説明

固形物を注入するためのデバイス

【課題】固形物を保護するように、その注入を可能とするデバイスを提供する。
【解決手段】ヒトあるいは動物の体内に固形物(500)を注入するためのデバイス(100)は、固形物(500)を収容するための第1の管状内部を備えた注入器本体(300)と、注入器本体(300)内で固形物(500)を保持するための保持デバイスと、第2の管状内部を備えたニードル(200)とを具備してなる。ニードル(200)は注入器本体(300)と結合されており、これによってニードル(200)の第2の管状内部は注入器本体(300)の第1の管状内部と連通している。本デバイスはさらに、第2の内部内へと第1の内部を経て押しやることが可能なラム(400)を具備してなる。ラム(400)は、保持デバイスをラム(400)によって非作動化できるように、保持デバイスと直接的に協働することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトあるいは動物の体内に固形物を注入するためのデバイスに関し、当該デバイスは、固形物を収容するための第1の管状内部を備えた注入器本体と、注入器本体内で固形物を保持するための保持デバイスと、第2の管状内部を備えたニードル(このニードルは注入器本体に結合され、かつ、ニードルの第2の管状内部は注入器本体の第1の管状内部と連通している)と、第2の内部内へと第1の内部を経て押しやることが可能なラムとを具備してなる。本発明はさらに、固形物を注入するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形物の注入は、ヒトおよび獣医学における標準的処置であり、かつ、その他の投与方法(たとえば、経口、静脈注射など)の代替手段を提供する。固形物は、ヒトまたは動物の体内に注入デバイスを用いて注入される。通常、固形物は、マーカー(たとえば動物の識別および/またはモニタリング用)あるいは固形薬剤のいずれかである。固形薬剤の使用は、動物およびヒトのいずれにおいても日常的なものであり、しかも、作用物質の緩慢な吸収のために薬剤をそれほど頻繁に投与する必要がないという利点を有し、これは診察回数が少なくて済むことを意味する。固形物の注入を伴う投与には、ホルモン置換療法および痛みの治療が含まれる。
【0003】
固形物は、通常、注入器によって注入されるが、これは、固形物のために設計されたものであり、かつ、主として、ニードルを備えた注入器本体およびラムを具備してなる。ニードルが体の中に挿入された後、固形物は、ラムによって、ニードル内へと導かれる。その後、ラムを静止状態で維持しながら、ニードルが体から引き抜かれる。固形物はラムによって体内に留められる。最後に、ラムが体から取り出される。
【0004】
特許文献1には、動物に印をつけるためのニードル装置が開示されている。このデバイスは、出口開口および入口開口を備え、かつ、駆動ピンを備えた中空チューブを具備してなる。入口開口を備えた中空チューブの端部は、チューブの長さの一部に沿って延在するプラグ内に一体的に形成されている。シーリングディスクを備えたピンが、中空チューブ内で出口開口付近にマーカーを配置するために使用される。スリーブと一体に形成された突出部が開口を経て突出する。この突出部は、プランジャに、そしてマーカーに加えられる力がチューブを経てプランジャを押しやるのに十分なものとなるまで、マーカーと摩擦係合する。マーカーの外面上のコーティングは、マーカーが移植される前に、マーカーが中空チューブから脱落するのを阻止する。
【0005】
特許文献2は、皮下に固形物体を移植するための注入器を開示している。この注入器は、バレル、バレルに連結されたニードル、そしてラムからなる。ニードルは、それを用いて、移植されることになる物体が、移植までの間、保持される保持手段、すなわちニードル壁上のクリンプ領域を有する。これに代えて、切り込みをニードルに設けることができ、ニードルの直径は物体のそれよりも小さなものである。
【0006】
特許文献3には、トランスポンダーなどのソリッドな物体を生きている生命内に導入するためのインジェクターが開示されており、当該インジェクターは、物体を収容するためのバレルと、物体を放出するためにバレル内で移動可能なラムとを有する。物体を機械的に保持するためのクランプ手段がバレル内に設けられる。クランプ手段は弾性要素として設計される。弾性要素は、弾性素材からなるリップからなり、かつ、バレルの長手方向軸線と平行に配置されている。物体はラムによって放出されるが、これは物体よりも小さな直径を有しており、この結果、その軸方向移動はリップの影響を受けない。
【0007】
固形物を注入するための従来型のデバイスは、特に脆い固形物が注入中に損傷し得るという欠点を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許発明第37 45 071号明細書(Bio Medic Data Systems)
【特許文献2】米国特許第5,484,403号明細書(Avid Marketing)
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 639 387号明細書(Texas Instruments Inc.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、冒頭に述べた技術分野に関係し、かつ、固形物を保護するようにその注入を可能とするデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載された特徴によって達成される。本発明によれば、ラムは、保持デバイスが、このラムによって非作動化できるように、保持デバイスと直接的に協働するよう構成される。
【0011】
これによって、保持デバイスは、通常の垂直力を除いて、固形物の運搬方向と直交する半径方向の力成分に固形物をさらすことがないという結果を伴って、固形物の注入前に、特に注入器本体内での固形物の移動前に、保持デバイスを非作動化させることができるという利点がもたらされる。デバイスの使用中、固形物にはまた、注入器本体およびニードルを通ってそれが移動する間、保持デバイスからの半径方向の力成分が作用せず、この結果、固形物は、たとえば、人体内に徐々に注入することができる。このようにして、脆くあるいはある程度変形し得る固形物でも注入することができる。(たとえば液体を含む)カプセルもまた、このようにして、保持デバイスによって圧縮されることによってカプセルが破れてしまうという危険性を伴わずに注入できる。これはまた、注入器が、特に人間工学的な効率を考えた、そして誤りが起き難いように使用されるという効果を奏する。というのは、保持デバイスの非作動化は、固形物の注入と同じ動作によって生じるからである。
