の係合部24cと、シャフト21の歯車状の係合部21aとが係合(噛合)することにより、プレート24とシャフト21とが固定されている。なお、係合部21aは、本発明の「第1係合部」の一例であるとともに、係合部24cは、本発明の「第2係合部」の一例である。
【0028】
また、プレート24の外周部近傍には、コア部22a(22b)のバー挿入穴22cに対応するようにバー挿入穴24dが複数(本実施形態では、10個)設けられている。これら複数のバー挿入穴24dは、円板状のプレート24の外周部近傍において周方向に沿って略等角度間隔(本実施形態では、約36°間隔)で設けられている。図2に示すように、このプレート24のバー挿入穴24dと、コア部22a(22b)のバー挿入穴22cとの内部には、軸方向に延びる円柱状のバー30が挿入されている。
【0029】
なお、本実施形態では、永久磁石23a(22b)とコア部22a(22b)との間、永久磁石23aと永久磁石23bとの間、および、永久磁石23a(23b)とシャフト21との間は、図示しない接着剤が充填されている。
【0030】
次に、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による電動機100のロータ2の組み立て手順について説明する。
【0031】
まず、図3に示すように、複数のコア部22aと、複数のコア部22bとを1つずつ交互に周状に配置することにより、シャフト21の外周面上でロータコア22を構成し、ロータコア22の内部に、半径方向に延びるとともに軸方向に延びる複数の永久磁石23aおよび23bを取り付ける。なお、このとき、図2および図5に示すように、永久磁石23aおよび23bの軸方向の両端部がロータコア22の軸方向の両端面に対して突出するように、ロータコア22の内部に永久磁石23aおよび23bを取り付ける。また、このとき、図3および図4に示すように、永久磁石23aおよび23bの内周面がシャフト21の外周面に接するとともに、永久磁石23aおよび23bが隣接するコア部22aおよび22bの間で周方向に隣接するように、ロータコア22の内部に永久磁石23aおよび23bを取り付ける。また、このとき、永久磁石23a(23b)とコア部22a(22b)との間、永久磁石23aと永久磁石23bとの間、および、永久磁石23a(23b)とシャフト21との間に接着剤を充填する。
【0032】
次に、図2に示すように、上記ロータコア22と永久磁石23aおよび23bとを取り付けたシャフト21に対して、円板状のプレート24(図6参照)を軸方向の外側から取り付ける。具体的には、まず、プレート24の内周部のシャフト挿入部24bにシャフト21を挿入する。そして、図1に示すように、シャフト21の外周部に設けられた歯車状の係合部21aと、プレート24のシャフト挿入部24bに設けられた歯車状の係合部24cとを係合させることにより、シャフト21とプレート24とを固定する。なお、このとき、図2に示すように、プレート24のロータコア22側の表面に形成された凹部24aの内部に、永久磁石23aおよび23bのロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23c)を嵌め込む。また、このとき、プレート24のバー挿入穴24dと、コア部22a(22b)のバー挿入穴22cとの位置を合わせる。
【0033】
最後に、図2に示すように、上記のように位置を合わせたプレート24のバー挿入穴24dと、コア部22a(22b)のバー挿入穴22cとに対して、バー30を軸方向に挿入し、プレート24とコア部22a(22b)とを固定する。このようにして、本発明の一実施形態による電動機100のロータ2の組み立てが行われる。
【0034】
本実施形態では、上記のように、ロータコア22の軸方向の端面から突出する部分(突出部23c)を有するように軸方向に延びるように永久磁石23aおよび23bを形成することによって、永久磁石23aおよび23bの磁束が漏れやすい部分(軸方向の端部)をロータコア22の軸方向の端面よりも外側に突出させて配置することができる。これにより、ロータコア22の軸方向の端部近傍における磁束漏れを低減することができるので、ロータコア22からステータティース11に到達する磁束の量が減少するのを抑制することができる。その結果、電動機100の出力を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア22の軸方向の両端面から突出する部分(突出部23c)を有するように軸方向に延びるように永久磁石23aおよび23bを形成する。これにより、ロータコア22の軸方向の両側の端部近傍における磁束漏れを低減することができるので、ロータコア22からステータティース11に到達する磁束の量が減少するのをより抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア22の軸方向の端面を覆うプレート24を設け、プレート24のロータコア22の軸方向の端面を覆う表面に、永久磁石23aおよび23bのロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23c)の形状(角柱形状)に対応する凹部24aを形成する。これにより、永久磁石23aおよび23bのロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23c)を凹部24aの内部に嵌め込むことができるので、ロータコア22にプレート24を容易に取り付けることができる。
【0037】
