説明

固形物保有布および固形物保有布の製造方法

【課題】簡単な構造でより確実に前記接着部分の剥離を抑止することができる固形物保有布を提供する。
【解決手段】エンボス加工された加工布10であって、エンボス加工によりその表面から垂直な方向に突出するとともに当該突出方向の反対側に向かって開口する収容部12が形成された加工布10と、前記収容部12の内側に収容される粒状の固形物20と、接着材30とを設け、当該接着材30を前記収容部12の内側に収容するとともに、この接着材30を前記収容部12の開口部を覆うようにして当該収容部12の内周面に接着させることで前記固形物20を前記収容部12の内側に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状の固形物が埋めこまれた布製品および当該布製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気やマイナスイオン等を身体に作用させると血行が促進されて健康上良好な効果が得られるといわれており、この効果を得るための種々の健康器具が開発されている。
【0003】
例えば、前記磁気を発生する磁石が固定された布からなる衣類であって、当該衣類の着用時に前記磁石の磁気が身体に作用するよう構成されたものがある。そして、前記のような磁石等が固定された布としては、特許文献1に、織布または不織布と、当該布に少なくとも一部が埋没した状態で設置された磁石と、当該磁石を覆うような形状を有し前記磁石の周辺の布に溶着されて前記磁石を前記布に固定する接着材とを有する固形物保有布であって、前記接着材が布の表面から外側に突出するようにして前記磁石を覆っているものが開示されている。また、前記特許文献1には、接着材が、前記布との間に磁石を挟み込んだ状態で布の全面にわたって溶着されているものが開示されている。特に、この固形物保有布では、前記接着材に、蛇紋石等の天然放射性を有する鉱石の粉末とスギゴケ等のコケ類植物の粉末等とが混合されており、当該接着材の表面が身体に接するように構成されている。
【0004】
このような構成によれば、前記コケ類植物の薬効を身体に有効に作用させることができるとともに、前記磁石から発せられる磁気と前記鉱石から発せられる遠赤外線とにより効果的に血行を促進させることができるという効果がある。
【特許文献1】登録実用新案第3011940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような固形物保有布では、接着材が布の表面から外側に突出するようにして磁石を覆っているため、当該固形物保有布を衣類に利用した場合、この衣類の着用時等に接着材が身体等と擦れて前記布から剥離しまう場合がある。また、この接着材の剥離を抑制するために、この接着材と布との溶着量を多くしたり前記のように布の全面にわたって接着材を溶着させてしまうと、固形物保有布全体が大型化してしまうとともにコスト面で不利になるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、簡単な構造でより確実に前記接着部分の剥離を抑止することができる固形物保有布の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、織布または不織布に固形物が固定された固形物保有布において、エンボス加工された加工布であって、エンボス加工によりその表面から垂直な方向に突出するとともに当該突出方向の反対側に向かって開口する収容部が形成された加工布と、前記収容部の内側に収容される粒状の固形物と、前記収容部の開口部を覆うようにして当該収容部の内周面と接着することで前記固形物を前記収容部の内側に固定する接着材とを有することを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、エンボス加工により形成された収容部に固形物を収容し、この固形物が収容された収容部の開口部を前記接着材により覆うという簡単な構成で、前記固形物を前記加工布に確実に固定することができる。また、本発明では、前記接着材が前記加工布の表面から突出する収容部の内周面に接着することで前記固形物を固定できるよう構成されているので、この接着材が前記加工布の表面から外側に突出するのを抑制することができる。すなわち、本発明によれば、簡単な構成で、前記固形物を確実に加工布に固定しつつ前記接着材の加工布からの突出量を抑制して接着材が身体等と擦れて剥離してしまうのを抑制することが可能になる。
