説明

固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法及び固体酸化物形燃料電池

【課題】簡易な手法による固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法を提供する。
【解決手段】前記セルチューブ202Aの燃料出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第1のセル監視電圧(E1)を計測する第1のセル監視電圧計測手段300Aと、予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第1のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める第1の酸素分圧算出手段301Aと、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する第1の判定手段302Aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法及び固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、炭化水素や含酸素炭化水素を水蒸気と反応させて改質した燃料ガスと酸素とが電気化学的反応をすることによって発電する燃料電池である。この発電時には、水が生成される。
【0003】
固体酸化物型燃料電池の一態様として円筒形の固体酸化物型燃料電池が知られている。この円筒形の固体酸化物型燃料電池は、筒形状をなす基体管の外周面に、燃料極、固体酸化物の電解質、空気極を積層して発電素子を形成し、この発電素子を基体管の軸方向に複数配置し、複数の発電素子をインターコネクタにより直列に接続して構成される。
【0004】
従って、基体管内に燃料ガスが供給され、空気極に酸素が供給されると、空気極に供給された酸素は、イオン化されて電解質膜を透過し、燃料極に達する。そして、燃料極に達した酸素と燃料ガスとの電気化学的反応により、燃料極と空気極との間に電位差が発生し、この発生した電位差を外部に取り出すことで発電が行われる。
【0005】
従来の固体酸化物形燃料電池システムの運転の電圧監視方法として、サブモジュール全体もしくはカートリッジ(例えば約100本のセル)の全体電圧を監視する方法が知られている(特許文献1、2)。
また、ガス流速の遅い箇所の電圧を計測して特定部位の劣化を判断することの提案がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−195423号公報
【特許文献2】特開2007−87686号公報
【特許文献3】特開2010−27580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃料中の酸素分圧が高くなり燃料極の構成材料の金属Niが酸化されるとセルが損傷するおそれがあるため、燃料中の酸素分圧を監視する必要がある。
一方、空気中の酸素分圧が低くなり空気極の構成材料(例えばLaSrCaMnO3)が還元分解するとセルが損傷するおそれがあるため、空気中の酸素分圧を監視する必要がある。
一方、セルスタック全体の電圧だけの計測では上述したセルの損傷等の異常判定ができない。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、簡易な手法による固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法及び固体酸化物形燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、前記セルチューブの燃料出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第1のセル監視電圧を計測する工程と、該第1のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める工程と、求められた該酸素分圧と所定の閾値とを比較する工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記燃料中の酸素分圧を求める工程を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0011】
第3の発明は、第1の発明に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、前記第1のセル監視電圧を計測すると共に、前記燃料電池セル外表面の温度を計測する工程と、前記第1のセル監視電圧から平衡起電力を算出し、前記燃料中の酸素分圧を求める工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0012】
第4の発明は、筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、前記セルチューブの燃料出口側の前記インターコネクタと前記電解質との第2のセル監視電圧を計測する工程と、該第2のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める工程と、求められた該酸素分圧と所定の閾値とを比較する工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0013】
第5の発明は、第4の発明に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、予め求めた所定の温度における第2のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記燃料中の酸素分圧を求める工程を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0014】
第6の発明は、第5の発明に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、前記第2のセル監視電圧を計測すると共に、前記燃料電池セル外表面の温度を計測する工程と、前記第2のセル監視電圧から平衡起電力を算出し、前記燃料中の酸素分圧を求める工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0015】
