説明

固体結晶COK−7、その製造方法および炭化水素の変換における用途

【課題】新規な結晶構造を有する新規な固体結晶およびこの固体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、COK−7と称される、特定のX線回折図を有する固体結晶に関する。前記固体は、無水物ベースで、酸化物のモルに関して、XO:mYOの式(Xは、1種以上の4価元素を示し、Yは少なくとも1種の3価元素を示す)によって表される化学組成を有する。本発明はまた、前記固体を製造する方法および前記固体の炭化水素変換における用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以降、COK−7と称される新規な結晶構造を有する新規な固体結晶およびこの固体の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、この新規な固体の、炭化水素の変換における用途に関する。
【背景技術】
【0003】
最近数年にわたる新規な微孔質(microporous)モレキュラーシーブスの研究によって、広範なこのクラスの化合物が合成されるに至った。ゼオライト構造を有する広範なアルミノケイ酸塩、特にその化学組成、それらが含んでいる細孔の直径およびそれらの微孔質系の形状および幾何学的形態によって特徴付けられるものが開発された。
【0004】
用語「ゼオライト」は、一般的に、ケイ素およびアルミニウムからなる固体と関連する。しかしながら、純粋にケイ酸塩性である、あるいは、ケイ素がゲルマニウムによって置換される、あるいは、アルミニウムがホウ素、ガリウムまたは鉄によって置換される系においてゼオライト構造は維持されてよい。
【0005】
約40年にわたって合成されたゼオライトの中で、一定数の固体により、吸着および触媒の分野において重大な前進がもたらされた。挙げられてよいこれらの例として、Yゼオライト(特許文献1)およびZSM−5ゼオライト(特許文献2)が挙げられる。ゼオライトを含めて、年々合成される新規なモレキュラーシーブスの数は絶えず上昇している。発見された種々のモレキュラーシーブスのより完全な記載は、非特許文献1において見出されてよい。
【0006】
ZBM−30ゼオライトおよびその製造方法は、特許文献3に記載されている。ZSM−48ゼオライトおよびその製造方法は、特許文献4に記載された。ZSM−48は、ZSM−22よりわずかに大きい平均細孔直径を有するゼオライトである。ZSM−48ゼオライトは公式の構造を有していないが、ZBM−30、EU−2およびEU−11に類似する構造を有するゼオライトの系統に属している。これらのゼオライトと関連する構造型はなく、これらの固体のX線回折スペクトル(XRD)は文献と比較可能であり、異なるトポロジーが秩序なく交差したものとして解釈されている(Studies in Surface Science 33(1997))。
【特許文献1】米国特許第3130007号明細書
【特許文献2】米国特許第3702886号明細書
【特許文献3】欧州特許第0046504号明細書
【特許文献4】欧州特許第0015132号明細書
【非特許文献1】シー・エイチ・ベアロッカー(Ch Baelocher)、ダブリュー・エム・マイヤー(W M Meier)およびディー・エイチ・オルソン(D H Olson)著,「アトラス・オフ・ゼオライト・ストラクチャー・タイプス(Atlas of Zeolite Structure Types)」,第5改訂版,2001年,エルセヴィア(Elsevier)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、固体結晶COK−7と称される新規な結晶構造を有する新規な固体結晶、この新規な固体の、炭化水素の変換における用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、無水物ベースとして表され、酸化物モルに関して、XO:mYの一般式(式中、Xはケイ素、スズおよびチタンから選択される1以上の4価元素を示し、Yはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウムおよびガリウムから選択される少なくとも1種の3価元素を示し、mはYのモル数を示し、ここで、mは0〜300である)によって定義される化学組成を有し、か焼された形態で、dhklの値について特定のピークを含むX線回折図を有する、固体結晶COK−7である。
【0009】
上記本発明の固体結晶アルミノケイ酸塩性COK−7において、Xがケイ素であり、Yがアルミニウムであることが好ましい。
【0010】
上記本発明の固体結晶ケイ酸塩性COK−7において、1.6〜2.2の改変された束縛指数CI°を有することが好ましい。ここで、CI°は、5%n−デカン異性化での2−メチルC9の5−メチルC9異性体に対する比に相当するものである。
