説明

固定素子を鉱物性構造物にアンカリングする方法および鉱物性構造物用固定素子構造物

【課題】鉱物性構造物用のタップ固定素子、およびこれをアンカリングする方法を提供する。
【解決手段】穿孔器によって穿孔2が構造物1に形成され、続いて、固定素子11が形成された穿孔2にねじ込まれるアンカリングの方法であって、固定素子11は、打込み工具のための回転把持手段16を備え、谷径Kを有し、第1端部領域に少なくとも1つの切刃21を備えるシャフト12と、外径Aと、シャフト12の谷径Kとの差が、ピッチPの0.05〜0.7倍に相当するタップねじ部とを備え、穿孔器101はシャフト12の谷径Kの0.95〜1.10倍に相当する穿孔器呼び径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定素子を鉱物性構造物にアンカリングする方法であって、請求項1前段に記載するタイプの方法に関する。本発明はさらに、鉱物性の構造物用固定素子であって、請求項3前段に記載するタイプのものに関する。
【背景技術】
【0002】
固定素子を、例えばコンクリートや積上げ構造などの鉱物性構造物または土台にアンカリングするには、まず、穿孔器呼び径を有する穿孔器により穿孔が構造物に形成され、続いて、この形成された穿孔に固定素子がねじ込まれる。固定素子は、打込み工具のための回転把持手段および谷径を有するシャフトと、その外径が穿孔の内径よりも大きいタップねじ部とを備える。
【0003】
固定素子を穿孔内にねじ込む際に、ねじ部のねじ山は、鉱物性構造物の穿孔壁にねじを切るか、または押し付けられ、固定素子は得られたアンダーカットで穿孔内に荷重を受けるようにアンカリングされる。
【0004】
固定素子は、例えば六角ヘッドやシャフトの端部に回転把持手段として四角穴を備えるを有するねじとして構成される。代替として、固定素子は、例えば内部に回転把持手段を備える内ねじスリーブであって、シャフトの外側にタップねじ部を有するものでも良い。
【0005】
鉱物性の構造物または土台において、伝達されるべきせん断力は、伝達されるべき圧縮力よりも格段に小さく、このため、金属用ねじ切刃は、鉱物性構造物での使用には適さない。鉱物性土台のためのタップ固定素子は、ねじ部の外径とシャフトの谷径との差が、ねじ部のピッチの0.05〜0.7倍に相当するねじ部を備える。例えば特許文献1は、このタイプのねじ部を有する、鉱物性構造物用固定素子としてのコンクリートねじを記載する。
【0006】
このタイプの固定素子の形態は、打込み態様と受ける荷重との矛盾する要求にさらされている。打込み態様にとっては、シャフトの谷径が小さいと好適である。受ける荷重にとっては、シャフトの谷径が出来る限り大きいと、好適である。
【0007】
穿孔深さの増大と穿孔器の磨耗の増大に起因して、形成された穿孔は、用いられる穿孔器の穿孔器呼び径よりも実質的に小さい、内接する穿孔シリンダ(einbeschriebene Bohrzylinder:EBZ)を有する。内接する穿孔シリンダ(EBZ)は、直径の最も大きい円筒であって、他の補助手段を必要とせず、大きな抵抗も無く、予定されている固定素子アンカリング深さで、穿孔器により形成された穿孔内に導入可能である。このため、穿孔作業において、しばしば、シャフトの谷径には狭すぎる、または負の軸方向偏差を有する穿孔が構成される。固定素子は、内接する穿孔シリンダもしくは負の軸方向偏差を有する穿孔に適合できないため、固定素子の打込みは、困難であるか、または不可能である。
【0008】
特許文献2に記載されるのは、鉱物性土台でのねじ部の切付けを補助し、鉱物性構造物用タップ固定素子の打込み態様を部分的に狭い穿孔においても改善することを目的とした、ねじ部をタップし、シャフトの第1端部領域に切刃を備えるコンクリートねじが記載される。
【0009】
この既知の解法の欠点は、例えば特許文献1に記載される従来のコンクリートねじと比較して打込み態様が改善されているにもかかわらず、特許文献2に記載されるコンクリートねじのと比較して受ける荷重は高められていない点にある。
