説明

固体絶縁物内部欠陥検出システム

【課題】欠陥検出対象物に放射線を照射しながらその固体絶縁物の欠陥を検出する作業を、効率よく且つ誤判定なく容易に実施する。
【解決手段】マンマシンインターフェース手段は、表示手段を有し、放射線量制御手段、放射線照射位置制御手段、部分放電検出手段および電圧印加手段を制御するとともに、欠陥検出対象物の外形、放射線照射位置、部分放電検出信号波形および印加電圧波形を表示手段の同一画面に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、欠陥検出対象物に対し放射線を照射しながらその固体絶縁物の部分放電を測定することにより当該個体絶縁物内部の欠陥を検出する固体絶縁物内部欠陥検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モールド変圧器などの樹脂モールドされた高電圧機器では、導体と樹脂との界面での剥離や樹脂内部のボイドといった欠陥の有無を検出するため、固体絶縁物である樹脂に所定の電圧を印加して部分放電を測定することが行われている。このような固体絶縁物内部の欠陥で発生する部分放電は、放電開始電圧以上の電圧が印加されても、実際に放電が発生するまでに数分から数時間にも及ぶ時間遅れが生じる場合があり、放電が観測されないために欠陥がないと誤判定することがあった。
【0003】
こうした問題点に対して、固体絶縁物にX線を照射しながら部分放電を測定することで放電の時間遅れ現象を解消する提案がなされている。部分放電が発生するにはボイド内部に放電の種となる初期電子が必要であり、通常は宇宙線や紫外線のエネルギーにより固体絶縁物周囲の気体が電離して供給されることが多い。しかし、固体絶縁物内部には宇宙線や紫外線が到達しづらく、初期電子が不足している状態にある。X線を固体絶縁物に照射すると、ボイド内部の気体の電離を促進させて初期電子を供給することができ、ひいては部分放電の発生を促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−105766号公報
【特許文献2】特開平9−127182号公報
【特許文献3】特開2010−60559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、欠陥検出対象物に対しX線などの放射線を照射すれば部分放電を促すことができるので、従来に比べて短い時間で部分放電測定作業または絶縁試験作業を終えることが期待されている。しかし、実際の作業では、X線の照射位置、X線の線量、部分放電の検出、印加電圧波形など多数の制御要素および検出情報が存在する。
【0006】
オペレータがこれら多数の要素を適切に制御しながら、部分放電とノイズとを的確に識別し、欠陥の有無や欠陥位置を正確に判定するには、あまりにも煩雑で困難な作業となる。また、X線を照射するので欠陥検出対象物を放射線遮蔽ボックスの中に設置する必要があるが、オペレータは欠陥検出対象物を含むX線照射装置の動作状態を外部から確認できないため、作業性を一層低下させる原因となっている。
【0007】
そこで、欠陥検出対象物に放射線を照射しながらその固体絶縁物の欠陥を検出する作業を、効率よく且つ誤判定なく容易に実施することが可能な固体絶縁物内部欠陥検出システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の固体絶縁物内部欠陥検出システムは、欠陥検出対象物に対し放射線を照射しながらその固体絶縁物の部分放電を測定することにより当該個体絶縁物内部の欠陥を検出する。この固体絶縁物内部欠陥検出システムは、欠陥検出対象物の固体絶縁物に放射線を照射する放射線照射手段と、放射線照射手段が照射する放射線量を制御する放射線量制御手段と、放射線照射手段が照射する放射線の欠陥検出対象物における位置を制御する放射線照射位置制御手段と、固体絶縁物内部で発生する部分放電を検出する部分放電検出手段と、固体絶縁物に電圧を印加する電圧印加手段と、マンマシンインターフェース手段とを備える。マンマシンインターフェース手段は、表示手段を有し、放射線量制御手段、放射線照射位置制御手段、部分放電検出手段および電圧印加手段を制御するとともに、欠陥検出対象物の外形、放射線照射位置、部分放電検出信号波形および印加電圧波形を表示手段の同一画面に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態を示す固体絶縁物内部欠陥検出システムの全体構成図