第7の発明は、筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、前記セルチューブの空気出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第3のセル監視電圧を計測する工程と、該第3のセル監視電圧から空気中の酸素分圧を求める工程と、求められた該酸素分圧と所定の閾値とを比較する工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0016】
第8の発明は、第7の発明に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、予め求めた所定の温度における第3のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記燃料中の酸素分圧を求める工程を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0017】
第9の発明は、第8の発明に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、前記第3のセル監視電圧を計測すると共に、前記燃料電池セル外表面の温度を計測する工程と、前記第3のセル監視電圧から平衡起電力を算出し、前記空気中の酸素分圧を求める工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法にある。
【0018】
第10の発明は、筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池において、前記セルチューブの燃料出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第1のセル監視電圧を計測するセル監視電圧計測手段と、予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第1のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める酸素分圧算出手段と、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する判定手段とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【0019】
第11の発明は、筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池において、前記セルチューブの燃料出口側の前記インターコネクタと前記電解質との第2のセル監視電圧を計測するセル監視電圧計測手段と、予め求めた所定の温度における第2のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第2のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める酸素分圧算出手段と、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する判定手段とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【0020】
第12の発明は、筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池において、前記セルチューブの空気出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第3のセル監視電圧を計測するセル監視電圧計測手段と、予め求めた所定の温度における第3のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第3のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める酸素分圧算出手段と、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する判定手段とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、燃料出口セルの電圧を監視することで、燃料中の酸素濃度を監視することができるため、運転状態変化によるセル損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1−1】図1−1は、1本のセルチューブの概略図である。
【図1−2】図1−2は、第1の監視手段を有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブの概略図である。
【図1−3】図1−3は、第2の監視手段を有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブの概略図である。
【図1−4】図1−4は、第3の監視手段を有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブの概略図である。
【図2−1】図2−1は、燃料出口側のセル同士のセル電圧を計測する図である。
【図2−2】図2−2は、図2−1に対応する回路である。
【図3】図3は、セルの電気抵抗を示す概略図である。
【図4】図4は、電流密度と電圧との関係図である。
【図5】図5は、酸素分圧と平衡起電力との関係図である。
【図6】図6は、セル監視電圧と酸素濃度との関係図である。
【図7】図7は、セルスタックの燃料入口側(セルNo.1)から出口側(セルNo.48)における酸素分圧の計測結果を示す図である。
【図8−1】図8−1は、燃料出口側のインターコネクタと固体電解質同士のセル電圧を計測する図である。
【図8−2】図8−2は、図8−1に対応する回路である。
【図9】図9は、酸素分圧と平衡起電力との関係図である。
【図10−1】図10−1は、空気出口側のセル同士のセル電圧を計測する図である。