【0009】
また、前記固形物保有布の利用方法は限定されるものではないが、この固形物保有布を身体と接触する衣類や寝具等に利用するのが好ましい。そして、この固形物保有布を衣類や寝具等に利用する場合には、さらに、前記固形物が磁石等のように血行促進作用を有するものを備えるとともに、前記収容部が前記身体側に向かって突出するように構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
このようにすれば、前記収容部が身体側に向かって突出するため、この収容部に収容された前記磁石等と身体とをより確実に接触させることができ、この固形物の有する血行促進作用を身体に効率よく作用させることが可能になるとともに、接着材が直接身体と接触するのをなくすことができるので、皮膚の弱い使用者等にも快適な使用感を提供することが可能になる。また、前記のように収容部はエンボス加工により形成されたものであり、身体と磁石等との間に介在する部分の加工布の厚さは均一となるので、前記磁石等が加工布を介して身体に及ぼす作用の管理が容易となる。ここで、前記血行促進作用を有する固形物としては、磁石やゲルマニウム、チタン等が挙げられる。
【0011】
また、本発明において、前記接着材が、その表面と前記加工布の表面との間に段差がないような形状を有するのが好ましい(請求項3)。
【0012】
このようにすれば、前記固形物を固定しつつ表面に凹凸を有しない滑らかな固形物保有布を提供することが可能となり、この固形物保有布を衣類等に用いた場合にその外観を向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記加工布の少なくとも一部が縫製されているのが好ましい(請求項4)。
【0014】
このようにすれば、この固形物保有布を衣類等に加工する場合に、端部の糸のほつれ等が抑制されるので加工が容易となり利便性が向上する。
【0015】
また、前記固形物保有布を製造する方法としては、表面に凹部を有する土台上に、前記収容部が形成されていない加工布を設置する布設置工程と、前記凹部に嵌合可能な凸部を有する押圧部材により前記土台上に設置された加工布を押圧して、当該加工布のうち前記凹部と凸部との間に挟まれた部分に前記収容部を形成するエンボス加工工程と、前記収容部に前記固形物を収容する固形物収容工程と、前記収容部に当該収容部の開口部分を覆うようにして前記接着材を滴下し、当該接着材を前記収容部の内周面に接着させる接着工程とを含むのが好ましい(請求項5)。
【0016】
この方法によれば、前記布設置工程にて前記凹部を有する土台上に設置された布を、前記エンボス加工工程にて前記凸部を有する押圧部材により押圧することで、簡単に前記収容部を形成することができる。また、前記収容工程で前記収容部に前記固形物を収容し、前記接着工程にてこの収容部の内側に接着材を滴下して、当該接着材を収容部の開口部を覆うようにして収容部の内周面に接着させることで、比較的容易に前記固形物を収容部の内側に固定することができる。
【0017】
また、前記固形物保有布のうち前記加工布の少なくとも一部が縫製された固形物保有布を製造する方法としては、前記収容部が形成されていない加工布の少なくとも一部を縫製するとともに当該縫製された加工布に前記収容部を形成する接着前工程と、前記収容部に前記固形物を収容する固形物収容工程と、前記収容部に当該収容部の開口部分を覆うようにして前記接着材を滴下し、当該接着材を前記収容部の内周面に接着させる接着工程とを備え、前記接着前工程が、針を用いて前記加工布を縫製する縫製工程と、当該縫製された加工布に前記針が混入していないかどうかを検査する検針工程と、表面に凹部を有する土台上に前記検針工程後の加工布を設置する布設置工程と、前記凹部に嵌合可能な凸部を有する押圧部材により前記設置された加工布を押圧して、当該加工布のうち前記凹部と凸部との間に挟まれた部分に前記収容部を形成するエンボス加工工程とを含むのが好ましい(請求項6)。
【0018】
この方法によれば、前記接着前工程にて前記加工布を縫製するとともに当該加工布に前記収容部を形成し、その後、前記収容工程でこの収容部に前記固形物を収容し、さらに、前記接着工程にてこの収容部の内側に接着材を滴下して、当該接着材を収容部の開口部を覆うようにして前記収容部の内周面に接着させることで、固形物を固定しつつ縫製された固定物加工布を製造することができる。
【0019】
