説明

回転電機

【課題】電流印加時の発熱量を減らしつつ体格の大型化を抑えること。
【解決手段】固定子鉄心10の溝部11に挿入したコイルプレート積層体20とこれらの間のコイルエンドプレート積層体30とを有する回転電機において、各コイルエンドプレート31は、断面積が同じ大きさの周方向に直交する断面と、同じ厚さの板厚と、を有し、各コイルプレート24は、径方向の外側に配置されたものほど板厚を薄くした溝部11内における部分と、コイルエンドプレート31の端面に当接するコイルエンド部26と、を有し、各コイルエンド部26は、各コイルエンドプレート31の前記断面と同一形状の周方向に直交する断面を有し、コイルエンドプレート31の前記断面とコイルエンド部26の前記断面の夫々の断面積は、電流印加に伴う発熱量が所定値以下となる大きさになるように設定したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隔を空けて放射状に複数の溝部が形成された環状の固定子鉄心と、その溝部内で径方向に積層され、固定子鉄心における軸線方向の夫々の端面から突出させた突出部分を有する複数枚のコイルプレートと、周方向で隣り合う2枚のコイルプレートの突出部分における端部同士を各コイルプレートの対毎に接続した複数枚のコイルエンドプレートと、を有する固定子を備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載されている様に、この種の回転電機について知られている。この特許文献1に記載の回転電機においては、径方向の外側に配置されたコイルプレートほど、その板厚が薄くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−336650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の回転電機においては、径方向の外側に配置されているコイルプレートほど板厚が薄くなっているので、夫々のコイルプレートの軸線方向の長さが同じであれば、径方向の外側のコイルプレートの方が径方向の内側のコイルプレートよりも板厚部分の断面積(周方向に直交する断面積)が小さく、電気抵抗が大きくなる。従って、固定子印加電流を印加した際には、径方向の外側のコイルプレートの方が径方向の内側のコイルプレートよりも発熱量が多いので、早期に発熱してしまう可能性がある。ここで、その発熱量を減らす為には、コイルプレートの板厚部分の断面積を増やせばよいので、断面積の小さいコイルプレートを固定子鉄心の軸線方向に向けて延伸すればよい。しかしながら、回転電機は、これにより軸線方向に体格が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、電流印加時の発熱量を減らしつつ、体格の大型化を抑えることが可能な回転電機を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、間隔を空けて放射状に複数の軸線方向の溝部が形成された環状の固定子鉄心と、該溝部内で当該固定子鉄心の径方向に積層され、該固定子鉄心における軸線方向の夫々の端面から突出させた突出部分を有する複数枚のコイルプレートと、前記固定子鉄心の周方向で隣り合う2枚の前記コイルプレートの前記突出部分における当該周方向の端面同士を当該各コイルプレートの対毎に接続した複数枚のコイルエンドプレートと、を有する固定子を備えた回転電機において、前記各コイルエンドプレートは、前記径方向の配置に拘わらず断面積が同じ大きさの前記周方向に直交する断面と、前記径方向の配置に拘わらず同じ厚さの当該径方向の板厚と、を有し、前記各コイルプレートは、前記径方向の外側に配置されたものほど当該径方向の内側に配置されたものよりも当該径方向の板厚を薄くした前記溝部内における部分と、前記コイルエンドプレートの前記周方向の端面に当接する当該周方向の端面を備えた前記突出部分におけるコイルエンド部と、を有し、前記各コイルエンド部は、前記各コイルエンドプレートの前記断面と同一形状になる前記周方向に直交する断面を有し、前記コイルエンドプレートの前記断面と前記コイルエンド部の前記断面の夫々の断面積は、固定子印加電流の印加に伴う前記コイルエンドプレート及び前記コイルプレートの発熱量が所定値以下となる大きさになるように設定したことを特徴としている。
【0007】
ここで、前記各コイルプレートのコイルエンド部と前記各コイルエンドプレートの夫々の板厚を厚くすることが望ましい。
【0008】
