説明

固定構造

【課題】筐体とカバーとを密着させてカバーを筐体に強固に固定できる固定構造を提供すること。
【解決手段】固定構造1は、筐体10にカバー50を自在に固定する。固定構造1は、カバー50を筐体10に固定するために、筐体10の縁11に配設される開口部15を挿通して縁11の裏面12に引っ掛かる突起部53aを先端53bに有し、弾性力を有する鉤形状の爪部53を具備している。
爪部53は、カバー50の縁51の一部を筐体10に向かって屈曲させ、且つ屈曲によって段差55を形成するように加工される縁51の一部である。爪部53は、弾性力によって突起部53aを裏面12に向かって押し付けることで、突起部53aを裏面12に引っ掛け、先端53bと縁51とによって縁11を挟み込み、縁11と縁51とを密着させた状態で、カバー50を筐体10に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体にカバーを自在に固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばデジタル移動通信システムにおける無線基地局には、様々な用途に用いられる筐体が配設されている。このような筐体は、例えば無線基地局を駆動させる電源ユニットである。
【0003】
一般的にこのような筐体には、筐体に収容される図示しない実装基板と、筐体の正面を覆うように正面に固定されるフロントパネルと、筐体の上面を覆うように上面に固定されるカバーとが配設されている。
【0004】
実装基板には、電源部品が実装されている。
【0005】
筐体において、筐体の正面全体と筐体の上面全体とが開口しており、上述したように正面にフロントパネルが覆うように固定され、上述したように上面にカバーが覆うように固定されている。
【0006】
カバーの縁は、平面である。カバーのこの縁には、カバーを筐体に固定するために、筐体の縁に配設される後述する開口部を挿通して筐体の縁の裏面に引っ掛かる爪部が配設されている。
【0007】
カバーの縁に対向する筐体の縁には、爪部が筐体の縁の裏面に引っ掛かるために挿通する開口部が配設されている。また筐体の縁は、爪部が開口部を挿通し筐体の縁の裏面に強固に引っ掛かるために、カバーの縁を押し上げる弾性力を有する板ばねである。板ばねである筐体の縁は、カバーに向って盛り上がっており、平面ではない。
【0008】
爪部が開口部を挿通し筐体の縁の裏面に引っ掛かり、筐体の縁が弾性力によってカバーの縁を押し上げることで、爪部はより強固に筐体の縁の裏面に引っ掛かる。これによりカバーは、筐体の上面を覆うように固定される。
【0009】
このように爪部と板ばねである筐体の縁とは、カバーを筐体に固定する一般的な固定構造である。
【0010】
なおフロントパネルは、筐体の正面にネジ止めされる。
【0011】
例えば特許文献1には、誘電性のカバーと絶縁シートとの固定を容易にし、電子部品を実装された実装基板と、誘電性のカバーとを絶縁する電子装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−214303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した一般的な固定構造において、筐体の縁は、カバーに向って盛り上がっており、平面ではない。そのためカバーが筐体に固定された際に、カバーの縁と筐体の縁との間に隙間が生じ、カバーと筐体と(カバーの縁と筐体の縁と)は密着せず、がたつきが生じる。これにより例えば電源ユニットとしての筐体の機能が低下してしまう虞が生じる。
【0014】
そのため本発明は、上記事情に鑑み、筐体とカバーとを密着させてカバーを筐体に強固に固定できる固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は目的を達成するために、筐体にカバーを自在に固定する固定構造であって、前記カバーを前記筐体に固定するために、筐体の縁に配設される開口部を挿通して前記筐体の縁の裏面に引っ掛かる突起部を先端に有し、弾性力を有する鉤形状の爪部を具備し、前記爪部は、前記カバーの縁の一部を前記筐体に向かって屈曲させ、且つ屈曲によって段差を形成するように加工される前記カバーの縁の一部であり、前記爪部は、前記弾性力によって前記突起部を前記裏面に向かって押し付けることで、前記突起部を前記筐体の縁の前記裏面に引っ掛け、前記先端と前記カバーの縁とによって前記筐体の縁を挟み込み、前記筐体の縁と前記カバーの縁とを密着させた状態で、前記カバーを前記筐体に固定することを特徴とする固定構造を提供する。
【0016】
また本発明は目的を達成するために、前記爪部は、アースを兼ねていることを特徴とする上記に記載の固定構造を提供する。
【0017】
また本発明は目的を達成するために、前記突起部と前記先端とを含む前記爪部は、前記弾性力を有する板ばねであることを特徴とする上記に記載の固定構造を提供する。
【0018】
