説明

固化処理土の水中打設方法および水中打設装置

【課題】水中の底面等に対して、厚さのばらつきを小さくするとともに、効率よく固化処理土を打設できるようにした水中打設方法および水中打設装置を提供する。
【解決手段】打設管2を複数配置し、打設管2の先端部に横方向に曲げて設けた吐出管部5を幅方向に連結して、それぞれの吐出管部5の吐出口5aを幅方向に連設するとともに、この連設した吐出口5aを幅方向に傾斜可能に設け、それぞれの吐出管部5の中途に設けた仕切り板6を閉じて、仕切り板6の上流側に固化処理土を充填してから仕切り板6を開けて、打設方向に移動しながら固化処理土を吐出口5aから吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化処理土の水中打設方法および水中打設装置に関し、さらに詳しくは、水中の底面等に対して、厚さのばらつきを小さくするとともに、効率よく固化処理土を打設できるようにした水中打設方法および水中打設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水中の基礎マウンドの洗掘防止や護岸等の遮水層を形成する際には、水上から水中に立設したトレミー管等の打設管の先端吐出口を打設面に向けて配置し、浚渫土砂などにセメント等の固化剤を混合した固化処理土を打設管を通じて打設するようにしていた。
【0003】
このような打設方法においては、固化処理土の打設流速が速い場合や粘度が低い場合等には、固化処理土が水中に分散し、周辺を汚濁することがあった。また、斜面に打設する際に、まだ固まっていない固化処理土が下方に流れて所定の層厚に打設できないという問題があった。
【0004】
そこで、打設管の先端部を横方向にL字状に曲げるとともに吐出口を幅方向に広げるようにした打設管が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この提案では、先端部を横方向に曲げることで、固化処理土の下向きの打設流速を低減させることができ、固化処理土の水中での分散や、周辺の汚濁を抑制することができる。しかしながら、常に十分な量の固化処理土を供給し続けなければ、安定した層厚を確保できないという問題があった。
【0006】
また、斜面に打設する際に、打設管の吐出口を打設面の傾斜に沿うようすることが困難であり、沿わせようとすれば、複雑な操作が必要となり、迅速な打設作業ができないという問題があった。
【特許文献1】特開平9−88064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水中の底面等に対して、厚さのばらつきを小さくするとともに、効率よく固化処理土を打設できるようにした固化処理土の水中打設方法および水中打設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の固化処理土の水中打設方法は、水上から水中に立設した打設管に固化処理土を供給して、該固化処理土を前記打設管の水中側先端部に横方向に曲げて設けた吐出管部の吐出口から、移動しながら吐出する固化処理土の水中打設方法において、前記打設管を複数配置し、該打設管の吐出口を幅方向に連設するとともに、それぞれの吐出管部の中途に設けた仕切り板を閉じて、該仕切り板の上流側に固化処理土を充填してから該仕切り板を開けて固化処理土を前記吐出口から吐出することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の固化処理土の水中打設装置は、水上から水中に立設した打設管の水中側先端部に横方向に曲げた吐出管部を設け、該吐出管部の吐出口から固化処理土を吐出する移動可能な固化処理土の水中打設装置において、前記打設管を複数配置し、該打設管の吐出口を幅方向に連設するとともに、それぞれの吐出管部の中途に開閉可能な仕切り板を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の固化処理土の水中打設方法および水中打設装置によれば、吐出管部の中途に設けた仕切り板で管路を閉じることにより、仕切り板の上流側に所定量の固化処理土を充填できる。このように充填した後、仕切り板を開けて、固化処理土を吐出することにより、打設管の上方からの固化処理土の供給量に多少の増減が生じても、既に充填している固化処理土があるので、打設の開始直後から、ばらつきの少ない安定した層厚を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の固化処理土の水中打設方法および水中打設装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1および図2に本発明の水中打設装置1の全体を例示する。この水中打設装置1は、台船12上の移動架台11に搭載されている。移動架台11は台船12の船首から船尾方向に延設された移動レール11a上を移動可能となっている。
【0013】
ここでは、8本の打設管2が配置され、それぞれの打設管2には、ホッパ下部4およびこれに接続するコンクリートポンプ3が備わっている。このコンクリートポンプ3は、図示しない固化処理土供給源からホッパ下部4に供給される固化処理土を打設管2に圧送する。
【0014】
固化処理土は、例えば、浚渫土、建設発生土等にセメントや石灰等の固化剤を混合したものである。
【0015】
