説明

固体燃料のガス化方法及び該方法を用いたガス化装置

【課題】 ケミカルによってガス中のCOを吸収してガス化反応を促進する作用と当該ガス化反応により生成されたガス化ガス中のタールを改質する触媒作用との両立を図り、高いガス化効率且つクリーンな合成ガスの生産を実現可能な固体燃料のガス化方法及び該方法を用いたガス化装置を提供する。
【解決手段】 ガス化の過程を熱分解とガス化を行うガス化炉(10)(熱分解ガス化フェーズ、第一工程)、チャーを燃焼させ焼成した活性ケミカルを得る燃焼炉(20)(チャー燃焼フェーズ、第二工程)及びガス化ガスを精製するガス精製炉(30)(ガス化ガス精製フェーズ、第三工程)の3つの過程(フェーズ)に分け、流動熱媒体やケミカルによる熱伝達により、また該ケミカルが各フェーズで行う化学反応の調和により、独立にして、ガス化炉(10)をCOの吸収ができるガス化に必要な低中温(773〜1073K)に制御し、ガス精製炉(30)をガス精製に必要な高温(1073K以上)に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料のガス化方法及び該方法を用いたガス化装置に係り、詳しくは固体燃料を高効率且つクリーンにガス化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化炉における一般的な石炭、バイオマス、各種廃棄物等の固体燃料のガス化は、十分な反応速度及び反応への十分な熱供給を得るため、1123K近傍或いはそれ以上の高温環境下で行われている。ガス化炉内でこのような1123K近傍或いはそれ以上の高温環境を得るためには固体燃料自身を一部燃焼させる必要がある。
しかしながら、このように固体燃料自身を燃焼させてしまうと燃料のガス化効率が低下するという問題があり、燃料の燃焼とガス化とを同じ反応空間(即ち、ガス化炉内)で行うと、生成したガス化ガス中に大量のCO及びN等の不活性ガスが巻き混じることを回避できず、製品ガスの純度とカロリーを低下してしまう。
【0003】
また、高温下で生成したガス化ガス中には、COやCOの含有量が多い一方でHの含有量が少なく、例えばGTL(Gas to Liquid)の合成プロセスに必要なH富化合成ガスを生産するためには、高温のガス化ガスを冷却して独立にCOシフト反応やCOの除去を行う必要がある。
固体燃料のガス化に伴うCOの同時除去としては、CaOベースの酸化物等のケミカルを用いてガス化炉においてガス化ガス中のCOを吸収する方法が従来より知られているが、1123K以上の高温環境下では、COの吸収を起こさせるために化学平衡の関係からガス化炉を20気圧またはこれ以上の高圧環境に置かなければならないという制約がある(特許文献1、2等参照)。
【0004】
現実には、このような高圧下でのガス化技術は、コスト制限等により、数百MWの大型のエネルギー、燃料生産システムでしか利用できず、様々な他の低容量のシステム、例えば分散型水素燃料電池発電及び合成システムでは、低圧望ましくは常圧でのガス化によるH富化合成ガスの生産が要求されている。
これより、上記GTLを含む様々なエネルギー規模のエネルギー、燃料生産システムへ応用したり、或いは次世代の高効率な発電システムを構築するためには、低中温と低圧で高効率化できるガス化方法が不可欠と考えられる。
【0005】
即ち、低中温でのガス化を実現できれば、固体燃料自身を燃焼させなくても、例えばガス化の熱源として様々な工業廃熱(例えば、ガスタービン機からの排出ガスの熱等)を利用でき、ガス化の高効率化を期待できる。また高圧環境下に置かなくても、例えば常圧下であっても、低中温であればCaO等の酸化物ケミカルによってガス化ガス中のCOが良好に吸収される。
【0006】
一方、固体燃料自身を燃焼させて燃料をガス化する方法(通常の部分酸化法:他のガス化剤を使用しない場合、またはAuto-thermalガス化法:他のガス化剤、例えばスチーム或いはCOを使用する場合)においては、燃焼により生成したCOと燃焼用空気の供給により供給されたN等の不活性ガスのガス化ガスへの巻き混じを回避するため、固体燃料のガス化をガス化炉で行い、ガス化後のチャーをガス化炉と分離した燃焼炉で燃焼させ、これらガス化炉と燃焼炉間に熱流動媒体を循環させることで熱を燃焼炉からガス化炉へ輸送する循環型の流動層二塔式ガス化手法が知られている(特許文献3、4等参照)。
【0007】
そして、このような燃料ガス化とチャー燃焼とを分離したガス化方法において、さらにガス化ガス中のCOを吸収しH富化合成ガスを生産することを目的として、燃焼炉とガス化炉との間を循環する熱媒体にCaOケミカルを添加するAER(Absorption Enhanced Reforming)と呼ばれるガス化方法が近年ヨーロッパで開発されている(非特許文献1参照)。当該AER法では、循環流動層を用い、ダウンカマー側に設置するガス化炉において873〜973K且つ常圧の環境下でバイオマスのガス化を行い、CaOケミカルでCOを吸収して高H含有量のガス化ガスを得るとともにガス化反応を促進させるようにし、これにより生成されたCaCOをライザ燃焼炉においてCaOに再生し、流動熱媒体とともに再びガス化炉に循環させるようにしている。
【特許文献1】US4231760号公報
【特許文献2】特開2004−59816号公報
【特許文献3】US4568362号公報
【特許文献4】AT405937B号公報
【非特許文献1】http://www.aer-gas.de
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、燃焼(チャー)とガス化(燃料)を分離した上記現存のガス化方法は、ガス化反応の温度が1123K以上の高温(特許文献3、4)か973K程度の低中温(AER)のいずれかのものである。
しかしながら、低中温でガス化を行う場合、タールが多く発生するという問題を避けられず、上記のAERではCaOを触媒として機能させてタールを改質するように図っているものの、CaOがタールに対して触媒機能を十分に発揮するには実に1123K以上の高温が必要であることが一般的に知られており、AERのような873〜973Kの低温環境では、タールが十分に改質されず、即ちガス化ガスが十分に精製されないという問題がある。これより、上記のAER法により得られるガス化ガス中には実際には多くのタールを含んでいると予測される。
【0009】
一方、ガス化反応温度が1123K以上である場合には、ガス化ガス中のタール改質に対してはCaOベースのケミカルの触媒機能を十分に発揮できるものの、このような高温ではCaOによるCOの吸収を十分に行うことができず、上述したように、COの吸収を起こさせるためにはガス化炉の操作圧力を20気圧以上の高圧に設置しなければならず、高圧環境でのガス化はコストがかかり、ガス化技術の応用範囲にも制限が生じるという問題がある。
【0010】
