説明

固体酸化物形燃料電池用電解質シート、並びにそれを用いた固体酸化物形燃料電池用単セル

【課題】本発明の課題は、固体酸化物形燃料電池用電解質シートの表面に、ある特定の表面粗さを有し、電解質シート周縁部のバリ高さを抑制し、バリ高さによる合格率に優れた電解質シートを提供することで、バリによる電極の印刷時の割れ、印刷不良による電極の不均一や剥離、さらには、燃料電池として電解質シートと電極を含む単セルを直列に積層したときの破損などを抑制すること、およびその様な高性能の電解質シートを効率よく製造することのできる技術を確立することにある。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池用の電解質シートであって、当該電解質シートの片面(A面)の周端部の平均表面粗さRa(Ab)と、もう一方の面(B面)の周端部の平均表面粗さRa(Bb)がともに0.12μm以上、0.36μm以下の範囲であり、且つA面の平均表面粗さとB面の平均表面粗さとの比、Ra(Bb)/Ra(Ab)が1.0以上、2.0以下であるところに特徴を有した電解質シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCと記載する)用電解質シート並びにそれを用いた固体酸化物形燃料電池用セルに関する。特に、バリが低減され大量生産時の合格率に優れる酸素イオン導電性の固体電解質シート、並びに当該電解質シートを用いたSOFC用単セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池はクリーンなエネルギー源として注目されており、家庭用発電から業務
用発電、さらには自動車用発電などのため、急速に改良研究や実用化研究が進められてい
る。かかる燃料電池の中でもSOFCは、効率が良好で長期安定性にも優れるものとして家庭用や業務用の電力源として期待されている。
【0003】
SOFCでは、電解質シートに電極を組み込んだ単セルを複数枚積み重ねて積層構造(スタック)にして使用する。燃料電池として、安定した発電性能を長期にわたって維持するために、電解質シート一枚一枚に高度な品質管理が要求される。
【0004】
電解質シートの品質管理項目として重要な要因のひとつは、例えば周縁部において高さが変化する、いわゆる「バリ」と呼ばれるものがある。かかるバリが存在すると、電極の印刷時に割れが生じたり、また、印刷自体がうまくいかず、電極が不均一になったり剥離し易くなる。さらに、SOFCは電解質シートと電極を含む単セルが直列に積層されたものであるので、積層したときや発電時などに応力が周縁部のバリに集中して破損するおそれがある。
【0005】
SOFCの電解質シートとしては、強度と発電効率などの点からジルコニアなどを主原料とするセラミックシートが用いられている。SOFCの実用化が進むにつれ、セラミックシートの需要も高まり、量産されるようになっている。
【0006】
セラミックシートは、一般的に、セラミック粉末を含むスラリーを成形してセラミックグリーンシートとし、これを焼成することにより製造されるが、品質の問題は、セラミックシートの量産化が進むにつれ大きなものとなっている。例えば、バリ高さ不良等の欠陥の発生率が10%近くになれば、その損害は甚大なものとなる。
【0007】
よって、たとえば100万枚/年以上のレベルで量産化された電解質シートについても、バリ高さが小さく、かつ生産単位(ロット)の中でバリ不良の発生率が少ない電解質シートが要求される。
【0008】
シート周縁部のバリに着目した技術が種々開発されている。例えば特許文献1には、1個以上の片刃状金属刃を使用するバリの発生しないグリーンシートを得るためのグリーンシート打抜装置が開示されている。また、特許文献2には、シート周縁部のバリ高さが±100μm以下であるセラミックシートと、打ち抜き刃の刃先角度を最適化し、グリーンシート打ち抜き面を弾性高分子材で付勢した状態で打ち抜き刃の進退を行う当該セラミックシートの製法が開示している。
【0009】
しかしながら、これら文献には、シートのA面(片面)およびB面(もう一方の面)の表面粗さの記載、特にバリの不良率の発生の抑制とバリが発生するシート周縁部の表面粗さの記載が無く、バリ発生の抑制とシート周縁部の表面粗さとに関連があることについては開示されていない。また、打ち抜き刃を使用する場合、打ち抜き回数(ショット数)が多くなると刃先の磨耗によって切断が困難になることがあり、そのため量産化された電解質シートではバリ高さがふれてその合格率が十分とは言えない問題もあった。
【0010】
さらに、特許文献3にはシートと電極との密着性を高めることを課題として、シート両面の表面粗さを特定したジルコニアシートが開示されている。しかしながら、この文献にもバリの不良率の発生の抑制とバリが発生するシート周縁部の表面粗さの記載が無く、バリ発生の抑制とシート周縁部の表面粗さとに関連があることについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平7−23509号公報
【特許文献2】特開2001−10866号公報