また本発明は目的を達成するために、前記段差は、前記筐体の縁と略同じ厚みを有し、前記カバーが前記筐体に固定される際に、前記筐体に対する前記カバーのずれを防止することを特徴とする上記に記載の固定構造を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、筐体とカバーとを密着させてカバーを筐体に強固に固定できる固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施形態における固定構造の分解斜視図である。
【図2】図2は、固定構造の拡大斜視図である。
【図3】図3は、爪部と筐体の縁の裏面に引っ掛かり、上面カバーと筐体とが密着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1乃至図3を参照して実施形態について説明する。
図1に示すように固定構造1は、筐体10にカバー50を自在に固定する。
【0022】
図1に示すようにこの筐体10には、筐体10に収容される図示しない実装基板と、筐体10の正面10aを覆うように正面10aに固定されるフロントパネル30と、筐体10の上面10bを覆うように上面10bに固定されるカバー50とが配設されている。
【0023】
より詳細には、図1に示すように筐体10において、筐体10の正面10a全体と筐体10の上面10b全体とが開口しており、上述したように正面10aにフロントパネル30が覆うように固定され、上述したように上面10bにカバー50が覆うように固定されている。
【0024】
このような筐体10は、例えばデジタル移動通信システムにおける無線基地局において、様々な用途に用いられる。筐体10は、例えば実装基板を収容することで、無線基地局を駆動させる電源ユニットをなしている。
【0025】
実装基板には、図示しない電源部品が実装されている。
【0026】
フロントパネル30の内面とカバー50の内面とには、フロントパネル30とカバー50とが実装基板と絶縁するための図示しない絶縁シートが配設されている。絶縁シートは、筐体10の内部にも配設されている。このような絶縁シートは、電源部品が実装された実装基板から他の実装基板などへの漏電を防止するため、及びメンテナンスの際に作業者が筐体10(実装基板)に触れて感電することを防止するために、実装基板を覆っている。
【0027】
フロントパネル30は、正面10aにネジ31によってネジ止めされる。
【0028】
図2と図3とに示すようにカバー50の縁51は、例えば平面である。図1乃至図3に示すように、この縁51には、カバー50を筐体10に固定するために、筐体10の縁11に配設される後述する開口部15を挿通して縁11の裏面12に引っ掛かる突起部53aを先端53bに有し、弾性力を有する鉤形状の爪部53が配設されている。爪部53は、アースを兼ねている。
【0029】
この爪部53は、縁51の一部を筐体10に向かって屈曲させ、且つ屈曲によって縁11と略同じ厚みを有する段差55を形成するように加工された縁51の一部である。つまり爪部53は、カバー50と一体である。また爪部53は、筐体10に向かって屈曲している屈曲爪である。さらに爪部53は、縁11と略同じ厚みを有する段差55を形成している。この段差55には、爪部53を開口部15に挿通させ、カバー50を筐体10に固定するために、カバー50が筐体10に対してスライドした際に、開口部15の縁15aが当接する。このように段差55は、カバー50が筐体10に固定される際に、筐体10に対するカバー50のずれを防止するストッパーとして機能する。
【0030】
上述したように爪部53は、カバー50が筐体10に固定される際に裏面12に引っ掛かる突起部53aを爪部53の先端53bの端面53cに有している。端面53cは例えば平面であり、端面53cの先端53dは例えば略半円形形状である。
【0031】
突起部53aは、端面53cを裏面53e側から表面53f側に向けて例えば押し出し形成された端面53cの一部である。突起部53aは例えば略半球形状を有し、突起部53aの先端は例えば鋭利である。つまり突起部53aは、カバー50が筐体10に固定される際に裏面12に対向するように端面53cから突出している。
【0032】
突起部53aと先端53bとを含む爪部53は、弾性力を有する例えば板ばねである。爪部53は、この弾性力によって突起部53aを裏面12に向かって押し付けることで、突起部53aを筐体10の縁11の裏面12に引っ掛け、先端53bの端面53cとカバー50の縁51とによって筐体10の縁11を挟み込み、筐体10の縁11とカバー50の縁51とを隙間なく密着させた状態で、カバー50を筐体10に固定する。
【0033】
なお爪部53は、筐体10の側面13に接し、カバー50において対向する一方の縁51aと他方の縁51bとのそれぞれに配設されている。爪部53は、縁51a,51bに例えば等間隔に3個配設されている。また爪部53は、縁51aと縁51bとを結ぶ直線方向(より詳細には、縁51a,51bの長さ方向に直交する方向)において、例えば同一直線上に配設されている。
【0034】
なお爪部53は、筐体10の背面14に対向する縁51cにも例えば等間隔に2箇配設されている。
【0035】
