説明

固体燃料バーナ及び該バーナを備えたボイラ

【課題】フレームディテクタ(FD)の誤動作を生じない固体燃料バーナと該バーナを備えたボイラを提供すること。
【解決手段】中心軸部に液体燃料を用いる点火バーナ1、点火バーナ1の外周側に搬送気体とともに固体燃料を噴出する燃料ノズル2、燃料ノズル1の外周側に燃焼用気体に噴出するとともに該燃焼用気体に前記中心軸C周りの旋回を付与する旋回手段4-1を有する燃焼用気体ノズル3,4を順次配置し、燃焼用気体ノズル3,4を通して火炉の内部方向に伸びた、点火バーナ1から噴出した液体燃料に点火する点火トーチ5と燃焼用気体ノズル3,4を通して燃焼用気体の火炉への噴出領域に検出端が設けられた火炉の内部方向の火炎を検出するフレームディテクタ6を備え、バーナ中心軸の延長方向の火炉側から見て点火トーチ5の設置位置からバーナ中心軸C周りに15°〜60°の角度だけ燃焼用空気旋回流の下流側にフレームディテクタ6を配置する固体燃料用バーナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料バーナ及び該バーナを備えたボイラに係わり、ボイラの起動時に確実に燃料に点火できる固体燃料バーナ及び該バーナを備えたボイラを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、微粉炭等の固体燃料を用いるボイラの起動時には、まずファンを起動して各固体燃料バーナおよび二段燃焼用空気口に空気を供給する。続いて、各固体燃料バーナの点火トーチに火炎を形成し、フレームディテクタ(以下、FDと称すことがある)で、この火炎を検知したのち、点火トーチの火炎により点火バーナから噴出した液体燃料に着火させて点火バーナに火炎を形成する。点火バーナによる火炎が形成されたことをFDにより検知したのち、点火トーチを消火して点火トーチ用ガンを焼損防止のため、炉外に取り出す。
【0003】
点火バーナにより炉出口温度が設定温度に達するまで火炉を昇温した後、石炭等の固体燃料を微粉砕するミルを起動して徐々に固体燃料の燃焼に切り替える。
すなわち、固体燃料バーナにおいては、固体燃料に着火させるために、液体燃料等を用いた点火バーナを設置し、更にこの点火バーナを着火する点火トーチおよび火炎を検知するFDが設置されている。
【0004】
また、固体燃料バーナの中心に点火バーナを設置し、その周囲の固体燃料ノズル2から固体燃料と搬送用の一次空気を火炉に噴出し、固体燃料ノズル2の周囲から燃焼用空気を旋回させながら火炉に向けて噴出している。
【0005】
ここで、点火トーチとFDは、定常運転時のバーナ本来の機能を阻害しないように設置される。即ち、固体燃料の流れを乱して固体燃料が該固体燃料バーナ内で堆積することを防ぎ、また固体燃料バーナが保炎不良を引き起こさないようにするために、固体燃料バーナの出口部ではなく、周囲の燃焼用空気供給部に点火トーチとFDを設置している。
【0006】
しかし、固体燃料燃焼用ボイラで複数設置されたバーナの燃焼用空気の旋回方向が隣接するバーナによって異なることを考慮して、点火トーチとFDとの位置を決定するには至っていないのが現状であった。一般に、点火トーチとFDの設置位置は、ボイラ炉外側の床面やケーシングとの関係において、設置し易い箇所に決定していた。
【0007】
さらに、最近、燃料種の拡大に伴って、固体燃料を搬送する一次空気流量と周囲から供給する燃焼用空気流量の比率も変化するとともに、NOx低減のために燃焼用空気の旋回力を変化させること(多くの場合、旋回力が強くなってきている)が多くなった。
【0008】
このため、旋回を伴う燃焼用空気出口部に設置したFDの誤検知、すなわち点火トーチの火炎が空気旋回流によって下流側に曲げられ、上流側に設置したFDでは、火炎が形成されているにも係わらず、失火と判定することが多発して、ボイラ起動時のトラブルが生じて、スムーズなバーナの起動操作ができないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−249216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術では、燃焼用空気の旋回流によって点火トーチからの火炎が振られフレームディテクタによる火炎検知が困難になることが考慮されておらず、フレームディテクタの誤動作が生じて火炎があるにもかかわらず、失火信号が出てフレームディテクタによる確実な検知が出来ず、起動時のトラブルが多発するといった問題があった。