【0011】
上記本発明の固体結晶ケイ酸塩性COK−7において、Xがケイ素であることが好ましい。
【0012】
上記本発明の固体結晶COK−7は、合成された時の状態の形態で、窒素含有有機テンプレートRを含有するか、その分解生成物であるか、またはその前駆体である。
【0013】
上記本発明の固体結晶COK−7において、有機テンプレートRは、1〜20個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0014】
上記本発明の固体結晶COK−7において、Rは、アミン類からのテンプレートであることが好ましい。
【0015】
上記本発明の固体結晶COK−7において、Rは、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミンおよびそれらの誘導体から選択されることが好ましい。
【0016】
上記本発明の固体結晶COK−7はゼオライト固体であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の固体結晶COK−7を製造する方法は、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の供給源と、酸化物YOの適宜の供給源と、少なくとも1種の窒素含有有機テンプレートRとを含有する水性の混合物が反応させられ、該混合物は、好ましくは、下記のモル組成を有し:
mXO:nY:pHO:qR
・m=10であり;
・nは0〜10であり;
・pは0〜160であり;
・qは0.05〜20であり;
ここで、Xはケイ素、スズおよびチタンから選択される1種以上の4価元素であり、Yはアルミニウム、鉄、ホウ素、インジウムおよびガリウムによって形成される群から選択される1種以上の3価元素であるものである。
【0018】
上記本発明の製造方法において、Xはケイ素であり、Yはアルミニウムであることが好ましい。
【0019】
上記本発明の方法において、窒素含有有機テンプレートRは、アミン類から選択されることが好ましい。
【0020】
上記本発明の方法において、窒素含有有機テンプレートRは、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミンおよびそれらの誘導体から選択されることが好ましい。
【0021】
上記本発明の方法において、自発の反応圧力下、場合によっては、ガスを加えて、水熱条件の下、100〜200℃の温度に、固体COK−7の結晶が形成されるまで、攪拌しながらまたは攪拌することなく、ゲルが置かれることが好ましい。
【0022】
上記本発明の方法において、固体結晶を含む種が混合物に加えられることが好ましい。
【0023】
上記本発明の方法において、固体結晶は、固体COK−7の結晶であることが好ましい。
【0024】
上記本発明の方法において、結晶種は、反応混合物において用いられる酸化物XOの0.01〜10重量%の比率で加えられることが好ましい。
【0025】
上記本発明の方法において、結晶化後に、冷水での急冷によって0〜15℃の温度まで、10分〜4時間の継続時間にわたりオートクレーブが冷却されることが好ましい。
【0026】
上記本発明の方法において、結晶化工程で得られる生成物は、
・固体を結晶化混合物から分離する工程;
・固体を洗浄する工程;および
・固体を乾燥させる工程
の少なくとも1つを経ることが好ましい。
【0027】
上記本発明の方法において、固体は、合成の最後にか焼工程を経ることが好ましい。
【0028】
上記本発明の方法において、か焼工程は、空気中または純粋な酸素(酸化媒体)中、300〜800℃の温度で行われることが好ましい。
【0029】
上記本発明の方法において、1種のケイ素源と、少なくとも1種のジアミンとを含む水性の混合物が反応させられることが好ましい。
【0030】
上記本発明の方法において、ジアミンは、ヘキサメチレンジアミンであることが好ましい。
【0031】
上記本発明の方法において、1種のケイ素源と、1種のアルミニウム源と、少なくとも1種のアミンを含む水性の混合物が水の存在下に反応させられることが好ましい。
【0032】
上記本発明の方法において、アミンは、トリエチレンテトラミンであることが好ましい。
【0033】
上記本発明の方法において、トリエチレンテトラミンおよびヘキシルアミンの混合物を含むことが好ましい。
【0034】
また、本発明は、上記本発明の固体または上記本発明の方法を用いて製造された固体の、精油および石油化学における炭化水素の変換のための用途である。
【0035】
上記本発明の用途は、炭化水素の水素化異性化のためのものである。
【0036】
