説明

固体電解質粒子、固体電解質膜、固体電解質粒子の製造方法

【課題】固体電解質膜の緻密化に適した固体電解質粒子を提供する。
【解決手段】非晶質固体電解質からなり、鱗片状形状を有することを特徴とする固体電解質粒子1。好ましくは、前記固体電解質粒子の分布粒径に対する厚みのアスペクト比が1×10−2〜5×10−1である。より好ましくは、前記非晶質固体電解質が、酸化物固体電解質を含む。更に好ましくは、前記酸化物固体電解質が、LAGP:Li1+XAlXGe2−X(PO4)3(但し、0≦X≦2である。)、Li3PO4、LiPON、LiNbO3よりなる群から選ばれる電解質を含む固体電解質粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池用電極をはじめ様々な用途に用いられる固体電解質粒子、当該固体電解質粒子を含む固体電解質膜、及び当該固体電解質粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
【0003】
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を酸化物固体電解質や硫化物固体電解質等を用いた固体電解質層に変えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
【0004】
しかし、全固体電池は電解質のイオン伝導度が液電池に比べ低い上、活物質及び電解質共に結晶質なものであることから界面の形成が難しくセル抵抗が大きい等の問題があり、近年、全固体電池の高容量化のために様々な対策が施されている。例えば、特許文献1では、電極活物質と固体電解質との接合界面を良好にするため、電極活物質と固体電解質とを一体化した固体電解質構造体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−238739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、固体電解質膜を形成する方法としては、固体電解質粒子をスラリー塗布或いは圧粉等の方法で積層して膜状に成形し、必要に応じて焼結して強度を高めることによって固体電解質膜が形成される。
電池の高容量化のために、固体電解質膜の緻密化が求められているが、緻密化の方法としては、微細且つ均一な球状の固体電解質粒子を積層することにより細密充填することが考えられる。しかし、酸化物固体電解質を用いて固体電解質膜を形成する場合、酸化物固体電解質は例えば硫化物固体電解質に比べて硬く、粒子形状を制御する技術がないため、粒子を緻密に積層させるのが困難である。そのため、酸化物固体電解質からなる電解質膜を薄膜化すると割れが発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情を鑑み成し遂げられたものであり、固体電解質膜の緻密化に適した固体電解質粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、非晶質固体電解質からなり、鱗片状形状を有する固体電解質粒子を提供する。
【0009】
本発明においては、前記固体電解質粒子の分布粒径に対する厚みのアスペクト比が1×10−2〜5×10−1である、固体電解質粒子を提供する。
【0010】
本発明においては、前記非晶質固体電解質が、酸化物固体電解質を含む固体電解質粒子を提供する。
【0011】
本発明においては、前記酸化物固体電解質が、LAGP:Li1+XAlGe2−X(PO (但し、0≦X≦2である。)、LiPO、LiPON、LiNbOよりなる群から選ばれる電解質を含む、固体電解質粒子を提供する。
【0012】
本発明においては、前記固体電解質粒子を含むことを特徴とする固体電解質膜を提供する。
【0013】
本発明においては、固体電解質膜内において、前記固体電解質粒子が膜の面方向に配向している、固体電解質膜を提供する。
【0014】
本発明においては、固体電解質膜内において前記固体電解質粒子が焼結している、固体電解質膜を提供する。
【0015】
本発明においては、相対密度が80〜95である、固体電解質膜を提供する。
【0016】
本発明においては、非晶質固体電解質からなる原料粒子に対して、所定方向から機械的エネルギーを付加することを特徴とする、固体電解質粒子の製造方法を提供する。
【0017】
本発明においては、前記所定方向から機械的エネルギーを付加する方法は、前記原料粒子を2つの加圧媒体間に挟み込んで押し潰す方法である、固体電解質粒子の製造方法を提供する。
【0018】
本発明においては、前記2つの加圧媒体間に挟み込んで押し潰す方法は、ビーズミル攪拌法である、固体電解質粒子の製造方法を提供する。
【0019】
本発明においては、前記原料粒子の分布粒経は、0.5μm〜10μmである、固体電解質粒子の製造方法を提供する。
【0020】
本発明においては、前記原料粒子が、酸化物固体電解質を含む非晶質固体電解質からなる、固体電解質粒子の製造方法を提供する。
【0021】
本発明においては、前記酸化物固体電解質が、LAGP:Li1+XAlGe2−X(PO (但し、0≦X≦2である。)、LiPO、LiPON、LiNbOよりなる群から選ばれる電解質を含む、固体電解質粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、固体電解質膜の緻密化に適した固体電解質粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の固体電解質粒子を説明する説明図である。
