説明

固体電解コンデンサ

【課題】固体電解コンデンサを作製するときの歩留を安定して向上可能な固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】固体電解コンデンサは、陽極体1と、陽極リード部材とを備える。陽極体1は、内周領域115を端面11に有する。内周領域115は、端面11の長辺111,112および短辺113,114との間にエッジ寸法fに等しい距離を有する。エッジ寸法fは、固体電解コンデンサを作製するときの歩留を決定する歩留寸法である。陽極リード部材は、端面11の内周領域115内に植立される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体電解コンデンサに関し、特に、固体電解コンデンサを作製するときの歩留を向上な可能な固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器のデジタル化に伴い、電子機器に使用されるコンデンサにも、小型、大容量で高周波領域における等価直列抵抗が低いコンデンサが求められるようになっている。
【0003】
このような小型、大容量で低い等価直列抵抗を有するコンデンサとして、二酸化マンガンおよび7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン錯塩等の電子伝導性固体を陰極材として用いた固体電解コンデンサがある。
【0004】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリフラン等の導電性高分子を陰極材として用いた固体電解コンデンサもある。
【0005】
そして、従来、固体電解コンデンサとして、タンタル等の弁作用金属からなる陽極体に植立される陽極リード部材の断面形状を扁平形状にした固体電解コンデンサが知られている(特許文献1)。
【0006】
図15は、従来の固体電解コンデンサの陽極体および陽極リード部材を示す斜視図である。図15を参照して、従来の固体電解コンデンサは、陽極体100と、陽極リード部材110とを備える。陽極リード部材110は、一部が陽極体100に埋設されるように陽極体100の1つの端面に植立される。そして、陽極リード部材110は、幅Aおよび厚さBを有する扁平型の断面形状からなり、幅Aは、厚さBよりも大きい寸法を有する。
【特許文献1】特開2006−216680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の固体電解コンデンサにおいては、端面における陽極リード部材の配置位置によって固体電解コンデンサの歩留が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、固体電解コンデンサを作製するときの歩留を安定して向上可能な固体電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、固体電解コンデンサは、陽極体と、誘電体皮膜と、固体電解質層と、陰極引出層と、陽極リード部材とを備える。陽極体は、弁作用金属の焼結体からなる。誘電体皮膜は、陽極体に接して形成される。固体電解質層は、誘電体皮膜に接して形成される。陰極引出層は、固体電解質層に接して形成される。陽極リード部材は、陽極体の一端面に植立され、一部が陽極体に埋設される。そして、陽極リード部材は、対向する2つの直線と2つの直線を連結する曲線とからなる断面形状を一端面において有し、一端面の外周縁との間の距離が固体電解コンデンサを作製するときの歩留を決定する歩留寸法に設定された内周領域に植立されている。
【0010】
好ましくは、一端面は、長辺と短辺とからなる四角形の形状を有し、陽極リード部材は、2つの直線が一端面の長辺に略平行になるように内周領域に植立されている。
【0011】
好ましくは、2つの直線の間隔をcとし、歩留寸法をfとし、短辺の長さをTとしたとき、c≦T−2fが成立する。
【0012】
好ましくは、cは、T−2fに略等しい。
【0013】
好ましくは、T−2fよりも大きい直径を有する円形の面積をSとしたとき、陽極リード部材は、一端面において面積Sに略等しい断面積を有する。
【0014】
好ましくは、陽極リード部材は、対向する2つの曲線によって2つの直線を連結した断面形状を有する。
【0015】
好ましくは、2つの曲線は、一端面の外周に向かって凸になっている形状からなる。
【0016】
好ましくは、陽極体は、ニオブを含む。
【0017】
好ましくは、陽極リード部材は、ニオブまたはタンタルからなる。
【発明の効果】
【0018】
この発明による固体電解コンデンサは、対向する2つの直線と2つの直線を連結する曲線とからなる断面形状を有する陽極リード部材を、固体電解コンデンサを作製するときの歩留を決定する歩留寸法を考慮して決定された内周領域内に植立した構造を有する。その結果、固体電解コンデンサを作製したときの歩留が一定以上になる。
【0019】
