説明

固化安定ブロックトポリイソシアネート

本発明は、新規な貯蔵安定ブロックトイソシアネート、その製造方法及び被覆を製造するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な貯蔵安定ブロックトイソシアネート、その製造方法及び被覆を製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートのブロッキングは、とりわけ、自動車下塗り、プラスチックの被覆及びコイル被覆を含む用途のための1K(1成分系)ポリウレタン被覆系の架橋剤を調製するために、従来から一般に行われている。ポリイソシアネートのブロッキングのために、例えば1,2,4−トリアゾール、ジイソプロピルアミン又はマロン酸ジエチルを用いると、特に低い架橋温度を有する被覆系が得られる。このことは、経済的理由からのみならず、プラスチックのような熱感受性基材の被覆にとっても重要である("Polyurethane fuer Lacke und Beschichtungen", Vincentz Verlag, Hannover, 1999)。
【0003】
特に1,2,4−トリアゾール、ジイソプロピルアミン又はマロン酸ジエチルによりブロックされたポリイソシアネートの有機溶液は、数ヶ月も保存することはできない。これは、このような溶液が、例えば含まれるブロックトポリイソシアネートの結晶化の故に、非常に高い固化傾向を有しているからである。この傾向は、直鎖脂肪族ジイソシアネートに基づくイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートについて、特に顕著である。従って、そのようなポリイソシアネートは、溶剤系1Kポリウレタン(PU)被覆系に使用するのには適していない。
【0004】
特別な場合、2種以上の異なるブロック剤を用いること(いわゆる混合ブロッキング)により、その有機溶液が、例えば結晶化の結果として固化する傾向を示さない、ブロックトポリイソシアネートを得ることができる(例えば、EP-A-0 600 314、EP-A-0 654 490 参照)。単一ブロック剤の使用に比べ、混合ブロッキングは、ブロックトポリイソシアネートの製造において、常にコストが上昇し、不利である。更に、被覆特性が、放出されたブロック剤混合物によりとりわけ悪影響を受けるので、混合ブロッキングを用いたポリイソシアネートは一般用途には適していない。
【0005】
DE-A-197 38 497 の開示によれば、その有機溶液が、例えば結晶化の結果としての固化に対して安定であるブロックトポリイソシアネートは、脂環式及び脂肪族ジイソシアネートの混合物を第2級アミンと反応させ、次いで、NCO基のいくつかをOH官能性ヒドラジド化合物と部分的に反応させることにより得ることができる。これらのポリイソシアネートから製造された被覆フィルムは、しかしながら、純粋に脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートに基づいて製造されたフィルムに比べ、非常に異なった特性プロフィールを有する。従って、このようなブロックトポリイソシアネートも一般用途には適していない。
【0006】
DE-A-100 60 327 は、イソシアネート基の一部を3−アミノプロピルトリアルコキシシランと反応させた、固化安定性ポリイソシアネートを開示する。しかし、このドイツ特許出願の発明の欠点は、そのように変性されたイソシアネート基が、ウレタン基の形成を伴った架橋反応に使用できないことであり、このことは、被覆特性、例えば耐溶剤性、耐薬品性に悪影響を与える。更に、このようなシラン変性ポリイソシアネートを用いると、ある種のフィルム形成バインダーとの非相溶性が生じることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、その有機溶液が長期安定性を有し、数ヶ月後にさえ、例えば結晶化の結果としての固化傾向を示さない、ブロックトポリイソシアネートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
目標とするアルキルアミノ含有ビウレット構造の導入により変性されたポリイソシアネートは、遊離NCO官能基のブロッキングの後、有機溶液の状態で保存しても安定であり、数ヶ月後でさえ、例えば結晶化の結果としての固化傾向を示さないことが見出された。
【0009】
本発明は、 ・イソシアネート基の少なくとも95モル%が少なくとも1種のブロック剤によりブロックされており、
・4.0〜2.10質量%のブロックトNCO基及び遊離NCO基(NCO、分子量42として計算して)を含む
脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートに基づくポリイソシアネートであって、
ポリイソシアネートは、ビウレット基の構成成分として、式:

(式中、R及びRは、相互に独立して、脂肪族又は脂環式C−C12アルキル基である。)
で示されるアルキルアミノ基1〜20質量%を含むことを特徴とする、ポリイソシアネートを提供する。
【0010】
さらに本発明は、
A)第1の工程で、
a)8.0〜28.0質量%のNCO含有量(NCO、分子量42として計算して)、及び2以上のNCO官能価を有する少なくとも1種のポリイソシアネートを、
b)式:
NH
(式中、R及びRは、相互に独立して、脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式C−C12アルキル基である。)
で示される少なくとも1種のアルキルアミンと、
ポリイソシアネートa)からのNCO基の2〜96モル%が尿素基に転化されるように、反応させ、
B)次いで、該尿素基の一部又は全部を、
c)任意に触媒の存在下に、
ポリイソシアネートa)からの更なるNCO基と、更に反応させてビウレット基を得、
C)最後に、残余の遊離NCO基を
d)少なくとも95モル%の程度までブロックする
本発明のポリイソシアネートの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
成分a)のポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族ジイソシアネートに基づいており、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン及び/又はオキサジアジントリオン基を含むポリイソシアネートを、単独で又は所望の相互の混合物として、使用することができ、これらのポリイソシアネートは、好ましくは、0.5質量%未満の残留モノマージイソシアネート含有量を有する。母体となるモノマージイソシアネート又はトリイソシアネートがホスゲン法又は非ホスゲン法のいずれにより製造されたかは、重要ではない。
【0012】
適当なジイソシアネートの例には、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−及び1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,6−及び2,4−ジイソシアナト−1−メチルシロキサン、1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、2,4’−及び4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)イソシアナトメチルシクロヘキサン(IMCI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3−及び1,4−ビス(2−イソシアナトプロパ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)が含まれる。
なかでも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づく、イソシアヌレート構造及び/又はイミノオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネートa)が好ましい。
【0013】
アルキルアミンb)としては、式:
NH
(式中、R及びRは、相互に独立して、脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式C−C12アルキル又はアラルキル基である。)
で示される第2級アミンを使用することができる。
第2級アミンは、ジイソプロピルアミン、N,N−t−ブチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン又はこれらの混合物が好ましく、ジイソプロピルアミンがとりわけ好ましい。
【0014】
ブロッキング剤d)としては、b)で例示した化合物の全て、さらに1,2,4−トリアゾール、アルキルアセトアセテート及びマロン酸ジアルキル、並びにこれら化合物の所望の混合物を使用することができる。
ジイソプロピルアミン、1,2,4−トリアゾール、アルキリアセトアセテート及びマロン酸ジアルキル又はこれら化合物の混合物を使用することが好ましく、ジイソプロピルアミンを使用することがとりわけ好ましい。
【0015】