このように、CaOのようなケミカルによるガス化ガス中のタールを改質する触媒作用とガス中のCOを吸収してガス化反応を促進する作用とは両立しないのが現実である。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ケミカルによってガス中のCOを吸収してガス化反応を促進する作用と当該ガス化反応により生成されたガス化ガス中のタールを改質する触媒作用との両立を図り、高いガス化効率且つクリーンな生成ガスの生産を実現可能な固体燃料のガス化方法及び該方法を用いたガス化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、請求項1の固体燃料のガス化方法は、固体燃料とガス化剤とを熱分解ガス化フェーズ反応器に供給し、該熱分解ガス化フェーズ反応器内において、熱媒体との接触により前記固体燃料を熱分解して生成したチャーを前記ガス化剤によりガス化し、該熱分解とガス化により生成されるガス化ガス中のCOを所定該フェーズの反応温度下で活性ケミカルにより吸収する第一工程と、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内でガス化し切れず残留したチャー、前記固体燃料の熱分解とガス化に寄与して低温化した熱媒体、前記COと反応して低活性化した低活性ケミカル及び新添加の未活性ケミカルをチャー燃焼フェーズ反応器に供給し、該チャー燃焼フェーズ反応器内において、酸化剤により前記チャーを燃焼させ、該燃焼熱で前記低温化した熱媒体を加熱するとともに、前記低活性ケミカルを焼成して再活性化し且つ前記未活性ケミカルを焼成して活性化する第二工程と、前記チャー燃焼フェーズ反応器内で加熱された熱媒体と活性化した活性ケミカルとともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器から前記ガス化ガスをガス化ガス精製フェーズ反応器に供給し、該ガス化ガス精製フェーズ反応器内において、前記活性ケミカルを触媒として機能させて前記ガス化ガス中のタールを所定該フェーズの反応温度下で改質するとともに前記ガス化ガス中のHS、HClを吸収して前記ガス化ガスを精製し、該ガス化ガスの精製に主に触媒として寄与した活性ケミカルを熱媒体とともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器に循環させる第三工程とからなることを特徴とする。
【0012】
これより、チャー燃焼フェーズ反応器内において熱媒体が加熱されるとともに不活性ケミカル及び新添加の未活性ケミカルが焼成されて活性ケミカルが生成されると(第二工程)、これら高温化した熱媒体及び活性ケミカルがガス化ガス精製フェーズ反応器に供給され、ガス化ガス精製フェーズ反応器内では、所定該フェーズの高温の反応温度のもと、ガス化ガス中のタールが活性ケミカルを触媒として良好に改質されるとともにガス化ガス中のHS、HClが活性ケミカルに良好に吸収される(第三工程)。そして、熱媒体とタールを改質しHS、HClを吸収したケミカルはCOの吸収活性を保持したまま熱分解ガス化フェーズ反応器に循環され、熱分解ガス化フェーズ反応器内では、所定該フェーズの低中温の反応温度のもと、固体燃料の熱分解、ガス化により生成されるガス化ガス中のCOが当該ケミカルによって良好に吸収される(第一工程)。
【0013】
請求項2の固体燃料のガス化方法は、請求項1において、前記第一工程では、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における所定該フェーズの反応温度は、少なくとも前記活性ケミカルによる前記ガス化ガス中のCOの吸収反応と調和して773〜1073Kに制御されることを特徴とする。
これより、熱分解ガス化フェーズ反応器内での所定該フェーズの反応温度が、活性ケミカルによるガス化ガス中のCOの吸収反応等と調和することで、活性ケミカルがガス化ガス中のCOを良好に吸収可能な773〜1073Kの低中温に維持され、熱分解ガス化フェーズ反応器内がほぼ常圧であっても、ガス化により生成されたガス化ガス中のCOが活性ケミカルにより確実に吸収される。
【0014】
請求項3の固体燃料のガス化方法は、請求項1において、前記第二工程では、前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度は、少なくとも前記低活性ケミカルの再活性化反応及び前記未活性ケミカルの活性化反応と調和して1073K以上に制御されることを特徴とする。
これより、チャー燃焼フェーズ反応器内での反応温度が、低活性ケミカルの再活性化反応及び未活性ケミカルの活性化反応等と調和することで1073K以上の高温に維持され、熱媒体と活性ケミカルとが十分に高温化されるとともに十分に活性化した活性ケミカルが生起される。
【0015】
請求項4の固体燃料のガス化方法は、請求項1において、前記第三工程では、前記ガス化ガス精製フェーズ反応器内における所定該フェーズの反応温度は、少なくとも前記タールの改質反応に対する前記活性ケミカルの触媒機能の十分な発揮と調和して1073K以上、且つ、前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度よりも低く、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における所定該フェーズの反応温度よりも高く制御されることを特徴とする。
【0016】
これより、ガス化ガス精製フェーズ反応器内での所定該フェーズの反応温度が、活性ケミカルのタール改質反応に対する触媒機能の発揮等と調和することで、活性ケミカルがガス化ガス中のタールを良好に改質可能な1073K以上の高温に維持され、活性ケミカルによってガス化ガスの中のタールが確実に改質され、同時にHS、HCl等も良好に除去される。この場合、当該フェーズにおけるタール改質反応の多少吸熱によって所定該フェーズの高温の反応温度はチャー燃焼フェーズにおける反応温度、即ちチャー燃焼フェーズで加熱された粒子及び活性ケミカルの温度より少し低くなるが、確実に熱分解ガス化フェーズ反応器におけるそのフェーズの低中温の反応温度より高くなっている。
【0017】
請求項5の固体燃料のガス化方法は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記未活性ケミカルは金属炭酸塩または水酸化塩をベースとする鉱物であることを特徴とする。
このように未活性ケミカルが金属炭酸塩(CaCO等)または水酸化塩をベースとする鉱物(Ca(OH)等)であると、活性化した活性ケミカル(CaO等)は、熱分解ガス化フェーズ反応器内では、所定該フェーズの低中温の反応温度のもと、ガス化ガス中のCOを十分に吸収可能であり、ガス化ガス精製フェーズ反応器内では、所定該フェーズの高温の反応温度のもと、好適に触媒として機能してガス化ガス中のタールを十分に改質可能である。
【0018】
