説明

固体酸化物型燃料電池

【課題】本発明の課題は、比較的安価であると同時に、これまでのものに比べてより高い強度を有する固体酸化物型燃料電池を提供することである。
【解決手段】金属サポート材料、良好な炭化水素クラッキング触媒で構成された活性アノード層、電解質層、活性カソード層、およびカソード集電板までの遷移層、を有するSOFCセルであって、前記金属サポート材料と前記活性アノード層の間の拡散を抑制する手段が提供されることを特徴とするSOFCセル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属サポートを有する固体酸化物型燃料電池(SOFC)に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願第2002/0048 699号は、固体電解質型燃料電池に関するものであり、この燃料電池は、多孔質領域と、該多孔質領域と隣接する非多孔質領域とを有するフェライト系ステンレス鋼基板を有する。基板の多孔質領域の一つの表面の下方には、フェライト系ステンレス鋼バイポーラ板が配置され、このバイポーラ板は、多孔質領域の上部の基板の非多孔質領域に、密閉式に設置される。基板の多孔質領域の他の表面上には、第1の電極層が設置され、第1の電極層上には、電解質層が設置され、電解質層の上部には、第2の電極層が設置される。そのような固体酸化物型燃料電池は、比較的安価である。しかしながら、この燃料電池は、十分な強度を有さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第2002/0048 699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、比較的安価であると同時に、これまでのものに比べてより高い強度を有する固体酸化物型燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるSOFCは、
金属サポート材料、
良好な炭化水素クラッキング触媒で構成された活性アノード層、
電解質層、
活性カソード層、および
カソード集電板までの、好ましくは、LSMとフェライトの混合物で構成された遷移層、
を有し、
前記金属サポートと前記活性アノードの間の拡散を抑制する手段が提供されることを特徴とする。
【0006】
Ni−YSZ(イットリア安定化ジルコニア)アノードサポートの代わりに、金属サポートを使用することにより、サポートの機械的強度が向上し、サポートの酸化還元反応の安定性が確保される。
【0007】
金属サポートを使用する場合の問題は、焼結(比較的高い温度で行われる)の際に、活性アノード層からの電極材料が、金属サポートと相互拡散し、例えば、サポートにおいて、フェライト相からオーステナイト相への有害な相変態が生じることである。
【0008】
本発明では、電子伝導性酸化物で終端する傾斜セラミック構造として、金属サポートを製作することにより、または活性アノード層を多孔質層として製作し、焼結後に、活性アノード材料を含浸させることにより、この問題が解消される。
【0009】
本発明による特定の実施例では、燃料電池は、
実質的に純粋な電子伝導性酸化物で終端する傾斜層状セラミック構造からなるフェライト系金属サポート、
ドープされたセリアとNi−Fe合金との混合物のような、良好な炭化水素触媒からなる活性アノード層、
電解質層、
活性カソード層、
LSM(LaxSr1-xMnO3)とフェライトの混合物から構成されることが好ましい遷移層、および
単一層のLSMで構成されることが好ましいカソード集電板
を有する。
【0010】
FeCr多孔質サポートは、全ての内表面および外表面に、酸化層を有し、この酸化層は、適当な大気中でのFe−Cr合金自身の酸化によって、または合金へのコーティングによって、形成されても良い。このコーティングの目的は、炭素およびタールの付着を抑制することである。コーティングの組成は、例えばCr2O3、CeO2、LaCrO3、SrTiO3をベースとしても良い。いかなる場合も、ベース酸化物は、ドープされることが好ましい。
【0011】
本発明によるSOFCセルでは、電解質層と活性カソード層との間に、ドープされたセリアの反応バリア層が設置されても良い。前記反応層は、厚さが0.1〜1μmである。バリア層は、カソードから電解質へのカチオンの拡散を抑制する。その結果、寿命が延伸される。
【0012】
本発明では、活性カソードは、スカンジアおよびイットリア安定化ジルコニア(SrYSZ)、またはドープされたセリアの中から選択された一つの材料と、LSM、ランタノイドストロンチウムマンガネート(LnSrMn)またはランタノイドストロンチウム鉄コバルト酸化物(LnSrFeCo)-O、(Y1-xCax)Fe1-yCoyO3、(Gd1-xSrx)sFe1-yCoyO3もしくは(Gd1-xCax)sFe1-yCoyO3の中から選択された一つの材料との複合材で構成されても良い。そのようなカソード材料は、他のカソード材料よりも優れた特性を示す。
