説明

図面データ処理装置、図面データ処理システム、図面データ処理方法及びコンピュータプログラム

【課題】構造計算の結果を容易に利用して設計作業を行うことを可能にする図面データ処理装置、図面データ処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】
図面データ処理装置100は、建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラム14Bから構造計算における異常を示す異常情報を取得する異常情報取得手段と、前記異常情報取得手段により取得された異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定する構成部材特定手段と、前記構成部材特定手段により特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記する異常発生情報付記手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAD(Computer Aided Design)等で用いられる建築用の図面データを処理する図面データ処理装置、図面データ処理システム、図面データ処理方法、及びその方法をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野においては、設計者がCADプログラム等を用いて建築構造物の意匠設計を行い、その設計された建築構造物について構造計算が行われる。この構造計算は専用の構造計算プログラムにて実施されることが殆どである。このように、設計及び構造計算は異なるコンピュータプログラムを用いて行われるのが通常であるため、その連携が問題となり、そのための工夫が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、汎用CADプログラムと構造計算プログラムとをリンクさせ、汎用CADプログラムで設計した図形データを構造計算プログラムに渡すことにより構造計算を実行する建築構造物の解析方法が開示されている。この解析方法によれば、汎用CADプログラムで設計した図形データを容易に利用することができるので、効率良く構造計算を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−028014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の解析方法の場合、CADプログラム側から構造計算プログラム側に対してデータが渡される一方で、その反対に構造計算プログラム側からCADプログラム側に対してデータが渡されることはない。そのため、構造計算プログラムによる構造計算の結果、設計変更が必要となった場合でも、これらの構造計算プログラム及びCADプログラムが連動することはなく、その設計変更を適切に支援することができないという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、構造計算プログラムによる構造設計の結果を用いることにより、上記の課題を解決することができる図面データ処理装置、図面データ処理システム、図面データ処理方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の図面データ処理装置は、建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムから構造計算における異常を示す異常情報を取得する異常情報取得手段と、前記異常情報取得手段により取得された異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定する構成部材特定手段と、前記構成部材特定手段により特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記する異常発生情報付記手段とを備える。
【0008】
前記態様の図面データ処理装置が、前記異常発生情報付記手段により異常発生情報が付記された図形の選択を受け付ける図形選択受付手段と、前記図形選択受付手段により選択が受け付けられた図形についての修正データの入力を受け付ける修正データ入力受付手段と、前記修正データ入力受付手段により入力が受け付けられた修正データを前記構造計算プログラムに対して出力する修正データ出力手段とをさらに備えていてもよい。
【0009】
また、前記態様における異常情報取得手段が、前記修正データに基づいて前記構造計算プログラムにて再度構造計算が行われた場合に、当該構造計算における異常を示す異常情報を当該構造計算プログラムから取得するように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記態様における異常発生情報付記手段が、前記異常の種類を示す異常発生情報を、前記図形を指し示す引出線を用いて付記するように構成されていてもよい。
【0011】