また、前記接着前工程では、針を用いて前記加工布を縫製する縫製工程と、この縫製された布に前記針が混入していないかどうかを検査する検針工程とが行われており、前記収容工程にて固形物が前記収容部に収容される前に前記検針工程が行われることになるので、当該固形物が前記検針工程時に針として誤って検出されてしまうといった事態を回避することができ、検針作業を効率よく行うことが可能になる。例えば、前記針として金属製の針が用いられ、前記固形物として磁石等の金属が収容される場合であって、金属探知機を用いて検針作業を行う場合等では、前記固形物が金属探知機に反応してしまうのを抑制することができる。すなわち、前記固形物収容後には縫製工程を行わないので、固形物収容後に再度検針工程を行う必要がなく、固形物収容工程前の検針工程のみで、針の混入が見過ごされることを確実に防止することが可能となる。
【0020】
また、前記固形物保有布の製造方法において、前記布設置工程が、前記土台の凹部と対応する位置に当該凹部側に突出し前記収容部をその内部に収容可能な形状を有する保形部を備える下敷き部材を前記土台の上に設置する下敷き部材設置工程と、当該設置された下敷き部材の上に前記収容部が形成されていない加工布を設置する加工布設置工程とを含むとともに、前記布押圧工程、前記固形物収容工程および前記接着工程が、前記下敷き部材の上に前記加工布が設置された状態で実施されるのが好ましい(請求項7)。
【0021】
この方法では、前記下敷き部材設置工程で設置された下敷き部材の上に、前記加工布設置工程において前記加工布が設置され、前記下敷き部材の上に設置された状態で前記エンボス加工工程から前記接着工程までが実施されるので、前記下敷き部材に設けられた保形部によって前記加工布に設けられた収容部の形状を保ちつつ前記各工程を行うことができる。すなわち、この方法によれば、前記収容部内に安定して固形物を収容するとともに前記接着材を安定して滴下することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成で接着部分の剥離を抑制することのできる固形物保有布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。ここでは、本発明に係る固形物保有布を下着の一部に利用するとともに、この固形物保有布に固定する固形物を磁石とした場合について説明する。
【0024】
図1は本発明に係る固形物保有布の部分断面図であり、図2は前記固形物保有布の正面図であり、図3はこの固形物保有布が取り付けられた下着の正面図であり、図4は前記下着の断面図である。
【0025】
図3および図4に示すように、固形物保有布1は下着100の背中部分に取り付けられている。より具体的には、下着100のうち背中全体を覆う後ろ身頃102の内側に前記固形物保有布1が装着されている。
【0026】
図1に示すように、前記固形物保有布1は、加工布10と、磁石20と、接着材30とを有している。
【0027】
前記加工布10は、前記下着100のうち少なくとも後ろ身頃102と同様の組成を有する織布であり、図3に示すように、身体の肩から背中の中央部分の領域を覆うような大きさを有している。また、この加工布10は、織糸のほつれ等がないように、その外周が所定の糸で縫製されている。また、この加工布10には、その表面から垂直な方向に突出するとともに当該突出方向の反対側に向かって開口する複数の収容部12が設けられている。
【0028】
前記収容部12は、図4に示すように、前記加工布10が前記後ろ身頃102に装着されて下着100が形成された状態で、身体側に向かって突出するように構成されている。ここで、この収容部12はエンボス加工により形成されたものであり、その突出方向と垂直に広がる底壁12aの厚みはほぼ均一となっている。さらに、この収容部12は下着100を装着した際に、背中のつぼの位置とほぼ一致するように配置されている。
【0029】
前記磁石20は、磁気を発生させ当該磁気により身体の血行促進を行うものである。この磁石20は、例えば、フェライト磁石や希土類磁石等であり磁束密度が100ミリテスラ程度の磁石である。この磁石20は、粒状であり前記加工布10に設けられた収容部12の内側にそれぞれ収容可能な形状を有している。そして、この磁石20は、前記収容部12に収容され、この収容部の底壁12aを介して身体に磁気を作用させる。特に、収容部12を、前記のように、身体のつぼの位置に配置しておけば、この収容部12に収容された磁石20の磁気を身体に効果的に作用させることができる。また、前記収容部12の底壁12aの厚み、すなわち、この収容部12に収容される磁石20と身体との間に介在する部分の厚みが均一であるので、磁石20の磁気は身体に均一に作用することになる。
