固体粒子の処理装置
【課題】本発明は、固体粒子の表面平滑化処理または球状化処理する上記従来の処理装置に対し、表面平滑度または球状度の高い固体粒子を形成可能な新規な固体粒子の処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明に係わる固体粒子の処理装置は、固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置であって、前記固体粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記固体粒子を含む粒子群を収納可能な処理室を有する処理槽と、前記処理室の底面より上方に開口する供給口を備え前記処理室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口から処理流体を供給する供給管と、前記処理室に開口する排出口を備え処理流体を排出する排出管とを有する固体粒子の処理装置である。
【解決手段】本発明に係わる固体粒子の処理装置は、固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置であって、前記固体粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記固体粒子を含む粒子群を収納可能な処理室を有する処理槽と、前記処理室の底面より上方に開口する供給口を備え前記処理室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口から処理流体を供給する供給管と、前記処理室に開口する排出口を備え処理流体を排出する排出管とを有する固体粒子の処理装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体粒子の凝結防止、分散性や流動性の改善、寸法精度の向上などを目的とし、表面に角部や突起を有する固体粒子の当該表面を平滑化し、そのような不定形の固体粒子を球状化するため、ミキサー、ボールミル或はジェットミルなどのいわゆる攪拌型処理装置に多量の固体粒子を投入し、攪拌に伴い生じる摩擦力や圧縮力を固体粒子に付与することで平滑化処理または球状化処理が行われてきた。
【0003】
かかる固体粒子の表面の平滑化処理に係わる技術の一例が下記特許文献1に開示されている。特許文献1の平滑化技術は、粒径が小さくても、感光性ペーストに使用した場合に、そのペーストの粘度を低くするとともに塗膜状態、感度およびライン性を良好にすることができる電子部品に使用する導電性ペースト用の銀粉の製造方法であって、「湿式還元法により製造した銀粉に、粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施した後、分級により銀の凝集体を除去することを特徴とする銀粉の製造方法」である。
【0004】
また、下記特許文献2には平滑化技術の他の例が開示されている。特許文献2の平滑化技術は、金属や樹脂等の固体粒子を球状化する処理装置であって、「衝撃室内に、衝撃ピンを周設した回転盤を配置すると共に、該衝撃ピンの最外周軌道面に沿い、かつそれに対して一定の空間を置いて衝突リングを配置した粉体処理装置において、前記衝撃室内の回転盤の前面に処理すべき粉体の循環空間を設け、該循環空間が、衝撃ピンの回転軸方向の幅をxとし、該衝撃ピンが設けられた側の回転盤の側面と、該回転盤の側面に対向する衝撃室内壁との間に形成される衝撃室の幅をyとしたとき、その比x/yが0.2〜0.8となるように構成したことを特徴とする」処理装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−186798号公報
【特許文献2】特開平6−55053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および2の処理装置によれば、表面が平滑化され又は球状化された固体粒子を一定の能率で得ることができるが、表面平滑化および球状化の精度および能率は工業生産上未だ不十分であった。
【0007】
本発明は、固体粒子の表面平滑化処理または球状化処理する上記従来の処理装置に対し、表面平滑度または球状度の高い固体粒子を形成可能な新規な固体粒子の処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明に係わる固体粒子の処理装置は、固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置であって、前記固体粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記固体粒子を含む粒子群を収納可能な処理室を有する処理槽と、前記処理室の底面より上方に開口する供給口を備え前記処理室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口から処理流体を供給する供給管と、前記処理室に開口する排出口を備え処理流体を排出する排出管とを有する固体粒子の処理装置である。
【0009】
かかる処理装置は、次のような作用を奏する。すなわち、供給管の供給口から供給された処理流体は、処理室の周壁面に沿い旋回しつつその底面側に向い流下し、処理室を満たしオーバーフローした処理流体は、処理室に開口する排出口を通じ排出管から排出され、処理室には連続的に処理流体が供給される。このように本処理装置においては、処理室に処理流体を連続的に供給するので、極めて能率的に固体粒子の平滑化処理または球状化処理を行うことができる。
【0010】
処理室の底面に達した旋回流動する処理流体は、処理室に収納された粒子群を処理室の底面および底面近傍の周壁面に接触させつつ旋回運動させる。その底面や周壁面に接触した固体粒子は、底面上を旋回流動する処理流体により分散することなく密集した状態で攪拌されながら、底面上を転動しつつ旋回運動する。この密集状態下における固体粒子の攪拌および転動により、固体粒子同士がその外表面を強擦しあい固体粒子の表面の角部や凸部が平滑化され、不定形の固体粒子が球状化される。これにより極めて表面の平滑度が高く、球状度の高い固体粒子を得ることができる。この処理装置の好ましい態様およびその作用については以下詳細に説明する。
【発明の効果】
【0011】
上記説明のとおり、本願発明に係る固体粒子の処理装置によれば、表面の平滑度または球状度の高い固体粒子を形成可能な新規な固体粒子の処理装置を提供するという本発明の目的を達成することができる。なお、本願発明の処理装置で平滑化処理または球状化処理される固体粒子は特に限定されるものではないが、下記実施態様で詳細に説明するように、当該処理装置で表面に凹凸を有する半田球や半田被覆金属球を処理すれば極めて表面が平滑で真球度の高い金属球を得ることが可能である。もって、本願発明に係わる処理装置は、電子部材の接続部材として用いられる金属球、特に半導体パッケージなどでフリップチップ接続用に用いられる金属球の表面平滑化処理装置または球状化処理装置として適用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる第1実施態様の固体粒子の処理装置の概略構成を示す正面断面図である。
【図2】図1の処理装置の平面図及びその好ましい態様の処理装置の構成図である。
【図3】図1の処理装置の好ましい態様の処理装置の正面断面図である。
【図4】図1の処理装置の別の好ましい態様の処理装置の部分拡大図である。
【図5】本発明に係わる第2実施態様の固体粒子の処理装置の斜視図である。
【図6】第2実施態様の処理装置の他の例の概略構成を示す正面断面図である。
【図7】本発明に係わる第3実施態様の固体粒子の処理装置の斜視図である。
【図8】本発明に係わる第4実施態様の固体粒子の処理装置の正面断面図および平面図である。
【図9】図8の処理装置の動作を説明する図である。
【図10】第4実施態様の固体粒子の処理装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図11】本発明に係わる第5実施態様の固体粒子の処理装置の概略構成を示す図である。
【図12】固体粒子の表面が平滑化処理、または球状化処理されている状態を説明する図である。
【図13】図1の処理装置の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る固体粒子の処理装置(以下単に処理装置と言う。)をその第1〜第5実施態様に基づき図面を参照しつつ説明する。下記の実施態様では、図13(d)に示すように、Cuを主体とした球形のコアボールの表面にSnを主体とした半田メッキ層を被覆した半田被覆Cuコアボール(以下単にボールと言う。)を固体粒子とし、その表面を平滑化処理し、さらに球状化処理する処理装置を例として説明するが、本発明はこれに限定されることなく例えばセラミックス、樹脂、金属その他の素材で構成された固体粒子の表面を平滑化処理し、または球状化処理する場合に適用することができる。さらに、下記で説明する処理装置の各構成要素は、本願発明の目的を逸脱しない限りにおいて単独に又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0014】
[第1実施態様]
第1態様の処理装置の概略構成を示す正面図である図1及び図1の密閉蓋1Lを取り外した状態の平面図である図2(a)に示すように、処理装置1は、本体部1a、処理油供給管1e及び処理油排出管1cを介して本体部1aに接続された処理油循環手段1bを基本的な構成として備え、さらに望ましい構成としてボール供給手段1g、加振手段1iおよび磁力発生手段1sを備えている。
【0015】
本体部1aにおいて、符号1jは、円形状の底面1pとその底面1pに向い縮径した円錐台形状の周壁面1qを有する処理室1mが形成されたステンレス製の処理槽である。処理槽1jは、上部が開口した碗型の容器1kと、上部開口を閉塞するように容器1kの上面に密着された密閉蓋1Lとを有している。この容器1kと密閉蓋1Lとで形成される空間が処理室1mを構成し、多数のボール91を含むボール群(粒子群)9が処理室1mに収納される。上記処理槽1jを構成する素材は固体粒子の特性や処理条件などを考慮し適切な強度や耐摩耗性を持つ金属やセラミックスなどを適宜選択すればよく、例えば固体粒子が比較的軟質な樹脂である場合には処理槽1jを樹脂で構成してもよい。
【0016】
処理油供給管1eは、処理室1mの周壁面1qの接線方向にその軸心が沿い、処理室1mの上部に処理油供給口1fが開口するように処理槽1jにその一端が水平に接続され、処理油排出管1cは、密閉蓋1Lの中央部において処理室1mの軸芯と同軸に処理油排出口1dが処理室1mに開口するように処理槽1jにその一端が接続され、それぞれの他端は処理油循環手段1bに接続されている。処理流体である処理油Lを連続的に循環させる処理油循環手段1bは、図示しない処理油貯蔵タンク、処理油循環用ポンプ、処理油浄化用フィルタ及び流量制御弁等で構成されており、処理油循環手段1bから送り出された処理油Lは、処理油供給管1eを流通して処理油供給口1fから処理室1mに供給され、図1、2(a)において破線aで示すように処理室1mの周壁面1qに沿い旋回流下する。また、処理油循環手段1bの処理油循環用ポンプや流量制御弁を調整して処理室1mに供給される処理油Lの流速や流量を経時的に変化させることができる。なお、本態様の処理装置では、ボール91の酸化防止を目的とし処理流体として液体である油分を主体とした処理油Lを用いているが、処理する固体粒子の特性や処理条件により処理流体としてはアルコール、アセトン、エタノールその他有機溶媒もしくは水などの液体、又は空気、酸素その他酸化性気体、水素、二酸化炭素その他還元性気体もしくはアルゴン、ヘリウムその他不活性気体などの気体を用いても構わない。