【特許文献3】特許2000−281438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、大量に製造したSOFC用電解質シートのバリ高さによる合格率を精査する過程において、電解質シートのロットによって当該合格率に差があることを見出した。
【0013】
量産化された電解質シートの合格率の差が何に起因するかを鋭意検討した結果、合格率に優れる電解質シート群と満足する合格率得られない電解質シート群とで、SOFC用電解質シートの片面の周端部の平均表面粗さと、もう一方の面の周端部の平均表面粗さとの比に違いがあることを発見し、本願発明である特徴あるSOFC用電解質シートを見出した。
【0014】
本発明は、SOFC用電解質シートの片面の周端部と、もう一方の面の周端部の平均表面粗さが特定の範囲、およびそれら平均表面粗さ比が特定比を有する電解質シートとすることによって、電解質シート周縁部のバリ高さを抑制し、バリ高さによる合格率に優れた電解質シートを提供するものである。先述のように、バリ高さ不良を低減することで、バリによる電極の印刷時の割れ、印刷不良による電極の不均一や剥離、さらには、SOFCとして電解質シートと電極を含む単セルを直列に積層したときの破損などを抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決することのできた本発明にかかるSOFC用の電解質シートとは、該電解質シートの片面(A面)の周端部の平均表面粗さ〔Ra(Ab)〕と、もう一方の面(B面)の周端部の平均表面粗さRa(Bb)がともに0.12μm以上、0.36μm以下の範囲であり、且つA面の平均表面粗さとB面の平均表面粗さとの比、Ra(Bb)/Ra(Ab)が1.0以上、2.0以下であるところに特徴を有している。
【0016】
さらに、当該電解質シートの片面(A面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Ai)と、もう一方の面(B面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Bi)がともに、0.01μm以上、0.2μm以下の範囲(ただし、Ra(Ab)>Ra(Ai)であり、Ra(Bb)>Ra(Bi)である。)であることが好ましい。
【0017】
さらに、当該電解質シートの片面(A面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Ai)と周端部の平均表面粗さRa(Ab)との比、Ra(Ab)/Ra(Ai)が、1.5以上3.0以下であり、且つ、もう一方の面(B面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Bi)と周端部の平均表面粗さRa(Bb)との比、Ra(Bb)/Ra(Bi)が、1.5以上3.0以下、であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電解質シートの周縁部におけるバリの発生を顕著に抑制できる。従って本発明は、SOFCの実用化に伴ってその必要量が益々高まっている電解質シートの製造効率を向上できるものとして、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは前述した様な解決課題の下で、電解質シートを量産化してもバリ高さが許容範囲内に収まるような電解質シートの表面物性(特に、電解質シートの周端部の表面粗さ)について詳細に研究を重ねてきた。その結果、追って詳述していく本発明の特定の表面粗さに規定する電解質シートを採用すれば、バリ高さ不良を低減できることを突き止めて、量産化しても安定した品質の電解質シートを提供し得たものである。
【0020】
以下、本発明の具体的な構成を詳細に説明していく。
まず本発明者らは、上記課題を解決することのできるSOFC用の電解質シートとして、該電解質シートの片面(A面)の周端部の平均表面粗さRa(Ab)と、もう一方の面(B面)の周端部の平均表面粗さRa(Bb)がともに0.12μm以上、0.36μm以下の範囲であり、且つA面の平均表面粗さとB面の平均表面粗さとの比、Ra(Bb)/Ra(Ab)が1.0以上、2.0以下であるところに特徴を見出した。Ra(Ab)とRa(Bb)のより好ましい範囲はともに0.13μm以上、0.3μm以下、さらに好ましくは、0.14μm以上、0.25μm以下の範囲である。Ra(Ab)とRa(Bb)が、0.12μm未満の場合は、該電解質シートを用いた単セルを積層(スタック化)してSOFCとした場合に燃料ガスや酸化性ガスのシール性が低下し、ガスリークのためにSOFCの発電性能が低下する懸念がある。一方、0.36μmを超える場合は、電解質シートのハンドリング強度が低下して実用に耐えなくなる。
【0021】
さらに、Ra(Bb)/Ra(Ab)比のより好ましい範囲は1.0以上、1,8以下、さらに好ましくは1.0以上、1.5以下の範囲である。Ra(Bb)/Ra(Ab)比が1.0であることは、電解質シートの片面(A面)の周端部の平均表面粗さと、もう一方の面(B面)の周端部の平均表面粗さとが等しいことを意味しており、バリ発生の低減効果が優れており、バリ高さ不良率が最も少なくなる傾向にある。一方、Ra(Bb)/Ra(Ab)比が2.0を超える場合は電解質シートの片面(A面)の周端部の平均表面粗さと、もう一方の面(B面)の周端部の平均表面粗さが2倍を超える違いがあるため、バリ高さ不良率低減の効果が小さくなる問題が生じる。