【0011】
本発明の課題は、従来技術で生ずるこれらの問題点を解決して、フレームディテクタの誤動作を生じない固体燃料バーナと該バーナを備えたボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、1つの中心軸まわりに径の異なる複数のノズルが多重に形成され、ボイラ火炉の壁面に設置される固体燃料バーナであって、中心軸部に液体燃料を用いる点火バーナ、前記点火バーナの外周側に搬送気体とともに固体燃料を噴出する燃料ノズル、前記燃料ノズルの外周側に燃焼用気体を噴出するとともに該燃焼用気体に前記中心軸周りの旋回を付与する旋回手段を有する燃焼用気体ノズルを順次配置し、前記燃焼用気体ノズルを通して前記ボイラ火炉の内部方向に伸びた、前記点火バーナから噴出した前記液体燃料に点火する点火トーチと、前記燃焼用気体ノズルを通して前記燃焼用気体の前記ボイラ火炉への噴出領域に検出端が設けられたボイラ火炉の内部方向の火炎を検出するフレームディテクタを備え、バーナ中心軸の延長方向の火炉側から見て点火トーチの設置位置からバーナ中心軸周りに15°〜60°の角度だけ燃焼用空気旋回流の下流側に前記フレームディテクタを配置したことを特徴とする固体燃料バーナである。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記点火トーチと前記フレームディテクタとを前記バーナ中心軸より上側に設置したことを特徴とする請求項1に記載の固体燃料バーナである。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の固体燃料バーナをボイラ火炉壁の上下方向に複数段、左右方向に複数列設置したボイラであって、隣接するバーナの燃焼用気体ノズルから火炉内に噴出する燃焼用空気の旋回方向が互いに反対方向となるように配置したことを特徴とするボイラである。
【0015】
(作用)
燃焼用空気供給部に点火トーチとフレームディテクタを設置した固体燃料バーナでは、点火トーチからの火炎は燃焼用空気の旋回流によって下流側に曲げられる。このため、この点火トーチの火炎を確実に検出するためには、フレームディテクタを点火トーチの燃焼用空気旋回方向の下流側に設置する必要がある。さらに、フレームディテクタの視野は約90°の拡がり角度を有し、設置スペースの大きさを考慮すると、確実にフレームディテクタが火炎を検知するためにはフレームディテクタの設置位置は、バーナ中心軸の延長方向の火炉側から見て点火トーチの設置位置からバーナ中心軸周りに15°〜60°の角度だけ燃焼用空気旋回流の下流側とすることが望ましい。
【0016】
フレームディテクタは、この他にバーナ中心部に設置した点火バーナからの火炎や固体燃料による火炎を検知する目的があり、ボイラの前後壁に設置されたバーナからの火炎は浮力および上昇流により上向きに曲がるため、フレームディテクタはバーナ中心軸を含む水平線より上側に設置することになる。
【0017】
また、前後壁に複数のバーナを有する固体燃料焚きボイラでは、隣接するバーナで燃焼用空気の旋回方向が異なることが一般的である。これは、ボイラ火炉内での固体燃料による火炎の偏流を防止するとともに、火炉内を有効に利用して灰中未燃分など未燃成分を減少させ、固体燃料の燃焼の高効率化を目的としているためである。
【0018】
このため、点火トーチとフレームディテクタの配置位置は、常にフレームディテクタが点火トーチの燃焼用空気旋回流の下流側になるようにするため、隣接するバーナ間で互いに逆方向に配置することとなる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜3記載の本発明によれば、固体燃料バーナの点火および失火の判定がより確実になるとともに、失火判定の頻度が減少するために、起動時間が大幅に低減でき、油燃料の使用量を削減できる。また、ボイラ起動時および昇温時に発生する一酸化炭素など未燃成分の発生を極力低減できる。
【0020】
また本発明によりフレームディテクタによる火炎検出が確実になるために、石炭粉砕機(ミル)の起動回数が減少して、動力低減にも繋がる。
