説明

回転霧化頭型塗装装置

【課題】洗浄流体の供給圧力の変動に影響することなく、チェック弁を安定的に開弁させることにより回転霧化頭の洗浄効率を向上する。
【解決手段】フィードチューブ17の洗浄流体通路21を開,閉するチェック弁22を取囲む位置に、このチェック弁22の弁部が開弁したときに弁開度を規制する弁開度規制部材23を設ける構成としている。従って、洗浄流体通路21から勢いよく洗浄流体を供給した場合でも、弁開度規制部材23は、チェック弁22の弁部の弁開度を適正な値に規定することができる。これにより、洗浄流体を最適な状態で供給することができ、回転霧化頭7等を効率よく洗浄することができる。また、チェック弁22に無理な負荷が作用するのを防止することができ、これらの損傷を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車体等の被塗物に塗装するのに用いて好適な回転霧化頭型塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車体等の被塗物を塗装する場合、塗着効率や仕上りが良好な回転霧化頭型塗装装置が用いられる。この回転霧化頭型塗装装置は、塗装用ロボットのアーム等に取付けられるカバーと、該カバー内に設けられたエアモータと、該エアモータによって回転駆動される中空な回転軸と、該回転軸の先端側に取付けられ該回転軸と一緒に回転する回転霧化頭と、先端側が該回転霧化頭内に延在するように前記回転軸内を軸方向に延びて設けられ先端から塗料または洗浄流体を吐出するフィードチューブとにより大略構成されている。
【0003】
また、フィードチューブは、内筒と該内筒よりも後退した位置に開口した外筒とにより二重筒体として形成されている。そして、フィードチューブの内筒の内部には塗料通路が形成され、内筒と外筒との間には環状の洗浄流体通路が形成されている。
【0004】
さらに、二重筒体からなるフィードチューブには、その外筒の先端から軸方向に延びるように筒状のチェック弁が設けられ、該チェック弁は、弾性を有する樹脂材料またはゴム材料等から筒状に形成され、縮径した先端の弁部が内筒の外周面に弾性的に密着している(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−277571号公報
【特許文献2】特開平10−156222号公報
【特許文献3】国際公開第2007/083677号公報
【0006】
これにより、塗装作業を行っているときには、チェック弁の弁部を内筒の外周面に着座させ、洗浄流体通路から洗浄流体が漏れ出るのを防止している。一方、洗浄作業を行うために、洗浄流体通路に洗浄流体を供給したときには、洗浄流体の供給圧力によりチェック弁の弁部を拡径して内筒の外周面から離座させ、内筒の外周面とチェック弁の弁部との間から回転霧化頭に向け洗浄流体を供給することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、各特許文献による回転霧化頭型塗装装置では、洗浄流体通路の流出口を閉塞するように弾性を有する樹脂材料またはゴム材料からなるチェック弁を設けているから、洗浄作業時以外で洗浄流体通路から洗浄流体が漏れ出るのを防止することができる。
【0008】
しかし、チェック弁は、弾性を有する樹脂材料またはゴム材料によって形成しているから、洗浄流体の供給圧力が高い場合には、チェック弁の弁部が大きく拡開する。ここで、回転軸、回転霧化頭とフィードチューブとは、これらの間に塗料が流入して固着しないように小さな隙間をもって配設されている。従って、チェック弁の先端側が大きく拡開した場合には、高速で回転している回転霧化頭等にチェック弁が接触して損傷することがあり、洗浄流体の漏出、洗浄流体の不安定な供給による洗浄効率の低下等を招くという問題がある。
【0009】
また、洗浄流体の供給圧力は変動を生じることがあり、弾性力によって開,閉弁するチェック弁は、洗浄流体の供給圧力の変動に応じて弁開度が変化してしまう。このために、チェック弁が回転霧化頭等に接触しない場合でも、チェック弁の弁部が円形状に開弁せず、歪な開口となって洗浄流体の供給が不安定になってしまうことがあり、洗浄効率の低下、洗浄流体の使用量の増大等を招くという問題がある。
【0010】