【図10−2】図10−2は、図10−1に対応する回路である。
【図11】図11は、本実施例に係る燃料電池を表す概略構成図である。
【図12】図12は、燃料電池モジュールを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0024】
本発明による実施例に係る燃料電池の運転監視方法について、図面を参照して説明する。図11は、本実施例に係る燃料電池を表す概略構成図である。図12は、燃料電池モジュールを表す概略構成図である。
【0025】
本実施例の燃料電池モジュール200は、図12に示すように、ケーシング201と、略円筒状に形成された複数のセルチューブ(又は「セルスタック」ともいう)202と、セルチューブ202の両端を支持する上下の管板(第1仕切り部材)203a,203bと、これら上下の管板203a,203bの間に配置された上下の断熱体204a,204bとから構成されている。
【0026】
上下の断熱体204a,204bに挟まれた空間には、発電室205が形成されている。ケーシング201と上管板203aとの間には、燃料供給室206が形成されている。ケーシング201と下管板203bとの間には、燃料排出室207が形成されている。下管板203bと下断熱体204bとの間には、空気供給室208が形成されている。上管板203aと上断熱体204aとの間には、空気排出室209が形成されている。
【0027】
上管板203aは、ケーシング201の長手方向(図12の上下方向)の一方(上側)に配置された板状の部材であり、下管板203bは、ケーシング201の長手方向の他方(下側)に配置された板状の部材である。セルチューブ202は、多孔質セラミックスから形成された略円筒状の管であり、長手方向(図12の上下方向)における中央部に発電を行なう複数の燃料電池セル210が設けられている。セルチューブ202は、一方の開口端が燃料供給室206に開口し、他方の開口端が燃料排出室207に開口するように、上下の管板203a,203bに支持されている。また、セルチューブ202は、燃料電池セル(発電素子)210が発電室205内にのみ位置するように配置されている。
【0028】
上断熱体204aは、ケーシング201の長手方向の一方(上側)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。下断熱材204bは、ケーシング201の長手方向の他方(下側)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。各断熱体204a,204bには、セルチューブ202が挿通される孔211a,211bが形成され、孔211a,211bの直径はセルチューブ202の直径よりも大きく形成されている。
【0029】
なお、孔211a,211bの内周面は、略円筒状に形成されていてもよいし、螺旋状または直線状の凹部(溝)または凸部(畝状突起)が形成されていてもよく、特に限定するものではない。このような構成にすることで、セルチューブ202と孔211a,211bとの間を通って発電室205に流入する空気に、下断熱体204bの熱が伝達されやすくなり、発電室205の温度を高温に保ちやすくすることができる。
【0030】
ここで、上記構成からなる燃料電池モジュール200の動作の概要を、図12を用いて説明する。
【0031】
燃料電池モジュール200の空気供給室208には空気が流入する。該空気は下断熱材204bの孔211bとセルチューブ202との隙間を通って、発電室205内に供給される。一方、燃料供給室206には燃料ガスが流入する。該燃料ガスはセルチューブ202の基体管の内部を通って発電室205内に供給される。空気と燃料ガスとは、燃料電池セル210において発電に利用される。その後空気は空気排出室209に流入し、燃料は燃料排出室207に流入し、それぞれ燃料電池モジュール200の外部に排出される。
【0032】
この時、空気と燃料ガスとは、セルチューブ202の内面または外面を互いに逆向きに流れている。このことにより、発電に利用され高温となった燃料ガスおよび空気が、発電に利用される前の空気および燃料ガスとそれぞれ熱交換される。すなわち、セルチューブ202の軸方向両端部であって燃料電池セル210が形成されていない領域において、燃料ガスと空気とが熱交換される。
【0033】
上述したように燃料電池モジュール200では、反応に利用されて高温となった燃料ガスおよび空気が熱交換により冷却された後、燃料排出室207および空気排出室209に供給される。このことにより、金属部材を有する上管板203aと下管板203bとが高温雰囲気に晒されることを抑制することができる。その結果、燃料電池モジュール200では、燃料電池セル210における運転温度を高温化、例えば800℃から950℃にすることを可能にしている。
【0034】
次に、上述した燃料電池システムの燃料電池モジュール200に使用されるセルチューブ(燃料電池)202について詳細に説明する。
【0035】
実施例のセルチューブ(燃料電池)202は、図11に示すように、筒形状をなす基体管101の外面に外側に向けて、燃料極103、固体電解質104、空気極105を積層して発電素子、つまり、燃料電池セル(セル)210が形成され、この燃料電池セル210が基体管101の軸方向に複数配置され、複数のセル210がインターコネクタ106により直列に接続されて構成されている。図11中、符号107は中心軸を図示する。
【0036】
実施例のセルチューブ202について具体的に説明する。基体管101は、セラミックス製の円筒であり、内部改質能を有する鉄属金属(例えば、Ni)や鉄属金属酸化物(例えば、NiO)、これらの合金や合金酸化物を含有するものであり、例えば、NiとCSZ(カルシア安定化ジルコニア−CaO安定化ZrO2)の混合物である。また、燃料通路が基体管101の内周面によって形成されている。この場合、基体管101は、この燃料通路102を流れる燃料ガスFを燃料極103へ通過させる必要があることから、多孔質とする必要があり、混合物の粒子径を調整したり、ポアー材を混合させることが必要である。
【0037】
