説明

固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池セルスタック装置ならびに燃料電池モジュール、燃料電池装置

【課題】 インターコネクタからのガスの漏出を容易に防止できる固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池セルスタック装置ならびに燃料電池モジュール、燃料電池装置を提供する。
【解決手段】 本発明の固体酸化物形燃料電池セル10は、固体電解質層4を燃料極層3と酸素極層6とで挟んで構成された発電素子部9と、該発電素子部9の燃料極層3または酸素極層6に電気的に接続されたインターコネクタ8とを具備し、該インターコネクタ8に存在する孔14がシール材15で塞がれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んで構成された発電素子部を有する固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池セルスタック装置ならびに燃料電池モジュール、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池セルは、酸化物からなる固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んで構成された発電素子部を有している。
【0003】
固体酸化物形燃料電池セルは、例えば、上記のような発電素子部を、内部にガス通路を備えた多孔質の導電性支持体上に形成し、固体電解質層が形成されていない導電性支持体上にインターコネクタを形成し、導電性支持体を固体電解質層とインターコネクタとで取り囲んで構成されていた。
【0004】
そして、導電性支持体内部のガス通路に燃料ガス(例えば、水素ガス)を流すことにより、導電性支持体を介して燃料極層に水素を供給すると同時に、酸素極層の外面に空気等の酸素含有ガスを流すことにより、酸素極層に酸素を供給する。これにより、各電極で電極反応を生じせしめ、発電した電流を、導電性支持体に設けられているインターコネクタにより取り出すようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような複数の燃料電池セルを、集電部材を介して直列に接続してセルスタックを構成し、このようなセルスタックを収容容器内に複数収容し、各セルスタックを導電部材により接続することにより、燃料電池モジュールを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−146334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の上記特許文献1の燃料電池セルでは、導電性支持体を固体電解質層とインターコネクタとで取り囲み、導電性支持体内部に供給される燃料ガスが漏出しないようにするため、固体電解質層およびインターコネクタを緻密質とする必要があった。また、平板型や円筒型の燃料電池セルにおいても、燃料極層に供給される燃料ガスが外部に漏出しないように、固体電解質層およびインターコネクタを緻密質とする必要があった。このような緻密質な固体電解質層およびインターコネクタを作製するために、原料の凝集を無くし、ゴミおよび不純物を低減するなど原料の管理、さらには製造工程の管理等において厳密な管理が必要であった。従って、固体電解質層やインターコネクタからのガスの漏出を防止するのに時間と手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、インターコネクタからのガスの漏出を容易に防止できる固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池セルスタック装置ならびに燃料電池モジュール、燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んで
構成された発電素子部と、該発電素子部の前記燃料極層または前記酸素極層に電気的に接続されたインターコネクタとを具備し、該インターコネクタに存在する孔がシール材で塞がれていることを特徴とする。
【0010】
本発明の燃料電池セルスタック装置は、上記固体酸化物形燃料電池セルを複数配列してなるとともに、前記固体酸化物形燃料電池セル同士を電気的に接続してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の燃料電池モジュールは、上記燃料電池セルスタック装置を収納容器内に収納してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の燃料電池装置は、上記燃料電池モジュールと、該燃料電池モジュールを動作させるための補機とを外装ケース内に収納してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルでは、インターコネクタに存在する孔がシール材で塞がれているので、この孔からのガスの漏出を容易に防止できる。これにより、長期信頼性に優れた燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュール、燃料電池装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】固体酸化物形燃料電池セルを示すもので、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図2】(a)は図1の固体酸化物形燃料電池セルの側面図、(b)はシール材の部分およびその近傍を拡大して示す平面図、(c)は(a)の固体電解質層に存在する孔をシール材で塞いだ状態の一部を拡大した断面図、(d)はシール材の頂部が凹んだ状態を示す断面図である。