さらに、洗浄流体によってチェック弁の弁部が過大に拡開した場合には、弁部が伸びきってシール性の低下を招く虞があり、チェック弁の寿命が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、洗浄流体の供給圧力の変動に影響することなく、チェック弁を安定的に開弁させることにより回転霧化頭を効率よく洗浄できるようにした回転霧化頭型塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による回転霧化頭型塗装装置は、エアモータによって回転される中空な回転軸と、該回転軸の先端側に設けられた回転霧化頭と、前記回転軸内に同軸に設けられた内筒と外筒とからなり先端側が該回転霧化頭内に延在したフィードチューブと、該フィードチューブの内筒内に形成され塗料と洗浄流体が選択的に供給される塗料通路と、前記フィードチューブの内筒と外筒との間に形成され洗浄流体が供給される洗浄流体通路と、前記フィードチューブの外筒の先端側に設けられ常時は閉弁し洗浄流体が供給されたときに開弁するチェック弁とを備えている。
【0013】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記フィードチューブの先端側のうち前記チェック弁を取囲む位置には、当該チェック弁が開弁したときに弁開度を規制する弁開度規制部材を設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項2の発明は、前記フィードチューブは、前記塗料通路の流出口よりも前記洗浄流体通路の流出口が後退した位置で開口するように前記内筒よりも前記外筒を短く形成し、前記弁開度規制部材は、前記チェック弁を取囲んだ状態で前記外筒の先端側に設ける構成としたことにある。
【0015】
請求項3の発明は、前記フィードチューブは、前記塗料通路の流出口よりも前記洗浄流体通路の流出口が後退した位置で開口するように前記内筒よりも前記外筒を短く形成し、前記チェック弁は、前記外筒に固定された固定部と、該固定部から前記内筒の外周を先端側に延びた筒部と、該筒部の先端に設けられ内筒の外周面に離着座する弁部とにより構成し、前記弁開度規制部材は、前記チェック弁の筒部を取囲んだ状態で前記外筒の先端側に設ける構成としたことにある。
【0016】
請求項4の発明は、前記弁開度規制部材には、基端側から先端側に向け内径寸法が漸次大きくなる湾曲内周面を設け、該湾曲内周面には、前記チェック弁が開弁したときにその外周面を当接させる構成としたことにある。
【0017】
請求項5の発明は、前記回転霧化頭には、洗浄流体を外周側に供給する第1の洗浄流体流出路と洗浄流体を前面側に供給する第2の洗浄流体流出路とを設け、前記フィードチューブの内筒には、前記チェック弁の位置よりも前側に位置して洗浄流体を第1の洗浄流体流出路と第2の洗浄流体流出路とに分流する分流部材を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、フィードチューブの洗浄流体通路から勢いよく洗浄流体を供給した場合には、チェック弁が大きく開弁しようとする。しかし、チェック弁を取囲む位置には、当該チェック弁が開弁したときに弁開度を規制する弁開度規制部材を設けているから、この弁開度規制部材によりチェック弁の弁開度を安定させることができる。しかも、チェック弁は、弁開度規制部材によって弁開度が規制されることにより、円形状に開弁することができる。
【0019】
この結果、洗浄流体の供給圧力が変動した場合でも、この変動に影響することなく、チェック弁を一定の弁開度で円形状に開弁させることができ、洗浄流体を適正に供給することができる。これにより、回転霧化頭等を洗浄流体により効率よく洗浄することができる。また、弁開度規制部材によりチェック弁の弁開度を規制することにより、チェック弁の損傷を防止でき、信頼性や寿命を向上することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、フィードチューブは、塗料通路の流出口よりも洗浄流体通路の流出口が後退した位置で開口するように、内筒よりも外筒を短く形成しているから、この短い外筒の先端側のスペースを利用し、チェック弁を取囲むように弁開度規制部材を設けることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、フィードチューブは、塗料通路の流出口よりも洗浄流体通路の流出口が後退した位置で開口するように、内筒よりも外筒を短く形成しているから、この短い外筒の先端側にチェック弁を設けることができる。