請求項6の固体燃料のガス化装置は、固体燃料とガス化剤とを供給し、熱媒体との接触により前記固体燃料を熱分解して生成したチャーを前記ガス化剤によりガス化するとともに、該熱分解とガス化により生成されるガス化ガス中のCOを所定熱分解ガス化の反応温度下で活性ケミカルにより吸収する熱分解ガス化フェーズ反応器と、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内でガス化し切れず残留したチャー、前記固体燃料の熱分解とガス化に寄与して低温化した熱媒体、前記COと反応して低活性化した低活性ケミカル及び新添加の未活性ケミカルを供給し、酸化剤により前記チャーを燃焼させ、該燃焼熱で前記低温化した熱媒体を加熱するとともに、前記低活性ケミカルを焼成して再活性化し且つ前記未活性ケミカルを焼成して活性化するチャー燃焼フェーズ反応器と、前記チャー燃焼フェーズ反応器内で加熱された熱媒体と活性化した活性ケミカルとともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器から前記ガス化ガスを供給し、前記活性ケミカルを触媒として機能させて前記ガス化ガス中のタールを所定タール改質の反応温度下で改質するとともに前記ガス化ガス中のHS、HClを吸収して前記ガス化ガスを精製し、該ガス化ガスの精製に主に触媒として寄与した活性ケミカルを熱媒体とともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器に循環させるガス化ガス精製フェーズ反応器とを備えたことを特徴とする。
【0019】
これより、チャー燃焼フェーズ反応器内において熱媒体が加熱されるとともに不活性ケミカル及び新添加の未活性ケミカルが焼成されて活性ケミカルが生成されると、これら高温化した熱媒体及び活性ケミカルがガス化ガス精製フェーズ反応器に供給され、当該ガス化ガス精製フェーズ反応器内では、タール改質に必要な所定タール改質の高温の反応温度のもと、ガス化ガス中のタールが活性ケミカルを触媒として良好に改質されるとともにガス化ガス中のHS、HClが活性ケミカルに良好に吸収される。そして、熱媒体とタールを改質しHS、HClを吸収したケミカルはCOの吸収活性を保持したまま熱分解ガス化フェーズ反応器に循環され、当該熱分解ガス化フェーズ反応器内では、COの吸収に必要な所定熱分解ガス化の低中温の反応温度のもと、固体燃料の熱分解、ガス化により生成されるガス化ガス中のCOが当該ケミカルによって良好に吸収される。
【0020】
請求項7の固体燃料のガス化装置は、請求項6において、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における前記所定熱分解ガス化の反応温度は、少なくとも前記活性ケミカルによる前記ガス化ガス中のCOの吸収反応と調和して773〜1073Kに制御されることを特徴とする。
これより、熱分解ガス化フェーズ反応器内での所定熱分解ガス化の反応温度が、活性ケミカルによるガス化ガス中のCOの吸収反応等と調和することで、活性ケミカルがガス化ガス中のCOを良好に吸収可能な773〜1073Kの低中温に維持され、熱分解ガス化フェーズ反応器内がほぼ常圧であっても、ガス化により生成されたガス化ガス中のCOが活性ケミカルにより確実に吸収される。
【0021】
請求項8の固体燃料のガス化装置は、請求項6において、前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度は、少なくとも前記低活性ケミカルの再活性化反応及び前記未活性ケミカルの活性化反応と調和して1073K以上に制御されることを特徴とする。
これより、チャー燃焼フェーズ反応器内での反応温度が、低活性ケミカルの再活性化反応及び未活性ケミカルの活性化反応等と調和することで1073K以上に維持され、熱媒体と活性ケミカルとが十分に高温化されるとともに十分に活性化した活性ケミカルが生起される。
【0022】
請求項9の固体燃料のガス化装置は、請求項6において、前記ガス化ガス精製フェーズ反応器内における前記所定タール改質の反応温度は、少なくとも前記タールの改質反応に対する前記活性ケミカルの触媒機能の十分な発揮と調和して1073K以上、且つ、前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度よりも低く、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における前記所定熱分解ガス化の反応温度よりも高く制御されることを特徴とする。
【0023】
これより、ガス化ガス精製フェーズ反応器内での所定タール改質の反応温度が、活性ケミカルのタール改質反応に対する触媒機能の発揮等と調和することで、活性ケミカルがガス化ガス中のタールを良好に改質可能な1073K以上の高温に維持され、活性ケミカルによってガス化ガスの中のタールが確実に改質され、同時にHS、HCl等も良好に除去される。この場合、当該フェーズにおけるタール改質反応の多少吸熱によって所定該フェーズの高温の反応温度はチャー燃焼フェーズにおける反応温度、即ちチャー燃焼フェーズで加熱された粒子及び活性ケミカルの温度より少し低くなるが、確実に熱分解ガス化フェーズ反応器におけるそのフェーズの低中温の反応温度より高くなっている。
【0024】
請求項10の固体燃料のガス化装置は、請求項6乃至9のいずれかにおいて、前記未活性ケミカルは金属炭酸塩または水酸化塩をベースとする鉱物であることを特徴とする。
このように未活性ケミカルが金属炭酸塩(CaCO等)または水酸化塩をベースとする鉱物(Ca(OH)等)であると、活性化した活性ケミカル(CaO等)は、熱分解ガス化フェーズ反応器内では、所定熱分解ガス化の低中温の反応温度のもと、ガス化ガス中のCOを十分に吸収可能であり、ガス化ガス精製フェーズ反応器内では、所定タール改質の高温の反応温度のもと、好適に触媒として機能してガス化ガス中のタールを十分に改質可能である。
【0025】
請求項11の固体燃料のガス化装置は、請求項6乃至10のいずれかにおいて、前記ガス化ガス精製フェーズ反応器は前記熱分解ガス化フェーズ反応器よりも水平断面積が大きいことを特徴とする。
これより、ガス化ガスがガス化ガス精製フェーズ反応器内に滞留する時間が長くなり、ガス化ガスが十分に精製される。
【0026】
請求項12の固体燃料のガス化装置は、請求項6乃至11のいずれかにおいて、前記ガス化ガス精製フェーズ反応器と前記熱分解ガス化フェーズ反応器とは一体に設けられ、前記ガス化ガス精製フェーズ反応器から前記熱分解ガス化フェーズ反応器に前記熱媒体と前記活性ケミカルとを循環させるための粒子通路が、前記一体をなす前記ガス化ガス精製フェーズ反応器及び前記熱分解ガス化フェーズ反応器の内部または外部に配設されていることを特徴とする。
【0027】
