説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】燃料極層と固体電解質層との密着性を高くし、これにより電池運転時に燃料極層と固体電解質層とが剥離するのを防止する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池は、正極となる空気極層12と、負極となる燃料極層13と、空気極層12と燃料極層13との間に介装された固体電解質層14とを備える。燃料極層13はセリア系酸化物を含み、固体電解質層14はランタンガレート系酸化物を主成分とする。また固体電解質層14のランタンガレート系酸化物の結晶粒界にセリア系酸化物が析出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気極層と燃料極層との間に固体電解質層が介装された固体酸化物形燃料電池の発電セルと、この発電セルを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固体酸化物形燃料電池用電解質シートが陥没を有し、この固体酸化物形燃料電池用電解質シート上に直接燃料極又は空気極が形成されており、燃料極又は空気極を構成する電極粒子のうち少なくとも1種の平均粒子径が、上記陥没の平均円相当径の10分の1以下である固体酸化物形燃料電池用セルが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このように構成された固体酸化物形燃料電池用セルでは、電解質シートに形成された陥没内に複数の電極粒子が入り込むことができ、電解質シートと電極粒子との接点をより増加させることができる。そして、電極材料との接点を増加させることにより、燃料電池の電力密度を向上させることができる。
【0003】
また、固体電解質層の両面に燃料極層と空気極層が配置された発電セルを備えた固体酸化物形燃料電池において、燃料極層が固体電解質層との界面に金属粒子とセラミック粒子の混合体による第1燃料極層を有し、この第1燃料極層に混合体の平均粒径より径の大きい粗大セラミック粒子が含有された固体酸化物形燃料電池が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この固体酸化物形燃料電池では、第1燃料極層のセラミック粒子がNiとサマリウム添加セリア(SDC)の混合体からなる。このように構成された固体酸化物形燃料電池では、燃料極層と固体電解質層との界面に粗大セラミックを含むNi等の金属粒子とセラミック粒子の混合体による薄い第1燃料極層を形成したので、粗大セラミックによるアンカー効果で燃料極層の耐剥離性が向上し、発電セルは長時間運転においても優れた耐久性を有し、安定した発電性能が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−251312号公報(請求項13、段落[0019])
【特許文献2】特開2005−235548号公報(請求項1及び7、段落[0022])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された固体酸化物形燃料電池用セルでは、電解質表面に陥没を設け、電解質の陥没に電極粒子が入り込むことにより、電解質と電極の物理的な結合を強化しているため、電解質と電極とが化学的に結合しておらず、電解質と電極との密着性が未だ低い不具合があった。また、上記従来の特許文献2に示された固体酸化物形燃料電池では、燃料極層に粗大粒子を混合することで、燃料極層内部にアンカー効果が得られるけれども、このアンカー効果は固体電解質層内部へのアンカー効果にはなっておらず、燃料極層と固体電解質層との密着性が未だ低い問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、燃料極層と固体電解質層との密着性を高くすることができ、これにより電池運転時に燃料極層と固体電解質層とが剥離するのを防止できる、固体酸化物形燃料電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、正極となる空気極層と、負極となる燃料極層と、空気極層と燃料極層との間に介装された固体電解質層とを備え、燃料極層がセリア系酸化物を含み、固体電解質層がランタンガレート系酸化物を主成分とする固体酸化物形燃料電池において、固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界にセリア系酸化物が析出したことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に固体電解質層が、ランタンガレート系酸化物100質量%に対しセリア系酸化物を0.05〜0.8質量%含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に固体電解質層のランタンガレート系酸化物がコバルトを添加したコバルト添加ランタンガレート系酸化物であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点に基づく発明であって、更に固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界に析出するセリア系酸化物がSm,Gd,Y及びLaからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、ランタンガレート系酸化物粉末100質量%に前記セリア系酸化物粉末を0.05〜0.8質量%混合する工程と、この混合物に溶剤、バインダ及び可塑剤を添加して電解質用スラリーを調製する工程と、この電解質用スラリーをフィルム上に均一の厚さになるように塗布してグリーンシートを作製する工程と、このグリーンシートを乾燥し焼成して固体電解質層を作製する工程と、セリアを含む燃料極用スラリーを上記固体電解質層の一方の面に均一の厚さになるように塗布する工程と、この固体電解質層の一方の面に塗布された燃料極用スラリーを乾燥し焼成して固体電解質層の一方の面に燃料極層を形成する工程とを含む固体酸化物形燃料電池の製造方法である。
【0012】
本発明の第6の観点は、第5の観点に基づく発明であって、更にランタンガレート系酸化物粉末がコバルトを添加したコバルト添加ランタンガレート系酸化物粉末であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の観点の燃料電池では、固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界にセリア系酸化物が析出するので、固体電解質層に埋め込まれているセリア系酸化物と燃料極層に含まれるセリア系酸化物が強固に結合する。この結果、燃料極層と固体電解質層との密着性を高くすることができるので、電池運転時において燃料極層と固体電解質層とが剥離するのを防止できる。
【0014】
本発明の第5の観点の燃料電池の製造方法では、ランタンガレート系酸化物粉末にセリア系酸化物粉末を混合し、この混合物に溶剤等を添加して電解質用スラリーを調製し、この電解質用スラリーから作製したグリーンシートを乾燥し焼成して固体電解質層を作製し、更にセリアを含む燃料極用スラリーを上記固体電解質層の一方の面に塗布し乾燥し焼成して固体電解質層の一方の面に燃料極層を形成したので、固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界にセリア系酸化物が析出する。この結果、固体電解質層に埋め込まれているセリア系酸化物と燃料極層に含まれるセリア系酸化物が強固に結合するので、燃料極層と固体電解質層との密着性を高くすることができる。従って、電池運転時において燃料極層と固体電解質層とが剥離するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施形態の固体酸化物形燃料電池の発電セルの断面構成図である。
【図2】本発明の固体電解質層のランタンガレートの結晶粒界にセリアが析出した状態を示すマイクロスコープ写真図である。
【図3】実施例1〜4及び比較例1の固体電解質層の強度を3点曲げ強度測定機により測定している状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。固体酸化物形燃料電池は、一般に、発電セルと、この発電セルの空気極層の外側に積層させた空気極集電体と、発電セルの燃料極の外側に積層させた燃料極集電体と、空気極集電体の外側に積層された空気極集電体側セパレータと、燃料極集電体の外側に積層された燃料極側セパレータとを備える。図1に示すように、発電セルは、固体酸化物形燃料電池の発電セルは、正極となる空気極層と、負極となる燃料極層と、空気極層と燃料極層との間に介装された固体電解質層とを備える。
【0017】
空気極は、(Sm,Sr)CoO3や、(La,Sr)MnO3などのセラミックスで構成される。この空気極層は(Sm0.5Sr0.5)CoO3のセラミックスにより構成されることが好ましい。また燃料極層はセリア系酸化物を含む。燃料極層は、例えば、一般式:Ce1-mm2(式中、BはSm,La,Gd,Y及びCaからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素、mは0<m≦0.4)で表されるB(但し、BはSm,La,Gd,Y及びCaからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素を示す。)がドープされたセリア粒とニッケル粒とで構成された多孔質焼結体からなる。上記燃料極層は(Ce0.8Sm0.22)粒とニッケル粒とで構成された多孔質焼結体により構成されることが好ましい。
【0018】