【0012】
注入器本体は、好ましくは、実質的に、長尺な中空シリンダーとして構成される。この中空シリンダーは、通常、円筒形内部を有する。ニードルは金属、特にスチールから形成できるが、プラスチックを使用することも可能である。ニードルは、好ましくは、遠位端部において傾斜が付けられ、かつ、まさに先端においてチップとして設計され、そしてヒトあるいは動物の体内への貫入が容易に成されるようにチップに隣接するエッジはまた鋭利であってもよい。ニードルの近位端部は、注入器本体の第1の内部がニードルの内部と連通するように注入器本体に結合される。注入器本体とニードルとの間の接続は、好ましくは、圧入によって、あるいは接着によって得られる。ニードルおよびユーザーを保護するために、保護キャップを設けることができるが、これは、使用前に、ニードルの上に案内することができ、そして、形状嵌合および/または圧入嵌めによって保持される。注入器に対して形状嵌合および/または圧入嵌めによって結合された安全要素を設けることもできるが、これは、取り付け状態では、ラムが誤って注入器本体内に押し込まれないことを保証する。この安全要素は長尺な要素として構成できるが、これは、ラムヘッドの下で、クリップ結合によって、その上で保持され、したがって注入器本体とラムヘッドとの間の必要な距離を保証する。
【0013】
ラムは、プランジャと、このプランジャと向き合って存在すると共にそれによってラムが操作されるラムヘッドと、プランジャとラムヘッドとの間の接続部(この接続部は、通常、プランジャよりも小さな直径を備えた長尺なロッドとして形成される)とを具備してなる。もし適切ならば、接続部を省略することもでき、この場合にはラムは単にプランジャおよびラムヘッドを備える。これは、プランジャの直径が非常に小さく、特にミリメーターレンジあるいはそれ以下である場合には有利である。ラムの安定性はこうして向上する。
【0014】
本発明に基づく注入器を用いた固形物の注入は、好ましくは、以下のステップで実施される。
a)ニードルが、ヒトあるいは動物の体の中に挿入される。
b)保持デバイスがラムによって非作動化させられると共に、固形物がニードル内に移送される。
c)ニードルの外部で固形物が体内に留まるように、ラムが体に対して静止した状態で注入器本体が引き戻される。
【0015】
保持デバイスは、好ましくは、保持要素を具備してなるが、ラムは、保持デバイスが非作動化されたとき、この保持要素から離間した状態となる。デバイスが使用される前に、注入されることになる固形物はラム前方で遠位に置かれる。保持要素は、それが固形物と協働できるように配置される。保持要素は、いまや、間接作用でラムによって非作動化することができる。このようにして、保持デバイスは注入前に非作動化させることができ、この結果、固形物を損傷させる可能性がある摩擦力に抗して固形物を移動させる必要がなくなる。これは、ユーザーが保持デバイスの非作動化について考える必要がなく、その代わりに、単に注入器本体を経てラムを誘導すればよいという利点を有する。この目的のために、さまざまな手段を設けることができる。
【0016】
ラムは、遠位方向にラムを越えて突出する長尺部に対して、堅固にかつ弾性的に結合することができる。長尺部の遠位端部にラグを設けることができるが、これは、第1の状態では、注入器本体の内部内へと開口を経て突出し、そしてこれによって固形物を保持し、すなわち摩擦によってそれをしっかりと把持する。この変形例では、注入器本体はまた、開口の縁部において(遠位方向における)ラグの直ぐ後方に斜面を有する。ラムが遠位方向に押しやられたとき、長尺部は注入器本体の内部から斜面によって持ち上げられ、そしてこれによって固形物のための経路を解放する。もちろん、長尺部は、必ずしも、ラムに対して堅固に結合される必要はない。長尺部はまた、力で誘導されてもよく、この場合、ラムは、たとえば、長尺部と協働できるラグを有する。非作動化および注入は、こうして、同じ動作によって生じる。
【0017】
上述した変形例と同様、ラグは、その軸線を中心とするラムの回転入力よって、注入器本体の内部に対して接線方向に延在する斜面によって注入器本体の内部から押し出すことができる。注入前に、それゆえ、保持デバイスは、ラムの回転によって非作動化される必要があるであろう。
【0018】
保持要素はまた、ラムが注入前に近位方向に駆動されるように、引っ張り手段を介してラムに結合されてもよく、この結果、注入器本体から保持要素が引き出され、そして固形物の注入時に遠位方向にラムが移動する間、保持要素は、もはや、注入器本体とは係合しない。だが、これは、二つの異なる動作が注入のために実施される必要があることを意味する。
【0019】
保持デバイスの非作動化前に、固形物は、好ましくは、ラムと保持要素との間で保持される。これは、デバイスの貯蔵中に、固形物は、保持デバイスによって生じる力を受けず、したがって保護された状態で貯蔵される、という効果を奏する。このために、作動状態では、保持要素は、少なくとも部分的に、固形物の前方で遠位方向に注入器本体の内部の断面と交差する。保持デバイスが非作動化されたとき、保持要素は断面を塞ぐことはなく、あるいは固形物が保持要素を通過して押しやられることを可能とする程度までのみ、それを塞ぐ。
【0020】
これに代えて、保持要素は、摩擦係合によって側面で固形物と係合でき、そして、それが、注入器本体からあるいはニードルから誤って滑り落ちるのを阻止できる。
【0021】
保持デバイスは、好ましくは、注入器本体と一体で形成される。これによって、簡素な構造を有しかつ安価に製造できる、保持デバイスを備えた注入器本体が得られる。注入器本体はまた、いくつかの部分からなっていてもよいが、注入器本体および保持デバイスは、その場合、好ましくは、一つのコンポーネントとして設計される。
【0022】
これに代えて、保持デバイスは、独立したコンポーネントとして、あるいは複数の部品の状態でさえ構成することができる。これは、たとえば、保持デバイスおよび注入器本体を製造するための射出成形用の金型が簡素な構造であってもよいという利点を有する。だが、注入器を組み立てる際に、さらに多くの方法ステップを実行しなければならない。
【0023】
保持要素は、好ましくは、少なくとも、注入器本体の第1の内部内に突出する第1のラグとして設計される。第1のラグを用いることで、固形物を、注入に先立って、注入器本体内で保持できる。保持は、たとえば、固形物がラグの後方で近位に配置され、これによって滑り落ちるのが阻止されるようなものであってもよい。さらに、ラグはまた、摩擦係合によって固形物に対して横方向に作用し、これによって固形物が滑り落ちるのを阻止できる。最後に、固形物はまた、窪みを有することができるが、この中にラグが突出することができ、これによって両軸線方向への固形物の滑りを阻止できる。このようにして、固形物に対して半径方向の力成分が作用しない保持デバイスをまた形成できる。だが、固形物は、この目的のために好適な形状とされる必要がある。
【0024】
ラグの代わりに、第1の内部の断面に対応すると共にこの断面を完全に閉鎖する保持要素を設けることも可能である。これは、固形物が特に不安定である場合に有益である。この場合、固形物が配されるスペースはまた、保持要素によって、実質的に気密状態で密封できる。だが、保持要素は、この場合、固形物のために第1の内部を解放するために、より大きな距離を移動する必要がある。
【0025】
第1のラグは、好ましくは、注入器本体に対して弾性的に結合される。これによって、保持デバイスの特に簡素な構造が実現される。(弾力性が緩んだ)第1の状態では、第1のラグは注入器本体の第1の内部内に突出する。(半径方向の力がラグに作用している)第2の状態では、第1のラグは、注入器本体の第1の内部内に部分的に突出するか、あるいは突出しない。
【0026】
弾性結合は、以下のさまざまな方法で実現できる。
1.ラグは、螺旋あるいは円錐形スプリングを用いて配置できるが、これは、注入器本体の長手方向に関して放射状に向けられ、これによってラグを第1の内部へと押圧する。
2.ラグは、フラットなスプリングによって力を加えることができるが、これは、軸方向に配置されるか、あるいは注入器本体の外周の一部分の周りに配置される(部分円ヘリカルスプリング)。
3.ラグは、注入器本体の周りの弾性リングによって力を加えることができ、この弾性リングは、たとえば、ゴムバンドなどとして設計される。
4.最後に、ラグ自体は弾性要素として設計できる。
【0027】
保持デバイスの非作動化のため、ラグは、弾性要素によって、そしてまたラグ自体によって直接的に、第1の内部の外へ誘導できる。
【0028】
これに代えて、あるいは加えて、ラグのロッキングあるいはラグの摩擦係合を実現できるが、これは、ラムによって非作動化させることができる。デバイスが1回使用した後に廃棄されるものである場合にはいずれにしても、ラグの領域における穿孔(この穿孔は半径方向の力によって破壊される)がまた、弾性保持デバイスに対する代替手段として設けられてもよい。
【0029】
保持デバイスは、好ましくは、長尺部を具備してなるが、これは、遠位端部においては、第1のラグに結合され、かつ、近位端部においては、特に弾性的にかつ回動可能に、注入器本体に結合されており、かつ、ラグは、第1の状態では、注入器本体の第1の内部内に突出し、かつ、第2の状態では、注入器本体の第1の内部内に、ぜいぜい部分的に突出するか、あるいは、特に、注入器本体の第1の内部内に突出しない。これによって、保持デバイスの簡素かつ費用の掛からない設計が実現される。このために、長尺部自体を弾性素材から形成でき、あるいは、それを、近位端部において回動可能であるように設計することが、そしてスプリングによって作用させることができる。第1の状態では、固形物はラグの後方に配置できる。固形物また、ラグの領域内に配置でき、そして、たとえば、ラグによる摩擦係合によって保持できる。
【0030】
あるいは、長尺部に代えて、たとえば、フレキシブルな素材、特に弾性素材からなるチューブを設けることもできる。
【0031】
保持デバイスは、好ましくは、二つの長尺部を具備してなるが、これは、第1の内部に関して互いに向い合って存在しており、かつ、遠位端部においてラグに結合されており、そして長尺部は、特に弾性的にかつ/または回動可能に、近位端部において注入器本体に結合されている。固形物が詰まるリスクはこうして低減される。
【0032】
これに代えて、ただ一つの長尺部を設けることも可能であり、この場合には、しかしながら、詰まりのリスクが高まる。さらに、二つ以上の長尺部を設けることも可能であり、この場合には、好ましくは、第1の内部周りの対称配置が選択される。だが、これは、製造に関する費用の増大を、したがってより高い製造コストを意味する。
【0033】
長尺部は、好ましくは、注入器本体の長手方向に配されたU字形リセス間に形成される。注入器本体は、したがって容易に、保持デバイスと一体で形成でき、この結果、特に効率的でかつ費用の掛からない製造方法が実現できる。さらに、保持デバイスを備えた特にコンパクトな注入器本体を、このようにして形成できる。たとえば、注入器本体は、U字形リセスが既に形成されているよう、適切なモールドによって製造可能である。一方、U字形リセスは、注入器本体の製造後、パンチング処理あるいはフライス処理によって形成可能である。
【0034】
これに代えて、長尺部はまた別個に製造することができ、かつ、注入器本体に結合することができる。だが、これは、製造に関するより高額な費用に、したがってコスト増大に結び付く。
【0035】
長尺部は、好ましくは、第1の状態では、注入器本体の第1の内部の長手方向と実質的に平行に向けられ、かつ、第2の状態では、第1の内部の長手方向に対して回動したポジションに向けられる。長尺部が注入器本体のU字形リセスによって形成される場合、これによって、特に簡単な様式で、第1の内部の長手方向と平行に向けられかつ力によって作動させられたときに回動可能な長尺部を実現できる。回動は、好ましくは、第1の内部に関して、半径方向外側に生じる。長尺部は、この例では、好ましくは、注入器本体に対して弾性を有するよう設計されるが、これは、特に、素材の適切な選択によって実現できる。通常、保持デバイスは、第1の状態では作動中である、そして第2の状態では非作動中である。だが、もし適切ならば、保持デバイスはまた、特に、回動軸が第1の内部から半径方向外側に離間している場合、第2の状態では作動中であり、かつ、第1の状態では非作動中であってもよい。
