説明

固体混合物の分離装置

【課題】固体混合物を流動性の差により効率よく分離できる固体混合物の分離装置を提供する。
【解決手段】閉断面構造の分離室11と、分離室11に固体混合物を投入する投入口27と、分離室11内の固体混合物を攪拌しつつ投入口27から一方向に移動させる搬送部14と、分離室11に搬送部14の搬送方向とは反対方向に気流を形成する気流形成部15と、搬送部14により搬送方向に移動させた低流動性固体を、投入部13から搬送方向に離間した位置で排出する第1排出口28と、気流により反対方向に移動させた高流動性固体を、投入部13から反対方向に離間した位置で気流と共に排出する第2排出口29と、第2排出口29から排出された混合気体を固気分離する固気分離部17と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性が異なる複数の固体の混合物を、気流を利用して高流動性固体と低流動性固体とに分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オイルパームのような樹木のトランクに含まれる樹液を利用し、樹液に含まれる糖からエタノールや乳酸などを製造する技術が開発されている。例えば下記特許文献1、2では、オイルパーム由来の樹皮以外の組成物からエタノールや乳酸を製造する方法が記載されている。
【0003】
これらの特許文献1、2では、伐採されて樹皮が除去されたオイルパームのトランクを、粉砕機を用いて細かく粉砕したり、シュレッダを用いて細かく切断したりして、得られた粉砕物や細裂片を圧搾することで樹液を採取し、得られた搾汁を発酵させることでエタノールや乳酸を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−178355号公報
【特許文献2】WO2011/045997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの技術ではトランクから得られる樹液を専ら利用していたが、搾汁後に生じる残渣についても種々の用途に利用可能なことがわかった。
オイルパームのトランクを細かくして搾汁後に得られる残渣には、維管束と柔組織とが混合した固体混合物となっている。柔組織は維管束に付着した状態で存在する場合が多いため、残渣を利用するにはこのような性質が異なる維管束と柔組織とを分離することが望まれる。
【0006】
維管束と柔組織のように分離可能な固体が混合或いは付着した固体混合物であって、維管束及び柔組織と同様或いは類似した性質を有する固体混合物は種々存在するため、そのような固体混合物を効率よく分離するための装置は種々の分野で望まれている。
【0007】
そこで、本発明は固体混合物を効率よく分離できる固体混合物の分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、維管束と柔組織とに流動性に差が存在することを見出し、本発明に到達した。
即ち、上記目的を達成する本発明の第1の態様は、流動性が異なる複数の固体の混合物を、気流を利用して高流動性固体と低流動性固体とに分離する分離装置であって、分離室内で固体混合物を攪拌しつつ一方向に移動させる搬送部と、分離室内に搬送部の搬送方向とは反対方向に気流を形成する気流形成部を備え、気流により高流動性固体を反対方向に移動させつつ搬送部により低流動性固体を搬送方向に移動させるものである。
【0009】
本発明の第2の態様は、流動性が異なる複数の固体の混合物を、気流を利用して高流動性固体と低流動性固体とに分離する分離装置であって、閉断面構造の分離室と、分離室に固体混合物を投入する投入口と、分離室内の固体混合物を攪拌しつつ投入口から一方向に移動させる搬送部と、分離室内に搬送部の搬送方向とは反対方向に気流を形成する気流形成部と、搬送部により搬送方向に移動させた低流動性固体を、投入口から搬送方向に離間した位置で排出する第1排出口と、気流により反対方向に移動させた高流動性固体を、投入口から反対方向に離間した位置で気流と共に排出する第2排出口と、第2排出口から排出された混合気体を固気分離する固気分離部と、を備える。
【0010】
好ましくは、搬送部は固体混合物を掻き上げつつ攪拌し且つ搬送方向に移動するパドルを備える。