【0022】
さらに、本発明の電解質シートは、シートの片面(A面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Ai)と、もう一方の面(B面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Bi)がともに、0.01μm以上、0.2μm以下の範囲であることが好ましい。A面、B面いずれの周端部以外の平均表面粗さが上記の範囲の電解質シートは、燃料極層や空気極層との密着性が向上し優れた単セル発電性能となる。さらにRa(Ab)>Ra(Ai)であり、Ra(Bb)>Ra(Bi)である関係によって、バリ高さが効果的に低減され、より一層バリ高さの不良率が低減される。より好ましいRa(Ai)とRa(Bi)の範囲は、ともに0.02μm以上、0.19μm以下、さらに好ましくは、0.03μm以上、0.17μm以下の範囲である。
【0023】
また、さらに、本発明の電解質シートは、シートの片面(A面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Ai)と周端部の平均表面粗さRa(Ab)との比、Ra(Ab)/Ra(Ai)が、1.5以上3.0以下の範囲であり、且つ、もう一方の面(B面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Bi)と周端部の平均表面粗さRa(Bb)との比、Ra(Bb)/Ra(Bi)が、1.5以上、3.0以下の範囲であることが好ましい。前記A面の周端部の平均表面粗さRa(Ab)とA面の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Ai)との関係がRa(Ab)>Ra(Ai)、同じくB面の周端部の平均表面粗さRa(Bb)とB面の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Bi)との関係がRa(Bb)>Ra(Bi)で、そのRa(Ab)/Ra(Ai)比と、Ra(Bb)>Ra(Bi)比がともに1.5以上、3.0以下のときには、格段にバリ高さ不良率低減の効果が認められるようになるので好適である。より好ましいRa(Ab)/Ra(Ai)比と、Ra(Bb)>Ra(Bi)比は、ともに1.6以上、2.8以下の範囲、さらに好ましくは1.7以上、2.7以下の範囲である。
【0024】
本発明で特定される電解質シートは、電解質シート周縁部のバリ高さが抑制され、バリ高さによる合格率に優れた電解質シートとなる。上述の特定の表面粗さ、表面粗さ比が、バリ高さにどのような理由で影響しているのかは不明であるが、電解質シートの表面に残留する応力、特に電解質シート表面の周縁部に残留する応力がかかわっているものと推定される。これらの応力は、電解質シートを製造する工程で発生し、グリーンテープを所定形状のグリーンシートに切断するにかかる剪断力、グリーンシート表面の表面粗さを調整するときの加圧、グリーンシートを焼成するときの脱バインダーによる収縮、さらに高温条件下で脱バインダーされたグリーンシート中の電解質原料粉末の焼結など、また、電解質シート表面凹凸(粗さ)により応力が発散することなどが複雑に影響しているものと推察される。
【0025】
上記の「バリ」とは、電解質シートの周端部とその内側3mmまでの帯状の間での高低差がある状態を言い、「バリ高さ」とは電解質シートの周縁部とその内側3mmまでの間でのシート最高点と最低点の高さの差で、通常は最高点がシート周端部で、最低点が周端部の内側3mmの箇所になる。周縁部は一般には電解質シートの外周部のことであるが、穴が形成されたシートの場合は、その穴の周縁部も含まれる。
【0026】
周縁部以外の部分とは、周縁部に囲われた電解質シートの大部分を占める領域のことで、電解質シートの場合は通常、この領域の片面に燃料極層、もう一方の面に空気極が形成される。
【0027】
本発明において表面粗さRaとは、JIS B0601(2001)により定義される表面形状パラメーターである。
【0028】
また、上記表面粗さRaとバリ高さは、電解質シート表面にレーザー光を一定方向に移動させながら照射してその反射光を三次元形状解析するレーザー光学式三次元形状測定装置や、電解質シート表面に針を接触させた状態で一定方向に移動させながら針の上下動を測定して三次元形状解析する触針式測定装置を用いて測定される。
【0029】
いずれの装置を用いても、周縁部と周縁部以外の表面粗さ、および周縁部バリ高さは、電解質シートのそれぞれの領域内の任意の4箇所以上を測定して、表面粗さについてはその平均値を算出したものである。
【0030】
本発明の電解質シートを構成するセラミックの種類は、ジルコニア系酸化物、LaGaO系酸化物、セリア系酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有するセラミック焼結体が、好ましい固体電解質として例示される。
【0031】