【図2】ディスプレイ装置の画面表示の一例を示す図
【図3】ボイドを包含した固体絶縁物試料に対するX線量と部分放電開始電圧との関係を示す図
【図4】欠陥検出対象物にX線ビームを照射した場合のX方向から見た図
【図5】第2の実施形態を示す図2相当図
【図6】第3の実施形態を示す図2相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図1ないし図4を参照しながら第1の実施形態を説明する。図1は、欠陥検出対象物に対して放射線を照射するための構造と電気的なブロック構成とを組み合わせて示す固体絶縁物内部欠陥検出システムの全体構成図である。ここでは、放射線としてX線を使用しており、外部から目視不能なX線遮蔽ボックスSBの内部は透過的に示している。
【0011】
固体絶縁物内部欠陥検出システム1は、欠陥検出対象物である変圧器2に対しX線を照射しながら変圧器2の樹脂モールド部分における部分放電を測定することにより、導体と樹脂2a(固体絶縁物)との界面での剥離、樹脂2a内部のボイドなどの欠陥を検出するシステムである。この固体絶縁物内部欠陥検出システム1は、電源装置3(電圧印加手段)、部分放電検出装置4(部分放電検出手段)、X線照射装置5(放射線照射手段)、X線量制御装置6(放射線量制御手段)、X線モジュール移動装置7(放射線照射位置制御手段)、パーソナルコンピュータ8(マンマシンインターフェース手段)などを備えて構成されている。
【0012】
電源装置3は、正弦波電圧を生成する電圧波形制御装置9、その正弦波電圧を増幅するアンプ10、および正弦波電圧を昇圧して電源線12に出力する変圧器11から構成されている。この電源装置3は、X線遮蔽ボックスSB内に設置された変圧器2の樹脂モールド部分に、パソコン8からの指令に基づいた正弦波交流電源電圧を印加する。
【0013】
部分放電検出装置4は、検出インピーダンス13と部分放電信号出力装置14とから構成され、変圧器2の樹脂2a内部の欠陥で発生した部分放電を検出し、その部分放電検出信号をパソコン8に出力する。検出インピーダンス13は、電源線12とグランドとの間に結合コンデンサ15を介して接続されており、放電電流を電圧に変換する。部分放電信号出力装置14は、変換された微小な電圧信号を増幅し波形整形した後、その部分放電検出信号をパソコン8に送信する。
【0014】
X線照射装置5は、X線管とスリットを備えたX線モジュール16、17から構成されている。X線モジュール16は図1に示す−Z方向にX線ビームを照射し、X線モジュール17は図1に示す+Y方向にX線ビームを照射する。これらX線モジュール16、17が照射するX線量(放射線量)は、パソコン8からの指令に基づきX線量制御装置6により制御される。
【0015】
X線モジュール移動装置7は、X線遮蔽ボックスSB内の天井面に配設されてX線モジュール16をXY平面にて移動させる移動装置7aと、X線遮蔽ボックスSB内の側面に配設されてX線モジュール17をXZ平面にて移動させる移動装置7bと、パソコン8からの指令に基づき後述するモータ19、20、22、23の回転を制御する照射位置制御装置7cとから構成されている。
【0016】
移動装置7aは、ボールねじ機構18により、モータ19、20の回転量に応じてX線モジュール16をX方向、Y方向に往復動させる。移動装置7bは、ボールねじ機構21により、モータ22、23の回転に応じてX線モジュール17をX方向、Z方向に往復動させる。この構成により、X線モジュール16、17から照射されるX線ビームを、変圧器2の樹脂2a内部で交差させることができる。
【0017】
パソコン8には、マンマシンインターフェース手段として動作するためのマンマシンインターフェースプログラム24がインストールされている。マンマシンインターフェースプログラム24は、電源装置3、部分放電検出装置4、X線量制御装置6およびX線モジュール移動装置7を制御するとともに、欠陥検出対象物である変圧器2の外形、X線照射位置、部分放電検出信号波形および印加電圧波形を含む制御情報および検出情報をディスプレイ装置25(表示手段)の画面に表示する。
