説明

固体電解コンデンサ

【課題】 大容量化が可能で量産性に優れ、さらには、低ESLで、実装性に優れた固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】 陽極リード1を導出したコンデンサ素子2が、上面にコンデンサ素子接続面を、下面にコンデンサ素子接続面のパターンと異なるパターンを有するコンデンサ実装電極面を備え、上面と下面が電気的に接続された平板状の変換基板26の上面に接続され、コンデンサ素子2が外装樹脂9で被覆された固体電解コンデンサとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電気・電子・通信分野での機器の電源回路に用いられ、複数の実装用電極を有する固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型・薄型化、高機能化が進展しているが、それを実現させる有力な手法の1つとして回路駆動周波数の高周波化が挙げられる。これに対応するため固体電解コンデンサにおいては、インダクタンス(以降、ESLと称す)の低減および大容量化が大きな課題となりつつある。
【0003】
大容量化に関しては、コンデンサ内において容量に寄与するコンデンサ素子以外の電極や外装材料が占める体積を如何に小さくして、コンデンサ素子体積を大きくできる構造にするかが重要となる。
【0004】
従来の固体電解コンデンサは、陽極リードを有し固体電解質層、陰極層を形成したコンデンサ素子をリードフレームに接続し、外装樹脂からリードフレームを導出し電極としていた。体積効率を改善する手段として、特許文献1では図2の従来の固体電解コンデンサの断面図に示すように、コンデンサの電極となる電極基板7が貫通孔を有する絶縁層4と導電板3と電極層10を有している構造となっているが、コンデンサの底面となる電極基板7のコンデンサ実装電極面についての詳細な記載はない。
【0005】
ESLを増大させる原因として、コンデンサ内部の導電体の透磁率、コンデンサ内部から実装用端子までの配線長・配線形状等があるが、陽極および陰極の実装電極端子の距離を近づけ、ループインダクタンスと呼ばれる陽陰極の端子間に発生するインダクタンス成分を低減させ、さらに実装端子を増やし、陽陰極の端子を一次元的に交互に配置する、または二次元的に交互に配置するという手法が近年多く採用されている(以降、これらの低ESL化を目的とした複数の実装端子を有するコンデンサを多端子コンデンサと称する)。
【0006】
前者の例として、積層セラミックコンデンサの1品種としてIDC(Inter Digitated Capacitors)と称されるものがあり、また、後者の例としては、同じく積層セラミックコンデンサでLICA(Low Inductance Capacitor Arrays)と称される品種があり、電解コンデンサとしては、例えば特許文献2に記載されるような多端子コンデンサ等がある。積層セラミックコンデンサタイプのデバイスと固体電解コンデンサタイプのデバイスでは基本構造が異なっているが、ここでは固体電解コンデンサタイプのデバイスについて説明する。
【0007】
図3は従来技術の特許文献2の固体電解コンデンサタイプの多端子コンデンサの基本構造を示した製品外観の断面を含む斜視図である。
【0008】
図3に示す多端子型の固体電解コンデンサの場合、陽極端子(特許文献2では第一の電極端子)12および陰極端子(特許文献2では第二の電極端子)13が交互に配置されることにより、低ESL化が図られたもので、陽陰極端子配置を交互にするために、陰極端子13に関しては、弁作用金属シート体11および固体電解質層17形成後の多孔質部に絶縁体15を設けた後、その中にスルーホール22を形成し、その内部を導電体16で充填することで素子部の固体電解質層17および集電体層18と陰極端子13を接続し、陽極端子12については、母材の弁作用金属シート体11上に直接形成した構造としている。このコンデンサ構造の場合、製品全体のループインダクタンスは陽陰極の実装端子の距離が短くなり、また、端子数が増加するに従ってESLが低減するようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−110459号公報
【特許文献2】特開2002−343686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のリードフレームを用いて固体電解コンデンサを製造する場合は、陽陰極端子部のコンデンサ素子との接続面とコンデンサ実装電極面の形状が同一となるため、端子部の上面・下面の電気接続面積を変更することは難しく、陰極部のコンデンサ素子を大きくしたときに陽極接続部に接触しないように構造上または化学的に絶縁処理が必要になるという問題があった。
