説明

固体酸触媒糖化装置及びエタノール製造装置

【課題】液状原料を低糖化する固体酸触媒粒状体の目詰まりを回避する。
【解決手段】粒状の固体酸触媒2aが固定状態に充填され、多糖水X2を固体酸触媒2aに流通させて低糖化する固体酸触媒糖化装置2であって、多糖水X2の流入側及び流出側のいずれか一方あるいは両方に二酸化炭素を供給する目詰まり防止手段を備える。更に、固体酸触媒糖化装置から得られる単糖類をアルコール発酵処理するアルコール発酵装置と、該アルコール発酵装置の処理液を蒸留処理してエタノールを分離する蒸留装置とを備え、アルコール発酵装置で発生した二酸化炭素を気体供給手段に供給することを特徴とするエタノール製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸触媒糖化装置及びエタノール製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バイオマスを加圧熱水処理した後に固体酸触媒で単糖化するバイオマスの糖化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−279255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記バイオマスの糖化方法を実現するための装置(固体酸触媒糖化装置)として、粒状の固体酸触媒を内部に充填した固定床式固体酸触媒糖化装置と、粒状の固体酸触媒を内部に流動状態に充填した流動床式固体酸触媒糖化装置とが考えられる。しかしながら、前者の固定床式固体酸触媒糖化装置では、密集状態で固定化された粒状の固体酸触媒の間をバイオマスである液状原料が流通するので、液状原料に含まれる固形物等が固体酸触媒の表面に付着・堆積することが起こり得る。そして、固定床式固体酸触媒糖化装置では、このような固形物等の固体酸触媒への付着・堆積に起因して、最終的に固体酸触媒が目詰まり状態となって処理不能状態に陥るという虞がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、バイオマス等の液状原料を低糖化する粒状の固体酸触媒の目詰まりを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、固体酸触媒糖化装置に係る第1の解決手段として、粒状の固体酸触媒が固定状態に充填され、液状原料を固体酸触媒に流通させて低糖化する固体酸触媒糖化装置であって、液状原料の流入側及び流出側のいずれか一方あるいは両方に流体を供給する目詰まり防止手段を備える、という手段を採用する。
【0007】
固体酸触媒糖化装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、目詰まり防止手段は、固体酸触媒の目詰まり状態を検出する目詰まり検出手段をさらに備え、当該目詰まり検出手段の検出結果に基づいて流体を供給する、という手段を採用する。
【0008】
固体酸触媒糖化装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、目詰まり防止手段は、固体酸触媒を加温する加温手段をさらに備える、という手段を採用する。
【0009】
固体酸触媒糖化装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、加温手段は、液状原料の流通方向に複数設けられたヒータを備え、目詰まり検出手段の検出結果に基づいていずれかあるいは全部のヒータに通電して固体酸触媒を加温する、という手段を採用する。
【0010】
また、本発明では、エタノール製造装置に係る第1の解決手段として、セルロース系バイオマスに含まれる多糖類を低糖化する第1糖化装置と、該第1糖化装置で低糖化された多糖類を単糖化する第1〜第4のいずれかの解決手段に係る固体酸触媒糖化装置と、該固体酸触媒糖化装置から得られる単糖類をアルコール発酵処理するアルコール発酵装置と、該アルコール発酵装置の処理液を蒸留処理してエタノールを分離する蒸留装置とを備え、アルコール発酵装置で発生した二酸化炭素を気体供給手段に供給する、という手段を採用する。
【0011】