【0018】
図2は、パソコン8がマンマシンインターフェースプログラム24を実行することによりディスプレイ装置25に表示する画面の一例を示している。欠陥検出対象物である変圧器2の外形26、変圧器2におけるX線照射位置27、部分放電検出信号波形28および印加電圧波形29が同一画面に表示されている。画面の右端部には、印加電圧30、照射線量31および測定周期32が表示されている。
【0019】
部分放電検出信号波形28は、部分放電信号出力装置14が出力した信号を示しており、1つのパルスが1回の部分放電に相当する。部分放電検出信号にはノイズが混入し易く、1つのパルスを観測しただけでは放電かノイズかの識別は難しい。そこで、図2では印加電圧の6周期分の部分放電検出信号を測定し表示している。その結果、オペレータは、複数の周期においてパルスが観測できた場合に部分放電が発生したと判定できる。
【0020】
ディスプレイ装置25は、タッチパネル形式の入力手段としても機能する。パソコン8は、マンマシンインターフェースプログラム24に基づいて、画面の印加電圧30の表示の下に、欠陥検出対象物への課電と停止(停電)を制御するボタン33を表示する。オペレータがボタン33の表示部に触れると、パソコン8に入力操作情報が入力され、電源装置3を介して欠陥検出対象物への課電と停止が制御される。また、画面の照射線量31の表示の下に、X線照射の開始と停止を制御するボタン34を表示する。オペレータがボタン34の表示部に触れると、パソコン8に入力操作情報が入力され、X線量制御装置6を介してX線照射が制御される。
【0021】
さらに、パソコン8は、マンマシンインターフェースプログラム24に基づいて、画面の上端部および左端部にX線モジュール16、17の位置を操作するためのボタン35〜40を表示する。ボタン35、36はX線モジュール16、17を図1に示すX方向に移動させるボタン、ボタン37、38はX線モジュール16をY方向に移動させるボタン、ボタン39、40はX線モジュール17をZ方向に移動させるボタンである。
【0022】
オペレータがボタン35〜40の表示部に触れると、パソコン8に入力操作情報が入力される。パソコン8は、その入力操作情報に応じた移動指令信号を照射位置制御装置7cに出力する。これにより、対応するモータ19、20、22、23が正逆回転し、X線モジュール16、17がそれぞれX−Y方向、X−Z方向に移動する。これとともに、パソコン8は、ディスプレイ装置25の画面上に変圧器2の外形26に重ねて描画したX線照射位置27を移動指令信号に基づいて該当する位置に移動させる。このようにすれば、オペレータはX線遮蔽ボックスSB内にある変圧器2の任意の位置にX線を照射することができる。
【0023】
次に、複数のX線ビームを交差させた場合の作用を説明する。図3はボイドを包含した固体絶縁物試料に照射するX線量を変化させて、X線照射中の部分放電開始電圧を実測した結果である。部分放電開始電圧を示す縦軸は、X線を照射しない場合の部分放電開始電圧を1として規格化している。横軸はX線量(放射線量)を示している。実測点間を結ぶ二点鎖線は、実測点の間を補完するための補助線である。X線量と部分放電開始電圧は反比例し、X線量が小さくなると部分放電開始電圧が高くなる傾向を有している。
【0024】
図4は、欠陥検出対象物である変圧器2にX線モジュール16、17からX線ビームを照射した場合のX方向から観測した図である。X線モジュール16から放射されたX線ビーム41が部分放電を発生させるに十分な線量を有していると、X線ビーム41が照射されているZ方向の線領域のいずれかで部分放電が発生するので、欠陥の位置はZ方向において不定となる。X線モジュール17から放射されたX線ビーム42についても、同様に欠陥の位置はY方向において不定となる。
【0025】
そこで、パソコン8は、X線量制御装置6により、単一のX線ビーム41、42の線量を部分放電が発生する線量を下回る線量とし、X線モジュール16から放射されたX線ビーム41にX線モジュール17から放射されたX線ビーム42が加わることで、部分放電が発生する線量に到達するようにX線量を制御する。そのため、照射位置制御装置7cにより、X線モジュール16のX座標とX線モジュール17のX座標とが一致するように位置を制御し、X線モジュール16から放射されたX線ビーム41とX線モジュール17から放射されたX線ビーム42を所望の領域43で交差させる。