【図2】実施例1で得られた固体電解質粒子のSEM画像である。
【図3】実施例1で得られた固体電解質粒子のSEM画像である。
【図4】比較例1で得られた固体電解質粒子のSEM画像である。
【図5】実施例1で得られた固体電解質粒子のアスペクト比を示すグラフである。
【図6】実施例2−1で得られた固体電解質粒子のSEM画像である。
【図7】実施例2−2で得られた固体電解質膜のSEM画像である。
【図8】比較例2で得られた固体電解質膜のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、非晶質固体電解質からなり、鱗片状形状を有する固体電解質粒子を提供する。
以下、本発明の構成及び実施態様について詳しく説明する。なお本発明は、図面及び実施例などにより詳しく説明されるが、本発明はこれら図面及び実施例に限定されない。
【0025】
まず、本発明の固体電解質粒子について説明する。本発明の固体電解質粒子は、鱗片状形状を有し且つ非晶質であることを特徴とするものである。図1は、本発明の固体電解質粒子の一例を示す斜視図である。本発明の固体電解質粒子は、図1に示すように鱗片状形状を有することを大きな特徴とする。ここで、本発明における鱗片状形状とは、扁平な粒子であって、扁平面が略鱗状であって、極端に長く伸びた突起(例えば、樹状突起やヒトデの腕のような形の突起)を有しない形状のことをいう。扁平面の外縁は、全体として略真円ないし略長円の形状である限り、必ずしも滑らかな円弧状でなくとも良く、例えば外縁が不規則なギザギザであってもよい。また、鱗片状形状の固体電解質粒子は、粒子群に含まれる鱗片状形状粒子の一部が融着して扁平な塊となっていても良い。
緻密で且つ割れ難い電解質薄膜を形成する観点から、固体電解質粒子の分布粒径に対する厚みのアスペクト比は、1×10−2〜5×10−1であることが好ましい。すなわち、図1に示すように、固体電解質粒子1の主面における最も長い線分を線分Aとし、線分Aに直交する線分の中で最も長い線分を線分Bとし、固体電解質粒子1の厚さを厚さCとする。本発明においては、A〜Cが、B=0.2A〜A、C=0.01A〜0.5Aの関係を満たす形状が好ましい。線分A、線分B、厚さCは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。
アスペクト比の測定方法としては、例えば、固体電解質粒子の粒度分布測定を行い、固体電解質粒子の粒径および粒径の分布範囲を求め、SEMを用いて固体電解質粒子の厚みを測定することで、固体電解質粒子の分布粒径に対する厚みのアスペクト比を測定することができる。
粒度分布測定法は、特に限定されないが、例えば、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法、画像イメージング法等が挙げられる。
粒度分布測定装置は、特に限定されないが、例えば、レーザー回折・散乱式湿式粒度分布測定器等が挙げられる。
固体電解質粒子の厚さCは、例えば0.01μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、0.01μm〜0.1μmの範囲内であることがより好ましい。
また、固体電解質粒子の粒径の分布範囲は、例えば0.1μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜1μmの範囲内であることがより好ましく、0.1μm〜5μmの範囲に入らないものは除外することが好ましい。
【0026】
本発明によれば、固体電解質粒子が鱗片状形状を有することから、厚さに対して主面の割合が十分に大きいため、点接触ではなく、面接触で固体電解質粒子同士が接触でき、固体電解質膜を緻密化することができる。
【0027】
(固体電解質粒子の製造方法)
以下、本発明の固体電解質粒子の製造方法について説明する。
非晶質固体電解質からなる原料粒子に対して所定方向から機械的エネルギーを付加することによって、扁平に伸ばされ且つ細分化され、鱗片状形状を有する固体電解質粒子を形成することができる。
【0028】
非晶質固体電解質からなる原料粒子は、結晶化固体電解質と比べて柔らかいので、酸化物固体電解質のような硬い固体電解質を用いる場合であっても、所定方向から機械的エネルギーを付加することによって扁平に伸ばされ且つ細分化され、鱗片状粒子となる。
ここで、「非晶質」とは、×線回折法により所定の結晶ピークが検出されない状態をいう。
原料粒子の分布粒径は特に限定されないが、直径0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
本発明に用いられる固体電解質は、非晶質体であれば特に限定されず、例えば、酸化物固体電解質、硫黄系固体電解質などが用いられる。
特に本発明は、それ自体が本質的に比較的硬い材質であって粒子形状を制御することが難しい固体電解質を用いて電解質膜を形成する場合に、極めて有効である。酸化物固体電解質は、それ自体が本質的に比較的硬い材質であるため、本発明に好適な材料である。