また、チェック弁は、筒部の先端側の弁部を内筒の外周面に離着座することができる。さらに、外筒の先端側には、チェック弁の筒部を取囲むように弁開度規制部材を設けることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、チェック弁が開弁したときに外周面が当接する弁開度規制部材の内周面は、基端側から先端側に向け内径寸法が漸次大きくなる湾曲内周面として形成している。これにより、チェック弁を円滑に開,閉弁させることができ、また、弁開度規制部材の湾曲内周面は、チェック弁の一部に応力が集中するのを防止することができ、該チェック弁の寿命を延ばすことができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、フィードチューブの内筒には、チェック弁よりも前側に位置して分流部材を設けているから、チェック弁を開弁して吐出される洗浄流体は、分流部材によって第1の洗浄流体通路と第2の洗浄流体通路とに分流することができる。これにより、洗浄流体によって回転霧化頭の外周側と前面側とを一度に効率よく洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態による回転霧化頭型塗装装置を図1ないし図4に従って詳細に説明する。
【0025】
図1において、1は回転霧化頭型塗装装置の外周を覆う塗装機カバーで、該塗装機カバー1は、例えば塗装用ロボットのアーム(図示せず)先端に取付けられている。そして、塗装機カバー1は、円筒状に形成され、その内部には後述のエアモータ2を収容している。
【0026】
2は塗装機カバー1内に収容されたエアモータで、該エアモータ2は、筒状に形成されたモータケーシング2Aと、該モータケーシング2A内に収容されたエアタービンと、後述する回転軸3を回転可能に軸支する静圧エア軸受(いずれも図示せず)とによって大略構成されている。そして、エアモータ2は、エアタービンに圧縮エアが供給されることにより、回転軸3を高速回転、例えば3000〜100000rpmで回転駆動するものである。
【0027】
3はエアモータ2の静圧エア軸受に回転可能に支持された回転軸で、該回転軸3は、内部が中空となった筒状体として形成されている。また、回転軸3は、その先端がエアモータ2よりも前側に突出し、その先端部外周には、回転霧化頭7を螺着するための雄ねじ3Aが刻設されている。また、回転軸3の基端側はエアモータ2のエアタービンに取付けられている。
【0028】
4は塗装機カバー1の先端部に取付けられたシェーピングエアリングで、該シェーピングエアリング4は、前側が擂り鉢状に凹陥した円筒状に形成されている。また、シェーピングエアリング4の外周側の先端部には、エア噴出孔4Aが周方向に多数(2つのみ図示)形成され、該各エア噴出孔4Aは、シェーピングエア通路5を介してエア源(図示せず)に接続されている。そして、エア噴出孔4Aは、後述の回転霧化頭7から噴霧された塗料粒子の噴霧パターン等を制御するためのシェーピングエアを噴出するものである。
【0029】
また、シェーピングエアリング4には、各エア噴出孔4Aよりも内径側に位置して拡散エア噴出孔4Bが周方向に多数(2つのみ図示)形成されている。この拡散エア噴出孔4Bは、後述する霧化頭本体8の外周面8Cよりも後側に位置している。また、各拡散エア噴出孔4Bは、後述する環状ガイド16の外周側近傍位置に開口している。
【0030】
そして、拡散エア噴出孔4Bは、拡散エア通路6を介してエア源から供給されるエアを拡散エアとし、この拡散エアを環状ガイド16の外周端近傍に向け霧化頭本体8の後側から吹付ける。これにより、拡散エアは、第2の洗浄流体流出路15から流出した洗浄流体を霧化頭本体8の外周面8Cに押付けつつ、外周面8Cで拡散して広げ、均一な膜厚にして、外周面8Cの先端に向け案内する。
【0031】
7は回転軸3の先端部に取付けられた回転霧化頭で、該回転霧化頭7は、供給される塗料を微粒化しつつ被塗物に向け噴霧するものである。また、回転霧化頭7は、図1に示すように、後述する霧化頭本体8、塗料溜り11、塗料薄膜化面12、ハブ部材14、環状ガイド16等によって大略構成されている。