【0017】
処理油循環手段1bは、処理油供給管1eを通じ処理油Lを供給するだけではなく、処理油排出管1cを通じ処理室1mから処理油Lを吸引可能なよう構成してもよい。さらに、処理油供給管を複数本設けてもよい。この場合、処理室の周壁面の同一円周上に例えば一定の角度ピッチで複数の処理油供給口が開口するよう処理油供給管を配置してもよいし、図2(c)に示す処理装置22のように、旋回流下する処理油Lの螺旋状の流れaに沿い複数の処理油供給口22fが開口するよう処理油供給管22eを配置してもよい。以上の構成により処理油Lは、図1に示すように、下方に傾斜した周壁面1qに沿い旋回流動しつつ螺旋状に流下し、処理室1mの底面1pに達し、その後図において破線bで示すように上昇流となり処理油排出口1dを通じて処理油排出管1cから排出され処理油循環手段1bに戻る。そして、ボール群9は、処理室1mを旋回流動する処理油Lにより、図において符号Cで示すように外周端から半径方向に所定の範囲の中で底面1pおよび底面1pの近傍の周壁面1qと接触しつつ旋回運動し、これによりボール91は底面1pの上を密集した状態で攪拌されながら転動する。
【0018】
なお、ボール91は、密閉蓋1Lを開閉し処理室1mに都度供給してもよいが、図1に示すように処理油供給管1eで構成される供給系の中に所定数のボール91を切り出す供給手段1gを設け、処理油供給管1eの管路を通じボール91を処理油Lとともに処理室1mに供給してもよい。この供給手段1gの具体的な構成は、第4態様の処理装置において詳細に説明する。
【0019】
さらに、ボール91の転動を助長することによりボール91同士の外周面をより摺り合わせるため、処理室1mの底面1pを一定の粗面としておけば、ボール91の表面の平滑度、球状度がさらに高まるので望ましい。また、図2(b)に示すように、処理室1mの底面1pの上におけるボール91の旋回運動を安定化させるためには、処理油Lの旋回方向に沿い形成されボール91を案内する円環状の案内溝4yが底面1pに形成されていることが望ましい。
【0020】
図1において符号1iは、容器1kの底面側に配置された加振手段である。本発明に係わる処理装置の好ましい態様として組み込まれた加振手段1iは具体的には所定の周波数で容器1kに振動を付与する振動手段であり、この振動によりボール91同士の付着や底面1pとボール91の付着を予防するとともに付着したボール91を分離し、ボール91の凝集を防止する。
【0021】
符号1sは、処理槽1jの下方に配置された磁力発生手段である。磁力発生手段1sは、ボール91が磁性を有する場合に有効な構成要素であり、ボール91を磁力で下方に引き寄せ、処理室1mの底面1pに接触させつつ旋回運動させるように構成されている。なお、磁力発生手段1sは、処理槽1jの下方外周に設けてもよい。さらに、旋回領域Cの中にボール群9を留めてボール91が分散することを防止するためには、磁力発生手段1sは、当該旋回範囲Cに対応する大きさの略円環形状の永久磁石などで構成することが好ましい。
【0022】
上記処理装置1の動作を説明する。まず、準備工程である。準備工程では、密閉蓋1Lを開けて所定数のボール91を処理室1mの底面1pに載置し、処理油Lを処理油循環手段1bの処理油貯蔵タンクに格納する。ボール群9を構成する粒子はボール91に限定されず、例えばボール群9の攪拌を促進するためのメディアとして、例えば半田や鋼を主体としたボールである金属メディア、樹脂やセラミックス等を主体としたボールである非金属メディアを適量加えてもよい。
【0023】
密閉蓋1Lを閉じて処理室1mを密閉空間にした後、処理装置1を作動させる。処理装置1は、処理油循環手段1bを作動させて処理油供給管1eを通じて処理室1mへ所定の流量で処理油Lを供給する。処理室1mが処理油Lで満たされると、処理油Lは、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾きに沿い底面1pに向い螺旋状に流下する旋回流aとなる。なお、処理油Lの供給の初期段階では処理油Lの流れが不安定であるため、不安定な処理油Lの流れに乗り処理室1mの外にボール91が流出する場合がある。このボール91の流出を防止するためには、準備工程において処理室1mに予め処理油Lを満たしておき、その後処理室1mに処理油Lを供給するようにすれば好ましい。また、処理油Lの供給の初期段階では処理油Lの流量を小さくしておき、徐々に所定の流量に増加するようにすれば好ましい。
【0024】
下方に向い縮径する円錐台形状をなす処理室1mの周壁面1qに沿い処理室1mを旋回流下する処理油Lは底面1pに近づくに従い旋回速度が増加し、底面1pに達する。底面1pに達した処理油Lの旋回流aは、底面1pに達したボール群9を当該底面1pおよび底面1pの近傍の周壁面1qに押し付けつつ旋回運動させる。処理室1mの底面1pに接触しつつ旋回運動するボール91は密集した状態で攪拌されつつ底面1pの上を転動する。
【0025】
ここで、図13に示すメッキ層に凸部を有するボールの概念図である図12(a)に示すように、処理装置1に投入されたボール91には表面に凸部が多数存在する金平糖状のボールである。処理装置1に投入された多数のボール91は、上記のように密集した状態で攪拌されながら底面1pの上を転動することにより、ボール91同士がその外周面を強擦しあい、その結果生じる摩擦力や圧縮力により固体粒子の表面の角部や凸部が平滑化される。さらに、多数のボール91の攪拌によりその外表面が均一に強擦され不定形の固体粒子が球状化される。
【0026】
図1に示すように、処理室1mの底面1pに達した処理油Lは、底面1pの中央部で上昇流bとなり処理油排出口1dを通じて処理油排出管1cから排出され処理油循環手段1bに戻り、処理油Lが連続して処理室1mに供給される。なお、処理室1mが処理油Lで満たされた後に、処理油排出管1cを通じて処理油Lを吸引するようにすれば、処理油Lの旋回流がより整流化され、ボール91の旋回運動が安定するので望ましい。
【0027】
図1に示すボール供給手段1gを用いてボール91を処理室1mに供給した場合には、ボール91は旋回流動する処理油Lにより旋回運動し、遠心力で周壁面1qに押し付けられつつ下降し、処理室1mの底面1pへ下降し、そこで安定した旋回運動を継続する。
【0028】
上記の状態で所定時間ボール91を処理することで、表面が平滑化され、球形に近いボールが形成される。なお、処理油循環手段1bの処理油循環用ポンプや流量調整弁を適宜調整し、処理中に供給される処理油Lの流量や流速を経時的に変化させたり、容器1kを介して加振手段1iでボール群91に振動を付与すれば、ボール91をより攪拌させる点から有利である。
【0029】
上記処理装置1の更に好ましい態様の処理装置について図3及び4を参照して説明する。なお、図3及び4において、上記処理装置1と同一の構成要素については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0030】
図3に示す処理装置5は、密閉蓋1Lの中央部を貫通し処理室1mの中に突き出た状態となるよう処理油排出管5cを配置し、処理油排出口5dを軸芯方向において処理室1mの中間部、具体的には処理油排出口5dを処理油供給口1fよりも下方に位置させ、更に処理油排出管5cを矢印dで示すように軸心方向に沿い移動できるようにした態様である。かかる処理装置5によれば、処理油排出口5dは処理室1mの底面1pに近接しているので、処理油Lの上昇流bは底面1pの近くで排出され旋回流aと分離されるので、上昇流bが旋回流aに与える影響が抑制され、底面1pにおけるボール91の旋回運動を安定させ、ボール91の密集状態を維持できるので有利である。更に、処理油Lの供給の初期段階において処理室1mの旋回流aが安定するまでは処理油排出管5cの密閉蓋1Lからの突出長さを短くしておき、旋回流が安定した後に処理油排出管5cを下方に移動させて密閉蓋1Lからの突出長さを長くし所定位置に位置決めすることで、処理室1mの外へのボール91の流出を防止できる。なお、後述する第2〜第4態様の処理装置のように、処理室を旋回流動する処理油を整流化する構成や処理室へボールを供給する構成を備えた処理装置の場合には、処理油排出管5cは上下方向に移動せず、図示のごとく底面1pの上方近傍に処理油排出口5dが配置されるよう密閉蓋1Lに固定されていてもよい。
【0031】
図4(a)に示す処理装置は、半径方向において中心部が周縁部に対し高くなるよう円錐形状に底面6pを処理室1mに形成した態様である。かかる態様の処理装置によれば、ボール群9は、底面6pの高さの低い周縁部で安定して旋回運動することとなり、底面6pにおけるボールの密集状態を安定させることができる。同図(b)に示すように、半径方向において中央部が周縁部に対し高くなるよう円柱状の突起7yを有する底面7pを処理室1mに形成しても同様な作用効果を奏することができるが、この場合には処理油Lの流動を阻害しなよう突起7yの上部周縁にテーパ面を形成しておくことが望ましい。なお、図4において符号6n、7nで示すように容器1kと別体の円板状部材を処理室1mの底部に配置し、円板状部材6n、7nの上面が処理室1mの底面6p、7pとなるよう構成してもよい。かかる構成によれば、処理装置の中で最も損耗の激しい処理室の底面について円板状部材6n、7nを交換するだけでメンテナンスが可能となり、処理装置の管理が容易となる。また、例えばセラミックスや金属などの硬度が高く耐摩耗性のある素材で円板状部材を形成することで、処理室の底面の損耗を防止できるとともに処理の効率を向上することが可能となる。
【0032】
[第2実施態様]
以下第2態様の処理装置について図5および6に基づき説明する。なお、図5および6において、上記第1態様の処理装置1およびその好ましい態様の処理装置5等と同一の構成要素については同一符号を付しており、詳細な説明を省略する(以下第3〜第5態様の処理装置について同じ。)
【0033】
図5(a)に示すように、第2態様の処理装置8は、第1態様と同様に形成された処理室1mの中に案内手段8vを有する点で第1態様の処理装置1と相違している。図5(a)の案内手段8vは、処理油供給口1fを通じ供給された処理油Lを処理室1mの底面1pに向い案内するように構成されている。すなわち、案内手段8vは、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ底面1pに向い流下する処理油Lの流線aに沿った方向に伸びる螺旋が形成されたステンレス製の案内板8wである。上部8xが処理油供給口1fの下方に、下部8yが処理室1kの底面1pと所定の間隙を介し配置された案内板8wは、密閉蓋1Lを縦方向に貫通する処理油排出管5cを中央に取り巻きつつその外周面が周壁面1qに密接している。なお、処理油Lを円滑に処理室1mから排出するためには、案内手段8xの下端は、処理油排出口より上方にあることが好ましい。
【0034】