上記本発明の用途は、炭化水素の接触脱ろうのためのものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、COK−7と称される、特定のX線回折図を有する固体結晶に関する。前記固体は、無水物ベースで、酸化物のモルに関して、XO:mYOの式(Xは、1種以上の4価元素を示し、Yは少なくとも1種の3価元素を示す)によって表される化学組成を有する。本発明はまた、前記固体を製造する方法および前記固体の炭化水素変換における用途に関する。
【0038】
本発明は、無水物ベースとして表され、酸化物モルに関して、XO:mYの一般式(式中、Xはケイ素、スズおよびチタンから選択される1以上の4価元素を示し、Yはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウムおよびガリウムから選択される少なくとも1種の3価元素を示し、mはYのモル数を示し、ここで、mは0〜300である)によって定義される化学組成を有し、か焼された形態で、dhklの値について特定のピークを含むX線回折図を有する、新規な固体結晶COK−7であり、この新規な固体結晶COK−7は、炭化水素の水素化異性化、炭化水素の接触脱ろうの用途に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(固体の特徴)
本発明は、固体結晶COK−7と称される新規な結晶構造を有する新規な固体結晶に関する。該固体は、無水物ベース(base)として表され、酸化物モルに関して、XO:mY(Xは1以上の4価元素を示し、Yは少なくとも1つの3価元素を示し、mはYのモル数を示し、ここで、mは0〜300である)の一般式で定義される化学組成を有する。
【0040】
か焼された形態での本発明の固体結晶COK−7のX線回折図が図1に示され、表1に与えられたdhkl値に少なくともピークを含む。この新規な固体結晶COK−7は新規な結晶構造を有する。
【0041】
この回折図は、回折計を用いる放射線結晶学的な分析により、従来の粉体技術を採用し、銅のKα1ピーク(λ=1.5406Å)により得られる。角度2θによって表される回折ピークの位置から、ブラッグの式を用いて、試料の固有の格子面間隔dhklが計算される。dhklについての測定における誤差の推定Δ(dhkl)は、ブラッグの式によって、2θの測定における絶対誤差Δ(2θ)の関数として計算される。±0.2°の絶対誤差Δ(2θ)は通常許容される。dhklの各値における相対強度Irelは、対応する回折ピークの高さから測定される。本発明の固体結晶COK−7のX線回折図は、表1に与えられるdhklの値に少なくともピークを含む。dhklの列において、格子面間隔の平均値はオングストローム(Å)で示される。これらの値のそれぞれには、±0.2〜±0.008Åの範囲の測定誤差Δ(dhkl)が必然的に含まれる。
【0042】
【表1】

【0043】
相対強度I/Iは、相対的な強度スケールとして与えられ、100の値がX線回折図の中で最も強いピークであるとされ:vw<15;15≦w<30;30≦mw<50;50≦m<65;65≦s<85;vs≧85である。
【0044】
本発明によると、Xは好ましくはケイ素、スズおよびチタンから選択されるが、より好ましくはケイ素であり、Yは好ましくはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウムおよびガリウムから選択されるが、非常に好ましくはアルミニウムである。
【0045】
本発明の第1の実施形態では、Xはケイ素でありYはアルミニウムであり、したがって本発明の固体結晶COK−7は、表1に記載されたX線回折図と同一のX線回折図を有する結晶アルミノケイ酸塩である。
【0046】
固体COK−7は、固有の特徴、すなわち、1.6〜2.2、好ましくは1.7〜2.1の改変された束縛指数(constraint index)CI°を有する。
【0047】
これらのモレキュラーシーブの基準の測定は、「デカンテスト(decane test)」を使用する。その手順は、J A Martens、M Tielen、P A JacobsおよびJ weikampのZeolites 1984,4,98に記載されている。
【0048】
CI°は、5%n−デカンの異性化における2−メチルC9の5−メチルC9異性体に対する比に相当する。
【0049】
本発明の第2の実施形態では、Xはケイ素であり、本発明の固体結晶COK−7は、表1に記載されたX線回折図と同一のX線回折図を有する純粋なケイ酸塩性の固体である。
【0050】
本発明の固体結晶COK−7が合成された時の形態で存在する、すなわち、合成から、かつ、当業者に周知のか焼および/またはイオン交換のためのあらゆる工程の前に、直接的に得られる場合、該固体COK−7は、下記に記載されるように窒素含有有機テンプレートを含むか、それを分解した生成物であるか、またはその前駆体である。