気流形成部は、好ましくは、第2排出口から分離室内の気体を吸引する気体吸引部と、第1排出口側から分離室へ外気を導入する気体導入部とを備え、気体吸引部の吸引量及び気体導入部の導入量の少なくとも一方が調整可能である。
【0011】
供給部は、固体混合物を押し出し流れで分離室へ供給する投入口に接続されているのがよい。
本発明の固体混合物の分離装置は、さらに分離室内の上下方向の中間位置から下向きに加圧気体を噴射する気体噴射部を備えていてもよい。
【0012】
固体混合物は植物を小片化して搾汁した残渣からなってもよい。その場合、低流動性固体は維管束であり、高流動性固体は柔組織である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の固体混合物の分離装置によれば、搬送部により固体混合物を攪拌するので、固体混合物を分離室内の空間に分散できる。固体混合物を構成する各固体が互いに付着し又は凝集している場合であっても、各固体間に剪断力や衝撃力を与えることで互いに引き剥がすことができる。これにより固体混合物を各固体の性質の差により分離し易い状態にできる。
【0014】
攪拌により固体混合物を分離し易くした状態で、分離室内に気体形成部によって気流を形成するので、流動性が高い高流動性固体を気流により移動させることができる。一方流動性が低い低流動性固体は搬送部により移動させるので、気流に左右されず搬送部の搬送方向に移動させることができる。そのため固体混合物を流動性の差により高流動性固体と低流動性固体とに分離することが可能である。このとき固体混合物を分離し易くする機能と低流動性固体を移動させる機能とを、搬送部により同時に実現できるので、装置構成の簡素化が図れる。
【0015】
そして搬送部による低流動性固体の移動方向とは逆方向に、高流動性固体を気流により移動させるため、低流動性固体と高流動性固体とを確実に分離することが可能である。
従って、本発明によれば、固体混合物を効率よく分離できる固体混合物の分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る固体混合物の分離装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る固体混合物の分離装置を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る固体混合物の分離装置を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る固体混合物の分離装置を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る固体混合物の分離装置に用いる供給部及び搬送部の構成を示す概略図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】実施例の結果を示し、(a)は搬送部の搬送速度と柔組織の回収率及び純度との関係を示すグラフ、(b)は気流形成部による流速と柔組織の回収率及び純度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
本実施形態における固体混合物の分離装置10は、流動性が異なる複数の固体の混合物を、気流を利用して高流動性固体と低流動性固体とに分離する装置である。この明細書において流動性とは、例えば、各固体が気流から受ける風圧と各固体の移動を阻止する抵抗力との相対関係によって、気流中で固体が移動する性質をいう。例えば静置された固体が気流によって移動する場合を高流動性固体とし、移動しない場合を低流動性固体としてもよい。
【0018】
固体混合物は特に限定されるものではないが、本実施形態では、植物を小片化して搾汁した残渣、具体的にはオイルパームのトランクを切断又は切削して得られた細裂片を圧搾して、樹液を搾汁した後の残渣を用いる。この残渣には維管束と柔組織とが含まれており、柔組織を分離して回収し、この柔組織を用いてエタノールを生産することができる。
【0019】
維管束と柔組織とは流動性が異なり、維管束が低流動性固体で、柔組織が高流動性固体となっている。残渣は、一般に、維管束に柔組織が付着した状態となっており、本実施形態ではそのまま固体混合物として分離装置に供給することができる。流動性は含水率によっても変動するが、圧搾後の含水率であれば、柔組織は気流により十分に流動可能である。