酸化物固体電解質の非晶質体としては、例えば、NASICON型酸化物として一般式Li1+XAlGe2−X(PO(0≦x≦2)で表されるものが挙げられ、特にLi1.5Al0.5Ge1.5(PO[以下LAGPと記載]であることが好ましい。
また、他の酸化物固体電解質の非晶質体としては、LiPO、LiPON、LiNbO等も挙げられる。
【0029】
原料粒子に対して所定方向から機械的エネルギーを付加する方法としては、原料粒子を2つの加圧媒体間に挟み込んで押し潰す方法を採用することができ、例えば、メカニカルミリング処理を行うことができる。メカニカルミリングは、基本的に材料を微粒化するプロセスであるが本発明者等は、非晶質系固体電解質を用いた場合に、結晶性ではなく、非晶質性であることで粒子がある程度柔らかいため、ビーズからの衝撃を受けたときに粉砕されるのではなく押しつぶされ、特異的に鱗片状形状を有する固体電解質粒子を得ることを見出した。
【0030】
固体電解質の原料粒子をスラリー化する場合の固体電解質スラリーは、固体電解質を少なくとも含有するものであり、さらにアルコール分散剤を含有しても良い。アルコール分散剤は、鱗片状形状を有する固体電解質粒子を得ることができるものであれば特に限定されるものではない。
【0031】
アルコール分散剤としては、具体的には、エタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ドデカノール等を挙げることができ、中でもエタノールが好ましい。固体電解質スラリーにおけるアルコール分散剤の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましい。
【0032】
メカニカルミリングは、固体電解質を、機械的エネルギーを付与しながら混合する方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、ビーズミル、ボールミル、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を挙げることができ、特にビーズミルが好ましい。
【0033】
メカニカルミリングの各種条件は、所望の固体電解質粒子を得ることができるように設定する。例えば、ビーズミルを用いる場合、スラリー化した固体電解質および粉砕用ビーズを加え、所定の回転数および時間で処理を行う。
ビーズミルを行う際の台盤回転数としては、例えば2500rpm〜5000rpmの範囲内であることが好ましく、2550rpm〜4550rpmの範囲内であることがより好ましい。
また、ビーズミルを行う際の処理時間は、例えば、0.5時間〜3時間の範囲内であることが好ましい。
スラリー化した固体電解質の送液流量は0.1L/min〜0.2L/minの範囲が好ましい。ビーズの材質は、例えばPSZ(部分安定化ジルコニア、PARTIALLY STABILIZED ZIRCONIA)、アルミナ等が挙げられる。ビーズの粒径は特に限定されないが直径0.1mm〜1mmの範囲が好ましい。
【0034】
メカニカルミリングは、乾式メカニカルミリングであっても良く、湿式メカニカルミリングであっても良いが、後者が好ましい。容器等の壁面に原料組成物が固着することを防止できるからである。湿式メカニカルミリングに用いられる液体としては、非プロトン性液体を挙げることができる。
非プロトン性液体としては、例えばアセトン等のケトン類;常温(25℃)で液体のアルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。なお、上記液体の添加量は、特に限定されるものではなく、所望の固体電解質粒子を得ることができる程度の量であれば良い。
【0035】
(固体電解質膜)
本発明における固体電解質膜は、固体電解質層となる部材であり、固体電解質粒子を圧粉することで、固体電解質膜を成形することができる。また別の方法として、固体電解質粒子を含有するスラリーを調製し、当該固体電解質粒子スラリーを製膜用支持体の表面に塗布し、乾燥させ、圧延、切断することで、固体電解質膜を成形することができる。
スラリーの塗布方法は、ブレード法(例えばドクターブレード法)、インクジェット法等が挙げられる。
製膜用支持体は、固体電解質膜から剥離される。製膜用支持体を剥離するタイミングは適宜設定できる。製膜用支持体としては、例えば、離型処理したPETフィルム等の一般的なものを用いることができる。
固体電解質粒子スラリーの乾燥は、特に限定されず、例えば、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥等が挙げられる。乾燥雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
得られた固体電解質膜は、必要に応じて焼結することにより、膜の強度を高めることができる。焼結における加熱温度や、雰囲気等の諸条件は、適宜設定することができる。
【0036】
固体電解質粒子スラリーは、少なくとも固体電解質粒子、バインダーおよび溶媒を含有し、さらに可塑剤、分散剤を含有してもよい。
固体電解質粒子スラリーにおける固体電解質粒子の含有量は、例えば、40wt%〜80wt%であることが好ましく、特に60wt%〜70wt%であることが好ましい。