【図3】燃料電池セルスタック装置の一形態を示し、(a)は燃料電池セルスタック装置を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セルスタック装置の破線で囲った部分の一部を拡大した断面図である。
【図4】図3の燃料電池セルスタック装置の一部断面図である。
【図5】燃料電池モジュールの一形態を示す外観斜視図である。
【図6】燃料電池装置の一形態を示す分解斜視図である。
【図7】平板型燃料電池を示すもので、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図8】図7(a)のx−x線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の固体酸化物形燃料電池セル(以下、燃料電池セルと略す場合がある)の一形態を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は(a)の縦断面図である。なお、両図面において、燃料電池セル10の各構成を一部拡大して示している。
【0016】
この燃料電池セル10は、中空平板型の燃料電池セル10で、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状をしたNiを含有してなる多孔質の導電性支持体(以下、支持体ということがある)1を備えている。導電性支持体1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス流路2が長手方向に貫通して形成されており、燃料電池セル10は、この導電性支持体1上に各種の部材が設けられた構造を有している。
【0017】
導電性支持体1は、図1(a)に示されている形状から理解されるように、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nをそれぞれ接続する弧状面(側面)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、一方側の平坦面n(下面)
と両側の弧状面mを覆うように多孔質な燃料極層3が設けられている。さらに、この燃料極層3を覆うように、緻密質な固体電解質層4が配置されている。
【0018】
また、固体電解質層4の上には、燃料極層3と対面するように、多孔質な酸素極層6が配置されている。また、燃料極層3および固体電解質層4が配置されていない他方側の平坦面n(上面)には、中間層7を介してインターコネクタ8が配置されている。
【0019】
言い換えれば、インターコネクタ8と固体電解質層4とで筒状体が形成され、この筒状体の内部に、導電性支持体1、燃料極層6が形成されており、燃料ガス流路2が、導電性支持体1に筒状体の開口部方向(導電性支持体1の長手方向)に貫通して形成されている。さらに言い換えれば、導電性支持体1の一方側の平坦面に、固体電解質層4の両側に燃料極層3、酸素極層6とが形成された発電素子部9が設けられ、他方側の平坦面に、中間層7、インターコネクタ8が形成されている。インターコネクタ8は、中間層7、導電性支持体1を介して、該導電性支持体1の一方側の平坦面に形成された発電素子部9の燃料極層3に電気的に接続されている。
【0020】
燃料極層3および固体電解質層4は、導電性支持体1の両端の弧状面mを経由して他方の平坦面n(上面)まで形成されており、固体電解質層4の両端にインターコネクタ8の両端が位置するように接続され、固体電解質層4とインターコネクタ8で導電性支持体1を取り囲み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。
【0021】
そして、本形態では、図2に示すように、固体電解質層4の厚み方向に存在する孔14がシール材15で塞がれている。すなわち、固体電解質層4に厚み方向に貫通する孔14が発生している。この孔14は、例えば、焼成前のグリーンシートに付着したゴミ、原料の凝集粉、グリーンシートの形成不良等により発生する。
【0022】
孔14は、図2(c)に示すように固体電解質層4の厚み方向に形成される場合のみならず、厚み方向に対してある角度をもって斜めに形成される場合もあり、また、図2(c)に示すように固体電解質層4の主面間を連結するような孔のみならず、固体電解質層4の一方の主面と端面(側面)とを連結するように形成される場合もある。さらに、孔14は、図2(c)に示すよう直線状に貫通して形成される場合のみならず、曲がって形成される場合もある。なお、図2には記載しなかったが、インターコネクタ8においても、上記原因により、固体電解質層4と同様に孔が発生する。
【0023】
このような孔14を無くすためには、原料の凝集を無くし、ゴミおよび不純物を低減するなど原料の管理、さらには製造工程の管理等、厳密な管理を必要とする。従来、固体電解質層4、インターコネクタ8は、ガス漏出を防止する必要があるということで、上記のような厳密な管理を行い、孔14の発生がない固体電解質層4、インターコネクタ8を作製していたが、時間と手間、コストを要するという問題があった。
【0024】
固体電解質層4は厚みが薄くなるほど発電性能が向上するため、発電性能を向上すべく固体電解質層4の厚みを薄くすればするほど、孔14が形成され易くなるため、固体電解質層4の原料管理、製造工程等を厳密に管理する必要があった。また、同様に、インターコネクタ8においても厚みが薄くなるほど電気伝導性が向上するため、電気伝導性を向上すべくインターコネクタ8の厚みを薄くすればするほど、孔14が形成され易くなり、インターコネクタ8の原料管理、製造工程等を厳密に管理する必要があった。
【0025】