エタノール製造装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、第1糖化装置は、セルロース系バイオマスに熱水を流通させることにより多糖類を低糖化する熱水流通式糖化装置あるいはセルロース系バイオマスに酵素を作用させて多糖類を低糖化する酵素式糖化装置である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液状原料の流入側及び流出側のいずれか一方あるいは両方に流体を供給する気体供給手段を備えるので、固体酸触媒の目詰まりを容易に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエタノール製造プラントAの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るエタノール製造プラントBの構成を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、第1実施形態について説明する。第1実施形態に係るエタノール製造プラントAは、図1に示すように、熱水流通式糖化装置1、固体酸触媒糖化装置2、発熱部3、圧力計4、アルコール発酵装置5、蒸留装置6、2つの開閉弁7,8、加圧装置9及び制御装置10によって構成されている。
【0015】
本エタノール製造プラントAは、バイオマス(化石資源を除く生物由来の資源)の一種である木材チップ(セルロース系バイオマス)を原料X1としてエタノール(バイオエタノール)を製造する化学プラントである。熱水流通式糖化装置1は、内部に収納された原料X1に所定温度(例えば150〜300℃程度)かつ所定圧力以上(例えば所定圧力における飽和蒸気圧以上)の加圧熱水を所定時間流通させることにより、バッチ的(間欠的)に原料X1を加水分解(可溶化)する装置である。
【0016】
周知のように、セルロース系バイオマスは、セルロース及びヘミセルロースを細胞壁を構成する多糖類として含むものである。セルロースは単糖類であるグルコース(C10:六炭糖)が重合した多糖類であり、一方、ヘミセルロースは、上記グルコース以外の単糖類のみもしくは複数の単糖類が重合した多糖類である。セルロース系バイオマスは、このようなセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主成分とするバイオマスであり、エタノール(バイオエタノール)の製造原料として近年注目されている。なお、リグニンは、三次元網目構造を有する高分子化合物であり、上記セルロース及びヘミセルロースを取り囲むことにより木質を形成する。
【0017】
上記熱水流通式糖化装置1は、このようなセルロース系バイオマスに含まれる多糖類(セルロース及びヘミセルロース)を重合度が比較的低い多糖類(オリゴ糖等)に加水分解する前段糖化装置(第1糖化装置)として機能するものであり、当該加水分解によって得られた多糖類の水溶液(多糖水X2)を固体酸触媒糖化装置2に供給する。
【0018】
固体酸触媒糖化装置2は、固定床式糖化装置、つまり粒状の固体酸触媒2aが内部に固定状態かつ密集状態に充填された糖化装置である。この固体酸触媒糖化装置2は、熱水流通式糖化装置1から供給された多糖水X2(液状原料)を固体酸触媒2aの触媒作用によって単糖類(五炭糖や六炭糖)に分解する後段糖化装置(第2糖化装置)として機能するものであり、上記単糖類の水溶液(単糖水X3)をアルコール発酵装置5に供給する。
【0019】
上記固体酸触媒2aは、例えば植物から得られる炭を原料そして合成された固体の触媒であり、従来の硫酸触媒(液体触媒)に匹敵する高性能触媒である。なお、固体酸触媒糖化装置2の処理温度は、このような固体酸触媒2aの活性が最も高まる温度、例えば90〜100℃程度であり、上記熱水流通式糖化装置1の処理温度よりも低い温度である。
【0020】
発熱部3は、上記固体酸触媒糖化装置2の周囲を取り囲むように環状に設けられている。より詳細には、この発熱部3は、液状原料の流通方向に隣接配置された3つの個別ヒータ、つまり液状原料の流通方向において最上流側(液状原料の流入側)に設けられた流入側ヒータ3a、当該流入側ヒータ3aの下流側に設けられた中間ヒータ3b及び液状原料の流通方向において最下流側(液状原料の流出側)に設けられた流出側ヒータ3cから構成されている。これら流入側ヒータ3a、中間ヒータ3b及び流出側ヒータ3cからなる発熱部3は、制御装置10によって通電(作動)が制御される。
【0021】
圧力計4は、上記固体酸触媒糖化装置2内の液状原料について、液状原料の流通方向における最上流側(液状原料の流入側)の圧力を計測する装置である。固体酸触媒糖化装置2内における液状原料の圧力は、液状原料に含まれる固形物等に起因する固体酸触媒2aの目詰まり状態を反映したものとなり、よって圧力計4は目詰まり検出手段として機能する。このような圧力計4は、液状原料の圧力の検出結果(圧力値)を制御装置10に出力する。
【0022】