【0030】
前記接着材30は、前記磁石20を収容部12の内側に固定するためのものである。この接着材30は、前記磁石20が収容された収容部12の開口部分を覆うようにしてこの収容部12の内周面に接着しており、これによって、磁石20を前記収容部12の内側に固定している。また、この接着材30は、収容部12に収容されており、その表面30aと加工布10の表面10aとの間に段差がないような形状を有している。すなわち、接着材30の表面30aと加工布10の表面10aとは面一であり、本固形物保有布1の表面は滑らかな形状となっている。従って、この本固形物保有布1を下着100のような衣類に利用した場合、特に、収容部12の突出側が身体側となるように用いた場合には、外側の表面に凹凸が生じるのを抑制することができ、外観上、磁石20を有しない通常の下着と同様の形状を保つことが可能になる。また、前記接着材30は、収容部12に収容されており、この収容部12以外の部分には付着していない。従って、接着材30による通気性の悪化を抑制することが可能になる。
【0031】
前記接着材30の材質についての詳細は後述するが、例えば、熱硬化型のシリコーン樹脂等を用いればよい。
【0032】
以上のように接着材30により収容部12の内側に磁石20が固定された固形物保有布1は、下着100の後ろ身頃102の内側に装着される。そして、前記収容部12に収容された磁石20の磁気が前記底壁12aを介して身体に作用して、身体の血行が促進される。
【0033】
次に、前記固形物保有布1の製造方法について説明する。この製造方法は、以下の工程を含む。
【0034】
1)接着前工程
1−1)縫製工程
この工程は、前記収容部12が形成される前の加工布10に縫製を行う工程である。この工程では、図5に示すように、前記加工布10の外周部分から織糸がほつれてしまわないように、前記外周部分をミシン等で縫製する。
【0035】
1−2)検針工程
この工程では、前記縫製工程後の加工布10に折れた針の一部等が混入していないかどうかを検査する工程である。この工程では、図6に示すように、加工布10を検針機50によって当該加工布10に針が混入していないかどうかを検査する。前記検針機50は、永久磁石52とコイル54とを有し、この永久磁石52とコイル54とにより形成される磁界が変化した際に発生する誘導起電力を検出するものである。すなわち、永久磁石52とコイル54との間に設置された加工布10に針が混入している場合には前記磁界をこの針が横切ることで誘導起電力が発生するため、この誘導起電力が検出されれば前記加工布に針が混入していることを検出することができる。前記検針機50では、この誘導起電力を検出して、誘導起電力が発生した場合にライト等を点滅させて作業者に報知している。
【0036】
ここで、前記加工布10に折れた針等が混入していることが検出された場合には、作業者等によりこの針が除去されて、再度、検針機50による検査が行われる。
【0037】
1−3)布設置工程
この工程では、下敷き部材設置工程と加工布設置工程前とが行われる。
【0038】
1−3−1)下敷き部材設置工程
この工程は、図7に示すように土台60の上に下敷き部材70を設置する工程である。前記土台60とは、前記加工布10に前記収容部12を形成するためのメス側金型であり、その表面には前記収容部12とほぼ同形状の凹部62が複数設けられている。また、前記下敷き部材70とは前記収容部12を保形するためのものである。本実施形態では、前記下敷き部材70としてデニムを用いている。このデニム70には、その表面に、前記凹部62と対応する位置に、この凹部62側に突出して前記収容部12を収容可能な形状を有する保形部72が形成されている。そして、この下敷き部材設置工程では、前記土台60の上に前記デニム70が、前記凹部62内に前記保形部72がはまり込むようにして設置される。
【0039】
1−3−2)加工布設置工程
この工程では、図8に示すように、土台60上に設置された前記デニム70の上に、前記検針工程が終了した加工布10が設置される。
【0040】
1−4)エンボス加工工程
