説明

固体炭素質物質のガス化反応促進用触媒

【課題】石炭やコークスなどの固体炭素質物質に二酸化炭素および/または水蒸気を含有するガスを接触させて一酸化炭素を含有するガスを生成させるガス化反応をさらに活性化させうる触媒を提供する。
【解決手段】固体炭素質物質に二酸化炭素および/または水蒸気を含有するガスを接触させて一酸化炭素を含有するガスを生成させる反応を促進するために、前記固体炭素質物質に添加して用いられる、遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物(例えばブラウンミラライト型構造を有するダイカルシウムフェライト)を含有するガス化反応促進用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭やコークスなどの固体炭素質物質のガス化反応を促進するために添加して用いられる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高炉においては、炉頂から鉄鉱石(焼結鉱、ペレット、塊鉱石など)と通常のコークス(以下、「通常コークス」という。)を交互に層状に装入し、この鉄鉱石を炉内で加熱し還元して溶融状態の銑鉄を製造している。
【0003】
ところで、高炉には、熱保存帯と呼ばれる温度が1000℃程度でほぼ一定の領域があり、この温度は通常コークスのガス化開始温度に相当する。すなわち、高炉内でC+CO→2COで表される通常コークスのガス化反応が進行するためには、約1000℃以上の温度が必要となる。鉄鉱石の還元は、その約7割が熱保存帯より高温領域で生じるが、温度が高くなるに伴って、FeO+CO→Fe+COで表される還元反応の還元平衡ガス組成が高CO濃度側に移動するので、還元反応を進行させるためには、より高いCO濃度組成のガスが必要となる。さらに、約1100℃以上で、鉄鉱石からの融液生成が見られ、その結果として鉄鉱石内部への還元ガスの拡散が抑制されてしまう。このため、熱保存帯温度が高いと、COガスによる鉄鉱石の間接還元を有効に活用できず、還元効率もある値以上に向上しない。
【0004】
そこで、通常コークスの代わりにガス化反応性を向上させた高反応性コークスを高炉に使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
高反応性コークスは、反応性が高いことから、高炉内のCOがコークス表面に接した際、C+CO→2COの反応がより低温から活発に行われる。また、その結果として、炉内に生じたCOガスが鉄鉱石と有効に反応して、還元反応が促進される。
【0006】
C+CO→2COの反応は吸熱反応であり、高炉における熱保存帯温度を低下させる効果がある。すなわち、通常コークス使用時は、1000℃程度の熱保存帯が形成され、その温度がほとんど変化しないのに対し、高反応性コークスを使用することによって、熱保存帯温度を900−950℃に低下させることが可能となる。その結果、上記還元平衡ガス組成が低CO濃度側に移行し、還元平衡到達点に余裕ができるため、還元がより進行することになり、還元効率が向上する。このため、高反応性コークスを通常コークスの一部または全量と置換して使用することができれば、高炉の還元効率が向上し、コークス比を低下できる。
【0007】
ここで、特許文献1には、石炭にガス化反応を活性化させる触媒を添加してコークス炉で乾留することにより高反応性コークスを製造する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、ガス化反応を活性化させる触媒を水に溶解および/または分散させた後、該液体をコークスと接触させ、触媒をコークスに付着させることにより高反応性コークスを製造する方法が開示されている。
【0009】
上記特許文献1および2とも、上記ガス化反応を活性化させる触媒として、アルカリ土類金属化合物と遷移金属化合物とを併用することで、相乗効果によりガス化反応をより活性化させることが可能であるとしている。
【0010】
また、特許文献3には、アルカリ土類金属および遷移金属を1質量%以上含む石炭を配合炭中に2質量%以上混合してコークス炉で乾留することにより高反応性コークスを製造する方法が開示されており、アルカリ土類金属と遷移金属の相乗効果によりガス化反応をより活性化させることが可能であるとしている。
【0011】
このように、上記特許文献1〜3には、ガス化反応を活性化させる触媒として、アルカリ土類金属と遷移金属とをともに含有する触媒を用いることが開示されているものの、これらの従来技術は、アルカリ土類金属化合物と遷移金属化合物とを単に混合したものを触媒として用いるにすぎず、アルカリ土類金属と遷移金属との相乗効果によりアルカリ土類金属または遷移金属を単独に添加する場合に比べてガス化反応をより活性化させるとしても、その活性向上効果は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−348576号公報