【0011】
また、体積効率を改善した従来技術の特許文献1においては、コンデンサ実装電極面についての詳細な記載はないが、前述のようなコンデンサなどの電子部品を実装するときには、対称性がなく、また狭い電極面であるとハンダリフロー実装時のセルフアライメント性を持たせにくくなる、マンハッタン現象(部品立ち)等が発生しやすくなる、などの問題が生じる。逆にコンデンサ素子接続面形状はコンデンサ容量を大きくするためにコンデンサ素子を大きくすると陰極となる固体電解質層部が陽極部に対して大きくなるため、陽陰極部が異なる構造になる方が望ましい。また、3端子以上の多端子構造に関しての記載もされていない。
【0012】
さらに、特許文献2に記載の多端子型の固体電解コンデンサの場合、図3に示すように、素子部を貫通するスルーホール22については、電解コンデンサの特徴である多孔質部と弁作用金属シート体11に開孔部を形成し、その部分に絶縁層14として絶縁樹脂を充填・硬化した後、樹脂部の中心に最初の開孔部の直径を越えない大きさの開孔部を形成し、その内部をメッキ等の導電体16で被覆・充填することで形成しているが、ここでの2回目の開孔部を形成する際に、機械的・熱的ストレスにより、樹脂部に亀裂が生じること、或いは孔周辺部の多孔質部を含むコンデンサ素子2にダメージを与える等により製品の漏れ電流特性を劣化させることが多い。さらに、スルーホール22が多くなるとESLは下がるものの、素子の容量に寄与する部分の面積も同時に低下し、コンデンサの容量が小さくなってしまうという問題がある。また、弁作用金属シート体11として使用する弁作用金属は気相酸化被膜が自然に生成しやすく酸化被膜によってメッキによる電極形成が難しいため、陽極端子12の形成にメッキ工法を用いることは困難であること、更に、メッキ工法を無理に適用したとしても陽極端子12と弁作用金属シート体11の間に長期信頼性に耐える電気的接続部を形成することは容易ではないことから、通常アルミ、タンタルおよびニオブを使用する電解コンデンサでは陽極側の端子と弁作用金属を接続するためには、抵抗溶接や超音波溶接等の溶接を用いているが、小径の端子を多数個溶接するのは技術的難易度が非常に高く、量産には不向きであるといった製造面での難点がある。
【0013】
上述のように、特許文献2に代表される周知の固体電解コンデンサの場合、低ESL化の目的で端子構造が検討されているものの、実際にはスルーホール22形成時のコンデンサ素子2へのダメージ、或いは陽極端子12と弁作用金属シート体11との接続の困難性等の理由により量産化が困難であり、容易に製造できないという問題がある。またコンデンサ素子2の形状と電極形状を一致させているためコンデンサ素子2の形状に関係するコンデンサの電気的特性(容量・定格電圧、tanδ、等価直列抵抗、漏れ電流等)を素子形状・厚み・機械強度の変更をともなわずに改良することが難しいという問題があった。このため電気的特性を変更する為にはコンデンサ素子形成工程から一貫して変更する必要があり量産性に劣るという問題があった。
【0014】
このような状況にあって本発明の課題は、大容量化が可能で量産性に優れ、さらには、低ESLで、実装性に優れた固体電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、上面にコンデンサ素子接続面を、下面に前記コンデンサ素子接続面のパターンと異なるパターンを有するコンデンサ実装電極面を備え、上面と下面が電気的に接続された平板状の変換基板の上面に、陽極リードを導出したコンデンサ素子が接続され、前記コンデンサ素子が外装樹脂で被覆されたことを特徴とする固体電解コンデンサが得られる。
【0016】
加えて本発明によれば、前記コンデンサ素子が陽極リードを導出した弁作用金属の粉末を成型、焼結した多孔質の陽極体上に陽極酸化処理により誘電体層が形成され、前記誘電体層上に固体電解質層が形成されたことを特徴とする固体電解コンデンサが得られ、前記変換基板のコンデンサ実装電極が少なくとも3個以上の陽陰電極端子を有することを特徴とする固体電解コンデンサが得られ、前記コンデンサ実装電極面の陽極端子、陰極端子のそれぞれが、前記コンデンサ実装電極面の中心点に対して点対称に配置されたことを特徴とする固体電解コンデンサが得られ、前記変換基板がガラス含有エポキシ樹脂、あるいは液晶ポリマーからなり、前記コンデンサ素子接続面のパターンと前記コンデンサ実装電極面の陽陰極端子がスルーホールにより電気的に接続されたことを特徴とする固体電解コンデンサが得られ、前記弁作用金属がタンタルまたはニオブであることを特徴とする固体電解コンデンサが得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、コンデンサ素子接続面とコンデンサ実装電極面を有する変換基板のコンデンサ素子接続面にコンデンサ素子を接続することにより、コンデンサ素子接続面の陰極部の面積を広くすることができ大容量化が容易となり、小型大容量でありながら、実装性に優れ量産性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。