また、前記各コイルプレートのコイルエンド部と前記各コイルエンドプレートの夫々の板厚は、該各々の板厚の合計値が前記固定子鉄心における前記径方向の肉厚の範囲内で収まるように厚くすることが望ましい。
【0009】
また、前記所定値は、回転電機の動作や耐久性を妨げない発熱量であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転電機においては、コイルエンドプレートの周方向に直交する断面とコイルエンド部の周方向に直交する断面の夫々の断面積について、固定子印加電流の印加に伴うコイルエンドプレート及びコイルプレートの発熱量が所定値以下となる大きさに設定する。これが為、この回転電機においては、固定子印加電流を印加した際のコイルエンドプレート及びコイルプレートの発熱量を低く抑えることができる。また、この回転電機においては、各コイルプレートの径方向の配置に拘わらず各コイルエンド部の前記断面の断面積が前記所定値に応じた設定値となり、且つ、各コイルプレートの径方向の配置に拘わらず各コイルエンド部の板厚を同じ厚さにしている。更に、この回転電機においては、各コイルエンドプレートの径方向の配置に拘わらず各コイルエンドプレートの前記断面の断面積が前記所定値に応じた設定値となり、且つ、各コイルエンドプレートの径方向の配置に拘わらず各コイルエンドプレートの板厚を同じ厚さにしている。従って、この回転電機においては、各コイルエンド部の軸線方向の長さと各コイルエンドプレートの軸線方向の長さが各々同じ長さとなるので、各断面の断面積が設定値を満たす為の策として夫々の軸線方向の長さにばらつきを生じさせる必要がない。これが為、この回転電機においては、軸線方向の体格の大型化を抑えることができる。特に、この回転電機は、各コイルプレートのコイルエンド部と前記各コイルエンドプレートの夫々の板厚を厚くすることで、その軸線方向の体格の大型化を効果的に抑えることが可能になる。この様に、この回転電機に依れば、コイルエンドプレート及びコイルプレートの発熱量を低く抑えつつ、体格の大型化を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明に係る回転電機の固定子を軸線方向に観た図である。
【図2】図2は、本発明に係る回転電機の固定子の一部分を示す斜視図である。
【図3】図3は、固定子鉄心の溝部周辺を拡大した概略図である。
【図4】図4は、固定子鉄心の溝部周辺を図3の矢印Aの方向に観た図である。
【図5】図5は、固定子鉄心の溝部周辺を図3の矢印Bの方向に観た図である。
【図6】図6は、コイルプレートのコイルエンド部又はコイルエンドプレートの斜視図である。
【図7】図7は、固定子鉄心の溝部周辺を図3のX−X線で切った断面図である。
【図8】図8は、固定子鉄心の溝部周辺を図3のY−Y線で切った断面図である。
【図9】図9は、固定子鉄心の溝部周辺を図3のZ−Z線で切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る回転電機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
[実施例]
本発明に係る回転電機の実施例を図1から図9に基づいて説明する。
【0014】
本実施例の回転電機は、固定子のコイルに電流を印加して磁界を発生させ、その磁界によって回転子を回転させるものである。この種の回転電機としては、例えば三相交流回転電機等が知られている。回転子は、例えば永久磁石や電磁石等からなるものである。また、固定子は、固定子鉄心にコイルが巻回されたものである。ここでは、この回転電機の中でも固定子に着目して詳述する。
【0015】
図1から図3の符号1は、この回転電機の固定子を示している。この固定子1は、前述した従来の回転電機の固定子と同様に、固定子鉄心10と複数のコイルプレート積層体20と複数のコイルエンドプレート積層体30とに大別された構成を有する。尚、図3では、説明の便宜上、3枚のコイルプレート24によるコイルプレート積層体20を例示している。
【0016】
固定子鉄心10は、例えば複数枚の環状の電磁鋼板の積層体である。この環状を成す固定子鉄心10には、間隔を空けて放射状に複数の軸線方向の溝部(所謂スロット)11が形成されている。夫々の溝部11には、コイルプレート積層体20が1つずつ挿入される。ここでは、この夫々の溝部11が均等な間隔で配置されている。また、夫々の溝部11は、固定子鉄心10における軸線方向の一方の端面から他方の端面に至るまで貫通させたものである。
【0017】