【0020】
次に、本実施形態の分離装置10の構成について説明する。
分離装置10は、図1乃至図4に示すように、分離室11を有する本体部12と、分離室11に固体混合物を供給する供給部13と、分離室11内に配設されて固体混合物を攪拌しつつ一方向に移動させる搬送部14と、分離室11内に搬送部14の搬送方向とは反対方向に気流を形成する気流形成部15と、分離室11内に加圧気体を噴射する気体噴射部16と、分離室11から排出された混合気体を固気分離する固気分離部17と、を備えている。
【0021】
供給部13は、図5に示すように、ホッパー21と、ホッパー21から供給される固体混合物を、押し出し流れで本体部12の分離室11へ供給する供給器22とを備える。供給器22はスクリューコンベアからなり、一軸方向に延びる移送管23内に回転駆動されるスクリュー軸24が配設され、スクリュー軸24回りに移送管23の直径と同等の直径で螺旋状に形成されたスクリュー25が略全長に配設されている。この供給器22では一端側にホッパー21から供給される固体混合物を、スクリュー25により順次押し出し流れで他端側から本体部12に供給する。
【0022】
本体部12は、図5及び図6に示すように、閉断面構造を有して一軸方向に延びる分離室11を備えている。分離室11の底部には搬送部14が設けられ、搬送部14の上方には気流が形成される気流形成空間26が略全長に設けられている。分離室11の上部における長手方向中間には、供給部13と連通した投入口27が設けられ、底部の一端部には第1排出口28が設けられ、上部の他端部には第2排出口29が設けられている。投入口27は第1排出口28と第2排出口29との中間位置に各排出口28,29から離間して配置されている。
【0023】
搬送部14は、パドルコンベアからなり、回転駆動される搬送軸31と、搬送軸31の周囲に90度のピッチで多数取り付けられた複数のパドル32とを備える。各パドル32は周方向に対して同一方向に傾斜して搬送軸31に固定されている。分離室11の底部はパドル32が近接又は摺接して回動可能な断面円弧形状を有する。
この搬送部14では、各パドル32が回転することで、分離室11の底部上に存在する固体混合物を掻き上げつつ攪拌すると共に、固体混合物または低流動性固体をパドル32の傾斜により第1排出口28側に向けて一方向に移動させ、低流動性固体を第1排出口28から排出させる。
【0024】
ここでは、投入口27から投入された固体混合物を攪拌することで、ほぐして分離し易くし、また高流動性固体と低流動性固体とが互いに付着したり凝集している固体混合物に攪拌による剪断力や衝撃力を与え、互いに引き剥がして解離している。しかも固体混合物をパドルで掻き上げることで固体混合物を上方に持ち上げて落下させ、これにより固体混合物中の高流動性固体を気流により移動させ易くしている。
なおこの搬送部14では、搬送軸31の回転速度が調整可能であり、パドル32の角度が調整可能である。回転速度やパドル32の角度を調整して固体混合物または低流動性固体の搬送速度、攪拌強度、掻き上げ量を調整して固体混合物に応じた分離を可能にしている。
【0025】
この搬送部14は、投入口27よりも第2排出口29側から第1排出口28の位置まで連続して設けられるのがよく、特に第2排出口29までの全長に設けられるのがより好適である。
固体混合物が攪拌されることで、低流動性固体が浮き上がり、気流によって投入口27よりも第2排出口29側へ移動することがある。特に、固体混合物を構成する高流動性固体と低流動性固体との流動性の差が小さい場合には、低流動性固体が気流によって第2排出口29側へ移動し易い。
そのため、投入口27よりも第2排出口29側に搬送部14が設けられていれば、攪拌時に気流によって第2排出口29側へ移動した低流動性固体を第1排出口28側へ移動させることができ、低流動性固体を確実に第1排出口28から排出させることができる。
【0026】
気流形成空間26は、第1排出口28の位置から第2排出口29の位置まで、搬送軸31に沿って連続して設けられている。気流形成空間26には、気流形成部15により分離室11内に搬送部14の搬送方向とは反対方向に気流が形成される。