また、本発明の一の態様の図面データ処理システムは、建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムを実行可能な構造計算装置と、当該構造計算装置と通信可能に接続され、建築構造物の図面データを処理する図面データ処理装置とを備える図面データ処理システムにおいて、前記構造計算装置が、前記構造計算プログラムにより実行された構造計算における異常を示す異常情報を、前記図面データ処理装置に対して送信する異常情報送信手段を具備し、前記図面データ処理装置が、前記構造計算装置から受信した異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定する構成部材特定手段と、前記構成部材特定手段により特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記する異常発生情報付記手段とを具備する。
【0012】
また、本発明の一の態様の図面データ処理方法は、建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムから構造計算における異常を示す異常情報を取得するステップと、取得された異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定するステップと、特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記するステップとを有している。
【0013】
さらに、本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、コンピュータを、建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムから構造計算における異常を示す異常情報を取得する異常情報取得手段と、前記異常情報取得手段により取得された異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定する構成部材特定手段と、前記構成部材特定手段により特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記する異常発生情報付記手段として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る図面データ処理装置、図面データ処理システム、図面データ処理方法及びコンピュータプログラムによれば、構造計算プログラムの処理結果に応じて建築構造物の設計変更が必要となる場合に、その支援を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る図面データ処理装置の構成を示すブロック図。
【図2】エラーメッセージデータベースのレイアウトの一例を示す図。
【図3】本発明の実施の形態1の図面データ処理装置が実行する構造計算用データ出力処理の処理手順を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態1の図面データ処理装置が実行するエラーメッセージ図面生成処理の処理手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施の形態1の図面データ処理装置のディスプレイ上に表示されるエラーメッセージ図面を表示する画面の一例を示す図。
【図6】本発明の実施の形態1の図面データ処理装置が実行する修正データ入出力処理の処理手順を示すフローチャート。
【図7】修正データ入力ボックスが表示されている場合のエラーメッセージ図面を表示する画面の一例を示す図。
【図8】本発明の実施の形態2に係る図面データ処理システムの構成を示すブロック図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る図面データ処理システムの動作の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0017】
(実施の形態1)
[図面データ処理装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る図面データ処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、コンピュータ(図面データ処理装置)100は、本体1と、入力部2と、ディスプレイ3とを備えている。本体1は、CPU11、ROM12、RAM13、ハードディスク14、データ読出装置15、入出力インタフェース(I/F)16、及び画像出力インタフェース(I/F)17を備えており、これらのCPU11、ROM12、RAM13、ハードディスク14、データ読出装置15、入出力I/F16及び画像出力I/F17は、バスBSによって接続されている。
【0018】
CPU11は、RAM13にロードされたコンピュータプログラムを実行することができる。このCPU11が後述するCADプログラム14Aを実行することによって、コンピュータ100が本実施の形態の図面データ処理装置として機能することになる。
【0019】
ROM12は、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、又はEEPROM(Electrically Erasable PROM)などによって構成されており、CPU11にて実行されるコンピュータプログラム及びその実行の際に用いられるデータなどが記憶されている。
【0020】
RAM13は、SRAM又はDRAMなどによって構成されている。このRAM13は、ハードディスク14に記憶されているCADプログラム14A及び構造計算プログラム14Bの読み出し等に用いられる。また、CPU11が各種のコンピュータプログラムを実行するときに、CPU11の作業領域としても利用される。
【0021】