【0026】
図3を参照しながら説明すると、例えば0.5(規格化値)の電圧を変圧器2の樹脂2aに印加した場合、線量R1を持つ単一の放射線ビームが通過する線領域では部分放電を発生させるのに線量が不足するが、線量R1を持つ2本のX線ビームが交差した領域43では線量がR2(=2×R1)となるため、部分放電を発生させるのに十分な線量となる。
【0027】
これを別の見方をすれば、線量R1を持つ単一のX線ビームが通過する線領域では部分放電が発生せず、線量R1を持つ2本のX線ビームが交差した領域43では部分放電が発生するような電圧例えば0.5(規格化値)の電圧を印加すればよい。これにより、X線ビーム41と42が交差した領域43では、部分放電が発生するのに十分な線量に達して初期電子が供給され、領域43でのみ部分放電を発生させることができるので、樹脂2a内部の欠陥位置を精度良く検出できるようになる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の固体絶縁物内部欠陥検出システム1は、欠陥検出対象物である変圧器2に対しX線を照射しながら、巻線等をモールドしている樹脂2aの部分放電を測定する。これにより、ボイドなどの欠陥内部の気体の電離を促進させて初期電子を供給し、より短時間に部分放電を発生させることができ、個体絶縁物内部の欠陥を効率良く検出することができる。
【0029】
固体絶縁物内部欠陥検出システム1は、マンマシンインターフェース手段として機能するパソコン8を備え、欠陥検出対象物である変圧器2の外形26、変圧器2におけるX線照射位置27、部分放電検出信号波形28および印加電圧波形29をディスプレイ装置25の同一画面に表示する。部分放電検出信号波形および印加電圧波形は、従来はオシロスコープなどの機器を準備して表示させていたものである。
【0030】
この一元管理により、オペレータは、外部からは視認できないX線遮蔽ボックスSB内にある変圧器2について、ディスプレイ装置25を見ながらパソコン8を操作してX線照射位置を所望の位置に移動できるとともに、変圧器2におけるX線照射位置、部分放電検出信号波形および印加電圧波形を同時に確認できる。これにより、部分放電の発生によるパルス信号をノイズと識別し易くなり、効率よく且つ誤判定なく容易に欠陥を検出することができる。例えば、部分放電の発生の判断がつきにくい場合、オペレータは、画面上の部分放電検出信号波形および印加電圧波形を注視しながら、同一画面上に表示されるX線照射位置を確認しつつずらすことにより、部分放電によるパルスかノイズかをより正確に判断できる。
【0031】
パソコン8は、上記画面に印加電圧30、照射線量31および測定周期32を表示し、オペレータは、パソコン8を操作して印加電圧、照射線量および測定周期を変更できる。これにより、オペレータは、部分放電の発生条件である印加電圧と照射線量も同時に設定および確認でき、部分放電信号とノイズとをより確実に識別可能となる。また、パソコン8は、設定された周期分だけ部分放電検出信号波形28および印加電圧波形29を画面に表示するので、オペレータは、複数の周期においてパルスが観測できた場合に部分放電が発生したと判定することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図5を参照しながら説明する。本実施形態の全体構成は第1の実施形態と同様である。画面表示を示す図5において、図2と同一部分には同一符号を付している。パソコン8は、X線照射の開始と停止を制御するボタン34を画面に表示し、オペレータのボタン34へのタッチ操作によりまたは自らの制御に基づいて欠陥検出対象物へのX線照射と停止を制御する。
【0033】
部分放電信号出力装置14が出力する信号には突発的なノイズが混入しやすく、1つのパルスを観測しただけでは放電かノイズかの識別は難しい。そこで、X線を照射した変圧器2において部分放電信号出力装置14が出力する信号にパルスが観測された場合、X線照射位置はそのままで一旦X線照射を停止してパルスの消滅を確認し、再びX線を照射してパルスが出現するのを確認する。上述したように部分放電はX線照射によって励起されるので、X線照射を停止すると部分放電は発生しなくなる。X線の照射、停止、照射に対応して部分放電信号出力装置14の出力信号にパルスが出現、消滅、出現すれば、部分放電が発生したと判断することができる。