好ましいジルコニア系酸化物としては、安定化剤としてMgO、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属の酸化物、Sc、Y、La、CeO、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ybなどの希土類元素の酸化物、Bi、In等から選ばれる1種もしくは2種以上の酸化物を固溶させたもの、あるいは、これらに分散強化剤としてAl、TiO、Ta、Nbなどが添加された分散強化型ジルコニア等が例示される。特に好ましくは、スカンジウム、イットリウム、セリウムおよびイッテルビウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物で安定化されたジルコニア系酸化物である。
【0032】
また、LaGaO系酸化物としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物で、LaやGaの一部がそれぞれの原子よりも低原子価のSr,Y,Mg等によって置換固溶した組成物であり、例えばLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2、La1−xSrGa1−yMg、La1−xSrGa1−yMgCo、La1−xSrGa1−yFe、La1−xSrGa1−yNi等が例示される。
【0033】
また好ましいセリア系酸化物としては、CaO、SrO、BaO、Ti、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Tm、Yb、PbO、WO、MoO、V、Ta、Nbの1種もしくは2種以上をドープされたセリア系酸化物が例示される。
【0034】
これらの酸化物は、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用しても構わない。上に例示したもの中でも、より高度の熱的、機械的、化学的特性、酸素イオン導電性特性を有する電解質シートを得るには、3〜10モル%の酸化イットリウムや、4〜12モル%の酸化スカンジウムで安定化された、もしくは4〜15モル%の酸化イッテルビウムで安定化された正方晶および/または立方晶構造のジルコニアが特に好ましい。これらの中でも、8〜12モル%の酸化イットリウムで安定化されたジルコニア、8〜12モル%の酸化スカンジウムで安定化されたジルコニア、8〜12モル%の酸化スカンジウムと1〜2モル%の酸化セリウムで安定化されたジルコニアが最適である。また、スカンジアの量が多くなると結晶系が菱面体晶になることがあるので、結晶系を主として立方晶系に安定化するため、第三成分としてセリアやアルミナ等を加えてもよい。
【0035】
固体酸化物形燃料電池用電解質シートとしては、厚さが50μm以上400μm以下、より好ましくは100μm以上300μm以下で平面面積が50cm以上900cm以下の緻密質焼結体シートが好適である。
【0036】
上記電解質シートの形状としては、円形、楕円形、アールを持った角形など何れでもよく、これらのシート内に同様の円形、楕円形、Rを持った角形などの穴を1つもしくは2つ以上有するものであってもよい。尚上記平面面積とは、シート内に穴がある場合は、当該穴の面積を含んだ外周縁で囲まれる面積を意味する。なお、当然のことであるが当該穴の周縁部も本発明で言う電解質の周縁部領域に含まれる。
【0037】
電解質シートを得る方法としては、原料粉体、バインダー、可塑剤および分散媒等を含むスラリーを成形し乾燥することによって、長尺のグリーンテープを得、当該グリーンテープを所定形状に切断してグリーンシートとし、このグリーンシートを焼成して固体酸化物形燃料電池用の電解質シートとする方法が一般的である。
【0038】
本発明の電解質シートでは、特定した表面粗さおよび表面粗さ比の範囲内にするために、その製造工程において、グリーンテープを切断して得たグリーンシートの両面の表面粗さを調整する方法、グリーンテープ両面の表面粗さを調整した後切断してグリーンシートを得る方法など用いられる。
【0039】
表面粗さの調整は、グリーンテープあるいはグリーンシートの両面を、当該グリーンシート表面に対峙する面の表面粗さRaが0.01μm以上、0.6μm以下の範囲であり、且つ電解質シート周縁部に相当する領域と周縁部以外の部分に相当する領域の表面粗さが異なる樹脂または金属に挟んで加圧する工程を含む方法を挙げることができる。グリーンシートに対峙する金属面または樹脂面の粗さは、一般に、グリーンシートの焼成によって得られる電解質シートの表面粗さがグリーンシート表面粗さに対して略70〜90%に低下する傾向があるので、より好ましくは、電解質シート周縁部に相当する領域の表面粗さRaを0.15μm以上、0.5μm以下の範囲に、電解質シート周縁部以外の部分に相当する領域の表面粗さRaを0.01μm以上、0.25μm以下の範囲で、且つ電解質シート周縁部に相当する領域の表面粗さが周縁部以外の部分に相当する領域の表面粗さより大きくなるように調整されたものである。
【0040】