したがって、この発明によれば、固体電解コンデンサの歩留を安定して向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態による固体電解コンデンサの構成を示す断面図である。図1を参照して、固体電解コンデンサ10は、陽極体1と、陽極リード部材2と、誘電体酸化皮膜3と、導電性高分子層4と、陰極引出層5と、導電性接着剤6と、陰極端子7と、陽極端子8と、樹脂9とを備える。
【0022】
陽極体1は、ニオブからなる。陽極リード部材2は、一方端が陽極体1に接続され、他方端が陽極端子8に接続される。そして、陽極リード部材2は、ニオブからなる。誘電体酸化皮膜3は、五酸化ニオブ(Nb)からなり、陽極体1の全表面および陽極リード部材2の一部の表面に形成される。
【0023】
導電性高分子層4は、ポリピロールからなる高分子化合物によって構成され、誘電体酸化皮膜3を覆うように形成される。この場合、陽極リード部材2に接して形成された一部の誘電体酸化皮膜3は、導電性高分子層4から露出する。陰極引出層5は、陽極リード部材2が形成された側を除いて導電性高分子層4を覆う。
【0024】
導電性接着剤6は、陰極引出層5上に形成され、陰極端子7を陰極引出層5に接続する。陰極端子7は、一方端が導電性接着剤6上に形成され、他方端が樹脂9に接して形成される。陽極端子8は、一方端が陽極リード部材2に接続され、他方端が樹脂9に接して形成される。樹脂9は、陰極端子7および陽極端子8の一部を除いて、陽極体1、陽極リード部材2、誘電体酸化皮膜3、導電性高分子層4、陰極引出層5、導電性接着剤6、陰極端子7および陽極端子8を封止する。
【0025】
図2は、図1に示す陽極体1および陽極リード部材2を示す斜視図である。図2を参照して、陽極体1は、略直方体の形状を有する。そして、陽極体1は、厚さT1、幅W1および長さL1を有する。厚さT1は、たとえば、0.5mmに設定され、幅W1は、たとえば、3.4mmに設定され、長さL1は、たとえば、4.2mmに設定される。陽極リード部材2は、一部が陽極体1に埋設され、陽極体1の端面11に植立される。そして、陽極リード部材2は、長さL2を有する。長さL2は、陽極体1に埋設された陽極リード部材2の長さL21と、陽極体1から外部へ出た陽極リード部材2の長さL22とからなる。長さL2は、たとえば、6.7mmに設定され、長さL21は、たとえば、3.0mmに設定され、長さL22は、たとえば、3.7mmに設定される。
【0026】
図3は、図2に示すA方向から見た陽極体1および陽極リード部材2の平面図である。図3を参照して、陽極体1の端面11は、長辺111,112および短辺113,114からなる略長方形の形状を有する。
【0027】
陽極リード部材2は、対向する2つの直線21,22と、対向する2つの曲線23,24とからなる扁平型の断面形状を有する。曲線23,24の各々は、円弧形状からなり、2つの曲線23,24は、端面11の外周に向かって凸になる形状からなる。そして、陽極リード部材2は、2つの直線21,22が端面11の長辺111,112に略平行になるように端面11の略中心部に配置される。
【0028】
陽極リード部材2は、厚さcおよび幅W2を有する。また、陽極リード部材2の直線21と端面11の長辺111との間隔および陽極リード部材2の直線22と端面11の長辺112との間隔は、f1に設定される。さらに、陽極リード部材2の曲線23と端面11の短辺113との間隔および陽極リード部材2の曲線24と端面11の短辺114との間隔は、f2に設定される。
【0029】
そして、厚さcは、たとえば、0.15mmに設定され、幅W2は、たとえば、0.46mmに設定される。その結果、間隔f1は、(T1−c)/2=(0.5−0.15)/2=0.175mmに設定される。また、曲線23と短辺113との間隔および曲線24と短辺114との間隔f2は、(W1−W2)/2=(3.4−0.46)/2=1.47mmに設定される。
【0030】
図4は、円形の断面形状を有するワイヤの断面図である。図4を参照して、ワイヤ20は、直径aを有する。そして、直径aは、陽極リード部材2の厚さcよりも大きい。ワイヤ20の断面積をSとすると、S=(a/2)×πになる。陽極リード部材2は、断面積Sに略等しい断面積を有する。
【0031】
陽極リード部材2は、円形の断面形状が扁平型になるようにワイヤ20をプレス加工して作製される。そして、ワイヤ20をプレス加工して作製された陽極リード部材2は、断面積Sに略等しい断面積を有する。
【0032】
図5は、図1に示す固体電解コンデンサ10の製造方法を説明するための工程図である。図5を参照して、一連の動作が開始されると、ニオブからなり、円形の断面形状を有するワイヤ20をプレス加工して扁平型の断面形状を有するワイヤ30を作製する(工程(a)参照)。この場合、ワイヤ30は、厚さcおよび幅W2を有する。
【0033】