それぞれの打設管2は昇降フレーム10に取付けられて、水上から水中に立設され、その先端部には横方向に延びる吐出管部5が設けられている。吐出管部5は、昇降フレーム10に配置された図示しない昇降装置により昇降可能となっている。
【0016】
図3〜図5に例示するように、吐出管部5は、後端部を打設管2と接続し、管路の中途には、開閉油圧ユニット7により管路を開閉する仕切り板6が設置されている。仕切り板6が閉じた状態では、仕切り板6に対して吐出口5aと反対側となる吐出管部5の上流側は充填部5bとなっている。吐出管部5の後端部の背面には清掃用の扉を設けておくとよい。
【0017】
吐出管部5の横断面形状は矩形であり、管路の長さ方向を通じて横断面積はほぼ一定になっていて、打設管2の横断面積より大きくなっている。吐出管部5の横断面積は、例えば、2m〜4m程度とする。吐出管部5は、仕切り板6と吐出口5aとの中途の位置から吐出口5aに向かって下方に傾斜している。この傾斜角度は例えば、15°〜25°程度となっている。尚、吐出管部5の横断面積、傾斜角度は例示した範囲に限定されるものではない。
【0018】
それぞれの打設管2に設けられた吐出管部5は、幅方向に連結体8により連結されて、それぞれの吐出口5aが幅方向に隣接して一直線状に連設されている。連結する吐出管部5の数は任意に設定することができる。
【0019】
連結体8の連結方向両端部には傾斜調整ユニットの一部を構成する吊り連結体9が接続されている。これら吊り連結体9の吊り長さを変化させることにより、連設されて一体化した8つの吐出口5aが幅方向に任意の角度で傾斜可能となっている。連結した吐出管部5は、上下方向軸を中心にして回転可能に設けてもよい。
【0020】
底面13aに固化処理土を打設する際には、連設した吐出口5aを幅方向にほぼ水平な状態にして吐出管部5を昇降フレーム10の下方に移動させて、吐出口5aを打設する略水平な底面13aに近づける。底面13aに近づけて固化処理土を吐出する程、分散せずに安定した層厚で打設することができるので、吐出口5aと底面13aとのすき間を例えば、100cm以下、さらに好ましくは50cm以下にする。
【0021】
仕切り板6を閉じた状態にして、打設管2の上方から固化処理土を供給して吐出管部5の充填部5bおよび打設管2に所定量の固化処理土を充填する。この充填後、仕切り板6を開閉ユニット7により上方移動させて管路を開口する。開口後も固化処理土をコンクリートポンプ3で圧送し続けて、吐出口5aから固化処理土を吐出する。
【0022】
この際に、水中打設装置1を固化処理土を打設する方向に移動させるために、移動架台11を移動レール11aに沿って移動させる。即ち、吐出口5aを後ろ側にして吐出管部5を打設方向に移動させつつ、固化処理土を吐出する。
【0023】
この時に、打設管2に供給される固化処理土の量に多少の増減があっても、充填部5bおよび打設管2には、既に供給された固化処理土が充填されているので、吐出口5aから吐出する固化処理土の量は、打設開始当初からばらつきが少なく、安定した層厚の打設が可能となる。これにより、広い領域を迅速に効率よく打設することがきる。
【0024】
また、立設する打設管2に対して横方向に延びる吐出管部5により、固化処理土の下向きの打設流速が小さくなって、固化処理土の水中への分散や、周辺の汚濁が防止される。吐出管部5aの移動速度と固化処理土の水平方向の打設流速とは、向きを正反対にして速さを近づけることにより、吐出する固化処理土に生じる負荷を小さくすることができ、崩れることなく安定した打設層が形成できる。
【0025】
仕切り板6から吐出口5aまでの管路長さL1は、管路の横断面積等に応じて設定されるが、例えば1.5m〜2m程度となっている。管路長さL1がこの範囲にあると、固化処理土の形状が安定して形成され、吐出する際に崩れにくくなって層厚を安定させることができる。充填部5bを構成する吐出管部5の仕切り板6から後端部までの管路長さL2は、十分な充填量を確保するために、例えば0.5m〜1m程度にする。管路長さL1およびL2は、例示した範囲に限定されるものではない。
【0026】
吐出管部5の横断面積を打設管2の横断面積よりも大きくして、コンクリートポンプ3のポンプ容量(圧送能力)を小さくしながらも、吐出する固化処理土の横断面積を大きくしている。吐出管部5の横断面形状は、矩形にしておくと吐出口5aどうしを幅方向にすき間なく隣接させることができるので、すき間のない打設層が形成できる。
【0027】
この吐出管部5は管路の中途から吐出口5aに向かって下方に傾斜しているので、吐出した固化処理土に大きな衝撃を与えることなく円滑に底面13aに打設することができ、層厚のばらつきをさらに抑えることができる。吐出管部5は、中途からではなく、全体を吐出口5aに向かって傾斜させることもできる。
【0028】
図3に示すように、吐出口5aを連設している幅方向中心に向かうように扇状に配置することもできる。このように、それぞれの吐出口5aから吐出される固化処理土どうしが大きく干渉しない程度に吐出方向を幅方向中心に向けることにより、吐出した固化処理土の幅方向の広がりを抑制できる。
【0029】
また、この実施形態では、打設管2ごとにコンクリートポンプ3を設けているので、各コンクリートポンプ3の負荷を軽減され、圧送する固化処理土を不足させることなく、安定して供給できる。固化処理土を安定して供給できれば、1つのコンクリートポンプ3により、複数の打設管2に固化処理土を圧送するようにしてもよい。
【0030】