これより、ガス化ガス精製フェーズ反応器と熱分解ガス化フェーズ反応器とが一体に設けられていることで装置全体がコンパクトになり、また、ガス化ガス精製フェーズ反応器から熱分解ガス化フェーズ反応器への粒子通路を内部または外部に配置することで、熱媒体及び活性ケミカルの循環の安定化が図られる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の固体燃料のガス化方法によれば、固体燃料のガス化に係る全過程を熱分解ガス化、チャー燃焼及びガス化ガス精製の三つのフェーズに分け、固体燃料の熱分解ガス化により生成されるガス化ガス中のタールをガス化ガス精製フェーズにおいて所定該フェーズの高温の反応温度のもとで活性ケミカルにより改質し、当該タールの改質に触媒として寄与した活性ケミカルを熱媒体とともに熱分解ガス化フェーズに循環させ、当該熱分解ガス化フェーズにおいて所定該フェーズの低中温の反応温度のもとでガス化ガス中のCOを同じ活性ケミカルにより吸収するようにし、さらにチャー燃焼フェーズにおいて熱媒体を加熱するとともに低活性化したケミカル、即ち低活性ケミカル及び新添加の未活性ケミカルを焼成により活性化させるようにしているので、活性ケミカルを循環させながら、当該活性ケミカルによって、熱分解ガス化フェーズではガス化ガス中のCOを適正な反応温度のもとで十分に吸収でき、且つ、ガス化ガス精製フェーズではガス化ガス中のタールを適正な反応温度のもとで十分に改質するようにでき、さらにチャー燃焼フェーズではタールの改質に寄与する前に低活性及び未活性ケミカルを十分に活性化した状態にすることができる。
【0029】
即ち、熱分解ガス化、チャー燃焼及びガス化ガス精製の各フェーズ毎に反応温度を独立に最大の反応パフォーマンスが実現されるようにでき、ケミカルによってガス中のCOを吸収してガス化反応を促進する作用と当該ガス化反応により生成されたガス化ガス中のタールを改質する触媒作用との両立を図ることができる。
これにより、固体燃料のガス化を高効率にしてクリーンに実現でき、高品質のガス化ガスを得ることができる。
【0030】
請求項2の固体燃料のガス化方法によれば、熱分解ガス化フェーズ反応器内では、活性ケミカルによるガス化ガス中のCOの吸収反応等との調和により、所定該フェーズの反応温度を活性ケミカルがガス化ガス中のCOを良好に吸収可能な773〜1073Kの低中温に維持するようにするので、熱分解ガス化フェーズ反応器内を高圧とせずにほぼ常圧とした場合であっても、ガス化により生成されたガス化ガス中のCOを活性ケミカルによって確実に吸収することができる。
【0031】
請求項3の固体燃料のガス化方法によれば、チャー燃焼フェーズ反応器内では、低活性ケミカルの再活性化反応及び未活性ケミカルの活性化反応等との調和により、反応温度を1073K以上の高温に維持するようにするので、熱媒体と活性ケミカルとを十分に高温化させるとともに活性ケミカルを十分に活性化させることができる。
請求項4の固体燃料のガス化方法によれば、ガス化ガス精製フェーズ反応器内では、タール改質反応に対する活性ケミカルの触媒機能の発揮等との調和により、所定該フェーズの反応温度を活性ケミカルがガス化ガス中のタールを良好に改質可能な1073K以上の高温に維持するようにするので、ガス化ガスの中のタールを活性ケミカルによって確実に改質することができ、同時にHS、HCl等も良好に除去することができる。なお、この場合、当該フェーズにおけるタール改質反応の多少吸熱によって所定該フェーズの高温の反応温度はチャー燃焼フェーズにおける反応温度、即ちチャー燃焼フェーズで加熱された粒子及び活性ケミカルの温度より少し低くなるが、当該反応温度については確実に熱分解ガス化フェーズ反応器におけるそのフェーズの低中温の反応温度よりも高くできる。
【0032】
請求項5の固体燃料のガス化方法によれば、未活性ケミカルは金属炭酸塩(CaCO等)または水酸化塩をベースとする鉱物(Ca(OH)等)であるので、活性化した活性ケミカル(CaO等)により、熱分解ガス化フェーズ反応器内では所定該フェーズの低中温の反応温度のもとにガス化ガス中のCOを十分に吸収することができ、ガス化ガス精製フェーズ反応器内では所定該フェーズの高温の反応温度のもとにガス化ガス中のタールを十分に改質することができる。
【0033】
請求項6の固体燃料のガス化装置によれば、上記請求項1と同様に、固体燃料のガス化に係る全過程を熱分解ガス化、チャー燃焼及びガス化ガス精製の三つのフェーズに分け、活性ケミカルを循環させながら、当該活性ケミカルによって、熱分解ガス化フェーズではガス化ガス中のCOを適正な反応温度のもとで十分に吸収でき、ガス化ガス精製フェーズではガス化ガス中のタールを適正な反応温度のもとで十分に改質するようにでき、さらにチャー燃焼フェーズではタールの改質に寄与する前に低活性及び未活性ケミカルを十分に活性化した状態にすることができる。
【0034】
即ち、熱分解ガス化、チャー燃焼及びガス化ガス精製の各フェーズ毎に反応温度を独立に最大の反応パフォーマンスが実現されるようにでき、ケミカルによってガス中のCOを吸収してガス化反応を促進する作用と当該ガス化反応により生成されたガス化ガス中のタールを改質する触媒作用との両立を図ることができる。
これにより、固体燃料のガス化を高効率にしてクリーンに実現でき、高品質のガス化ガスを得ることができる。
【0035】
請求項7の固体燃料のガス化装置によれば、上記請求項2と同様に、熱分解ガス化フェーズ反応器内では、活性ケミカルによるガス化ガス中のCOの吸収反応等との調和により、所定熱分解ガス化の反応温度を活性ケミカルがガス化ガス中のCOを良好に吸収可能な773〜1073Kの低中温に維持するようにするので、熱分解ガス化フェーズ反応器内を高圧とせずにほぼ常圧とした場合であっても、ガス化により生成されたガス化ガス中のCOを活性ケミカルによって確実に吸収することができる。
【0036】
請求項8の固体燃料のガス化装置によれば、上記請求項3と同様に、チャー燃焼フェーズ反応器内では、低活性ケミカルの再活性化反応及び未活性ケミカルの活性化反応等との調和により、反応温度を1073K以上の高温に維持するようにするので、熱媒体と活性ケミカルとを十分に高温化させるとともに活性ケミカルを十分に活性化させることができる。
【0037】
請求項9の固体燃料のガス化装置によれば、上記請求項4と同様に、ガス化ガス精製フェーズ反応器内では、タール改質反応に対する活性ケミカルの触媒機能の発揮等との調和により、所定タール改質の反応温度を活性ケミカルがガス化ガス中のタールを良好に改質可能な1073K以上の高温に維持するようにするので、ガス化ガスの中のタールを活性ケミカルによって確実に改質することができ、同時にHS、HCl等も良好に除去することができる。なお、この場合、当該フェーズにおけるタール改質反応の多少吸熱によって所定該フェーズの高温の反応温度はチャー燃焼フェーズにおける反応温度、即ちそこで加熱された粒子及び活性ケミカルの温度より少し低くなるが、当該反応温度については確実に熱分解ガス化フェーズ反応器におけるそのフェーズの低中温の反応温度よりも高くできる。
【0038】
請求項10の固体燃料のガス化装置によれば、上記請求項5と同様に、未活性ケミカルは金属炭酸塩(CaCO等)または水酸化塩をベースとする鉱物(Ca(OH)等)であるので、活性化した活性ケミカル(CaO等)により、熱分解ガス化フェーズ反応器内では所定熱分解ガス化の低中温の反応温度のもとにガス化ガス中のCOを十分に吸収することができ、ガス化ガス精製フェーズ反応器内では所定タール改質の高温の反応温度のもとにガス化ガス中のタールを十分に改質することができる。