当該樹脂または金属の材質は特に限定されないが、たとえば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、平滑処理を施した紙類、表面を研磨した超硬タングステン、ステンレス鋼、ダイス鋼、ステライト、特殊鋼、超硬合金などを挙げることができる。樹脂または金属は、板状またはフィルム状、シート状で使用される。当該板またはフィルム、シートの厚さは、好ましくは0.05〜50mmである。これらの樹脂または金属に挟んで加圧する方法も特に限定されないが、一軸プレス機、ロールプレス機などを使用する方法などを採用することができる。金属の場合は、板状またはシート状として使用する替わりに、上記加圧装置の金属製加圧面の表面粗さを調整して利用してもよい。
【0041】
加圧する際には、グリーンテープまたはグリーンシートの両面または片面を上記の樹脂または金属に重ねてから加圧してもよいし、プレス機の加圧面に上記の樹脂または金属を接合して使用してもよい。加圧の温度は、室温でもよいが、100℃以下に加温、制御してもよい。またその圧は、10〜40MPaが好ましく、より好ましくは、15〜30MPaである。圧が10MPa未満の場合は、加圧の効果が得られにくく、バリ高さ不良率低減の効果が小さくなって認められない。一方、40PMaを越える場合は、グリーンシートが変形して焼成後の寸法が大きくふれることがある。
【0042】
ここで、効果的に加圧されるためには、グリーンテープの引張試験における引張破壊伸びが5%以上50%以下、かつ引張降伏強さが2.0MPa以上20MPa以下であること好ましい。さらに好ましくは引張破壊伸びが8%以上30%以下、かつ引張降伏強さが3.0MPa以上15MPa以下である。
【0043】
ちなみに、引張破壊伸びが5%未満で引張降伏強さが20MPaを上回る場合は加圧の効果が充分に得られず、バリ高さ不良率低減の効果が小さくなって認められず、逆に引張破壊伸びが50%を上回り引張降伏強さが2.0MPa未満の場合は、加圧によりグリーンシートが変形して焼成後の寸法が大きくふれることがある。
【0044】
なお、引張破壊伸びおよび引張降伏強さは、JIS K7113のプラスチックの引張試験方法に準じて測定する。具体的には、2号型試験片形状に切断したグリーンシートを万能材料試験機(インストロン・ジャパン(株)製 4301型)を用いて、当該試験片の両端をつかみ治具で保持しつつ、引張速度10mm/分で引張り、試験片を破断させて、引張破壊伸びおよび引張降伏強さを測定した。
【0045】
前記電解質グリーンテープ成形用のスラリーに使用されるバインダーの種類にも格別の制限はなく、従来から知られた有機質バインダーを適宜選択して使用できる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。
【0046】
これらの中でも、グリーンシートの成形性や強度、焼成時の熱分解性等の点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の炭素数10以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート類;およびメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の炭素数20以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルアクリレートまたはアミノアルキルメタクリレート類;アクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸、モノイソプロピルマレートの如きマレイン酸半エステル等のカルボキシル基含有モノマー、から選択される少なくとも1種を重合または共重合させることによって得られる、数平均分子量が20,000〜250,000、より好ましくは50,000〜200,000の(メタ)アクリレート系共重合体が好ましいものとして推奨される。
【0047】
これらの有機質バインダーは、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に好ましいのは、イソブチルメタクリレートおよび/または2−エチルヘキシルメタクリレートを60質量%以上含むモノマーの重合体である。
【0048】
原料粉末とバインダーの使用比率は、前者100質量部に対して後者5〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部の範囲が好適であり、バインダーの使用量が不足する場合は、グリーンテープの強度や柔軟性が不足気味となり所望の表面粗さに十分に粗化することが出来なくなり、逆に多過ぎる場合はスラリーの粘度調節が困難になるばかりでなく、焼成時のバインダー成分の分解放出が多く且つ激しくなって平坦な電解質シートが得られ難くなる。
【0049】
またグリーンテープの製造に使用される溶媒としては、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ブタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、などが適宜選択して使用される。これらの溶媒も単独で使用し得る他、2種以上を適宜混合して使用できる。これら溶媒の使用量は、グリーンテープ成形時におけるスラリーの粘度を加味して適当に調節するのがよく、好ましくはスラリー粘度が1〜50Pa・s、より好ましくは2〜20Pa・sの範囲となる様に調整するのがよい。