ここでは気流が投入口27よりも第1排出口28側から形成されるのがよく、特に第1排出口28から投入口27までの全長に形成されるのが好適である。固体混合物は搬送部14によって攪拌されて徐々に分離するため、固体混合物に含まれている高流動性固体は低流動性固体に伴って投入口27から第1排出口28側に移動する。
そのため第1排出口28側から気流を形成することで、低流動性固体に伴って移動した高流動性固体をより多く分離することができる。
【0027】
気流形成部15は、第2排出口29から分離室11内の気体を吸引する気体吸引部35と、第1排出口28側から外気を導入する気体導入部36とを備える。
気体吸引部35は、本体部12の第2排出口29に吸引管37を介して接続されたプレートファン38を備え、分離室11内の空気を高流動性固体と共に吸引する。
気体導入部36は、本体部12の第1排出口28側の端部に連結して設けられた分岐導入管41と、分岐導入管41の一方に設けられた外気導入口42と、分岐導入管41の他方に設けられて加圧空気を導入可能なターボファン43とを備える。外気導入口42とターボファン43とは択一的に使用してもよい。
【0028】
この気流形成部15では、ターボファン43から外気を圧送しつつ、又は外気導入口42から外気を取り込みつつ、気体吸引部35によって分離室11内の気体を吸引することで、分離室11の気流形成空間26に搬送部14による固体混合物又は低流動性固体の搬送方向とは反対方向に流動する気流を形成する。
気体吸引部35の吸引量及び気体導入部36の導入量の少なくとも一方が調整可能であるのが好ましく、本実施形態では両者が調整可能である。具体的にはプレートファン38の入口側には吸引される混合気体中の固体濃度を測定するダストメータ39が設けられ、また分岐導入管41には気体流量を測定するサーマルフローメータ44が設けられており、これらの測定結果に基づいて、外気導入口42の開口量、ターボファン43の送風量、プレートファン35の気体吸引量等を手動又は自動制御により調整可能となっている。気流の風速や風量、風圧等を適宜調整することで、高流動性固体に応じた気流を形成して分離効率を向上できる。
【0029】
気体噴射部16は、リングブロア46と、リングブロア46に接続された分岐圧送管47と、分岐圧送管47の分岐した各端部に設けられたマニホールド48と、本体部12の分離室11における上下方向中間に下向きに配設されてマニホールド48に接続された多数の噴射ノズル49と、を備えている。
この気体噴射部16では、搬送部14及び気流形成部15を稼働しつつ、分離室11内の上下方向の中間位置から下向きに加圧気体を噴射することで、分離室11内に上昇流や渦流等の気体の流れを形成する。この気体噴射部16ではパドル32の回転方向と同じ向きに加圧気体を噴射する。これにより固体混合物から高流動性固体を浮き上がらせて、気流形成部15によって形成された気流で高流動性固体を移動させ易くできる。
【0030】
固気分離部17は、プレートファン38の排気側に接続されたサイクロン51と、サイクロン51の排気側に延長管52を介して接続されたバグフィルタとを備える。バグフィルタ53には気体吸引器54を設けてもよい。またサイクロン51で十分な分離効率が得られればバグフィルタ53を設けなくてもよい。
この固気分離部17には気流形成部15における気体吸引部35の排気がそのまま送り込まれる。即ち、分離室11内から気体吸引部35によって吸引された高流動性固体の混合気体が全て送り込まれる。この排気がサイクロン51で固気分離され、高流動固体がサイクロン51で回収される。さらにバグフィルタ53により、サイクロン51の排気から極微量に混入している高流動性固体を除去して大気放出される。
【0031】
次に、この分離装置10の動作について説明する。
図1に示すように、まず供給部13のホッパー21から搾汁後の残渣である固体混合物を供給器22へ供給し、供給器22により押し出されて本体部12の分離室11に固体混合物が供給される。
分離室11では、投入された固体混合物が落下して搬送部14のパドル32により攪拌され、さらに掻き上げられて、付着又は凝集状態の低流動性固体と高流動性固体とを引き剥がしつつ固体混合物を分散させ、固体混合物を分離し易い状態にする。
【0032】