この工程は、図9に示すように、加工布10をエンボス加工してこの加工布10に収容部12を形成する工程である。この工程では、押圧部材80により加工布10が押圧されることで前記収容部12が形成される。前記押圧部材80とは、前記加工布10に前記収容部12を形成するためのオス側金型であり、その表面には土台60側に向けて突出する凸部82が複数設けられている。また、この凸部82は、前記土台60の凹部62およびこの凹部62上に設置された前記デニム70の保形部72と嵌合するような形状を有している。そして、この凸部82により加工布10が前記土台60側に押圧されることで、前記凹部62上の前記保形部72と前記凸部82との間に前記収容部12が形成される。
【0041】
ここで、前記凸部82は均一な押圧力で加工布10を押圧しており、前記収容部12の底壁12aの厚さはほぼ均一な厚さに形成される。
【0042】
2)固形物収容工程
この工程では、図10に示すように、前記エンボス加工工程で形成された複数の収容部12に磁石20がそれぞれ収容される。
【0043】
3)接着工程
この工程は、前記収容部12に接着材30を滴下して、この接着材30を前記収容部12の内周面に接着する工程である。
【0044】
この工程では、まず、図11に示すように、図略のディスペンサ等により前記収容部12に接着材30が滴下される。特に、この工程では、前記接着材30が、その表面30aと前記加工布10の表面10aとの間に段差が生じないように滴下される。
【0045】
ここで、前記接着材30としては、収容部12に滴下された後にその形状が安定して維持される程度にその粘度が高まる(すなわち硬化する)ものであることが好ましい。この硬化は自然硬化でもよいし、紫外線の照射や加熱によって促進される硬化であってもよい。ただし、硬化後も接着材30にある程度の弾性(柔軟性)が確保されるものであることが好ましい。これにより、使用時にこの接着材30に外力が加わった場合等にこの接着材30の割れや破損が生ずることを回避することができる。前記接着材30としては、例えば熱硬化型のシリコーン樹脂が好適である。
【0046】
そして、この接着材30が滴下された加工布10は、図12に示すように前記デニム70上に設置されたまま前記土台60から外され、デニム70とともに乾燥機90内に運び込まれる。そして、前記収容部12に滴下された接着材30は、この乾燥機90内で前記接着材30が過熱されることで硬化して収容部12の内周面と接着する。その結果、前記収容部12内に収容された磁石20は、この収容部12に固定される。
【0047】
このようにして製造された固形物保有布1は、さらに収容部12の突出側が身体側にくるように下着100の後ろ身頃102に装着される。具体的には、この固形物保有布1は、縫製が終了した下着100の後ろ身頃102に接着シート等を介して超音波溶着等により装着される。
【0048】
以上のように、本固形物保有布1によれば、前記磁石20が収容された収容部12の開口部を前記接着材30により覆い、この接着材30を収容部12の内周面に接着させるという簡単な構成で、前記接着材30が加工布10の表面から突出するのを抑制しつつ磁石20を確実に加工布10に固定することができる。その結果、この接着材30が身体等と擦れて剥離してしまうのを抑制することが可能になる。
【0049】
また、この固形物保有布1を下着100等のように身体と接触する衣類に利用した場合に、当該固形物保有布1を前記収容部12が身体側に突出するように用いれば、収容部12に収容された磁石20と身体とをより確実に接触させることができるので、この磁石20の血行促進作用を効率よく身体に作用させることが可能になる。また、前記接着材30が身体と直接接触するのを抑制することができるので、皮膚への負担を抑制することでき、皮膚の比較的弱い使用者等に対しても快適な使用感を提供することが可能になる。さらに、前記収容部12はエンボス加工により形成されたものであり、身体と磁石20との間に介在する収容部12の底壁12aの厚さは均一となるので、前記磁石20がこの底壁12aを介して身体に及ぼす作用の管理が容易になる。
【0050】
また、前記のように、固形物保有布1を前記接着材30の表面30aと前記加工布10の表面10aとの間に段差がないように構成しておけば、外側に凹凸が生じるのを抑制することができるので、その外観が向上する。
【0051】
また、前記固形物保有布1を製造する方法として、前記のような方法を用いれば、布設置工程で設置された加工布10に対して、エンボス加工工程にて簡単に前記収容部12を形成することができる。また、前記固形物収容工程にて磁石20を前記収容部12に収容し、接着工程にてこの収容部12に接着材30を滴下するとともに接着材30を収容部12の内周面に接着させれば、前記磁石20を収容部12の内側に収容した状態で、この収容部12の開口部が接着材30により覆われることになるので、磁石20を収容部12の内側に確実に固定することが可能になる。特に、前記接着工程にて、前記接着材30を、その表面30aと加工布10の表面10aとの間に段差が生じないよう滴下しておけば、容易に固形物保有布1の表面を滑らかにすることができる。