【0036】
これに代えて、長尺部はまた、第1の内部の外周の少なくとも一部分の周りに放射状に配置されてもよい。注入器本体の安定性は、これによって不利な影響を受けるかもしれない。
【0037】
長尺部は、好ましくは、近位端部の領域に、第2のラグを有し、この第2のラグは、第1の状態では、注入器本体の内部内に突出すると共に、第2の状態では、注入器本体の第1の内部内にせいぜい部分的に突出するか、あるいは特に、注入器本体の第1の内部内には突出せず、かつ、固形物は、第1の状態では、第1のラグと第2のラグとの間で保持されると共に、第2の状態では、保持されない。このようにして、固形物が両軸線方向に移動するのを阻止すると共に固形物を適所にて固定できる保持デバイスが実現される。通常、ラグ間の距離は、固形物がその間で保持されるようなものである。このために、当該距離は、固形物の長さを僅かに、特に10%未満だけ、好ましくは5%未満だけ、上回る長さを有する。これによって、固形物がラグ間で挟み潰されることがなくなり、あるいはラグによって損傷を受けることがなくなる。だが、同時に、固形物の往復軸方向運動が回避されるが、この運動は、固形物がラグと衝突するとき、同様にダメージを生じ得る。ラグ間の距離はまた、デバイスの製造時の固形物の所与の長さの公差によって、たとえば固形物の99%あるいは99.9%はラグ間で保持できるような、すなわち固形物の99%あるいは99.9%がラグ間の距離よりも小さな長さを有するようなものであってもよい。だが、ラグはまた、より大きな距離だけ離間していてもよく、これによって、ラグ間に固形物を導入する際の製造に関連する複雑さが、ほとんど排除される。だが、ラグはまた、固形物の長さよりも小さな距離だけ離れていてもよく、この場合、たとえば、固形物は摩擦係合によって横方向に保持される。
【0038】
これに代えて、特に、たとえば長尺部がラムに結合されている場合、第2のラグなしで実施することも可能であり、この場合、遠位方向へのラムの移動の結果、第1のラグは、斜面によって注入器本体の第1の内部から押しやられる。この場合、ラムは、固形物が近位方向に移動するのを阻止する。
【0039】
ラムおよび/または第2のラグは、好ましくは、近位方向に斜面を有し、この結果、ラムが第2のラグと係合したとき、少なくとも一つの力成分を第2のラグに対して半径方向に加えることができ、そして長尺部を第2の状態へと変化させることができる。このように設計された第2のラグは、二つの機能を、すなわち近位方向に関する固形物の保持、および長尺部を回動させるためのレバーアームの機能を発揮することができる。長尺部が回動してしまった後、ニードルを経て固形物を運ぶために、ラムは遠位方向に前方に移動する。これを可能とするために、第2のラグは斜面を有する。斜面は一定勾配を有することができる。ラムが斜面と接触するとき、ラムの前面は、まず、ラムが遠位方向に動き続けるときに増大する角度を含む。ラムの移動の間、作用させる必要がある力は減少する。なぜなら、斜面上のラムの接触領域と回動ポイントとの間に存在するレバーがそうであるのと同様、ラムの前面と斜面との間の角度は増大するからである。力の均一な付与を実現するために、斜面はまた凹形状を有することができ、この結果、増大するレバーは、斜面の増大する勾配によって実質的に相殺することができる。これは、ラムの不意な通過が防止され、したがってデバイスがより安全に使用できることを意味する。
【0040】
これに代えて、特に、第2のラグが小さな、半径方向に計測した高さを有する場合、斜面なしで実施することも可能である。
【0041】
第1のラグの半径方向に測定した高さは、好ましくは、第2のラグの半径方向に測定した高さよりも大きなものである。これによって、長尺部の回動を最適化できる。第2のラグは、せいぜい第1の内部のエッジ領域内に、ラムによって押し込まれる。第1のラグは、同時に、長尺部によって第1の内部から移動する。第2のラグが第1のラグと同じ高さを有する場合、第1のラグは、必要であるよりも、半径方向外側にさらにガイドされる。このようにして、保持デバイスの非作動化のために必要とされるよりも大きな力が加えられる。さらに、デバイスは、したがって、使用中、それほどコンパクトでなくてもよい。こうした動作を最適化するために、ラグは、第2のラグが、非作動化状態では、ほとんど全く注入器本体の第1の内部内に突出しないような寸法とすることができる。第1のラグと第1の内部との間の距離は、好ましくは、保持デバイスが非作動化させられたときに最小である。
【0042】
長尺部の近位端部からの第1のラグの距離に対する第1のラグの半径方向に計測した高さの比率は、好ましくは、長尺部の近位端部からの第2のラグの距離に対する第2のラグの半径方向に計測した高さの比率の範囲内に存在する。これによって、二つのラグの最適なサイズ分布が実現される。第2のラグがラムによって注入器本体の第1の内部から押し出される場合、第1のラグが同時に注入器本体の第1の内部から押し出される。だが、注入器本体の、そして保持デバイスの製造の誤差を排除するために、第1のラグは、上記比率に関して、好ましくは、理論的に最適な高さよりも僅かに小さな、特に約5〜10%小さなものとされる。
【0043】
これに代えて、特に、ラグが非常に小さな高さを有するか長尺部が比較的短い場合には、第1のラグおよび第2のラグはまた、同じ高さを有することができる。
【0044】
ラグの寸法は、好ましくは、注入器本体の直径に関係する。第1のラグおよび第2のラグは、好ましくは、注入器本体の第1の内部の直径の50%未満の、好ましくは35%未満の、特に5%ないし25%の、半径方向に計測した高さを有する。ラグの半径方向に計測した高さは、特に好ましくは、注入器本体の内部の直径の約20%である。ラグの高さを最適化するために、高さが増加するとき、長尺部の回動経路が増大し、そして高さが減少するとき、固形物の保持はもはや保証できないかもしれないことに留意されたい。上記サイズは最適であることが証明されている。第1のラグおよび第2のラグは、好ましくは、注入器本体の内径が略1.6mmの場合、約0.3mmの半径方向に測定した高さを有する。
【0045】