燃料極103は、例えば、NiとYSZ(イットリウム安定化ジルコニア−Y23安定化ZrO2)の混合物であり、導電性を有し、かつ多孔質材である。燃料極103の基体管101とは反対側の面には固体電解質104が積層され、基体管101の軸方向において隣り合う他方の燃料極103との間まで存在するように形成されている。この固体電解質104は、例えば、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア−Y23安定化ZrO2)であり、燃料ガスFと空気の接触を避けるために非孔質とする。空気極105は、例えば、LaMnO3系材料、LaFeO3系材料、LaCoO3系材料などの少なくとも一種の多孔質の導電性セラミックスから構成されている。
【0038】
セルチューブ202を構成するために、基体管101の軸方向にて隣り合う燃料電池セル210において、一方の燃料電池セル210の燃料極103と、他方の燃料電池セル210の空気極105とが、インターコネクタ106により接続されている。また、燃料極103はその一部が固体電解質104で被覆され、また一部がインターコネクタ106により被覆されている。このインターコネクタ106は、例えば、SrTiO3などのペロブスカイト型酸化物、LaCrO3系材料などからなり、ガスの漏出を防止するために非孔質とする。このように、インターコネクタ106は金属材料でないことから、高温下での酸化等による劣化を生じない。このことにより、燃料電池セル210における運転温度の高温化、例えば800℃から950℃が可能である。
【0039】
また、本実施例のセルチューブ202は、基体管101の外面に、燃料極103、固体電解質104、インターコネクタ106、空気極105を積層して焼結することで得られる。
【0040】
上述したセルチューブ(燃料電池)202は、以下の動作によって電池反応をする。即ち、図11に示すように、電池反応の燃料となる燃料ガスFは、基体管101の内側を流れ、基体管101の細孔を通過して燃料極103に達する。この燃料ガスFは、燃料極103に含まれる活性金属により水蒸気改質される。水蒸気改質により生成された水素は、燃料極103の細孔を通過して固体電解質104まで到達する。一方、空気(O2)は、基体管101(空気極105)の外側を流れる。空気中の酸素は、空気極105の細孔を通過する途中または固体電解質104まで到達してイオン化する。イオン化した酸素は固体電解質104を通過し、燃料極103に到達する。固体電解質104を通過した酸素イオンは燃料ガスFと反応する。このような電池反応によって生じる電位差は、燃料極103及び空気極105から外部に取り出されて発電される。
【0041】
次に、固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法について説明する。
図1−1は、1本のセルチューブの概略図である。図1−1中、上方側からチューブの内部に燃料が導入され、下方側が燃料出口である。また、図1−1中下方側からセルの外部に空気が導入され、上方側が空気出口である。
【0042】
図1−2は、第1の監視手段を有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブの概略図である。図1−2に示すように、第1の監視手段300Aを有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブ202Aは、前記セルチューブ202Aの燃料出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第1のセル監視電圧(E1)を計測する第1のセル監視電圧計測手段300Aと、予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第1のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める第1の酸素分圧算出手段301Aと、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する第1の判定手段302Aを有するものである。
【0043】
本実施例では、固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視をするに際して、先ず、セルチューブ(セルスタック)202Aの燃料出口側の隣接又は近接するセル同士(No.n−1、No.n)の第1のセル監視電圧E1を第1のセル監視電圧計測手段300Aにより計測する。そして、予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第1のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を第1の酸素分圧算出手段301Aより求める。
次に、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を第1の判定手段302Aにより判定する。
【0044】
図1では、セルをn個設けている場合を示しているが、本実施例ではn=34の場合について説明する。
図2−1は、燃料出口側のセル(No.33)とセル(No.34)とのセル電圧を計測する図である。
図2−1に示すように、セル(No.33)の空気極105に第1の端子111Aを設けると共に、セル(No.34)の空気極105に第2の端子111Bを設ける。そして、この隣接するセル同士のセル監視電圧E1を計測する。
この時のセルの仕様、発電条件を下記「表1」に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
本実施例では0.28A/cm2の電流密度で運転している。
温度はセル表面の温度を熱電対等の温度計測手段112で計測している。
ここで、燃料出口側セルの隣接するセルとは、セル(No.33)とセル(No.34)のセル同士をいい、近接するセルとは、セル(No.32)とセル(No.34)との関係のように、セル(No.33)を少なくとも一つ飛ばしたセル同士の関係をいう。
【0047】
図2−2は、図2−1に対応する回路である。
ここで、セル監視電圧(E1)は、下記「数1」に示す式(1)より求められる。
【0048】
【数1】

ここで、
1:セル監視電圧