分離室11内の気流形成空間26に気流形成部15により気流を形成することで、分離し易くなっている固体混合物から高流動性固体を気流により第2排出口29側へ移動させる。このとき気体噴射部16から加圧気体を噴射することで、固体混合物中の高流動性固体を浮き上がらせて、より多くの高流動性固体を気流により移動させる。
気流によっても移動し難い低流動性固体及び未分離の固体混合物は、搬送部14のパドル32で第1排出口28側へ移動させる。気流が形成された状態で搬送部14による攪拌及び移動を継続することで、固体混合物中のさらに多くの高流動性固体を気流により第2排出口29側へ移動させることができる。低流動性固体はそのまま搬送部14により第1排出口28側へ移動させる。
【0033】
分離室11では、低流動性固体が搬送部14によって一方側へ移動し、第1排出口28に到達して排出ダクト30から排出され、高流動性固体が気流により搬送方向とは反対方向へ移動して気流と共に混合気体として第2排出口29から排出され、固気分離部17へ移送される。このようにして高流動性固体と低流動性固体とが十分に分離された状態となる。
分離時には、例えば気体吸引部35に設けられたダストメータ、気体導入部36に設けられたサーマルフローメータ等の測定結果に基づいて、搬送部14や気流形成部15を自動調整してもよい。
【0034】
第2排出口29から排出された混合気体は、固気分離部17のサイクロン51によって固気分離され、高流動性固体がサイクロン51の下部ダクト50から回収される。サイクロン51の排気中に高流動性固体が微量に含まれていても、その後のバグフィルタ53により略完全に分離される。
固気分離部17では搬送部14及び気流形成部15を適切に調整することで、固気分離部17で回収された高流動性固体に低流動性固体が混入することを防止できる。
【0035】
その結果、固体混合物の高流動性固体が下部ダクト50から回収され、低流動性固体が排出ダクト30から回収される。本実施形態では、回収された高流動性固体をそのままエタノールの生産に利用する。
【0036】
以上のような固体混合物の分離装置10によれば、搬送部14により固体混合物を攪拌するので、固体混合物を構成する各固体が互いに付着又は凝集している場合であっても各固体間に剪断力や衝撃力を与えることで互いに引き剥がすことができ、また固体混合物を分離室11内に分散できる。これにより固体混合物を各固体の流動性の差により分離し易い状態にできる。
攪拌により固体混合物を分離し易くした状態で、分離室11内に気体形成部によって気流を形成するので、流動性が高い高流動性固体を気流により移動させることができる。一方、流動性が低い低流動性固体は搬送部14により移動させるので、気流に左右されることなく搬送部14の搬送方向に移動させることができる。そのため固体混合物を流動性の差により高流動性固体と低流動性固体とに確実に分離することが可能である。
特に、搬送部14による低流動性固体の移動方向と気流による高流動性気体の移動方向とを逆にしているため、低流動性固体と高流動性固体とを正確に分離することが可能である。
しかも、固体混合物を分離し易くする機能と低流動性固体を移動させる機能とを搬送部14により同時に実現でき、しかも低流動性固体の移動方向と高流動性気体の移動方向とを逆にすることで効率よく分離可能であるため搬送部14を短くコンパクト化できるので、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0037】
またこの分離装置10では、投入口27から搬送部14の搬送方向となる一方向側に離間した位置に、低流動性固体を排出するための第1排出口28が設けられ、投入口27から搬送部14の搬送方向とは反対方向に離間した位置に、高流動性固体を排出する第2排出口29が設けられている。そのため、投入口27から分離室11に投入された固体混合物中の高流動性固体と低流動性固体とは、それぞれ投入口27から逆方向へ移動してそれぞれ排出されることになる。そのため第1排出口28から排出される低流動性固体と第2排出口29から排出される高流動性固体との何れも十分に分離した状態にすることができ、両者をより効率よく分離できる。
【0038】