ハードディスク14には、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなど、CPU11に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータが予めインストールされている。CADプログラム14A及び構造計算プログラム14Bも、このハードディスク14にインストールされている。CADプログラム14AはCADデータの生成等を行うためのコンピュータプログラムであり、また、構造計算プログラム14Bは建築構造物の構造計算を行うためのコンピュータプログラムである。
【0022】
また、ハードディスク14には、建築用のCADデータが蓄積される図面データデータベース(DB)14Cが設けられている。この図面データDB14Cに蓄積されるCADデータは、例えばDXF形式、DWG形式、JWC形式などのデータであって、床伏図、天井伏図及び平面詳細図等の各種の平面図、並びに各種の断面図及び立面図等を表すデータである。二次元及び三次元の何れのCADデータであってもよい。
【0023】
また、ハードディスク14には、構造計算プログラム14Bが構造計算を実行した場合に発生したエラーに関する情報が蓄積されるエラーメッセージデータベース(DB)14Dが設けられている。図2は、このエラーメッセージDB14Dのレイアウトの一例を示す図である。図2に示すとおり、エラーメッセージDB14Dは、エラーメッセージを識別するためのエラーIDが格納されるエラーIDフィールド141、及びそのエラーIDで識別されるエラーメッセージの内容が格納されるエラーメッセージフィールド142を有している。
【0024】
上述したエラーメッセージDB14Dに格納されているエラーID及びエラーメッセージは、構造計算プログラム14Bにより出力されるエラーに関する情報(以下、「エラー情報」という)に含まれる情報である。このエラー情報は、構造計算プログラム14Bによってテキスト形式で出力される。コンピュータ100は、テキスト形式のエラー情報を構造計算プログラム14Bから取得し、その中からエラーID及びエラーメッセージを抽出することにより、エラーメッセージDB14Dを構築する。なお、このように構造計算プログラム14Bから出力されるエラー情報を用いてエラーメッセージDB14Dを構築するのではなく、構造計算プログラム14Bのマニュアル等に記載されているエラーID及びエラーメッセージを図面データ処理装置100に入力することによってエラーメッセージDB14Dを構築するようにしてもよい。
【0025】
さらに、ハードディスク14には、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、CADプログラム14A及び構造計算プログラム14Bが当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0026】
データ読出装置15は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体18に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。この可搬型記録媒体18に記録されたCADプログラム14Aがデータ読出装置15によって読み出されてハードディスク14にインストールされることで、コンピュータ100を図面データ処理装置として機能させることが可能になる。なお、CADプログラム14Aは、このように可搬型記録媒体18によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ100と通信可能に接続された外部の機器から当該電気通信回線を通じて提供する等の態様も可能である。例えば、CADプログラム14Aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ100がアクセスして、当該CADプログラム14Aをダウンロードし、これをハードディスク14にインストールすること等も可能である。
【0027】
入出力インタフェース16は、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェース等から構成されている。この入出力インタフェース16には、キーボード及びマウスからなる入力部2が接続されており、ユーザが当該入力部2を操作することにより、コンピュータ100にデータを入力することが可能になる。
【0028】
画像出力インタフェース17は、LCDまたはCRTなどで構成されたディスプレイ3に接続されており、この画像出力インタフェース17を介してCPU11から画像データに応じた映像信号等がディスプレイ3に与えられる。ディスプレイ3は、CPU11より入力された映像信号等にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0029】
[図面データ処理装置の動作]
次に、上述したように構成された図面データ処理装置100の動作について、フローチャート等を参照しながら説明する。なお、本実施の形態の図面データ処理装置100が実行する主な処理には、(1)構造計算用のデータを構造計算プログラム14Bに対して出力するための構造計算用データ出力処理、(2)エラーメッセージが表された図面であるエラーメッセージ図面を生成するためのエラーメッセージ図面生成処理、及び(3)構造計算の結果を受けて設計変更を行う場合に、修正する必要があるデータの入出力を行うための修正データ入出力処理等がある。以下では、これらの各処理の詳細について説明する。