【0051】
本発明によると、Rは、アミン類からのテンプレートである。好ましくは、本発明により用いられるアミンテンプレートは、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミンおよびそれらの誘導体を含む。
【0052】
好ましくは、有機テンプレートは、1〜20個の炭素原子を含む。
【0053】
テンプレートは、熱および/または化学処理等の通常の従来技術によって除去されてよい。
【0054】
本発明の固体結晶COK−7は、好ましくはゼオライト固体である。
【0055】
(製造方法)
本発明はまた、固体結晶COK−7を製造する方法に関する。該方法では、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1つの供給源と、酸化物Yの少なくとも1種の適宜の供給源と、少なくとも1種の窒素含有有機テンプレートRとを含む水性混合物が反応し、該混合物は、好ましくは、下記の分子組成を有する:
mXO:nY:pHO:qR
・m=100であり;
・nは0〜10であり;
・pは0〜160であり;
・qは0.05〜20である。
【0056】
式中、Xは1以上の4価元素、好ましくはケイ素であり、Yは、アルミニウム、鉄、ホウ素、インジウムおよびガリウムの元素によって形成される群から選択される1以上の3価元素、好ましくはアルミニウムである。
【0057】
好ましくは、合成中、アルカリ金属は導入されない。
【0058】
本発明の方法によると、Rは、一般的にはアミン類からの窒素含有有機テンプレートである。好ましくは、本発明により用いられるアミンテンプレートは、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミンおよびそれらの誘導体を含む。それらは、単独または混合して用いられる。
【0059】
元素X源は、元素X自体を含めて水溶液中で当該元素を活性な形態で遊離し得るあらゆる化合物であってよい。有利には、元素Xがケイ素である場合、シリカ源は、ゼオライトを合成するに際して現行で用いられているもののうちのいずれか1つ、例えば、固体粉体状シリカ、ケイ酸、コロイダルケイ素または溶解したシリカまたはテトラエトキシシラン(tetraethoxysilane:TEOS)であり得る。粉体状シリカのうち、沈降法シリカ(precipitated silica)、特には、ケイ酸のアルカリ金属塩の溶液からの沈降によって得られたもの(例えば、エアロジル(登録商標)シリカ)、熱分解法シリカ(例えば「CAB−O−SIL(登録商標)」)およびシリカゲルを用いることが可能である。異なる粒子サイズ、例えば、10〜15nmまたは40〜50nmの範囲の平均等価円直径(mean equivalent diameter)を有するコロイダルシリカ(例えば、「ルドックス(登録商標)」等の商品名で市販されているもの)を用いることが可能である。好ましくは、ケイ素源はルドックス(登録商標)である。
【0060】
元素Y源は、元素Yを含めて水溶液中で当該元素を活性な形態で遊離し得るあらゆる化合物であってよい。Yがアルミニウムである好ましい場合には、アルミナ源は、好ましくはアルミン酸ナトリウムまたはアルミニウム塩(例えば、塩化物、硝酸塩、水酸化物または硫酸塩)、アルミニウムアルコキシド、アルミナ自体(好ましくは、水和されたまたは水和化可能な形態のもの、例えば、コロイダルアルミナ、プソイドベーマイト、ガンマアルミナまたはアルファまたはベータ三水和物)である。上記に挙げた供給源の混合物を用いることも可能である。
【0061】
したがって、本発明の方法は、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の供給源と、酸化物Yの少なくとも1種の適宜の供給源と、少なくとも1種の窒素含有有機テンプレートRとを含む、ゲルとして知られる水性の反応混合物を調製する工程を包含する。
【0062】
このゲルは、有利には、自発の圧力(場合によっては、ガス、例えば窒素が加えられる)の下での水熱条件下、100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度に、本発明の固体COK−7結晶が形成されるまで置かれる。結晶化を得るために必要な時間は、概して、ゲル中の反応剤の組成、攪拌および反応温度に応じて1時間から数ヶ月の間で変動する。反応は、概して、攪拌しながらまたは攪拌を行うことなく行われるが、好ましくは、攪拌を行う。
【0063】
核の形成に必要な時間および/または全体的な結晶化期間を短縮するために反応混合物に種を加えることが有利であり得る。種を用いることが有利であり得るのは、不純物の害なく固体結晶COK−7の形成を助長するためでもある。
【0064】
このような種は、固体結晶、好ましくは固体COK−7の結晶を含む。