【0050】
上記スラリーの調製に当たっては、原料粉末の解膠や分散を促進するため、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質;クエン酸、酒石酸などの有機酸;イソブチレンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体やそのアンモニウム塩、アミン塩;ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体やそのアンモニウム塩などの分散剤、更には、グリーンシートに柔軟性を付与するためのフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類;プロピレングリコール等のグリコール類やグリコールエーテル類;フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、セバチン酸系ポリエステル等のポリエステル類可塑剤など、更には、界面活性剤や消泡剤などを必要に応じて添加することができる。
【0051】
上記原料配合からなるスラリーを前述の様な方法で成形し、乾燥して長尺のグリーンテープとする。成形方法は特に制限されず、ドクターブレード法や押出成形法などの常法を用いて、適切な厚さのテープとする。その後、所定形状・寸法に切断することにより電解質グリーンシートとする。乾燥条件は特に制限されず、例えば室温〜150℃の一定温度で乾燥してもよいし、50℃、80℃、120℃の様に順次連続的に昇温して加熱乾燥してもよい。なお、ドクターブレード法などの場合は、スラリーをポリエステルフィルム等のキャリアフィルム上で乾燥させる。
【0052】
グリーンテープを所定形状のグリーンシートに切断する方法としては特に制限は無く、両刃または片刃のいわゆるトムソン刃による打ち抜き加工、金型等による切断加工、スリッターによるスリット加工、レーザー加工、ウォーター加工、プロッター加工などが用いられるが、効率良く量産するためには、両刃または片刃による打ち抜き、金型等による切断加工が好ましく、電解質原料粉末の硬度とトムソン刃の耐久性の観点から、金型を用いるのがより好ましい。これらの加工は、乾燥後のグリーンテープをキャリアフィルムから剥がし、グリーンテープのみを加工するのが一般的であるが、キャリアフィルムごと加工してからグリーンテープを剥離してもよい。なお、上記の順序のほか、加圧処理ののちに当該加工をおこなうこともできる。
【0053】
加圧処理工程を経た電解質グリーンシートは、焼成することにより本発明の電解質シートとする。具体的な焼成の条件は特に制限されず、常法によればよい。例えば、表面粗化電解質グリーンシートからバインダーや可塑剤等の有機成分を除去するために150〜600℃、好ましくは250〜500℃で5〜80時間程度処理する。次いで、1000〜1600℃、好ましくは1200〜1500℃で2〜10時間保持焼成することによって、本発明の表面粗さが調整された電解質シートを得る。
【0054】
本発明の固体酸化物形燃料電池用単セルは、上記電解質シートを用いたことを特徴とする。そのため、効率的な発電が可能になるとともに長期にわたる安定的な発電が可能になる。
【0055】
上記固体酸化物形燃料電池用単セルは、本発明電解質シートの片面に燃料極を、もう一方の面に空気極をスクリーン印刷等で形成したものである。ここで、燃料極、空気極の形成の順序は特に制限されないが、必要な焼成温度が低い電極を先に電解質シート上に製膜後焼成し、或いは燃料極と空気極を同時に焼成してもよい。電解質シートのどちらの面に燃料極、空気極を形成するかは、電解質シート強度の強弱の向き、電極を形成したときの単セルの強弱の向き、電極と電解質シートの表面粗さRaを加味して判断する必要がある。
【0056】
また、電解質と空気極との固相反応による高抵抗成分が生成するのを防止するために、電解質シートと空気極層との間にバリア層としての中間層を形成してもよい。この場合は、中間層を形成した面または形成すべき面とは逆の面上に燃料極を形成し、中間層の上に空気極を形成する。ここで、中間層と燃料極の形成の順序は特に制限されず、また、電解質シートの各面にそれぞれ中間層ペーストと燃料極ペーストを塗布乾燥した後にそれぞれ焼成することによって、中間層と燃料極を同時に焼成することによって形成してもよい。
【0057】
燃料極および空気極の材料、さらには中間層材料、また、これらを形成するためのペーストの塗布方法や乾燥条件、焼成条件などは、従来公知の方法に準じて実施できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
(実施例1)
(1)電解質グリーンシートの作製