【0010】
特許文献3には、鉱物性構造物用タップ固定素子であって、その打込み方向において前方にある遊端に、対向ねじ部のタップに際して発生する穿孔粉を収容するための4つの溝を備えるものが記載される。これらの溝は、穿孔粉が、穿孔壁とシャフトとの間の空間に居座るのを防ぐ。このため、固定素子を打込むための回転トルクが小さくなる。部分的に磨り減った穿孔器により形成された穿孔、または穿孔深さが大きい穿孔において、このタップ固定素子の打込み態様は、これらの溝よっては改善されない。このタップ固定素子において、力伝達は、実質的に穿孔壁とシャフトとの間で圧縮された穿孔粉によって成される。けれども、穿孔の側面に沿った持続的な圧縮の発生と、構造物への理想的な力伝達とが実現されることは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0697071(B1)号明細書
【特許文献2】欧州特許第0560789(B1)号明細書
【特許文献3】欧州特許第1795768(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、鉱物性の構造物または土台用のタップ固定素子をアンカリングする方法であって、打込まれた固定素子が荷重受け態様および打込み態様を呈する方法を提供することにある。本発明の課題はさらに、鉱物性の構造物または土台用のタップ固定素子であって、荷重受け態様および打込み態様を呈するものを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの課題は、独立請求項に記載される特徴により解決される。好適な実施形態については、従属請求項に記載される。
【0014】
本発明によれば、鉱物性構造物に穿孔を形成するにあたり、シャフトの谷径の0.95〜1.10倍に相当する穿孔器呼び径を有する穿孔器が利用される。
【0015】
ここで、穿孔器呼び径とは、穿孔器の寸法表示(例えば、6mm,8mm,10mmなど、もしくは1/4",5/16",3/8"など)を意味する。穿孔器ビット、例えば穿孔器の切削プレートの伸延は、穿孔器シャフトに対してシンメトリーな穿孔ヘッドを備える穿孔器においては、外形寸法として記載される。アシンメトリーな穿孔ヘッドを備える穿孔器の場合、ここでは、この穿孔器により形成される側面の直径を意味する。穿孔器呼び径と、その最小および最大外形寸法は、例えば表ETAG001(ヨーロッパ技術承認ガイドライン:Guideline for European Technical Approvalof Metal Anchors for use in Concrete)にメートル法の寸法で、表ACI355.2−04(American Concrete Institute)ヤード・ポンド法の寸法で、規定されている。
【0016】
少なくとも1つの、完全谷径に備えられた切刃は、横断面において丸くない、または平らでない穿孔を、実質的にシリンダ状の穿孔へと変化させ、固定素子を打込んだ後には、シャフトの外面が直接穿孔壁と当接する。穿孔の平らでない側面は、固定素子の打込みに際して、平らに均される。穿孔器が部分的に磨耗しており、実質的に小さい内接する穿孔シリンダ(EBZ)を構造物もしくは土台に構成する場合においても、固定素子の打込み態様は、少なくとも1つの切刃によって保たれる。このように、このタイプの固定素子は、穿孔器呼び径の0.83〜0.96倍に相当する内接する穿孔シリンダ(EBZ)を有する穿孔にも打込むことができる。同様に、穿孔器呼び径と比較して小さい内接する穿孔シリンダ(EBZ)を構造物もしくは土台に有する、深い穿孔にも同じことが言える。
【0017】
本発明方法によれば、一方では、想定され得る隙間が、ねじ部タップに際して発生する穿孔粉および/または穿孔屑で可能な限り完全に満たされ、穿孔壁の大部分において、シャフトがこれと堅実に当接する。これにより、穿孔領域における構造物の鉱物性素材の横歪が防がれるので、応力状態が変化し、穿孔領域の周囲の素材のコンクリート強度が格段に高まる。固定素子の打込みに際して、発生する穿孔粉が、少なくとも1つの切刃を構成する溝に逃げるか、もしくは固定素子により押しどけられるだけでなく、同時に、シャフトと穿孔壁との間に存在する穿孔粉が、同様に、かつ強く、特にタップされた対向ねじ部領域において圧縮される。