Erev:平衡起電力
Rc(n):空気極抵抗
Ri:インターコネクタ抵抗
Ra:燃料極抵抗
Rc(n+1):空気極抵抗
ηa:燃料極及び空気極の活性化分極
ηc:燃料極及び空気極の濃度分極
n=34である。
【0049】
平衡起電力(Erev)は、燃料と空気の酸素濃度に依存するので、式(1)より、平衡起電力(Erev)を求めれば、下記「数2」に示す式(2)により燃料中の酸素分圧が求められる。なお、空気中の酸素分圧は酸素入口濃度から計算により求める。
【0050】
【数2】

【0051】
図3は、セルの電気抵抗を示す概略図である。図3は図2−1のセルを模式的に示している。
ここで、図3中、各ブロック(1)〜(8)の電気抵抗をそれぞれ、R1〜R8とすると、電気抵抗は近似的に下記「数3」に示す各式(11)〜(24)により示される。
【0052】
【数3】

【0053】
また電極過電圧(活性化分極)は下記「数4」に示す式(3)により求められる。
電極過電圧ηと電流密度iの関係は近似的に、Butler−Volmer式で示される。
【0054】
【数4】

【0055】
また濃度分極は下記「数5」に示す式(4)及び(5)により求められる。
【0056】
【数5】

【0057】
電気抵抗の計算結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
活性化分極の計算結果を下記「数6」に示す。
ここで、数6中、式(3−1)は「空気極の活性化分極」を示し、式(3−2)は「燃料極の活性化分極」を示す。
【0060】
【数6】

また、空気極及び燃料極の濃度分極の計算結果を下記「表3」に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
以上の結果より、セル監視電圧(E1)から計算により、下記「数7」に示すように、酸素濃度を求める。
【0063】
【数7】

【0064】
数7に示すように、平衡起電力より、燃料極側における酸素分圧が数2の式(2)により、2.7×10-16と算出される。
【0065】
図4は電流密度と電圧との関係図である。図4に示すように、電流密度が0.28A/cm2における第1のセル監視電圧(E1)が0.572Vであった。
これを解析すると、平衡起電力0.866Vより求めた燃料極側の酸素分圧は2.7×10-16atmとなる。
【0066】
図5は900℃での燃料中の酸素分圧対数と平衡起電力の関係を示す。
燃料極103に含まれるNiは900℃において酸素分圧が10−12atmよりも高い酸素分圧で酸化されてNiOになり、それ以下の酸素分圧ではNiで安定である。ここに900℃において酸素分圧が10-12atmの場合の平衡起電力は0.66Vに相当する。
平衡起電力が0.66Vより高い場合は燃料中の酸素分圧は10-12atmよりも低くなりNiで安定であるが、平衡起電力が0.66Vより低い場合は燃料中の酸素分圧は10-12atmよりも高くなりNiOになる。
セル監視電圧(E1)から燃料中の酸素分圧を求める方法として、あらかじめセル監視電圧(E1)と燃料中の酸素分圧の関係を求めておけば、セル監視電圧(E1)から平衡起電力を算出することなく簡易的に監視ができる。
【0067】
あらかじめセル監視電圧(E1)と燃料中の酸素分圧の関係(900℃)を求めるため、「数1」に示す式(1)のセル監視電圧(E1)のErev(平衡起電力)として、NiとNiOの平衡状態を示す平衡起電力として0.66Vを用い、空気極抵抗などの電気的な抵抗と活性化分極、濃度分極を差し引けばよい。
Rc(n):空気極抵抗、Ri:インターコネクタ抵抗、Ra:燃料極抵抗、Rc(n+1):空気極抵抗は下記「表2」のR1からR8の合計0.055Ωを用いた。
ηa:燃料極及び空気極の活性化分極は、下記「数6」の(1)および(2)から、それぞれ0.015Vを用いた。
ηc:燃料極及び空気極の濃度分極は、下記「表3」から燃料極の濃度分極0.0056V,空気極の濃度分極0.0012Vを用いた。
このセル監視電圧(E1)が0.37Vを閾値としてこの閾値を下回る場合には、燃料中の酸素濃度がNi酸化の酸素濃度よりも高いと判断する監視を行う。
【0068】
このセル監視電圧と酸素濃度との関係図を図6に示す。
図6に示すように、セル監視電圧(E1)を計測し、酸素濃度の閾値近傍となるまでは酸素濃度が高くないと判断することができる。
【0069】
すなわち、燃料電池の実機の運転においては、簡易に判断するために、燃料ガス出口側における隣接又は近接するセル監視電圧(E1)を計測することで、燃料極の酸素濃度の上昇の有無を判断することができる。
【0070】
そして、酸素分圧が高くなったと判断された場合には、例えば運転負荷を下げ、酸素分圧を低下させるようにする。
なお、この対策を講じても酸素分圧が高い場合には、詳細な解析を行う。また、その酸素濃度が上昇したセルスタック部分(カートリッジやモジュールの一部分)の回路を除く処置等の対策を講じる。
【0071】
なお、カートリッジには100本以上のセルチューブが装填されているが、この全てのセルチューブに監視をするのが望ましいが、複数個所のセルチューブを選別してセル監視電圧を計測して、監視を行うようにしてもよい。
【0072】
図7はセルスタックの燃料入口側(セルNo.1)から出口側(セルNo.48)における酸素分圧の計測結果を示す。
図7の結果より、燃料入口側よりも燃料出口側での酸素分圧が上昇しているのが確認された。
但し、全ての素子において酸素分圧が上述の閾値10-12atm以下であるのでNi安定領域であることが確認できる。
【0073】
ところで、燃料電池の運転中において、例えば電流集中、燃料リーク、過大電流等予期せぬことが発生すると、燃料出口セルの燃料中の酸素分圧が高くなり、酸素濃度上昇に起因する燃料極を構成する構成材料(例えばNi)の酸化が促進される。この酸化が進行すると、セルの破損等や損傷が発生する可能性があるので、本発明のようにセル監視電圧を計測して、監視を行うことで、これを事前に把握できることとなる。
【0074】
すなわち、以下に示すように燃料中の酸素分圧を求め、セルの損傷を回避することができる。
ステップ1:燃料中の酸素濃度が高い燃料出口側の近接又は隣接するセル電圧を計測して、セル監視電圧(E1)を監視する。