以下においては、特に言及しない限り、その固定子鉄心10の軸線方向、周方向及び径方向のことを各々単に軸線方向、周方向及び径方向と云う。また、その径方向の中でも、固定子鉄心10の内方に向けた側を径方向内側と、固定子鉄心10の外方に向けた側を径方向外側と云う。
【0018】
ここで例示するコイルプレート積層体20は、一対の第1コイルプレート積層体21と第2コイルプレート積層体22とを備える。また、このコイルプレート積層体20は、樹脂等の絶縁材料からなる保持部材23を備える。その保持部材23は、第1及び第2のコイルプレート積層体21,22を側面(周方向の端面や径方向の端面)から覆って一体となるように保持する為のものである。この保持部材23は、その軸線方向の長さを溝部11の軸線方向の長さに略一致させており、その全て又は殆どが溝部11の中に挿入される。
【0019】
第1及び第2のコイルプレート積層体21,22は、夫々に複数枚の板状のコイルプレート24を積層させたものである。各コイルプレート24は、銅等の電気伝導材料からなり、溝部11に挿入された状態で径方向に積層されている。また、これら各コイルプレート24は、その軸線方向の長さが溝部11の軸線方向の長さよりも長く、溝部11に挿入された状態で軸線方向の両端を固定子鉄心10における軸線方向の夫々の端面から突出させている。その夫々の突出部分25には、コイルエンド部26が形成されており、このコイルエンド部26を介してコイルエンドプレート積層体30が接続される。ここで、各コイルプレート24は、その夫々の突出部分25の軸線方向の長さが同等の長さになるよう成形及び配置されている。
【0020】
これら第1及び第2のコイルプレート積層体21,22において、夫々のコイルプレート24における溝部11の中に存在している部分は、径方向の外側に配置されたものほど径方向の内側に配置されたものよりも径方向の板厚が薄くなっている。夫々のコイルプレート24においては、その溝部11の中に存在している部分の軸線方向における両端に上述した突出部分25が設けられている。この例示では、図4及び図5に示すように、夫々のコイルプレート24における突出部分25の根元に径方向の配置に応じた板厚の違いが残存している。その根元とは、突出部分25における固定子鉄心10の軸線方向の端面とコイルエンド部26との間に介在している部分のことを指す。尚、図4は、図3における矢視Aを表したものである。また、図5は、図3における矢視Bを表したものである。そして、この図5におけるコイルプレート24は、説明の便宜上、紙面上方に突出部分25を示している。尚、図3〜図5においては説明の便宜上各コイルプレート24の間やコイルエンドプレート31の間に隙間を設けているが、その様な隙間は存在していなくてもよい。
【0021】
夫々のコイルプレート24のコイルエンド部26は、図4及び図5のハッチング部分で示すように、周方向に直交する夫々の第1断面の断面積Sc1a,Sc1b,Sc1cがコイルプレート24の径方向の配置に拘わらず同じ大きさとなるように成形する(Sc1=Sc1a=Sc1b=Sc1c)。その第1断面は、図6に示す如く、固定子印加電流の電流方向に直交するものでもある。そして、この各コイルエンド部26は、夫々の板厚tca,tcb,tccについてもコイルプレート24の径方向の配置に拘わらず同じ厚さとなるように成形する(tc=tca=tcb=tcc)。従って、各コイルエンド部26の軸線方向の長さLc1は、コイルプレート24の径方向の配置に拘わらず夫々において同じ長さになっている。
【0022】
コイルエンド部26の板厚tcについては、コイルプレート積層体20の径方向の長さLc2(溝部11の径方向長さを用いてもよい)と設置するコイルプレート24の枚数Ncとを用いて、下記の式1により設定することができる。
【0023】
tc=Lc2/Nc … (1)
【0024】
また、コイルエンド部26の軸線方向の長さLc1は、そのコイルエンド部26の板厚tcとコイルエンド部26の第1断面の断面積Sc1とを用いて、下記の式2により設定することができる。
【0025】
Lc1=Sc1/tc … (2)
【0026】
一方、各コイルエンド部26は、軸線方向に直交する夫々の第2断面の断面積Sc2a,Sc2b,Sc2cがコイルプレート24の径方向の配置に拘わらず同じ大きさとなるように成形してもよいが(Sc2=Sc2a=Sc2b=Sc2c)、図3のハッチング部分で示すように、各断面積Sc2a,Sc2b,Sc2cを必ずしも同じ大きさに成形する必要はない。つまり、この各コイルエンド部26は、前述したように、夫々の板厚tca,tcb,tccがコイルプレート24の径方向の配置に拘わらず同じ厚さになっている。従って、各コイルエンド部26の周方向の長さLc3は、各断面積Sc2a,Sc2b,Sc2cを同じ大きさにするのであれば、コイルプレート24の径方向の配置に拘わらず夫々において同じ長さになり、各断面積Sc2a,Sc2b,Sc2cを同じ大きさにする必要が無ければ、その断面積Sc2a,Sc2b,Sc2cに応じた異なる長さになる。