原料粉末として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウムを固溶した安定化ジルコニア粉末(第一希元素化学社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d50;0.6μm)100質量部に対し、メタクリル系共重合体からなるバインダー(数平均分子量;100,000、ガラス転移温度;0℃)を固形分換算で18質量部、分散剤としてソルビタン酸トリオレート2質量部、可塑剤としてジブチルフタレート3質量部、溶剤としてトルエン/酢酸エチル(質量比=1/1)の混合溶剤50質量部を、ジルコニアボールが装入されたナイロンミルに入れ、40時間ミリングしてスラリーを調製した。得られたスラリーを、碇型の攪拌機を備えたジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、攪拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度:40℃で減圧(約4〜21kPa)下に濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整して塗工用スラリーとして、ドクターブレード法によりポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に連続的に塗工し、次いで、40℃、80℃、110℃と乾燥して長尺のグリーンテープを得、PETフィルムから剥離したのち、金型を用いた切断により、約160mm□(□は略正方形をあらわす)のグリーンシートを得た。
【0060】
(2)グリーンシート表面粗さの調整
周縁部の表面粗さが0.18μmで周縁部以外の部分の表面粗さが0.07μmの表面粗さ調整用の約160mm□金属型を上側に、周縁部の表面粗さが0.26μmで周縁部以外の部分の表面粗さが0.15μmの表面粗さ調整用の約160mm□金属型を下側に配置して、上記(1)で作製した160mm□のグリーンシートを挟み、成形圧縮機(神藤金属工業所製、型式「S−37.5」により、加圧処理を行った。加圧条件は加圧温度25℃、プレス圧273N、加圧保持時間60秒の条件で行われた。
【0061】
(3)グリーンシートの焼成
次いで、上記(2)で得た表面粗さ調整グリーンシートの上下を99.5%アルミナ多孔質板(気孔率:30%)で挟んで脱脂した後、1420℃で3時間加熱焼成し、約120mm□、厚さ0.18mmの10Sc1CeSZ電解質シートを得た。
【0062】
(4)電解質シートの評価
(3)で得られた電解質シートのA面、B面の周縁部(それぞれ4辺の中央部付近4箇所)および周縁部以外の部分(それぞれ2つの対角線上で、対角線の交点から約60mmの位置の4箇所)の表面粗さRaを、触針式粗さ計(ミツトヨ社製、型式「SJ−201」)で、4編の測定した。それぞれの面の平均表面粗さRaを算出し、大きい方の値/小さい方の値を表1に示す。
【0063】
次いで、レーザー光学式非接触3次元形状測定装置(UBM社製,商品名:マイクロフォーカス エキスパート、型式「UBC−14型」)を用い、(3)で得られた1000枚の各電解質シートの4辺の中央部付近で、周端部から辺と直角方向に中央に向かって3mmの範囲にレーザー光を照射して、その反射光を三次元形状解析することにより、周縁部における最高点と最低点の高さの差からバリ高さを求めた。1000枚の電解質中において、1箇所でも測定された高低差が100μm以上であるものの割合を算出し、バリ高さ不合格率とした。結果を表1に示す。
【0064】
(5)固体酸化物形燃料電池用単セルの作製
上記10Sc1CeSZ電解質シートを任意にそれぞれ50枚抜き出し、一方の面に燃料極、他方の面に空気極を形成し固体酸化物形燃料電池用単セルをそれぞれ50枚作製した。詳しくは、各電解質シート片面に、塩基性炭酸ニッケルを熱分解して得た平均粒子径0.9μmの酸化ニッケル粉末70質量部、前記8YSZ系粉末30質量部からなる燃料極ペーストをスクリーン印刷で形成し、その反対面も同様に、20モル%サマリウムドープセリア粉末からなる中間層ペーストをスクリーン印刷により形成し、1300℃で焼き付け各電解質シートに燃料極と中間層を形成した。
【0065】
次いで、中間層の上に、市販のストロンチウムドープドランタン鉄コバルテート(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)粉末80質量部と市販の20モル%ガドリニアドープセリア粉末20質量部からなる空気極ペーストをスクリーン印刷で形成し、1000℃で焼き付けて4層構造の単セルを作製した。
【0066】
(6)単セルの評価
電気炉中に設置したアルミナセッターの上に、任意で抜き出した上記(5)で得られた単セル20枚を20枚重ねて載置し、その上に5kg相当の荷重負荷用の緻密室アルミナ板を載せた。このような状態(50g/cm2の荷重がかかった状態)にして、1000℃で100時間保持して耐荷重負荷試験を行なった。
【0067】
10時間後、アルミナ板を取り去り、目視により、20枚の単セルについて、割れの有無を調べ、割れが発生していたシートの枚数を数え、平均割れ発生率を算出した。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2〜4)
金属型の表面粗さを適宜変更した以外は、実施例1と同様にして電解質シートを得、その表面粗さRa、表面粗さ比を表1に合わせて示した。また、評価結果も表1に示す。
【0069】
さらに、得られた電解質シート20枚を任意に抜き出し、実施例1と同様にして単セルを作製し、耐荷重負荷試験を行なった。結果を合わせて表1に示す。
【0070】
(比較例1〜2)