かかる案内板8wによれば、処理油供給口1fから供給された処理油Lは、案内板8w、処理油排出管5cの外周面および処理室1mの周壁面1qにより区画された螺旋状の流通通路8zの中を破線aで示すように上方から下方に向けて流動し、処理室1mの底面1pに案内される。ここで、案内板8wは、処理油供給口1fから供給され旋回流下する処理油Lの流線aに沿って螺旋が形成されており、かつ、流通通路8zは一本の通路となるよう形成されているので、処理油供給口1fから供給される処理油Lや流動する処理油Lの相互の干渉により旋回流下する処理油Lに乱流を生じせしめることなく、整流化された処理油Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図において符号b2で示すように、処理油排出管5cから排出されるため上昇流として処理油排出口に向う処理油Lの流れbの一部が処理油排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内板8wの下部8yで遮られるので、旋回流下する処理油Lの流れaを乱すことがない。その結果、底面1pにおけるボール群の旋回運動が安定し、密集状態を維持することができる。
【0035】
なお、処理装置8の変形例である図5(b)に示す処理装置16のように、処理油Lが周壁面1qを旋回する態様により、案内板16wは、処理油排出管5cの外周面との間に一定の間隙16zが形成されるよう構成し、処理室1mに配置してもよい。
【0036】
図6に示す処理装置10は第2態様の処理装置の他の例であり、案内手段10vとして案内体10wを有している。底面10zを有する略円錐台形状のステンレス製の案内体10wは、底面1pに向い縮径した略円錐形状の処理室1mの周壁面1qに倣う外周面10xを有している。上部が密閉蓋1Lに接合された案内体10wは、密閉蓋1Lに固定され縦方向に伸びる処理油排出管5cを中央部に有し、当該処理油排出管5cを外周面10xが包囲している。そして、案内体10wは、水平方向においては、その外周面10xが一定寸法gの間隙10yを介し処理室1mの周壁面1qと対向するよう処理室1mの中に配置されている。また、縦方向においては、ボール群9が処理室1mの底面1pの上で旋回運動可能な領域を設けるため、案内体10wの底面10zが処理室1mの底面1pに対し所定の間隙を有するように配置されている。
【0037】
上記案内手段としての案内体10wを処理室1mの中央部に配置することにより、上記案内板8wと同様な作用を奏することができる。すなわち、処理油供給口1fから供給された処理油Lは、案内体10wの外周面10xと処理室1mの周壁面1qとで形成された間隙10yを破線aで示すように上方から下方に向けて旋回流下し、処理室1mの底面1pに案内される。旋回流下する処理油Lは、案内体10wの外周面10xと処理室1mの周壁面1qとで囲まれた比較的狭い間隙10yの中を流動するので、処理油供給口1fから供給される処理油Lや流動する処理油Lの相互の干渉により旋回流下する処理油Lに乱流を生じせしめることなく、整流化された処理油Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図示b2として示すように処理油Lは処理油排出管5cから排出されるため上昇流として処理油排出口5dに向う処理油Lの流れbの一部が処理油排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内体10wの底面10zで遮られるので、旋回流下する処理油Lの流れaを乱すことがない。なお、上記案内体10wと周壁面1qとの間隙10yに上記案内板8wを組み込んでもよい。
【0038】
[第3実施態様]
以下第3態様の処理装置及びその変形例について図7に基づき説明する。第3態様の処理装置は、第1態様と同様に形成された処理室1mの中に整流手段を有する点で第1態様の処理装置1と相違している。以下、整流手段の各種態様について説明する。
【0039】
図7(a)の整流手段17vは、処理油供給口1fから供給され、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ流下する処理油Lの流れを一定の方向に整えて整流するステンレス製の板状部材17wである。処理室1mの周壁面1qに沿い旋回流下する処理油Lの流線に沿った方向に伸びる螺旋が形成された板状部材17wは、その上部17xが処理油供給口1fの下方に、下部17yが処理室1mの底面1pと所定の間隙を介し、外周面が周壁面1qに密接するように配置されている。かかる板状部材17wによれば、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回するように処理油供給口1fから供給された処理油Lは、その旋回流下する流れが板状部材17wにより整流されつつ安定して維持され底面1pに至り、処理室1mの底面1pに接触しているボール群を当該底面1pに押し付けつつ旋回運動させる。
【0040】
なお、上記整流手段17vの変形例である図7(b)に示すように、間隙部18tを介しつつ複数のフィン状の板状部材18q、18r、18sを上記板状部材17wと同様に処理油Lの旋回流の流線沿い螺旋状に一列に配置して整流手段18vを構成してもよい。また、図7(c)に示すように、処理油Lの旋回流の流線に沿い螺旋状に一列に複数の板状部材19q〜19rを配置するとともに、板状部材19q〜19rの下方に、板状部材19q〜19r同士の間隙部19uを埋めるように板状部材19s〜19tを千鳥状に一列に配置することで2列の板状部材を有する整流手段19vを構成してもよい。
【0041】
[第4実施態様]
以下第4態様の処理装置及びその変形例について図8〜10に基づき説明する。第4態様の処理装置は、処理室にボール群を供給する供給手段と、そのボール群を回収する回収手段を有する点で第1態様の処理装置と相違している。以下供給手段および回収手段を中心に第4態様の処理装置を説明する。なお、供給手段と回収手段は各々単独に処理装置に組み込んでもよい。
【0042】
まず、供給手段について説明する。図8(a)に正面断面図、同図の容器1kから密閉蓋1Lを取り外した状態である平面図である同図(b)に示すように、本態様の供給手段11qは、処理室1mに供給すべき多数のボール92を収納する収納部11rと、各々の一端が収納部11rに接続され他端が処理槽1jに接続された処理油流入管11uおよびボール供給管11vとを有している。なお、図8(a)においてA−A線より上は、図8(b)に示す処理槽1jの中心線Eより上側を見たB矢視図、A−A線より下は中心線Eより下側を見たC矢視図である。
【0043】
収納部11rは、多数のボール92を収納可能な容器11sと、容器11sの上部開口を閉塞する蓋11tとで構成されており、蓋11tを開閉することによりボール92を容器11sに供給する。その収納部11rの側壁には、処理油流入管11uの一端がバルブ11wを介して接続されており、さらに処理油流入管11uの他端はその開口(処理油流入口)11yが処理室1mに開口するよう処理槽1jに接続されている。ここで、処理油流入管11uは、その軸心が、処理油供給管1eとほぼ同一線上、すなわち処理槽1jの上部であって処理室1mの周壁面1qの接線方向に沿い、その処理油流入口11yが旋回する処理油の流れaを迎え入れるように配置されている。これにより、平面視において処理室1mの中心線Fを介し処理油流入口11yと処理油供給口1fとは相対する状態となるので、図示破線aで示すように処理油供給口1fから周壁面1qに沿い旋回するように供給された処理油は、処理油流入口11yを通じ処理油流入管11uに流入する。
【0044】
収納部11rの底部には、ボール供給管11vの一端が接続されており、ボール供給管11vの他端はその開口(ボール供給口)11zが処理室1mの底部に開口するよう処理槽1jに接続されている。ここで、ボール供給管11vは、図8(b)に示すように、平面視において処理室1mの中心線Eを介し処理油流入管11uと反対の位置に、その軸心が処理室1mの接線方向に沿い、そのボール供給口11zが旋回する処理油の流れaに沿うように配置されている。これにより、処理油供給口1fから供給され周壁面1qに沿い流下し底面1pの上を旋回流動する処理油の流れaに円滑に乗るようにボール92を供給することができる。なお、図において符号11xは、供給すべきボール92を収納部11rの中に保持するための仕切り弁である。この仕切り弁11xは、ボール92を自動的に処理室1mへ供給するために設けられた好適な構成であり、手動でボールを供給する場合には必ずしも必要ではない。
【0045】
次に、平滑化または球状化処理後のボール91を含むボール群9の回収手段11aについて説明する。符号11nは、容器1kの下部に形成された円筒状部11Lの内面に摺動可能に嵌め合いされた円板状の摺動部材であり、その外周面には処理油の漏出を防止するため不図示のOリングが設けられている。そして、円筒状部11Lの内面には、処理層が形成されたボールを含むボール群を回収するボール回収管11bの一端の開口(ボール回収口)11cが開口しており、ボール回収管11bの他端は回収容器11eに接続されている。なお、図8(b)に示すように、ボール回収管11bは、平面視において処理室1mの中心線Fを介し上記ボール供給管11vと反対の位置に、その軸心が処理室1mの接線方向に沿い、そのボール回収口11cが旋回する処理油の流れaを迎え入れるように配置されている。
【0046】
ここで、摺動部材11nは、エアシリンダー等の上下駆動部11dにより符号hで示す上下方向に円筒状部11Lの中を移動し、上昇端の位置において処理室1mの周壁面1qの下端縁にその上面11p(処理室1mの底面ともなる。)が接するとともに、その外周面でボール回収口11cを閉じ、下方端の位置においてボール回収口11cを開くように構成されている。なお、本態様の処理装置11では、摺動部材11nをバルブの弁のごとく用い、摺動部材11nを上下移動させることによりボール回収口11cを開閉させているが、例えば図1の処理装置1において処理室1mの底部にバルブを介して処理槽にボール回収管を接続するとともにボール回収口が処理室に直接開口するよう回収手段を構成し、バルブの開閉によりボールを回収するようにしてもよい。この場合には、処理室1mの底面1pを旋回するボール91の運動を妨げないよう、ボール回収口は、処理室1mの底面1pより上方に配置することが好ましい。
【0047】
上記供給手段11qおよび回収手段11aを含む処理装置11の動作について図9を参照しつつ説明する。図9(a)に示す収納部11rの蓋11tを開けて所定数のボール92を容器11sに供給し、その後蓋11tを閉じる。この時、バルブ11wおよび仕切り弁11xは閉じられた状態である。また、上下駆動部11dにより上昇された摺動部材11nは上昇端の位置にあり、ボール回収口11cは閉じられた状態となっている。
【0048】
次いで、処理装置11を作動させて処理油供給口1fから処理油Lを供給する。一定時間経過して処理室1mが処理油Lで満たされると、図9(a)に示すように、処理油Lは、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾斜に沿い底面11pに向い螺旋状に流下する安定した旋回流aとなる。
【0049】