【0013】
本発明では、電解質層は、共ドープされたジルコニア系酸素イオン伝導体で構成されても良い。そのような電解質は、YSZよりも高い酸素イオン伝導度を有し、長時間安定性がScSZよりも良好である。代わりに、ドープされたセリアが使用されても良い。
【0014】
本発明では、SOFCセルは、フェライト系ステンレス鋼サポート、Ni合金のような良好な炭化水素クラッキング触媒とドープされたセリアまたはScYSZのような好適なイオン伝導体とで構成された活性複合材アノード層、電解質層、活性カソード層、好ましくはLSMとフェライトの混合物からなる遷移層、および好ましくは単相のLSMからなるカソード集電板を有しても良い。
【0015】
特定の実施例では、金属サポートは、FeCrMx合金で構成されても良い。Mxは、Ni、Ti、Ce、Mn、Mo、W、Co、La、Y、Alのような合金元素である。濃度は、オーステナイト形成のレベル未満に低く抑えられる。
【0016】
別の特定の実施例では、活性アノードは、8YSZ、共ドープされたジルコニア、または共ドープされたセリアの多孔質層で構成されても良い。0〜50%の金属合金が添加されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による高強度の中間温度域のSOFCセルを示す図である。
【図2】本発明によるSOFCセルに使用されるカソード材料を含む、各種カソード材料の面積比抵抗を示す図である。
【図3】アノード含浸層を有するSOFCセルを示す図である。
【図4】アノード含浸層およびバリア層を有するSOFCセルを示す図である。
【図5】ダブル電極含浸層を有するSOFCセルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による固体酸化物型燃料電池SOFCを図1に示す。セルは、実質的に純粋な電子伝導性酸化物で終端する金属サポート1と、ドープされたセリアまたはScYSZ、Ni−Fe合金で構成された活性アノード層2と、共ドープされたジルコニアまたはセリアをベースとする酸素イオン伝導体で構成された電解質層3と、活性カソード層5と、遷移層6としてのLSMおよびフェライト層の混合物の層と、好ましくはLSMまたはLnSrMnCoの単層で構成されたカソード集電板(または多孔質金属集電板)7とを有する。
【0019】
7つの基本層で構成される、固体酸化物型燃料電池全体の基礎は、機能性傾斜多孔質金属サーメット構造1であり、この構造は、多孔質フェライト系ステンレス鋼と、例えば、(Sr1-xLax)sTi1-yNbyO3(LSTN)のような電子伝導性酸化物とで構成される。ここで0≦x≦0.4、0.5≦s<1、および0≦y≦1である。そのような酸化物の別の例は、(La1-xSrx)CrO3(LSC)である。別の例は、Sr(La)Ti(Nb)O3(LSTN)+FSS(例えばFe22Cr)である。通常の場合、熱膨張係数が金属の熱膨張係数とほぼ整合する、いかなる電子伝導性酸化物(n型またはp型伝導体)も使用可能である。合金表面(内面および外面)には、多孔質アノードサポート1への炭化水素のクラッキングを回避するため、電子伝導性酸化物がコーティングされる。多孔質サポート内で炭化水素クラッキングが生じると、炭素の堆積が生じ、これは空隙の閉塞につながるため、炭化水素のクラッキングは、活性アノードのみにおいて生じさせる必要がある。
【0020】
Ni−YSZアノードサポートの代わりに金属サポート1を使用することにより、サポートの機械的強度が向上し、サポートの酸化還元反応の安定性が確保される。多孔質フェライト系ステンレス鋼1は、例えばLSCまたはLSTN(Sr(La)Ti(Nb)O3)のような純粋な電子伝導性酸化物で終端するため、フェライト系ステンレス鋼に溶解し易く、フェライトからオーステナイト構造への有害な相変態が生じ得る活性アノード2内の金属、特にNiまたはNiOとの間の反応性が抑制される。また拡散は、元素が金属サポートからアノードに拡散するような、反対の方向にも生じ得る。
【0021】
活性アノード層2は、ドープされたセリア+ScYSZ+Ni−Fe合金の傾斜構造であり、良好な炭化水素クラッキング触媒となるナノ寸法の金属触媒は、数%しか含まない。この層の厚さは、1〜50μmである。
【0022】