【特許文献2】特開2002−226865号公報
【特許文献3】特開2003−306681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明の目的は、石炭やコークスなどの固体炭素質物質に二酸化炭素および/または水蒸気を含有するガスを接触させて一酸化炭素を含有するガスを生成させるガス化反応をさらに活性化させうる触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、固体炭素質物質に二酸化炭素および/または水蒸気を含有するガスを接触させて一酸化炭素を含有するガスを生成させる反応を促進するために、前記固体炭素質物質に添加して用いられる、遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物を含有することを特徴とするガス化反応促進用触媒である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記複合酸化物がブラウンミラライト型構造である請求項1に記載のガス化反応促進用触媒である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記遷移金属が鉄であり、前記アルカリ土類金属がカルシウムである請求項1または2に記載のガス化反応促進用触媒である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記複合酸化物がカルシウムフェライトである請求項3に記載のガス化反応促進用触媒である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記カルシウムフェライトがダイカルシウムフェライトである請求項4に記載のガス化反応促進用触媒である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記固体炭素質物質がコークス、石炭、チャー、石油コークスまたは木炭である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス化反応促進用触媒である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、石炭やコークスなどの固体炭素質物質のガス化反応を促進するための触媒として、遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物を含有する触媒を使用することで、従来の、遷移金属化合物とアルカリ土類金属化合物を単に混合した触媒に比べ、格段に触媒活性を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】触媒の種類とコークス質量減少量との関係を示すグラフ図である。
【図2】石炭中へのダイカルシウムフェライトの添加量とコークス質量減少量との関係を示すグラフ図である。
【図3】ダイカルシウムフェライトの粒度とコークス質量減少量との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、ガス化反応を促進させるための触媒として、単に、遷移金属化合物とアルカリ土類金属化合物の混合物を用いるのでなく、遷移金属とアルカリ土類金属の両方を含有しつつ複合酸化物化することで、より高い触媒能を得られるのではないかと考え、理論的考察と実験に基づく検証を組み合わせて鋭意検討を行ってきた。その結果、遷移金属とアルカリ土類金属の両方を含有する複合酸化物を触媒とすることで、従来の、遷移金属化合物とアルカリ土類金属化合物の混合物を用いた触媒よりさらに高い触媒能を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0023】
ここで遷移金属とは、不完全に満たされたd殻をもつ原子またはそのような陽イオンを生ずる元素であり、周期律表の3族から11族までの元素(Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Tc、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Agなど)である。
【0024】
またアルカリ土類金属とは周期律表の2族元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)である。
【0025】
一般に、金属酸化物触媒(MO)を用いた酸素による酸化反応R+1/2O →RO(R:反応物質)は、R+MO→RO+M、M+1/2O→MOで示す酸化還元機構(「Redox機構」ともいう。)で反応が進行する場合が多いと言われている(田部浩三、清山哲郎、笛木和雄、「金属酸化物と複合酸化物」、講談社、1978年、p.375、)。この反応において触媒は、ガス中の酸素を被酸化物に受け渡す役割を果たしている。