【0032】
8はベル形またはカップ形に形成された中空のベルカップからなる霧化頭本体で、該霧化頭本体8は、後部側に位置して回転軸3に取付けるための取付部8Aと、前部側に位置して前方に向け拡開したベル形拡開部8Bとによって構成されている。ここで、取付部8Aは、円筒状に形成され、その内周側の奥部には回転軸3の先端に設けられた雄ねじ3Aに螺合する雌ねじ8Dが刻設されている。
【0033】
9は霧化頭本体8の内周側に位置して取付部8Aの底部をなす取付底部で、該取付底部9は、取付部8Aとベル形拡開部8Bとの境界部となる後側位置に、内向きに突出(縮径)して形成されている。また、取付底部9の前側には、後述する第2の洗浄流体流出路15が形成されている。そして、取付底部9の内径側(中央部)には、回転軸3の先端側開口に侵入するように筒状突部9Aが設けられ、該筒状突部9Aの内周面は、フィードチューブ17の先端側が挿通されるノズル挿通穴9Bとなっている。
【0034】
10は霧化頭本体8の軸方向の中間位置に取付底部9と対面して設けられた中間隔壁で、該中間隔壁10は、後述する第2の洗浄流体流出路15と塗料溜り11とを隔てる壁板として形成されている。また、中間隔壁10の内周側(中央部)には、フィードチューブ17の内筒18が隙間をもって挿通されるチューブ挿通孔10Aが形成されている。さらに、中間隔壁10の中央寄りは、塗料溜り11内の塗料が回転軸3内に浸入するのを防止するために、前方に向けて突出している。
【0035】
11は霧化頭本体8の内周側に位置して中間隔壁10と後述のハブ部材14との間に画成された塗料溜りである。この塗料溜り11は、霧化頭本体8の内周面、中間隔壁10の前面、ハブ部材14の後面によって囲まれた深皿状の空間として形成されている。そして、塗料溜り11は、内筒18から吐出された塗料または洗浄流体を一時的に溜め、これらを拡散するための空間である。
【0036】
12は塗料溜り11の前側から霧化頭本体8の前端にかけて設けられた塗料薄膜化面で、該塗料薄膜化面12は、円皿状に拡開して形成されている。また、塗料薄膜化面12の先端は、薄膜化した塗料を放出する放出端縁12Aとなっている。そして、塗料薄膜化面12は、塗料溜り11から流出した塗料を薄膜化し、放出端縁12Aから塗料粒子として噴霧するものである。
【0037】
13は霧化頭本体8に設けられた第1の洗浄流体流出路で、該洗浄流体流出路13は、中間隔壁10のチューブ挿通孔10A内に設けられ、後述するフィードチューブ17の内筒18との間の環状通路として形成されている。そして、第1の洗浄流体流出路13は、塗料溜り11、塗料薄膜化面12、ハブ部材14等を洗浄するための洗浄流体を前側に流通させるものである。
【0038】
14は霧化頭本体8の前側中央に設けられたハブ部材で、このハブ部材14は、略円板状に形成され、霧化頭本体8の内周を塞いで塗料溜り11を画成している。ここで、ハブ部材14の外周側には、塗料または洗浄流体を霧化頭本体8の塗料薄膜化面12に流出させる多数の塗料流出孔14Aが円形状に列設されている。また、ハブ部材14の中央部側には、前面に洗浄流体を流出させる複数の流出開口14B(いずれも2つのみ図示)が設けられている。
【0039】
15は霧化頭本体8に設けられた第2の洗浄流体流出路で、該洗浄流体流出路15は、流入側が取付底部9と中間隔壁10との間に開口すると共に、流出側が霧化頭本体8の外周面8Cに開口している。ここで、第2の洗浄流体流出路15は、霧化頭本体8の外周面8Cに付着した塗料を除去するための洗浄流体を供給するもので、例えば円環状ないし放射状に延びた隙間通路によって形成されている。
【0040】
16は第2の洗浄流体流出路15の後部側に隣接して霧化頭本体8の外周側に取付けられた環状ガイドである。この環状ガイド16は、内周側が後側に傾斜し、外周側が霧化頭本体8の外周面8Cに向けて前側に傾斜している。そして、環状ガイド16は、第2の洗浄流体流出路15から流出して径方向に飛散しようとする洗浄流体を霧化頭本体8の外周面8Cに向けて前側に案内するものである。
【0041】