【0030】
(1)構造計算用データ出力処理
ユーザは、図面データ処理装置100上でCADプログラム14Aを実行し、建築構造物の意匠設計を行う。これにより、この建築構造物に関する各種の図面データが生成され、図面データDB14Cに蓄積される。ユーザはその後、設計された建築構造物について構造計算を行うために、特定の図面データを図面データDB14Cから読み出すように図面データ処理装置100に対して指示する。この指示を受けて、図面データ処理装置100は、以下の構造計算用データ出力処理を実行する。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態1の図面データ処理装置100が実行する構造計算用データ出力処理の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すとおり、図面データ処理装置100はまず、ユーザによって指示された図面データを図面データDB14Cから読み出す(S101)。次に、図面データ処理装置100は、読み出した図面データから構造計算に必要となるデータを抽出し、それらのデータを用いて構造計算プログラム14Bに渡すための構造計算用データを生成する(S102)。そして、図面データ処理装置100は、自らが実行している構造計算プログラム14Bに対して、生成した構造計算用データを出力する(S103)。
【0032】
なお、上述した構造計算に必要となるデータとしては、例えば、構造計算の対象となる柱・梁・耐震壁等の各構成部材の躯体寸法・配筋データ・材料データ及び配置データ等が挙げられる。なお、小梁・スラブ・非耐震壁等の構造計算の対象とならない構成部材についても付加荷重等を計算する必要があり、また個別部材として単体の構造強度を別途計算する必要も生じるため、これらの躯体寸法及び配筋データ等も上述した構造計算に必要となるデータに含まれることになる。
【0033】
以上の構造計算用データ出力処理により、CADプログラム14Aから構造計算プログラム14Bに対して構造計算用データが渡されることになる。構造計算プログラム14Bでは、CADプログラム14Aから取得した構造計算用データを用いて構造計算が行われる。その結果、構造計算上のエラーが発生した場合、構造計算プログラム14Bによりエラー情報が出力される。このとき、CADプログラム14Aによって、次のエラーメッセージ図面生成処理が実行される。
【0034】
(2)エラーメッセージ図面生成処理
図4は、本発明の実施の形態1の図面データ処理装置100が実行するエラーメッセージ図面生成処理の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すとおり、図面データ処理装置100はまず、自らが実行している構造計算プログラム14Bにより出力されたエラー情報を取得する(S201)。なお、このエラー情報には、エラーID及びエラーメッセージの他、そのエラーに係る構成部材を識別するための部材符号が含まれている。
【0035】
図面データ処理装置100は、取得したエラー情報に含まれているエラーIDを用いてエラーメッセージDB14Dを検索することにより、そのエラーIDに対応するエラーメッセージを特定する(S202)。なお、当該エラーIDがエラーメッセージDB14Dに登録されていなかった場合は、図面データ処理装置100が、取得したエラー情報に含まれているエラーメッセージと当該エラーIDとを対応付けてエラーメッセージDB14Dに登録する。
【0036】
次に、図面データ処理装置100は、ステップS201にて取得したエラー情報に含まれている部材符号を参照することにより、エラーに係る構成部材を特定し(S203)、その特定した構成部材が含まれる図面データを図面データDB14Cから抽出する(S204)。なお、以下では、エラーに係る構成部材を「エラー部材」と表現する。
【0037】
次に、図面データ処理装置100は、抽出した図面データにおける前記特定した構成部材を表す図形に対してエラーIDを書き込む(S205)。この場合、図面データ処理装置100は、当該図形を指し示す引出線を用いて、当該図形と当該エラーIDとを対応付けるようにする。
【0038】
さらに、図面データ処理装置100は、ステップS202にて特定したエラーメッセージを、抽出した図面データに書き込む(S206)。この場合、図面データ処理装置100は、エラーIDと対応付けてエラーメッセージを書き込むようにする。
【0039】
以上のようにエラーID及びエラーメッセージが書き込まれたエラーメッセージ図面が生成される。図面データ処理装置100は、生成したエラーメッセージ図面をディスプレイ3上に表示する(S207)。
【0040】
図5は、図面データ処理装置100のディスプレイ3上に表示されるエラーメッセージ図面を表示する画面の一例を示す図である。この図5では、柱・梁・スラブ・壁等の配置状況を平面で表した伏図の図面データがステップS204において抽出された場合に図面データ処理装置100により生成されたエラーメッセージ図面が例示されている。このエラーメッセージ図面中の伏図において、「J1」及び「JA」等の文字列が丸囲みされた記号は通り芯を識別するための通り芯記号であり、Cから始まる符号は柱の部材符号を、Gから始まる符号は梁の部材符号を、S又はCSから始まる符号はスラブの部材符号を、Wから始まる符号は壁の部材符号をそれぞれ表している。