処理油Lを供給し一定時間経過し処理室1mにおける処理油Lの流動状態が安定した後、処理装置11は、バルブ11wを開き、図9(b)において矢印eのように旋回流動する処理油Lの一部を処理油流入管11uから収納部11rに処理油流入口11yを通じて流入させるとともに、仕切り弁11xを開く。すると、収納部11rに収納されたボール92は、流入した処理油Lにより収納部11rから押出され、処理油Lとともにボール供給管11vの管路の中を流れ、矢印fのようにボール供給口11zから排出され処理室1mへ供給される。処理装置11は、全てのボール92が処理室1mへ供給された後、バルブ11wおよび仕切り弁11xを閉じる。ここで、ボール供給管11vは上記のとおり配置されているので、ボール供給口11zから処理室1mへ供給されたボール92は処理油Lの旋回流aに乗り、その後処理室1mの底面11pの上を円滑に旋回運動し、平滑化または球状化処理されることとなる。このように、処理油Lを処理室1mに供給してから一定時間経過し、処理室における処理油の旋回流動が安定化した後にボール92を処理室1mへ供給するので、処理室1mからボール91が流出することが少なく、高い歩留まりでボール91を処理することが可能となる。
【0050】
なお、手動でボール92を供給する場合には、ボール供給管11vの経路の中に仕切り弁11xを設けず、処理油Lの流動状態が安定化した後、バルブ11wを開き、処理油流入管11u、収納部11rおよびボール供給管11vの経路で処理油Lを流通させた後に、収納部11rに所定数のボール92を供給するようにすればよい。
【0051】
次いで、図9(c)に示すように、処理装置11が、上下駆動部11dにより摺動部材11nを下降端まで下降させボール回収口11cを開くと、処理が完了したボール群9はボール回収口11cを通じて矢印iで示すようにボール回収管11bに流れ込み、その後回収容器11eに回収される。なお、処理油排出管5cにバルブを設けておき、陰極11nの下降とともに当該バルブを絞るようにすれば、処理油Lの多くの部分はボール回収管11bを通じて排出されるので、より円滑にボール群9を回収することができる。
【0052】
図10に示す処理装置12は、第4態様の処理装置の他の例であり、処理油供給管1eの経路上に設けられた供給手段12qを有している。すなわち、供給手段12qの処理油流入管11uの一端は処理油供給管1eの上流側に接続され、ボール供給管11vの一端は処理油供給管1eの下流側に接続されており、それらの他端はバルブ11wおよび仕切り弁11xを介して収納部11rに接続される構成となっている。かかる供給手段12qによれば、処理室1mにおける処理油Lの流動状態が安定した後にバルブ11wおよび仕切り弁11xを開くと、処理油供給管1eを流れる処理油Lの一部が、処理油流入管11uを通じて収納部11rに流入する。すると、収納部11rに収納されているボール92は、流入した処理油Lにより押し出され、ボール供給管11vを通じて処理油供給管1eに流入し、処理油Lとともに処理油供給口1fから処理室1mに供給されることとなる。なお、供給手段12qにおいて処理油を円滑に流通させるためには、処理油流入管11uが接続される処理油供給管1eの上流側の内径を太くし、ボール供給管11vが接続される下流側の内径を上流側より細くすることが望ましい。さらに、供給手段12qの中に滞留することなくボール92を処理油供給管1eへ流入させるためには、収納部11rの底面と処理油流入管11uおよびボール供給管11vとの底面との間には段差がないようにしておくことが好ましい。
【0053】
[第5実施態様]
以下第5態様の処理装置について図11を参照し説明する。なお、図11(a)は、第5態様の一例である処理装置の概略構成を示す正面断面図、同図(b)は同図(a)のD矢視図、図11(c)は、第5態様の処理装置の他の例の概略構成を示す正面断面図、同図(d)は同図(c)のE矢視図である。
【0054】
上記第1〜第4態様の処理装置では、ボールが接触しつつ周回可能な処理室の底面として円形状の底面と底面に向い縮径するように底面の周縁に立設した略円錐台形状の周壁面とを備えた処理室、断面円形状の処理室の接線方向に沿い処理油供給口が開口するよう軸心が水平に配置された処理油供給管、処理室の軸心に沿い配置された処理油排出管の各構成要素を有する処理装置について説明したが、本発明はこれら望ましい態様に限定されることなく、第5態様の処理装置でも実現することが可能である。
【0055】
第5態様の一例である処理装置13は、図11(b)に示すように、ボール91が周回可能な底面として略楕円形状の底面13pを有し、底面13pの周縁に立設する周壁面13qは縦方向において同一断面、すなわち直管状となるよう処理室13mは形成されている。さらに、処理室13mに処理油Lを供給する処理油供給管13eは、周壁面13qに沿い旋回流下する処理油Lの流れを生じさせるため、その軸心を下方に向けた状態で処理槽1jに接続されている。なお、周壁面13qに対する取付角度を自在に設定可能な継手などを介し処理油供給管13eを処理槽1jに接続するよう構成すれば、処理すべきボールの大きさや数量などに応じ処理油Lが旋回流下する角度を適宜設定できるので好ましい。また、処理室13mから処理油Lを排出する処理油排出管1cは、処理油Lの上昇流bを円滑に処理室13mから排出するためには第1態様の処理装置1と同様に密閉蓋1Lの中央部に設けられていることが好ましいが、処理油排出管の配置はこれに限定されることなく、図示破線で示す処理油排出管13cのように密閉蓋1Lの外周寄りに設け処理室13mからオーバーフローする処理油Lを排出させてもよい。
【0056】
上記処理装置13の動作を説明する。処理室13mの底面13pにボール群9を載置し、その後密閉蓋1Lを閉じて処理室13mを密閉空間にし、処理装置13を作動させる。処理装置13は、処理油供給管13eを通じて処理室13mへ処理油Lを供給する。処理室13mが処理油Lで満たされると、上記のように配置された処理油供給管13eから供給される処理油Lは、処理室13mの周壁面13qに沿い螺旋状に旋回流下する旋回流aとなる。旋回流下しつつ底面13pに達した処理油Lは、底面13pに接触しているボール群9を当該底面13pに押し付けつつ旋回運動させる。上記第1態様の処理装置1と同様に、処理室13mの底面13pに接触しつつ旋回運動するボール91は底面13pの上を転動するので、ボール91同士が付着しがたく凝集が防止される。
【0057】
図11(c)(d)に示す第5態様の他の例である処理装置20は、ボール91が周回可能な底面として円環状の底面20pと、底面20pの外周縁に沿い立設した外周壁面20qと、内周縁に沿い立設した内周壁面20xとを有する処理室20mを有し、処理室20mの断面は縦方向において同一となるよう処理室20mは形成されている。かかる処理装置20においても基本的に上記処理装置13と同様な動作でボール91には処理層が形成される。
【0058】
[実施例]
第1態様の処理装置1に、図13(a)に外観、同図(b)に断面を示す直径50μmのボールを50万個投入し、当該ボールの表面を平滑化処理、および球状化処理した。処理後のボールの外観を同図(c)に、断面を同図(d)に示すように、表面が平滑で、かつ真球度の優れたボールを得ることができた。
【符号の説明】
【0059】
1(5、8、10、11、12、13、16、17,18,19、20、21、22):処理装置
1a(5a):本体部
1j:処理槽
1m(13m、20m):処理室
1b:処理油循環手段
1c(5c、13c):処理油排出管
1e(13e、22e):処理油供給管
1g(11q、12q):供給手段
1h:直流電源回路
1i:加振手段
1s:磁気発生手段
8v(10v、16v):案内手段
8w(16w):案内板
10w:案内体
11a:回収手段
17v(18v、19v):整流手段
17w(18w、19w):板状部材
91:ボール
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体粒子の凝結防止、分散性や流動性の改善、寸法精度の向上などを目的とし、表面に角部や突起を有する固体粒子の当該表面を平滑化し、そのような不定形の固体粒子を球状化するため、ミキサー、ボールミル或はジェットミルなどのいわゆる攪拌型処理装置に多量の固体粒子を投入し、攪拌に伴い生じる摩擦力や圧縮力を固体粒子に付与することで平滑化処理または球状化処理が行われてきた。
【0003】
かかる固体粒子の表面の平滑化処理に係わる技術の一例が下記特許文献1に開示されている。特許文献1の平滑化技術は、粒径が小さくても、感光性ペーストに使用した場合に、そのペーストの粘度を低くするとともに塗膜状態、感度およびライン性を良好にすることができる電子部品に使用する導電性ペースト用の銀粉の製造方法であって、「湿式還元法により製造した銀粉に、粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施した後、分級により銀の凝集体を除去することを特徴とする銀粉の製造方法」である。
【0004】
また、下記特許文献2には平滑化技術の他の例が開示されている。特許文献2の平滑化技術は、金属や樹脂等の固体粒子を球状化する処理装置であって、「衝撃室内に、衝撃ピンを周設した回転盤を配置すると共に、該衝撃ピンの最外周軌道面に沿い、かつそれに対して一定の空間を置いて衝突リングを配置した粉体処理装置において、前記衝撃室内の回転盤の前面に処理すべき粉体の循環空間を設け、該循環空間が、衝撃ピンの回転軸方向の幅をxとし、該衝撃ピンが設けられた側の回転盤の側面と、該回転盤の側面に対向する衝撃室内壁との間に形成される衝撃室の幅をyとしたとき、その比x/yが0.2〜0.8となるように構成したことを特徴とする」処理装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−186798号公報
【特許文献2】特開平6−55053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および2の処理装置によれば、表面が平滑化され又は球状化された固体粒子を一定の能率で得ることができるが、表面平滑化および球状化の精度および能率は工業生産上未だ不十分であった。
【0007】
本発明は、固体粒子の表面平滑化処理または球状化処理する上記従来の処理装置に対し、表面平滑度または球状度の高い固体粒子を形成可能な新規な固体粒子の処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明に係わる固体粒子の処理装置は、固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置であって、前記固体粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記固体粒子を含む粒子群を収納可能な処理室を有する処理槽と、前記処理室の底面より上方に開口する供給口を備え前記処理室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口から処理流体を供給する供給管と、前記処理室に開口する排出口を備え処理流体を排出する排出管とを有する固体粒子の処理装置である。
【0009】
かかる処理装置は、次のような作用を奏する。すなわち、供給管の供給口から供給された処理流体は、処理室の周壁面に沿い旋回しつつその底面側に向い流下し、処理室を満たしオーバーフローした処理流体は、処理室に開口する排出口を通じ排出管から排出され、処理室には連続的に処理流体が供給される。このように本処理装置においては、処理室に処理流体を連続的に供給するので、極めて能率的に固体粒子の平滑化処理または球状化処理を行うことができる。
【0010】