【0018】
シャフトの谷径の0.95倍よりも小さい穿孔器呼び径を有する穿孔器が利用される場合、シャフトと穿孔壁との間に存在する穿孔粉の圧縮は大きくなりすぎ、打込み作業における摩擦が大きくなって、固定素子を打込むことが出来なくなる。
【0019】
シャフトの谷径の1.10倍よりも大きい穿孔器呼び径を有する穿孔器が利用される場合、打込まれた固定素子のシャフトの外面において、直接穿孔壁と当接する領域が小さくなり、もしくは、シャフトと穿孔壁との間に存在する穿孔粉は少ししか圧縮されない。このような固定素子は簡単に打込むことができるが、この固定素子の受ける荷重は、比較的小さいものとなる。
【0020】
好適には、穿孔器呼び径は、シャフトの谷径の0.99〜1.08倍に相当する。この構成により、商習慣上通常の大きさの固定素子を、好適に打込むことができ、打込まれた状態において、特に好適な荷重受け態様を呈する。
【0021】
本発明によれば、鉱物性の構造物または土台のための固定素子は、打込み工具のための回転把持手段を有するシャフトと、タップねじ部であって、そのねじ部の外径と、シャフトの谷径との差が、ねじ部のピッチの0.05〜0.7倍に相当する該ねじ部と、を備え、少なくとも1つの切刃が、シャフトの第1端部領域に設けられ、固定素子の長手方向軸線に平行に、かつ完全谷径において計測した、少なくとも1つの切刃の全長が、少なくともねじ部のピッチに相当する。
【0022】
少なくとも1つの切刃が、ねじのピッチよりも大きい長さを有するため、固定素子を回す際に、それ自身が一回転すると、固定素子の長手方向軸線の周り360°にわたり、穿孔壁の周面が均される。狭すぎる穿孔、もしくは負の軸方向偏差を有する穿孔は、部分的、場合によってはその全延在長さにわたって拡張され、しかも固定素子を打込むコストは、従来のタップ固定素子と比較しても、問題とならない程度にしか増えない。このために重要なのは、シャフトの完全谷径における少なくとも1つの切刃の長さが、少なくともねじ部のピッチに相当することである。ねじ部のピッチは、固定素子の一回転で戻ってくる道程に相当する。
【0023】
少なくとも1つの切刃の研磨作用により、負の軸方向偏差を有する穿孔に打込む際にも、固定素子が引っ掛かって動かなくなることない。シャフトはその外面において、広い領域で穿孔壁と十分に当接し、穿孔内の、および、ねじ部タップの際に発生した穿孔粉、および/または穿孔屑は、タップされた対向ねじ部の領域において、充分な強度で圧縮される。
【0024】
好適には、複数の切刃が、シャフトの第1端部領域に設けられ、固定素子の長手方向軸線に平行に、かつ完全谷径において計測した、切刃の全長の合計が、少なくともねじ部のピッチに相当する。個々の切刃の長さは、1つの切刃を設けた場合よりも短くてよく、これら切刃の長さは、全ての切刃において同じでなくともよい。固定素子の好適な打込み作業に重要であるのは、各切刃のシャフトの完全谷径における長さの合計が、少なくともねじ部のピッチに相当することである。さらに、複数の、周方向に互いに離間した切刃は、固定素子を穿孔に差込む際もしくはねじ込む際に好適な切削態様を呈する。
【0025】
好適には、切刃は、固定素子の長手方向軸線に関して回転対称に設けられる。固定素子を差込む際に、少なくとも2つの切刃は穿孔口と当接され、打込み作業の始めおよび最中に好適な切削態様を呈するため、固定素子簡単に打ち込むことができる。
【0026】
さらに好適には、シャフトの第1端部領域に、シャフトの遊端に向かって先細りになる導入部分を設ける。少なくとも1つの切刃は、シャフトから始端して、導入部分にわたりシャフトの遊端まで延在し、好適には、シャフトの遊端で終端する。特に好適には、少なくとも1つの切刃がねじ部に先行するように、タップねじ部の始まりをシャフト遊端から軸線方向にオフセットさせる。打込み作業の始めに、少なくとも1つの切刃は穿孔口を、タップねじ部を穿孔口に成形する際に、土台に簡単にねじが切られるように準備する。