固体電解質層4、インターコネクタ8の孔14の平均直径は、それぞれ1mm以下、特には10μm〜1mm、さらには、50μm〜500μmである。孔14の平均直径は、孔14の部分の走査電子顕微鏡(SEM)写真から求めることができる。なお、燃料電池
セルの固体電解質層4に孔14が1個しかない場合には、その1個の直径が平均直径とな
る。インターコネクタ8の孔14についても同様である。
【0026】
本形態では、固体電解質層4に発生した孔14をシール材15を用いて塞いでいるため、多少製造条件を広めに設定して、固体電解質層4に厚み方向に貫通する孔14が発生したとしても、この孔14をシール材15で塞ぐことで、固体電解質層4の緻密化を確保でき、燃料ガスが外部に漏出することを容易に防止できる。従って、製造における手間や時間、コストを低減できる。なお、インターコネクタ8に発生した孔についても同様である。
【0027】
ここで、シール材15は、ガラスからなることが望ましい。シール材15がガラスである場合には、熱処理時における流動性が高く、孔14を低温でシールすることができる。ガラスとしては、Ba系、Si系、B系等を使用することができる。特に、熱処理後に結晶化する結晶化ガラスであることが望ましい。これは、結晶化ガラスの方が、非晶質の場合よりも、燃料極層3を構成する粒子を粒成長させることがないためである。
【0028】
また、固体電解質層4、インターコネクタ8に発生した孔14を塞ぐシール材15は、孔14が発生したそれぞれの層を構成する材料、例えば、固体電解質層4に形成された孔14を塞ぐシール材15は、固体電解質材料を用いることができる。これにより、シール材15の周辺の固体電解質層4、インターコネクタ8に影響を与えることがない。
【0029】
孔14が形成されたそれぞれの層を構成する材料(シール材15の材料)は、特に、インターコネクタ8、固体電解質層4を形成する材料の原料粉末よりも微粉を用いることが望ましい。これにより、固体電解質層4、インターコネクタ8をそれぞれ焼成した後に、この焼成温度よりも低い温度でシール材15としてのインターコネクタ材料、固体電解質材料を焼成することができる。
【0030】
また、図2(b)(c)に示すように、シール材15がガラスからなる場合には、シール材15が、固体電解質層4の孔14の内部、および孔14の周囲の固体電解質層4表面に存在するとともに、燃料極層3とシール材15との間には空間Sが形成されていることが望ましい。これにより、シール材15と燃料極層3とが直接接触することがなく、燃料極層3を構成する粒子を粒成長させることがない。なお、図2(a)は図1(b)の紙面に向かって左側から見た側面図である。
【0031】
シール材15の上面は、図2(d)に示すように、平坦または凹んでいることが望ましい。なお、図2(d)では、シール材15の上面が凹んでいる状態を示している。すなわち、固体電解質層4、インターコネクタ8の表面から、シール材15が突出しており、その頂部が平坦または凹んでいる。これにより、固体電解質層4上に形成される酸素極層6における凹凸を低減できる。また、インターコネクタ8上に形成される導電性接着剤における凹凸を低減できる。
【0032】
(支持体1)
支持体1は、燃料ガスを燃料極層3まで透過させるためにガス透過性であること、及びインターコネクタ8を介しての集電を行うために導電性であることが要求される。このような要求を満たすと同時に、同時焼成により生じる不都合を回避するために、鉄属金属成分と特定の希土類酸化物とから支持体1を構成するのがよい。特にこれに限定されるものではなく、導電性材料であれば良い。
【0033】
鉄族金属成分は、支持体1に導電性を付与するためのものであり、鉄族金属単体であってもよいし、また鉄族金属酸化物、鉄族金属の合金もしくは合金酸化物であってもよい。
鉄族金属には、Fe、Ni、Coがあり、本形態では、何れをも使用することができるが、安価であること及び燃料ガス中で安定であることからNi及び/またはNiOを鉄族金属成分として含有していることが好ましい。
【0034】
また希土類酸化物成分は、支持体1の熱膨張係数を、固体電解質層4の熱膨張係数と近似させるために使用されるものである。高い導電率を維持し且つ固体電解質層4等への元素拡散を防止するために、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む希土類酸化物を、上記鉄族金属成分と組合せで使用することが好適である。かかる希土類酸化物としては、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prを例示することができ、特に安価であるという点で、Y、Ybが好適である。
【0035】
これらの希土類酸化物は、焼成時や発電中において、鉄族金属やその酸化物との固溶、反応をほとんど生じることがなく、しかも、支持体1中の鉄族金属或いはその酸化物、及び上記希土類酸化物は、何れも拡散しにくい。従って、支持体1と固体電解質層4とが同時焼成された場合においても、希土類元素の固体電解質層4への拡散が低減され、固体電解質層4のイオン伝導度等への悪影響を回避することができる。
【0036】
特に、支持体1の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近似させるという点で、上記の鉄族金属成分は、支持体1中に35〜70体積%の量で含まれ、上記の希土類酸化物は、支持体1中に30〜65体積%の量で含まれていることが好適である。尚、支持体1中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
【0037】