この分離装置10では、搬送部14が固体混合物を掻き上げつつ一方向に移動させるパドル32を備えている。搬送部14がパドル32であれば、固体混合物や低流動性固体をパドル32により押し動かすため、分離室11の底部側に配置された固体全てを分離室11内で確実に移動させることができる上、底部側に配置された固体全てを確実に持ち上げて落下させることで固体混合物を分離し易い状態に分散できる。そのため分離効率を向上できる。
【0039】
この分離装置10では、気流形成部15が第2排出口29から気体を吸引する気体吸引部35と、第1排出口28側から外気を導入する気体導入部36とを備えているので、分離室11内の広い範囲に気流を形成することができ、固体混合物の分離効率を向上できる。しかも、気体吸引部35の吸引量及び気体導入部36の導入量の少なくとも一方が調整可能であるため、分離室11内の気流を調整することで、固体混合物の性状に応じた適切な分離処理を実現できる。
【0040】
この分離装置10では、固体混合物を押し出し流れで分離室11へ供給する供給器22に投入口27が接続されている。そのため、供給器22内に投入前の固体混合物が多量に配置されたり、固体混合物を押し出すためのスクリュー25が移送管23内に配置されることで、分離室11から供給器22への気体の流入を低減又は阻止できる。それ故、投入口27における気体の出入りを防止して分離室11内に適切な気流を形成できる。
【0041】
この分離装置10では、分離室11内の上下方向の中間位置から下向きに加圧気体を噴射する気体噴射部16を備えているので、搬送部14の固体混合物中に遊離状態で存在する高流動性固体を気体噴射部16からの加圧気体により浮上させることができる。そのため高流動性固体の分離を促進できる。
【0042】
この分離装置10では、固体混合物が植物を小片化して搾汁した残渣からなるので、固体混合物中の水分が減少されており、植物を小片化した固体混合物であっても気流を用いて分離することができる。
維管束と柔組織であれば、形状、大きさなど、流動性に影響する物理量の差が大きいため、本実施形態の分離装置10を用いることで、効率良く分離することが可能である。
【0043】
上記実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記では、固体混合物として維管束と柔組織とからなるものを分離した例について説明したが、分離室11内に形成する気流中で流動性の違う固体が混合されているものであれば、分離対象は限定されない。固体混合物を構成する成分も2種である必要はなく、多数の成分が混合されていてもよい。
上記実施形態では、分離室11内に備えられた搬送部14として、パドルコンベアを用いた例を説明したが、例えばスクリューコンベアや振動コンベア等、固体混合物を攪拌し、分離し易い状態に分散できるものであれば他の搬送手段を使用することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明する。
オイルパームをシュレッダにより微細化し、これを搾汁して得られた残渣を用いて、上記実施形態に示す分離装置10により、維管束と柔組織とに分離した。なお搬送部14は、全長が2000mm、パドル32の回転半径が370mm、パドルの傾斜が周方向に対して45度、投入口27と第1排出口28までの距離が600mmのものを用いた。プレートファン38は、テラル株式会社製の(CPFI−No.2−1/2)を用いた。
プレートファン38の回転数を1430rpm(約8m/sec)で略一定流速下で、パドルの回転数を23〜93rpmまで変化させて、サイクロン51の下部ダクト50から得られる柔組織の純度及び回収率を測定した。結果を図7(a)に示す。
ここで純度は、サイクロン51から分別された柔組織画分中に含まれる柔組織の割合である。回収率は全柔組織に対する柔組織画分中に含まれる柔組織の割合であり、次式により求めたものである。
[式1]
回収率(%)=(分別された柔組織画分の柔組織の量)/(分別された柔組織画分の柔組織の量+維管束画分に含まれる柔組織の量)
次に、パドル32の回転数を70rpmとして、外気導入口42を一定の開口量にしてプレートファン38の回転数を500〜1700rpmまで変化させ、サイクロン51の下部ダクト50から得られる柔組織の純度及び回収率を測定した。結果を図7(b)に示す。
図7(a)(b)から明らかなように、搬送方向と気流の方向とを逆にしている実施形態の分離装置10では、高い純度の柔組織を高い回収率で回収できた。