また、コンデンサ実装電極面で3個以上の電極端子を有することによって、従来の2端子電極構造より低ESL化を図ることができる。さらに、コンデンサ実装電極面の陽陰電極端子が点対称に配置されることによって、電解コンデンサの特徴である整流特性によるコンデンサの有極性(陽陰極の区別)があってもコンデンサの長手方向の向きが180度回転しても実装することが可能であり、特に小型化した場合の陽陰極位置を間違えた逆実装不良をなくして実装性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態の固体電解コンデンサを説明する断面図である。本発明の固体電解コンデンサの陽極材料は、弁作用金属で陽極酸化処理によって誘電体層となる陽極酸化被膜を形成するものであれば良いが、多孔質粉末によって表面積を大きくすることによって大容量化が容易なタンタル金属を用いたタンタル固体電解コンデンサを例に説明する。また、コンデンサ素子の製造方法は公知の技術によるものとして簡略に以下説明する。コンデンサ素子の形状、陽極リードの形状、導出位置等は特に限定されないものとする。
【0020】
公知の技術によってコンデンサ素子2の陽極導出部となるタンタル線からなる陽極リード1が導出されたタンタル金属粉末からなる多孔質のプレス体を高真空、高温で加熱処理し、多孔質性を維持したまま焼結体とする。その後、電解液に焼結体を浸漬して任意の化成電圧で陽極酸化処理によってタンタル金属表面に誘電体層となる酸化被膜であるTa25を形成する。次いで誘電体酸化被膜の上に固体電解質層を形成する。固体電解質はチオフェンモノマーもしくはピロールモノマーもしくはこれらの誘導体モノマーを重合して導電性高分子により形成してもよいし硝酸マンガンの熱分解によって二酸化マンガンを形成しても良い。この上にグラファイトペースト、銀ペーストによる陰極層を順次形成してコンデンサ素子2とする。
【0021】
次に、陽極リード1と金属片25を抵抗溶接によって接続する。金属片材料としては42合金や銅などがあげられる。銀ペーストを形成したコンデンサ素子2を陰極、金属片25を陽極となるように変換基板26のコンデンサ素子接続面の陰極部21、陽極部20とを導電性接着材を用いて電気的に接続するとともに固定する。その後、外装樹脂9としてガラス含有エポキシ樹脂、または液晶ポリマー、またはトランスファーモールド樹脂、または液状エポキシ樹脂を用いて外装を行う。このとき外装樹脂9によって個々に成型をした後、電圧印加を行ってエージングを実施し、特性不良品を検査選別した後、変換基板26を切断して個々のコンデンサにしてもよい。または、変換基板を連ねた量産用基板上に平板状に外装材を熱成型した後に電圧印加を行ってエージングを実施し、特性不良品を検査選別した後、外装樹脂9および変換基板26を設計寸法どおりに切断して個々のコンデンサにしてもよい。以上の製造方法によって固体電解コンデンサを作製することができる。
【0022】
図4は本発明の実施の形態の固体電解コンデンサに用いる変換基板の断面図であり、図4(a)は6端子を有する変換基板の断面図であり、図4(b)は4端子を有する変換基板の断面図である。図4に示すように変換基板26のコンデンサ素子接続面にはコンデンサ素子との接続用に陽極部20、陰極部21を備える。中間に絶縁性のガラス含有エポキシ樹脂、あるいは液晶ポリマー等の基板内にスルーホール22およびビアホール等の導電体を形成してコンデンサ素子接続面の陽陰極部20、21とコンデンサ実装電極面の陽陰極端子23、24とをそれぞれを導通化するようにする。図4(a)の断面図には陽陰極端子23、24それぞれ2端子からなる4端子が記載されているが断面には当たらないところでさらに2箇所で端子を有している。また図4(b)についても同様に断面には当たらないところでさらに2箇所で端子を有している。コンデンサ実装電極面については多端子構造が望ましく、希望形状とするために絶縁を必要とする箇所にはソルダーレジスト層19等の絶縁材を形成して絶縁体部を形成してもよい。
【0023】