また、本実施形態では、上記のように、プレート24を非磁性材料(ステンレスや樹脂など)により形成し、プレート24の凹部24aを、永久磁石23aおよび23bのロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23c)の表面を露出させずに覆うように形成する。これにより、ロータコア22の軸方向の端面と、永久磁石23aおよび23bのロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23c)の表面とを、非磁性材料からなるプレート24によって覆うことができるので、ロータコア22の軸方向の両側の端部近傍における磁束漏れをさらに低減することができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア22の内周部に取り付けるシャフト21を設け、シャフト21の外周部に係合部21aを形成するとともに、シャフト21の係合部21aと係合する係合部24bをプレートの内周部に形成する。これにより、シャフト21の係合部21aとプレート24の係合部24bとを係合させることにより、シャフト21とプレート24とを強固に固定することができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア22の軸方向の長さL1を、ステータティース11の軸方向の長さL2よりも小さくなるように形成する。これにより、ロータコア22からステータティース11に向かう磁束が軸方向の外側に広がってステータティース11に到達しなくなるのを容易に抑制することができる。すなわち、ロータコア22からステータティース11に到達する磁束の量が減少するのを容易に抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、永久磁石23aおよび23bを、周方向の幅がロータコア22の内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなるように形成する。これにより、ロータコア22の外周部側の永久磁石23aおよび23bの端部の周方向の幅が大きくなる分、ロータコア22の外周部側の永久磁石23aおよび23bの端部の着磁方向(電動機100のq軸と交差する方向)に沿った方向の厚みが大きくなるので、永久磁石23aおよび23bの動作点を高くすることができる。その結果、電動機100の出力を高めることができるとともに、電機子反作用による反磁界の影響を受けやすいロータコア22の外周部側の永久磁石23aおよび23bの端部の不可逆減磁を抑制することができる。また、ロータコア22の内周部側の永久磁石23aおよび23bの端部の周方向の幅が小さくなる分、ロータコア22の内周部に接する永久磁石23aおよび23bの表面積が増加するので、電動機100の出力をさらに高めることができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、永久磁石23aおよび23bを、周方向の幅がロータコア22の内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる矩形形状の断面を有するように形成する。これにより、永久磁石23aおよび23bを矩形形状以外の形状(たとえば、周方向の幅がロータコア22の内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる扇形形状)の断面を有するように形成する場合に比べて、周方向の幅がロータコア22の内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる永久磁石23aおよび23bを容易に製造することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、永久磁石23aおよび23bを、q軸と直交する方向に対して所定の角度θだけ傾いた方向に着磁する。これにより、永久磁石23aおよび23bをq軸と直交する方向(矢印A方向(図4参照))に着磁する場合に比べて、永久磁石23aおよび23bの着磁方向に沿った方向の厚みをより大きくすることができるので、永久磁石23aおよび23bの動作点をより高くすることができる。その結果、電動機100の出力をより高めることができるとともに、永久磁石23aおよび23bの不可逆減磁をより抑制することができる。また、永久磁石23aおよび23bの着磁方向をq軸と直交する方向(矢印A方向)に対して傾けることにより、ロータコア22が回転する際におけるロータコア22とステータティース11との間のギャップ3を流れる磁束の変化を滑らかにすることができる。その結果、電動機100のコギングトルクを低減することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、永久磁石23aおよび23bの着磁方向の傾き角度θを、0°<θ≦45°の範囲に設定する。この角度範囲に角度θを設定することにより、容易に、永久磁石23aおよび23bの着磁方向に沿った方向の厚みを大きくすることができるとともに、ロータコア22が回転する際におけるロータコア22とステータティース11との間のギャップ3を流れる磁束の変化を滑らかにすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、周方向に間隔を隔てて配置する複数のコア部22aおよび22bを含むようにロータコア22を構成し、複数のコア部22aおよび22bのうちの隣接するコア部22aおよび22bの間に、永久磁石23aおよび23bの内周面がシャフト21の外周面に接するように永久磁石23aおよび23bを配置する。これにより、ロータコア22が周方向に間隔を隔てて配置された複数のコア部22aおよび22bに完全に別個に分離されるので、ロータコア22が外周部または内周部において連続するように形成されている場合と異なり、永久磁石23aおよび23bから発生する磁束の一部がステータティース11側に流れずにロータコア22の外周部または内周部の連続する部分を介して循環するのを抑制することができる。その結果、漏れ磁束を低減することができるので、電動機100の出力をより高めることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、コア部22a(22b)と隣接する永久磁石23a(23b)の外周面のコア部22a(22b)側の部分を覆う磁石被覆部22dをコア部22a(22b)の外周部に設ける。また、永久磁石23aおよび23bの内周面がシャフト21の外周面に接するとともに、永久磁石23aおよび23bの外周面の磁石被覆部22dに覆われていない部分が露出するように、永久磁石23aおよび23bを隣接するコア部22aおよび22bの間に配置する。これにより、磁石被覆部22dによって、ロータコア22(コア部22aおよび22b)が回転する際の遠心力によって永久磁石23aおよび23bが外周側に外れるのを抑制することができる。
【0046】