処理室の底面に達した旋回流動する処理流体は、処理室に収納された粒子群を処理室の底面および底面近傍の周壁面に接触させつつ旋回運動させる。その底面や周壁面に接触した固体粒子は、底面上を旋回流動する処理流体により分散することなく密集した状態で攪拌されながら、底面上を転動しつつ旋回運動する。この密集状態下における固体粒子の攪拌および転動により、固体粒子同士がその外表面を強擦しあい固体粒子の表面の角部や凸部が平滑化され、不定形の固体粒子が球状化される。これにより極めて表面の平滑度が高く、球状度の高い固体粒子を得ることができる。この処理装置の好ましい態様およびその作用については以下詳細に説明する。
【発明の効果】
【0011】
上記説明のとおり、本願発明に係る固体粒子の処理装置によれば、表面の平滑度または球状度の高い固体粒子を形成可能な新規な固体粒子の処理装置を提供するという本発明の目的を達成することができる。なお、本願発明の処理装置で平滑化処理または球状化処理される固体粒子は特に限定されるものではないが、下記実施態様で詳細に説明するように、当該処理装置で表面に凹凸を有する半田球や半田被覆金属球を処理すれば極めて表面が平滑で真球度の高い金属球を得ることが可能である。もって、本願発明に係わる処理装置は、電子部材の接続部材として用いられる金属球、特に半導体パッケージなどでフリップチップ接続用に用いられる金属球の表面平滑化処理装置または球状化処理装置として適用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる第1実施態様の固体粒子の処理装置の概略構成を示す正面断面図である。
【図2】図1の処理装置の平面図及びその好ましい態様の処理装置の構成図である。
【図3】図1の処理装置の好ましい態様の処理装置の正面断面図である。
【図4】図1の処理装置の別の好ましい態様の処理装置の部分拡大図である。
【図5】本発明に係わる第2実施態様の固体粒子の処理装置の斜視図である。
【図6】第2実施態様の処理装置の他の例の概略構成を示す正面断面図である。
【図7】本発明に係わる第3実施態様の固体粒子の処理装置の斜視図である。
【図8】本発明に係わる第4実施態様の固体粒子の処理装置の正面断面図および平面図である。
【図9】図8の処理装置の動作を説明する図である。
【図10】第4実施態様の固体粒子の処理装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図11】本発明に係わる第5実施態様の固体粒子の処理装置の概略構成を示す図である。
【図12】固体粒子の表面が平滑化処理、または球状化処理されている状態を説明する図である。
【図13】図1の処理装置の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る固体粒子の処理装置(以下単に処理装置と言う。)をその第1〜第5実施態様に基づき図面を参照しつつ説明する。下記の実施態様では、図13(d)に示すように、Cuを主体とした球形のコアボールの表面にSnを主体とした半田メッキ層を被覆した半田被覆Cuコアボール(以下単にボールと言う。)を固体粒子とし、その表面を平滑化処理し、さらに球状化処理する処理装置を例として説明するが、本発明はこれに限定されることなく例えばセラミックス、樹脂、金属その他の素材で構成された固体粒子の表面を平滑化処理し、または球状化処理する場合に適用することができる。さらに、下記で説明する処理装置の各構成要素は、本願発明の目的を逸脱しない限りにおいて単独に又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0014】
[第1実施態様]
第1態様の処理装置の概略構成を示す正面図である図1及び図1の密閉蓋1Lを取り外した状態の平面図である図2(a)に示すように、処理装置1は、本体部1a、処理油供給管1e及び処理油排出管1cを介して本体部1aに接続された処理油循環手段1bを基本的な構成として備え、さらに望ましい構成としてボール供給手段1g、加振手段1iおよび磁力発生手段1sを備えている。
【0015】
本体部1aにおいて、符号1jは、円形状の底面1pとその底面1pに向い縮径した円錐台形状の周壁面1qを有する処理室1mが形成されたステンレス製の処理槽である。処理槽1jは、上部が開口した碗型の容器1kと、上部開口を閉塞するように容器1kの上面に密着された密閉蓋1Lとを有している。この容器1kと密閉蓋1Lとで形成される空間が処理室1mを構成し、多数のボール91を含むボール群(粒子群)9が処理室1mに収納される。上記処理槽1jを構成する素材は固体粒子の特性や処理条件などを考慮し適切な強度や耐摩耗性を持つ金属やセラミックスなどを適宜選択すればよく、例えば固体粒子が比較的軟質な樹脂である場合には処理槽1jを樹脂で構成してもよい。
【0016】
処理油供給管1eは、処理室1mの周壁面1qの接線方向にその軸心が沿い、処理室1mの上部に処理油供給口1fが開口するように処理槽1jにその一端が水平に接続され、処理油排出管1cは、密閉蓋1Lの中央部において処理室1mの軸芯と同軸に処理油排出口1dが処理室1mに開口するように処理槽1jにその一端が接続され、それぞれの他端は処理油循環手段1bに接続されている。処理流体である処理油Lを連続的に循環させる処理油循環手段1bは、図示しない処理油貯蔵タンク、処理油循環用ポンプ、処理油浄化用フィルタ及び流量制御弁等で構成されており、処理油循環手段1bから送り出された処理油Lは、処理油供給管1eを流通して処理油供給口1fから処理室1mに供給され、図1、2(a)において破線aで示すように処理室1mの周壁面1qに沿い旋回流下する。また、処理油循環手段1bの処理油循環用ポンプや流量制御弁を調整して処理室1mに供給される処理油Lの流速や流量を経時的に変化させることができる。なお、本態様の処理装置では、ボール91の酸化防止を目的とし処理流体として液体である油分を主体とした処理油Lを用いているが、処理する固体粒子の特性や処理条件により処理流体としてはアルコール、アセトン、エタノールその他有機溶媒もしくは水などの液体、又は空気、酸素その他酸化性気体、水素、二酸化炭素その他還元性気体もしくはアルゴン、ヘリウムその他不活性気体などの気体を用いても構わない。
【0017】
処理油循環手段1bは、処理油供給管1eを通じ処理油Lを供給するだけではなく、処理油排出管1cを通じ処理室1mから処理油Lを吸引可能なよう構成してもよい。さらに、処理油供給管を複数本設けてもよい。この場合、処理室の周壁面の同一円周上に例えば一定の角度ピッチで複数の処理油供給口が開口するよう処理油供給管を配置してもよいし、図2(c)に示す処理装置22のように、旋回流下する処理油Lの螺旋状の流れaに沿い複数の処理油供給口22fが開口するよう処理油供給管22eを配置してもよい。以上の構成により処理油Lは、図1に示すように、下方に傾斜した周壁面1qに沿い旋回流動しつつ螺旋状に流下し、処理室1mの底面1pに達し、その後図において破線bで示すように上昇流となり処理油排出口1dを通じて処理油排出管1cから排出され処理油循環手段1bに戻る。そして、ボール群9は、処理室1mを旋回流動する処理油Lにより、図において符号Cで示すように外周端から半径方向に所定の範囲の中で底面1pおよび底面1pの近傍の周壁面1qと接触しつつ旋回運動し、これによりボール91は底面1pの上を密集した状態で攪拌されながら転動する。
【0018】
なお、ボール91は、密閉蓋1Lを開閉し処理室1mに都度供給してもよいが、図1に示すように処理油供給管1eで構成される供給系の中に所定数のボール91を切り出す供給手段1gを設け、処理油供給管1eの管路を通じボール91を処理油Lとともに処理室1mに供給してもよい。この供給手段1gの具体的な構成は、第4態様の処理装置において詳細に説明する。
【0019】
さらに、ボール91の転動を助長することによりボール91同士の外周面をより摺り合わせるため、処理室1mの底面1pを一定の粗面としておけば、ボール91の表面の平滑度、球状度がさらに高まるので望ましい。また、図2(b)に示すように、処理室1mの底面1pの上におけるボール91の旋回運動を安定化させるためには、処理油Lの旋回方向に沿い形成されボール91を案内する円環状の案内溝4yが底面1pに形成されていることが望ましい。
【0020】
図1において符号1iは、容器1kの底面側に配置された加振手段である。本発明に係わる処理装置の好ましい態様として組み込まれた加振手段1iは具体的には所定の周波数で容器1kに振動を付与する振動手段であり、この振動によりボール91同士の付着や底面1pとボール91の付着を予防するとともに付着したボール91を分離し、ボール91の凝集を防止する。
【0021】
符号1sは、処理槽1jの下方に配置された磁力発生手段である。磁力発生手段1sは、ボール91が磁性を有する場合に有効な構成要素であり、ボール91を磁力で下方に引き寄せ、処理室1mの底面1pに接触させつつ旋回運動させるように構成されている。なお、磁力発生手段1sは、処理槽1jの下方外周に設けてもよい。さらに、旋回領域Cの中にボール群9を留めてボール91が分散することを防止するためには、磁力発生手段1sは、当該旋回範囲Cに対応する大きさの略円環形状の永久磁石などで構成することが好ましい。
【0022】
上記処理装置1の動作を説明する。まず、準備工程である。準備工程では、密閉蓋1Lを開けて所定数のボール91を処理室1mの底面1pに載置し、処理油Lを処理油循環手段1bの処理油貯蔵タンクに格納する。ボール群9を構成する粒子はボール91に限定されず、例えばボール群9の攪拌を促進するためのメディアとして、例えば半田や鋼を主体としたボールである金属メディア、樹脂やセラミックス等を主体としたボールである非金属メディアを適量加えてもよい。
【0023】
密閉蓋1Lを閉じて処理室1mを密閉空間にした後、処理装置1を作動させる。処理装置1は、処理油循環手段1bを作動させて処理油供給管1eを通じて処理室1mへ所定の流量で処理油Lを供給する。処理室1mが処理油Lで満たされると、処理油Lは、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾きに沿い底面1pに向い螺旋状に流下する旋回流aとなる。なお、処理油Lの供給の初期段階では処理油Lの流れが不安定であるため、不安定な処理油Lの流れに乗り処理室1mの外にボール91が流出する場合がある。このボール91の流出を防止するためには、準備工程において処理室1mに予め処理油Lを満たしておき、その後処理室1mに処理油Lを供給するようにすれば好ましい。また、処理油Lの供給の初期段階では処理油Lの流量を小さくしておき、徐々に所定の流量に増加するようにすれば好ましい。
【0024】
下方に向い縮径する円錐台形状をなす処理室1mの周壁面1qに沿い処理室1mを旋回流下する処理油Lは底面1pに近づくに従い旋回速度が増加し、底面1pに達する。底面1pに達した処理油Lの旋回流aは、底面1pに達したボール群9を当該底面1pおよび底面1pの近傍の周壁面1qに押し付けつつ旋回運動させる。処理室1mの底面1pに接触しつつ旋回運動するボール91は密集した状態で攪拌されつつ底面1pの上を転動する。
【0025】