【0041】
図面データ処理装置100は、ステップS205において、ステップS201にて構造計算プログラム14Bから取得したエラー情報に基づいて、上述した伏図における通り芯J1及び通り芯JBの交点上に位置する柱C52と同じく通り芯J1上に位置する梁G64とに対してエラーIDを書き込む。その結果、図5に示すように、当該柱C52を示す図形に対してエラーID“560”が、当該梁G64を示す図形に対してエラーID“662”がそれぞれ引出線とともに書き込まれることになる。
【0042】
また、図面データ処理装置100は、ステップS206において、ステップS202にて特定したエラーメッセージ及びエラーIDを画面P1の左上隅に書き込む。その結果、図5に示すように、構造計算プログラム14Bから取得したエラー情報に係るエラーメッセージ及びエラーIDが画面P1の左上隅に表示されることになる。
【0043】
ユーザは、ディスプレイ3上に表示されている画面P1を参照することにより、構造計算においてどの構成部材についてどのようなエラーが発生したのかを視覚的に容易に確認することができる。図5に示す例では、図面中のエラーID、そのエラーIDが関連付けられているエラー部材の図形、及びそのエラーIDと対応するエラーメッセージを参照することにより、柱C52に対してはエラーID“560”の「長期設計用曲げモーメントが長期許容曲げモーメントを超えている」というエラーが発生していることが、梁G64に対してはエラーID“662”の「1/4位置または3/4位置において残りの鉄筋の引張応力度が、許容応力度を超えている」というエラーが発生していることが、それぞれ視覚的に確認できる。
【0044】
(3)修正データ入出力処理
ユーザは、上述したようにしてディスプレイ3上に表示されている画面P1を参照した上で、発生しているエラーを解消するために、エラー部材の構造及び配置等をどのように修正する必要があるかを検討する。その検討の結果に応じて、ユーザは、修正する必要があるデータを決定する。この修正する必要があるデータの入力を行うために、ユーザは、入力部2を用いてエラー部材を選択する。これにより、以下の修正データ入出力処理が実行される。
【0045】
なお、上述した修正する必要があるデータとしては、主筋本数・主筋径(図2に示すエラーID“555”,“560”,“662”のエラーが発生した場合、主筋断面積を増やすために、主筋本数を増やしたり主筋径を太くしたりする)、フープ筋・スターラップ筋の間隔・鉄筋径(せん断力に関連するエラーが発生した場合、フープ筋・スターラップ筋の間隔を狭くしたり、鉄筋径を太くしたりする)、及び躯体断面積・コンクリート強度(せん断力又は圧縮強度に関連するエラーが発生した場合、躯体断面積を大きくしたり、コンクリート強度を上げたりする)等が挙げられる。
【0046】
図6は、本発明の実施の形態1の図面データ処理装置100が実行する修正データ入出力処理の処理手順を示すフローチャートである。図6に示すとおり、図面データ処理装置100は、ユーザからエラー部材の選択を受け付けた場合(S301)、そのエラー部材の周辺に修正データを入力するためのダイアログボックスである修正データ入力ボックスをディスプレイ3上に表示する(S302)。
【0047】
図7は、修正データ入力ボックスが表示されている場合のエラーメッセージ図面を表示する画面の一例を示す図である。図7に示す画面P2には、図5における画面P1と同様の情報の他に、入力部2の操作に応じて移動するカーソルC1、修正データ入力ボックスD1、及び修正データ入力ボックスD1への修正データの入力が完了された場合にカーソルC1によりクリックされる入力完了ボタンB1が示されている。
【0048】
ユーザはまず、入力部2を用いて、エラー部材を示す図形にカーソルC1を移動させる。この状態でユーザがクリック動作を行うと、修正データ入力ボックスD1が表示される。ユーザは、修正データ入力ボックスD1に対して修正データを入力した後、カーソルC1を入力完了ボタンB1の位置まで移動させ、当該入力完了ボタンB1をクリックする。
【0049】
図面データ処理装置100は、ユーザによる入力完了ボタンB1のクリックを検知した場合(S303)、その修正データ入力ボックスD1に入力された情報を用いて、上記の構造計算用データ出力処理におけるステップS102と同様に、構造計算プログラム14Bに渡すための構造計算用データを生成する(S304)。そして、図面データ処理装置100は、自らが実行している構造計算プログラム14Bに対して、生成した構造計算用データを出力する(S305)。
【0050】
以上の修正データ入出力処理により、発生したエラーを解消するための情報が含まれている構造計算用データが、CADプログラム14Aから構造計算プログラム14Bに対して渡されることになる。構造計算プログラム14Bでは、CADプログラム14Aから取得した構造計算用データを用いて構造計算を再度行う。その結果、構造計算上のエラーが解消した場合は設計作業が完了することになる。また、この構造計算において新たに別のエラーが発生した場合、上述したエラーメッセージ図面生成処理が再度行われ、続いて修正データ入出力処理が実行されることになる。このように、設計作業が完了するまで、上記のエラーメッセージ図面生成処理及び修正データ入出力処理が繰り返し実行されることになる。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、CADプログラム14Aが構造計算プログラム14Bのエラー情報を利用して各種の処理を行うことにより、設計変更作業を容易に行うことが可能になる。