【0065】
結晶種は、概して、反応混合物において用いられる酸化物XO(好ましくはシリカ)の0.01〜10重量%の比率で加えられる。
【0066】
好ましくは、結晶化の後、冷水中の急冷によって、0〜15℃の温度で、10分〜4時間の期間にわたりオートクレーブが冷却される。
【0067】
次に、固体相は、ろ過および洗浄され、この時点で、乾燥、脱水およびか焼および/またはイオン交換等の次の工程の準備が整う。これらの工程のために、当業者に知られる全ての従来の方法が採用されてよい。
【0068】
好ましくは、結晶化工程において得られた生成物は、下記工程のうち少なくとも1つを経る:
・固体を結晶混合物から分離する工程;
・固体を洗浄する工程;および
・固体を乾燥させる工程。
【0069】
一般的に、固体結晶は、ろ過等の当業者に公知のあらゆる方法によって混合物から分離される。次いで、固体は、水(好ましくは脱イオン水)またはTHF(テトラヒドロフラン)により洗浄される。
【0070】
乾燥工程は、概して、50〜150℃の温度で、12〜30時間の期間にわたり行われる。
【0071】
乾燥は、好ましくは、大気圧で行われるが、調整された圧力の下に行われてもよい。
【0072】
合成の最後のか焼工程は、有機テンプレートの分解によってゼオライト固体の多孔性(porosity)を露出し得る。このか焼工程は、有利には、空気または純粋な酸素(または酸化媒体)中、300〜800℃の温度で行われてよい。
【0073】
上記の合成方法は、本発明による2つの好ましい態様を用いて行われる:
1.純粋なケイ酸塩性の固体の合成のために、本発明の方法の好ましい実施形態では、1種のケイ素源および少なくとも1種のアミン、好ましくはヘキサメチレンジアミンを含む水性の混合物が反応させられる。
【0074】
2.アルミノケイ酸塩性の固体の合成のために、本発明の方法の好ましい実施形態では、1種のケイ素源、1種のアルミニウム源および少なくとも1種のアミン、好ましくはトリエチレンテトラミンを含む水性の混合物が、水の存在下に反応させられる。一次的なゲルを均一にした後、COK−7の種が加えられる。結晶種は、概して、反応混合物において用いられた酸化物XO、好ましくはシリカの0.01〜10重量%の比率で加えられる。
【0075】
本発明の方法のこの好ましい実施形態の変形では、1種のケイ素源と、1種のアルミニウム源と、少なくとも2種のアミンの混合物、好ましくはトリエチレンテトラミンおよびヘキシルアミンの混合物とを含む水性の混合物が反応させられてよい。一方のアミンの他方のアミンに対する比率は、10〜90重量%で変動する。
【0076】
アルミノケイ酸塩性の固体の場合には、最終の固体のケイ素/アルミニウムの原子比は、好ましくは10〜300、非常に好ましくは30〜100である。
【0077】
本発明の固体または本発明の方法を用いて製造された固体は、精油および石油化学における炭化水素の変換、より特定的には、水素化異性化(hydroisomerization)または接触脱ろう反応(catalytic dewaxing reaction)の触媒または触媒担体として用いられてよい。
【0078】
以下、本発明は下記実施例において例示されることになる。
【0079】
(実施例1:純粋なケイ酸塩性COK−7の合成)
18gのルドックス(登録商標)AS40(DuPont)が31mlの水に溶解させられた。6.75mlの水に溶解させられた1.94gのKOH(Riedel-Haen)が、4.17gのジアミノヘキサン(Acros Organics)および37.5mlの水に加えられた。2つの調製された溶液は、攪拌しながら混合された。
【0080】
結果として生じたゲルの組成は下記の通りである。
【0081】
O/SiO=40;KOH/SiO=0.29;ジアミノヘキサミン/SiO=0.30
これは、攪拌されるオートクレーブ内に、150℃で2.5日にわたり置かれた。結晶化の後、固体はろ過され、洗浄され、60℃で乾燥させられ、窒素中400℃で5時間にわたり、次いで、酸素中550℃で15時間にわたりか焼された。
【0082】
(実施例2:シリコアルミン酸塩性COK−7の合成)
46.15gのトリエチレンテトラミン(Acros,60%純度)が、46.15gの水に加えられた。次に、7.69gのエアロジル(登録商標)(UCB 380g/m)が攪拌しながら加えられ、次いで、0.17gのAl(OH)(Merck)が加えられた。
【0083】
ゲルの組成は下記の通りであった:
O/SiO=20;トリエチレンテトラミン/SiO=2.46;Al/SiO=0.0084
ゲルが均一であった場合、か焼されたケイ酸塩性COK−7の種0.66gが添加された。
【0084】