さらに、本発明により、燃料の点消火の回数が減少するため、点火時の炉内圧変動によるボイラ水壁、後部伝面および後流側排煙処理装置に対するダメ−ジを低減するとともに、安全面からも点火不良による炉内爆発の危険性を防止できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明になる固体燃料バーナのフレームディテクタを頂点とした縦断面略図(図1(a))と火炉側から見た固体燃料バーナの正面図(図1(b))である。
【図2】本発明になる固体燃料バーナの点火トーチを頂点とした縦断面略図(図2(a))と火炉側から見た固体燃料バーナの正面図(図2(b))である。
【図3】本発明になる固体燃料バーナの火炎覗き窓を頂点とした縦断面略図(図3(a))と火炉側から見た固体燃料バーナの正面図(図3(b))である。
【図4】本発明になる火炉壁に複数の固体燃料バーナを設置した場合の火炉側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
なお、燃焼用気体として空気を用いる場合を例に記載しているが、燃焼排ガスと空気や酸素との混合気体でも良く、燃焼用気体の種類・組成は問わない。また、固体燃料であれば、その種類・組成を問わず、微粉炭以外のもの、例えば、褐炭やバイオマス、それらの混合物であっても良い。
【0023】
図1(a),図2(a)及び図3(a)に本発明になる固体燃料バーナの縦断面略図を示し、図1(b),図2(b)及び図3(b)には火炉側から見た固体燃料バーナの正面図を示す。なお、図1(a),(b)はフレームディテクタ6を頂点とした図を示し、図2(a),(b)は点火トーチ5を頂点とした図を示し、また図3(a),(b)には火炎覗き窓7を頂点とした図を示す。
【0024】
図1では固体燃料バーナの中心軸Cに油など液体燃料を燃料とする点火バーナ1、その周囲から一次空気によって搬送された固体燃料ノズル2、さらにその周囲から燃焼用空気を二分割して、二次空気ノズル3と三次空気ノズル4が設置されている。固体燃料ノズル2には濃縮器2−1およびベンチュリー2−2を設け、出口部外周部には保炎リング2−3が設置されている。三次空気ノズル4の出口部にはエアレジスタ4−1が設置され、バーナ出口部で燃焼用空気の旋回流が形成される。該三次空気4の出口部には点火トーチ5、フレームディテクタ6および火炎覗き窓7が設置されている。なお、点火トーチ5は点火トーチ挿入管5−1内に挿入されて、点火トーチ5の先端は三次空気ノズル4の火炉側出口に臨んでいる。また、フレームディテクタ6はフレームディテクタ挿入管6−1内に挿入されて、その先端は三次空気ノズル4の火炉側出口に臨んでいる。
【0025】
点火トーチ5は燃焼用気体ノズル(図1,図2及び図3に示す例では三次空気ノズル4)を通してボイラ火炉の内部にまで達する伸縮自在のロットの先端に設けられている。また、フレームディテクタ6は燃焼用気体ノズル(図1,図2及び図3に示す例では三次空気ノズル4)の出口まで伸びたロッドとその先端に検出端からなる。また、点火トーチ5は燃料の点火と点火の確認をした後は、焼損を避けるために燃焼用気体ノズルの内部に引き込むことができる構造になっている。
【0026】
ここで、点火トーチ5とフレームディテクタ6の配置位置の関係は、三次空気ノズル4の旋回方向(図1(b),図2(b)及び図3(b)では、火炉側から見て右旋回)に対してフレームディテクタ6が点火トーチ5の下流側に設置されている。さらにフレームディテクタ(FD)6の三次空気ノズル4の旋回方向下流側に火炎除き窓7が配置されている。
【0027】
また、バーナ中心軸の延長方向の火炉側から見てバーナ中心軸Cを基点として、該バーナ中心軸Cと点火トーチ5およびFD6をそれぞれ結ぶ直線のなす角度をαとすると、図1,図2及び図3ではα=30°である。表1にFD6の点火トーチ5からの火炎の検知結果を示す。
【表1】

表1に示す結果は、燃焼用空気の旋回強度(スワール数:Sw)をパラメータにとの角度を変化させた場合の試験結果である。この表で、○印は100回試験をして1回の誤検知も無し、△印は100回中1〜9回の誤検知、×印は100回中10回以上の誤検知を示す。
【0028】
この結果、点火トーチ5からの火炎をFD6によって確実に検知できる範囲として、α=15°〜60°に設置するのが望ましいことが分かった。また、各バーナの三次空気ノズル4内に形成される燃焼用空気旋回流の中で点火トーチ5とFD6の下流側に火炎覗き窓7を設置し、該火炎覗き窓7の設置位置が、火炉内から見てバーナ中心軸Cを基点として、該バーナ中心軸CとFD6及び火炎覗き窓7をそれぞれ結ぶ直線のなす角度をεとすると、εを30°〜90°とすることで確実に点火トーチ5からの火炎を目視観察することができるという効果がある。