【0034】
パソコン8は、オペレータのボタン33へのタッチ操作に応じてX線の照射と停止を順次繰り返す他、照射モードプログラムに基づいて自ら自動で行うこともできる。その際、ディスプレイ装置25の同一画面に、X線の照射時、停止時、再度の照射時における部分放電検出信号波形28と印加電圧波形29を並べて表示する。オペレータは、これらの波形を互いに比較することにより、X線の照射の有無とパルス波形の発生の有無との関連性を容易に確認することできる。部分放電によるパルスは、X線照射とパルスの出現とが連動するので、本実施形態によれば部分放電とノイズとを精度良く識別できる。
【0035】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図6を参照しながら説明する。本実施形態の全体構成は第1の実施形態と同様である。画面表示を示す図6において、図2と同一部分には同一符号を付している。パソコン8は、欠陥検出対象物への課電と停止を制御するボタン33を画面に表示し、オペレータのボタン33へのタッチ操作によりまたは自らの制御に基づいて欠陥検出対象物への課電と停止を制御する。
【0036】
X線を照射した変圧器2において部分放電信号出力装置14が出力する信号にパルスが観測された場合、一旦課電を停止してパルスの消滅を確認し、再び課電してパルスが出現するのを確認する。部分放電は、欠陥検出対象物にX線を照射し且つ課電することによって発生するので、課電を停止すると部分放電は発生しなくなる。課電、停止、課電に対応して部分放電信号出力装置14の出力信号にパルスが出現、消滅、出現すれば、部分放電が発生したと判断することができる。
【0037】
パソコン8は、オペレータのボタン33へのタッチ操作に応じて課電と停止を順次繰り返す他、課電モードプログラムに基づいて自ら自動で行うこともできる。その際、ディスプレイ装置25の同一画面に、課電時、停止時、再度の課電時における部分放電検出信号波形28と印加電圧波形29を並べて表示する。オペレータは、これらの波形を互いに比較することにより、課電の有無とパルス波形の発生の有無との関連性を容易に確認することできる。部分放電によるパルスは、課電とパルスの出現とが連動するので、本実施形態によれば部分放電とノイズとを精度良く識別できる。
【0038】
(その他の実施形態)
以上説明した複数の実施形態に加えて以下のような構成を採用してもよい。
放射線はX線に限られず、例えばγ線であってもよい。また、欠陥検出対象物は変圧器に限られず、その他の電気機器であってもよい。
電源装置3において、アンプ10により所望の電圧まで増幅できれば、変圧器11は設けなくてもよい。
部分放電検出装置4は、検出インピーダンス13に替えてCTを用いてもよい。
【0039】
第1の実施形態では、部分放電検出信号を計測する期間として6周期を設定したが、必ずしも交流電源電圧の6周期分に限ることなく、少なくとも2周期以上とすることが好ましい。
第2の実施形態で、X線の照射時、停止時、再度の照射時においてそれぞれ複数周期分の部分放電検出信号波形28と印加電圧波形29を表示してもよい。また、X線の照射と停止を3回以上の複数回にわたり順次行ってもよい。
【0040】
第3の実施形態で、課電時、停止時、再度の課電時においてそれぞれ複数周期分の部分放電検出信号波形28と印加電圧波形29を表示してもよい。また、課電と停止を3回以上の複数回にわたり順次行ってもよい。
第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせてもよい。また、X線の照射と課電の組み合わせを種々に変えて、それぞれについての部分放電検出信号波形28と印加電圧波形29を表示してもよい。
【0041】
各実施形態では、2本のX線ビームを異なった方向に照射するため、2つのX線モジュール16、17と移動装置7a、7bを備えたが、3本以上のX線ビームを異なった方向に照射するため、3つ以上のX線モジュールと移動装置を備えてもよい。この場合も、複数の放射線ビームが交差した領域が部分放電の発生に十分な放射線量となり、単一の放射線ビームが通過する領域が部分放電の発生に不足する放射線量となるように放射線量を制御する。