固体電解質層はランタンガレート系酸化物を主成分とする。このランタンガレート系酸化物としては、例えば、一般式:La1-XSrXGa1-Y-ZMgYZ3(式中、AはCo,Fe,Ni及びCuからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素、X=0.05〜0.3、Y=0〜0.29、Z=0.01〜0.3、Y+Z=0.025〜0.3)で表されるものが挙げられる。特にLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053で表されるコバルト添加ランタンガレートを用いることが好ましい。これは、複数の価数が可能であるコバルト(Co)を添加することによって、酸素イオン空孔が移動し易くなるという理由に基づく。
【0019】
また固体電解質層は、ランタンガレート系酸化物100質量%に対しセリア系酸化物を0.05〜0.8質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%含む。ここで、ランタンガレート系酸化物100質量%に対するセリア系酸化物の含有割合を0.05〜0.8質量%の範囲内に限定したのは、0.05質量%未満では固体電解質層の燃料極層との密着性が高くならず、0.8質量%を越えると固体電解質層の強度が低下してしまうからである。上記セリア系酸化物は、固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界に析出するように構成される(図2)。なお、セリア系酸化物としては、Ce0.8Sm0.22、Ce0.9Gd0.12、Ce0.80.22などが挙げられる。特にCe0.8Sm0.22を用いることが好ましい。また、上記セリア系酸化物はSm,Gd,Y及びLaからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素を含んでもよい。これは、燃料極層に上記セリア系酸化物が使用されるけれども、セリア系酸化物のうち特にSm,Gd,Y,Laなどを含むことによって電子伝導性が発現し、燃料極材料としての特性が向上するという理由に基づく。更に、上記図2の写真図は、100質量%のランタンガレート粉末(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053)に0.8質量%のセリア粉末(Ce0.8Sm0.22)を混合して作製された固体電解質層の表面を、キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−900で撮影したマイクロスコープ写真図である。
【0020】
このように構成された固体酸化物形燃料電池の発電セルの製造方法を説明する。先ずランタンガレート系酸化物粉末100質量%にセリア系酸化物粉末を0.05〜0.8質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%混合する。ここで、セリア系酸化物粉末のランタンガレート系酸化物粉末への混合割合を0.05〜0.8質量%の範囲内に限定したのは、ランタンガレート系酸化物100質量%に対するセリア系酸化物の含有割合を0.05〜0.8質量%の範囲内に限定した理由と同一である。この混合物に溶剤、バインダ及び可塑剤を添加して電解質用スラリーを調製する。溶剤としては、トルエン,キシレン,アセトン等が挙げられ、バインダとしては、セルロースアセテート,ポリビニルアルコール,ポリビニルブチラール等が挙げられ、可塑剤としては、ジブチルフタレート,グリセリン,セルロースアセテートイソブチレート等が挙げられる。またランタンガレート系酸化物粉末を100質量%とするとき、溶剤の添加量は20〜50質量%添加されることが好ましく、バインダの添加量は5〜15質量%添加されることが好ましく、可塑剤の添加量は1〜5質量%添加されることが好ましい。なお、ランタンガレート系酸化物粉末は、コバルトを添加したコバルト添加ランタンガレート系酸化物粉末であることが好ましい。
【0021】
次いで、上記電解質用スラリーをフィルム上に均一の厚さになるように塗布してグリーンシートを作製する。ここで、グリーンシートを作製する方法としては、フィルム上に載せたブレード付き容器にスラリーを流込んでフィルム又は容器をスライドさせることにより均一な厚さのスラリー膜を形成するテープキャスト法、所定の間隔を持つ金型を通して均一な厚さのスラリー膜を形成する押出し成形法、押出し成形などにより帯状に作成した半乾燥状態のスラリーをフィルムに挟んで圧延して均一な厚さのスラリー膜を形成するカレンダロール法などが用いられる。上記グリーンシートを乾燥した後に、大気雰囲気中で1350〜1500℃、好ましくは1400〜1450℃に、3〜10時間、好ましくは5〜6時間保持して焼成することにより、固体電解質層を作製する。ここで、グリーンシートの焼成温度を1350〜1500℃の範囲内に限定したのは、1350℃未満ではランタンガレートの緻密体が得られないため酸素イオン伝導性が低下するという不具合があり、1500℃を越えるとランタンガレートの結晶粒が粗大化して強度が低下するという不具合があるからである。また、グリーンシートの焼成時間を3〜10時間の範囲内に限定したのは、3時間未満ではランタンガレートの緻密体が得られないため酸素イオン伝導性が低下するという不具合があり、10時間を越えるとランタンガレートの結晶粒が粗大化して強度が低下するという不具合があるからである。