【0029】
前述のように、FD6は点火トーチ5からの火炎ばかりでなく、バーナ中心部に設置した点火バーナ1からの火炎や固体燃料火炎を検知する目的も有しており、ボイラ火炉壁に設置された横向きの固体燃料バーナでは、これらの火炎は浮力および上昇流により上向きに曲がるため、FD6はバーナ中心を含む水平線より上側に設置することが望ましい。
なお、本実施例は、微粉炭バーナばかりでなく、燃焼用空気を旋回させる他の燃料を用いるバーナにも適用できる。
【0030】
図4に火炉壁に複数の固体燃料バーナを設置した場合の本発明になる実施例を示す。この図は、火炉壁面に2段4列に配列された固体燃料バーナを火炉内部から見た図を示す。ただし、バーナの設置位置は、U−1が上段1列目バーナ、U−2が上段2列目バーナ、U−3が上段3列目バーナ、U−4が上段4列目バーナ、また、L−1が下段1列目バーナ、L−2が下段2列目バーナ、L−3が下段3列目バーナ、L−4が下段4列目バーナとなる。
【0031】
図4からも明らかなように、下段1列目のバーナL−1では、燃焼用空気が左旋回のため、下段2列目のバーナL−2は右旋回、下段3列目のバーナL−3は左旋回、下段4列目のバーナL−4は右旋回となる。さらに、上段1列目のバーナU−1は、下段1列目L−1が左旋回のために右旋回となる。このように火炉壁面の左右上下で隣接するバーナの旋回方向は互いに逆向きに設定する。
【0032】
この燃焼用空気の旋回方向に伴って、常にFD6が点火トーチ5に対して燃焼用空気の旋回方向の下流側に配置されている。このため隣接するバーナでは点火トーチ5とFD6との配置位置が互いに逆になり、バーナ毎に交互配置となる。このように、点火トーチ5とFD6を配置することにより、個々の固体燃料バーナで火炎検知が確実に実施され、起動操作がスム−ズに実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 点火バーナ 2 固体燃料ノズル
2−1 濃縮器 2−2 ベンチュリー
2−3 保炎リング 3 二次空気ノズル
4 三次空気ノズル 4−1 エアレジスタ
5 点火トーチ 5−1 点火トーチ挿入管
6 フレームディテクタ 6−1 フレームディテクタ挿入管
7 火炎覗き窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの中心軸まわりに径の異なる複数のノズルが多重に形成され、ボイラ火炉の壁面に設置される固体燃料バーナであって、
中心軸部に液体燃料を用いる点火バーナ、前記点火バーナの外周側に搬送気体とともに固体燃料を噴出する燃料ノズル、前記燃料ノズルの外周側に燃焼用気体を噴出するとともに該燃焼用気体に前記中心軸周りの旋回を付与する旋回手段を有する燃焼用気体ノズルを順次配置し、
前記燃焼用気体ノズルを通して前記ボイラ火炉の内部方向に伸びた、前記点火バーナから噴出した前記液体燃料に点火する点火トーチと、
前記燃焼用気体ノズルを通して前記燃焼用気体の前記ボイラ火炉への噴出領域に検出端が設けられたボイラ火炉の内部方向の火炎を検出するフレームディテクタを備え、
バーナ中心軸の延長方向の火炉側から見て点火トーチの設置位置からバーナ中心軸周りに15°〜60°の角度だけ燃焼用空気旋回流の下流側に前記フレームディテクタを配置したことを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項2】
前記点火トーチと前記フレームディテクタとを前記バーナ中心軸より上側に設置したことを特徴とする請求項1に記載の固体燃料バーナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固体燃料バーナをボイラ火炉壁の上下方向に複数段、左右方向に複数列設置したボイラであって、
隣接するバーナの燃焼用気体ノズルから火炉内に噴出する燃焼用空気の旋回方向が互いに反対方向となるように配置したことを特徴とするボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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