【0039】
請求項11の固体燃料のガス化装置によれば、ガス化ガス精製フェーズ反応器は熱分解ガス化フェーズ反応器よりも水平断面積が大きいので、ガス化ガスがガス化ガス精製フェーズ反応器内に滞留する時間を長くでき、ガス化ガスを十分に精製することができる。
請求項12の固体燃料のガス化装置によれば、ガス化ガス精製フェーズ反応器と熱分解ガス化フェーズ反応器とが一体に設けられていることで装置全体をコンパクトにでき、また、ガス化ガス精製フェーズ反応器から熱分解ガス化フェーズ反応器への粒子通路を内部または外部に配置することで、熱媒体及び活性ケミカルの循環の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
先ず、第1実施例について説明する。
図1を参照すると、本発明の第1実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図が示されており、以下図1に基づき説明する。
本発明に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置は、外部循環型の流動層を有したシステムとして構成され、図1に示すように、ガス化炉(熱分解ガス化フェーズ反応器)10と燃焼炉(チャー燃焼フェーズ反応器)20とガス精製炉(ガス化ガス精製フェーズ反応器)30とが別体に設けられ、流動熱媒体(砂等のベッド材)とともに固形成分がガス化炉10、燃焼炉20及びガス精製炉30内を循環するように構成されている。
【0041】
ガス化炉10は、流動層12に固体燃料(石炭、バイオマス、廃棄物等)を供給するとともにガス化剤(スチーマ、CO等)を供給して後述の如く加熱され高温化された流動熱媒体の熱により固体燃料のガス化(燃料熱分解を含む)を行う装置である。当該ガス化炉10の上部はガス精製炉30に連通しており、これより、ガス化炉10でガス化された合成ガス(生成ガス、ガス化ガス)はガス精製炉30に供給される。
【0042】
ガス化炉10の側面中央部分は粒子分級装置40を介して燃焼炉20の下部に連通している。粒子分級装置40は固体燃料の灰と後述の低活性ケミカルの一部、ガス化により生成されたチャー及び低温化した流動熱媒体とを分離するものであり、固体燃料の灰(燃焼炉20におけるチャーの燃焼により生成した灰)及び後述の部分低活性ケミカルを排出して廃棄するとともに、チャー、低活性ケミカルの一部及び流動熱媒体を燃焼炉20の下部に供給する機能を有している。
【0043】
燃焼炉20は、流動層22に下方から酸化剤(空気またはO)を供給することでガス化炉10から供給されたチャーを燃焼させ且つ流動熱媒体を加熱して高温化する装置であり、当該燃焼炉20の上部はサイクロン50に連通している。サイクロン50は固形成分とガス成分とを分離する装置であり、燃焼炉20で生成された排ガスを大気中に排出する一方、高温化した流動熱媒体や排ガス中の固体成分をガス精製炉30へ供給する機能を有している。
【0044】
また、上記燃焼炉20には、石灰石(CaCO)等の未活性状態のケミカル(未活性ケミカル、化学剤)を流動層22に供給するケミカル供給管20aが設けられている。
ガス精製炉30は、ガス化炉10から供給された合成ガスを精製する装置であり、合成ガス中のタールを改質するとともに、合成ガス中のHSやHCl等を吸収し除去可能に構成されている。
【0045】
当該ガス精製炉30の上部はサイクロン55に連通している。サイクロン55は上記サイクロン50と同様に固形成分とガス成分とを分離する遠心分離装置であり、ガス精製炉30で精製された合成ガスを、例えば燃料としてガスタービン等へ供給する一方、その合成ガス流中に含まれる固体成分をガス化炉10へ戻す機能を有している。
ガス精製炉30の側面中央部分からは粒子輸送管15がガス化炉10内に向けて延びており、これにより主として流動熱媒体等の粒子が当該粒子輸送管15を介してガス化炉10に供給される。
【0046】
以下、このように構成された本発明に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の作用及び固体燃料のガス化方法について説明する。
図2を参照すると、本発明に係る固体燃料のガス化方法の作用図が概略的に示されており、以下同図をも参照しながら説明する。なお、図2中には実線矢印でガス、流動熱媒体、ケミカル等の物質の循環(物質環)を、破線で熱の循環(熱環)を概念的に示してある。
【0047】
上述したように、燃焼炉20にはガス化炉10から供給されたチャーとともに酸化剤が供給され、チャーの燃焼が行われる。このとき、燃焼炉20内の流動層22には石灰石(CaCO)等のケミカルが供給され、CaCO等が流動熱媒体とともにチャーの燃焼熱によって加熱される。詳しくは、チャーの燃焼ではガス化炉10での固体燃料のガス化のような吸熱反応がないため、燃焼炉20内の温度は下記表1に示す(16)のCaCO分解化学反応との調和により、所定の高温T1(例えば、1073K以上)にまで良好に加熱される。なお、表1中のΔH0はプラス(+)が吸熱量を示し、マイナス(−)が放熱量を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
また、チャーの燃焼は固体燃料のガス化と別にしているため、ガス化ガス中のCO含有量が通常の燃焼とガス化の共存するガス化炉より低く、故に燃焼炉20内のCOの濃度は、一般のガス化炉では20mol%以上であるのに対し、例えば10〜15mol%程度の低い値に抑えられる。
【0050】
これより、燃焼炉20では、高温且つ低COの下、CaCO等が表1の化学反応式(16)のように良好に熱分解され、CaO等の活性ケミカルが良好に焼成される(第二工程)。
図3を参照すると、低CO濃度で温度が変化した場合のCaCOのTG焼成における重量変化(TG重量変化)が図示されており、同図より、CO濃度が低ければ(例えば、15mol%)、1050K程度の温度でCaCOの焼成が開始され、化学反応式(16)の如くCaOが良好に焼成されることが分かる。ここに、CO濃度が15mol%、1050K及びこれ以上の温度の反応条件は、まさに燃焼炉20内の雰囲気である。
【0051】
このように焼成されたCaO等の活性ケミカルは、高温化した流動熱媒体とともにサイクロン50を経てガス精製炉30に供給される。また、ガス精製炉30にはガス化炉10においてガス化された合成ガスも供給される。
ガス精製炉30内では、ガス化炉10においてガス化された合成ガスが上記CaO等の活性ケミカルの触媒作用によって精製される。
【0052】