【0027】
シャフトの第1端部領域に複数の切刃が設けられている場合、各切刃、好適には全ての切刃が、導入部分にわたり延在する。これにより固定素子の切削態様はさらに改良される。これら切刃の、完全谷径において計測した、すなわち導入部分の切刃の長さを除いた軸線方向長さの合計は、ここでも、少なくともねじ部のピッチの寸法に相当する。切刃が、シャフトの谷に構成された溝部分である場合、溝底は、少なくとも先細りの導入部分の領域において、好適にはシャフトの長手方向軸線に平行に延在する。
【0028】
好適には、少なくとも1つの切刃、もしくは複数の切刃がある場合、それらの少なくとも1つの切刃が、少なくとも部分的に、ピッチに対して垂直に、もしくはねじ部のねじ山に対して垂直に延在する。これにより、固定素子の打込みに際して好適な切削態様を呈する。このため、少なくとも1つの切刃は、少なくとも部分的に長手方向軸線の投影に対して傾いて延在する。長手方向軸線の投影に対して傾いた切刃に関しては、その長手方向軸線に投影された長さをその長さとみなす。打込み作業に際しては、それぞれ固定素子の長手方向軸線に関して、主に半径方向に作用する穿孔壁の加工に加えて、軸線方向の分力が作用する。
【0029】
特に、例えばねじ回し装置を用いて固定素子を回転打撃により打込む際には、打込み態様は、少なくとも1つの、部分的に傾いた切刃により改善される。さらに、少なくとも1つの傾いた切刃により、発生する穿孔屑および/または穿孔粉は、シャフトの第1端部へと押し動かされるされるため、穿孔粉の逃げが補助される。
【0030】
少なくとも部分的にねじ部のピッチに対して垂直に延在する、少なくとも1つの切刃は、代替として、この垂直な伸延に対して、−30°〜+30°、特に好適には−15°〜+15°の角度で延在するものでもよい。
【0031】
好適には、少なくとも1つの切刃の配置は、固定素子の長手方向軸線に関して、非連続的な伸延を呈する。特に好適には、少なくとも1つの切刃は、軸線と平行に延在する部分と、長手方向軸線の投影に対して傾いて延在する部分とを有する。各部分の長さを効果的選択することで、固定素子の要求もしくは所望のパフォーマンスにしたがい、打込み態様は影響を受ける。
【0032】
さらに、少なくとも1つの切刃の切刃輪郭も、切削態様に影響を持ち得る。真直ぐな伸延に加えて、少なくとも1つの切刃は、例えば有歯または波状に構成されても良い。複数の切刃が固定素子に設けられる場合、これらは、一様に延在しても、またはそれぞれ異なる態様で延在しても良い。
【0033】
好適には、少なくとも1つの切刃は、シャフトの谷径の軸線方向投影を、半径方向に超えるものとする。これにより、好適な切削態様において、シャフトの谷径と穿孔壁との間の摩擦をさらに低減することができる。
【0034】
好適には、シャフトは、第1端部領域において、少なくとも、少なくとも1つの切刃の領域において、シャフトのその他の部分の谷径よりも大きい谷径を有する。これにより、実質的にこの領域に、シャフトの谷径と穿孔壁との間の摩擦の大部分が発生する。谷径の直径が大きい領域は、例えばシリンダ状、たるの様な形、または錐台形状に構成され、例えば固定素子の製造過程において、パンチングによって、またはシャフトの成形に際して構成され得る。
【0035】
好適には、少なくとも1つの切刃とシャフトとの間に逃げ角が設けられ、発生する穿孔粉および穿孔屑のための充分な隙間を得られるようにする。好適には、逃げ角は、シャフトの谷径の接線に対して1°〜30°、特に好適には5°〜20°とする。
【0036】
好適には、少なくとも1つの切刃は、負のすくい角を有し、この負のすくい角は、固くてもろい素材、例えば鉱物性土台および特にコンクリートなどにおいて、好適な切削態様を呈する。好適には負のすくい角は、1°〜30°、特に好適には3°〜10°である。
【0037】