次に、17は回転軸3内を軸方向に延びて設けられたフィードチューブを示している。このフィードチューブ17は、図2に示す如く、回転中心に位置して先端部が後述する回転霧化頭7の塗料溜り11内に延在した長尺な内筒18と、該内筒18の外周側に同軸に設けられた外筒19とから二重筒体として形成されている。
【0042】
ここで、外筒19は、後述する塗料通路20の流出口20Aよりも洗浄流体通路21の流出口21Aが後退した位置で開口するように、前記内筒18よりも短く形成されている。また、外筒19の先端側は縮径され、その外周には雄ねじ19Aが刻設されている。そして、外筒19の先端側には、後述のチェック弁22と弁開度規制部材23とが取付けられている。
【0043】
20は内筒18の内部に形成された塗料通路で、該塗料通路20は、先端側の流出口20Aから回転霧化頭7(塗料溜り11)に向け塗料または洗浄流体を供給するものである。即ち、塗料通路20は、被塗物を塗装する場合には、複数色の中から選択された塗料を回転霧化頭7に向け吐出する。一方、塗装が終了した前色塗料を洗浄する場合には、エア、シンナ等を選択的に流通させ、塗料の排出と洗浄を行う。
【0044】
また、塗料通路20の途中には塗料弁(図示せず)が設けられ、該塗料弁は、塗料を供給するときに開弁し、塗料の供給を停止するときに閉弁する。そして、塗料通路20は、例えば配管、弁体等を介して色替弁装置(いずれも図示せず)に接続されている。なお、色替弁装置は、複数色の塗料と洗浄エア、洗浄シンナからなる洗浄流体とを選択的に供給するもので、マニホールドと該マニホールドに取付けられる複数個の弁装置とにより構成されている。
【0045】
また、21はフィードチューブ17の内筒18と外筒19との間に形成された断面環状の洗浄流体通路である。この洗浄流体通路21は、先端側の流出口21Aから回転霧化頭7に向けてシンナ、エア等の洗浄流体を供給するものである。そして、洗浄流体通路21は、例えば配管、弁体等を介して洗浄流体供給源(いずれも図示せず)に接続されている。
【0046】
22はフィードチューブ17を構成する外筒19の先端側に設けられたチェック弁である。このチェック弁22は、弾性(ばね性)を有する樹脂材料、ゴム材料、例えばフッ素系樹脂材料を用いて円筒状に形成されている。また、チェック弁22は、常時は弾性力によって洗浄流体通路21の流出口21Aを閉弁し、洗浄流体が供給されたときに供給圧力に抗して開弁するものである。
【0047】
即ち、チェック弁22は、軸方向の基端側に位置して後述の弁開度規制部材23によって外筒19の先端側に取付けられる固定部22Aと、内筒18の外周面との間に径方向の隙間を形成しつつ、該固定部22Aから内筒18の外周を先端側に向けて延びた筒部22Bと、該筒部22Bの先端側を縮径して設けられ、径方向に拡大、縮小することにより内筒18の外周面に離着座する環状の弁部22Cとから構成されている。
【0048】
そして、チェック弁22は、弾性を有した弁部22Cを内筒18の外周面に全周に亘って着座することにより、洗浄流体通路21の流出口21Aを気液密にシールすることができる。一方、チェック弁22は、洗浄流体通路21内に洗浄流体が供給される洗浄時には、図3に示すように、該洗浄流体の供給圧力によって弁部22Cを径方向外向きに変位(拡径)することにより、洗浄流体通路21の流出口21Aを開弁することができる。
【0049】
次に、チェック弁22が開弁したときに、その弁開度を規制するためにフィードチューブ17の先端側に設けられた弁開度規制部材23について述べる。
【0050】
即ち、23はフィードチューブ17の先端側に設けられた弁開度規制部材である。この弁開度規制部材23は、フィードチューブ17の先端側のうちチェック弁22を取囲む位置、例えば回転軸3の先端開口位置、取付底部9のノズル挿通穴9Bの内側に配置されている。そして、弁開度規制部材23は、円筒状のチェック弁22の先端側が拡開して開弁したときに、弁部22Cが必要以上に大きく開弁しないように、その弁開度を過大になる前の所定の位置で規制するものである。また、弁開度規制部材23は、弁部22Cを円形状に開弁させることもできる。
【0051】
また、弁開度規制部材23は、図2ないし図4に示すように、基端側に位置して外筒19の雄ねじ19Aに螺着されるナット状の螺着部23Aと、該螺着部23Aからチェック弁22の筒部22Bの外周面に沿うように先端側に延びた規制筒23Bとにより段付円筒状に形成されている。なお、規制筒23Bの先端位置(長さ寸法)は、例えばチェック弁22の弁部22C先端位置、回転霧化頭7を構成する取付底部9の前面位置とほぼ同じ位置に設定されている。