活性アノード2は、ScYSZおよびLSTN中において、NiOとFeOxの固溶体またはその混合物から製作される。この調製によって、数%のナノ寸法のNi−Fe触媒が、その後の燃料電池作動の際に低減される。これにより、触媒粒子が相互にある距離だけ離れて保持されるため、触媒の表面積が大きくなり、触媒の凝集が回避される。少量の高表面積ニッケルおよび鉄によって、迅速なクラッキングおよび炭化水素の変換が可能となり、水素の十分な電気化学的変換が可能となる。触媒を微細に分散させるだけで、炭化水素が燃料として使用される際の、カーボンナノチューブの形成が回避される。アノードのみが、数%の触媒を含むため、酸化還元反応が安定となる(アノードの僅かの部分だけが酸化還元活性を示す)。酸化還元反応サイクルは、最終的にNi−Fe触媒のナノ構造を回復させる。アノード2は、相当量のセリアを含み、これは、炭素の電気化学的酸化に触媒作用を及ぼし、結果的にクラッキング過程が生じる。
【0023】
電解質層3は、共ドープされたジルコニア系の酸素イオン伝導体(Y,Sc)SZ(イットリア、スカンジア安定化ジルコニア)で構成される。電解質の種類は、YSZよりも高い酸素イオン伝導度を有し、長時間安定性がScSZよりも良好な材料である。代わりに、ドープされたセリアを使用しても良い。
【0024】
550℃の温度で作動するセル用の活性カソード5は、CeドープされたScYSZ、またはドープされたセリア(例えば、ガドリニアドープセリアCGO)の中から選択された一つの材料と、(Y1-xCax)Fe1-yCoyO3、(Gd1-xSrx)sFe1-yCoyO3、(Gd1-xCax)sFe1-yCoyO3の中から選択された一つの材料との複合材から製作されても良い。別の例は、傾斜複合材(Y,Ca)FeCoO3およびドープされたジルコニアまたはセリアである。そのようなカソード5は、例えば図2に示すように、LSMおよび他のカソード材料に比べて優れた特性を示す。Aサイトにおいて、広く利用されるカチオンLaおよびSrを、YおよびCaに置換することによって、カソードの特性と安定性の両方が向上される。LaおよびSrに代えて、YおよびCaを使用した場合、非伝導性ジルコネート(La2Zr2O7おおよびSrZrO3)の形成が回避されるため、安定性が改善される。ドープされたセリアの反応バリア層4(カソードからScYSZ電解質へのカチオンの拡散を防止する)は、十分に長い寿命を有する必要がある。700℃を超える温度で作動する燃料電池の場合、LSM−YSZまたは(Y,Sc)SZ複合材カソードが使用されても良く、この場合、セリアバリア層4は不要となる。
【0025】
活性カソード層5の上には、LSM(La(Sr)MnO3)またはLSFCo(La1-xSrxFe1-yCoyO3-δ)の単層のカソード集電板7までの遷移領域として、LSMとフェライトまたはLSM+(Y,Ca)FeCoO3の混合物からなる傾斜層6が設置される。この層は、最も高い電子伝導性を有する。遷移層6の役割は、LSMとフェライトの間の熱膨張係数の僅かの差による局部的な高熱応力を抑制することである。この層は、LSM/YSZがカソードとして使用される場合、削除することができる。
【0026】
図2には、固有面積抵抗率(ASR)で示された各種カソード特性のアレニウスプロットを示す。GSFCo−フェライトは、貴金属触媒を含むカソードと同様に、良好な特性を示すことがわかる。
【0027】
あるいはSOFCは、図3のように、多孔質電極含浸層で構成しても良く、この場合、金属サポートと活性アノードの間の拡散が回避される。図3を参照して、層11乃至13について説明する。
【0028】
層11:金属サポート(200〜2000μm)、0〜50vol%の酸化物(例えば、ドープされたジルコニア、ドープされたセリア、またはAl2O3、TiO2、MgO、CaO、Cr2O3もしくはこれらの組み合わせ等の他の酸化物、ただしこれらの材料に限られない)を含むFeCrMx合金。酸化物の添加によって、いくつかの目的が果たされる。すなわち、1)アノード層と金属層間の化学結合の増強、2)熱膨張係数の調節、3)焼結性および粒成長の制御である。
【0029】
層12:アノード(20〜100μm)の含浸用の多孔質層、Sc−Y−Ga−Ceドープ化ジルコニア/Sm−Gd−Y、または金属合金(FeCrMx)を追加で有するもしくは有さない、いずれかのLn元素もしくはCaOドープされたセリア。金属サポート材料が追加された場合、層は、電子伝導性(金属)とともに、酸素イオン伝導性(ドープされたジルコニア/セリア)を有する。ドープされたセリアの場合、層は、ある電気触媒効果を示す。アノードは、焼結後に、最終的に電気触媒を含浸することにより構成される。(ドープ化セリアもしくは他の電気触媒を有するまたは有さないNi)。
【0030】
層13:標準的な電解質(〜10μm)、層12と同様のイオン伝導性材料またはLaGaO3系の電解質。
【0031】
層14:燃料電池;以下の図3および5に示すように、2つの異なる構成がある。
【0032】
図3:カソードの一般的なスプレー処理またはスクリーン印刷処理。
【0033】
図5:カソードを有する第2の多孔質層14の含浸処理。
【0034】
含浸処理によって、以下の利点が得られる:
1アノード/金属サポートバリア層が不要となり、単純になる
2安価な処理プロセス−−ダブル含浸層の場合、一つの焼結処理のみが必要となる
3Niなしで焼結処理が実施され、これにより焼結時の粗大化の問題が生じなくなる
4含浸処理によって、高表面積の電極が得られる可能性が高まる
5作動温度が焼結温度よりも低いため、電極材料と他のセル材料の間の化学反応が抑制/防止される
6含浸層の複合構造によって、電解質と金属サポートとの間に、良好な機械的結合および良好な界面伝導性が提供される。
【0035】
以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0036】
第1のステップでは、Fe−22%Crフェライト系ステンレス鋼組成のペーストが、厚さが1mmとなるようにテープキャスティングされる。
【0037】
第2のステップでは、Fe−Crフェライト鋼上に、80wt%(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3と20wt%Fe−22%Crペーストの複合材からなるペーストが、厚さが5乃至50μmとなるようにテープキャスティングされる。
【0038】
第3のステップでは、(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3が、厚さが5乃至50μmとなるようにスプレー塗布される。
【0039】
第4のステップでは、活性アノードスラリーが、厚さが10μmとなるようにスプレー塗布される。スラリーの組成は、50wt%Y0.04Sc0.16Zr0.8O2および50wt%Sr0.84Ni0.05Fe0.1TiO3である。
【0040】
第5のステップでは、Y0.04Sc0.16Zr0.8O2組成の電解質が、厚さが5μmとなるようにスプレー塗布される。
【0041】
第6のステップでは、得られた半電池が1300℃、9%H2+91%Arの還元雰囲気下で共焼結される。
【0042】
第7のステップでは、Ce0.9Gd0.1O1.95の組成のバリア層が、厚さが0.2μmとなるようにスプレー塗布され、その後700℃で焼結される。
【0043】
第8のステップでは、Fe−Cr合金がコーティングされる。
【0044】
第9のステップでは、50wt%(Gd0.6Sr0.4)0.99Co0.2Fe0.8O3および50wt% Y0.04Sc0.16Zr0.8O2の組成のカソードが、厚さが20μmとなるようにスプレー塗布される。
【0045】
第10のステップでは、50wt%(La0.85Sr0.15)0.95MnO3および(Gd0.8Sr0.4)0.99Co0.2Fe0.8O3が、厚さが1乃至30μmとなるようにスプレー塗布される。
【0046】
第11のステップでは、(La0.85Sr0.15)0.95MnO3の組成の集電板が、厚さが50μmとなるようにスクリーン印刷される。
【0047】
カソード集電板およびアノード集電板は、スタック内でin-situで焼結される。
【0048】
得られた固体酸化物型燃料電池は、高強度で可撓性があり、炭化水素と水素の両方がアノードで変換される。燃料電池は、クラッキングによって炭化水素を変換し、その後、クラッキング生成物の電気化学的酸化が生じる。酸化剤として、空気または純酸素が使用される。
【実施例2】
【0049】
第1のステップでは、Fe−22%Crフェライト系ステンレス鋼の組成のペーストを、厚さが1mmとなるようにテープキャスティングされる。
【0050】
第2のステップでは、Fe−Crフェライト鋼上に、組成が80wt%(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3および20wt%Fe−22%Crのペーストが、厚さが5乃至50μmとなるようにテープキャスティングされる。
【0051】
第3のステップでは、(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3が、厚さが5乃至30μmとなるようにスプレー塗布される。
【0052】
第4のステップでは、活性アノードスラリーが、厚さが10μmとなるようにスプレー塗布される。スラリーの組成は、50wt%Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δおよび50wt%Sr0.84Ni0.05 Fe0.1TiO3である。
【0053】
第5のステップでは、Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δの組成の電解質が、厚さが5μmとなるようにスプレー塗布される。
【0054】
第6のステップでは、得られた半電池が、1300℃、9%H2+91%Arの還元雰囲気下で共焼結される。
【0055】