1つの好ましい態様では、成分b)のビウレット化剤及び成分d)のブロッキング剤として、同じアルキルアミン、特にジイソプロピルアミンを使用する。この好ましい態様によれば、まず第1に、c)で特定されるジアルキルアミノ基含有量を達成するために必要な量よりも多い量の成分b)をポリイソシアネートa)に添加し、反応させて尿素を形成し、次いで、生成した尿素基の一部のみを反応させてビウレットとする。しかしながら、存在するNCO基の好ましくは50当量%まで、より好ましくは30当量%までを、ビウレット化の前に尿素基に転化する。
【0016】
本発明の方法では、出発成分a)及びb)を、0〜180℃、好ましくは20〜150℃の温度で相互に反応させて、成分b)のアミノ基全てを、NCO基との反応により尿素とし、次いで、生成した尿素基の少なくとも1部を、所望により触媒c)の存在下に、更に反応させて、ビウレット基を形成する。
【0017】
1つの好ましい態様では、ポリイソシアネートa)とビウレット化剤b)との反応は、尿素への転化が0〜100℃、好ましくは20〜80℃で行われるように、実施し、次いで、生成した尿素基を、100〜180℃、好ましくは120℃〜150℃で遊離イソシアネート基と反応させる。本発明の方法では、転化過程は、例えばNCO含有量の滴定測定により追跡することができる。
【0018】
ビウレット化反応を促進するために触媒c)を使用することができる。触媒の適当な例には、酸、好ましくはα,α,α−置換酢酸誘導体、より好ましくはヒドロキシピバル酸及びピバル酸が包含される。
【0019】
所望により使用される触媒c)の量は、反応体a)及びb)の合計量に基づき、0.0001〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%である。
【0020】
目的とするNCO含有量が達成された時点で、ビウレットを形成する反応を停止する。反応の停止は、例えば、反応混合物を室温まで冷却することにより行うことができる。
【0021】
ビウレット化反応に続いて、ブロッキング剤d)と反応させて、本発明のブロックトポリイソシアネートを生成する。
【0022】
ブロッキング反応は、当業者には既知の方法に従い、残留している遊離NCO基とブロッキング剤とを0.95:1〜1.5:1、好ましくは0.98:1〜1.05:1、特に1:1のモル比で直接反応させることにより行われる。
【0023】
成分b)及びd)として異なる物質を使用する場合、存在するNCO基のいくらかを、ビウレット化反応が終了する前であっても、ブロッキング剤d)と反応させることは可能である。採用する方法にかかわらず、本発明のポリイソシアネートでは、NCO基の少なくとも95モル%、好ましくは少なくとも98モル%、より好ましくは少なくとも99.5モル%がブロックト形である。
【0024】
本発明の方法は、場合により、イソシアネート基に対して不活性である適当な溶媒中で行うことができる。適当な溶媒の例は、常套のペイント溶媒、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸1−メトキシプロパ−2−イル、酢酸3−メトキシ−n−ブチル、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドン、クロロベンゼンなどである。比較的高度に置換された芳香族化合物を主として含む混合物、例えば、商品名Solvent Naphtha、SolvessoTM (Exxon Chemical(米国ヒューストン)製)、CyparTM、Cyclo SolTM、Tolu SolTM、ShellsolTM (全てChell Chemicals (米国Eschborn)製)で市販されている混合物も適している。
【0025】
あるいは、溶媒は、例えば粘度を低下させる目的で、本発明のブロックトポリイソシアネートを調製した後に添加することもできる。この場合、アルコール、例えばイソブチルアルコールを使用することもできる。これは、この時点では存在する全てのNCO基が成分b)及びd)のイソシアネート反応性基との反応を完了しているからである。好ましい溶媒は、アセトン、酢酸ブチル、2-ブタノン、酢酸1−メトキシプロパ−2−イル、キシレン、トルエン、イソブチルアルコール、比較的高度に置換された芳香族化合物を主として含む混合物、例えば、商品名Solvent Naphtha、SolvessoTM (Exxon Chemical(米国ヒューストン)製)、CyparTM、Cyclo SolTM、Tolu SolTM、ShellsolTM (全てChell Chemicals (米国Eschborn)製)として市販されている混合物である。
【0026】
好ましい態様では、ビウレット化反応(工程B)が完了するまで、溶媒を加えない。
【0027】