これに代えて、そして特に、注入されることになる固形物の関数として、ラグの寸法は異なる選択が可能である。ただ一つの長尺部が使用される場合、ラグはまた、注入器本体の内部の直径の50%より大きな高さを有することができる。特に、第1のラグはまた、それが第1の内部を実質的に遮断するように設計することができる。したがって、長尺部の回動経路は増大する。
【0046】
ラムは好ましくはプランジャを具備してなり、かつ、プランジャは第1のラグと第2のラグとの間の距離よりも大きな長さを有する。これによって、固形物をラグ間に保持できるという効果が得られる。したがって、それ自身の重力を別にした調整によって、かつ、力を加えることなく、固形物が注入器本体から滑り落ちるのを阻止できる。
【0047】
これに代えて、上記距離はより小さなものであってもよい。この場合、固形物は、ラグ(あるいはラグ群)と固形物との間の摩擦力によって保持されることになる。ラグおよび/または固形物の適切な表面によって、加えられる力は比較的小さなものでよく、この結果、特に、保持デバイスが非作動化させられたときにのみ固形物がラムによって移動させられるので、固形物の丁寧なハンドリングの利点が、それにもかかわらず、実現されるであろう。この目的のために、ラグは、固形物とラグ自体との間に特に高い摩擦係数をもたらす表面構造を有することができる。さらに、ラグはまた、好適なコーティング(たとえばラバー)を有しても、あるいは好適な素材から形成されてもよい。
【0048】
ラムは、好ましくは、第1のラグおよび/または第2のラグと協働すると共に、ラムが近位方向に引き戻されるのを阻止するリセスを有する。これは、たとえば、ラムが長手方向に対して交差するように向けられた溝を有する場合に、そして第2のラグが、この第2のラグが上記溝と係合状態となることができるようにクサビ形状である場合に実現できる。第2のラグの斜面が近位方向に向けられ、かつ、クサビ形状ラグの遠位側が半径方向に、すなわち長手方向に対して直角を成すように向けられるので、ラムは遠位方向にのみ移動することができる。この作用を最適化するために、上記溝はクサビ形溝として形成できるが、この場合、長手方向に対して直角を成すように向けられた面は遠位に配置される。
【0049】
これに代えて、特に、注入器が1回よりも多く使用されることを意図したものである場合、上述したようなラムの構造を伴わずに実施することも可能である。
【0050】
注入器本体は、好ましくは、弾性を有する素材、特に、金属、合金あるいはプラスチックから形成される。これによって、保持デバイスを備えた注入器本体の一体設計が可能となる。素材の弾力特性に関する要求は特別に高いものではない。弾性要素の回動は、通常、ごく僅かである。長尺部の回動角度は、好ましくは、10°未満、好ましくは5°未満、特に2°未満である。
【0051】
これに代えて、特に、保持デバイスが注入器本体と一体に形成されない場合には、注入器本体はまた、非弾性素材から製造することができる。
【0052】
注入器本体は好ましくは透明な素材から形成される。こうすることで、ユーザーは、固形物の投与状況を視覚的にモニターすることができる。使用されるプラスチックは、たとえば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、あるいは当業者には公知のその他のプラスチックであてもよい。PMMAは比較的脆く、僅かな弾力性しか持たないが、特に弾力性に関する厳しい要求がないので、このプラスチックは注入器本体の製造に使用可能である。
【0053】
あるいは、不透明素材を使用することも可能である。注入器本体に目視窓を設けることも考えられるが、この窓は、注入器本体のそれとは異なる素材からなる。
【0054】
だが、数多くの好適なプラスチックは当業者にとって周知である。したがって、ある程度の弾力性および十分に高い強度を有する他の好適なプラスチックもまた代替的に使用可能である。
【0055】
本発明のさらなる有利な実施形態および特徴の組み合わせは、以下の詳細な説明から、そして特許請求の範囲の記載から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】固形物を注入するための、本発明に基づくデバイスの概略図である。
【図2】使用前の、固形物を注入するためのデバイスの長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【図3】保持デバイスが非作動化させられた状態での、固形物を注入するためのデバイスの長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【図4】保持デバイスが非作動化させられると共に固形物がニードル内に置かれた状態での、固形物を注入するためのデバイスの長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【図5】デバイスが体内に挿入された状態でかつラムの作動前の、固形物を注入するための本発明に基づくデバイスの他の可能な実施形態の長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【図6】保持デバイスが非作動化させられ、かつ、固形物がニードル(このニードルは体内に挿入されている)内に置かれた状態での、固形物を注入するためのデバイスの長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【図7】固形物が体内に置かれた後の、固形物を注入するためのデバイスの長手方向軸線に沿った概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
原則として、図中の同じ部材には同じ参照数字を付している。
【0058】
図1は、固形物500を注入するためのデバイス100を大まかに示しており、このデバイス100は、ニードル200と、注入器本体300と、ラム400とを具備してなる。ニードル200は、体内への挿入を容易にするために、遠位端部に斜面を有する。注入器本体300は実質的に円筒シリンダーとして設計されている。長手方向軸線に沿って、注入器本体は二つの互いに対向するU字形リセスを有するが、これは長尺な弾性部310を取り囲んでいる(図1は一方のU字形リセスのみを示している)。ニードル200は、近位端部によって、注入器本体300に対して結合されている。ラム400はプランジャ401とラムヘッド(図示せず)とを具備してなる。プランジャ401は実質的に円筒シリンダーの形状を有する。注入器本体300の、そしてニードル200の内部は対応する形状を有しており、これによって、ラム400を注入器本体300およびニードル200を経て押しやることができるようになっている。注入器本体300は保護シース(図示せず)を具備してなることができるが、これは、U字形リセスから異物が侵入するのを阻止できる。保護シースは、フレキシブルであるか、あるいは長尺部310,320の領域にリセスを有しており、このため長尺部310,320の回動が妨げられることはない。