その後、プレス加工したワイヤ30を6.7mmの長さに切断して陽極リード部材2を作製し、ニオブの金属粉末と作製した陽極リード部材2とを金型に入れ、その陽極リード部材2が3.0mmの長さまで埋設されるように、加圧成形して成形体40を作製する(工程(b)参照)。
【0034】
引き続いて、陽極リード部材2および成形体40を真空焼結し、陽極リード部材2が埋設された陽極体1を作製する(工程(c)参照)。
【0035】
その後、陽極体1および陽極リード部材2を0.01〜1.0wt%のリン酸水溶液中で電解化成処理し、陽極体1の全表面および陽極リード部材2の一部表面にNbOからなる誘電体酸化皮膜3を形成する(工程(d)参照)。
【0036】
そして、誘電体酸化皮膜3上にポリピロールからなる導電性高分子層4を形成する(工程(e)参照)。その後、導電性高分子層4上に陰極引出層5を形成し(工程(f)参照)、導電性接着剤6を陰極引出層5上に塗布し(工程(g)参照)、その塗布した導電性接着剤6によって陰極端子7を陰極引出層5に接着し、陽極端子8を陽極リード部材2に接続する(工程(h)参照)。引き続いて、樹脂9によってモールドして固体電解コンデンサ10を完成する(工程(i)参照)。
【0037】
次に、固体電解コンデンサ10の特性について説明する。比較例として、断面形状が円形または四角形である陽極リード部材を用いた固体電解コンデンサを用いた。図6は、試作した固体電解コンデンサの平面図であり、図7から図12は、それぞれ、試作した固体電解コンデンサの第1から第6の側面図である。
【0038】
図6を参照して、比較例1による電解コンデンサ10Aは、陽極体1と、陽極リード部材22Aとを備え、比較例2による電解コンデンサ10Bは、陽極体1と、陽極リード部材22Bとを備え、比較例3による電解コンデンサ10Cは、陽極体1と、陽極リード部材22Cとを備え、比較例4による電解コンデンサ10Dは、陽極体1と、陽極リード部材22Dとを備え、比較例5による電解コンデンサ10Eは、陽極体1と、陽極リード部材22Eとを備える。
【0039】
この発明による固体電解コンデンサ10および比較例1〜5による固定電解コンデンサ10A,10B,10C,10D,10Eにおいて、陽極体1は、3.4mmの幅、4.2mmの長さおよび0.5mmの厚さを有する。また、陽極リード部材2,22A,22B,22C,22D,22Eは、6.7mmの長さを有する。そして、陽極リード部材2,22A,22B,22C,22D,22Eは、6.7mmの長さのうち、3.0mmの長さの部分が陽極体1に埋設される。
【0040】
図7を参照して、固体電解コンデンサ10において、陽極リード部材2と陽極体1の縁との間隔は、fである。図8を参照して、固体電解コンデンサ10Aにおいて、陽極リード部材22Aは、円形の断面形状を有する。そして、陽極リード部材22Aと陽極体1の縁との間隔は、fである。
【0041】
図9を参照して、固体電解コンデンサ10Bにおいて、陽極リード部材22Bは、円形の断面形状を有する。そして、陽極リード部材22Bと陽極体1の縁との間隔は、fである。
【0042】
図10を参照して、固体電解コンデンサ10Cにおいて、陽極リード部材22Cは、円形の断面形状を有する。そして、陽極リード部材22Cと陽極体1の縁との間隔は、fである。
【0043】
図11を参照して、固体電解コンデンサ10Dにおいて、陽極リード部材22Dは、円形の断面形状を有する。そして、陽極リード部材22Dと陽極体1の縁との間隔は、fである。
【0044】
図12を参照して、固体電解コンデンサ10Eにおいて、陽極リード部材22Eは、長方形状の断面形状を有する。そして、陽極リード部材22Eと陽極体1の縁との間隔は、fである。
【0045】
この発明による固体電解コンデンサ10は、陽極体1と、0.15mm×0.46mmの断面寸法を有する陽極リード部材2とを備える。比較例1による固体電解コンデンサ10Aは、陽極体1と、直径が0.3mmのワイヤからなる陽極リード部材22Aとを備える。比較例2による固体電解コンデンサ10Bは、陽極体1と、直径が0.275mmのワイヤからなる陽極リード部材22Bとを備える。比較例3による固体電解コンデンサ10Cは、陽極体1と、直径が0.24mmのワイヤからなる陽極リード部材22Cとを備える。比較例4による固体電解コンデンサ10Dは、陽極体1と、直径が0.20mmのワイヤからなる陽極リード部材22Dとを備える。比較例5による固体電解コンデンサ10Eは、陽極体1と、0.12mm×1.5mmの断面寸法を有する陽極リード部材22Eとを備える。
【0046】
このように、この発明による固体電解コンデンサ10および比較例1〜5による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10D,10Eは、同じ陽極体1に埋設する陽極リード部材の断面形状を変えて作製された固体電解コンデンサである。
【0047】