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。中でも、薄膜製膜時の膜強度の観点から、PVBが好適である。
固体電解質粒子スラリーにおけるバインダーの含有量は、例えば、3wt%〜8wt%であることが好ましく、特に3wt%〜5wt%であることが好ましい。
溶媒としては、沸点200℃以下の溶媒、例えば、アセトン、エタノール、1−ブタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0037】
可塑剤は、固体電解質膜に柔軟性や弾力性を付与するものであり、固体電解質膜の取り扱い性向上や隣接して積層される層との接着性向上に寄与する。例えば、フタル酸ジブチル、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、セルロースアセテート、フタル酸ジオクチル(DOP)等を挙げることができる。
分散剤は、固体電解質粒子の固体電解質粒子スラリーにおける分散性を向上させるものであり、用いる固体電解質粒子によって選択すればよいが、例えば、カルボン酸系、アミン系、リン酸系等が挙げられ、具体的には、カルボン酸系として、G−700(共栄社化学製)、KD−9(CRODA製)等、アミン系として、KD−2(CRODA製)、SOLSPERS41000(ルーブリゾール製)等の高分子アミン系、リン酸系としてSOLSPERS20000(ルーブリゾール製)等を例示することができる。
固体電解質粒子スラリーの調製方法は特に限定されないが、バインダーを分散させた溶媒に、固体電解質粒子を分散させる方法が好ましい。
【0038】
本発明における固体電解質膜は、固体電解質粒子を膜の面方向に配向させることが好ましい。また、本発明における固体電解質膜は、固体電解質粒子の焼結体であることが好ましい。固体電解質膜を緻密化することができるからである。
固体電解質膜における鱗片状形状を有する固体電解質粒子の含有量は、40重量%〜80重量%の範囲内であることが好ましく、60重量%〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明の固体電解質膜の厚さは、固体電解質粒子を膜の面方向に配向させた場合、製膜時の乾燥ムラの発生を防止する観点から、例えば0.5μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の固体電解質膜の相対密度は、緻密化の観点から、例えば80〜95の範囲内であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)鱗片状形状を有する固体電解質粒子の作製
原料粒子として、非結晶性の粉体であるLAGPを用いた。原料粒子の平均粒径は5μmであった。次に、LAGP15wt%溶液となるようにLAGP60gとエタノール340gを混合し、固体電解質スラリーを調製した。その後、ビーズミルの容器にPSZビーズ(直径0.3mm)を投入し、容器をビーズミル攪拌機に取り付け、調製した固体電解質スラリーを送液流量0.15L/minで容器に送液し、メカニカルミリングを行った。
メカニカルミリングは、0min(運転開始)〜30minの間では、台盤回転数2590rpmで行い、30min〜75minの間は台盤回転数3240rpmで行い、75min〜180min(運転終了)までの間は台盤回転数3885rpmで行った。
運転開始から(a)60min後、と(b)180min(運転終了)後、の各試料を採取し走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて形状観察を行った。(a)と(b)のSEM画像図をそれぞれ図2と図3に示す。
【0041】
(比較例1)
実施例1において、メカニカルミリングの(c)0min(運転開始)時、の試料を採取しSEMを用いて形状観察を行った。(c)のSEM画像図を図4に示す。
【0042】
(SEM観測結果)
SEM画像図により比較例1の図4に示されるように、メカニカルミリング開始時の原料粒子は鱗片状形状を有していなかったが、実施例1の図2に示されるように、メカニカルミリング開始後60分で得られた粒子が鱗片状形状を有していた。さらに、実施例1の図3に示されるように、メカニカルミリング開始後180分で、図2に示される粒子より、厚みの薄い鱗片状形状を有していた。また、実施例1の図2および図3に示されるように、得られた固体電解質粒子の一部が融着して扁平な塊になっていた。実施例1のメカニカルミリング運転開始から(b)180min後に採取した固体電解質粒子のSEM画像から、固体電解質粒子の厚みを測定した。
【0043】
(粒度分布測定)
実施例1のメカニカルミリング運転開始から(b)180min後に採取した固体電解質粒子に対して粒度分布測定を行った。粒度分布測定装置には、レーザー回折・散乱式湿式粒度分布測定器(日機装製マイクロトラック)を用いた。粒度分布測定により固体電解質粒子の平均粒径、粒径の分布範囲を特定し、分布粒径に対する厚みのアスペクト比を測定した。結果を表1および図5に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1において、固体電解質粒子の厚さは0.01μm〜0.5μmであり、固体電解質粒子の粒径の分布範囲は0.1μm〜5μmであった。表1および図5に示されるように、固体電解質粒子の分布粒径に対する厚みのアスペクト比が1×10−2〜5×10−1の範囲内であった。