好適には、少なくとも1つの切刃に隣接した半径方向内方に逃げ溝が設けられる。固定素子が複数の切刃を有する場合、各切刃に逃げ溝が設けられると特に好適である。打込み作業時に発生する穿孔粉もしくは穿孔屑の逃げに、十分なボリュームが用意されるためである。好適には、この、またはこれらの溝は、固定素子を打込む際に、発生した穿孔粉および穿孔屑が、シャフトの遊端へと動かされされ、打込まれた固定素子の前、すなわち穿孔底の方向に堆積するようにシャフトに取付けられ構成される。
【0038】
さらに好適には、少なくとも1つの切刃には面取が設けられる。これにより、打込み作業における切刃の摩耗が低減される。面取角度は、好適には1°〜30°、特に好適には5°〜15°とする。面取の幅は、好適には0.05mm〜1mm、特に好適には、0.2mm〜0.5mmとする。ここで、面取の後方部分とは、面取の、シャフトの横断面に実質的に平行に延在する部分を意味し、この面取の後方部分は、0.1mm〜5mm、特に好適には0.5mm〜3mmである。ここで、面取とは、半径が好適には0.02mm〜1mm、特に好適には0.05mm〜0.5mmである丸角の切刃もその意味に含む。複数の切刃が固定素子に設けられている場合、これらのそれぞれに面取が設けられていて良いし、面取はそれぞれ同様に構成されていても、それぞれ異なって構成されていても良い。
【0039】
好適には、少なくとも1つの切はが、少なくとも部分的に、シャフトよりも硬度が大きい部分を有する。これにより、切削態様が改善され、切刃の磨耗を本質的に抑制することができる。特に、ステンレス鋼鉄から成る固定素子において、通常シャフトの素材の硬度はねじ部のタップには足りず、したがって、鉱物性土台の穿孔の拡張にも足りない。例えば、硬い、または硬化した素材から成る切削素子が、少なくとも1つの切刃に用いられる。
【0040】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】穿孔器の側面図である。
【図2】タップねじである本発明固定素子の側面図である。
【図3】図1に示されるねじの前方端部を詳細に示した拡大図である。
【図4】前方端部の、図3におけるIII-III線上の断面図である。
【図5】切刃を図4の一部について示した図である。
【図6】図1に従う穿孔器により形成された穿孔を示す図である。
【図7】図2に示される固定素子が打込まれた状態を示す図である。
【図8】第2実施例における本発明固定素子の前方端部の斜視図である。
【図9】第3実施例における本発明固定素子の前方端部の斜視図である。
【図10】第4実施例における本発明固定素子の前方端部の斜視図である。
【図11】第5実施例における本発明固定素子の前方端部の側面図である。
【図12】第6実施例における本発明固定素子の前方端部の側面図である。
【図13】他の実施例における本発明固定素子であって、セルフタップ内ねじスリーブの側面図である。
【0042】
各図中、同様の構成部材は同じ符号で示される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1に示される穿孔器101は、穿孔器シャフト102および穿孔器呼び径を備える。穿孔器シャフト102の一方の端部には、穿孔器101を図示しない穿孔装置に取付けるための差込端部103が備えられる。穿孔器シャフト102の他方の端部には、穿孔ヘッド104が取付けられ、この穿孔ヘッド104は、プレート状の切削素子105を備える。切削素子105の横方向の伸延は、穿孔器101の外形寸法Eを定義する。穿孔ヘッド104と差込端部103との間には、穿孔の際に発生する穿孔粉および/または穿孔屑を穿孔2から逃がすための螺旋手段106が穿孔器シャフト102に沿って延在する。
【0044】
図2〜図5に示される、例えばコンクリートや積上げ構造などの鉱物性構造物のための固定素子11は、シリンダ状のシャフト12を有するタップねじである。このシャフト12は、その第1遊端13にはシャフト12の遊端13に向かって先細になる導入部分14を、その第2端部15には、図示しない打込み工具のための回転把持手段16としての六角ヘッドを、備える。タップねじ部17は、第1端部13の端部領域から始端して、部分的に、シャフト12に沿って延在する。シャフト12は、固定素子11の長手方向軸線18を規定する。