詳しくは、ガス精製炉30内では、流動熱媒体やCaO等の活性ケミカルの熱により上記表1に示す(12)〜(14)のようなガス精製化学反応が進行する。ここでは、反応熱が少ないために流動層32における所定の反応温度(所定該フェーズの反応温度、所定タール改質の反応温度)T2がサイクロン50からの粒子の温度と略同等の1073K以上の高温となり、タール改質反応(12)に対するCaO等の活性ケミカルの触媒機能が十分に発揮される。なお、タール改質反応(12)の多少吸熱はガス精製炉30を通る粒子の温度を多少低下させるため、実際には反応温度T2は上記燃焼炉20における上記T1より多少低い温度である。
【0053】
これより、合成ガス中にはタール、煤塵やHS、HCl等が含まれているところ、ガス精製炉30の流動層32は、活性ケミカルのタール改質反応(12)に対する触媒機能の発揮等と調和して当該触媒機能を十分に発揮するのに必要な高温(>1073K)に維持され、CaO等はタールや煤塵に対しては良好に触媒機能を発揮し(タールの改質)、或いは付着機能を発揮して(タールと煤塵の付着)これらを浄化可能である。また、CaO等はHSやHCl等に対しては酸化剤として酸化機能を発揮し、これらを吸収可能である。故に、ガス精製炉30では、合成ガス中のタール、煤塵やHS、HCl等がCaO等によって十分に除去され、合成ガスが良好に精製される(第三工程)。
【0054】
そして、合成ガスの精製に使用された精製反応後のCaO等は、流動熱媒体とともに粒子輸送管15を介してガス化炉10に循環される。なお、合成ガスとともにガス精製炉30を飛び出したCaO等についてもサイクロン55によって固気分離されてガス化炉10に送られる。
ガス化炉10内では、流動熱媒体やCaO等の熱存在のもと、CaO等のケミカルのCO吸収活性を介入して上記表1に示す(1)〜(11)のような化学反応が進行し、(1)〜(3)の強吸熱反応である燃料熱分解とチャーガス化により上記のガス精製炉30からの固形分(粒子)温度が上記反応温度T2よりさらに低下する。そして、1〜5atmの低い反応圧のもと、COの吸収反応(5)との調和により、例えば燃料処理量の調整等を行うことで、流動層12における反応温度が所定の反応温度T3(例えば、773〜1073K、好ましくは873〜1023K)(所定該フェーズの反応温度、熱分解ガス化の反応温度)、即ちCOの吸収化学反応に必要な低中温に制御される。
【0055】
これより、ガス化炉10内では、所定の低圧及び必要な低中温T3の環境のもと、固体燃料のガス化が行われるとともにCaO等がCOと反応してCOが良好に吸収される。
つまり、CaOとCOとの化学反応においては、圧力と温度とに基づき図4に示すような化学平衡が存在しているのであるが、ガス化炉10内が所定の低圧(例えば、1〜5atm)であれば、例え常圧(1atm)であっても、ガス化炉10内の温度が低中温T3(例えば、873〜1023K)に維持されることでCaOはCOを良好に吸収可能であり、表1の化学反応式(5)の反応を良好に生起可能である。
【0056】
図5を参照すると、常圧且つ10mol%のCOの存在下で雰囲気温度を1000K近傍まで上昇させた場合のCaOの重量変化(TG重量変化)が図示され、図6を参照すると、比較例として常圧且つ25mol%のCOの存在下で雰囲気温度を1130K近傍まで上昇させた場合のCaOの重量変化(TG重量変化)が図示されているが、これらの図より、高CO分圧があっても高温の1130K近傍では変化しないCaOの重量が、より低いCO分圧の場合の低中温の1000K近傍では大きく増加しており、CaOが後の温度条件で良好にCaCOに変換されていることがわかる。
【0057】
このように、ガス化炉10では、CaO等の活性ケミカルは合成ガス中のCOと良好に反応してCOを吸収し、CaCO等の不活性ケミカル、即ち元のケミカルに戻される。
そして、このように合成ガスからCOが除去されると、合成ガスの有する燃焼カロリーが高められ、合成ガス中のH濃度が高められる(H富化)。さらに、CaO等によるCOの吸収は放熱反応であるためにガス化反応速度の促進が図られる。また、このようにガス化炉10の流動層12が温度制御されることになると、ガス化(燃料熱分解を含む)のための熱供給の安定化も図られる(第一工程)。
【0058】
CaO等の活性ケミカルがCOと反応してCaCO等の低活性ケミカルになると、再生可能な一部のCaCO等はチャー及び燃料ガス化反応によって低温化した流動熱媒体とともに再び燃焼炉20に送られ、上述のようにして再度活性化されてCaO等に再生される。
一方、CaO等がHS等の酸化に使用されるとCaS等が生成されるが、当該CaS等、或いはガス化炉10内で反応した部分低活性ケミカルは、粒子分級装置40において分離され、灰とともに排出されて廃棄される。
【0059】
なお、このようにCaS等や部分低活性ケミカルが廃棄されると、CaO等が不足することになるが、当該不足分に相当するCaCO等は鉱物(例えば、石灰石)の状態でケミカル供給管20aから燃焼炉20の流動層22に補充され(新添加の未活性ケミカル)、故にCaO等は継続して良好に生成され続ける。
以上説明したように、本発明に係る固体燃料のガス化方法及び該方法を用いたガス化装置では、ガス化の全過程を燃料熱分解及びガス化を行うガス化炉10(熱分解ガス化フェーズ、第一工程)、ガス化後のチャーを燃焼させCaCO等のケミカルを焼成してCaO等の活性ケミカルを得る燃焼炉20(チャー燃焼フェーズ、第二工程)及び合成ガスを精製するガス精製炉30(ガス化ガス精製フェーズ、第三工程)の3つの過程(フェーズ)に分けるようにしている。
【0060】
従って、各炉の温度を独立にして容易に制御可能であり、特に、ガス精製炉30では、燃焼炉20から循環される高温の流動熱媒体やCaO等の活性ケミカルの熱により、また活性ケミカルのタール改質反応に対する触媒機能の発揮等との調和により、流動層32を所定の反応温度T2(例えば、1073K以上)、即ち活性CaO等がタール改質反応に対し触媒機能を十分に発揮するのに必要な高温に温度制御することができ、ガス化炉10では、ガス精製炉30から循環される流動熱媒体やCaO等の有する熱存在のもと、ガス化炉10へ供給する燃料量の調整等を行うことで、流動層12をCaO等によるCOの吸収化学反応との調和により所定の反応温度T3(例えば、873〜1023K)、即ちCOの吸収化学反応に必要な低中温に温度制御することができる。
【0061】
これより、燃焼炉20内の流動層22において流動熱媒体が加熱されるとともにCaCO等のケミカルが焼成されてCaO等の活性ケミカルが生成されると、これら流動熱媒体及びCaO等がガス精製炉30に供給されるが、ガス精製炉30内の流動層32では、所定の反応温度T2のもと、CaO等を触媒として合成ガスを良好に精製でき、合成ガス中のタール、煤塵やHS、HCl等を良好に除去することができる。また、ガス化炉10内の流動層12では、所定の反応温度T3且つ所定の低圧(1〜5atm)のもと、ガス化により生成された合成ガス中のCOをCaO等の活性ケミカルにより良好に吸収することができ、合成ガスの有する燃焼カロリーを高め且つ合成ガス中のH濃度を高めることができるとともに(H富化)、ガス化反応速度の促進を図ることができ、さらにはガス化(燃料熱分解を含む)のための熱供給を安定したものにできる。