【0026】
酸化反応において、酸素の触媒上での移動度は当然反応の活性や選択性に影響を与えると考えられる。酸素の移動は、触媒表面における移動と内部における移動とがある。触媒表面における酸素の表面拡散や触媒中における酸素の内部拡散が速ければ、酸素実効濃度の増大に相当し反応速度すなわち触媒活性の増大に有効であると考えられている(田部浩三、清山哲郎、笛木和雄、「金属酸化物と複合酸化物」、講談社、1978年、p.393)。
【0027】
遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物による、固体炭素質物質のCOおよび/またはHOによるガス化触媒作用を次のように上記酸素の場合と同様なRedox機構と考えた。ここで、固体炭素質物質としてコークスを代表例とし、反応ガスとしてCOを代表例として説明する。まず、複合酸化物からOがコークス中の炭素に移り、COが放出される(C+MO→CO+M)。次に複合酸化物の表面にCOが吸着し、複合酸化物がCOからOを引き抜き、COが放出される(M+CO→CO+MO)。
【0028】
一般に遷移金属Aの酸化物AはAOなるP面体が層をなすような構造をとるが、遷移金属Aとアルカリ土類金属Bの複合酸化物BはAOの間隙にアルカリ土類金属Bが配置するような構造をとる。遷移金属Aとアルカリ土類金属Bの複合酸化物がコークス中の炭素に酸素を渡すと、複合酸化物中に部分的に酸素欠陥が生じる。生じた酸素欠陥は正電荷を帯び、アルカリ土類金属の正電荷と電気的に反発するため、遷移金属単独の酸化物に比べて、遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物のほうが高温時の酸素欠陥移動が早く起こると考えられる。これは酸素の内部拡散が早いことに相当し、その結果コークスのCOによるガス化反応を促進すると考えられる。
【0029】
遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物として例えばブラウンミラライト構造を有する複合酸化物を用いるのが好ましい。ブラウンミラライト構造をとる代表的な複合酸化物としてはダイカルシウムフェライト(CaFe)が挙げられる。ダイカルシウムフェライトは理想的にはFeO八面体とFeO四面体が交互に層をなしその間隙にCa2+が密に配置するブラウンミラライト構造をとる(Jan Berggren,Acta Chemicca Scandinavica 25(1971),p.3616−3624)。ダイカルシウムフェライトは構造内のFeカチオンがその酸化数に応じて酸素欠損を生じ構造内部で近接した四面体と八面体とが相互に交換可能といわれている。 加えて間隙にCa2+が存在するため、正電荷を帯びた酸素欠陥と電気的に反発する。よってカルシウムフェライトがコークス中の炭素に酸素を受け渡して生成した酸素欠陥は、カルシウムフェライト粒子中を速やかに移動して該粒子表面に達してガス中のCOからOを奪い欠陥が回復すると推察される。以上より、鉄化合物とカルシウム化合物の混合物を用いるよりも、鉄とカルシウムの複合酸化物を用いたほうがガス化反応性は高くなると考えられる。
【0030】
ブラウンミラライト構造をとる複合酸化物としては、上記ダイカルシウムフェライトの他、SrFe、BaIn、Baなどが例示されるが、なかでもダイカルシウムフェライトは、遷移金属として鉄、アルカリ土類金属としてカルシウムという安価で入手しやすい金属元素の組み合わせで構成されるうえ、これらの金属元素がコークス中に含有されていても、高炉内で溶銑やスラグの成分となるだけで全く問題がないので、特に推奨される。
【0031】
遷移金属がFeでアルカリ土類金属がCaの組み合わせの場合にはダイカルシウムフェライトの他にもモノカルシウムフェライト(CaFe)という複合酸化物が存在する。モノカルシウムフェライトはFeO八面体のジグザグ鎖2種がトンネル状の骨格を形成し、Caがトンネル内を占めるような構造をとっている。
【0032】
また例えば遷移金属がZrでアルカリ土類金属がBaの組み合わせの場合にはBaZrOという複合酸化物がある。これはペロブスカイト構造と呼ばれるZrO八面体の層の隙間にBaが配置した構造をとっている。
【0033】
さらに遷移金属がTiでアルカリ土類金属がSrの組み合わせ場合にはSrTiOという複合酸化物があり、TiO八面体の層の隙間にBaが配置した構造をとっている。
【0034】
遷移金属とアルカリ土類金属の組み合わせは他にも、CaFe、CaFe、CaFe、CaFe1525、CaFe17、SrFe11、SrFe1219、SrFe23、BaFe1219、CaNb10、CaMnO、BaNiO、SrNiO、BaTiOなどが例示される。
【0035】
これらの遷移金属とアルカリ土類金属を組み合わせた複合酸化物は、上記ブラウンミラライト構造をとるダイカルシウムフェライトと同様の機構でコークスのガス化反応性を高めることができる。