金属型の表面粗さを適宜変更した以外は、実施例1と同様にして電解質シートを得、その表面粗さRa、表面粗さ比を表1に合わせて示した。また、評価結果も表1に示す。
【0071】
さらに、得られた電解質シート20枚を任意に抜き出し、実施例1と同様にして単セルを作製し、耐荷重負荷試験を行なった。結果を合わせて表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の結果から、電解質シートの周縁部と周縁部以外の部分の表面粗さ、及び、表面粗さ比が特定範囲を満足した本発明の電解質シート(実施例1~4)は、バリ高さ不良発生率は少ないことがわかる。特に、本発明で特定した範囲をすべて満足する電解質シート(実施例1と2)はバリ不良発生率が2%以下で非常に少なく、これらの電解質シートを用いて作製した単セルも耐荷重負荷試験において、割れ発生率が少なくなっており、本発明の電解質シートは信頼性が高く高品質なものである。
【0074】
一方、周縁部と周縁部以外の部分の表面粗さ、及び、表面粗さ比が特定範囲を満足しない電解質シート(比較例1と2)は、バリ不良発生率が10%以上で多く、これらの電解質シートを用いて作製した単セルも耐荷重負荷試験において、割れ発生率が35%以上と多いものである。
【0075】
以上のことから、バリ高さ不良低減のためには、電解質シートの片面(A面)ともう一方の面(B面)の周縁部と周縁部以外の部分の表面粗さ、及び、表面粗さ比が非常に重要であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、固体酸化物形燃料電池用の電解質シートおよび当該電解質シートを用いた単セルに関する技術であり、電解質シートのバリが低減されること、その結果バリに関する合格率が向上することから固体酸化物形燃料電池の信頼性とコスト低減に寄与できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池用電解質シートであって、
当該電解質シートの片面(A面)の周端部の平均表面粗さRa(Ab)と、もう一方の面(B面)の周端部の平均表面粗さRa(Bb)がともに0.12μm以上、0.36μm以下の範囲であり、且つ、A面の平均表面粗さとB面の平均表面粗さとの比Ra(Bb)/Ra(Ab)が1.0以上、2.0以下であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
【請求項2】
固体酸化物形燃料電池用電解質シートであって、
さらに、当該電解質シートの片面(A面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Ai)と、もう一方の面(B面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Bi)がともに、0.01μm以上、0.2μm以下の範囲である請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
(ただし、Ra(Ab)>Ra(Ai)であり、Ra(Bb)>Ra(Bi)である。)
【請求項3】
固体酸化物形燃料電池用電解質シートであって、
さらに、当該電解質シートの片面(A面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Ai)と周端部の平均表面粗さRa(Ab)との比、Ra(Ab)/Ra(Ai)が、1.5以上3.0以下であり、且つ、もう一方の面(B面)の周端部以外の部分の平均表面粗さRa(Bi)と周端部の平均表面粗さRa(Bb)との比、Ra(Bb)/Ra(Bi)が、1.5以上3.0以下である請求項1又は2のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
【請求項4】
前記電解質がジルコニア系酸化物、LaGaO系酸化物、セリア系酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
【請求項5】
前記ジルコニア系酸化物が、スカンジウム、イットリウム、セリウムおよびイッテルビウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物で安定化されたジルコニアである請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれかに記載の電解質シートであって、電解質シートの厚さが、50μm以上400μm以下であり、平面面積が50cm以上900cm以下である固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電解質シートを用いた固体酸化物燃料電池用単セル。
【請求項8】
請求項7に記載の単セルを用いたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。

【公開番号】特開2012−212563(P2012−212563A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77728(P2011−77728)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】