【0062】
即ち、ケミカルによってガス中のCOを吸収してガス化反応(燃料熱分解を含む)を促進する作用と当該ガス化反応により生成された合成ガス中のタールを改質する触媒作用との両立を図ることができる。
これにより、全体としてガス化効率を高めながら、利用価値の高いクリーンで高品質な合成ガスを得ることができる。
【0063】
なお、図1中にオプションとして示すように、精製した合成ガスの一部をガス化剤とともにガス化炉10に還流させるようにしてもよく、このようにすれば、合成ガスの熱を用いてガス化炉10内の温度を制御するようにでき、ガス化(燃料熱分解を含む)のための熱供給をより安定したものにできる。
また、ガス化炉10内の温度が低中温である所定の反応温度T3(例えば、873〜1023K)に維持されることになると、ガス化(燃料熱分解を含む)のための安定した熱源として様々な工業廃熱(例えば、ガスタービン機からの排出ガスの熱等)を利用でき、高効率なシステムを構築することが可能である。
【0064】
次に、第2実施例について説明する。
図7を参照すると、本発明の第2実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図が示されており、以下図7に基づき説明する。なお、ここでは、上記第1実施例との共通部分については説明を省略する。
当該第2実施例では、装置は、ガス化炉10とガス精製炉30とが上下方向で連結されて一体に設けられ、焼成されたCaO等の活性ケミカルと流動熱媒体とがガス精製炉30及びガス化炉10の内部に設けられた粒子輸送管(粒子通路)15’を介してガス化炉10に通されるよう構成されている。
【0065】
このようにガス化炉10とガス精製炉30とを一体に構成すると、装置を全体としてコンパクトなものにできるとともに、流動熱媒体及びCaO等の活性ケミカルのガス化炉10への移動の安定化を図り、ガス化のための熱供給をさらに安定したものにできる。
なお、図7中にオプションとして示すように、上記同様、精製した合成ガスの一部をガス化剤とともにガス化炉10に還流させるようにしてもよい。
【0066】
次に、第3実施例について説明する。
図8を参照すると、本発明の第3実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図が示されており、以下図8に基づき説明する。なお、ここでは、上記第2実施例と異なる部分についてのみ説明する。
当該第3実施例では、装置は、ガス化炉10とガス精製炉30とが一体に設けられるとともに、ガス精製炉30の水平断面積がガス化炉10よりも大きくなるように構成されている。
【0067】
このようにガス精製炉30の水平断面積がガス化炉10よりも大きくなるように構成されると、ガス化炉10内で生成された合成ガスがガス精製炉30の流動層32に滞留する時間が長くなり、合成ガスがガス精製炉30を通過する際においてより一層良好に精製される。
これにより、合成ガス中のタール、煤塵やHS、HCl等を上記第2実施例の場合よりも一層確実に除去することができ、合成ガスの精製効果のさらなる向上を図ることができる。
【0068】
なお、図8中にオプションとして示すように、上記同様、精製した合成ガスの一部をガス化剤とともにガス化炉10に還流させるようにしてもよい。
次に、第4実施例について説明する。
図9を参照すると、本発明の第4実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図が示されており、以下図9に基づき説明する。なお、ここでは、やはり上記第2実施例と異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
当該第4実施例では、装置は、ガス化炉10とガス精製炉30とが一体に設けられるとともに、ガス精製炉30とガス化炉10との間に外部通路として粒子輸送管(粒子通路)15”を備えて構成されている。
このようにガス精製炉30とガス化炉10とが外部通路である粒子輸送管15”で連通されていると、CaO等の活性ケミカルと流動熱媒体とがガス精製炉30から粒子輸送管15”を介してガス化炉10に供給される。このとき、これら流動熱媒体や活性ケミカルとともに精製した合成ガスの一部が粒子輸送管15”に送られ、流動熱媒体や活性ケミカル等の粒子のガス精製炉30からガス化炉10への供給が強化される。
【0070】
これにより、上記第2実施例の場合よりも流動熱媒体及びCaO等の活性ケミカルのガス化炉10への移動の安定化を図るようにでき、ガス化のための熱供給をより安定したものにできる。
なお、図9中にオプションとして示すように、上記同様、精製した合成ガスの一部をガス化剤とともにガス化炉10に還流させるようにしてもよい。
【0071】
以上で本発明に係る実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形可能である。
例えば、上記実施形態では、ケミカルを石灰石(CaCO)とし、活性ケミカルをCaOとして説明したが、ケミカルはドロマイト(CaCO・MgCO)その他の金属炭酸塩または水酸化塩をベースとする鉱物(Ca(OH)等)であってもよく、活性ケミカルについてはMgO、CaO・MgO等であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、外部循環型の流動層を有したシステムについて説明したが、本発明は移動層を有したシステムについても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る固体燃料のガス化方法の作用原理図である。
【図3】低CO濃度で温度が変化した場合のCaCOのTG重量変化を示す図である。
【図4】CaOとCOとの化学反応における圧力と温度とに基づく化学平衡を示す図である。
【図5】常圧且つより低い濃度のCOの存在下で雰囲気温度を1000K近傍まで上昇させた場合のCaOのTG重量変化を示す図である。
【図6】常圧且つより高い濃度のCOの存在下で雰囲気温度を1130K近傍まで上昇させた場合のCaOのTG重量変化を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図である。
【図9】本発明の第4実施例に係る固体燃料のガス化方法を用いたガス化装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0074】
10 ガス化炉
12 流動層
15、15’、15” 粒子輸送管(粒子通路)
20 燃焼炉
20a ケミカル供給管
22 流動層
30 ガス精製炉
32 流動層
40 粒子分級装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料とガス化剤とを熱分解ガス化フェーズ反応器に供給し、該熱分解ガス化フェーズ反応器内において、熱媒体との接触により前記固体燃料を熱分解して生成したチャーを前記ガス化剤によりガス化し、該熱分解とガス化により生成されるガス化ガス中のCOを所定該フェーズの反応温度下で活性ケミカルにより吸収する第一工程と、