【0052】
また、前記固形物収容工程の前に、前記加工布10を縫製する縫製工程と、当該縫製された加工布10に針が混入していないかどうかを検査する検針工程とを行い、前記磁石20を接着材30により加工布10に固定するようにすれば、固形物収容工程後に再度検針工程を行う必要がなくなるので、効率よく固形物保有布1を製造することが可能になる。
【0053】
また、前記布設置工程において、前記土台60の上に前記加工布10よりも厚手のデニム70を設置し(下敷き部材設置工程)、このデニム70の上に加工布10を設置して(加工布設置工程)、デニム70の上に加工布10が設置された状態で、前記エンボス加工工程、前記固形物収容工程および前記接着工程を行うようにすれば、前記デニム70に設けられた保形部72により加工布10に設けられた収容部12が保形されるので、この収容部12内に安定した状態で磁石20および接着材30を収容することができるとともに、各工程間の運搬時に収容部12の形状が崩れてしまうのを抑制することができる。特に、この方法は、前記加工布10の厚さが薄く、前記収容部12の形状を保つことが困難な加工布10に磁石20等を固定する際に有効となる。
【0054】
ここで、前記実施形態では、固形物保有布1を下着100の後ろ身頃102の内側に装着した場合について示したが、固形物保有布1により後ろ身頃102を構築するようにしてもよい。また、固形物保有布1は下着100に限らず、例えばシーツ等やクッション等に利用してもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、加工布10に固定する固形物として磁石20を用いた場合について示したが、血行促進効果が見込まれる他の固形物、例えばチタンやゲルマニウム等を用いてもよい。
【0056】
また、前記下敷き部材設置工程で土台60の上に設置される下敷き部材はデニム70に限らず、加工布1の収容部12を保形できるものであればよく、厚手の紙等であってもよい。但し、デニム70は安価であるとともに比較的厚手であり保形性に優れているため、前記下敷き部材としては好適である。また、この下敷き部材としては、前記加工布10と同程度の熱収縮性を有し、前記接着工程における乾燥機90での過熱時に、前記加工布10の熱収縮を妨げないものが好ましい。さらに、前記下敷き部材設置工程は省いてもよく、土台60の上に直接加工布10を設置してもよい。
【0057】
また、前記接着前工程は、前記順番に限らない。すなわち、前記磁石20を収容部12に収容する固形物収容工程の前に縫製工程と検針工程が終了していればよいので、縫製工程と検針工程の前に布設置工程やエンボス加工工程を行ってもよい。
【0058】
また、前記接着材30は前記に限らない。
【0059】
また、前記磁石20等の固形物の配置は前記に限らない。
【0060】
また、前記検針工程で用いる検針機50は、前記のような誘導起電力を検出するものに限らずX線を利用するもの等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る固形物保有布の部分断面図である。
【図2】図1に示す固形物保有布の正面図である。
【図3】図1に示す固形物保有布が取り付けられた下着の正面図である。
【図4】図3に示す下着の断面図である。
【図5】図1に示す固形物保有布の加工布が縫製された状態での正面図である。
【図6】図5に示す縫製された加工布が検針機にかけられた状態を示す概略側面図である。
【図7】土台に下敷き部材が設置された状態を示す断面図である。
【図8】図7に示す下敷き部材の上に加工布が設置された状態を示す断面図である。
【図9】図8に示す加工布に収容部が形成された状態を示す断面図である。
【図10】図9に示す収容部に磁石が収容された状態を示す断面図である。
【図11】図10に示す収容部に接着材が滴下された状態を示す断面図である。
【図12】図11に示す接着材が滴下された加工布が乾燥機にかけられた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 固形物保有布
10 加工布
12 収容部
12a 底壁