本発明の組成物は、コーティング材料の成分として、又はポリウレタン物質を製造するために、使用することができる。特に、本発明の組成物は、1K焼付ワニス、特にプラスチック、自動車下塗り塗装又はコイル塗装のための1K焼付ワニスの架橋剤として使用することができる。
【0028】
更に本発明は、
I)本発明のブロックトポリイソシアネート1種又はそれ以上
II)(NCO基に基づいて)1.5超の平均官能価を有するNCO反応性化合物1種又はそれ以上、
III)任意に溶媒、並びに
IV)任意に助剤及び/又は添加剤
を含む1成分系焼付け系を提供する。
【0029】
1K焼付ワニスを調製するために、本発明のブロックトポリイソシアネート成分I)を、塗料分野では既知の塗料バインダー成分II)と混合し、所望により、更なる成分、例えば溶媒及び/又は助剤及び/又は添加剤(例えば、可塑剤、均展助剤、顔料、充填剤、又は架橋反応を促進する触媒)と混合する。混合は、ブロックトNCO基が他の成分と反応できる温度より低い温度で行うように、注意すべきである。混合は、好ましくは15〜100℃の範囲の温度で行う。
【0030】
1K焼付ワニスにおいて塗料バインダーとして使用され、本発明の組成物と架橋する成分は、平均して1分子あたり、少なくとも1.5個、好ましくは少なくとも2個のNCO反応性基(例えば、ヒドロキシル、メルカプト、置換又は未置換アミノ又はカルボン酸基)を含む。
【0031】
使用する塗料バインダーは、好ましくはジヒドロキシ及びポリヒドロキシ化合物、例えば、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリエーテル又は他のヒドロキシ基含有ポリマー、例えばポリヒドロキシポリアクリレート(これらは既知であって、100%形態の物質に基づき、20〜200mgKOH/g、好ましくは50〜130mgKOH/gのヒドロキシル価を有する)、若しくはポリヒドロキシカーボネート又はポリヒドロキシウレタンである。
【0032】
適当なポリエステルポリオールの例は、特にポリウレタン化学で既知の、多価アルコール、例えばアルカンポリオール(例えば、ネオペンチルグルコール、エチレングリコール、1,2−及び/又は1,3−プロパンジオール、1,2−及び/又は1,3−及び/又は1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール)と、不足量のポリカルボン酸及び/又は無水ポリカルボン酸、特にジカルボン酸及び/又は無水ジカルボン酸との反応生成物である。適当なポリカルボン酸及び/又は無水ポリカルボン酸の例には、スベリン酸、シュウ酸、コハク酸、イタコン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、これら酸とシクロペンタジエンとのジールス・アルダー付加物、フマル酸、ダイマー及びトリマー脂肪酸、並びにこれら酸の無水物が包含される。ポリエステルポリオールの調製のために、上記の多価アルコールの混合物若しくは上記の酸及び/又は酸無水物の混合物を使用することもできる。ポリエステルポリオールは、例えば、500〜10000g/モル、好ましくは800〜5000g/モル、より好ましくは1000〜3000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。
【0033】
ポリエステルポリオールは、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/2巻、G. Thieme-Verlag, 1963, 1-47頁に記載されているような既知の方法により調製される。このようなポリヒドロキシル化合物の必要な親水化変性は、例えば、EP-A-157 291 又はEP-A-427 028 に記載されているような既知の方法に従って、実施される。
【0034】
適当なポリエーテルポリオールは、ポリウレタン化学から既知の、適当な2〜4価開始剤分子(例えば、水、エチレングリコール、プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール及び/又はペンタエリトリトール)のエトキシル化及び/又はプロポキシル化生成物である。
【0035】
ポリヒドロキシルポリアクリレートは、スチレンと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の簡単なエステルとの通常のコポリマーであり、水酸基は、このような酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチルエステル、2−ヒドロキシプロピルエステル、2−、3−又は4−ヒドロキシブチルエステルを使用して導入される。
【0036】