アルコール発酵装置5は、上記単糖水X3に含まれる単糖類を酵母を用いて発酵処理することによりエタノールと二酸化炭素とを生成する。このアルコール発酵装置5は、液相であるエタノール及び水の混合水X4を蒸留装置6に供給する一方、気相である二酸化炭素を開閉弁7,8に供給する。蒸留装置6は、アルコール発酵装置5から供給された混合水X4を蒸留処理することによりエタノールと水とを分離し、エタノール(COH)を製品として外部に排出する。
【0023】
開閉弁7は、上記アルコール発酵装置5と固体酸触媒糖化装置2の上流側との間に設けられた上記二酸化炭素の流通配管に設けられており、二酸化炭素の流通を規制(ON/OFF)する制御弁である。すなわち、この開閉弁7は、固体酸触媒糖化装置2における液状原料の流入側に対する二酸化炭素の供給を規制するものである。
【0024】
例えば、二酸化炭素の流通配管の一端は、熱水流通式糖化装置1と固体酸触媒糖化装置2との間に設けられた多糖水X2の流通配管の途中部位に噴出ノズルとして接続されており、二酸化炭素は、このような配管接続構造によって実現されるエゼクタ機能によって、固体酸触媒糖化装置2に所定の流速で供給される多糖水X2に気泡状に吹き込まれる。このようなエゼクタ機能を利用することにより、アルコール発酵装置5から得られる二酸化炭素を特に加圧することなく固体酸触媒糖化装置2における多糖水X2の流入側に供給することができる。
【0025】
開閉弁8は、上記アルコール発酵装置5と固体酸触媒糖化装置2の下流側との間に設けられた上記二酸化炭素の流通配管に設けられており、二酸化炭素の流通を規制(ON/OFF)する制御弁である。すなわち、この開閉弁7は、固体酸触媒糖化装置2における単糖水X3の流出側に対する二酸化炭素の供給を規制するものである。
【0026】
加圧装置9は、上記開閉弁8が設けられた二酸化炭素の流通配管において、開閉弁8の上流側(アルコール発酵装置5側)に設けられており、アルコール発酵装置5から供給された二酸化炭素を所定圧に加圧して開閉弁8に供給する。開閉弁8を介して固体酸触媒糖化装置2の下流側に供給される二酸化炭素は、固体酸触媒糖化装置2からアルコール発酵装置5に向けて排出される混合水X4の排出圧力を受けるので、加圧装置9が無い場合には、固体酸触媒2aに十分な力を作用させるように固体酸触媒糖化装置2の下流側に二酸化炭素を供給することができない。加圧装置9は、このような事情から、混合水X4の排出圧力に抗して固体酸触媒2aに十分な力を作用させ得る圧力まで二酸化炭素を加圧する。
【0027】
制御装置10は、上記圧力計4の圧力の検出結果(圧力値)に基づいて2つの開閉弁7,8の開閉を制御すると共に流入側ヒータ3a、中間ヒータ3b及び流出側ヒータ3cへの通電を制御する。上記圧力計4、発熱部3、2つの開閉弁7,8、加圧装置9及び制御装置10は目詰まり防止手段を構成する。また、発熱部3及び制御装置10は加温手段を構成する。なお、制御装置10による制御処理については詳細を後述する。
【0028】
次に、このような本エタノール製造プラントAの動作、特に目詰まり防止手段の動作について詳しく説明する。
【0029】
本エタノール製造プラントAでは、熱水流通式糖化装置1内に所定量の原料X1(セルロース系バイオマス)が収容され、さらに外部から加圧熱水が連続的に供給されると、原料X1内の多糖類が加水分解(可溶化)されて加圧熱水内に溶け込む。この結果、オリゴ糖を主成分とする多糖類が加圧熱水に含まれた処理水(多糖水X2)が熱水流通式糖化装置1から固体酸触媒糖化装置2に連続的に供給される。
【0030】
上記多糖水X2は、固体酸触媒糖化装置2の一端に供給され、固体酸触媒2a間を通過することにより多糖類が触媒作用によって加水分解して単糖化し、グルコース等の単糖類を含む単糖水X3として他端からアルコール発酵装置5に向けて排出される。そして、単糖水X3中の単糖類は、アルコール発酵装置5によってアルコール発酵処理されることによりエタノールと二酸化炭素とに分解される。そして、エタノールと水とは蒸留装置6に送られてエタノールが製品として分離される。
【0031】
以上が本エタノール製造プラントAの全体的な処理プロセスであるが、固体酸触媒糖化装置2の固体酸触媒2aは、固体酸触媒糖化装置2内に固定状態で充填されているので、つまり固体酸触媒糖化装置2内において流動化していないので、多糖水X2の流入によって目詰まりする虞がある。本エタノール製造プラントAでは、このような固体酸触媒2aの目詰まりを防止するために、上述した目詰まり防止手段が以下のように動作する。
【0032】
すなわち、目詰まり防止手段は、アルコール発酵装置5で付帯的に発生する二酸化炭素を目詰まり防止用流体として利用することにより、固体酸触媒2aの目詰まりを防止する。より詳細には、制御装置10は、圧力計4から入力される圧力値が所定のしきい値を超えると、目詰まりの傾向が強まったと判断する。なお、上記二酸化炭素は、別途生成装置を必要としない気体として、また固体酸触媒2aの触媒活性を阻害しない気体として選定されたものである。
