説明

固定装置

【課題】 施工時間の短縮が図れるとともに締付け具の紛失や固定ミスを防止することができる、スプリンクラー固定装置を提供する。
【解決手段】 互いに平行に配置され且つ隣接した野縁に固定可能な一対の棒状部と、一対の棒状部と野縁との相対的な位置関係を位置決めする位置決め部と、一対の棒状部の間を橋渡しするように一対の棒状部の長手方向の中間に固定され且つスプリンクラー本体が設置される中間部と、を含む固定部材を備え、位置決め部は、野縁にそれぞれに固定される取付金具と、一対の棒状部を取付金具の上面に押付けて固定するレバー式の締付け具と、を有し、締付け具は、一対の棒状部を取付金具の上面に押付けていない状態においても、取付金具に一体的に取り付けられていることを特徴とするスプリンクラー固定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー本体を、天井パネルを上側から保持する野縁に固定するスプリンクラー固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災を自動的に検出して天井等から散水することにより火災を抑制するスプリンクラー装置が知られている。スプリンクラー装置は、水を噴射するスプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに水を供給するために天井パネルの上側に通されるスプリンクラー配管と、を有し、天井パネルを上側から支持するために互いに平行に配置された野縁に固定装置を介して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭55−23560号公報
【特許文献2】特開平7−151269号公報
【特許文献3】特開2003−210604号公報
【特許文献4】特開2005−319278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1では、スプリンクラー配管Pが固定される棒状本体1を、連結金具3A、3B、3Cによって軽量溝形鋼S1、S2に固定している。しかしながら、連結金具3が棒状本体1に一体的に取り付けられていないので、軽量溝形鋼S1、S2に棒状本体1を仮置きした後、連結金具3を棒状本体1の所定位置に取り付けて棒状本体1を軽量溝形鋼S1、S2に固定する必要があった。この棒状本体1を軽量溝形鋼S1、S2に固定する作業が行われる場所は、作業スペースが狭く視野も限られているので、この作業に予想以上に手間がかかっていた。従って、施工時間の短縮を図ることができず、連結金具3の紛失や固定ミスを防止することができなかった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、施工時間の短縮が図れるとともに締付け具の紛失や固定ミスを防止することができる、スプリンクラー固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプリンクラー装置は、スプリンクラー本体を、天井パネルを上側から保持する野縁に固定することを可能にするスプリンクラー固定装置において、互いに平行に配置され且つ隣接した野縁に固定可能な一対の棒状部と、前記一対の棒状部と前記野縁との相対的な位置関係を位置決めする位置決め部と、前記一対の棒状部の間を橋渡しするように前記一対の棒状部の長手方向の中間に固定され前記スプリンクラー本体を設置する中間部と、を含む固定部材を備え、前記位置決め部は、前記野縁にそれぞれに固定される取付金具と、前記一対の棒状部を前記取付金具の上面に押付けて固定するレバー式の締付け具と、を有し、前記締付け具は、前記一対の棒状部を前記取付金具の上面に押付けていない状態においても、前記取付金具に一体的に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、締付け具が一対の棒状部を取付金具の上面に押付けていない状態においても、締付け具が取付金具に一体的に取り付けられているので、スプリンクラー本体の固定作業の際に、締付け具を所定の位置に取り付ける作業が不要となる。従って、施工時間の短縮が図れるとともに締付け具の紛失や固定ミスを防止することができる。
【0008】
また、本発明のスプリンクラー固定装置は、上記構成に加え、前記取付金具は、前記一対の棒状部が前記長手方向と垂直な方向に移動することを規制する規制部を形成し、前記締付け具は、前記規制部により規制された前記一対の棒状部を前記取付金具の上面に押付けて固定することを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、締付け具を操作するだけで棒状部を安定した状態で取付金具に押付けて固定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、施工時間の短縮が図れるとともに締付け具の紛失や固定ミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】水道連結型スプリンクラー装置の配管の一例の概略図である。