【0027】
続いて、コイルエンドプレート積層体30は、複数枚の板状のコイルエンドプレート31を積層させたものである。このコイルエンドプレート積層体30は、各コイルエンドプレート31が保持部材32で保持され、周方向で隣り合う2つのコイルプレート積層体20の突出部分25の間に配置される。各コイルエンドプレート31は、銅等の電気伝導材料からなり、その配置状態で径方向に積層されている。
【0028】
1枚のコイルエンドプレート31は、周方向で隣り合う2枚のコイルプレート24を接続するものである。その2枚のコイルプレート24は、その突出部分25(より正確にはコイルエンド部26)における周方向の端面同士がコイルエンドプレート31の夫々の周方向の端面において接続される。コイルエンドプレート積層体30における夫々のコイルエンドプレート31は、その様な周方向で隣り合う2枚のコイルプレート24の対毎に接続されている。
【0029】
夫々のコイルエンドプレート31は、図4のハッチング部分で示すように、周方向に直交する夫々の第1断面の断面積Se1a,Se1b,Se1cがコイルエンドプレート31の径方向の配置に拘わらず同じ大きさとなるように成形する(Se1=Se1a=Se1b=Se1c)。その第1断面は、図6に示す如く、固定子印加電流の電流方向に直交するものでもある。そして、この各コイルエンドプレート31は、夫々の径方向の板厚tea,teb,tecについてもコイルエンドプレート31の径方向の配置に拘わらず同じ厚さとなるように成形する(te=tea=teb=tec)。従って、各コイルエンドプレート31の軸線方向の長さLe1は、コイルエンドプレート31の径方向の配置に拘わらず夫々において同じ長さになっている。
【0030】
コイルエンドプレート31の板厚teについては、コイルエンドプレート積層体30の径方向の長さLe2(コイルプレート積層体20の径方向の長さLc2を用いてもよい)と設置するコイルエンドプレート31の枚数Neとを用いて、下記の式3により設定することができる。
【0031】
te=Le2/Ne … (3)
【0032】
また、コイルエンドプレート31の軸線方向の長さLe1は、そのコイルエンドプレート31の板厚teとコイルエンドプレート31の第1断面の断面積Se1とを用いて、下記の式4により設定することができる。
【0033】
Le1=Se1/te … (4)
【0034】
一方、各コイルエンドプレート31は、前述したように夫々の周方向の端面をコイルエンド部26における周方向の端面に接続するものであるので、周方向の長さLe3が周方向で隣り合うコイルエンド部26の端面同士の間隔に依存して決まる。つまり、各コイルエンドプレート31は、その周方向の長さLe3がコイルエンドプレート31の径方向の配置に拘わらず同じ長さになる場合もあれば、異なる長さになる場合もある。従って、各コイルエンドプレート31は、軸線方向に直交する夫々の第2断面の断面積Se2a,Se2b,Se2cがコイルエンドプレート31の径方向の配置に拘わらず同じ大きさとなるように成形される場合もあれば(Se2=Se2a=Se2b=Se2c)、図3に二点鎖線で示すように異なる大きさに成形される場合もある。
【0035】
ここで、コイルエンド部26の第1断面とコイルエンドプレート31の第1断面の夫々の断面積Sc1,Se1は、固定子印加電流を印加した際に、コイルプレート24及びコイルエンドプレート31の発熱量が所定値以下となる大きさ(所定断面積)になるように設定する。この設定は、固定子印加電流の印加に伴いコイルプレート24及びコイルエンドプレート31が発熱するが、その発熱量が回転電機の動作や耐久性を妨げる程度にまで高くならないようにする為のものである。従って、その所定値としては、例えば、回転電機の動作(出力性能等に係る動作)や耐久性を妨げない発熱量を用いればよい。
【0036】