表1は、この発明による固体電解コンデンサ10および比較例1〜5による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10D,10Eの寸法、歩留、静電容量および等価直列抵抗を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
なお、表1において、長さ5.5mmの抵抗値とは、図6に示すように陽極体1に埋設された一方端からの長さが5.5mmである陽極リード部材2,22A,22B,22C,22D,22Eの抵抗値である。
【0050】
表2を参照して、この発明による固体電解コンデンサ10においては、エッジ部の寸法fは、0.175mmである。また、比較例1〜4による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10Dにおいては、エッジ部の寸法f,f,f,fは、陽極リード部材22A,22B,22C,22Dの直径がφ0.3mm〜φ0.20mmへと小さくなるに従って、0.10mm、0.113mm、0.13mmおよび0.15mmと大きくなる。
【0051】
この発明による固体電解コンデンサ10において、エッジ部の寸法fが0.175mmと大きいのは、陽極リード部材2は、直径がφ0.3mmである円形のワイヤ20をプレス加工して作製された扁平型の断面形状を有するからである。すなわち、プレス加工後の陽極リード部材2は、0.15mmの厚さcと0.46mmの幅W2とからなる断面形状を有するので、エッジ部の寸法fは、直径が0.15mmである円形のワイヤを陽極体1に埋設したのと同等になるからである。
【0052】
この発明による固体電解コンデンサ10および比較例1〜4による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10Dにおいては、エッジ部の寸法f,f,f,f,fが0.1mmから0.175mmへと大きくなると、歩留は、18%、36%、48%、78%および96%と向上する。
【0053】
一方、比較例5による固体電解コンデンサ10Eにおいては、エッジ部の寸法fが0.19mmと最も大きいにも係らず、歩留は、8%と最も低い。これは、比較例5による固体電解コンデンサ10Eは、断面形状が四角形である陽極リード部材を備えているため、陽極体1および陽極リード部材22Eの焼結時に四角形の角部近傍からクラックが発生し、漏れ電流異常が生じたためである。
【0054】
図13は、歩留とエッジ部の寸法との関係を示す図である。図13において、縦軸は、歩留を表し、横軸は、エッジ寸法を表す。また、丸印は、この発明による固体電解コンデンサ10および比較例1〜4による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10Dにおける歩留とエッジ寸法との関係をプロットしたものである。
【0055】
図13を参照して、歩留とエッジ寸法との関係は、直線k1によって表される。この発明による固体電解コンデンサ10および比較例1〜4による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10Dは、丸みのある断面形状を有する陽極リード部材2,22A,22B,22C,22Dを備える。したがって、陽極リード部材が丸みのある断面形状を有する場合には、歩留は、エッジ寸法fに略比例して向上する。その結果、エッジ寸法f,f,f,f,fは、固体電解コンデンサを作製するときの歩留を決定する歩留寸法になる。
【0056】
再び、表2を参照して、比較例1〜4による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10Dにおいては、等価直列抵抗は、陽極リード部材22A,22B,22C,22Dの直径がφ0.30mmからφ0.20mmへと小さくなるに従って、30.9mΩ、34.0mΩ、38.1mΩおよび43.8mΩと大きくなる。これは、主に、5.5mmの長さにおける抵抗値が直径の小径化に伴って大きくなることに起因している。
【0057】
一方、この発明による固体電解コンデンサ10においては、等価直列抵抗は、30.7mΩであり、0.3mmの直径を有するワイヤを用いた比較例1による固体電解コンデンサ10Aの等価直列抵抗とほぼ同じである。このように、断面形状が扁平型である陽極リード部材2を用いた場合に等価直列抵抗が増大しないのは、断面形状を扁平型にプレス加工することによって陽極体1と陽極リード部材2との接触面積が大きくなるからである。
【0058】
また、この発明による固体電解コンデンサ10および比較例1〜5による固体電解コンデンサ10A,10B,10C,10D,10Eは、ほぼ同じ容量を有する。
【0059】
したがって、断面形状を円形から扁平型にプレス加工することによって、等価直列抵抗の増大を抑制し、かつ、容量を維持して歩留を向上できる。
【0060】