上記のような鉄族金属成分と希土類酸化物とから構成される支持体1は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好適である。また、支持体1の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
【0038】
また、支持体1の平坦面nの長さは、通常、15〜35mmであり、支持体1の高さは、用途に応じて適宜設定されるが、一般家庭での発電用に使用される場合には、通常、100〜200mm程度の高さに設定される。さらに、平坦面nの両端には、コーナー部での欠けを防止し、さらには機械的強度を高めるために弧状面mが形成される。固体電解質層4の剥離を有効に防止するためには、支持体1の厚み(2つの平坦面nの間隔)は2〜10mmの範囲にあることが望ましい。
【0039】
(燃料極層3)
燃料極層3は、電極反応を生じせしめるものであり、それ自体公知の多孔質のサーメットから形成される。例えば、希土類元素が固溶しているZrO或いはCeOと、Ni及び/またはNiOとから形成される。
【0040】
燃料極層3中の上記ZrO或いはCeO含量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65〜35体積%であるのがよい。さらに、この燃料極層3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのがよく、その厚みは、性能低下及び熱膨張差による剥離等を防止するため、1〜30μmであることが望ましい。
【0041】
また、ZrO或いはCeO中に固溶している希土類元素(CeOの場合にはCe以外の希土類元素)としては、支持体1で使用する希土類酸化物に関して示したものと同
様のものを例示することができるが、セルの分極値を低くするという点で、ZrOに対してはYが3〜10モル%程度、CeOに対してはSmが5〜20モル%程度固溶しているものが好ましい。
【0042】
さらに、この燃料極層3は、少なくとも酸素極層6に対面する位置に存在していればよい。即ち、図1の例では、燃料極層3は、支持体1の一方側の平坦面nから他方の平坦面nまで延びており、インターコネクタ8の両端まで延びているが、一方側の平坦面nにのみ形成されていてもよい。
【0043】
尚、図示されていないが、必要により、上記の燃料極層3上に拡散抑制層を設け、このような拡散抑制層を燃料極層3と固体電解質層4との間に介在させることもできる。この拡散抑制層は、燃料極層3や支持体1からの固体電解質層4への元素拡散を抑制し、絶縁層形成による性能低下を回避するためのものであり、Laが固溶したCeO、又はCeが固溶したLa、あるいはそれらの混合体から形成される。さらに、元素拡散を遮断または抑制する効果を高めるために、他の希土類元素の酸化物が、この拡散防止層に含有されていてもよい。この希土類元素としては、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを例示することができる。
【0044】
また、このような拡散抑制層は、固体電解質層4と共に、インターコネクタ8の両端部まで延びていることが好ましい。これにより、支持体1や燃料極層3から固体電解質層4への元素拡散をさらに防止することができるからである。
【0045】
(固体電解質層4)
固体電解質層4は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有すると同時に、燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有していることが必要である。従って、この固体電解質層4の形成に用いる材料としては、このような特性を備えている緻密質な酸化物セラミックス、例えば、3〜15モル%の希土類元素が固溶した安定化ジルコニア(ZrO)を用いるのが好ましい。この安定化ジルコニア(ZrO)中の希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを例示することができるが、安価であるという点で、Y、Ybが好適である。
【0046】
さらには、LaとGaを含むペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物も固体電解質として使用することができる。この複合酸化物は、高い酸素イオン伝導性を有するものであり、これを固体電解質として使用することにより、高い発電効率を得ることができる。このランタンガレート系複合酸化物は、AサイトにLaおよびSr、BサイトにGaおよびMgを有するものであり、例えば下記一般式:(La1−xSr)(Ga1−yMg)O(式中、xは、0<x<0.3の数であり、yは、0<y<0.3の数である)で表される組成を有していることが望ましい。このような組成の複合酸化物を固体電解質として使用することによっても、高い発電性能を発揮させることができる。
【0047】
このような固体電解質層4は、ガス透過を防止するという点から相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上であることが望ましい。固体電解質層4の平均厚みは、発電性能を向上させるべく、5〜40μmであることが望ましい。本発明では、特に、発電性能を向上すべく、固体電解質層4の平均厚みを5〜20μmと薄くした場合には、孔が形成され易くなるため、上記形態を好適に用いることができる。
【0048】
(酸素極層6)
固体電解質層4に形成される酸素極層6は、前述した電極反応を生じせしめるものであり、図1に示されているように、固体電解質層4を間に挟んで、前述した燃料極層3と対
面するような位置に配置されている。即ち、少なくとも支持体1の一方の平坦面n上に位置する部分に配置される。
【0049】