【0052】
(実施の形態2)
実施の形態1では、1つのコンピュータにCADプログラム及び構造計算プログラムがインストールされており、各種の処理が当該コンピュータにおいて実行されている。これに対して、実施の形態2では、CADプログラム及び構造計算プログラムが別々のコンピュータにインストールされており、これらのコンピュータがLAN及びインターネット等の各種の通信ネットワークを介してデータ通信を行うことにより、上述した各処理を実行する。
【0053】
図8は、本発明の実施の形態2の図面データ処理システムの構成を示すブロック図である。図8に示すとおり、本実施の形態の図面データ処理システムは、複数の図面データ処理装置200,200,…及び構造計算装置300を備えており、これらの図面データ処理装置200,200,…と構造計算装置300とは通信ネットワークNTWを介して通信可能に接続されている。ここで、図面データ処理装置200,200,…は実施の形態1におけるCADプログラム14Aがインストールされているコンピュータで構成され、また、構造計算装置300は同じく構造計算プログラム14Bがインストールされているコンピュータで構成されている。また、図面データ処理装置200,200,…は、実施の形態1における図面データDB14C及びエラーメッセージDB14Dを有している。
【0054】
図9は、本発明の実施の形態2に係る図面データ処理システムの動作の手順を示すフローチャートである。まず、図面データ処理装置200は、実施の形態1における構造計算用データ出力処理のステップS101及びS102と同様にして、図面データを図面データDB14Cから読み出し(S401)、構造計算用データを生成する(S402)。そして、図面データ処理装置100は、その構造計算用データを構造計算装置300に対して送信する(S403)。
【0055】
構造計算装置300は、図面データ処理装置200から送信された構造計算用データを受信した場合(S501)、その構造計算用データを用いて構造計算を実行する(S502)。その結果、構造計算上のエラーが発生した場合、構造計算装置300は、そのエラーに関するエラー情報を含む計算結果情報を図面データ処理装置200に対して送信する(S503)。
【0056】
図面データ処理装置200は、構造計算装置300から送信された計算結果情報を受信した場合(S404)、実施の形態1におけるエラーメッセージ図面生成処理のステップS202乃至S204と同様にして、受信した計算結果情報中のエラー情報を用いてエラーメッセージを特定し(S405)、エラー部材を特定し(S406)、その特定したエラー部材が含まれる図面データを図面データDB14Cから抽出する(S407)。さらに、図面データ処理装置200は、同じくエラーメッセージ図面生成処理のステップS205乃至S207と同様にして、エラー部材を表す図形に対してエラーIDを書き込み(S408)、エラーメッセージを図面データに書き込んだ後(S409)、これらの書き込みにより得られたエラーメッセージ図面をディスプレイ3上に表示する(S410)。
【0057】
次に、図面データ処理装置200は、実施の形態1における修正データ入出力処理のステップS301及びS302と同様に、ユーザからエラー部材の選択を受け付け(S411)、そのエラー部材の周辺に修正データを入力するための修正データ入力ボックスをディスプレイ3上に表示する(S412)。そして、図面データ処理装置200は、同じく修正データ入出力処理のステップS303及びS304と同様に、ユーザから入力完了ボタンのクリックを検知した場合(S413)、その修正データ入力ボックスに入力された情報を用いて構造計算用データを生成する(S414)。そして、図面データ処理装置200は、その生成した構造計算用データを構造計算装置300に対して送信する(S415)。
【0058】
構造計算装置300は、図面データ処理装置200から送信された構造計算用データを受信した場合(S504)、その構造計算用データを用いて構造計算を再度実行し(S505)、処理を終了する。ここで、構造計算上のエラーが発生した場合は、ステップS503に戻り、その後の処理が繰り返されることになる。
【0059】
本実施の形態の場合、図面データ処理装置200及び構造計算装置300の両装置が上記のように動作することにより、実施の形態1の場合と同様の処理を実現することができる。この場合、各図面データ処理装置200,200,…を所有する複数の設計業者が1台の構造計算装置300を共有することができる等のメリットもある。一般に、構造計算プログラム14Bは高価であるため、このように複数の設計業者が1台の構造計算装置300を共有することによって設計作業の低コスト化を実現すること等が可能になる。
【0060】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、CADプログラムと構造計算プログラムとが別のコンピュータプログラムとなっているが、これらが一体的となって一つのコンピュータプログラムとなっていてもよい。その場合、CAD機能を担うプログラム部分と構造計算機能を担うプログラム部分とがそれぞれ上述した処理を実行することになる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の図面データ処理装置、図面データ処理システム、図面データ処理方法及びコンピュータプログラムは、共同住宅、個別住宅及びオフィスビル等の各種の建築物の建築図面を処理するための図面データ処理装置、図面データ処理システム、図面データ処理方法及びコンピュータプログラムなどとして有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 本体