ここで、図13に示すメッキ層に凸部を有するボールの概念図である図12(a)に示すように、処理装置1に投入されたボール91には表面に凸部が多数存在する金平糖状のボールである。処理装置1に投入された多数のボール91は、上記のように密集した状態で攪拌されながら底面1pの上を転動することにより、ボール91同士がその外周面を強擦しあい、その結果生じる摩擦力や圧縮力により固体粒子の表面の角部や凸部が平滑化される。さらに、多数のボール91の攪拌によりその外表面が均一に強擦され不定形の固体粒子が球状化される。
【0026】
図1に示すように、処理室1mの底面1pに達した処理油Lは、底面1pの中央部で上昇流bとなり処理油排出口1dを通じて処理油排出管1cから排出され処理油循環手段1bに戻り、処理油Lが連続して処理室1mに供給される。なお、処理室1mが処理油Lで満たされた後に、処理油排出管1cを通じて処理油Lを吸引するようにすれば、処理油Lの旋回流がより整流化され、ボール91の旋回運動が安定するので望ましい。
【0027】
図1に示すボール供給手段1gを用いてボール91を処理室1mに供給した場合には、ボール91は旋回流動する処理油Lにより旋回運動し、遠心力で周壁面1qに押し付けられつつ下降し、処理室1mの底面1pへ下降し、そこで安定した旋回運動を継続する。
【0028】
上記の状態で所定時間ボール91を処理することで、表面が平滑化され、球形に近いボールが形成される。なお、処理油循環手段1bの処理油循環用ポンプや流量調整弁を適宜調整し、処理中に供給される処理油Lの流量や流速を経時的に変化させたり、容器1kを介して加振手段1iでボール群91に振動を付与すれば、ボール91をより攪拌させる点から有利である。
【0029】
上記処理装置1の更に好ましい態様の処理装置について図3及び4を参照して説明する。なお、図3及び4において、上記処理装置1と同一の構成要素については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0030】
図3に示す処理装置5は、密閉蓋1Lの中央部を貫通し処理室1mの中に突き出た状態となるよう処理油排出管5cを配置し、処理油排出口5dを軸芯方向において処理室1mの中間部、具体的には処理油排出口5dを処理油供給口1fよりも下方に位置させ、更に処理油排出管5cを矢印dで示すように軸心方向に沿い移動できるようにした態様である。かかる処理装置5によれば、処理油排出口5dは処理室1mの底面1pに近接しているので、処理油Lの上昇流bは底面1pの近くで排出され旋回流aと分離されるので、上昇流bが旋回流aに与える影響が抑制され、底面1pにおけるボール91の旋回運動を安定させ、ボール91の密集状態を維持できるので有利である。更に、処理油Lの供給の初期段階において処理室1mの旋回流aが安定するまでは処理油排出管5cの密閉蓋1Lからの突出長さを短くしておき、旋回流が安定した後に処理油排出管5cを下方に移動させて密閉蓋1Lからの突出長さを長くし所定位置に位置決めすることで、処理室1mの外へのボール91の流出を防止できる。なお、後述する第2〜第4態様の処理装置のように、処理室を旋回流動する処理油を整流化する構成や処理室へボールを供給する構成を備えた処理装置の場合には、処理油排出管5cは上下方向に移動せず、図示のごとく底面1pの上方近傍に処理油排出口5dが配置されるよう密閉蓋1Lに固定されていてもよい。
【0031】
図4(a)に示す処理装置は、半径方向において中心部が周縁部に対し高くなるよう円錐形状に底面6pを処理室1mに形成した態様である。かかる態様の処理装置によれば、ボール群9は、底面6pの高さの低い周縁部で安定して旋回運動することとなり、底面6pにおけるボールの密集状態を安定させることができる。同図(b)に示すように、半径方向において中央部が周縁部に対し高くなるよう円柱状の突起7yを有する底面7pを処理室1mに形成しても同様な作用効果を奏することができるが、この場合には処理油Lの流動を阻害しなよう突起7yの上部周縁にテーパ面を形成しておくことが望ましい。なお、図4において符号6n、7nで示すように容器1kと別体の円板状部材を処理室1mの底部に配置し、円板状部材6n、7nの上面が処理室1mの底面6p、7pとなるよう構成してもよい。かかる構成によれば、処理装置の中で最も損耗の激しい処理室の底面について円板状部材6n、7nを交換するだけでメンテナンスが可能となり、処理装置の管理が容易となる。また、例えばセラミックスや金属などの硬度が高く耐摩耗性のある素材で円板状部材を形成することで、処理室の底面の損耗を防止できるとともに処理の効率を向上することが可能となる。
【0032】
[第2実施態様]
以下第2態様の処理装置について図5および6に基づき説明する。なお、図5および6において、上記第1態様の処理装置1およびその好ましい態様の処理装置5等と同一の構成要素については同一符号を付しており、詳細な説明を省略する(以下第3〜第5態様の処理装置について同じ。)
【0033】
図5(a)に示すように、第2態様の処理装置8は、第1態様と同様に形成された処理室1mの中に案内手段8vを有する点で第1態様の処理装置1と相違している。図5(a)の案内手段8vは、処理油供給口1fを通じ供給された処理油Lを処理室1mの底面1pに向い案内するように構成されている。すなわち、案内手段8vは、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ底面1pに向い流下する処理油Lの流線aに沿った方向に伸びる螺旋が形成されたステンレス製の案内板8wである。上部8xが処理油供給口1fの下方に、下部8yが処理室1kの底面1pと所定の間隙を介し配置された案内板8wは、密閉蓋1Lを縦方向に貫通する処理油排出管5cを中央に取り巻きつつその外周面が周壁面1qに密接している。なお、処理油Lを円滑に処理室1mから排出するためには、案内手段8xの下端は、処理油排出口より上方にあることが好ましい。
【0034】
かかる案内板8wによれば、処理油供給口1fから供給された処理油Lは、案内板8w、処理油排出管5cの外周面および処理室1mの周壁面1qにより区画された螺旋状の流通通路8zの中を破線aで示すように上方から下方に向けて流動し、処理室1mの底面1pに案内される。ここで、案内板8wは、処理油供給口1fから供給され旋回流下する処理油Lの流線aに沿って螺旋が形成されており、かつ、流通通路8zは一本の通路となるよう形成されているので、処理油供給口1fから供給される処理油Lや流動する処理油Lの相互の干渉により旋回流下する処理油Lに乱流を生じせしめることなく、整流化された処理油Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図において符号b2で示すように、処理油排出管5cから排出されるため上昇流として処理油排出口に向う処理油Lの流れbの一部が処理油排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内板8wの下部8yで遮られるので、旋回流下する処理油Lの流れaを乱すことがない。その結果、底面1pにおけるボール群の旋回運動が安定し、密集状態を維持することができる。
【0035】
なお、処理装置8の変形例である図5(b)に示す処理装置16のように、処理油Lが周壁面1qを旋回する態様により、案内板16wは、処理油排出管5cの外周面との間に一定の間隙16zが形成されるよう構成し、処理室1mに配置してもよい。
【0036】
図6に示す処理装置10は第2態様の処理装置の他の例であり、案内手段10vとして案内体10wを有している。底面10zを有する略円錐台形状のステンレス製の案内体10wは、底面1pに向い縮径した略円錐形状の処理室1mの周壁面1qに倣う外周面10xを有している。上部が密閉蓋1Lに接合された案内体10wは、密閉蓋1Lに固定され縦方向に伸びる処理油排出管5cを中央部に有し、当該処理油排出管5cを外周面10xが包囲している。そして、案内体10wは、水平方向においては、その外周面10xが一定寸法gの間隙10yを介し処理室1mの周壁面1qと対向するよう処理室1mの中に配置されている。また、縦方向においては、ボール群9が処理室1mの底面1pの上で旋回運動可能な領域を設けるため、案内体10wの底面10zが処理室1mの底面1pに対し所定の間隙を有するように配置されている。
【0037】
上記案内手段としての案内体10wを処理室1mの中央部に配置することにより、上記案内板8wと同様な作用を奏することができる。すなわち、処理油供給口1fから供給された処理油Lは、案内体10wの外周面10xと処理室1mの周壁面1qとで形成された間隙10yを破線aで示すように上方から下方に向けて旋回流下し、処理室1mの底面1pに案内される。旋回流下する処理油Lは、案内体10wの外周面10xと処理室1mの周壁面1qとで囲まれた比較的狭い間隙10yの中を流動するので、処理油供給口1fから供給される処理油Lや流動する処理油Lの相互の干渉により旋回流下する処理油Lに乱流を生じせしめることなく、整流化された処理油Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図示b2として示すように処理油Lは処理油排出管5cから排出されるため上昇流として処理油排出口5dに向う処理油Lの流れbの一部が処理油排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内体10wの底面10zで遮られるので、旋回流下する処理油Lの流れaを乱すことがない。なお、上記案内体10wと周壁面1qとの間隙10yに上記案内板8wを組み込んでもよい。
【0038】
[第3実施態様]
以下第3態様の処理装置及びその変形例について図7に基づき説明する。第3態様の処理装置は、第1態様と同様に形成された処理室1mの中に整流手段を有する点で第1態様の処理装置1と相違している。以下、整流手段の各種態様について説明する。
【0039】
図7(a)の整流手段17vは、処理油供給口1fから供給され、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ流下する処理油Lの流れを一定の方向に整えて整流するステンレス製の板状部材17wである。処理室1mの周壁面1qに沿い旋回流下する処理油Lの流線に沿った方向に伸びる螺旋が形成された板状部材17wは、その上部17xが処理油供給口1fの下方に、下部17yが処理室1mの底面1pと所定の間隙を介し、外周面が周壁面1qに密接するように配置されている。かかる板状部材17wによれば、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回するように処理油供給口1fから供給された処理油Lは、その旋回流下する流れが板状部材17wにより整流されつつ安定して維持され底面1pに至り、処理室1mの底面1pに接触しているボール群を当該底面1pに押し付けつつ旋回運動させる。
【0040】
なお、上記整流手段17vの変形例である図7(b)に示すように、間隙部18tを介しつつ複数のフィン状の板状部材18q、18r、18sを上記板状部材17wと同様に処理油Lの旋回流の流線沿い螺旋状に一列に配置して整流手段18vを構成してもよい。また、図7(c)に示すように、処理油Lの旋回流の流線に沿い螺旋状に一列に複数の板状部材19q〜19rを配置するとともに、板状部材19q〜19rの下方に、板状部材19q〜19r同士の間隙部19uを埋めるように板状部材19s〜19tを千鳥状に一列に配置することで2列の板状部材を有する整流手段19vを構成してもよい。
【0041】
[第4実施態様]