図14は、陽極リード部材2の配置範囲を説明するための図である。図14を参照して、陽極体1の端面11は、内周領域115を有する。内周領域115は、幅W3および厚さT2を有し、端面11の外周縁(=長辺111,112および短辺113,114)との間でエッジ部の寸法fに等しい距離を有する。そして、幅W3は、W3=W1−2fによって決定され、厚さT2は、T2=T1−2fによって決定される。
【0061】
陽極リード部材2の断面寸法(厚さcおよび幅W2)が内周領域115の寸法(厚さT2および幅W1)以下である場合には、陽極リード部材2が内周領域115内に植立され、陽極リード部材2と陽極体1の端面11の外周縁(=長辺111,112および短辺113,114)との距離は、エッジ寸法f以上になる。その結果、固体電解コンデンサの歩留は、エッジ寸法fで決定される歩留(図13の直線k1参照)以上になる。たとえば、エッジ寸法fが0.16mmである場合、陽極リード部材2と陽極体1の端面11の外周縁(=長辺111,112および短辺113,114)との距離は、0.16mm以上になり、固体電解コンデンサの歩留は、エッジ寸法fが0.16mmであるときの歩留(=85%)以上になる。
【0062】
一方、陽極リード部材2の断面寸法(厚さcおよび幅W2)が内周領域115の寸法(厚さT2および幅W1)よりも大きい場合には、陽極リード部材2が内周領域115からはみ出して端面11に植立され、陽極リード部材2と陽極体1の端面11の外周縁(=長辺111,112および短辺113,114)との距離は、エッジ寸法fよりも短くなる。その結果、固体電解コンデンサの歩留は、エッジ寸法fによって決定される歩留よりも低くなる。たとえば、陽極リード部材2が内周領域115の厚さT2よりも大きい直径を有する円形のワイヤからなる場合、陽極リード部材2を端面11に植立すると、陽極リード部材2と陽極体1の端面11の外周縁(=長辺111,112および短辺113,114)との距離は、エッジ寸法fよりも短くなり、固体電解コンデンサの歩留は、エッジ寸法fによって決定される歩留よりも低くなる。
【0063】
そこで、断面形状が円形であるワイヤを断面形状が扁平型であるワイヤにプレス加工して、陽極リード部材2が端面11の内周領域115内に植立されるようにすれば、上述したように、固体電解コンデンサの歩留が向上する。
【0064】
したがって、この発明においては、歩留を決定する歩留寸法(=エッジ寸法f)を考慮して決定された内周領域115内に陽極リード部材2を植立することを特徴とする。この特徴によって、固体電解コンデンサの歩留を安定して向上できる。
【0065】
陽極リード部材2が内周領域115内に植立されるか否かは、陽極体1の厚さT1と、陽極リード部材2の断面寸法(厚さc)と、エッジ寸法fとによって決定される。図14から明らかなように、T1=T2+2fが成立する。そして、陽極リード部材2の厚さcが内周領域115の厚さT2以下であれば(c≦T2)、陽極リード部材2は、内周領域115内に植立される。すなわち、c≦T1−2fが成立すれば、陽極リード部材2は、内周領域115内に植立される。なお、陽極リード部材2が内周領域115内に植立されるか否かは、陽極体1および内周領域115の短辺の寸法(厚さT1,T2)に基づいて決定すればよい。
【0066】
したがって、この発明においては、c≦T1−2fが成立するように断面形状が円形であるワイヤを断面形状が扁平型であるワイヤにプレス加工して陽極リード部材2を作製する。
【0067】
固体電解コンデンサ10は、その厚さが薄くなる傾向にあり、高い歩留を実現するにはエッジ寸法fを大きくする必要があるので、好ましくは、c=T1−2fが成立するように断面形状が円形であるワイヤを断面形状が扁平型であるワイヤにプレス加工して陽極リード部材2を作製する。
【0068】
そして、固体電解コンデンサ10の厚さが薄くなれば、プレス加工前のワイヤの直径は、内周領域115の厚さT2よりも大きくなるので、内周領域115の厚さT2よりも大きい直径を有するワイヤを断面形状が扁平型になるようにプレス加工して陽極リード部材2を作製する。この場合、プレス加工の前後でワイヤの断面積がほぼ同じである。
【0069】
なお、この発明においては、陽極リード部材2の断面形状は、上述した形状以外の形状を有していてもよく、対向する2つの直線と、2つの直線を連結する曲線とからなっていればよい。
【0070】
また、上記においては、導電性高分子層4は、ポリピロールからなると説明したが、この発明においては、これに限らず、導電性高分子層4は、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレンおよびポリアニリン等の導電性高分子、またはTCNQ(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)錯塩等の有機半導体によって構成されていてもよい。
【0071】