また、永久磁石23a(23b)の外周面のコア部22a(22b)側の部分を磁石被覆部22dにより覆うことによって、ロータコア22の外周面上のステータティース11側に流れる磁束が発生する領域の面積を大きくすることができるので、ロータコア22(コア部22aおよび22b)が回転する際におけるロータコア22(コア部22aおよび22b)とステータティース11との間のギャップ3を流れる磁束の変化をより滑らかにすることができる。これにより、電動機100のコギングトルクをより低減することができる。また、永久磁石23aおよび23bの外周面の磁石被覆部22dに覆われていない部分を露出させることによって、永久磁石23aおよび23bの外周面の磁石被覆部22dに覆われていない部分を磁性体などにより覆う場合に比べて、漏れ磁束をより低減することができる。その結果、電動機100の出力をより高めることができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、コア部22aおよび22bを介さずに周方向に隣接するように、2つの永久磁石23aおよび23bを隣接する2つのコア部22aおよび22bの間に配置する。これにより、永久磁石23aおよび23bをコア部22aまたは22bを介して隣接させる場合と異なり、永久磁石23aと永久磁石23bとで構成される磁気回路における空隙の総距離を小さくすることができるので、永久磁石23aおよび23bの動作点を高くすることができる。その結果、電動機100の出力をより高めることができるとともに、永久磁石23aおよび23bの不可逆減磁をより抑制することができる。
【0048】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
たとえば、上記実施形態では、ロータコアの軸方向の両端面から突出する部分を有するように永久磁石を形成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロータコアの軸方向の一方の端面からのみ突出する部分を有するように永久磁石を形成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、ロータコアの軸方向の端面を覆うプレートを設け、プレートにより、永久磁石のロータコアの軸方向の端面から突出した部分を露出させずに覆う例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロータコアの軸方向の端面を覆うプレートを設けなくてもよい。すなわち、永久磁石のロータコアの軸方向の端面から突出した部分が露出していてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、図2に示すように、永久磁石23a(23b)のロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23c)を露出させずに覆うように、プレート24に凹部24aを形成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、図7に示す変形例のように、永久磁石23d(23e)のロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23f)を露出させるように、プレート124に穴部124aを形成してもよい。
【0052】
この変形例による電動機100a(回転電機)のロータ2aに取り付けられた永久磁石23d(23e)は、図7に示すように、軸方向の両端部がプレート124の穴部124aを介して露出されるように軸方向に延びるように形成されている。すなわち、永久磁石23d(23e)のロータコア22の軸方向の端面から突出した部分(突出部23f)の突出高さH2は、プレート124の厚みt2よりも大きくなるように形成されている。
【0053】
この変形例では、上記のように、永久磁石23d(23e)をプレート124の穴部124aを介して露出させる。これにより、ロータ2aが回転する際に、永久磁石23d(23e)のプレート124の穴部124aを介して露出された部分によって電動機100aの内部の空気が撹拌されるので、ステータ1の巻線12を冷却することができる。その結果、電動機100aの出力を効果的に高めることができる。また、永久磁石23d(23e)のプレート124の穴部124aを介して露出された部分が電動機100aの内部の空気に触れて冷却されるので、永久磁石23d(23e)が熱により減磁されるのを抑制することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、ロータコアの軸方向の長さをステータティース(ステータコア)の軸方向の長さよりも小さくする例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロータコアの軸方向の長さとステータコアの軸方向の長さとを等しくしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、永久磁石を、周方向の幅がロータコアの内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる矩形形状の断面を有するように形成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、永久磁石を矩形形状以外の形状(たとえば、周方向の幅がロータコアの内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる扇形形状)の断面を有するように形成してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、永久磁石を電動機(回転電機)のq軸と直交する方向に対して傾いた方向に着磁する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、永久磁石を回転電機のq軸と直交する方向に着磁してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、ロータコアを複数のコア部により構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、複数のコア部の外周部または内周部を連結することによって、ロータコアを一部品として構成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