前記熱分解ガス化フェーズ反応器内でガス化し切れず残留したチャー、前記固体燃料の熱分解とガス化に寄与して低温化した熱媒体、前記COと反応して低活性化した低活性ケミカル及び新添加の未活性ケミカルをチャー燃焼フェーズ反応器に供給し、該チャー燃焼フェーズ反応器内において、酸化剤により前記チャーを燃焼させ、該燃焼熱で前記低温化した熱媒体を加熱するとともに、前記低活性ケミカルを焼成して再活性化し且つ前記未活性ケミカルを焼成して活性化する第二工程と、
前記チャー燃焼フェーズ反応器内で加熱された熱媒体と活性化した活性ケミカルとともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器から前記ガス化ガスをガス化ガス精製フェーズ反応器に供給し、該ガス化ガス精製フェーズ反応器内において、前記活性ケミカルを触媒として機能させて前記ガス化ガス中のタールを所定該フェーズの反応温度下で改質するとともに前記ガス化ガス中のHS、HClを吸収して前記ガス化ガスを精製し、該ガス化ガスの精製に主に触媒として寄与した活性ケミカルを熱媒体とともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器に循環させる第三工程と、
からなることを特徴とする固体燃料のガス化方法。
【請求項2】
前記第一工程では、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における所定該フェーズの反応温度は、少なくとも前記活性ケミカルによる前記ガス化ガス中のCOの吸収反応と調和して773〜1073Kに制御されることを特徴とする、請求項1記載の固体燃料のガス化方法。
【請求項3】
前記第二工程では、前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度は、少なくとも前記低活性ケミカルの再活性化反応及び前記未活性ケミカルの活性化反応と調和して1073K以上に制御されることを特徴とする、請求項1記載の固体燃料のガス化方法。
【請求項4】
前記第三工程では、前記ガス化ガス精製フェーズ反応器内における所定該フェーズの反応温度は、少なくとも前記タールの改質反応に対する前記活性ケミカルの触媒機能の十分な発揮と調和して1073K以上、且つ、前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度よりも低く、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における所定該フェーズの反応温度よりも高く制御されることを特徴とする、請求項1記載の固体燃料のガス化方法。
【請求項5】
前記未活性ケミカルは金属炭酸塩または水酸化塩をベースとする鉱物であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか記載の固体燃料のガス化方法。
【請求項6】
固体燃料とガス化剤とを供給し、熱媒体との接触により前記固体燃料を熱分解して生成したチャーを前記ガス化剤によりガス化するとともに、該熱分解とガス化により生成されるガス化ガス中のCOを所定熱分解ガス化の反応温度下で活性ケミカルにより吸収する熱分解ガス化フェーズ反応器と、
前記熱分解ガス化フェーズ反応器内でガス化し切れず残留したチャー、前記固体燃料の熱分解とガス化に寄与して低温化した熱媒体、前記COと反応して低活性化した低活性ケミカル及び新添加の未活性ケミカルを供給し、酸化剤により前記チャーを燃焼させ、該燃焼熱で前記低温化した熱媒体を加熱するとともに、前記低活性ケミカルを焼成して再活性化し且つ前記未活性ケミカルを焼成して活性化するチャー燃焼フェーズ反応器と、
前記チャー燃焼フェーズ反応器内で加熱された熱媒体と活性化した活性ケミカルとともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器から前記ガス化ガスを供給し、前記活性ケミカルを触媒として機能させて前記ガス化ガス中のタールを所定タール改質の反応温度下で改質するとともに前記ガス化ガス中のHS、HClを吸収して前記ガス化ガスを精製し、該ガス化ガスの精製に主に触媒として寄与した活性ケミカルを熱媒体とともに前記熱分解ガス化フェーズ反応器に循環させるガス化ガス精製フェーズ反応器と、
を備えたことを特徴とする固体燃料のガス化装置。
【請求項7】
前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における前記所定熱分解ガス化の反応温度は、少なくとも前記活性ケミカルによる前記ガス化ガス中のCOの吸収反応と調和して773〜1073Kに制御されることを特徴とする、請求項6記載の固体燃料のガス化装置。
【請求項8】
前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度は、少なくとも前記低活性ケミカルの再活性化反応及び前記未活性ケミカルの活性化反応と調和して1073K以上に制御されることを特徴とする、請求項6記載の固体燃料のガス化装置。
【請求項9】
前記ガス化ガス精製フェーズ反応器内における前記所定タール改質の反応温度は、少なくとも前記タールの改質反応に対する前記活性ケミカルの触媒機能の十分な発揮と調和して1073K以上、且つ、前記チャー燃焼フェーズ反応器内における反応温度よりも低く、前記熱分解ガス化フェーズ反応器内における前記所定熱分解ガス化の反応温度よりも高く制御されることを特徴とする、請求項6記載の固体燃料のガス化装置。
【請求項10】
前記未活性ケミカルは金属炭酸塩または水酸化塩をベースとする鉱物であることを特徴とする、請求項6乃至9のいずれか記載の固体燃料のガス化装置。
【請求項11】
前記ガス化ガス精製フェーズ反応器は前記熱分解ガス化フェーズ反応器よりも水平断面積が大きいことを特徴とする、請求項6乃至10のいずれか記載の固体燃料のガス化装置。
【請求項12】
前記ガス化ガス精製フェーズ反応器と前記熱分解ガス化フェーズ反応器とは一体に設けられ、
前記ガス化ガス精製フェーズ反応器から前記熱分解ガス化フェーズ反応器に前記熱媒体と前記活性ケミカルとを循環させるための粒子通路が、前記一体をなす前記ガス化ガス精製フェーズ反応器及び前記熱分解ガス化フェーズ反応器の内部または外部に配設されていることを特徴とする、請求項6乃至11のいずれか記載の固体燃料のガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−16061(P2007−16061A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195945(P2005−195945)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】