【0036】
このように、よりガス化反応を促進する、遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物を含有する触媒を用いることで、より反応性の高いコークスを製造することができる。
【0037】
ここに、触媒能を十分発揮させるためには、反応物質と触媒との接触度合いが重要である。反応物質が気体の場合は触媒と自由に接触できるが、反応物質が固体の場合は触媒と反応物質の接する面でのみ触媒能を発揮する。つまり固体反応物質と固体触媒とを密着させる必要がある。固体反応物質と固体触媒、すなわちコークス中の炭素分と複合酸化物触媒を近接させるための手段として、第一に石炭と触媒を乾留前に混合しコークスを製造する方法がある。これにより石炭の軟化溶融時に触媒がコークス全体に分散し炭素分とよく密着させることができる。第二には固体触媒の粒子径を小さくし、炭素分中への分散を高めることで、炭素分と触媒の接する面積を増加させる方法が挙げられる。
【0038】
遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物の粒度は特に上限および下限を定めるものではないが、1mm以下1μm以上であることが望ましい。ただし粒子径が大きすぎると反応性が向上せず、粒子径が小さすぎると粉塵となって空気中に舞い保管や輸送が困難となるため、300μm以下20μm以上であることがより望ましい。
【0039】
ところで、固体触媒を用いて気体反応物質を反応させる場合には、一般に触媒粒子をカラムに充填させた固定層に気体を流通させる方法がとられることが多い。この場合充填した触媒粒子によりガス流れが阻害されカラムの入口と出口で圧力の損失が生じてしまうため、触媒粒子径の下限が制約される。
【0040】
一方固体触媒を用いて固体反応物質を反応させる場合には、固体反応物質と固体触媒とをあらかじめ混合したものを充填させた固定層に気体を流通させる方法がとられることが多い。この場合触媒そのものの粒子径はガスの圧力損失に無関係である。よって固定層の圧力損失の観点からは触媒粒子径の下限は特に制限されない。
【0041】
またコークス中における遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物の含有量は特に上限および下限を定めるものではないが、コークス質量に対し0.1質量%以上、35質量%以下の含有量であることが望ましい。ただし触媒含有量が少なすぎると反応性が向上せず、触媒含有量が多すぎても反応性向上幅は小さくなるため、コークス質量に対し0.1質量%以上、15質量%以下の含有量であることがより望ましい。
【0042】
上記実施形態では、固体炭素質物質として、石炭を乾留して得られるコークスを代表例に挙げたが、石炭、チャー、石油コークスまたは木炭に対しても同様のガス化反応性の向上効果が得られることが当然である。
【0043】
なお、上記実施形態では、石炭に触媒を混合した後に乾留することによりガス化活性触媒を担持したコークスを製造する方法を例示したが、例えば、固体炭素質物質として石炭そのもののガス化反応性を向上させるためには、石炭にガス化活性触媒を混合し、乾留することなくそのまま使用すればよい。
【0044】
また、上記実施形態では、反応ガスとしてCOを代表例に挙げたが、COに代えてHOの場合にも、あるいはCOとHOが並存する場合にも、上記COの場合と同様の機構でガス化反応をより促進できることは当然である。すなわち、反応ガス中にHOが含有される場合は、まず、複合酸化物からOがコークス中の炭素に移り、COが放出され(C+MO→CO+M)、次に複合酸化物の表面にHOが吸着し、複合酸化物がHOからOを引き抜き、Hが放出される(M+HO→H+MO)。
【実施例】
【0045】
遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物の例としてダイカルシウムフェライトCaFeを触媒に用いてコークスのガス化反応性を評価した。ダイカルシウムフェライトはヘマタイト(和光純薬、純度95質量%)と酸化カルシウム(和光純薬、純度98質量%)を等モル混合して白金るつぼに入れ、大気雰囲気下、1600℃で2時間焼成することにより作製した。
【0046】
触媒能は以下の方法を用いて評価した。粘結炭55質量%、準粘結炭25質量%、微粘結炭20質量%の配合炭(揮発分28質量%、灰分9質量%[内CaO1.4質量%])に、表1〜3に示す条件で添加物を加え、装入密度85kg/mで内径18mm、内高さ18.6mmの円筒状容器に装入し、窒素雰囲気下で室温から300℃まで10℃/分で昇温し、300℃から1000℃までは3℃/分で昇温し、1000℃で30分間保温し乾留した。焼成後のコークスは窒素雰囲気下で自然冷却し、塊状のまま2gの試料に調製した後、50mL/minで二酸化炭素を流した950℃の反応器内で1時間ガス化させ反応前後のコークス質量を測定した。ガス化反応実験後のコークスはXRDで分析し、ダイカルシウムフェライトの一部は還元されていたものの、大部分のダイカルシウムフェライトがコークス中に残存していることを確認した。