【0022】
次にセリアを含む燃料極用スラリーを上記固体電解質層の一方の面に均一の厚さになるように塗布する。ここで、固体電解質層の一方の面に燃料極用スラリーを塗布する方法としては、メッシュ及びマスクを有するスクリーンを固体電解質層の一方の面に重ねておき、上からスラリーを供給しながらスキージでスクリーンを押し当てることにより、マスクの開口部分であるメッシュの隙間からスラリーが固体電解質層の一方の面に塗布されるスクリーン印刷法、噴射機からスラリーを吹き付けることによりスラリーが固体電解質層の一方の面に塗布されるスプレーコート法、固体電解質層の塗布しない他方の面を保護膜で保護した状態でスラリーを満たした容器に固体電解質層を浸漬した後に引上げて乾燥し更に保護膜を除去することによりスラリーが固体電解質層の一方の面に塗布されるディップコート法などが用いられる。更に上記固体電解質層の一方の面に塗布された燃料極用スラリーを乾燥した後に、大気雰囲気中で1150〜1300℃、好ましくは1200〜1250℃に、2〜8時間、好ましくは3〜5時間保持して焼成することにより、固体電解質層の一方の面に燃料極層を形成する。ここで、固体電解質層の一方の面に塗布された燃料極用スラリーの焼成温度を1150〜1300℃の範囲内に限定したのは、1150℃未満ではセリア系酸化物の結合が弱いために燃料電池の運転中に燃料極層が粉化するという不具合があり、1300℃を越えると焼成時に燃料極層を構成する粒子が粗大化して燃料極層としての性能が低下するという不具合があるからである。また、固体電解質層の一方の面に塗布された燃料極用スラリーの焼成時間を2〜8時間の範囲内に限定したのは、2時間未満ではセリア系酸化物の結合が弱いために燃料電池の運転中に燃料極層が粉化するという不具合があり、8時間を越えると焼成時に燃料極層を構成する粒子が粗大化して燃料極層としての性能が低下するという不具合があるからである。
【0023】
このように製造された固体酸化物形燃料電池の発電セルでは、固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界にセリア系酸化物が析出するので、固体電解質層に埋め込まれているセリア系酸化物と燃料極層に含まれるセリア系酸化物が強固に結合する。即ち、固体電解質層において、ランタンガレート系酸化物とセリア系酸化物は上記焼成温度(1350〜1500℃)では相互に反応せずに、別々の結晶として存在するので、固体電解質層のうち燃料極層が積層される面に析出したセリア系酸化物と、燃料極層のうち固体電解質層が積層される面に析出したセリア系酸化物とが結合する。この結果、燃料極層と固体電解質層の密着性を高くすることができるので、電池運転時において燃料極層と固体電解質層とが剥離するのを防止できる。なお、燃料極層の主成分として取り込まれる材料を、固体電解質層を作製するためのランタンガレート系酸化物に添加した場合、例えば、固体電解質層を作製するためのランタンガレート系酸化物にニッケルを添加した場合、ランタンガレート系酸化物の結晶が変化し、電池性能が低下してしまうため、好ましくない。また、燃料極層にランタンガレート系酸化物を混合した場合、一般に燃料極層を多孔質に形成するために焼成温度を下げる必要があるけれども、ランタンガレート系酸化物はその下げた温度では強固な結合が作れず、好ましくない。
【実施例】
【0024】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ずランタンガレート(La0.85Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053)粉末100質量%に、セリア(Ce0.8Sm0.22)粉末を0.05質量%で混合した。この混合物に溶剤、バインダー及び可塑剤を添加してスラリーを調製した。このスラリーをテープキャスト法によりグリーンシートを作製した。次にこのグリーンシートを乾燥した後に円形に切断した。更にこの乾燥したグリーンシートを大気雰囲気中で1400℃に6時間保持して焼成し、直径52mm及び厚さ0.2mmの固体電解質層を得た。
【0025】
<実施例2>
ランタンガレート粉末100質量%にセリアを0.1質量%混合したこと以外は、実施例1と同様にして固体電解質層を得た。
【0026】
<実施例3>
ランタンガレート粉末100質量%にセリアを0.5質量%混合したこと以外は、実施例1と同様にして固体電解質層を得た。