【0052】
また、規制筒23Bの内周側には、軸方向の基端側に位置して縮径段部23Cが形成されている。これにより、弁開度規制部材23は、縮径段部23Cにチェック弁22の固定部22Aの外周側を係合させ、この状態で、螺着部23Aを外筒19の雄ねじ19Aに螺着することにより、チェック弁22を外筒19の先端側に一緒に取付けることができる。
【0053】
ここで、規制筒23Bの内周面23Dは、チェック弁22が開弁したときに、その筒部22Bから弁部22Cまでが当接するものである。この内周面23Dは、基端側がチェック弁22の筒部22Bの外形寸法とほぼ同じ内径寸法をもって真直ぐに延びた直線状内周面23D1となっている。
【0054】
一方、内周面23Dの軸方向の中間部から先端部までは、先端側に向け内径寸法が漸次大きくなるように湾曲した湾曲内周面23D2となっている。そして、湾曲内周面23D2は、内周面23Dの軸方向の中間部から先端部までを緩やかな湾曲面とすることにより、図3に示すように、チェック弁22が開弁したときに一部に応力が集中したり、折れ曲がったりするのを防止している。
【0055】
また、湾曲内周面23D2は、筒部22Bの先端側および弁部22Cの外周面が当接するもので、洗浄流体を供給するときのチェック弁22の弁開度を適正な値としている。この場合、チェック弁22の適正な弁開度とは、例えば亀裂や弾性力の低下が生じないように、弁部22Cが過大に開弁せず、吐出した洗浄流体が後述の分流部材24に衝突して第1の洗浄流体流出路13と第2の洗浄流体流出路15とに分流するような流量、流速となる弁開度である。
【0056】
24はフィードチューブ17を構成する内筒18の先端側外周に設けられた分流部材である。この分流部材24は、洗浄流体通路21から供給される洗浄流体を、第1の洗浄流体流出路13と第2の洗浄流体流出路15とに適正に分流するものである。そして、分流部材24は、チェック弁22の位置よりも前側(先端側)に配置され、内筒18の外周面から径方向に突出した、例えば鍔状、扇状、凸球面状等の形状をなす1個または複数個の突起として形成されている。
【0057】
本実施の形態による回転霧化頭型塗装装置は上述の如き構成を有するもので、次に、塗装作業および洗浄作業について説明する。
【0058】
最初に、被塗物に塗料を噴霧する塗装作業を行う場合について、図1および図2を参照しつつ説明する。この塗装作業では、エアモータ2によって回転軸3と共に回転霧化頭7を高速回転、例えば3000〜100000rpmで回転駆動する。この状態で、色替弁装置から供給される塗料をフィードチューブ17の内筒18から回転霧化頭7の塗料溜り11に供給すると、塗料は塗料溜り11内で滞留しつつ拡散される。そして、塗料溜り11で拡散された塗料は、ハブ部材14の塗料流出孔14Aを通過して霧化頭本体8の塗料薄膜化面12に流出する。さらに、この塗料は、塗料薄膜化面12で均一に薄膜化され、その放出端縁12Aから塗料粒子となって噴霧される。
【0059】
このとき、例えば回転霧化頭7には高電圧が印加され、該回転霧化頭7からアースに接続された被塗物に向けて電気力線が形成されるから、回転霧化頭7から噴霧された塗料粒子は、この電気力線に沿って飛行し、被塗物に塗着する。
【0060】
また、塗装作業時には、チェック弁22の弁部22Cが内筒18の外周面に密着し、洗浄流体通路21の流出口21Aを気液密に閉塞しているから、洗浄流体通路21に残存している洗浄流体の垂れ落ち事故等を未然に防ぐことができる。
【0061】
次に、塗装作業が終了し、フィードチューブ17や回転霧化頭7に残存、付着した前色塗料を洗浄する洗浄作業について図3を参照しつつ説明する。
【0062】
まず、内筒18内の塗料通路20には前色塗料が残存しているから、塗料通路20の洗浄作業を行うときは、回転霧化頭7を高速回転させつつ、色替弁装置からエアとシンナとを交互に供給することにより、塗料通路20内の塗料を排出しつつ、塗料が付着した接液面を洗浄する。
【0063】