【0033】
そして、制御装置10は、この判断の結果、所定周期で開閉弁7あるいは/及び開閉弁8の開口状態を閉状態から開状態に変更することにより、上記所定周期で固体酸触媒糖化装置2の一端(固体酸触媒糖化装置2における多糖水X2の流入側)及び固体酸触媒糖化装置2の他端(固体酸触媒糖化装置2における単糖水X3の流出側)のいずれか一方あるいは両方に二酸化炭素を供給(噴出)させる。
【0034】
この結果、固体酸触媒糖化装置2内の固体酸触媒2aにおいて、多糖水X2の流入側(上流側)及び単糖水X3の流出側(下流側)のいずれか一方あるいは両方に二酸化炭素の気泡による力(圧力)が所定周期で加えられるので、固体酸触媒2aの表面に付着した固形物が引き剥がされて多糖水X2あるいは単糖水X3と共に流下し、以て固体酸触媒2aの目詰まりが防止される。
【0035】
ここで、固体酸触媒2aの表面に付着する固形物としては、熱水流通式糖化装置1で可溶化されないセルロース系バイオマスの微細固形物、熱水流通式糖化装置1で低糖化された多糖類が温度の低下に伴って固体酸触媒2aの表面で析出したもの、当該多糖類が固体酸触媒2aの表面で再重合して析出したもの等が考えられるが、何れについても多糖水X2の流入側(上流側)に位置する固体酸触媒2aへの付着が最も発生し易い。なお、固形物の引き剥がし能力が落ちるかも知れないが、固体酸触媒糖化装置2に対して所定周期ではなく連続的に二酸化炭素を供給してもよい。
【0036】
また、制御装置10は、上述した2つの開閉弁7,8の開閉制御に加え、発熱部3、つまり流入側ヒータ3a、中間ヒータ3b及び流出側ヒータ3cへの通電を制御して固体酸触媒2aを加温することにより、固体酸触媒2aの表面に付着した固形物を剥がれ易い状態とする。ただし、この加温は、固体酸触媒2aの触媒活性を著しく低下させることのない温度範囲で行う必要がある。
【0037】
このような制約の下で、制御装置10は、圧力計4から入力される圧力値が所定のしきい値を超えると、最初に流入側ヒータ3aのみに通電して、固体酸触媒2aのうち、多糖水X2の流入側の領域、つまり固体酸触媒2aへの固形物の付着が最も発生し易い領域を選択的に加温する。この結果多糖水X2の流入側に位置する固体酸触媒2aに付着した固形物が剥がれ易くなるので、固体酸触媒2aの目詰まりが防止される。
【0038】
また、制御装置10は、このような流入側ヒータ3aへの通電によっても圧力計4から入力される圧力値が十分に低下しない場合には、固体酸触媒2aの目詰まり傾向が十分に解消されていないと判断し、この判断の結果、流入側ヒータ3aに加えて中間ヒータ3bへも通電して固体酸触媒2aの加温範囲を広げる。
【0039】
そして、これによっても固体酸触媒2aの目詰まり傾向が十分に解消されていないと判断した場合には、さらに流出側ヒータ3cへも通電して固体酸触媒2aの全体を加温させる。このような通電制御によって、固体酸触媒2aの触媒活性の低下を抑制しつつ、固体酸触媒2aの目詰まりを効果的に防止することができる。なお、場合によっては、このような段階的な加温ではなく、流入側ヒータ3a、中間ヒータ3b及び流出側ヒータ3cの全てに同時に通電して固体酸触媒2aの全体を加温してもよい。
【0040】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係るエタノール製造プラントBは、図2に示すように、上記第1実施形態に係るエタノール製造プラントAの熱水流通式糖化装置1を酵素糖化装置11に入れ換えた構成を備える。なお、図2では、図1と同様な構成要素のは同一符号を付している。
【0041】
酵素糖化装置11は、セルロースあるいはヘミセルロースのグリコシド結合を加水分解する酵素として知られるセルラーゼを用いてセルロース系バイオマスに含まれる多糖類(セルロース及びヘミセルロース)を重合度が比較的低い多糖類(オリゴ糖等)に加水分解する前段糖化装置(第1糖化装置)として機能する。この酵素糖化装置11は、上記加水分解によって得られた多糖類の水溶液(多糖水X2)を固体酸触媒糖化装置2に供給する。
【0042】
このような構成のエタノール製造プラントBによっても、上述したエタノール製造プラントAと全く同様に、原料X1(セルロース系バイオマス)からエタノール(バイオエタノール)を製造することが可能である。また、エタノール製造プラントAと全く同様な目詰まり防止手段を備えているので、固体酸触媒2aの目詰まりを効果的に防止することができる。