ステップ2:酸素濃度計算には温度が必要なので監視するセル外表面に熱電対等の温度計測手段により計測する。
ステップ3:セル監視電圧(E1)を解析して平衡起電力を算出し、燃料中の酸素分圧を求める。
ステップ4:求めた燃料中の酸素分圧からNiが酸化していないか、どうかを判定する。
【0075】
このように、セル監視電圧(E1)から解析により酸素分圧を求めることもできるが、このような条件の下、予めセル監視電圧と酸素分圧との関係を求めておき、セル監視電圧が所定の電圧以下を計測した場合には、酸素分圧が高くなったと判断することができる。酸素分圧が高くなったと判断された場合には、例えば運転負荷を下げ、酸素分圧を低下させるようにする。なお、この対策を講じても酸素分圧が高い場合には、詳細な解析を行う。また、その酸素濃度が上昇したセルスタック部分(カートリッジやモジュールの一部分)の回路を除く処置等の対策を講じる。
【0076】
本実施例によれば、1本のセルチューブの燃料極の燃料出口側の隣接又は近接するセル同士の第1のセル監視電圧を計測することで、燃料中の酸素濃度を監視することができるため、運転状態変化(例えば、電流集中、燃料リーク、過大電流など予期せぬこと)によるセル損傷を回避することができる。
【実施例2】
【0077】
本発明による実施例に係る燃料電池の運転監視方法について、図面を参照して説明する。
図8−1は、燃料出口側のインターコネクタと固体電解質同士のセル電圧を計測する図である。図8−2は図8−1に対応する回路である。
図1−3は、第2の監視手段を有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブの概略図である。図1−3に示すように、第2の監視手段300Bを有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブ202Bは、セルチューブ202Bの燃料出口側の前記インターコネクタと前記電解質との第2のセル監視電圧(E2)を計測する第2のセル監視電圧計測手段300Bと、予め求めた所定の温度における第2のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第2のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める第2の酸素分圧算出手段301と、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する第2の判定手段302Bとを有する。
【0078】
図8−1に示すように、本実施例では、燃料出口側のセル(No.33)とセル(No.34)とのセル同士に挟まれるインターコネクタ106と固体電解質104同士の監視電圧E2を第2のセル監視電圧計測手段300Bにより計測している。
具体的には、図8−1に示すように、セル(No.33)のインターコネクタ106に第3の端子111Cを設けると共に、セル(No.34)の固体電解質104に第4の端子111Dを設け、これらの間の第2のセル監視電圧E2を第2のセル監視電圧計測手段300Bにより計測する。そして、予め求めた所定の温度における第2のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第2のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を第2の酸素分圧算出手段301Bより求める。
次に、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を第2の判定手段302Bにより判定する。
この時のセルの仕様、発電条件は実施例1の表1と同様である。
【0079】
本実施例では、実施例1と異なり、セル監視電圧を求めるものではなく、下記「数8」に示す式(7)に示すように、第2のセル監視電圧E2は平衡起電力からインターコネクタ抵抗(Ri)と燃料極抵抗(Ra)とを引いたものとなる。
実施例1と異なり、平衡起電力から差し引く項目が少ないので、解析にあたって、簡易でしかも計測精度が向上する。
【数8】

【0080】
具体的には、第2のセル監視電圧E2が0.846Vであるとすると、表2の燃料極(電解質下)R7(=0.006Ω)と燃料極接続部(R8=0.002Ω)を合計した値に電流値(4.68A)を掛けたものを引いて、0.883Vが算出される。
そして、数2に示す式(2)から酸素分極を算出すると1.4×10-16atmとなる。
【0081】
図9は900℃での燃料中の酸素分圧対数と平衡起電力の関係を示す。
Niは900℃において酸素分圧が10-12atmよりも高い酸素分圧で酸化されてNiOになり、それよりも低い酸素分圧ではNiで安定である。900℃において酸素分圧が10−12atmの場合の平衡起電力は0.66Vに相当する。
平衡起電力が0.66Vより高い場合は燃料中の酸素分圧は10-12atmよりも低くなりNiで安定であるが、平衡起電力が0.66Vより低い場合は燃料中の酸素分圧は10-12atmよりも高くなりNiOになることから、平衡起電力が0.66Vを閾値としてこの閾値を下回る場合には、燃料中の酸素濃度が高いと判断する監視を行う。
【0082】
実施例2では、燃料中の酸素分圧の高い「燃料出口セル(セル(No.33)」のインターコネクタ106に第3の端子111Cを取り付けると共に、固体電解質104に第4の端子111Dを取り付ける。
詳細には、インターコネクタ106と固体電解質104との監視電圧を監視するために、インターコネクタ106表面および固体電解質104表面に白金ペーストを塗布して、電圧監視用の白金線をインターコネクタ106表面および固体電解質104表面に接触させる。
次に、第3の端子111Cと第4の端子111Dの第2のセル監視電圧E2から、「燃料中の酸素濃度」を計算で求める。
計測した監視電圧E2から計算で「酸素濃度」を求め、セル温度環境でNiが酸化する酸素濃度と比較して監視する。
【0083】
本実施例によれば、1本のセルチューブの燃料極の燃料出口側の隣接又は近接するセル同士に挟まれるインターコネクタと電解質との監視電圧を監視することで、燃料中の酸素濃度を監視することができるため、運転状態変化(例えば、電流集中、燃料リーク、過大電流など予期せぬこと)によるセル損傷を回避することができる。