一方、回転霧化頭7の洗浄作業を行うときは、回転霧化頭7を高速回転させた状態で、フィードチューブ17の洗浄流体通路21からシンナ、エア等の洗浄流体を供給する。このときには、洗浄流体の供給圧力によってチェック弁22の弁部22Cが拡径して開弁する。これにより、チェック弁22から吐出される洗浄流体は、内筒18の外周面に沿って前側に流通して分流部材24に衝突し、第1の洗浄流体流出路13と第2の洗浄流体流出路15とに適宜の割合で供給される。
【0064】
そして、第1の洗浄流体流出路13に供給された洗浄流体は、塗料溜り11からハブ部材14の塗料流出孔14A、塗料薄膜化面12等を順次流れ、これらの接液面に付着した塗料を洗浄することができる。また、第2の洗浄流体流出路15に供給された洗浄流体は、霧化頭本体8の外周面8Cに付着した塗料を洗浄することができる。
【0065】
この洗浄作業時には、弁開度規制部材23が開弁したチェック弁22に当接することにより、チェック弁22が必要以上に大きく開弁しないように、その弁開度を所定の位置で規制する。また、規制筒23Bの内周面23Dにチェック弁22を当接させることにより、その弁部22Cを円形状に開弁させることができる。これにより、チェック弁22を一定の弁開度で開弁させることができ、洗浄流体を全周に亘って均一に供給でき、またチェック弁22の損傷を防止することができる。
【0066】
かくして、本実施の形態によれば、フィードチューブ17の洗浄流体通路21を開,閉するチェック弁22を取囲む位置に、当該チェック弁22が開弁したときに弁開度を規制する弁開度規制部材23を設ける構成としている。従って、洗浄流体通路21から勢いよく洗浄流体を供給した場合のように、チェック弁22が過大に開弁しようとしても、弁開度規制部材23は、チェック弁22の弁部22Cを適正な弁開度で安定的に開弁させることができる。
【0067】
この結果、回転霧化頭7等の洗浄作業時に、洗浄流体の供給圧力が変動した場合でも、弁開度規制部材23は、この変動に影響することなく、チェック弁22の弁部22Cを一定の弁開度で開弁させることができる。しかも、弁開度規制部材23は、チェック弁22の弁部22Cを円形状に開弁させることができる。これにより、洗浄作業時には、チェック弁22の弁部22Cから洗浄流体を均一な状態で供給することができ、回転霧化頭7等を洗浄流体により効率よく洗浄することができる。また、弁開度規制部材23によりチェック弁22の弁開度を規制することにより、チェック弁22が開弁したときに一部に応力が集中したり、折れ曲がったり、伸びきったりするのを防止でき、信頼性や寿命を向上することができる。
【0068】
また、フィードチューブ17は、塗料通路20の流出口20Aよりも洗浄流体通路21の流出口21Aが後退した位置で開口するように、内筒18よりも外筒19を短く形成している。従って、内筒18と外筒19との径方向の段差を利用し、短い外筒19の先端側のスペースにチェック弁22の筒部22B、弁部22Cを取囲むように弁開度規制部材23を設けることができ、これらを効率よく配置することができる。
【0069】
一方、弁開度規制部材23は、チェック弁22が開弁したときに当接する規制筒23Bの内周面23Dに、基端側から先端側に向け内径寸法が漸次大きくなる湾曲内周面23D2を形成している。これにより、湾曲内周面23D2は、チェック弁22を円滑に開,閉弁させることができ、また、湾曲内周面23D2は、チェック弁22の一部に応力が集中するのを防止することができ、該チェック弁22の寿命を延ばすことができる。
【0070】
さらに、フィードチューブ17の内筒18には、チェック弁22よりも前側に位置して分流部材24を設けているから、チェック弁22を開弁して吐出される洗浄流体は、分流部材24によって第1の洗浄流体流出路13と第2の洗浄流体流出路15とに分流することができる。これにより、洗浄流体によって回転霧化頭7の外周側と前面側とを一度に効率よく洗浄することができる。
【0071】
なお、実施の形態では、フィードチューブ17を構成する内筒18の先端側外周に分流部材24を設け、該分流部材24は、径方向に突出した例えば鍔状、扇状、凸球面状等の形状をなす1個または複数個の突起として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図5に示す変形例のように、分流部材31は、内筒18から径方向外向きに突出した断面三角形状の壁部材31Aと、該壁部材31Aに軸方向に貫通して設けられた貫通孔31Bとによって構成してもよい。これにより、分流部材31は、貫通孔31Bによって洗浄流体を第1の洗浄流体流出路13に向けて供給でき、壁部材31Aによって洗浄流体を第2の洗浄流体流出路15に向けて供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態による回転霧化頭型塗装装置を示す縦断面図である。