【0047】
[実施例1]酸化物形態の影響
上記複合酸化物と、単一酸化物または単一酸化物の混合物との触媒活性の差異を調査するため、比較例として、酸化カルシウム(和光純薬、純度98質量%)およびヘマタイト(和光純薬、純度95質量%)を触媒として、上記配合炭中に、それぞれ単体で、または両方ともを添加してコークスを作製し、これらを上記ガス化反応実験に供し、該ガス化反応実験前後のコークス質量変化を測定した。加えた添加物の粒子径はダイカルシウムフェライトおよび酸化カルシウムについてはメノウ乳鉢で粉砕し、乾式でふるいにかけ、ふるい上ないしふるい下を用いた。ヘマタイトについては試薬をふるうことなくそのまま用いた。測定結果を下記表1および図1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
上記表1に示すように、発明例1はダイカルシウムフェライトを10質量%添加した例である。同表および図1に示すとおり、酸化カルシウムやヘマタイトを単体で添加した場合、および酸化カルシウムとヘマタイトの混合物を添加した場合に比べコークス質量が大きく減少していることが分かった。ゆえにダイカルシウムフェライトを添加することでコークスのガス化反応性が有意に向上していることが分かる。
【0050】
[実施例2]複合酸化物の添加量の影響
上記複合酸化物の添加量の影響を調査するため、上記配合炭中へのダイカルシウムフェライトの添加量を順次増加させてコークスを作製し、これらを上記ガス化反応実験に供し、該ガス化反応実験前後のコークス質量変化を測定した。測定結果を下記表2および図2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
上記表2に示すように、発明例2〜7は石炭に対してダイカルシウムフェライトを1〜20質量%添加した例である。同表および図2に示すとおり、ダイカルシウムフェライトの添加量が増加するほどガス化反応性は向上するが、石炭に対して10質量%を超えて添加してもガス化反応性のさらなる向上は見られなかった。なお、石炭に対して10質量%のダイカルシウムフェライトの添加量は、乾留後のコークス中のダイカルシウムフェライトの含有量に換算すると、15質量%に相当する。
【0053】
[実施例3]複合酸化物の粒度の影響
上記複合酸化物の粒度の影響を調査するため、上記配合炭中に添加するダイカルシウムフェライトの粒度を順次変化させてコークスを作製し、これらを上記ガス化反応実験に供し、該ガス化反応実験前後のコークス質量変化を調べた。測定結果を下記表3および図3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
上記表3に示すように、発明例8〜10および4はダイカルシウムフェライトの粒度を順次小さくした例である。同表および図3に示すとおり、ダイカルシウムフェライトの粒度が小さくなるほどガス化反応性は向上することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体炭素質物質に二酸化炭素および/または水蒸気を含有するガスを接触させて一酸化炭素を含有するガスを生成させる反応を促進するために、前記固体炭素質物質に添加して用いられる、遷移金属とアルカリ土類金属の複合酸化物を含有することを特徴とするガス化反応促進用触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物がブラウンミラライト型構造である請求項1に記載のガス化反応促進用触媒。
【請求項3】
前記遷移金属が鉄であり、前記アルカリ土類金属がカルシウムである請求項1または2に記載のガス化反応促進用触媒。
【請求項4】
前記複合酸化物がカルシウムフェライトである請求項3に記載のガス化反応促進用触媒。
【請求項5】
前記カルシウムフェライトがダイカルシウムフェライトである請求項4に記載のガス化反応促進用触媒。
【請求項6】
前記固体炭素質物質がコークス、石炭、チャー、石油コークスまたは木炭である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス化反応促進用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−224488(P2011−224488A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97727(P2010−97727)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】