かかる酸素極層6は、所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物の焼結体粒子からなる。このようなペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属型ペロブスカイト酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも一種が好適であり、600〜1000℃程度の比較的低温での電気伝導性が高く、酸素イオンに対して優れた表面拡散機能と体積拡散機能とを示すという点から、(La,Sr)(Co,Fe)O系酸化物(以下、La−Sr−Co系複合酸化物と呼ぶことがある)、例えば下記一般式:LaSr1−yCoFe1−Z(式中、yは、0.5≦y≦0.7の数であり、zは、0.2≦z≦0.8の数である)で表される組成を有する複合酸化物が特に好適である。
【0050】
また、このような酸素極層6は、ガス透過性を有していなければならず、従って、上記の導電性セラミックスは、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが望ましい。また、酸素極層6の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
【0051】
また、上記の酸素極層6は、固体電解質層4上に形成してもよいが、図示していないが、必要に応じて、固体電解質層4上に反応防止層を設け、このような反応防止層を介して酸素極層6を固体電解質層4に積層することもできる。このような反応防止層は、酸素極層6から固体電解質層4への元素拡散を遮断するためのものであり、元素拡散防止機能を有する酸化物の焼結体から形成される。このような反応防止層用酸化物としては、例えば、構成元素としてCeを含有する酸化物を例示することができ、特にCeOにCe以外の希土類元素酸化物が固溶したCe系複合酸化物が、高い元素拡散遮断性に加えて、酸素イオン伝導性及び電子伝導性に優れているという点で、好適に使用される。
【0052】
(インターコネクタ8)
支持体1上の平坦面nに設けられているインターコネクタ8は、導電性セラミックスからなるが、燃料ガス(水素)及び酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、かかる導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が使用される。インターコネクタ8としては、Tiを含有するペロブスカイト型複合酸化物、例えば、La、SrおよびTiを含有するペロブスカイト型複合酸化物等であっても良く、特に限定されるものではない。また、支持体1の内部を通る燃料ガス及び支持体1の外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかる導電性セラミックスは緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。
【0053】
かかるインターコネクタ8の平均厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜200μmであることが望ましい。特に、インターコネクタ8の厚みは薄ければ薄いほど、電気伝導性が向上するため望ましいが、平均厚みが10〜40μmと薄くなれば、孔14が形成されやすくなるため、本形態を好適に用いることができる。
【0054】
(燃料電池セルの製造)
上述した構造を有する燃料電池セルは、公知の方法で製造することができるが、特に以下に述べる同時焼成法を利用することが好適である。以下の製造方法は、図1、2に示した構造の燃料電池セルを例にとって説明したものである。
【0055】
例えば、前述した導電性支持体1を形成するための混合粉末に、有機バインダーと、溶媒、及び必要により分散剤とを混合して坏土を調製し、この坏土を押出成形して、燃料ガ
ス流路を有する柱状の導電性支持体用成形体を作製し、これを乾燥し、800〜1100℃の温度域で仮焼する。
【0056】
また、上記導電性支持体用成形体を作製するにあたって、用いる混合粉末は、例えば、鉄族金属もしくは鉄族金属酸化物の粉末と希土類酸化物粉末とを所定の体積比で混合したものである。
【0057】
固体電解質層用のシート(以下、固体電解質層用シートと呼ぶ)を作製する。すなわち、例えば、Yを含有したZrO(YSZ)などの固体電解質粉末を、有機バインダー及び溶媒と混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いて、ドクターブレード法等により固体電解質層用シートを成形する。
【0058】
次いで、燃料極層形成用粉末(例えばNiO粉末とYSZ粉末との混合粉末)に有機バインダーと溶媒とを混合して調製されたスラリーを用いて、ドクターブレード法等により燃料極層用シートを作製し、この燃料極層用シートを、上記の固体電解質層用シートの一方の面に積層し、これを、前述した支持体用成形体(仮焼体)の所定位置に燃料極層シートが内側となるように巻き付け、乾燥する。
【0059】
この後、例えば、LaCrO系材料などのインターコネクタ用粉末を、有機バインダー及び溶媒に混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いてドクターブレード法等によりインターコネクタ用シートを作製する。
【0060】
次いで、中間層形成用粉末(例えばNiO粉末とYSZ粉末との混合粉末)に有機バインダーと溶媒とを混合して調製されたスラリーを用いて、ドクターブレード法等により中間層用シートを作製し、この中間層用シートを、上記のインターコネクタ用シートの一方の面に積層する。この中間層用シートが積層されたインターコネクタ用シートを、中間層用シート側が導電性支持体成形体側となるように、固体電解質層用シートが積層されていない導電性支持体成形体の面に積層し、乾燥する。