【実施例3】
【0084】
本発明による実施例に係る燃料電池の運転監視方法について、図面を参照して説明する。
実施例1では、燃料極側の燃料中の酸素濃度について求めるようにしたが、本実施例では空気極側の空気中の酸素濃度について求める。
空気極の構成材料である例えばLaMnO3の場合には、酸素分圧が低くなり、還元分解すると、セルが損傷するおそれがあるので、実施例1と同様の手法により、空気中の酸素分圧を監視するようにしている。
ここで、空気中の酸素分圧は空気入口側よりも空気出口側において、酸素が消費され低くなる。
【0085】
そこで、本実施例では空気1本のセルチューブの空気極の空気出口側の隣接又は近接するセル同士の第3のセル監視電圧E3を計測し、予め求めた第3のセル監視電圧E3と酸素濃度との関係より、空気中の酸素濃度の減少の有無を判断するようにしている。
【0086】
図1−4は、第3の監視手段を有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブ202Cの概略図である。図1−3に示すように、第3の監視手段300Cを有する固体酸化物形燃料電池のセルチューブ202Cは、セルチューブ202Cの空気出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第3のセル監視電圧(E3)を計測する第3のセル監視電圧計測手段300Cと、予め求めた所定の温度における第3のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第3のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める第3の酸素分圧算出手段301Cと、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する第3の判定手段301Cとを有する。
【0087】
図10−1は、空気出口側のセル(No.1)とセル(No.2)とのセル電圧を計測する図である。
図10−1に示すように、セル(No.1)の空気極105に第5の端子111Eを設けると共に、セル(No.2)の空気極105に第6の端子111Fを設ける。そして、この隣接するセル同士の第3のセル監視電圧E3を第3のセル監視電圧計測手段300Cにより計測する。そして、予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第3のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を第3の酸素分圧算出手段301Cより求める。
次に、該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を第3の判定手段302Cにより判定する。
ここで、空気出口側セルの隣接するセルとは、セル(No.1)とセル(No.2)のセル同士をいい、近接するセルとは、セル(No1)とセル(No3)のセル同士のように、セル(No.2)を少なくとも一つ飛ばしたセル同士の関係をいう。
【0088】
図10−2は、図10−1に対応する回路である。
ここで、第3のセル監視電圧(E3)は、前記「数1」に示す式(1)より求められる。
平衡起電力(Erev)は、燃料と空気の酸素濃度に依存するので、式(1)より、平衡起電力(Erev)を求めれば、前記「数2」に示す式(2)により空気中の酸素分圧が求められる。なお、燃料中の酸素分圧は燃料入口濃度から計算により求める。
【0089】
本実施例では、先ず、空気の出口近傍において第3のセル監視電圧E3を計測する。
次に、第2のセル監視電圧E3を、実施例1と同様に解析して、平衡起電力を算出し、空気中の酸素分圧を求める。
求めた空気中の酸素分圧が任意の値(例えば空気極(LaMnO3系等)の劣化に起因する管理酸素濃度を決めておく)に近づくと運転警報を出す制御を行う。
【0090】
本実施例によれば、空気出口セルの電圧を監視することで、空気中の酸素濃度を監視することができるため、運転状態変化(例えば、電流集中、燃料リーク、過大電流など予期せぬこと)によるセル損傷を回避することができる。
また、固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視するに際して、実施例1の監視方法と実施例3の監視方法とを併せて実施するようにしてもよい。
これにより、燃料側及び空気側の酸素濃度を監視し、運転状態の変化を適正に監視することができる。
【符号の説明】
【0091】
101 基体管
103 燃料極
104 固体電解質
105 空気極
106 インターコネクタ
200 燃料電池モジュール
202、202A〜202C セルチューブ(燃料電池)
210 燃料電池セル(発電素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
前記セルチューブの燃料出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第1のセル監視電圧を計測する工程と、
該第1のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める工程と、
求められた該酸素分圧と所定の閾値とを比較する工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項2】
請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記燃料中の酸素分圧を求める工程を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項3】
請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
前記第1のセル監視電圧を計測すると共に、前記燃料電池セル外表面の温度を計測する工程と、
前記第1のセル監視電圧から平衡起電力を算出し、前記燃料中の酸素分圧を求める工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項4】
筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
前記セルチューブの燃料出口側の前記インターコネクタと前記電解質との第2のセル監視電圧を計測する工程と、
該第2のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める工程と、
求められた該酸素分圧と所定の閾値とを比較する工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項5】
請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
予め求めた所定の温度における第2のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記燃料中の酸素分圧を求める工程を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項6】
請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
前記第2のセル監視電圧を計測すると共に、前記燃料電池セル外表面の温度を計測する工程と、
前記第2のセル監視電圧から平衡起電力を算出し、前記燃料中の酸素分圧を求める工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項7】
筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
前記セルチューブの空気出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第3のセル監視電圧を計測する工程と、
該第3のセル監視電圧から空気中の酸素分圧を求める工程と、
求められた該酸素分圧と所定の閾値とを比較する工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項8】
請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
予め求めた所定の温度における第3のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記燃料中の酸素分圧を求める工程を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項9】
請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法において、
前記第3のセル監視電圧を計測すると共に、前記燃料電池セル外表面の温度を計測する工程と、
前記第3のセル監視電圧から平衡起電力を算出し、前記空気中の酸素分圧を求める工程とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転状態の監視方法。
【請求項10】
筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池において、
前記セルチューブの燃料出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第1のセル監視電圧を計測するセル監視電圧計測手段と、
予め求めた所定の温度における第1のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第1のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める酸素分圧算出手段と、
該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する判定手段とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項11】
筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池において、
前記セルチューブの燃料出口側の前記インターコネクタと前記電解質との第2のセル監視電圧を計測するセル監視電圧計測手段と、
予め求めた所定の温度における第2のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第2のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める酸素分圧算出手段と、
該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する判定手段とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項12】
筒形状をなす基体管と、燃料極と電解質と空気極とが積層されて成ると共に前記基体管の外表面軸方向に沿って複数配置される燃料電池セルと、隣り合う該燃料電池セルを直列に接続するインターコネクタとを備えるセルチューブを有する固体酸化物形燃料電池において、
前記セルチューブの空気出口側の隣接又は近接する前記燃料電池セル同士の第3のセル監視電圧を計測するセル監視電圧計測手段と、
予め求めた所定の温度における第3のセル監視電圧と酸素分圧との関係を用いて、前記計測した第3のセル監視電圧から燃料中の酸素分圧を求める酸素分圧算出手段と、
該酸素分圧と所定の閾値とを比較して、前記燃料電池セルの損傷の可能性の有無を判定する判定手段とを有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−142191(P2012−142191A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294250(P2010−294250)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度〜平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発 実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】