また、場合により溶媒を含有する本発明のブロックトポリイソシアネートを、親水性変性ヒドロキシ含有ポリマーと共に、水に分散することにより、水性1Kポリウレタン塗料を調製することもできる。親水性変性ヒドロキシ含有ポリマーは、親水性化基として、アニオン性基、カチオン性基又は非イオン性基、例えばスルホネート、カルボキシレート及びポリエーテル基を含むことができる。
【0037】
ジオール及びポリオールを併用して得た1Kポリウレタン塗料は、高グレード被膜の製造に特に適している。NCO反応性基対ブロックト及び非ブロックトNCO基の当量比は、好ましくは0.5:1〜3:1,より好ましくは0.90:1〜1.50:1、特に好ましくは1.00:1〜1.25:1である。
【0038】
本発明のポリイソシアネートに加えて、所望により、更なる架橋成分として、成分II)の化合物と反応性である他の化合物を使用することができる。そのような化合物の例には、エポキシド基を含むアミノ樹脂及び/又は化合物が包含される。
【0039】
アミン樹脂と見なされる樹脂は、被覆技術において既知の、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、又は尿素−ホルムアルデヒド縮合物である。未エーテル化又はC−C飽和モノアルコールによりエーテル化された常套のメラミン−ホルムアルデヒド縮合物全てが適している。他の架橋剤成分を使用する場合、NCO反応性基を有するバインダーの量は適宜調節する必要がある。
【0040】
任意の助剤又は添加剤の例には、酸化防止剤(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール型のUV吸収剤、窒素原子において置換された又は置換されていないHALS化合物型の光安定剤(例えば、TinuvinTM 292 及びTinuvinTM 770 DF (Ciba Spezialitaeten GmbH, Lampertheim, ドイツ)、又は、例えば "Lichtschutzmittel fuer Lacke" (A. Valet. Vincentz Verlag, ハノーバー, 1996) 及び "Stabilization of Polymeric Materials" (H. Zweifel, Springer Verlag, ベルリン, 1997, Appendix 3, 181-213頁)に記載されているような他の標準的な市販安定剤、若しくはこれら化合物の混合物が包含される。加えて、ヒドラジド基含有安定剤及び/又はヒドロキシ官能性安定剤、例えばヒドラジンとポリプロピレンカーボネートとの付加物(EP-A-0 829 500に記載)も使用することができる。
【0041】
好ましくは溶媒型塗料で使用されるが、水性塗料での使用も可能である。好ましさは劣るが、粉体塗料材料でも使用できる。
【0042】
このような塗料は、種々の基材の塗装、特に金属及びプラスチックの塗装に使用することができる。基材を他の塗膜により予め被覆し、その上に、本発明の組成物を含む塗料を用いた塗装操作により更なる塗膜を形成することもできる。
【0043】
本発明のブロックトポリイソシアネートは、産業用塗装、例えば、自動車下塗り塗装のための焼付ワニスの調製に使用することができる。その目的に対し、本発明の塗料は、ナイフコーティング、浸漬、スプレー塗布、例えば圧搾空気スプレー又はエアレススプレーにより、及び静電塗装、高速回転ベル塗装などにより塗布することができる。
【0044】
塗装する基材を他の塗膜により予め被覆しておき、本発明の組成物を含む塗料を用いた塗装操作により更なる塗膜を形成することもできる。乾燥膜厚は、例えば10〜120μmである。乾燥した塗膜は、90〜160℃、好ましくは110〜140℃の範囲の温度で焼き付けることにより硬化される。本発明のブロックトポリイソシアネートは、連続コイル被覆のための焼付ワニスの製造に使用することができ、この場合、ピークメタル温度(PMT)として当業者に知られている、130〜300℃、好ましくは190〜260℃の範囲の最高焼付け温度を達成することができ、乾燥膜厚は、例えば3〜40μmである。
【実施例】
【0045】
以下の実施例において、特記しない限り、全てのパーセントは質量%である。
固形分及びブロックトNCO(BNCO)含量は、下記のようにして計算される可変量である:
固形分(%)=[(全重量−溶媒合計量)/全重量]×100
BNCO(%)=[(ブロックトNCO基の当量×42)/全重量]×100
NCO含量は、DIN 53 185 に従って滴定により決定した。
【0046】
ブロッキング反応の終点は、Arid-ZoneTM スペクトロメータ(Bomen, ケベック, カナダ)を用いて、IR分光分析(NCO振動2200〜2250cm−1)により決定した。