【0061】
次いで上記の積層成形体について、脱バインダー処理のための熱処理を行なった後、大気中等の酸素含有雰囲気中で1300〜1600℃で同時焼成することにより、導電性支持体1上に燃料極層3および固体電解質層4が積層され、さらに所定位置に中間層7、インターコネクタ8が積層され、必要により元素拡散防止層や反応防止層を備えた焼結体を得ることができる。
【0062】
この後、固体電解質層4、インターコネクタ8に孔14が発生していないかを確認する。すなわちガス漏洩試験を行う。これは、上記焼結体の燃料ガス流路2の一方側を塞いだ状態で水に浸け、導電性支持体1の燃料ガス流路2の他方側に、ガス、例えばHeガスを、所定の圧力、例えば3kg/cmをかけて供給し、泡が発生するか否かで、固体電解質層4、インターコネクタ8に孔14が発生していないかを確認する。孔14が発生していた場合には、泡が発生した部分に印をつけ、焼結体を乾燥させた後、例えば、Ba、Si、ZrおよびAl等からなるガラス材料と有機材料を混合したガラスペーストを孔14付近に塗布し、孔14内に注入する。図2(c)のように空間Sを形成するには、ガラスペーストの粘度を高く設定することにより達成できる。この後、上記同時焼成時の温度よりも低い温度で熱処理する。
【0063】
ガラスペーストの熱処理温度、熱処理時間については、用いるガラス材料にもよるが、例えば、1000〜1300℃とされており、熱処理時間は、0.5〜10時間とされている。
【0064】
なお、孔14内のシール材15の材料、熱処理温度、処理時間等を制御することにより、図2(d)に示すように、シール材15の頂部を平坦もしくは凹ませても良い。この場合には、シール材15の上面に酸素極層6を形成する場合であっても、シール材15上面の酸素極層6の盛り上がりを低減できる。シール材15の頂部を平坦もしくは凹ませるには、図2(c)に示すガラスガラス材料よりも軟化点が低い材料を用いる、または熱処理温度を高くする、または熱処理時間を長くする。
【0065】
さらに、上記で得られた焼結体の固体電解質層4上に、例えば、LaFeO系酸化物粉末などを溶媒に分散させた酸素極層用の塗布液をスプレー噴霧して(或いは浸漬塗布し)酸素極層用コーティング層を形成し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、酸素極層6を備えた燃料電池セルを得ることができる。尚、得られた燃料電池セルは、酸素含有雰囲気での焼成により、支持体1などに含まれる導体成分がNiOなどの酸化物となっているが、このような酸化物は、燃料ガスを供給しての還元処理や発電によって還元されることになる。
【0066】
なお、上記した形態では、固体電解質層4およびインターコネクタ8に孔14が形成されており、その孔14をシール材15で塞いだ形態について説明したが、固体電解質層4またはインターコネクタ8のいずれか一方に孔14が形成されている場合であっても良いことは勿論である。
【0067】
図3は、上述した燃料電池セル10の複数個を、集電部材13を介して電気的に直列に接続して構成された燃料電池セルスタック装置の一形態を示したものであり、(a)は燃料電池セルスタック装置11を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セルスタック装置11の一部拡大断面図であり、(a)で示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示している。
【0068】
なお、燃料電池セルスタック装置11においては、各燃料電池セル10を集電部材13を介して配列し、燃料電池セル10と集電部材13とを導電性接着剤で接合することで燃料電池セルスタック12を構成しており、各燃料電池セル10の下端部が、図4に示すように、燃料電池セル10に燃料ガスを供給するための耐熱性合金からなるガスタンク16の上壁に、接合材17により固定されている。すなわち、ガスタンク16の上壁には、セルスタック12の下端部が挿入される貫通穴が形成されており、セルスタック12の下端部が貫通穴に挿入された状態で、ガラス、ガラスセラミックス等の接合材17で接合されている。
【0069】
ここで、本形態の燃料電池セルスタック装置11においては、上述した燃料電池セル10を用いて、燃料電池セルスタック12を構成することにより、長期信頼性が向上した燃料電池セルスタック装置11とすることができる。
【0070】
図5は、燃料電池セルスタック装置11を収納容器19内に収納してなる燃料電池モジュール18の一形態を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器19の内部に、図3に示した燃料電池セルスタック装置11を収納して構成されている。
【0071】
なお、燃料電池セル10にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20を燃料電池セルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介して燃料電池セル10の内部に設けられた燃料ガス流路2に供給される。
【0072】
なお、図5においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されている燃料電池セルスタック装置11および改質器20を後方に取り出した状態を示している。図5に示した燃料電池モジュール18においては、燃料電池セルスタック装置11を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。なお、燃料電池セルスタック装置11は、改質器20を含むものとしても良い。