【符号の説明】
【0045】
10 分離装置
11 分離室
12 本体部
13 供給部
14 搬送部
15 気流形成部
16 気体噴射部
17 固気分離部
21 ホッパー
22 供給器
23 移送管
24 スクリュー軸
25 スクリュー
26 気流形成空間
27 投入口
28 第1排出口
29 第2排出口
30 排出ダクト
31 搬送軸
32 パドル
35 気体吸引部
36 気体導入部
37 吸引管
38 プレートファン
39 ダストメータ
41 分岐導入管
42 外気導入口
43 ターボファン
44 サーマルフローメータ
46 リングブロア
47 分岐圧送管
48 マニホールド
49 噴射ノズル
50 下部ダクト
51 サイクロン
52 延長管
53 バグフィルタ
54 気体吸引器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性が異なる複数の固体の混合物を、気流を利用して高流動性固体と低流動性固体とに分離する分離装置であって、
分離室内で上記固体混合物を攪拌しつつ一方向に移動させる搬送部と、
上記分離室内に上記搬送部の搬送方向とは反対方向に気流を形成する気流形成部と、を備え、
上記気流により上記高流動性固体を上記反対方向に移動させつつ上記搬送部により上記低流動性固体を上記搬送方向に移動させる、固体混合物の分離装置。
【請求項2】
流動性が異なる複数の固体の混合物を、気流を利用して高流動性固体と低流動性固体とに分離する分離装置であって、
閉断面構造の分離室と、
上記分離室に上記固体混合物を投入する投入口と、
上記分離室内の上記固体混合物を攪拌しつつ上記投入口から一方向に移動させる搬送部と、
上記分離室内に上記搬送部の搬送方向とは反対方向に気流を形成する気流形成部と、
上記搬送部により上記搬送方向に移動させた上記低流動性固体を、上記投入口から該搬送方向に離間した位置で排出する第1排出口と、
上記気流により上記反対方向に移動させた上記高流動性固体を、上記投入口から該反対方向に離間した位置で該気流と共に排出する第2排出口と、
上記第2排出口から排出された混合気体を固気分離する固気分離部と、を備えた固体混合物の分離装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記固体混合物を掻き上げつつ攪拌し且つ搬送方向に移動させるパドルを備える、請求項1又は2に記載の固体混合物の分離装置。
【請求項4】
前記気流形成部は、前記第2排出口から前記分離室内の気体を吸引する気体吸引部と、前記第1排出口側から上記分離室へ外気を導入する気体導入部とを備え、上記気体吸引部の吸引量及び上記気体導入部の導入量の少なくとも一方が調整可能である、請求項1又は2に記載の固体混合物の分離装置。
【請求項5】
前記投入口には、前記固体混合物を押し出し流れで前記分離室へ供給する供給部が接続されている、請求項2に記載の固体混合物の分離装置。
【請求項6】
前記分離室内の上下方向の中間位置から下向きに加圧気体を噴射する気体噴射部を備える、請求項2に記載の固体混合物の分離装置。
【請求項7】
前記固体混合物は植物を小片化して搾汁した残渣からなる、請求項1乃至6の何れかに記載の固体混合物の分離装置。
【請求項8】
前記低流動性固体は維管束であり、前記高流動性固体は柔組織である、請求項7に記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−34983(P2013−34983A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190175(P2011−190175)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(501174550)独立行政法人国際農林水産業研究センター (22)
【出願人】(391024102)株式会社マツオ (5)
【出願人】(511212594)フォレスト・リサーチ・インスティチュート・マレーシア (1)
【氏名又は名称原語表記】Forest Research Institute Malaysia
【住所又は居所原語表記】52109 Kepong, Selangor Darul Ehsan, Malaysia
【Fターム(参考)】