【0059】
注入器本体300およびラム400は、プラスチックから、特に透明なプラスチックから、たとえばポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいはポリカーボネートから形成される。ニードル200は、金属から、特にスチールから形成される。
【0060】
図2は、使用前の、固形物500を注入するためのデバイス100の、図1のA−A軸線に沿った、概略断面を示している。ニードル200が確認できるが、これは注入器本体300に結合されている。本実施形態では、注入器本体300は二つの互いに対向する長尺部310;320を具備してなるが、これらはそれぞれ第1のラグ311;321と第2のラグ312;322とを具備してなり、これは注入器本体300の内部に突出している。長尺部310;320は注入器本体300の長手方向軸線と平行に配置されており、かつ、近位端部において、注入器本体300に弾性的にかつ回動可能に結合されている。力が加えられていない状態では、長尺部310;320は長手方向軸線と平行な向きとなっている。第1のラグ311;321が対応する長尺部310;320の遠位端部に配置されており、かつ、それに結合されている。第2のラグ312;322が、対応する長尺部310;320の近位端部の領域に配置されており、かつ、それに結合されている。固形物500は円柱形状を有するが、これは、プランジャ401の直径の範囲内の直径を有する。本実施形態では、第1のラグ311;321と第2のラグ312;322との間の距離は、固形物500の長さよりも僅かに大きく、この結果、固形物は、第1のラグ311;321と第2のラグ312;322との間の形状嵌合によって保持され、そして、これによって、長手方向に移動しないようになっている。第2のラグ312;322は、注入器本体300の接続部から遠位方向に距離をおいて配置されており、この結果、ラム400が第2のラグ312;322と接触したときにレバー作用を実現できる。この目的のための第2のラグ312;322は近位方向に斜面を有する。ラム400が遠位方向に移動したとき、ラム400は、第2のラグ312;322の斜面と、それらを半径方向外側に押しやるために当接する。
【0061】
図3は、保持デバイスが非作動化させられた状態で、固形物500を注入するためのデバイス100の長手方向軸線に沿った概略断面を示している(同じ要素は図2と同様に示されている)。ラム400は遠位方向に前進させられている。ラム400のジャケット面は第2のラグ312;322と当接し、この結果、これらのラグは図2に対して半径方向外側に回動する。長尺部310;320によって第2のラグ312;322に対して連結された第1のラグ311;321は、同時に、かつ、遠隔作用によって、第2のラグ312;322の、およびプランジ401の相互作用によって、半径方向外側に導かれ、この結果、第1のラグ311;321は、もはや、注入器本体300の内部内には突出せず(あるいはせいぜい部分的にしか突出せず)、したがって、注入器本体300の内部を経てニードル200内に至る固形物500の経路を解放する。
【0062】
図4は、保持デバイスが非作動化させられると共に固形物がニードル内に置かれた状態での、固形物500を注入するためのデバイス100の長手方向軸線に沿った概略断面を示している。図示する要素は、図2および図3中のそれと対応し、ラム400のプランジャ401はニードル200内に前進させられており、この結果として、固形物500はニードル200内に置かれている。
【0063】
図5は、ラム400の作動前の状態においてデバイスが体600内に挿入された状態で、固形物500を注入するためのデバイス100の長手方向軸線に沿った概略断面を示している。ここに示す要素は図2ないし図4のそれと概ね対応する。これまでの図とは対照的に、図5はまた保持要素330を示しているが、これは、注入器本体300の近位領域に配置されており、かつ、それに対して結合されている。本実施形態では、保持要素330は円環状に構成されているが、それは、たとえば長円形あるいは腎臓形であってもよい。
【0064】
ニードル600は、(動物またはヒトの)体600内に注入器本体300の遠位端部まで挿入される。デバイス100は、こうして、注入のための準備が完了となる。次のステップでは、ラム400が注入器本体内に押しやられ、その結果、ラム400は、第2のラグ312,322において、長尺部310,320を半径方向外側に押しやり、この結果、第1のラグ311,321はまた、第2のラグ312,322の半径方向の動きと釣り合いがとれた状態で半径方向外側に押しやられる。このようにして、注入器本体300を通過して、ニードル200内に至る固形物500の経路は解放される。ここで、プランジャ401は、固形物500を体内へは運ばず、体の中に位置させられたニードル00の遠位領域内にのみ運ぶことに注目されたい。これによって、体の組織への、概して鈍い固形物500による損傷が回避され、そして可能な限り最小限の痛みしか生じなくなる。
【0065】
図6は、図5に従った固形物500の注入のためのデバイス100の長手方向軸線に沿った概略断面図である。保持デバイスは非作動化されており、そして固形物500は既にプランジャ401によって、(体600内に位置させられた)ニードル内に位置させられている。特に、固形物500はニードル200から突出しておらず、したがって、体600の組織は、概して鈍い固形物による損傷を受けない。長尺部310,312は半径方向外側に回動する。この状態では、プランジャ401は注入器本体300内には完全に押し込まれておらず、その代わりに、少なくとも体内へのニードル200の挿入の深さに対応する長さだけ、注入器本体300の近位端部から突出している。ラム400がニードル200内にあるいは注入器本体300を経て十分に遠方まで押しやられると直ぐに、第2のラグ312,322の一方または両方が可逆的に引っ掛かるように、ラム400が注入器本体300内に押し込まれることになる正確な長さが、たとえば、単にプランジャ401上にマークされてもよく、あるいはプランジャ401内にノッチとして形成されてもよい。