【0073】
また収納容器19の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材22は、図5においてはガスタンク16に並置された燃料電池セルスタック12の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル10の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、燃料電池セル10の下端部に酸素含有ガスを供給する。
【0074】
そして、燃料電池セル10の燃料ガス流路2より排出される燃料ガスを酸素含有ガスと反応させて燃料電池セル10の上端部側で燃焼させることにより、燃料電池セル10の温度を上昇させることができ、燃料電池セルスタック装置11の起動を早めることができる。また、燃料電池セル10の上端部側にて、燃料電池セル10の燃料ガス流路2から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、燃料電池セル10(燃料電池セルスタック12)の上方に配置された改質器20を温めることができる。それにより、改質器20で効率よく改質反応を行うことができる。
【0075】
本形態の燃料電池モジュール18では、上述した燃料電池セルスタック装置11を収納容器19内に収納してなることから、長期信頼性が向上した燃料電池モジュール18とすることができる。
【0076】
図6は、外装ケース内に、図5で示した燃料電池モジュール18と、燃料電池セルスタック装置11を動作させるための補機とを収納してなる燃料電池装置の一形態を示す分解斜視図である。なお、図6においては一部構成を省略して示している。
【0077】
図6に示す燃料電池装置23は、支柱24と外装板25とから構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側を燃料電池モジュール18を動作させるための補機を収納する補機収納室28として構成されている。なお、図6においては、補機収納室28に収納する補機は省略している。補機としては、少なくとも、酸素含有ガスを供給するためのブロア、燃料ガスを供給するためのポンプを含む。
【0078】
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
【0079】
このような燃料電池装置23においては、上述したように、信頼性を向上することができる燃料電池モジュール18をモジュール収納室27に収納して構成されることにより、信頼性の向上した燃料電池装置23とすることができる。
【0080】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0081】
例えば、上記形態では、中空平板型の固体酸化物形燃料電池セルについて説明したが、円筒型、平板型の固体酸化物形燃料電池セルであっても良いことは勿論である。
【0082】
例えば、燃料極層、固体電解質層、酸素極層を順次設けてなる発電素子部と、燃料極層に電気的に接続する燃料側集電体と、酸素極層に電気的に接続する酸素側集電体とを具備
する平板型の燃料電池セルを、インターコネクタを介して複数積層してなり、燃料極層及び酸素極層の中央部にそれぞれ燃料ガス及び酸素含有ガスが供給され、これらのガスが燃料極層及び酸素極層の外周部に向けて流れ、燃料電池セルの外周部から余剰の燃料ガス及び酸素含有ガスが放出されるタイプのセルスタック装置にも応用できる。
【0083】
すなわち、図7、8に示すように、燃料極層33a、固体電解質層33b、酸素極層33cを順次設けてなる発電素子部33と、燃料極層33aに電気的に接続する燃料側集電体36と、酸素極層33cに電気的に接続する酸素側集電体35とを具備する燃料電池セルをインターコネクタ37、38を介して複数積層してなるセルスタック装置にも応用できる。なお、図7、8において符号51は燃料ガス供給管、符号53は酸素含有ガス供給管を示している。
【実施例】
【0084】
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.9μmのY粉末を混合し、有機バインダーと溶媒を混合して作製した坏土を押出成形法にて成形し、乾燥、脱脂して導電性支持体用成形体を作製した。
【0085】
次に、8mol%のYが固溶したマイクロトラック法による粒径が0.8μmのZrO粉末(固体電解質粉末)に、有機バインダーと溶媒とを混合して得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法にて固体電解質層用シートを作製した。
【0086】
次に平均粒径0.5μmのNiO粉末とYが固溶したZrO粉末(YSZ粉末)と有機バインダーと溶媒とを混合した燃料極層用スラリーを作製し、この燃料極層用スラリーを用いて燃料極層用シートを作製した。この燃料極層用シートを固体電解質層用シート上に積層した。
【0087】
固体電解質層用シートに燃料極層用シートを積層したシート状の積層成形体を、燃料極層用シート側の面を内側にして導電性支持体用成形体の所定位置に積層し、この積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理した。
【0088】
続いて、La(Mg0.3Cr0.70.96粉末と、有機バインダーと溶媒とを混合したスラリーを作製した。このスラリーを用いてインターコネクタ用シートを作製した。
【0089】