【0027】
<実施例4>
ランタンガレート粉末100質量%にセリアを0.8質量%混合したこと以外は、実施例1と同様にして固体電解質層を得た。
【0028】
<比較例1>
ランタンガレート粉末100質量%にセリアを1.0質量%混合したこと以外は、実施例1と同様にして固体電解質層を得た。
【0029】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜4及び比較例1の固体電解質層の強度を3点曲げ強度測定機により測定した。図3に示すように、3点曲げ強度測定機20は、25mmの間隔をあけて互いに平行に配設された長さ60mmの一対の三角柱状冶具21,22と、これらの治具21,22の中央に設置された単一の三角柱状圧子23と、この圧子23を押下げる力を徐々に増大させる加重手段(図示せず)とを備える。一対の冶具21,22の上に固体電解質層14を置き、この固体電解質層14の中央上部に圧子23を圧接させた状態で、圧子23の押下げ力を加重手段により徐々に増大させ、固体電解質層14が破断したときの圧子23に加わる荷重(N)をそれぞれ計測した。なお、上記強度試験は、実施例1〜4及び比較例1の各固体電解質層について8枚ずつ行い、それぞれ平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

表1から明らかなように、セリア粉末を1.0質量%混合した比較例1の固体電解質層では、7.1Nと小さい荷重で破断したのに対し、セリア粉末を0.05〜0.8質量%の範囲内で混合した実施例1〜4の固体電解質層では、8.0〜9.2Nと高い荷重で破断した。この結果、固体電解質層に要求される強度を確保するために、ランタンガレート粉末に対するセリア粉末の適切な混合割合が存在することが分かった。
【符号の説明】
【0031】
11 発電セル
12 空気極層
13 燃料極層
14 固体電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極となる空気極層と、負極となる燃料極層と、前記空気極層と前記燃料極層との間に介装された固体電解質層とを備え、前記燃料極層がセリア系酸化物を含み、前記固体電解質層がランタンガレート系酸化物を主成分とする固体酸化物形燃料電池において、
前記固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界にセリア系酸化物が析出したことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記固体電解質層が、前記ランタンガレート系酸化物100質量%に対し前記セリア系酸化物を0.05〜0.8質量%含む請求項1記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記固体電解質層のランタンガレート系酸化物がコバルトを添加したコバルト添加ランタンガレート系酸化物である請求項1又は2記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記固体電解質層のランタンガレート系酸化物の結晶粒界に析出するセリア系酸化物がSm,Gd,Y及びLaからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素を含む請求項1ないし3いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
ランタンガレート系酸化物粉末100質量%にセリア系酸化物粉末を0.05〜0.8質量%混合する工程と、
前記混合物に溶剤、バインダ及び可塑剤を添加して電解質用スラリーを調製する工程と、
前記電解質用スラリーをフィルム上に均一の厚さになるように塗布してグリーンシートを作製する工程と、
前記グリーンシートを乾燥し焼成して固体電解質層を作製する工程と、
セリアを含む燃料極用スラリーを前記固体電解質層の一方の面に均一の厚さになるように塗布する工程と、
前記固体電解質層の一方の面に塗布された燃料極用スラリーを乾燥し焼成して前記固体電解質層の一方の面に燃料極層を形成する工程と
を含む固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【請求項6】
前記ランタンガレート系酸化物粉末がコバルトを添加したコバルト添加ランタンガレート系酸化物粉末である請求項5記載の固体酸化物形燃料電池の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178305(P2012−178305A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41339(P2011−41339)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【Fターム(参考)】