【図2】スプリンクラー装置のための固定構造を示す正面図である。
【図3】図2に示す固定構造の平面図である。
【図4】図2に示す固定構造の斜視図である。
【図5】図2に示す固定構造の拡大斜視図である。
【図6】図2に示す固定構造の固定前の状況を示す斜視図である。
【図7】図6の状況から、天井野縁に位置決め部を載せた状況を示す斜視図である。
【図8】図7の状況から、天井野縁に位置決め部をねじ固定した状況を示す斜視図である。
【図9】図8の状況から、締付け具により位置決め部全体を固定した状況を示す斜視図である。
【図10】図2に対応する固定構造の断面図である。
【図11】締付け具の拡大斜視図である。
【図12】締付け具及び取付金具の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、スプリンクラー装置のための本発明による固定装置の実施形態を説明する。図1は、水道連結型スプリンクラー装置の配管の一例の概略図である。図2は、本発明によるスプリンクラー装置のための固定構造を示す正面図である。図3は、図2に示す固定構造の平面図である。図4は、図2に示す固定構造の斜視図である。図5は、図2に示す固定構造の拡大斜視図である。図11は、締付け具の拡大斜視図である。図12は、締付け具及び取付金具の拡大斜視図である。以下、図1〜図5、図11、図12に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1に示すように、水道連結型スプリンクラー装置のための配管100は、水道管101からの分岐管102に止水栓103を介して取付けられた分岐ヘッダー104と、分岐ヘッダー104から停滞水防止継手105を介してトイレのタンクなど給水栓106まで延びるスプリンクラー配管107と、停滞水防止継手105に取付けられたスプリンクラーヘッド108とを有している。スプリンクラー配管107は、主に、天井パネル109の上側、即ち、天井裏を通っている。
【0014】
止水栓103は常時開であり、トイレの使用のたびに、スプリンクラー配管107の中を水が流れ、スプリンクラー装置が火災を感知したとき、停滞水防止継手105を介してスプリンクラーヘッド108から散水される。
【0015】
図2〜図5に示すように、スプリンクラー本体10を、天井パネル4を上側から保持する野縁6、7に固定することを可能にするスプリンクラー固定装置1は、互いに平行に配置され且つ隣接した野縁6、7に固定可能な一対の棒状部12、14と、一対の棒状部12、14と野縁6、7との相対的な位置関係を位置決めする位置決め部50と、一対の棒状部12、14の間を橋渡しするように一対の棒状部12、14の長手方向の中間に固定されスプリンクラー本体10を設置する中間部20と、を含む固定部材16を備えている。
【0016】
天井パネル4は、例えば、石膏ボード、合板等で作られた厚さが通常は9〜25mm程度の板状材である。天井パネル4は、野縁6、7にネジ等によって固定されている。尚、天井パネル4にはスプリンクラー装置2の部屋内への露出用の開口8が設けられており、この開口8は通常直径50mm程度の円形の穴である。
【0017】
野縁6、7は、互いに平行に天井パネル4に沿って延びる複数の棒状の部材である。野縁6、7は様々な材質、形状のものがあるが、本実施の形態ではその中でも金属製で中空の矩形断面状となっていることが好ましい。
【0018】
固定装置10は、野縁6、7に固定される1対の棒状部12、14を有している。詳細には、一対の棒状部12、14は互いに間隔をおいて平行に配置された矩形断面の2本の棒状部材である。棒状部12、14は、軽量化のために、中空であることが好ましい。棒状部12、14はまた、隣り合った野縁6,7の一方の野縁6の上から他方の野縁7の上に延びている。
【0019】
また、スプリンクラー固定装置1は、一対の棒状部12、14の間を橋渡しするように一対の棒状部12、14に固定された中間部20を有している。中間部20は、例えば、アルミニウム又は鋼等の板材で作られる。中間部20は、一対の棒状部12、14にねじ留め等の方法で固定されていてもよい。
【0020】
中間部20は、スプリンクラー本体10を固定するための下面20a、上面20b、及び貫通孔22を有している。貫通孔24は、中間部20の中央付近に設けられている。貫通孔24は、一対の棒状部12、14を橋渡しする方向Bに長孔になっていることが好ましい。
【0021】
スプリンクラー本体10は、中間部20の下側に配置されるスプリンクラーヘッド24と、スプリンクラーヘッド24に向かって中間部20の上側から下側に延び且つ中間部20に固定されるスプリンクラー配管26と、を有している。詳細には、スプリンクラー配管24は、大部分が中間部20の上側に位置した状態で固定された配管接続部30と、天井パネルに沿って延びる配管部32を有している。