NiO粉末とYSZ粉末とからなる原料に有機バインダーと溶媒とを混合して中間層用スラリーを調整した。調整した中間層用スラリーを用いて中間層用シートを作製し、導電性支持体用成形体の燃料極層用シート(および固体電解質層用シート)が形成されていない部位(導電性支持体用成形体が露出した部位)に積層し、この中間層用シートの上に、インターコネクタ用シートを積層した。
【0090】
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中で1450℃にて2時間同時焼成した。
【0091】
なお、作製した燃料電池セル10の寸法は幅25mm×長さ200mmで、導電性支持体1の厚み(平坦面n間の平均厚み)は2mm、開気孔率35%、燃料極層の平均厚さは10μm、開気孔率24%、固体電解質層8の平均厚みは10μm、インターコネクタの平均厚みは10μmであった。また別の燃料電池セル10として、固体電解質層4の平均厚みを20μm、インターコネクタ8の平均厚みを40μmとしたものも作製した。
【0092】
固体電解質層4の平均厚みは、導電性支持体1の平坦部における固体電解質層4の厚み
を走査型電子顕微鏡(SEM)の断面写真3枚から求め、それらを平均して求めた。インターコネクタ8の平均厚みも同様にして求めた。
【0093】
固体電解質層4、インターコネクタ8の孔14の存在有無については、リーク試験で確認した。リーク試験は、所定の部材により一方側の燃料ガス流路2を封止した燃料電池セル10を水の中にいれ、燃料電池セル10の他方側の燃料ガス流路2から3kg/cmに加圧されたHeガスを供給する試験であり、燃料電池セル10から気泡が生じた部分には孔が形成されていることになる。この試験により、固体電解質層4、インターコネクタ8に孔14が形成されていることを確認した。
【0094】
孔14の平均直径をSEM写真から求めたところ、固体電解質層4、インターコネクタ8とも、100〜500μmの範囲内であった。孔14の平均直径は、孔14のある部分の1万倍のSEM写真について、画像解析装置にて孔面積を求め、孔形状を円と見なして孔面積から直径を求め、孔14の平均直径とした。
【0095】
そして、その孔14の部分に、シリカ系結晶化ガラス材料と有機バインダーと溶媒とを混合してシール材用ペーストを調整し、このペーストを孔14内に吐出装置(ディスペンサ)を用いて注入し、1150℃で1時間熱処理して、孔14をシール材15で塞いだ。
【0096】
この後、上記リーク試験を60秒間行ったところ、ガスリークがないことを確認した。
【0097】
そして、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8粉末と、イソプロピルアルコールとからなる混合液を作製し、積層焼結体の固体電解質層4上に噴霧塗布し、酸素極層成形体を形成し、1100℃にて4時間で焼き付け、酸素極層6を形成し、燃料電池セル10を作製した。酸素極層6の厚みは50μm、開気孔率40%であった。
【0098】
次に、この燃料電池セル10の内部に水素ガスを流し、850℃で10時間、導電性支持体および燃料極層3の還元処理を施し、図1、2に示した燃料電池セル10を得た。
【符号の説明】
【0099】
1:導電性支持体
2:燃料ガス流路
3:燃料極層
4:固体電解質層
6:酸素極層
8、37、38:インターコネクタ
9、33:発電素子部
10:固体酸化物形燃料電池セル
11:燃料電池セルスタック装置
14:孔
15:シール材
18:燃料電池モジュール
23:燃料電池装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んで構成された発電素子部と、該発電素子部の前記燃料極層または前記酸素極層に電気的に接続されたインターコネクタとを具備し、該インターコネクタに存在する孔がシール材で塞がれていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項2】
前記孔の平均直径は1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項3】
前記シール材は、ガラスからなることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項4】
前記シール材の上面は、平坦または凹んでいることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項5】
前記インターコネクタの平均厚みが10〜40μmであることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれかに記載された固体酸化物形燃料電池セルを複数配列してなるとともに、前記固体酸化物形燃料電池セル同士を電気的に接続してなることを特徴とする燃料電池セルスタック装置。
【請求項7】
請求項6に記載された燃料電池セルスタック装置を収納容器内に収納してなることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載された燃料電池モジュールと、該燃料電池モジュールを動作させるための補機とを外装ケース内に収納してなることを特徴とする燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−69697(P2013−69697A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269438(P2012−269438)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2012−540617(P2012−540617)の分割
【原出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】