さらに、上記においては、陽極リード部材2は、ニオブからなると説明したが、この発明においては、これに限らず、陽極リード部材2は、タンタルからなっていてもよく、一般的には、弁金属からなっていればよい。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明は、固体電解コンデンサを作製するときの歩留を安定して向上可能な固体電解コンデンサに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の実施の形態による固体電解コンデンサの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す陽極体および陽極リード部材を示す斜視図である。
【図3】図2に示すA方向から見た陽極体および陽極リード部材の平面図である。
【図4】円形の断面形状を有するワイヤの断面図である。
【図5】図1に示す固体電解コンデンサの製造方法を説明するための工程図である。
【図6】試作した固体電解コンデンサの平面図である。
【図7】試作した固体電解コンデンサの第1の側面図である。
【図8】試作した固体電解コンデンサの第2の側面図である。
【図9】試作した固体電解コンデンサの第3の側面図である。
【図10】試作した固体電解コンデンサの第4の側面図である。
【図11】試作した固体電解コンデンサの第5の側面図である。
【図12】試作した固体電解コンデンサの第6の側面図である。
【図13】歩留とエッジ部の寸法との関係を示す図である。
【図14】陽極リード部材の配置範囲を説明するための図である。
【図15】従来の固体電解コンデンサの陽極体および陽極リード部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1,100 陽極体、2,22A,22B,22C,22D,22E,110 陽極体リード、3 誘電体酸化皮膜、4 導電性高分子層、5 陰極引出層、6 導電性接着剤、7 陰極端子、8 陽極端子、9 樹脂、10,10A,10B,10C,10D,10E 固体電解コンデンサ、20,30 ワイヤ、40 成形体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属の焼結体からなる陽極体と、
前記陽極体に接して形成された誘電体皮膜と、
前記誘電体皮膜に接して形成された固体電解質層と、
前記固体電解質層に接して形成された陰極引出層と、
前記陽極体の一端面に植立され、一部が前記陽極体に埋設された陽極リード部材とを備え、
前記陽極リード部材は、対向する2つの直線と前記2つの直線を連結する曲線とからなる断面形状を前記一端面において有し、前記一端面の外周縁との間の距離が固体電解コンデンサを作製するときの歩留を決定する歩留寸法に設定された内周領域に植立されている、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記一端面は、長辺と短辺とからなる四角形の形状を有し、
前記陽極リード部材は、前記2つの直線が前記長辺に略平行になるように前記内周領域に植立されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記2つの直線の間隔をcとし、前記歩留寸法をfとし、前記短辺の長さをTとしたとき、c≦T−2fが成立する、請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記cは、前記T−2fに略等しい、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記T−2fよりも大きい直径を有する円形の面積をSとしたとき、
前記陽極リード部材は、前記一端面において前記面積Sに略等しい断面積を有する、請求項3または請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記陽極リード部材は、対向する2つの曲線によって前記2つの直線を連結した断面形状を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
前記2つの曲線は、前記一端面の外周に向かって凸になっている形状からなる、請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記陽極体は、ニオブを含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記陽極リード部材は、ニオブまたはタンタルからなる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−159826(P2008−159826A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346894(P2006−346894)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(595122132)サン電子工業株式会社 (17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)