特に、その発熱量の中で最も高い値を用いた場合、この回転電機は、その動作や耐久性を妨げずに夫々の断面積Sc1,Se1を最も小さくすることができる。そして、この回転電機においては、コイルプレート24の径方向の配置に拘わらず夫々の断面積Sc1が上記の所定断面積を満たし、且つ、コイルプレート24の径方向の配置に拘わらず夫々の軸線方向の長さLc1が一定となるように、各コイルエンド部26の板厚tcを溝部11内のコイルプレート24の板厚に拘わらず同じ厚さに成形している。更に、この回転電機においては、コイルエンドプレート31の径方向の配置に拘わらず夫々の断面積Se1が上記の所定断面積を満たし、且つ、コイルエンドプレート31の径方向の配置に拘わらず夫々の軸線方向の長さLe1が一定となるように、各コイルエンドプレート31の板厚teも同じ厚さに成形している。従って、この回転電機においては、従来の様な上記の所定断面積を満足させる為のコイルエンド部の軸線方向への延長が不要になるので、軸線方向の体格の大型化を抑えることができる。また、この回転電機においては、各コイルエンド部26の板厚tcや各コイルエンドプレート31の板厚teを増大させることで、夫々の断面積Sc1,Se1が上記の所定断面積を満たしつつ、軸線方向の長さLc1,Le1を短くできるので、これによっても軸線方向の体格の大型化を抑えることができる。
【0037】
その発熱量は、コイルプレート24やコイルエンドプレート31の電気抵抗値が大きくなると共に高くなる。これが為、その夫々の断面積Sc1,Se1は、換言するならば、固定子印加電流を印加した際に、コイルプレート24及びコイルエンドプレート31の電気抵抗値が所定値を下回る大きさになるように設定する。従って、その所定値としては、例えば、回転電機の動作や耐久性を妨げない発熱量を生じさせる電気抵抗値、特にその電気抵抗値の中で最も高い値(境界値)を用いればよい。そして、この場合には、その境界値に基づいて設定した上記の所定断面積についての境界値を用いればよい。
【0038】
この様に、この回転電機においては、その所定断面積の境界値以上の大きさに夫々の第1断面の断面積Sc1,Se1を設定することによって、固定子印加電流を印加した際にコイルプレート24やコイルエンドプレート31の発熱量を低く抑えることができ、回転電機の動作や耐久性を妨げることが無くなる。
【0039】
また、この回転電機においては、その第1断面の断面積Sc1の設定を維持した状態で、各コイルエンド部26の径方向の板厚tcを径方向におけるコイルプレート24の配置に拘わらず同じ厚さにしている。これが為、この回転電機では、各コイルエンド部26の軸線方向の長さLc1を同じ長さに保つことができ、この各コイルエンド部26の板厚tcを厚くすることで、上述した様に軸線方向の長さLc1を短くすることができる。板厚tcを厚くする際には、例えば、コイルプレート積層体20の径方向の長さLc2(各コイルエンド部26の径方向の板厚tcの合計値)が固定子鉄心10における径方向の肉厚(外径と内径の差)の範囲内に収まるようにすることが径方向への大型化を防ぐ上で望ましい。更に、この回転電機においては、各コイルエンドプレート31の径方向の板厚teについても、径方向におけるコイルエンドプレート31の配置に拘わらず、第1断面の断面積Se1を上記の設定に維持した状態で同じ厚さにしている。これが為、この回転電機では、各コイルエンドプレート31の軸線方向の長さLe1を同じ長さに保つことができ、この各コイルエンドプレート31の板厚teを厚くすることで、上述した様に軸線方向の長さLe1を短くすることができる。板厚teを厚くする際には、例えば、コイルエンドプレート積層体30の径方向の長さLe2(各コイルエンドプレート31の径方向の板厚teの合計値)が固定子鉄心10の肉厚(外径と内径の差)の範囲内に収まるようにすることが径方向への大型化を防ぐ上で望ましい。固定子1は、その断面積Sc1,Se1と板厚tc,teの設定によって、軸線方向における体格を短縮させることができる。従って、この回転電機においては、軸線方向における体格の小型化が可能になる。この例示では、コイルエンド部26の第1断面とコイルエンドプレート31の第1断面とを同一形状にしている。
【0040】
尚、夫々の断面積Sc1,Se1については、上記の所定断面積の境界値より大きくしても発熱量を低く抑えることができる。しかしながら、これに伴いコイルエンド部26やコイルエンドプレート31が大きくなり、固定子1、即ち回転電機の体格が大型化してしまう。従って、この回転電機においては、夫々の断面積Sc1,Se1を上記の所定断面積の境界値に設定することで、コイルエンド部26やコイルエンドプレート31の発熱量を低く抑えつつ、体格の大型化を抑えることができる。特に、この回転電機においては、コイルエンド部26やコイルエンドプレート31の板厚tc,teを厚くすることで、コイルエンド部26やコイルエンドプレート31の発熱量を低く抑えつつ、体格の小型化が可能になる。