2 入力部
3 ディスプレイ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 ハードディスク
14A CADプログラム
14B 構造計算プログラム
14C 図面データデータベース
14D エラーメッセージデータベース
15 データ読出装置
16 入出力インタフェース
17 画像出力インタフェース
18 可搬型記録媒体
100 図面データ処理装置
200 図面データ処理装置
300 構造計算装置
BS バス
D1 修正データ入力ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムから構造計算における異常を示す異常情報を取得する異常情報取得手段と、
前記異常情報取得手段により取得された異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定する構成部材特定手段と、
前記構成部材特定手段により特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記する異常発生情報付記手段と
を備える、図面データ処理装置。
【請求項2】
前記異常発生情報付記手段により異常発生情報が付記された図形の選択を受け付ける図形選択受付手段と、
前記図形選択受付手段により選択が受け付けられた図形についての修正データの入力を受け付ける修正データ入力受付手段と、
前記修正データ入力受付手段により入力が受け付けられた修正データを前記構造計算プログラムに対して出力する修正データ出力手段と
をさらに備える、請求項1に記載の図面データ処理装置。
【請求項3】
前記異常情報取得手段が、前記修正データに基づいて前記構造計算プログラムにて再度構造計算が行われた場合に、当該構造計算における異常を示す異常情報を当該構造計算プログラムから取得するように構成されている、
請求項2に記載の図面データ処理装置。
【請求項4】
前記異常発生情報付記手段が、前記異常の種類を示す異常発生情報を、前記図形を指し示す引出線を用いて付記するように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載の図面データ処理装置。
【請求項5】
建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムを実行可能な構造計算装置と、当該構造計算装置と通信可能に接続され、建築構造物の図面データを処理する図面データ処理装置とを備える図面データ処理システムにおいて、
前記構造計算装置が、
前記構造計算プログラムにより実行された構造計算における異常を示す異常情報を、前記図面データ処理装置に対して送信する異常情報送信手段
を具備し、
前記図面データ処理装置が、
前記構造計算装置から受信した異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定する構成部材特定手段と、
前記構成部材特定手段により特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記する異常発生情報付記手段と
を具備することを特徴とする、図面データ処理システム。
【請求項6】
建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムから構造計算における異常を示す異常情報を取得するステップと、
取得された異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定するステップと、
特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記するステップと
を有する、図面データ処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
建築構造物の構造計算を実行する構造計算プログラムから構造計算における異常を示す異常情報を取得する異常情報取得手段と、
前記異常情報取得手段により取得された異常情報により示される異常が、前記建築構造物の複数の構成部材のうちの何れの構成部材に関するものであるかを特定する構成部材特定手段と、
前記構成部材特定手段により特定された構成部材を表す図形を、前記建築構造物に係る図面データにおいて特定し、その特定した図形に対して、前記異常が発生していることを示す異常発生情報を付記する異常発生情報付記手段として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−33315(P2013−33315A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167996(P2011−167996)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(398054074)システム明星株式会社 (9)
【Fターム(参考)】