20 磁石(固形物)
30 接着材
50 検針機
60 土台
62 凹部
70 デニム(下敷き部材)
80 押圧部材
82 凸部
90 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布または不織布に固形物が固定された固形物保有布において、
エンボス加工された加工布であって、エンボス加工によりその表面から垂直な方向に突出するとともに当該突出方向の反対側に向かって開口する収容部が形成された加工布と、
前記収容部の内側に収容される粒状の固形物と、
前記収容部の内側に収容されて、当該収容部の開口部を覆うようにして当該収容部の内周面と接着することで前記固形物を前記収容部の内側に固定する接着材とを有することを特徴とする固形物保有布。
【請求項2】
請求項1に記載の固形物保有布において、
当該固形物保有布が、身体と接触する衣類や寝具等に用いられるものであるとともに、
前記固形物が、磁石等のように血行促進作用を有するものを備え、
前記収容部が前記身体側に向かって突出するように構成されていることを特徴とする固形物保有布。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固形物保有布において、
前記接着材が、その表面と前記加工布の表面との間に段差がないような形状を有することを特徴とする固形物保有布。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の固形物保有布において、
前記加工布の少なくとも一部が縫製されていることを特徴とする固形物保有布。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の固形物保有布を製造する方法であって、
表面に凹部を有する土台上に、前記収容部が形成されていない加工布を設置する布設置工程と、
前記凹部に嵌合可能な凸部を有する押圧部材により前記土台上に設置された加工布を押圧して、当該加工布のうち前記凹部と凸部との間に挟まれた部分に前記収容部を形成するエンボス加工工程と、
前記収容部に前記固形物を収容する固形物収容工程と、
前記収容部に当該収容部の開口部分を覆うようにして前記接着材を滴下し、当該接着材を前記収容部の内周面に接着させる接着工程とを含むことを特徴とする固形物保有布の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の固形物保有布を製造する方法であって、
前記収容部が形成されていない加工布を縫製するとともに当該縫製された加工布に前記収容部を形成する接着前工程と、
前記収容部に前記固形物を収容する固形物収容工程と、
前記収容部に当該収容部の開口部分を覆うようにして前記接着材を滴下し、当該接着材を前記収容部の内周面に接着させる接着工程とを備え、
前記接着前工程が、針を用いて前記加工布の少なくとも一部を縫製する縫製工程と、当該縫製された加工布に前記針が混入していないかどうかを検査する検針工程と、表面に凹部を有する土台上に前記検針工程後の加工布を設置する布設置工程と、前記凹部に嵌合可能な凸部を有する押圧部材により前記設置された加工布を押圧して、当該加工布のうち前記凹部と凸部との間に挟まれた部分に前記収容部を形成するエンボス加工工程とを含むことを特徴とする固形物保有布の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の固形物保有布を製造する方法において、
前記布設置工程が、前記土台の凹部と対応する位置に当該凹部側に突出し前記収容部をその内部に収容可能な形状を有する保形部を備える下敷き部材を前記土台の上に設置する下敷き部材設置工程と、当該設置された下敷き部材の上に前記収容部が形成されていない加工布を設置する加工布設置工程とを含むとともに、
前記布押圧工程、前記固形物収容工程および前記接着工程が、前記下敷き部材の上に前記加工布が設置された状態で実施されることを特徴とする固形物保有布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−133554(P2008−133554A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319215(P2006−319215)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000112299)ピップフジモト株式会社 (46)
【Fターム(参考)】