【0046】
(実施例2−1)鱗片状形状を有する固体電解質粒子の作製
実施例1と同様の方法でスラリーを調製した。その後、ビーズミルの容器にPSZビーズ(直径0.5mm)を投入し、容器をビーズミル攪拌機に取り付け、調製した固体電解質スラリーを送液流量0.15L/minで容器に送液し、メカニカルミリングを行った。
メカニカルミリングは、台盤回転数4525rpmで60min行った。
運転終了後の試料を採取し、SEMを用いて形状観察を行った。SEM画像図を図6に示す。図6に示されるように、粒子が鱗片状形状を有し、得られた固体電解質粒子の一部が融着して扁平な塊になっていた。
【0047】
(実施例2−2)鱗片状形状を有する固体電解質粒子を用いた固体電解質膜の作製
実施例2−1で得られた固体電解質粒子を固体電解質粒子100重量部、溶媒(エタノールと1−ブタノールの混合溶媒)100重量部、バインダー(PVB)18重量部、可塑剤(DOP)9重量部、分散剤(ポリアミン)5重量部の割合で混合し、固体電解質粒子スラリーを調製した。調製した固体電解質粒子スラリーを離型PETフィルムの表面に、ブレード塗工し、自然乾燥させ、固体電解質膜を成形した。乾燥後の固体電解質膜の膜厚は20μmであった。得られた固体電解質膜をSEMを用いて形状観察を行った。SEM画像図を図7に示す。
【0048】
(比較例2)
実施例2−1において、メカニカルミリングを行わなかったこと以外は実施例2−1および実施例2−2と同様の方法で固体電解質膜を成形し、得られた固体電解質膜をSEMを用いて形状観察を行った。SEM画像図を図8に示す。
【0049】
(SEM観測結果)
SEM画像図により比較例2の図8に示されるように、メカニカルミリングを行わなかった場合、膜に割れが生じているが、実施例2−2の図7に示されるように、メカニカルミリングを行った場合、膜に割れが生じなかった。実施例2−2における固体電解質膜の相対密度は90であり、比較例2における固体電解質膜の相対密度は80であり、比較例2と比較して、実施例2−2は固体電解質膜を緻密に積層することができた。
【符号の説明】
【0050】
1 鱗片状形状を有する固体電解質粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質固体電解質からなり、鱗片状形状を有する固体電解質粒子。
【請求項2】
前記固体電解質粒子の分布粒径に対する厚みのアスペクト比が1×10−2〜5×10−1である、請求項1に記載の固体電解質粒子。
【請求項3】
前記非晶質固体電解質が、酸化物固体電解質を含む、請求項1又は2に記載の固体電解質粒子。
【請求項4】
前記酸化物固体電解質が、LAGP:Li1+XAlGe2−X(PO (但し、0≦X≦2である。)、LiPO、LiPON、LiNbOよりなる群から選ばれる電解質を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体電解質粒子。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体電解質粒子を含むことを特徴とする固体電解質膜。
【請求項6】
固体電解質膜内において、前記固体電解質粒子が膜の面方向に配向している、請求項5に記載の固体電解質膜。
【請求項7】
固体電解質膜内において前記固体電解質粒子が焼結している、請求項5又は6に記載の固体電解質膜。
【請求項8】
相対密度が80〜95である、請求項6に記載の固体電解質膜。
【請求項9】
非晶質固体電解質からなる原料粒子に対して、所定方向から機械的エネルギーを付加することを特徴とする、前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体電解質粒子の製造方法。
【請求項10】
前記所定方向から機械的エネルギーを付加する方法は、前記原料粒子を2つの加圧媒体間に挟み込んで押し潰す方法である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記2つの加圧媒体間に挟み込んで押し潰す方法は、ビーズミル攪拌法である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記原料粒子の分布粒経は、0.5μm〜10μmである、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記原料粒子が、酸化物固体電解質を含む非晶質固体電解質からなる、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記酸化物固体電解質が、 LAGP:Li1+XAlGe2−X(PO (但し、0≦X≦2である。)、LiPO、LiPON、LiNbOよりなる群から選ばれる電解質を含む、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−58376(P2013−58376A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195755(P2011−195755)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】