室温といった場合、温度は23±3℃である。
【0047】
出発物質:
ポリイソシアネート1
イソシアヌレート基を含み、21.7質量%のNCO含量(NCOに基づく、分子量=42)、3.4の平均イソシアネート官能価(GPCによる)及び0.1%のモノマーHDI含量を有するHDI系ポリイソシアネート。室温での粘度3000mPas。
【0048】
ポリイソシアネート2
イミノオキサジアジンジオン基を含み、23.2質量%のNCO含量(NCOに基づく、分子量=42)、3.3の平均イソシアネート官能価(GPCによる)及び0.1%のモノマーHDI含量を有するHDI系ポリイソシアネート。EP-A 798 299 に従って調製。室温での粘度700mPas。
【0049】
実施例1(本発明)
ジイソプロピルアミンによりブロックした、ジイソプロピルアミン−ビウレット基含有ポリイソシアネート
乾燥窒素中、193.5g(1.00当量)のポリイソシアネート1を、50.5g(0.5当量)のジイソプロピルアミンと、攪拌しながら混合した。僅かな発熱が観察された。バッチを、さらに140℃に加熱し、次いで1.00gのヒドロキシピバリン酸を加え、同温度で5時間攪拌した。この時点で、NCO含量は5.5質量%(0.32当量のNCOに相当)であった。バッチを室温まで冷却し、75gのイソブタノール及び75gの酢酸メトキシプロピル(MPA)により希釈し、続いて、32.3gのジイソプロピルアミンと混合した。ブロッキング反応が終わった後(IRスペクトルからNCOバンドが消失)、426.5gの無色透明生成物を得た。この生成物は、以下の特性を有していた:
粘度(23℃):3200mPas
ビウレット基中のアルキルアミノ基(NCH(CH))含量:4.3%(0.18当量)
ブロックトNCO含量(分子量=42):8.1%(0.82当量BNCO)
固形分:64.8%
生成物を室温で3ヶ月間貯蔵した後、溶液の濁りも、いかなる固形物の沈殿又は結晶化も観察されなかった。
【0050】
実施例2(本発明)
ジイソプロピルアミンによりブロックした、ジイソプロピルアミン−ビウレット基含有ポリイソシアネート
乾燥窒素中、181.0g(1.00当量)のポリイソシアネート2を、5.05g(0.05当量)のジイソプロピルアミンと、攪拌しながら混合した。僅かな発熱が観察された。バッチを、さらに140℃に加熱し、同温度で2時間攪拌した。この時点で、NCO含量は20.3質量%(0.90当量のNCOに相当)であった。バッチを室温まで冷却し、75gのイソブタノール及び75gの酢酸メトキシプロピル(MPA)により希釈し、続いて、90.9gのジイソプロピルアミンと混合した。ブロッキング反応が終わった後(IRスペクトルからNCOバンドが消失)、426.95gの無色透明生成物を得た。この生成物は、以下の特性を有していた:
粘度(23℃):2590mPas
ビウレット基中のアルキルアミノ基(NCH(CH))含量:2.4%(0.1当量)
ブロックトNCO含量(分子量=42):8.6%(0.9当量BNCO)
固形分:65%
生成物を室温で3ヶ月間貯蔵した後、溶液の濁りも、いかなる固形物の沈殿又は結晶化も観察されなかった。
【0051】
以下に、同じ出発ポリイソシアネート及び同じブロッキング剤に基づいた、ビウレット基を含まない生成物の調製を記載する。
実施例3(比較)
ジイソプロピルアミンによりブロックした、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート
乾燥窒素中、193.5gのポリイソシアネート1を、79.3gの酢酸メトキシプロピル(MPA)及び101.0gのジイソプロピルアミンと、攪拌しながら混合した。僅かな発熱が観察された。添加終了後、混合物を70℃に加熱し、同温度で30分間攪拌した後、バッチを室温まで冷却した。その後では、遊離イソシアネート基は、IRスペクトル中に認められなかった。最後に、生成物を79.3gのイソブタノールにより希釈して、透明でほとんど無色の生成物を得た。この生成物は、以下の特性を有していた:
粘度(23℃):2070mPas
ブロックトNCO含量(分子量=42):9.3%
固形分:65%
生成物を室温で14日間貯蔵した後に、結晶化による固化が始まった。室温で18日間貯蔵した後には、固体の白色不透明物質が形成された。
【0052】
実施例4(比較)
ジイソプロピルアミンによりブロックした、イミノオキサジアジントリオン基含有ポリイソシアネート