【0043】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では、エタノール製造プラントA,Bを構成する第1糖化装置としての固体酸触媒糖化装置2に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されない。固体酸触媒糖化装置2のような固定床式糖化装置は、エタノール製造プラントA,B以外にも様々な用途が考えられるので、本発明は各種用途の固定床式糖化装置に適用可能である。
【0044】
(2)上記各実施形態では、固体酸触媒糖化装置2への二酸化炭素の供給圧力を特に可変するものではないが、必要に応じて上記供給圧力を可変してもよい。例えば圧力計4から入力される圧力値としきい値との差圧に応じて上記供給圧力を可変設定してもよい。つまり、差圧が比較的大きい場合は供給圧力を大とし、差圧が比較的小さい場合は供給圧力を小とすることが考えられる。ただし、このように供給圧力を可変設定するためには、開閉弁7あるいは/及び開閉弁8の前後に圧力可変手段を挿入し、この圧力可変手段を制御装置10で制御する必要がある。
【0045】
(3)上記各実施形態では、圧力計4を目詰まり検出手段として採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、固体酸触媒2aの目詰まり傾向に応じて固体酸触媒糖化装置2に流れ込む多糖水X2の流量あるいは固体酸触媒糖化装置2から流れ出す単糖水X3の流量が変化するので、当該多糖水X2の流量あるいは単糖水X3の流量を計測する流量計を目詰まり検出手段として採用することが考えられる。
【0046】
(4)上記各実施形態では、植物から得られる炭を原料そして合成された固体酸触媒2aを用いるが、本発明はこれに限定されない。
(5)上記各実施形態では、発熱部3及び制御装置10からなる加温手段を設けたが、この加温手段については必要に応じて削除してもよい。
【符号の説明】
【0047】
A,B…エタノール製造プラント、1…熱水流通式糖化装置、2…固体酸触媒糖化装置、2a…固体酸触媒、3…発熱部、3a…流入側ヒータ、3b…中間ヒータ、3c…流出側ヒータ、4…圧力計、5…アルコール発酵装置、6…蒸留装置、7,8…開閉弁、9…加圧装置、10…制御装置、11…酵素糖化装置、X1…原料、X2…多糖水、X3…単糖水、X4…混合水、X5…エタノール(バイオエタノール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の固体酸触媒が充填され、液状原料を固体酸触媒に流通させて低糖化する固体酸触媒糖化装置であって、
液状原料の流入側及び流出側のいずれか一方あるいは両方に流体を供給する目詰まり防止手段を備えることを特徴とする固体酸触媒糖化装置。
【請求項2】
目詰まり防止手段は、固体酸触媒の目詰まり状態を検出する目詰まり検出手段をさらに備え、当該目詰まり検出手段の検出結果に基づいて流体を供給することを特徴とする請求項1記載の固体酸触媒糖化装置。
【請求項3】
目詰まり防止手段は、固体酸触媒を加温する加温手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の固体酸触媒糖化装置。
【請求項4】
加温手段は、液状原料の流通方向に複数設けられたヒータを備え、目詰まり検出手段の検出結果に基づいていずれかあるいは全部のヒータに通電して固体酸触媒を加温することを特徴とする3記載の固体酸触媒糖化装置。
【請求項5】
セルロース系バイオマスに含まれる多糖類を低糖化する第1糖化装置と、
該第1糖化装置で低糖化された多糖類を単糖化する請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体酸触媒糖化装置と、
該固体酸触媒糖化装置から得られる単糖類をアルコール発酵処理するアルコール発酵装置と、
該アルコール発酵装置の処理液を蒸留処理してエタノールを分離する蒸留装置とを備え、
アルコール発酵装置で発生した二酸化炭素を気体供給手段に供給することを特徴とするエタノール製造装置。
【請求項6】
第1糖化装置は、セルロース系バイオマスに熱水を流通させることにより多糖類を低糖化する熱水流通式糖化装置あるいはセルロース系バイオマスに酵素を作用させて多糖類を低糖化する酵素式糖化装置であることを特徴とする請求項5記載のエタノール製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−231769(P2012−231769A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104469(P2011−104469)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】