図5は本発明の実施の形態の固体電解コンデンサに用いる変換基板の実装電極面を説明する図であり、図5(a)は4端子を有する変換基板を示す図であり、図5(b)、図5(c)は6端子を有する変換基板を示す図であり、図5(d)は変換基板の実装電極面の中心点に対して点対称に配置された4端子を有する変換基板を示す図であり、図5(e)は変換基板の実装電極面の中心点に対して点対称に配置された9端子を有する変換基板を示す図である。変換基板のコンデンサ実装電極面のパターンは、図5(a)、図5(b)、図5(c)に示すように、4端子構造、6端子構造のもの等があり、端子形状は特に限定しないが、実装基板上に実装するのに適した構造であればよい。また、図5(d)、図5(e)に示すように、点対称の4端子構造、9端子構造とすることにより、180度回転して実装しても電解コンデンサ特有の整流作用による逆実装の問題がなく、実装をより容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の固体電解コンデンサの断面図。
【図2】従来の固体電解コンデンサの断面図。
【図3】従来の固体電解コンデンサタイプの多端子コンデンサを示す製品外観の断面を含む斜視図。
【図4】本発明の実施の形態の固体電解コンデンサに用いる変換基板の断面図、図4(a)は6端子を有する変換基板の断面図、図4(b)は4端子を有する変換基板の断面図。
【図5】本発明の実施の形態の固体電解コンデンサに用いる変換基板の実装電極面を説明する図、図5(a)は4端子を有する変換基板を示す図、図5(b)、図5(c)は6端子を有する変換基板を示す図、図5(d)は変換基板の実装電極面の中心点に対して点対称に配置された4端子を有する変換基板を示す図、図5(e)は変換基板の実装電極面の中心点に対して点対称に配置された9端子を有する変換基板を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1 陽極リード
2 コンデンサ素子
3 導電板
4 絶縁層
5 金属条材
6a メッキ層(陽極側内部電極)
6b メッキ層(陽極側外部電極)
6c メッキ層(陰極側内部電極)
6d メッキ層(陰極側外部電極)
7 電極基板
8 導電性接着材
9 外装樹脂
10 電極層
11 弁作用金属シート体
12 陽極端子
13 陰極端子
14 絶縁層
15 絶縁体
16 導電体
17 固体電解質層
18 集電体層
19 ソルダーレジスト層
20 (コンデンサ素子接続面)陽極部
21 (コンデンサ素子接続面)陰極部
22 スルーホール
23 (コンデンサ実装電極面)陽極端子
24 (コンデンサ実装電極面)陰極端子
25 金属片
26 変換基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にコンデンサ素子接続面を、下面に前記コンデンサ素子接続面のパターンと異なるパターンを有するコンデンサ実装電極面を備え、上面と下面が電気的に接続された平板状の変換基板の上面に、陽極リードを導出したコンデンサ素子が接続され、前記コンデンサ素子が外装樹脂で被覆されたことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子が陽極リードを導出した弁作用金属の粉末を成型、焼結した多孔質の陽極体上に陽極酸化処理により誘電体層が形成され、前記誘電体層上に固体電解質層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記変換基板のコンデンサ実装電極が少なくとも3個以上の陽陰極端子を有することを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサ実装電極面の陽極端子、陰極端子のそれぞれが、前記コンデンサ実装電極面の中心点に対して点対称に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記変換基板がガラス含有エポキシ樹脂、あるいは液晶ポリマーからなり、前記コンデンサ素子接続面のパターンと前記コンデンサ実装電極面の陽陰極端子がスルーホールにより電気的に接続されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記弁作用金属がタンタルまたはニオブであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−98394(P2008−98394A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278420(P2006−278420)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)