乾燥窒素中、181.0gのポリイソシアネート2を、76.0gの酢酸メトキシプロピル(MPA)及び101.0gのジイソプロピルアミンと、攪拌しながら混合した。僅かな発熱が観察された。添加終了後、混合物を70℃に加熱し、同温度で30分間攪拌した後、バッチを室温まで冷却した。その後には、遊離イソシアネート基は、IRスペクトル中に認められなかった。続いて、生成物を76.0gのイソブタノールにより希釈して、透明でほとんど無色の生成物を得た。この生成物は、以下の特性を有していた:
粘度(23℃):1560mPas
ブロックトNCO含量(分子量=42):9.7%
固形分:65%
生成物を室温で14日間貯蔵した後に、結晶化による固化が始まった。室温で18日間貯蔵した後には、固体の白色不透明物質が形成された。
【0053】
実施例5(本発明)
マロン酸ジエチルによりブロックした、ジイソプロピルアミン−ビウレット基含有ポリイソシアネート
乾燥窒素中、193.5g(1.00当量)のポリイソシアネート1を、5.05g(0.05当量)のジイソプロピルアミンと、攪拌しながら混合した。僅かな発熱が観察された。バッチを、さらに140℃に加熱し、同温度で2時間攪拌した。この時点で、NCO含量は19.0質量%(0.90当量のNCOに相当)であった。バッチを室温まで冷却し、183.3gの酢酸ブチルにより希釈した。96gのマロン酸ジエチルを添加し、48gのマロン酸ジエチル、0.65gのナトリウムメトキシド及び1.5gのメタノールの混合物を、発熱反応において温度が70℃を超えないような速度で滴下した。この温度で120分間攪拌した後、バッチを冷却した。この時点で、遊離イソシアネート基は、IRスペクトル中に認められなかった。これにより、526.5gの無色透明生成物を得た。この生成物は、以下の特性を有していた:
粘度(23℃):2200mPas
ビウレット基中のアルキルアミノ基(NCH(CH))含量:1.9%(0.1当量)
ブロックトNCO含量(分子量=42):7.2%(0.9当量BNCO)
固形分:65%
【0054】
以下に、同じ出発ポリイソシアネート及び同じブロッキング剤に基づいた、ビウレット基を含まない生成物の調製を記載する。
実施例6(比較)
乾燥窒素中攪拌しながら、193.5gのポリイソシアネートA1)、152.5gの酢酸ブチル及び106.7gのマロン酸ジエチルの混合物を、53.3gのマロン酸ジエチル、0.72gのナトリウムメトキシド及び1.68gのメタノールの混合物に、発熱反応において温度が70℃を超えないような速度で滴下した。この温度で120分間攪拌した後、バッチを冷却した。この時点で、遊離イソシアネート基は、IRスペクトル中に認められなかった。これにより、淡黄色透明生成物を得た。この生成物は、以下の特性を有していた:
ブロックトNCO含量(分子量=42):8.3%
NCO官能価(GPC):3.4
固形分:70%
【0055】
結晶化の最初の徴候は、室温で24時間貯蔵した後に現れた。室温で48時間貯蔵した後、固体の淡黄色透明物質が形成された。実施例5の生成物の場合、室温で14日間貯蔵した後にも、結晶化の徴候は観察されなかった。これらのことから、本発明のブロックトポリイソシアネートは、結晶化に対して安定化されていることは明らかである。
【0056】
実施例8
実施例(本発明及び比較例)に記載したいくつかのポリイソシアネートに基づく塗料の調製及び試験
実施例1のブロックトポリイソシアネート及びヒドロキシ官能性ポリエステルポリオールDesmophenTM T 1665 (Bayer AG, Leverkusen, ドイツ)(DIN 53 240/2によるヒドロキシル含量、無溶媒で約2.6%、SolventnaphthaTM 100/イソプロパノール(31.5:3.5)中で65%、当量重量1000)に基づき、コイル用塗料を調製した。更に、白色顔料TronoxTM R-KB-4 (Kerr-McGee, Krefeld-Uerdingen, ドイツ)、並びに更なる添加剤としてセルロースアセトブチレート CAB 531-1(Krahn Chemie GmbH, ハンブルグ, ドイツ)、ジブチルスズジラウレート(Brenntag, ミュールハイム/ルール, ドイツ)、AcronalTM(BASF AG, Ludwigshafe, ドイツ)及び溶媒としてSolvessoTM 200 S (Deutsche Exxon, ケルン, ドイツ)を使用した。
【0057】
【表1】

【0058】
塗料は、ポリエステル中の水酸基対ポリイソシアネート中のブロックトNCO基の非が1:1又は1:1.5となり、ポリイソシアネート及びポリエステルの非揮発性成分対顔料の比が1:1となるように処方した。ポリイソシアネート及びポリエステル中の非揮発性成分の量に基づき、塗料は、0.3質量%のジブチルスズジラウレート、1.2質量%のCAB 531-1 及び0.3質量%のAcronalTM 4 F を含んでいた。塗布粘度は、SolvessoTM 200 S により希釈して、100秒の水準(DIN EN ISO 2431, 5mmノズルのカップ、23℃)に調節した。