以下第4態様の処理装置及びその変形例について図8〜10に基づき説明する。第4態様の処理装置は、処理室にボール群を供給する供給手段と、そのボール群を回収する回収手段を有する点で第1態様の処理装置と相違している。以下供給手段および回収手段を中心に第4態様の処理装置を説明する。なお、供給手段と回収手段は各々単独に処理装置に組み込んでもよい。
【0042】
まず、供給手段について説明する。図8(a)に正面断面図、同図の容器1kから密閉蓋1Lを取り外した状態である平面図である同図(b)に示すように、本態様の供給手段11qは、処理室1mに供給すべき多数のボール92を収納する収納部11rと、各々の一端が収納部11rに接続され他端が処理槽1jに接続された処理油流入管11uおよびボール供給管11vとを有している。なお、図8(a)においてA−A線より上は、図8(b)に示す処理槽1jの中心線Eより上側を見たB矢視図、A−A線より下は中心線Eより下側を見たC矢視図である。
【0043】
収納部11rは、多数のボール92を収納可能な容器11sと、容器11sの上部開口を閉塞する蓋11tとで構成されており、蓋11tを開閉することによりボール92を容器11sに供給する。その収納部11rの側壁には、処理油流入管11uの一端がバルブ11wを介して接続されており、さらに処理油流入管11uの他端はその開口(処理油流入口)11yが処理室1mに開口するよう処理槽1jに接続されている。ここで、処理油流入管11uは、その軸心が、処理油供給管1eとほぼ同一線上、すなわち処理槽1jの上部であって処理室1mの周壁面1qの接線方向に沿い、その処理油流入口11yが旋回する処理油の流れaを迎え入れるように配置されている。これにより、平面視において処理室1mの中心線Fを介し処理油流入口11yと処理油供給口1fとは相対する状態となるので、図示破線aで示すように処理油供給口1fから周壁面1qに沿い旋回するように供給された処理油は、処理油流入口11yを通じ処理油流入管11uに流入する。
【0044】
収納部11rの底部には、ボール供給管11vの一端が接続されており、ボール供給管11vの他端はその開口(ボール供給口)11zが処理室1mの底部に開口するよう処理槽1jに接続されている。ここで、ボール供給管11vは、図8(b)に示すように、平面視において処理室1mの中心線Eを介し処理油流入管11uと反対の位置に、その軸心が処理室1mの接線方向に沿い、そのボール供給口11zが旋回する処理油の流れaに沿うように配置されている。これにより、処理油供給口1fから供給され周壁面1qに沿い流下し底面1pの上を旋回流動する処理油の流れaに円滑に乗るようにボール92を供給することができる。なお、図において符号11xは、供給すべきボール92を収納部11rの中に保持するための仕切り弁である。この仕切り弁11xは、ボール92を自動的に処理室1mへ供給するために設けられた好適な構成であり、手動でボールを供給する場合には必ずしも必要ではない。
【0045】
次に、平滑化または球状化処理後のボール91を含むボール群9の回収手段11aについて説明する。符号11nは、容器1kの下部に形成された円筒状部11Lの内面に摺動可能に嵌め合いされた円板状の摺動部材であり、その外周面には処理油の漏出を防止するため不図示のOリングが設けられている。そして、円筒状部11Lの内面には、処理層が形成されたボールを含むボール群を回収するボール回収管11bの一端の開口(ボール回収口)11cが開口しており、ボール回収管11bの他端は回収容器11eに接続されている。なお、図8(b)に示すように、ボール回収管11bは、平面視において処理室1mの中心線Fを介し上記ボール供給管11vと反対の位置に、その軸心が処理室1mの接線方向に沿い、そのボール回収口11cが旋回する処理油の流れaを迎え入れるように配置されている。
【0046】
ここで、摺動部材11nは、エアシリンダー等の上下駆動部11dにより符号hで示す上下方向に円筒状部11Lの中を移動し、上昇端の位置において処理室1mの周壁面1qの下端縁にその上面11p(処理室1mの底面ともなる。)が接するとともに、その外周面でボール回収口11cを閉じ、下方端の位置においてボール回収口11cを開くように構成されている。なお、本態様の処理装置11では、摺動部材11nをバルブの弁のごとく用い、摺動部材11nを上下移動させることによりボール回収口11cを開閉させているが、例えば図1の処理装置1において処理室1mの底部にバルブを介して処理槽にボール回収管を接続するとともにボール回収口が処理室に直接開口するよう回収手段を構成し、バルブの開閉によりボールを回収するようにしてもよい。この場合には、処理室1mの底面1pを旋回するボール91の運動を妨げないよう、ボール回収口は、処理室1mの底面1pより上方に配置することが好ましい。
【0047】
上記供給手段11qおよび回収手段11aを含む処理装置11の動作について図9を参照しつつ説明する。図9(a)に示す収納部11rの蓋11tを開けて所定数のボール92を容器11sに供給し、その後蓋11tを閉じる。この時、バルブ11wおよび仕切り弁11xは閉じられた状態である。また、上下駆動部11dにより上昇された摺動部材11nは上昇端の位置にあり、ボール回収口11cは閉じられた状態となっている。
【0048】
次いで、処理装置11を作動させて処理油供給口1fから処理油Lを供給する。一定時間経過して処理室1mが処理油Lで満たされると、図9(a)に示すように、処理油Lは、処理室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾斜に沿い底面11pに向い螺旋状に流下する安定した旋回流aとなる。
【0049】
処理油Lを供給し一定時間経過し処理室1mにおける処理油Lの流動状態が安定した後、処理装置11は、バルブ11wを開き、図9(b)において矢印eのように旋回流動する処理油Lの一部を処理油流入管11uから収納部11rに処理油流入口11yを通じて流入させるとともに、仕切り弁11xを開く。すると、収納部11rに収納されたボール92は、流入した処理油Lにより収納部11rから押出され、処理油Lとともにボール供給管11vの管路の中を流れ、矢印fのようにボール供給口11zから排出され処理室1mへ供給される。処理装置11は、全てのボール92が処理室1mへ供給された後、バルブ11wおよび仕切り弁11xを閉じる。ここで、ボール供給管11vは上記のとおり配置されているので、ボール供給口11zから処理室1mへ供給されたボール92は処理油Lの旋回流aに乗り、その後処理室1mの底面11pの上を円滑に旋回運動し、平滑化または球状化処理されることとなる。このように、処理油Lを処理室1mに供給してから一定時間経過し、処理室における処理油の旋回流動が安定化した後にボール92を処理室1mへ供給するので、処理室1mからボール91が流出することが少なく、高い歩留まりでボール91を処理することが可能となる。
【0050】
なお、手動でボール92を供給する場合には、ボール供給管11vの経路の中に仕切り弁11xを設けず、処理油Lの流動状態が安定化した後、バルブ11wを開き、処理油流入管11u、収納部11rおよびボール供給管11vの経路で処理油Lを流通させた後に、収納部11rに所定数のボール92を供給するようにすればよい。
【0051】
次いで、図9(c)に示すように、処理装置11が、上下駆動部11dにより摺動部材11nを下降端まで下降させボール回収口11cを開くと、処理が完了したボール群9はボール回収口11cを通じて矢印iで示すようにボール回収管11bに流れ込み、その後回収容器11eに回収される。なお、処理油排出管5cにバルブを設けておき、陰極11nの下降とともに当該バルブを絞るようにすれば、処理油Lの多くの部分はボール回収管11bを通じて排出されるので、より円滑にボール群9を回収することができる。
【0052】
図10に示す処理装置12は、第4態様の処理装置の他の例であり、処理油供給管1eの経路上に設けられた供給手段12qを有している。すなわち、供給手段12qの処理油流入管11uの一端は処理油供給管1eの上流側に接続され、ボール供給管11vの一端は処理油供給管1eの下流側に接続されており、それらの他端はバルブ11wおよび仕切り弁11xを介して収納部11rに接続される構成となっている。かかる供給手段12qによれば、処理室1mにおける処理油Lの流動状態が安定した後にバルブ11wおよび仕切り弁11xを開くと、処理油供給管1eを流れる処理油Lの一部が、処理油流入管11uを通じて収納部11rに流入する。すると、収納部11rに収納されているボール92は、流入した処理油Lにより押し出され、ボール供給管11vを通じて処理油供給管1eに流入し、処理油Lとともに処理油供給口1fから処理室1mに供給されることとなる。なお、供給手段12qにおいて処理油を円滑に流通させるためには、処理油流入管11uが接続される処理油供給管1eの上流側の内径を太くし、ボール供給管11vが接続される下流側の内径を上流側より細くすることが望ましい。さらに、供給手段12qの中に滞留することなくボール92を処理油供給管1eへ流入させるためには、収納部11rの底面と処理油流入管11uおよびボール供給管11vとの底面との間には段差がないようにしておくことが好ましい。
【0053】
[第5実施態様]
以下第5態様の処理装置について図11を参照し説明する。なお、図11(a)は、第5態様の一例である処理装置の概略構成を示す正面断面図、同図(b)は同図(a)のD矢視図、図11(c)は、第5態様の処理装置の他の例の概略構成を示す正面断面図、同図(d)は同図(c)のE矢視図である。
【0054】
上記第1〜第4態様の処理装置では、ボールが接触しつつ周回可能な処理室の底面として円形状の底面と底面に向い縮径するように底面の周縁に立設した略円錐台形状の周壁面とを備えた処理室、断面円形状の処理室の接線方向に沿い処理油供給口が開口するよう軸心が水平に配置された処理油供給管、処理室の軸心に沿い配置された処理油排出管の各構成要素を有する処理装置について説明したが、本発明はこれら望ましい態様に限定されることなく、第5態様の処理装置でも実現することが可能である。
【0055】
第5態様の一例である処理装置13は、図11(b)に示すように、ボール91が周回可能な底面として略楕円形状の底面13pを有し、底面13pの周縁に立設する周壁面13qは縦方向において同一断面、すなわち直管状となるよう処理室13mは形成されている。さらに、処理室13mに処理油Lを供給する処理油供給管13eは、周壁面13qに沿い旋回流下する処理油Lの流れを生じさせるため、その軸心を下方に向けた状態で処理槽1jに接続されている。なお、周壁面13qに対する取付角度を自在に設定可能な継手などを介し処理油供給管13eを処理槽1jに接続するよう構成すれば、処理すべきボールの大きさや数量などに応じ処理油Lが旋回流下する角度を適宜設定できるので好ましい。また、処理室13mから処理油Lを排出する処理油排出管1cは、処理油Lの上昇流bを円滑に処理室13mから排出するためには第1態様の処理装置1と同様に密閉蓋1Lの中央部に設けられていることが好ましいが、処理油排出管の配置はこれに限定されることなく、図示破線で示す処理油排出管13cのように密閉蓋1Lの外周寄りに設け処理室13mからオーバーフローする処理油Lを排出させてもよい。
【0056】