【0041】
ここで、各コイルプレート24においては、コイルエンド部26の第1断面の断面積Sc1が上記の所定断面積の境界値以上の大きさを保つことができるのであれば、溝部11内における部分の径方向の板厚に対して、コイルエンド部26の径方向の板厚tcを厚くしてもよく、薄くしてもよい。例えば、図4の紙面左側の径方向内側のコイルプレート24においては、溝部11内の板厚に対してコイルエンド部26の径方向の板厚tcが薄くなっている。尚、この例示では、図7に示すように、径方向内側のコイルプレート24のコイルエンド部26における周方向の長さLc3が溝部11内における部分の周方向の長さよりも長くなっている。また、図4の紙面真ん中のコイルプレート24においては、溝部11内の板厚とコイルエンド部26の径方向の板厚tcとが略均一になっている。尚、この例示では、図8に示すように、この真ん中のコイルプレート24におけるコイルエンド部26の周方向の長さLc3と溝部11内の部分の周方向の長さとが略均一になっている。また、図4の紙面右側の径方向外側のコイルプレート24においては、溝部11内の板厚に対してコイルエンド部26の径方向の板厚tcが厚くなっている。尚、この例示では、図9に示すように、この径方向外側のコイルプレート24のコイルエンド部26における周方向の長さLc3と溝部11内における部分の周方向の長さとが略均一になっている。
【符号の説明】
【0042】
1 固定子
10 固定子鉄心
11 溝部
20 コイルプレート積層体
21 第1コイルプレート積層体
22 第2コイルプレート積層体
24 コイルプレート
26 コイルエンド部
30 コイルエンドプレート積層体
31 コイルエンドプレート
Sc1 コイルエンド部の第1断面の断面積
Sc2 コイルエンド部の第2断面の断面積
Se1 コイルエンドプレートの第1断面の断面積
Se2 コイルエンドプレートの第2断面の断面積
tc コイルエンド部の板厚
te コイルエンドプレートの板厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて放射状に複数の軸線方向の溝部が形成された環状の固定子鉄心と、該溝部内で当該固定子鉄心の径方向に積層され、該固定子鉄心における軸線方向の夫々の端面から突出させた突出部分を有する複数枚のコイルプレートと、前記固定子鉄心の周方向で隣り合う2枚の前記コイルプレートの前記突出部分における当該周方向の端面同士を当該各コイルプレートの対毎に接続した複数枚のコイルエンドプレートと、を有する固定子を備えた回転電機において、
前記各コイルエンドプレートは、前記径方向の配置に拘わらず断面積が同じ大きさの前記周方向に直交する断面と、前記径方向の配置に拘わらず同じ厚さの当該径方向の板厚と、を有し、
前記各コイルプレートは、前記径方向の外側に配置されたものほど当該径方向の内側に配置されたものよりも当該径方向の板厚を薄くした前記溝部内における部分と、前記コイルエンドプレートの前記周方向の端面に当接する当該周方向の端面を備えた前記突出部分におけるコイルエンド部と、を有し、
前記各コイルエンド部は、前記各コイルエンドプレートの前記断面と同一形状になる前記周方向に直交する断面を有し、
前記コイルエンドプレートの前記断面と前記コイルエンド部の前記断面の夫々の断面積は、固定子印加電流の印加に伴う前記コイルエンドプレート及び前記コイルプレートの発熱量が所定値以下となる大きさになるように設定したことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記各コイルプレートのコイルエンド部と前記各コイルエンドプレートの夫々の板厚を厚くすることを特徴とした請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記各コイルプレートのコイルエンド部と前記各コイルエンドプレートの夫々の板厚は、該各々の板厚の合計値が前記固定子鉄心における前記径方向の肉厚の範囲内で収まるように厚くすることを特徴とした請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記所定値は、回転電機の動作や耐久性を妨げない発熱量であることを特徴とした請求項1,2又は3に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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