第7のステップでは、Ce0.9Gd0.1O1.95の組成のバリア層が、厚さが0.2μmとなるようにスプレー塗布され、その後700℃で焼結される。
【0056】
第8のステップでは、Fe−Cr合金がコーティングされる。
【0057】
第9のステップでは、50wt%(Gd0.6Sr0.4)0.99Co0.2Fe0.8O3-δおよび50wt%CGO10の組成のカソードが、厚さが20μmとなるようにスプレー塗布される。
【0058】
第10のステップでは、50wt%(La0.85Sr0.15)0.95MnO3および50wt% (Gd0.6Sr0.4)0.99Co0.2 Fe0.8O3が、厚さが1乃至30μmとなるようにスプレー塗布される。
【0059】
第11のステップでは、(La0.85Sr0.15)0.95MnO3の組成の集電板が、厚さが50μmとなるようにスクリーン印刷される。カソードは、スタック内でin-situで焼結される。
【0060】
カソード集電板およびアノード集電板は、スタック内でin-situで焼結される。
【0061】
得られた固体酸化物型燃料電池は、高強度で可撓性があり、炭化水素と水素の両方がアノードで変換される。燃料電池は、クラッキングによって炭化水素を変換し、その後、クラッキング生成物の電気化学的酸化が生じる。酸化剤として、空気または純酸素が使用される。
【実施例3】
【0062】
第1のステップでは、Fe−22%Crフェライト系ステンレス鋼の組成のペーストが、厚さが1mmとなるようにテープキャスティングされる。
【0063】
第2のステップでは、Fe−Crフェライト鋼上に、組成が80wt%(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3および20wt%Fe−22%Crのペーストが、厚さが5乃至50μmとなるようにテープキャスティングされる。
【0064】
第3のステップでは、(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3が、厚さが1乃至30μmとなるようにスプレー塗布される。
【0065】
第4のステップでは、活性アノードスラリーが、厚さが10μmとなるようにスプレー塗布される。スラリーの組成は、50wt%Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δおよび50wt% Sr0.84Ni0.05Fe0.1TiO3である。
【0066】
第5のステップでは、Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δの組成の電解質が、厚さが5μmとなるようにスプレー塗布される。
【0067】
第6のステップでは、Ce0.9Gd0.1O1.95の組成のバリア層が、厚さが0.5μmとなるようにスプレー塗布される。
【0068】
第7のステップでは、得られた半電池が、1350℃、9%H2+91%Arの還元雰囲気下で共焼結される。
【0069】
第8のステップでは、Fe−Cr合金がコーティングされる。
【0070】
第9のステップでは、50wt%(Gd0.6Ca0.4)0.99Co0.2Fe0.8O3および50wt%CGO10の組成のカソードが、厚さが20μmとなるようにスプレー塗布される。
【0071】
第10のステップでは、50wt%(La0.85Sr0.15)0.95MnO3および(Gd0.6Sr0.4)0.99Co0.2Fe0.8O3が、厚さが1乃至30μmとなるようにスプレー塗布される。
【0072】
第11のステップでは、(La0.85Sr0.15)0.95MnO3の組成の集電板が、厚さが50μmとなるようにスクリーン印刷される。カソードは、スタック内でin-situで焼結される。
【0073】
得られた固体酸化物型燃料電池は、高強度で可撓性があり、炭化水素と水素の両方がアノードで変換される。燃料電池は、クラッキングによって炭化水素を変換し、その後、クラッキング生成物の電気化学的酸化が生じる。酸化剤として、空気または純酸素が使用される。
【実施例4】
【0074】
第1のステップでは、Fe−22%Crフェライト系ステンレス鋼の組成のペーストが、厚さが1mmとなるようにテープキャスティングされる。
【0075】
第2のステップでは、Fe−Crフェライト鋼上に、組成が80wt%(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3および20wt%Fe−22%Crのペーストが、厚さが5乃至50μmとなるようにテープキャスティングされる。
【0076】
第3のステップでは、(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3が、厚さが1乃至30μmとなるようにスプレー塗布される。
【0077】