【0022】
配管接続部30は、好ましくは、停滞水防止継手である。停滞水防止継手30は、概略的には、T字形をなし、下側に延びる下側管状部分30aと、側方に延びる2つの側方管状部分30bとを有している。下側管状部分30aは、中間部20の上面20bと当接する段付き部30cと、且つ中間部20の貫通孔24の中を下側に延びる延長部30dを有している。スプリンクラーヘッド26は、延長部分30dに当接して位置決めされることが好ましい。
【0023】
また、位置決め部50は、野縁6,7にそれぞれに固定される取付金具52と、一対の棒状部12、14を取付金具52の上面に押付けて固定するレバー式の締付け具56と、を有し、取付金具52に締付け具56が一体的に取り付けられている。棒状部12,14は、レバー式の締付け具56によって取付金具52に、てこの原理により取付金具52の上面又は野縁6、7の上面に押し付けられて固定されている。レバー式の締付け具56は、レバーを回動させることによって、棒状部12,14を取付金具52の上面又は野縁6、7の上面に押し付けて固定する種類のものなど簡易な作業により強固に固定できる種類のものであることが好ましい。具体的には、図11に示すように、締付け具56は、回動軸線56cを中心に互いに回動可能に取付けられた回動レバー56aと、引っ掛け部56bと、を有している。回動レバー56aは、回動軸線56cの近くに設けられた脚部56dを有し、それから一方の方向に延びている。
【0024】
脚部56dは、棒状部12、14の上を転動且つ摺動可能である。脚部56dの輪郭は、回動レバー56aを上側から棒状部12、14に近づけるように回動させたときに、引掛け部56bを引っ張る力が増大するように回動軸線56cと当接箇所との間の距離が増大し、且つ、回動レバー56aを更に回動させたときに、かかる距離が減少するように定められている。本実施形態では、回動レバー56aが水平方向に向けられたときに、かかる距離は最大になる。
【0025】
引っ掛け部56bは、折り曲げられた棒材からなり、回動軸線56c一方の側から下側に延びる第一の側部56eと、回動軸線56cの他方の側から下側に延びる第二の側部56fと、第一の側部の端部と第二の側部の端部とをほぼ横方向に連結するループ部56gとを有している。第一の側部56e及び第二の側部56fは、J字型に延び、即ち、回動軸線56cから下側に延びた後、回動レバー56aが回動軸線56cから延びる方向と反対方向に少し上側に延びている。尚、回動レバー56a、第1の側部56e、第2の側部56f及びループ部56gによって囲まれる空間は、その中を棒状部12、14が通り抜けることができる形状及び大きさであることが好ましい。
【0026】
取付金具52は、野縁6、7に載せることが可能な水平部52fと、野縁6、7に側方から当接する垂直部52gと、を有している。水平部52f又は垂直部52gは、取付金具52を野縁6、7にねじで留めるための取付け孔52d、52eを有している。
【0027】
取付金具52は、更に、一対の棒状部12、14を位置決めするための規制部52b、52cを有している。具体的には、水平部52fから上側に延び且つ間隔をおいて配置された2つの規制部52b、52cによって構成されている。隣接した規制部52b、52cの間の距離は、一対の棒状部12、14の幅よりも僅かに大きく、かくして、隣接した規制部52b、52cの間に棒状部12、14を配置したときに、棒状部12、14が、予め決められたピッチPに位置決めされる。また、取付金具52の取付け位置が正確であれば、隣接した規制部52b、52cの間に一対の棒状部12、14を配置したときに、棒状部12、14が位置決めされる。なお、取付金具52は、1枚の板材から形成されていることが好ましい。
【0028】
本発明の実施形態であるスプリンクラー固定装置では、締付け具56は、一対の棒状部12、14を取付金具52の上面に押付けていない状態においても、取付金具52に一体的に取り付けられているので、締付け具56が一対の棒状部12、14を取付金具52の上面に押付けていない状態においても、締付け具56が取付金具52に一体的に取り付けられているので、スプリンクラー本体の固定作業の際に、締付け具56を所定の位置に取り付ける作業が不要となる。従って、施工時間の短縮が図れるとともに締付け具56の紛失や固定ミスを防止することができるようになる。
【0029】
また、本発明の実施形態であるスプリンクラー固定装置では、取付金具52は、一対の棒状部12、14が長手方向と垂直な方向に移動することを規制する規制部52b、52cを形成し、締付け具56は、規制部52b、52cにより規制された一対の棒状部12、14を取付金具52の上面に押付けて固定するので、取付金具52に一体的に取り付けられている締付け具56が、規制部52b、52cにより規制された一対の棒状部12、14を取付金具52の上面に安定した状態で押付けて固定することが可能となる。従って、レバー式の締付け部を操作するだけで容易に棒状部を取付金具52に押付けて固定することができるようになる。