【0066】
次のステップでは、注入器本体は保持要素330によって把持され、そしてニードル200が固形物500の上を移動し、これによって体600の中に固形物500をあとに残すまで、ラム400(これは体600に対して静止している)の上を近位方向に引き戻される。ラム400が、注入器本体300の引き抜きの間、静止状態のままであるという事実によって、ニードル200の引き抜きの間、ニードル200の内壁によって生じる摩擦力によって固形物500は体の外に引き戻されない。
【0067】
図7は、固形物500が体600内に位置させられた後の、固形物500の注入のためのデバイス100の長手方向軸線に沿った概略断面図である。注入器本体300はラム400に対して完全に引き戻されており、この結果、ニードル200はもはや体600内には延在していない。この状態では、プランジャ401は依然として体600内に置かれている。最後ステップでは、デバイス100が体600から引き抜かれ、この結果、プランジャ401の遠位端部は体600から取り出される。
【0068】
原則として、デバイス100には所望の寸法を付与することができ、そして、特に、こうした寸法は、注入されることになる固形物500に適合させることができる。
【0069】
固形物500は、それがデバイスの機能に悪影響を与えない限り、その他の形状を有していてもよい。たとえば、固形物500はペレットあるいはボールの形状を有することができる。他の形状も考えられる。だが、固形物の最小幾何学的突出は、好ましくは、注入器本体の内部の横断表面積に内接させることができる。
【0070】
第1のラグ311;321と第2のラグ312;322との間の距離はまた、固形物の長さよりも小さなものであってもよく、この結果、固形物は第1のラグ311,321間での摩擦係合によって保持される。
【0071】
第2のラグ312;322の斜面はまた、特に、プランジャ401が遠位端部において丸みを帯びているか、あるいは、対応して、遠位方向に縮小する断面を有する場合、すなわち傾斜が付けられている場合には、省略することができる。
【0072】
保持要素330はまた、二つ以上の部品として設計できる。たとえば、二つの相互に対向する要素を設けることができ、これによって、注入器本体300を人差し指と中指との間で保持でき、そしてラム400は親指を用いて操作できるようになる。
【0073】
総じて、本発明は、固形物を注入するためのデバイスを利用可能とするが、当該デバイスは、固形物を保護するようにして固形物を注入することを可能とする。
【符号の説明】
【0074】
100 注入器
200 ニードル
300 注入器本体
310 長尺部
311 第1のラグ
312 第2のラグ
320 長尺部
321 第1のラグ
322 第2のラグ
330 保持要素
400 ラム
401 プランジャ
500 固形物
600 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトあるいは動物の体内に固形物(500)を注入するためのデバイス(100)、特に固形薬物を注入するための注入器であって、
前記デバイス(100)は、
a)前記固形物(500)を収容するための第1の管状内部を備えた注入器本体(300)と、
b)前記注入器本体(300)内で前記固形物(500)を保持するための保持デバイスと、
c)第2の管状内部を備えたニードル(200)であって、前記ニードル(200)は前記注入器本体(300)と結合されており、かつ、前記ニードル(200)の前記第2の管状内部は前記注入器本体(300)の前記第1の管状内部と連通しているニードル(200)と、
d)ラム(400)であって、前記第2の内部内へと前記第1の内部を経て押しやることが可能なラム(400)と、
を具備してなり、
e)前記ラム(400)は、前記保持デバイスを、前記ラム(400)によって非作動化させることができるように、前記保持デバイスと直接的に協働するよう構成されていることを特徴とするデバイス(100)。
【請求項2】
前記保持デバイスは保持要素(311;321)を具備してなり、前記ラム(400)は、前記保持デバイスの非作動化時、前記保持要素(311;321)から離間した状態となっていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記固形物(500)は、前記保持デバイスの非作動化に先立って、前記ラム(400)と前記保持要素(311;321)との間で保持されることを特徴とする請求項2に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記保持デバイスは、前記注入器本体(300)と一体に形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
保持要素(311;321)は、少なくとも、前記注入器本体(300)の前記第1の内部内へと突出する第1のラグ(311;321)として構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項6】
前記第1のラグ(311;321)は、前記注入器本体(300)に対して、弾性的に結合されていることを特徴とする請求項5に記載のデバイス(100)。
【請求項7】
前記保持デバイスは長尺部(310;320)を具備してなり、この長尺部(310;320)は、遠位端部において、前記第1のラグ(311;321)と結合されており、かつ、近位端部において、前記注入器本体(300)と、特に弾性的にかつ/または回動可能に結合されており、かつ、前記ラグ(311;321)は、第1の状態では、前記注入器本体(300)の前記第1の内部内へと突出し、かつ、第2の状態では、前記注入器本体(300)の前記第1の内部内へと、せいぜい部分的に突出するか、あるいは、特に、前記注入器本体(300)の前記第1の内部内へと突出しないことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のデバイス(100)。
【請求項8】