第4のステップでは、活性アノードスラリーが、厚さが10μmとなるようにスプレー塗布される。スラリーの組成は、50wt%Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δおよび50wt%Sr0.84Ni0.05Fe0.1TiO3である。
【0078】
第5のステップでは、Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δの組成の電解質が、厚さが5μmとなるようにスプレー塗布される。
【0079】
第6のステップでは、得られた半電池が、1350℃、9%H2+91%Arの還元雰囲気下で共焼結される。
【0080】
第7のステップでは、50wt%LSMおよび50wt% Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δの組成のカソードが、厚さが20μmとなるようにスプレー塗布される。
【0081】
第8のステップでは、(La0.85Sr0.15)0.95MnO3の組成の集電板が、厚さが50μmとなるようにスクリーン印刷される。カソードは、スタック内でin-situで焼結される。
【0082】
得られた固体酸化物型燃料電池は、高強度で可撓性があり、炭化水素と水素の両方がアノードで変換される。燃料電池は、クラッキングによって炭化水素を変換し、その後、クラッキング生成物の電気化学的酸化が生じる。酸化剤として、空気または純酸素が使用される。
【実施例5】
【0083】
第1のステップでは、Fe−22%Crフェライト系ステンレス鋼の組成のペーストが、厚さが1mmとなるようにテープキャスティングされる。
【0084】
第2のステップでは、Fe−Crフェライト鋼上に、組成が80wt%(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3および20wt%Fe−22%Crのペーストが、厚さが5乃至50μmとなるようにテープキャスティングされる。
【0085】
第3のステップでは、(Sr0.8La0.2)0.95Ti0.9Nb0.1O3が、厚さが1乃至30μmとなるようにスプレー塗布される。
【0086】
第4のステップでは、活性アノードスラリーが、厚さが10μmとなるようにスプレー塗布される。スラリーの組成は、50wt%Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δおよび50wt%Sr0.84Ni0.05Fe0.1TiO3である。
【0087】
第5のステップでは、Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δの組成の電解質が、厚さが5μmとなるようにスプレー塗布される。
【0088】
第6のステップでは、得られた半電池が、1350℃、9%H2+91%Arの還元雰囲気下で共焼結される。
【0089】
第7のステップでは、50wt%LSMおよび50wt% Y0.04Sc0.16Zr0.8O2-δの組成のカソードが、厚さが20μmとなるようにスプレー塗布される。
【0090】
第8のステップでは、(La0.85Sr0.15)0.95MnO3の組成の集電板が、厚さが50μmとなるようにスクリーン印刷される。
【0091】
カソードは、スタック内でin-situで焼結される。
【0092】
得られた固体酸化物型燃料電池は、高強度で可撓性があり、炭化水素と水素の両方がアノードで変換される。燃料電池は、クラッキングによって炭化水素を変換し、その後、クラッキング生成物の電気化学的酸化が生じる。酸化剤として、空気または純酸素が使用される。
【実施例6】
【0093】
例えば、図3に示すように、Fe22Cr合金(+Mn等の微量成分)粉末サスペンションをテープキャスティングすることにより、厚さが20乃至2000μmの範囲のサポートシートが製作される。サポート11を乾燥後、スプレー塗布により、アノード含浸用の層(層12、50μm)が設置され、最後に電解質層(層13、10μm)が設置される。両方の層は、Zr0.78Sc0.20Y0.02O2-δの組成を有する。スプレー用サスペンションは、含浸層12が少なくとも40%のポロシティを有し、平均ポア寸法が1乃至3μmとなるように製作され、電解質は、焼結後に緻密となる。サンプルは、その後所望の寸法に裁断され、制御された還元性条件下で、いわゆる半電池が焼結される。真空注入法により、Ni-、Ce-、 Gd-窒化物の溶液が、多孔質ジルコニア層12に含浸される。得られたアノードは、40%Niおよび60%(Gd0.1Ce0.9)O2-δの体積濃度を有する。電解質表面の乾燥と洗浄の後、スプレー塗布により、(Gd0.6Sr0.4)0.99(Co0.2Fe0.8)O3-δのカソード(層14、40μm)が設置される。
【実施例7】
【0094】