【0030】
続いて、スプリンクラー固定装置1を野縁6、7に固定する手順の一例を説明する。
まず、図6に示すように、スプリンクラー固定装置1を設置する箇所を、隣接した野縁6、7の間におおよそ決定し、スプリンクラー装置2の部屋内への露出用の穴である開口8を開ける。次に、図7に示すように、棒状部12、14、中間部20、取付金具52および未固定状態の締付け具56を仮組みして野縁6、7に仮置きした後、中間部20の貫通孔24がスプリンクラー装置2からの散水のために形成された開口8の垂直位置に位置するよう調整し、取付金具52を固定ねじ53により水平部52f又は垂直部52gに形成された取付孔52d、52eを通して、野縁6、7にねじ止めする。棒状部12、14を隣接した野縁の一方6の側から他方7の側に延びるように野縁6、7の上に載せるとき、棒状部12、14の両端部を取付金具52の規制部52b、52cによって、棒状部12、14が取付金具52に対して位置決めされると共に、棒状部12、14の移動が阻止される。これにより、棒状部12、14の野縁6への位置決めが一層容易になる。
【0031】
次に、中間部20の貫通孔24の中心と開口8の中心が一致していることを確認し、必要であれば一致するよう調整した上で、図9に示すように、締付け具56を固定状態に回動させ、棒状部12、14、中間部20を野縁6、7に固定する。締付け具56が一対の棒状部12、14を取付金具52の上面に押付けていない状態においても、締付け具56が取付金具52に一体的に取り付けられているので、スプリンクラー本体の固定作業の際に、締付け具56を所定の位置に取り付ける作業が不要となる。また、締付け具56の回動レバー56aが水平方向を越えて下側に回動していることを視認できれば、棒状部12、14が予め設計された力で取付金具52に押付けられていることを容易に確認することができる。次に、図10に示すように、スプリンクラー配管26を停滞水防止継手30に接続し、スプリンクラーヘッド24を停滞水防止継手30に接続してスプリンクラー装置の設置が完了となる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 スプリンクラー固定装置
4 天井パネル
6、7 野縁
8 開口
10 スプリンクラー本体
12、14 一対の棒状部
16 固定部材
20 中間部
20a 下面
20b 上面
22 貫通孔
24 スプリンクラーヘッド
26 スプリンクラー配管
30 配管接続部
30a 下側管状部分
30b 側方管状部分
30c 段付き部
32 配管部
50 位置決め部
52 取付金具
52b、52c 規制部
52d、52e 取付け孔
52f 水平部
52g 垂直部
53 固定ねじ
56 締付け具
56a 回動レバー
56b 引っ掛け部
56c 回動軸線
56d 脚部
56e 第一の側部
56f 第二の側部
56g ループ部
100 配管
101 水道管
102 分岐管
103 止水栓
104 分岐ヘッダー
105 停滞水防止継手
106 給水栓
107 スプリンクラー配管
108 スプリンクラー本体
109 天井パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラー本体を、天井パネルを上側から保持する野縁に固定するスプリンクラー固定装置において、
互いに平行に配置され且つ隣接した野縁に固定可能な一対の棒状部と、前記一対の棒状部と前記野縁との相対的な位置関係を位置決めする位置決め部と、前記一対の棒状部の間を橋渡しするように前記一対の棒状部の長手方向の中間に固定され且つ前記スプリンクラー本体が設置される中間部と、を含む固定部材を備え、
前記位置決め部は、前記野縁にそれぞれに固定される取付金具と、前記一対の棒状部を前記取付金具の上面に押付けて固定するレバー式の締付け具と、を有し、前記締付け具は、前記一対の棒状部を前記取付金具の上面に押付けていない状態においても、前記取付金具に一体的に取り付けられていることを特徴とするスプリンクラー固定装置。
【請求項2】
前記取付金具は、前記一対の棒状部が前記長手方向と垂直な方向に移動することを規制する規制部を形成し、
前記締付け具は、前記規制部により規制された前記一対の棒状部を前記取付金具の上面に押付けて固定することを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラー固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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