結果として生じた最終のゲルは、オートクレーブ中に、170℃で88時間にわたり攪拌しながら置かれた。88時間後、オートクレーブは、冷水(10℃)中に1時間30分にわたり漬浸された。固体は、ろ過され、洗浄され、60℃で乾燥させられ、酸素中、550℃で15時間にわたりか焼された。
【0085】
(実施例3:シリコアルミン酸塩性COK−7の合成)
46.155gのHOに希釈された46.155gのトリエチレンテトラミン(Acros,96%)の溶液が調製された。7.69gのエアロジル(登録商標)(UCB 380g/m)が連続的に攪拌しながらそれに加えられ、次いで、23.08gのヘキシルアミン(Aldrich,98%)および0.165gのAl(OH)(Merck)が加えられた。
【0086】
ゲルは、オートクレーブ中に、170℃で7日間にわたり攪拌しながら置かれた。次いで、オートクレーブは、冷水(10℃)中に1時間30分にわたり漬浸された。
【0087】
固体はろ過され、水およびTHFにより洗浄され、60℃で乾燥させられ、そして、窒素中400℃で5時間にわたり、続いて、酸素中550℃で15時間にわたりか焼された。
【0088】
(実施例4:デカンテストを用いて得られた特徴の比較)
固体COK−7は、実施例2に記載された手順を用いて得られた。得られたCOK−7固体は、0.5NのNHClの溶液中で、約100℃で5時間にわたり還流下にイオン交換を経た。
【0089】
ZSM−48は、「Studies in Surface Science and Catalysis」シリーズの第33巻の282〜284ページに記載された操作手順を用いて得られた。次いで、ゼオライトは、その合成のために用いられた有機テンプレートを除去するために、乾燥空気流中の12時間にわたる550℃でのか焼を経た。合成された時の状態のZSM−48ゼオライトは、550℃での乾燥空気流中の12時間にわたるか焼を経た。得られた固体ZSM−48は、各回の交換につき、10NのNHNOの溶液中、約100℃で4時間にわたる4回の連続的なイオン交換工程を経た。
【0090】
ZBM−30ゼオライトは、BASF特許(EP−A−0 046 504)にしたがって、有機テンプレートであるトリエチレンテトラミンを用いて合成された。合成された時の状態のZBM−30ゼオライトは、550℃での乾燥空気流中の12時間にわたるか焼を経た。
【0091】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】か焼された形態での本発明の固体結晶COK−7のX線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水物ベースとして表され、酸化物モルに関して、XO:mYの一般式(式中、Xはケイ素、スズおよびチタンから選択される1以上の4価元素を示し、Yはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウムおよびガリウムから選択される少なくとも1種の3価元素を示し、mはYのモル数を示し、ここで、mは0〜300である)によって定義される化学組成を有し、
か焼された形態で、dhklの値について少なくとも下記のピークを含むX線回折図を有する、固体結晶COK−7。
【表1】

【請求項2】
Xがケイ素であり、Yがアルミニウムである、請求項1に記載の固体結晶アルミノケイ酸塩性COK−7。
【請求項3】
1.6〜2.2の改変された束縛指数CI°を有し、ここで、CI°は、5%n−デカン異性化での2−メチルC9の5−メチルC9異性体に対する比に相当する、請求項2に記載の固体結晶アルミノケイ酸塩性COK−7。
【請求項4】
Xがケイ素である、請求項1または2に記載の固体結晶ケイ酸塩性COK−7。
【請求項5】
合成された時の状態の形態で、窒素含有有機テンプレートRを含有するか、その分解生成物であるか、またはその前駆体である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の固体結晶COK−7。
【請求項6】
有機テンプレートRは、1〜20個の炭素原子を含む、請求項5に記載の固体結晶COK−7。
【請求項7】
Rは、アミン類からのテンプレートである、請求項5または6に記載の固体結晶COK−7。
【請求項8】
Rは、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミンおよびそれらの誘導体から選択される、請求項7に記載の固体結晶COK−7。
【請求項9】
ゼオライト固体である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の固体結晶COK−7。
【請求項10】
固体結晶COK−7を製造する方法であって、
少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の供給源と、酸化物YOの適宜の供給源と、少なくとも1種の窒素含有有機テンプレートRとを含有する水性の混合物が反応させられ、該混合物は、好ましくは、下記のモル組成を有し:
mXO:nY:pHO:qR
・m=10であり;
・nは0〜10であり;
・pは0〜160であり;
・qは0.05〜20であり;
ここで、Xはケイ素、スズおよびチタンから選択される1種以上の4価元素であり、Yはアルミニウム、鉄、ホウ素、インジウムおよびガリウムによって形成される群から選択される1種以上の3価元素である、方法。
【請求項11】
Xはケイ素であり、Yはアルミニウムである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
窒素含有有機テンプレートRは、アミン類から選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
窒素含有有機テンプレートRは、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミンおよびそれらの誘導体から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
自発の反応圧力下、場合によっては、ガスを加えて、水熱条件の下、100〜200℃の温度に、固体COK−7の結晶が形成されるまで、攪拌しながらまたは攪拌することなく、ゲルが置かれる、請求項10〜13のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項15】
固体結晶を含む種が混合物に加えられる、請求項10〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
固体結晶は、固体COK−7の結晶である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
結晶種は、反応混合物において用いられる酸化物XOの0.01〜10重量%の比率で加えられる、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
結晶化後に、冷水での急冷によって0〜15℃の温度まで、10分〜4時間の継続時間にわたりオートクレーブが冷却される、請求項10〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
結晶化工程で得られる生成物は、
・固体を結晶化混合物から分離する工程;
・固体を洗浄する工程;および
・固体を乾燥させる工程
の少なくとも1つを経る、請求項10〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
固体は、合成の最後にか焼工程を経る、請求項10〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
か焼工程は、空気中または純粋な酸素(酸化媒体)中、300〜800℃の温度で行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
1種のケイ素源と、少なくとも1種のジアミンとを含む水性の混合物が反応させられる、請求項10〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
ジアミンは、ヘキサメチレンジアミンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1種のケイ素源と、1種のアルミニウム源と、少なくとも1種のアミンを含む水性の混合物が水の存在下に反応させられる、請求項10〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
アミンは、トリエチレンテトラミンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
トリエチレンテトラミンおよびヘキシルアミンの混合物を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の固体または請求項10〜26のいずれか1つに記載の方法を用いて製造された固体の、精油および石油化学における炭化水素の変換のための用途。
【請求項28】
炭化水素の水素化異性化のための請求項27に記載の用途。
【請求項29】
炭化水素の接触脱ろうのための請求項27に記載の用途。


【図1】
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【公開番号】特開2006−248892(P2006−248892A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60476(P2006−60476)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】