【0045】
ねじ部17の外径Aとシャフト12の谷径Kとの差は、ねじ部17のピッチPの0.05〜0.7倍に相当する。ねじ部17の外径Aは、シャフト12の谷径Kの1.1〜1.5倍に相当する。さらに、ねじ部17の外径Aは、ねじ部17のピッチPの1.0〜2.5倍に、特に谷径が、例えば6〜14mmである小さい固定素子においては、好適には、ねじ部17のピッチPの1.03〜1.99倍に相当する。二条ねじにおいては、ねじ部の外径は、好適には個々のねじ山ピッチの0.5〜1.25倍に相当する。固定素子のねじ部が2つ以上のねじ山を備える場合、このねじ部の外径は、(ねじ部のピッチの1.0〜2.5倍)をねじ山の個数で割った値に相当する。
【0046】
完全谷径Kは、シャフト12の側面を規定する径であり、ここから、タップねじ部が突出する。シャフトの外側においてねじ部のねじ山の間に設けられたスロットまたは溝は、この場合、シャフト12の完全谷径Kを規定する際には考慮されない。
【0047】
シャフト12の第1端部領域には、3つの切刃21が設けられ、各切刃21は、固定素子11の長手方向軸線18に平行に延在する、穿孔のひずみ補正に対して実質的に効果的な長さLを有する。完全谷径Kにおいて長手方向軸線18に平行に計測した、切刃21の全長の合計は、少なくともねじ部17のピッチPに相当する。切刃21は、固定素子11の長手方向軸線18に関して点対称に設けられ、シャフト12から始端して導入部分14をシャフト12の遊端13まで延在する。切刃21は、それぞれ切刃輪郭を備え、シャフト12の谷径Kの軸線方向投影線を半径方向に超す。
【0048】
切刃21とシャフト12との間には、それぞれ、本例においては10°である逃げ角Fが設けられる。さらに、切刃21は、この例において、それぞれ5°の負のすくい角を有する。
【0049】
各切刃21に隣接して、半径方向内方には、打込みに際して発生する穿孔粉もしくは穿孔屑を逃げするための逃げ溝22が設けられる。好適には、これら切刃21には少なくとも部分的に、シャフトよりも硬度が大きい部分と、面取23とが設けられる。この実施例において、面取角度Cは10°、面取幅Bは0.4mm、面取の後方部分は1mmである。
【0050】
以下、図6および図7に基づき、タップ固定素子11を鉱物性構造物1に打ち込む方法を詳述する。後述する固定素子の打込み作業を、実質的には同じものとする。まず、穿孔器101により穿孔2が構造物1に穿孔される。穿孔深さおよび/または穿孔器101の磨耗度合いに基づき、形成された穿孔は、穿孔器101の穿孔器呼び径よりも小さい直径を有する内接する穿孔シリンダ(EBZ)を備える。
【0051】
続いて、タップ固定素子11が穿孔2内に、回転しながら、または回転打撃しながらねじ込まれる。シャフト12の前方端部領域に取付けられた切刃21は、固定素子11をねじ付ける際に、穿孔2の平らでないまたは丸くない側面4を滑らかにする。固定素子11が打込まれた状態(図7)において、穿孔内に位置するシャフト12の外側もしくは側面の大方が、穿孔2の側面4に当接する。タップされた対向ねじ部領域において、シャフト12と穿孔2の側面4に存在する穿孔粉および/または穿孔屑は、強く圧縮される。
【0052】
オプションとして、穿孔2は、固定素子11をねじ込む前に、例えば送風ポンプによって浄化され、その後、穿孔2は一定量の硬化可能物質3で満たされる。続く固定素子11のねじ込みにおいて、硬化可能物質3は穿孔2内に行渡る。打込みに際して切り出された鉱物性の穿孔粉および/または穿孔屑は、硬化可能物質3と混ざり合い、このため、硬化した物質3から高い荷重を受けることができる。
【0053】
図8に示すのは、第2実施例におけるタップ固定素子91は、構成の異なる切刃96を有し、この切刃96は、V字の一部を成し、半径方向外方に開口した溝である。この固定素子91には、3つの切刃96がシャフト92に回転対称に備えられ、シャフト92の遊端から始端して延在する。