次に、法面(斜面)に打設する場合を図6に基づいて説明する。図6では2段法面の下方の緩傾斜の法面13bが打設する面となっている。まず、図6の番号1で示すように、法面13bの下部に隣接する底面13aに対して、法面13bの幅方向に固化処理土を打設しておくことが好ましい。この底面13aに打設された固化処理土がストッパとして機能して、以後、法面13bに打設される固化処理土の下方移動が防止される。
【0031】
次いで、連設して一体化している吐出口5aを、その幅方向が法面13bの傾斜方向(上下方向)になるように配置するとともに、吊り連結体9の吊り長さを調整して、法面13bに平行になるように幅方向に傾斜させる。
【0032】
次いで、図6の番号2で示すように、吐出管部5を法面13bの幅方向に移動させながら、底面13aに打設した固化処理土に対して、法面13bの傾斜方向上方に隣接させて固化処理土を吐出して、法面13bの幅方向に新たな固化処理土を打設する。
【0033】
この法面13bに打設した固化処理土の傾斜方向上方に隣接させて、同じ要領で図6において番号3、4に示すように順次、新たな固化処理土を打設してゆき、この法面13bの全体に固化処理土を打設する。
【0034】
このように、法面13bの幅方向に打設した固化処理土の傾斜方向上方に順次、新たな固化処理土を斜面13bの幅方向に打設してゆくので、法面13bの傾斜方向(上下方向)に打設してゆく場合に比べて、下方に位置する固化処理土に作用する上方の固化処理土の重量が小さくなり、固まっていない固化処理土の下方移動を抑制することができる。これにより、打設された層厚の変化を小さくすることができる。
【0035】
また、連設した吐出口5aを傾斜させるのは、吊り連結体9の吊り長さを調整する等の単純な作業なので、従来のように複雑で時間を要する作業を行なう必要がない。これによって、法面13bであっても底面13aを打設する場合と同様に、広い領域を迅速に効率よく打設することがきる。
【0036】
本発明は、廃棄物処理場の底面や法面等の遮水層または遮水シートの保護層の形成などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の固化処理土の水中投入装置を例示する側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の吐出管部を例示する平面図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】図3の側面図である。
【図6】斜面に対する固化処理土の打設順序を例示する斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 水中投入装置
2 打設管
3 コンクリートポンプ
4 ホッパ下部
5 吐出管部 5a 吐出口 5b 充填部
6 仕切り板
7 開閉油圧ユニット
8 連結体
9 吊り連結体
10 昇降フレーム
11 移動架台 11a 移動レール
12 台船
13a 底面 13b 法面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上から水中に立設した打設管に固化処理土を供給して、該固化処理土を前記打設管の水中側先端部に横方向に曲げて設けた吐出管部の吐出口から、移動しながら吐出する固化処理土の水中打設方法において、前記打設管を複数配置し、該打設管の吐出口を幅方向に連設するとともに、それぞれの吐出管部の中途に設けた仕切り板を閉じて、該仕切り板の上流側に固化処理土を充填してから該仕切り板を開けて固化処理土を前記吐出口から吐出する固化処理土の水中打設方法。
【請求項2】
前記固化処理土を斜面に打設する際に、前記幅方向に連設した吐出口をその幅方向が前記斜面の傾斜方向になるように配置するとともに、前記斜面に平行になるように該連設した吐出口を幅方向に傾斜させて、前記斜面の幅方向に移動しながら前記固化処理土を吐出して前記斜面の幅方向に前記固化処理土を打設し、この打設工程により、順次、打設した固化処理土の傾斜方向上方に隣接させて新たに固化処理土を打設する請求項1に記載の固化処理土の水中打設方法。
【請求項3】
水上から水中に立設した打設管の水中側先端部に横方向に曲げた吐出管部を設け、該吐出管部の吐出口から固化処理土を吐出する移動可能な固化処理土の水中打設装置において、前記打設管を複数配置し、該打設管の吐出口を幅方向に連設するとともに、それぞれの吐出管部の中途に開閉可能な仕切り板を備えた固化処理土の水中打設装置。
【請求項4】
前記幅方向に連設した吐出口を幅方向に傾斜可能に設けた請求項3に記載の固化処理土の水中打設装置。
【請求項5】
前記吐出口を連設している幅方向中心に向けて配置している請求項3または4に記載の固化処理土の水中打設装置。
【請求項6】
前記吐出管部が前記吐出口に向けて下方に傾斜している請求項3〜5のいずれかに記載の固化処理土の水中打設装置。
【請求項7】
前記打設管ごとに前記固化処理土を圧送するポンプ装置を設けた請求項3〜6のいずれかに記載の固化処理土の水中打設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−177474(P2007−177474A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375854(P2005−375854)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】