例えば、図3に示すように、Fe22Cr合金(+微量追加成分)粉末サスペンションをテープキャスティングすることにより、厚さが200乃至2000μmの範囲のサポートシートが製作される。サポート11を乾燥後、Zr0.78Sc0.20Y0.02O2-δとFeCr合金の1:1の体積比の混合物を有するインクのスクリーン印刷により、アノード含浸用の層(層12、50μm)が設置される。含浸層に金属を追加することにより、金属サポートと含浸層の間に良好な結合が得られる。最後にスプレー塗布法により、電解質層(層13、10乃至15μm)が設置される。セルは、実施例6に示した方法で完成される。
【実施例8】
【0095】
例えば、図3に示すように、2乃至10vol%のZr0.94Y0.06O2-δを混合したFe22Cr合金(+微量成分)粉末サスペンションをテープキャスティングすることにより、厚さが200乃至2000μmの範囲のサポートシートが製作される。セルは、実施例7に示した方法で完成される。
【実施例9】
【0096】
例えば、図3に示すように、Fe22Cr合金(+微量成分)粉末サスペンションをテープキャスティングすることにより、厚さが200乃至2000μmの範囲のサポートシートが製作される。電解質材料と金属合金(FeCrMx)の混合物を有する1または2以上の薄膜シートから、傾斜含浸層が製作される。テープキャスティング粉末サスペンションによって、厚さが30乃至70μmで、各種粒子寸法およびポア寸法を有するシートが製作される。セル構造は、金属サポートシートと、1乃至4の含浸層シートとをローラー処理または圧縮処理することによって、積層させて製作される。得られた含浸層は、組成が傾斜しており、ポア寸法および粒子寸法は、5乃至10μmの範囲にあるが、電解質界面での金属サポートの厚さは、〜1μmまで減少する。セルは、実施例6に示した方法で完成される。
【実施例10】
【0097】
実施例9と同様であるが、ここでは、含浸層と金属サポートの最終ポロシティを制御するため、ポア形成剤が添加される。
【実施例11】
【0098】
実施例10と同様であるが、ここでは、層の収縮を制御するため、焼結添加剤(15)が添加される。これに限定されるものではないが、焼結添加剤の一例には、Al2O3、MgO、CaO、SrO、CoOx、MnOx、B2O3、CuOx、ZnO2、VOx、Cr2O3、FeOx、NiO、MnOx、WO3、Ga2O3またはこれらの組み合わせである。
【実施例12】
【0099】
前述のような半電池が製作される。Gd−Ce窒化物溶液のスピンコート法により、カソード/電解質バリア層14(図4)(厚さ0.5μm)が電解質表面に設置される。700℃でのバリア層の焼結後、実施例6に示したように、層12に、Ni−(Gd0.1Ce0.9)O2-δアノードが含浸される。電解質表面の乾燥と洗浄の後、スクリーン印刷によって、(La0.6Sr0.4)0.99(Co0.2Fe0.8)O3-δカソード(層5、40μm)が設置される。
【実施例13】
【0100】
Fe22Cr合金ペーストのローラー処理により、図3の層11のような、約800μmの厚さのサポートシートが製作される。サポートの乾燥後、スクリーン印刷により、アノード含浸用の層(層12)および電解質層が設置される。両方の層は、(Sm0.1Ce0.9)O2-δの組成を有する。スクリーン印刷用のインクは、含浸層が50%を超えるポロシティを有し、平均ポア寸法が1乃至2μmとなるように製作され、電解質が緻密となる。その後サンプルは、所望の寸法に裁断され、制御された還元条件下で、いわゆる半電池が焼結される。
【0101】
Ni窒化物の溶液が調製され、これが、浸漬法により多孔質(Sm0.1Ce0.9)O2-δ層(層12)に含浸される。電解質表面の乾燥と洗浄の後、スプレー印刷により、(La0.6Sr0.4)0.99(Co0.2Fe0.8)O3-δカソード(層14)が設置される。
【実施例14】
【0102】
例えば、図3に示すように、含浸層に対する結合力を向上させるため、5vol%の(Gd0.1Ce0.9)O2-δを含むFe22Cr合金粉末サスペンションのテープキャスティングによって、約500μmの厚さのサポートシートを製作する。スプレー印刷によって、アノード含浸用の層(30μm)が設置され、最後に電解質層(10μm)が設置される。両方の層は、(Gd0.1Ce0.9)O2-δの組成を有する。焼結後に、真空注入により、多孔質セリア層に、Ni、GdおよびCeの窒化物溶液が含浸される。電解質表面の乾燥と洗浄の後、スクリーン印刷法により、LSCFカソードが設置される。
【実施例15】
【0103】
実施例8に示す方法で、サポートが製作される。Fe−Cr合金粉末および(Gd0.1Ce0.9)O2-δを、1:1の体積比で有するアノード含浸用の層(30μm)と、(Gd0.1Ce0.9)O2-δ電解質層(10μm)とが、スプレー印刷により設置される。セルは、実施例6に示した方法で完成される。