、複数のコア部のうちの隣接する2つのコア部の間に、周方向の幅がロータコアの内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる2つの永久磁石を配置する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、隣接する2つのコア部の間に配置する永久磁石を1つとしてもよいし、3つ以上としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、コア部に磁石被覆部を設け、磁石被覆部により永久磁石の外周面のコア部側の部分を覆う例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、コア部に磁石被覆部を設けなくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、シャフト21(回転軸部)の外周部の係合部21a(第1係合部)と、プレート24の内周部の係合部24c(第2係合部)とを歯車状に形成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第1係合部と第2係合部とを歯車状以外の形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
11 ステータティース(ステータコア)
21 シャフト(回転軸部)
21a 係合部(第1係合部)
22 ロータコア
22a、22b コア部
22d 磁石被覆部
23a、23b、23d、23e 永久磁石
24 プレート
24a 凹部
24c 係合部(第2係合部)
124 プレート
124a 穴部
100、100a 電動機(回転電機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、
前記ロータコアの外周部に対向するように配置されるステータコアと、
前記ロータコアの内周部近傍から外周部近傍まで半径方向に延びるとともに、前記ロータコアの軸方向の端面から突出する部分を有するように軸方向に延びる永久磁石とを備える、回転電機。
【請求項2】
前記永久磁石は、前記ロータコアの軸方向の両端面から突出する部分を有するように軸方向に延びるように形成されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータコアの軸方向の端面を覆うように取り付けられるプレートをさらに備え、
前記プレートの前記ロータコアの軸方向の端面を覆う表面には、前記永久磁石の前記ロータコアの軸方向の端面から突出した部分の形状に対応する凹部または穴部が形成されている、請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記プレートは、非磁性材料からなり、
前記プレートの前記ロータコアの軸方向の端面を覆う表面には、前記凹部が形成されており、
前記凹部は、前記永久磁石の前記ロータコアの軸方向の端面から突出した部分の表面を露出させずに覆うように形成されている、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ロータコアの内周部に取り付けられる回転軸部をさらに備え、
前記回転軸部の外周部には、第1係合部が形成されており、
前記プレートの内周部には、前記回転軸部の前記第1係合部と係合する第2係合部が形成されている、請求項3または4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ロータコアは、軸方向の長さが前記ステータコアの軸方向の長さよりも小さくなるように形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記永久磁石は、周方向の幅が前記ロータコアの内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなるように形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記永久磁石は、周方向の幅が前記ロータコアの内周部から外周部に向かうにしたがって徐々に大きくなる矩形形状の断面を有するように形成されている、請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
前記永久磁石は、前記回転電機のq軸と交差する方向に着磁されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項10】
前記永久磁石は、前記q軸と直交する方向に対して所定の角度θだけ傾いた方向に着磁されている、請求項9に記載の回転電機。
【請求項11】
前記所定の角度θは、0°<θ≦45°の範囲に設定されている、請求項10に記載の回転電機。
【請求項12】
前記ロータコアの内周部に取り付けられる回転軸部をさらに備え、
前記ロータコアは、周方向に間隔を隔てて配置される複数のコア部を含むように構成されており、
前記永久磁石は、前記複数のコア部のうちの隣接するコア部の間に、前記永久磁石の内周面が前記回転軸部の外周面に接するように配置されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項13】
前記コア部の外周部には、前記コア部と隣接する前記永久磁石の外周面の前記コア部側の部分を覆う磁石被覆部が設けられており、
前記永久磁石は、前記複数のコア部のうちの隣接するコア部の間に、前記永久磁石の内周面が前記回転軸部の外周面に接するとともに、前記永久磁石の外周面の前記磁石被覆部に覆われていない部分が露出するように配置されている、請求項12に記載の回転電機。
【請求項14】
前記永久磁石は、前記複数のコア部のうちの隣接する2つのコア部の間に、前記コア部を介さずに周方向に2つ隣接するように配置されている、請求項12または13に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−21844(P2013−21844A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154387(P2011−154387)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】