前記保持デバイスは二つの長尺部(310;320)を具備してなり、この長尺部(310;320)は前記第1の内部に対して互いに向き合って存在すると共に、前記長尺部(310;320)は前記遠位端部においてラグ(311;321)に結合されており、かつ、前記長尺部(310;320)は、前記近位端部において、特に弾性的にかつ/または回動可能に、前記注入器本体(300)に対して結合されていることを特徴とする請求項7に記載のデバイス(100)。
【請求項9】
前記長尺部(310;320)は、前記注入器本体(300)内の長手方向に向けられたU字形状リセス間に形成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のデバイス(100)。
【請求項10】
前記長尺部(310;320)は、前記第1の状態では、前記注入器本体(300)の前記第1の内部の長手方向と実質的に平行に向けられ、かつ、前記第2の状態では、前記第1の内部の前記長手方向に対して回動したポジションに向けられることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項11】
前記長尺部(310;320)は、前記近位端部の領域に、第2のラグ(312;322)を有し、この第2のラグ(312;322)は、第1の状態では、前記注入器本体(300)の内部内に突出すると共に、前記第2の状態では、前記注入器本体(300)の前記第1の内部内にせいぜい部分的に突出するか、あるいは特に、前記注入器本体(300)の前記第1の内部内には突出せず、かつ、前記固形物(500)は、前記第1の状態では、前記第1のラグ(311;321)と前記第2のラグ(312;322)との間で保持されると共に、前記第2の状態では、保持されないことを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項12】
前記ラム(400)および/または近位方向の前記第2のラグ(312;322)は斜面を有し、これによって、前記ラム(400)が前記第2のラグ(312;322)と係合するとき、少なくとも一つの力成分を前記第2のラグに対して半径方向に加えることができ、かつ、前記長尺部(310;320)を前記第2の状態へと変化させることができるようになっていることを特徴とする請求項11に記載のデバイス(100)。
【請求項13】
前記第1のラグ(311;321)の半径方向に計測された高さは、前記第2のラグ(312;322)の半径方向に計測された高さよりも大きなものであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のデバイス(100)。
【請求項14】
前記第1のラグ(311;321)の半径方向に計測された高さの、前記長尺部(310;320)の前記近位端部からの前記第1のラグの距離に対する比率は、前記第2のラグ(312;322)の半径方向に計測された高さの、前記長尺部(310;320)の前記近位端部からの前記第2のラグ(312;322)の距離に対する比率の範囲内にあることを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項15】
前記第1のラグ(311;321)および前記第2のラグ(312;322)は、前記注入器本体(300)の前記第1の内部の直径の、50%未満、好ましくは35%未満、特に5%ないし25%である、半径方向に計測された高さを有することを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項16】
前記ラム(400)はプランジャ(401)を具備してなり、かつ、前記プランジャ(401)は、前記第1のラグ(311;321)と前記第2のラグ(312;322)との間の距離よりも大きな長さを有することを特徴とする請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項17】
前記ラム(400)はリセスを有し、このリセスは、前記第1のラグ(311;321)および前記第2のラグ(312;322)と協働すると共に、前記ラム(400)が前記近位方向に引き戻されるのを阻止するようになっていることを特徴とする請求項11ないし請求項16のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項18】
前記注入器本体(300)は、少なくとも僅かに弾性を有する素材、特に金属、合金あるいはプラスチックからなることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項19】
前記注入器本体(300)は透明なプラスチックからなることを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載のデバイス(100)。
【請求項20】
固形物(500)を収容するための注入器本体(300)と、この注入器本体(300)と結合されたニードル(200)と、保持デバイスと、前記注入器本体(300)内で移動可能に設けられたラム(400)と、を具備してなるデバイス(100)を用いて、特に請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載のデバイス(100)を用いて、ヒトあるいは動物の体内に前記固形物(500)を注入するための方法であって、
a)前記ニードル(200)が、前記ヒトあるいは動物の体(600)の中に挿入されるステップと、
b)前記保持デバイスが前記ラム(400)によって非作動化させられると共に、前記固形物(500)が前記ニードル(200)内に移送されるステップと、
c)前記固形物(500)が前記ニードル(200)の外部で前記体の中に留まるように、前記ラム(400)が前記体(600)に対して静止した状態で、前記注入器本体(300)が引き戻されるステップと、
を具備することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−87940(P2011−87940A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−237599(P2010−237599)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(510282815)フォルテック・ニーダウ・アーゲー (3)
【Fターム(参考)】