【0059】
塗料は、クロムめっきアルミニウム板にナイフコーティングにより塗布し、コイル被覆試験用オーブン(Aalborg)により、350℃で、それぞれの場合に表2に示したピーク金属温度(PMT)を達成するのに十分な時間、焼き付けた。
【0060】
【表2】

(*1) European Coil Coating Association の標準。
(*2)カラーガイド球型装置(Byk-Gardner 製)を用い、CIE-L*a*b* スケールによって測定。
(*3) 塗膜が軟化するまでの二重擦り。
(*4) Fischerscope H100 SMC(Fischer 製)により測定。
【0061】
2つの塗料III及びIVの場合、固体は30日後に沈降したが、実施例1からの本発明のブロックトポリイソシアネートを含む塗料I及びIIは、3ヶ月以上の貯蔵後でも結晶化の徴候を示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・イソシアネート基の少なくとも95モル%が少なくとも1種のブロック剤によりブロックされており、
・4.0〜2.10質量%のブロックトNCO基及び遊離NCO基(NCO、分子量42として計算して)を含む
脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートに基づくポリイソシアネートであって、
ポリイソシアネートは、ビウレット基の構成成分として、式:

(式中、R及びRは、相互に独立して、脂肪族又は脂環式C−C12アルキル基である。)
で示されるアルキルアミノ基1〜20質量%を含むことを特徴とする、ポリイソシアネート。
【請求項2】
式:RNで示されるアルキルアミノ基は、ジイソプロピルアミノ、N,N−t−ブチルベンジルアミノ及び/又はジシクロヘキシルアミノ基である請求項1に記載のポリイソシアネート。
【請求項3】
A)第1の工程で、
a)8.0〜28.0質量%のNCO含有量(NCO、分子量42として計算して)、及び2以上のNCO官能価を有する少なくとも1種のポリイソシアネートを、
b)式:
NH
(式中、R及びRは、相互に独立して、脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式C−C12アルキル基である。)
で示される少なくとも1種のアルキルアミンと、
ポリイソシアネートa)からのNCO基の2〜96モル%が尿素基に転化されるように、反応させ、
B)次いで、該尿素基の一部又は全部を、
c)任意に触媒の存在下に、
ポリイソシアネートa)からの更なるNCO基と、更に反応させてビウレット基を得、
C)最後に、残余の遊離NCO基を
d)少なくとも95モル%の程度までブロックする
請求項1に記載のポリイソシアネートの製造方法。
【請求項4】
成分b)のアルキルアミンとして、ジイソプロピルアミン、N,N−t−ブチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン及び/又はこれらの混合物を用いる請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
触媒成分c)として、0.05〜1質量%のヒドロピバリン酸又はピバリン酸を用いる
請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
被覆又は成形品の製造の為の、請求項1又は2に記載のポリイソシアネートの使用。
【請求項7】
I)請求項1又は2に記載のポリイソシアネート1種又はそれ以上、
II)1.5超の平均官能価を有するNCO反応性化合物1種又はそれ以上、
III)任意に溶媒、並びに
IV)任意に助剤及び/又は添加剤
を含む1成分系被覆組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の被覆組成物から得られる被覆。
【請求項9】
請求項8に記載の被覆により塗装された基材。

【公表番号】特表2007−501890(P2007−501890A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529791(P2006−529791)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005072
【国際公開番号】WO2004/104065
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】