【実施例16】
【0104】
実施例6に示す方法で、サポートが製作される(図3の層11)。サポートの乾燥後、スプレー印刷によって、電極含浸用の層(層12、70μm)、Zr0.78Sc0.20Y0.02O2-δ電解質層(層13、10μm)、および最後の電極含浸用のアノード層(層14、30μm)が設置される。両方の含浸層は、40vol%のFeCr粉末を含むZr0.78Sc0.20Y0.02O2-δの組成を有し、ポロシティは、約60%である。
【0105】
その後サンプルは、所望の寸法に裁断され、制御された還元条件下でサンプルが焼結される。層14がマスクされ、真空注入法により、多孔質層12に、Ni-、Ce-、Gd-窒化物の溶液が含浸される。得られるアノードは、40%Niおよび60%(Gd0.1Ce0.9)O2-δの体積濃度を有する。乾燥後、層14上のマスクが除去され、層12が露出され、窒化物溶液中での真空注入によって、活性カソード材料が含浸される。得られるカソードの組成は、(Gd0.6Sr0.4)0.99(Co0.2Fe0.8)O3-δである。
【実施例17】
【0106】
実施例6に示す方法で、セル構造が製作される。アノード層は、NiOおよび(Gd0.1Ce0.9)O2-δのナノ寸法のサスペンションの加圧含浸によって製作される。
【実施例18】
【0107】
実施例7に示す方法において、さらに焼結添加剤(これに限定されるものではないが、実施例12に示されているリストから選定された1または2以上のもの)を用いることにより、1100℃以下の温度の酸化条件下で、各構成部品の適切な焼結が可能となる。
【符号の説明】
【0108】
1 金属サポート
2 活性アノード層
3 電解質層
4 バリア層
5 活性カソード層
6 遷移層
7 カソード集電板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属サポート材料、
良好な炭化水素クラッキング触媒で構成された活性アノード層、
電解質層、
活性カソード層、および
カソード集電板までの遷移層、
を有するSOFCセルであって、
前記金属サポート材料と前記活性アノード層の間の拡散を抑制する手段が提供されることを特徴とするSOFCセル。
【請求項2】
前記金属サポート材料と前記活性アノード層の間の拡散は、傾斜化された、実質的に純粋な電子伝導性酸化物で終端する前記金属サポートによって抑制されることを特徴とする請求項1に記載のSOFCセル。
【請求項3】
前記金属サポートは、FeCrMxで表される種類の金属合金で構成され、
ここで、Mxは、Ni、Ti、Ce、Mn、Mo、W、Co、La、YまたはAlであることを特徴とする請求項2に記載のSOFCセル。
【請求項4】
前記活性カソード層は、ScYSZまたはドープ化セリアの中から選択される一つの材料と、LSM、LnSrMn、LnSrFeCo、(Y1-xCax)Fe1-yCoyCo3、(Gd1-xSrx)Fe1-yCoyO3、または(Gd1-xCax)sFe1-yCoyO3の中から選択される一つの材料との複合材で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のSOFCセル。
【請求項5】
前記多孔質Fe−Cr−Mx金属サポートの内表面および外表面には、コーティング層があることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のSOFCセル。
【請求項6】
前記金属サポートは、最大50%の金属酸化物が添加されたFe−Cr含有合金で構成されることを特徴とする請求項1に記載のSOFCセル。
【請求項7】
前記活性アノード層は、金属触媒を有する、ドープされたジルコニアまたはドープされたセリアの多孔質層で構成されることを特徴とする請求項1に記載のSOFCセル。
【請求項8】
前記活性カソード層は、ドープされたジルコニアまたはドープされたセリアと、(La,Gd,Sr)(Fe,Co)O3-δとの混合物によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のSOFCセル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−69533(P2012−69533A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1033(P2012−1033)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2007−526203(P2007−526203)の分割
【原出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(504213249)テクニカル ユニバーシティ オブ デンマーク (5)
【Fターム(参考)】