【図2】図1中のA部をチェック弁を閉弁した状態で示す要部拡大の縦断面図である。
【図3】チェック弁を開弁した状態を図2と同様位置からみた要部拡大の縦断面図である。
【図4】弁開度規制部材を単体で示す縦断面図である。
【図5】本発明の変形例による回転霧化頭型塗装装置を示す要部拡大の縦断面図である。
【符号の説明】
【0073】
2 エアモータ
3 回転軸
7 回転霧化頭
8 霧化頭本体
9 取付底部
10 中間隔壁
11 塗料溜り
12 塗料薄膜化面
13 第1の洗浄流体流出路
14 ハブ部材
15 第2の洗浄流体流出路
17 フィードチューブ
18 内筒
19 外筒
20 塗料通路
20A,21A 流出口
21 洗浄流体通路
22 チェック弁
22A 固定部
22B 筒部
22C 弁部
23 弁開度規制部材
23A 螺着部
23B 規制筒
23C 縮径段部
23D 内周面
23D1 直線状内周面
23D2 湾曲内周面
24,31 分流部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアモータによって回転される中空な回転軸と、該回転軸の先端側に設けられた回転霧化頭と、前記回転軸内に同軸に設けられた内筒と外筒とからなり先端側が該回転霧化頭内に延在したフィードチューブと、該フィードチューブの内筒内に形成され塗料と洗浄流体が選択的に供給される塗料通路と、前記フィードチューブの内筒と外筒との間に形成され洗浄流体が供給される洗浄流体通路と、前記フィードチューブの外筒の先端側に設けられ常時は閉弁し洗浄流体が供給されたときに開弁するチェック弁とを備えてなる回転霧化頭型塗装装置において、
前記フィードチューブの先端側のうち前記チェック弁を取囲む位置には、当該チェック弁が開弁したときに弁開度を規制する弁開度規制部材を設ける構成としたことを特徴とする回転霧化頭型塗装装置。
【請求項2】
前記フィードチューブは、前記塗料通路の流出口よりも前記洗浄流体通路の流出口が後退した位置で開口するように前記内筒よりも前記外筒を短く形成し、前記弁開度規制部材は、前記チェック弁を取囲んだ状態で前記外筒の先端側に設ける構成としてなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装装置。
【請求項3】
前記フィードチューブは、前記塗料通路の流出口よりも前記洗浄流体通路の流出口が後退した位置で開口するように前記内筒よりも前記外筒を短く形成し、
前記チェック弁は、前記外筒に固定された固定部と、該固定部から前記内筒の外周を先端側に延びた筒部と、該筒部の先端に設けられ内筒の外周面に離着座する弁部とにより構成し、
前記弁開度規制部材は、前記チェック弁の筒部を取囲んだ状態で前記外筒の先端側に設ける構成としてなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装装置。
【請求項4】
前記弁開度規制部材には、基端側から先端側に向け内径寸法が漸次大きくなる湾曲内周面を設け、該湾曲内周面には、前記チェック弁が開弁したときにその外周面を当接させる構成としてなる請求項1,2または3に記載の回転霧化頭型塗装装置。
【請求項5】
前記回転霧化頭には、洗浄流体を外周側に供給する第1の洗浄流体流出路と洗浄流体を前面側に供給する第2の洗浄流体流出路とを設け、前記フィードチューブの内筒には、前記チェック弁の位置よりも前側に位置して洗浄流体を第1の洗浄流体流出路と第2の洗浄流体流出路とに分流する分流部材を設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の回転霧化頭型塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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