縁51に対向する縁11には、爪部53(突起部53a)が裏面12に引っ掛かるために挿通する開口部15が配設されている。開口部15は、切り欠きである。また縁11は、カバー50に向って盛り上がっておらず、例えば平面である。開口部15は、爪部53が挿通可能な大きさを有している。開口部15の長さは、爪部53、より詳細には開口部を挿通する端面53cの長さと略同様、または端面53cの長さよりも長いことが、爪部53を開口部15に容易に挿通させ、突起部53aを裏面12に引っ掛ける観点から好適である。
【0036】
次に本実施形態の動作方法について説明する。
図3に示すように端面53cを含む爪部53が開口部15を挿通するように、カバー50が筐体10に設置される。
【0037】
図3に示すようにカバー50は、筐体10に対してスライドする。これにより突起部53aは、裏面12に対向する。さらに板ばねである爪部53は自身の弾性力によって突起部53aを裏面12に向かって押し付け、端面53cと縁51とは縁11を挟み込む。これにより突起部53aが裏面12に引っ掛かり、縁11は端面53cと縁51とによって挟み込まれ、カバー50は筐体10に強固に固定される。
【0038】
このように突起部53aが裏面12に引っ掛かり、カバー50が筐体10に固定された際、平面である縁11と縁51とは、隙間なく密着する。よってカバー50と筐体10とのがたつきが、防止される。さらに突起部53aが弾性力によって裏面12から離れることが防止され、爪部53においてアースとしての機能の低下が防止される。
【0039】
なおカバー50がスライドした際に、縁15aが段差55に当接するために、カバー50が筐体10に対してスライドしすぎる(ずれすぎる)ことが段差55によって防止される。
【0040】
またネジ31は、フロントパネル30を正面10aにネジ止めする。
【0041】
このように本実施形態では、弾性力によって突起部53aを裏面12に向って押し付け、突起部53aを裏面12に引っ掛け、縁11を端面53cと縁51とによって挟み込むことで、カバー50を筐体10に強固に固定することができる。
【0042】
さらに本実施形態では、縁11と縁51とが例えば平面でるために、爪部53によって縁11と縁51とを隙間なく密着させることができ、弾性力と突起部53aとによってカバー50と筐体10とのがたつきを防止することができる。
【0043】
これにより本実施形態では、例えば電源ユニットとしての筐体の機能の低下を防止することができる。
【0044】
また本実施形態では、弾性力によって突起部53aが裏面12から離れてしまうことを防止できるために、爪部53においてアースとしての機能の低下を防止することができる。
【0045】
また本実施形態では、カバー50がスライドした際に、爪部53(段差55)を縁15aに当接することができるために、カバー50が筐体10に対してスライドしすぎる(すれすぎる)ことを防止することができる。
【0046】
また本実施形態では、爪部53と突起部53aとカバー50とを一体としているために、部品点数を削減でき、安価にすることができる。
【0047】
なお本実施形態では、突起部53aは、端面53cと別体であってもよい。
【0048】
また本実施形態では、突起部53aが裏面12に引っ掛かることができれば、突起部53aの形状は特に限定されない。
【0049】
また本実施形態では、縁11と縁51とが爪部53によって隙間なく密着し、爪部53がアースとしての機能することができれば、縁11と縁51とは、平面に限定する必要はなく、例えば曲面であっても良い。
【0050】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0051】
1…固定構造、10…筐体、10a…正面、10b…上面、11…縁、12…裏面、13…側面、14…背面、15…開口部、15a…縁、30…フロントパネル、31…ネジ、50…カバー、51…縁、53…爪部、53a…突起部、53b…先端、53c…端面、53d…先端、53e…裏面、53f…表面、55…段差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体にカバーを自在に固定する固定構造であって、
前記カバーを前記筐体に固定するために、筐体の縁に配設される開口部を挿通して前記筐体の縁の裏面に引っ掛かる突起部を先端に有し、弾性力を有する鉤形状の爪部を具備し、
前記爪部は、前記カバーの縁の一部を前記筐体に向かって屈曲させ、且つ屈曲によって段差を形成するように加工される前記カバーの縁の一部であり、
前記爪部は、前記弾性力によって前記突起部を前記裏面に向かって押し付けることで、前記突起部を前記筐体の縁の前記裏面に引っ掛け、前記先端と前記カバーの縁とによって前記筐体の縁を挟み込み、前記筐体の縁と前記カバーの縁とを密着させた状態で、前記カバーを前記筐体に固定することを特徴とする固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−9512(P2011−9512A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152245(P2009−152245)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】