欠陥検出対象物の線領域の何れかで部分放電が生じていることを検出できれば十分である場合には、1つのX線モジュールと移動装置を備えて1本のX線ビームとしてもよい。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、欠陥検出対象物に対しX線を照射しながら固体絶縁物の部分放電を測定するので、より短時間に部分放電を発生させることができ、個体絶縁物内部の欠陥を効率良く検出することができる。また、固体絶縁物内部欠陥検出システムは、マンマシンインターフェース手段を備え、欠陥検出対象物の外形、X線照射位置、部分放電検出信号波形および印加電圧波形を同一画面に表示するので、部分放電の発生によるパルス信号をノイズと識別し易くなり、効率よく且つ誤判定なく容易に欠陥を検出することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
図面中、1は固体絶縁物内部欠陥検出システム、2は変圧器(欠陥検出対象物)、2aは樹脂(固体絶縁物)、3は電源装置(電圧印加手段)、4は部分放電検出装置(部分放電検出手段)、5はX線照射装置(放射線照射手段)、6はX線量制御装置(放射線量制御手段)、7はX線モジュール移動装置(放射線照射位置制御手段)、8はパーソナルコンピュータ(マンマシンインターフェース手段)、25はディスプレイ装置(表示手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥検出対象物に対し放射線を照射しながらその固体絶縁物の部分放電を測定することにより当該個体絶縁物内部の欠陥を検出する固体絶縁物内部欠陥検出システムであって、
前記欠陥検出対象物の固体絶縁物に放射線を照射する放射線照射手段と、
前記放射線照射手段が照射する放射線量を制御する放射線量制御手段と、
前記放射線照射手段が照射する放射線の前記欠陥検出対象物における位置を制御する放射線照射位置制御手段と、
前記固体絶縁物内部で発生する部分放電を検出する部分放電検出手段と、
前記固体絶縁物に電圧を印加する電圧印加手段と、
表示手段を有し、前記放射線量制御手段、放射線照射位置制御手段、部分放電検出手段および電圧印加手段を制御するとともに、前記欠陥検出対象物の外形、放射線照射位置、部分放電検出信号波形および印加電圧波形を前記表示手段の同一画面に表示するマンマシンインターフェース手段とを備えたことを特徴とする固体絶縁物内部欠陥検出システム。
【請求項2】
前記放射線照射手段は、前記固体絶縁物に複数の放射線ビームを照射可能に構成され、
前記放射線照射位置制御手段は、前記複数の放射線ビームのそれぞれについて前記欠陥検出対象物における照射位置を制御可能に構成され、
前記マンマシンインターフェース手段は、前記放射線量制御手段により、前記複数の放射線ビームが交差した領域が部分放電の発生に十分な放射線量となり、単一の放射線ビームが通過する領域が部分放電の発生に不足する放射線量となるように放射線量を制御することを特徴とする請求項1記載の固体絶縁物内部欠陥検出システム。
【請求項3】
前記マンマシンインターフェース手段は、前記放射線照射手段を制御して、前記欠陥検出対象物に対する放射線の照射と停止を複数回にわたり順次行うことを特徴とする請求項1または2記載の固体絶縁物内部欠陥検出システム。
【請求項4】
前記マンマシンインターフェース手段は、前記電圧印加手段を制御して、前記欠陥検出対象物に対する課電と停止を複数回にわたり順次行うことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の固体絶縁物内部欠陥検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127687(P2012−127687A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277011(P2010−277011)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】