【0054】
図9に示すのは、第3実施例におけるタップ固定素子111であり、構成の異なる切刃106を有し、この切刃106は、U字の一部を成し、半径方向外方に開口した溝として構成される。この固定素子91には、3つの切刃106が、シャフト112に、その遊端から始端するように備えられる。ここでは、これらの溝は、その投影において、固定素子111の長手方向軸線113に中心に取付けられる。
【0055】
図10に示すのは、第4実施例におけるタップ固定素子121であり、2つの互いに直径上に互いに対峙する切刃131を有し、これらの切刃131は、それぞれU字の一部を成し、半径方向外方に開口する溝である。これらの溝は、ここでは、投影に関して、固定素子111の長手方向軸線113にオフセットして取付けられる。切刃131は、ねじ部127のねじ山に関して垂直に延在する。
【0056】
図11に示すのは、第5実施例におけるタップ固定素子31であり、構成の異なる切刃41を有し、これら切刃41の配向は、固定素子31の長手方向軸線38に関して、非連続的な伸延を有する。切刃41は、実質的に、固定素子31の長手方向軸線38に軸線と平行に延在する第1部分42と、長手方向軸線38の投影に対して傾いて延在する第2部分43とを有する。ここで、第2部分43の長手方向軸線38の投影に対する角度Mは20°である。
【0057】
図12に示すのは、シャフト52を有するタップ固定素子51であって、このシャフト52は、その第1端部領域において、少なくとも切刃61の領域が、シャフト52のその他の部分の谷径Kよりも大きい谷径Oを有する。
【0058】
図13に示すのは、鉱物性構造物のためのタップ固定素子71としての、シリンダ状のシャフト72を有するセルフタップ内ねじスリーブである。シャフト72は、第1遊端73に、シャフト12の遊端73に向かって先細りになる導入部分74を備え、さらに、シャフト72の第2端部75から始端する、内ねじ部を有する中ぐり79を備える。中ぐり79の底には、図示しない打込み工具のための回転把持手段76としての多角受け穴が設けられる。タップねじ部77は、第1端部73の端部領域から始端して、部分的にシャフト72に沿って延在する。ねじ部77の外径Aとシャフト72の谷径Kとの差は、ねじ部77のピッチPの0.05〜0.7倍に相当する。シャフト72は、固定素子71の長手方向軸線78を規定する。シャフト72の第1端部領域には、少なくとも2つの切刃81の一方が示され、この切刃81は、それぞれ、固定素子71の長手方向軸線78に平行に延在する長さLを有する。これらの合計の、固定素子71の長手方向軸線78に平行に延在する全長は、少なくともねじ部77のピッチPに相当する。
【符号の説明】
【0059】
1 構造物
2 穿孔
11 固定素子
12 シャフト
16 回転把持手段
17 タップねじ部
18 長手方向軸線
21 切刃
101 穿孔器
A ねじ部の外径
K 谷径
K シャフトの谷径
P ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定素子(11;31;51;71;91;111;121)を鉱物性構造物(1)にアンカリングするための方法であって、
穿孔器呼び径を有する穿孔器(101)によって穿孔(2)が前記構造物(1)に形成され、
続いて、前記固定素子(11;31;51;71;91;111;121)が、前記形成された穿孔(2)にねじ込まれ、
前記固定素子(11;31;51;71;91;111;121)は、
シャフト(12;52;72;92;112;122)であって、打込み工具のための回転把持手段(16;76)を備え、谷径(K)を有し、第1端部領域に少なくとも1つの切刃(21;41;61;81;96;116;131)を備える該シャフトと、
タップねじ部(17;77;127)であって、その前記ねじ部(17;77;127)の外径(A)と、前記シャフト(12;52;72;92;112;122)の谷径(K)との差が、前記ねじ部(17;77;127)のピッチ(P)の0.05〜0.7倍に相当する該ねじ部と、