上記処理装置13の動作を説明する。処理室13mの底面13pにボール群9を載置し、その後密閉蓋1Lを閉じて処理室13mを密閉空間にし、処理装置13を作動させる。処理装置13は、処理油供給管13eを通じて処理室13mへ処理油Lを供給する。処理室13mが処理油Lで満たされると、上記のように配置された処理油供給管13eから供給される処理油Lは、処理室13mの周壁面13qに沿い螺旋状に旋回流下する旋回流aとなる。旋回流下しつつ底面13pに達した処理油Lは、底面13pに接触しているボール群9を当該底面13pに押し付けつつ旋回運動させる。上記第1態様の処理装置1と同様に、処理室13mの底面13pに接触しつつ旋回運動するボール91は底面13pの上を転動するので、ボール91同士が付着しがたく凝集が防止される。
【0057】
図11(c)(d)に示す第5態様の他の例である処理装置20は、ボール91が周回可能な底面として円環状の底面20pと、底面20pの外周縁に沿い立設した外周壁面20qと、内周縁に沿い立設した内周壁面20xとを有する処理室20mを有し、処理室20mの断面は縦方向において同一となるよう処理室20mは形成されている。かかる処理装置20においても基本的に上記処理装置13と同様な動作でボール91には処理層が形成される。
【0058】
[実施例]
第1態様の処理装置1に、図13(a)に外観、同図(b)に断面を示す直径50μmのボールを50万個投入し、当該ボールの表面を平滑化処理、および球状化処理した。処理後のボールの外観を同図(c)に、断面を同図(d)に示すように、表面が平滑で、かつ真球度の優れたボールを得ることができた。
【符号の説明】
【0059】
1(5、8、10、11、12、13、16、17,18,19、20、21、22):処理装置
1a(5a):本体部
1j:処理槽
1m(13m、20m):処理室
1b:処理油循環手段
1c(5c、13c):処理油排出管
1e(13e、22e):処理油供給管
1g(11q、12q):供給手段
1h:直流電源回路
1i:加振手段
1s:磁気発生手段
8v(10v、16v):案内手段
8w(16w):案内板
10w:案内体
11a:回収手段
17v(18v、19v):整流手段
17w(18w、19w):板状部材
91:ボール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置であって、前記固体粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記固体粒子を含む粒子群を収納可能な処理室を有する処理槽と、前記処理室の底面より上方に開口する供給口を備え前記処理室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口から処理流体を供給する供給管と、前記処理室に開口する排出口を備え処理流体を排出する排出管とを有する固体粒子の処理装置。
【請求項2】
前記処理室の底面は円形状であるとともに前記処理室の周壁面は前記処理室の底面に向い縮径した円錐形状をなし、前記排出管は前記処理室の軸芯と同軸上に配置されている請求項1に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項3】
前記排出口は前記供給口よりも下方に配置されている請求項2に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項4】
前記排出管は、前記処理室の軸芯方向に沿い移動可能に構成されている請求項2または3のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項5】
前記処理室の底面は、その半径方向において、その中心部が周縁部に対し高くなるように形成されている請求項2乃至4のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項6】
前記供給管の供給口から供給された処理流体を前記処理室の底面に向い案内する案内手段を前記処理室に有する請求項1乃至5のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項7】
前記案内手段は、螺旋状に設けられた案内板である請求項6に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項8】
前記案内手段は、前記処理室の周壁面に倣い外周面が形成され、前記周壁面と前記外周面との間に所定の間隙を有する案内体である請求項6に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項9】
前記供給管の供給口から供給された処理流体を整流する整流手段を前記処理室に有する請求項1乃至8のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項10】
前記整流手段は、前記処理室の周壁面に設けられた板状部材である請求項9に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項11】
前記排出管の排出口から処理流体を吸引可能に構成された請求項1乃至10のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項12】
前記供給管から供給される処理流体の流速又は流量が経時的に変化するよう構成されている請求項1乃至11のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項13】
前記処理室の底面には、前記供給管から供給された処理流体の旋回方向に沿い形成され前記粒子群を案内する案内溝が形成されている請求項1乃至12のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項14】
直接的に又は前記供給管を介して間接的に前記処理室に接続され、前記処理室に前記粒子群を供給する供給手段を有する請求項1乃至13のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項15】
前記供給手段は、前記粒子群を収納する収納部と、一端が前記収納部に接続されるとともに、他端が前記処理室の周壁面であって前記底面側に接続された固体粒子供給管と、一端が前記収納部に接続されるとともに、他端が前記処理室の周壁面であって前記固体粒子供給管の他端よりも上方に接続された処理流体流入管を有する請求項14に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項16】
前記処理室に収納された前記粒子群を回収する回収手段を有する請求項1乃至15のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項1】
固体粒子の表面を平滑化または固体粒子を球状化する固体粒子の処理装置であって、前記固体粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記固体粒子を含む粒子群を収納可能な処理室を有する処理槽と、前記処理室の底面より上方に開口する供給口を備え前記処理室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口から処理流体を供給する供給管と、前記処理室に開口する排出口を備え処理流体を排出する排出管とを有する固体粒子の処理装置。
【請求項2】
前記処理室の底面は円形状であるとともに前記処理室の周壁面は前記処理室の底面に向い縮径した円錐形状をなし、前記排出管は前記処理室の軸芯と同軸上に配置されている請求項1に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項3】
前記排出口は前記供給口よりも下方に配置されている請求項2に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項4】
前記排出管は、前記処理室の軸芯方向に沿い移動可能に構成されている請求項2または3のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項5】
前記処理室の底面は、その半径方向において、その中心部が周縁部に対し高くなるように形成されている請求項2乃至4のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項6】
前記供給管の供給口から供給された処理流体を前記処理室の底面に向い案内する案内手段を前記処理室に有する請求項1乃至5のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項7】
前記案内手段は、螺旋状に設けられた案内板である請求項6に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項8】
前記案内手段は、前記処理室の周壁面に倣い外周面が形成され、前記周壁面と前記外周面との間に所定の間隙を有する案内体である請求項6に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項9】
前記供給管の供給口から供給された処理流体を整流する整流手段を前記処理室に有する請求項1乃至8のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項10】
前記整流手段は、前記処理室の周壁面に設けられた板状部材である請求項9に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項11】
前記排出管の排出口から処理流体を吸引可能に構成された請求項1乃至10のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項12】
前記供給管から供給される処理流体の流速又は流量が経時的に変化するよう構成されている請求項1乃至11のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項13】
前記処理室の底面には、前記供給管から供給された処理流体の旋回方向に沿い形成され前記粒子群を案内する案内溝が形成されている請求項1乃至12のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項14】
直接的に又は前記供給管を介して間接的に前記処理室に接続され、前記処理室に前記粒子群を供給する供給手段を有する請求項1乃至13のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【請求項15】
前記供給手段は、前記粒子群を収納する収納部と、一端が前記収納部に接続されるとともに、他端が前記処理室の周壁面であって前記底面側に接続された固体粒子供給管と、一端が前記収納部に接続されるとともに、他端が前記処理室の周壁面であって前記固体粒子供給管の他端よりも上方に接続された処理流体流入管を有する請求項14に記載の固体粒子の処理装置。
【請求項16】
前記処理室に収納された前記粒子群を回収する回収手段を有する請求項1乃至15のいずれかに記載の固体粒子の処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−230065(P2011−230065A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103168(P2010−103168)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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