を備える該方法において、
前記シャフト(12;52;72;92;112;122)の前記谷径(K)の0.95〜1.10倍に相当する穿孔器呼び径を有する穿孔器(101)の利用を特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記穿孔器呼び径(B)は、前記シャフト(12;52;72;92;112;122)の前記谷径(K)の0.99〜1.08倍に相当することを特徴とする方法。
【請求項3】
鉱物性構造物のための固定素子であって、
打込み工具のための回転把持手段(16;76)を有するシャフト(12;52;72;92;112;122)と、
タップねじ部(17;77;127)であって、その前記ねじ部(17;77;127)の外径(A)と、前記シャフト(12;52;72;92;112;122)の谷径(K)との差が、前記ねじ部(17;77;127)のピッチ(P)の0.05〜0.7倍に相当する、該タップねじ部と、を備え、
少なくとも1つの切刃(21;41;61;81;96;116;131)が、前記シャフト(12;52;72;92;112;122)の第1端部領域に設けられた、該固定素子において、
前記固定素子(11;31;51;71;91;111;121)の長手方向軸線(18;38;78;113;128)に平行に、かつ、完全谷径(K)において計測した、少なくとも1つの切刃(21;41;61;81;96;116;131)全長が、少なくとも前記ねじ部(17;77;127)のピッチ(P)に相当することを特徴とした、固定素子。
【請求項4】
請求項3記載の固定素子において、複数の切刃(21;41;61;81;96;116;131)が、前記シャフト(12;52;72;92;112;122)の前記第1端部領域に設けられ、前記固定素子(11;31;51;71;91;111;121)の前記長手方向軸線(18;38;78;113;128)に平行に、かつ、完全谷径(K)において計測した、前記切刃(21;41;61;81;96;116;131)の全長の合計が、少なくとも前記ねじ部(17;77;127)のピッチ(P)に相当することを特徴とする固定素子。
【請求項5】
請求項3〜4のうちいずれか一項記載の固定素子において、前記少なくとも1つの切刃(131)は、少なくとも部分的に、前記ねじ部(127)のピッチ(P)に対して垂直に延在することを特徴とする固定素子。
【請求項6】
請求項3〜5のうちいずれか一項記載の固定素子において、前記少なくとも1つの切刃(21)は、前記シャフト(12)の前記谷径(K)の前記軸線方向投影を半径方向に超えることを特徴とする固定素子。
【請求項7】
請求項3〜6のうちいずれか一項記載の固定素子において、前記シャフト(52)は、第1端部領域において、少なくとも、少なくとも1つの切刃(61)の領域において、前記シャフト(52)のその他の部分の谷径(K)よりも大きい谷径(O)を有することを特徴とする固定素子。
【請求項8】
請求項6または7記載の固定素子において、少なくとも1つの切刃(21)と前記シャフト(12)との間に逃げ角(F)が設けられていることを特徴とする固定素子。
【請求項9】
請求項3〜8のうちいずれか一項記載の固定素子において、前記少なくとも1つの切刃(21)は、負のすくい角(G)を有することを特徴とする固定素子。
【請求項10】
請求項3〜9のうちいずれか一項記載の固定素子において、前記少なくとも1つの切刃(21)は、少なくとも部分的に、前記シャフト(12)よりも硬度が大きい部分を有することを特徴とする固定素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−223432(P2010−223432A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65274(P2010−65274)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】